芥川賞のすべて・のようなもの
第22回
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井上靖
Inoue Yasushi
生没年月日【注】 明治40年/1907年5月6日~平成3年/1991年1月29日
受賞年齢 42歳8ヵ月
経歴 北海道上川郡旭川町(現・旭川市)生まれ、静岡県育ち。京都帝国大学文学部哲学科卒。毎日新聞大阪本社入社、学芸部員となる。昭和26年/1951年退社後、創作に専念。
受賞歴・候補歴
  • |候補| 第13回サンデー毎日大衆文芸[選外佳作](昭和8年/1933年下期)「三原山晴天」沢木信乃名義
  • 第14回サンデー毎日大衆文芸[入選](昭和9年/1934年上期)「初恋物語」沢木信乃名義
  • 第17回サンデー毎日大衆文芸[入選](昭和10年/1935年下期)「紅荘の悪魔たち」
  • 第1回千葉亀雄賞[現代物一席](昭和11年/1936年)「流転」
  • 第1回人間新人小説[選外佳作](昭和22年/1947年)「闘牛」井上承也名義
  • 第22回芥川賞(昭和24年/1949年下期)「闘牛」
  • |候補| 第22回芥川賞(昭和24年/1949年下期)「猟銃」
  • |候補| 第4回探偵作家クラブ賞[短編部門](昭和26年/1951年)「死と恋と波と」
  • |候補| 第8回日本探偵作家クラブ賞(昭和30年/1955年)「殺意」
  • |候補| 第8回読売文学賞[小説賞](昭和31年/1956年)『姨捨』その他
  • |候補| 第9回読売文学賞[小説賞](昭和32年/1957年)『天平の甍』その他
  • |候補| 第4回新潮社文学賞(昭和32年/1957年)『射程』
  • 第8回芸術選奨文部大臣賞[文学部門](昭和32年/1957年度)『天平の甍』
  • 第15回日本藝術院賞[文芸](昭和33年/1958年度)『氷壁』その他
  • |候補| 第6回新潮社文学賞(昭和34年/1959年)『敦煌』『樓蘭』
  • 第1回毎日芸術賞[大賞][文学部門](昭和34年/1959年度)『敦煌』『樓蘭』
  • |候補| 第11回読売文学賞[小説賞](昭和34年/1959年)『敦煌』
  • 第18回文藝春秋読者賞(昭和35年/1960年上期)「蒼き狼」
  • |候補| 第12回読売文学賞[小説賞](昭和35年/1960年)『蒼き狼』
  • 第14回野間文芸賞(昭和36年/1961年)『淀どの日記』
  • |候補| 第14回読売文学賞[小説賞](昭和37年/1962年)『洪水』
  • 第15回読売文学賞[小説賞](昭和38年/1963年)『風濤』
  • |候補| 第1回谷崎潤一郎賞(昭和40年/1965年)『楊貴妃伝』
  • ポルトガル・インファンテ・ヘンリッケ勲章(昭和43年/1968年)
  • |候補| 第10回毎日芸術賞[文学部門](昭和43年/1968年度)『おろしや国酔夢譚』
  • |候補| 第20回読売文学賞[小説賞](昭和43年/1968年)『おろしや国酔夢譚』
  • 第1回日本文学大賞(昭和44年/1969年)『おろしや国酔夢譚』
  • |候補| 第22回読売文学賞[随筆・紀行賞](昭和45年/1970年)『西域物語』
  • |候補| 第2回高見順賞(昭和47年/1972年)『季節』《詩集》
  • 文化功労者(昭和51年/1976年)
  • 文化勲章(昭和51年/1976年)
  • 第32回NHK放送文化賞(昭和55年/1980年度)
  • 第14回仏教伝導文化賞B項(昭和55年/1980年)
  • 第14回日本文学大賞(昭和57年/1982年)『本覚坊遺文』
  • 朝日賞(昭和59年/1984年度)"長年にわたる文学上の業績と国際文化交流への貢献"
  • 第42回野間文芸賞(平成1年/1989年)『孔子』
個人全集 『井上靖小説全集』全32巻(昭和47年/1972年10月~昭和50年/1975年5月・新潮社刊)
『井上靖全集』全28巻・別巻(平成7年/1995年4月~平成12年/2000年4月・新潮社刊)
芥川賞
選考委員歴
第32回~第89回(通算29年・58回)
備考
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芥川賞 第22受賞  一覧へ

とうぎゅう
闘牛」(『文學界』昭和24年/1949年12月号)
媒体・作品情報
誌名 「文學界」  別表記表紙 「文藝春秋編輯」併記
巻号 第3巻 第10号  別表記12月号
作品名 別表記 「鬪牛」
印刷/発行年月日 印刷 昭和24年/1949年11月20日 発行 昭和24年/1949年12月1日
発行者等 編輯人 上林吾郎 発行人 池島信 印刷人 中田末男 印刷所 ダイヤモンド印刷株式会社
発行所 文藝春秋新社(東京都)
総ページ数 118 表記上の枚数 目次 130枚 基本の文字組
(1ページ当り)
31字
×26行
×2段
本文ページ 8~42
(計35頁)
測定枚数 133
上記のうち紫の太字はブラウザでの表示が困難な異体字(主に正字など)
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書誌
>>『文藝春秋』昭和25年/1950年4月号
>>昭和25年/1950年3月・文藝春秋新社刊『闘牛』所収
>>昭和25年/1950年11月・新潮社/新潮文庫『猟銃・闘牛』所収
>>昭和25年/1950年☆月・光文社刊『現代小説代表選集 第6』所収
>>昭和27年/1952年☆月・河出書房刊『新文学全集 井上靖集』所収
>>昭和29年/1954年5月・大日本雄弁会講談社刊『井上靖作品集 第2巻』所収
>>昭和31年/1956年10月・修道社刊『芥川賞作品集 第1巻』所収
>>昭和31年/1956年11月・長嶋書房刊『戦後芥川賞作品集 I』所収
>>昭和31年/1956年12月・筑摩書房刊『現代日本文学全集81 永井龍男・井上友一郎・織田作之助・井上靖集』所収
>>昭和36年/1961年1月・新潮社刊『井上靖文庫 第20』所収
>>昭和38年/1963年10月・現代芸術社刊『芥川賞作品全集 第3巻』所収
>>昭和41年/1966年1月・講談社刊『われらの文学6 井上靖』所収
>>昭和45年/1970年1月・人文書院刊『井上靖短篇全集 自選』所収
>>昭和47年/1972年☆月・ほるぷ出版刊、図書月販発売『日本名作自選文学館10 猟銃他二十三篇』所収
>>昭和48年/1973年6月・講談社刊『現代の文学12 井上靖』所収
>>昭和49年/1974年1月・新潮社刊『井上靖小説全集1 猟銃・闘牛』所収
>>昭和50年/1975年7月・筑摩書房刊『筑摩現代文学大系70 井上靖集』所収
>>昭和57年/1982年5月・文藝春秋刊『芥川賞全集 第4巻』所収
>>平成2年/1990年10月・埼玉福祉会/大活字本シリーズ『猟銃・闘牛』所収
>>平成7年/1995年4月・新潮社刊『井上靖全集 第1巻』所収
>>平成10年/1998年12月・岩波書店刊『井上靖短篇集 第1巻』所収
>>平成16年/2004年4月・リブリオ出版/大きな活字で読みやすい本『文学賞受賞・名作集成 第1巻 芥川賞篇』所収
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候補者 井上靖 男42歳
選考委員 評価 行数 評言
瀧井孝作
男55歳
17 「猟銃と闘牛と二つ読んでみて、この人は面白く読ませる才人らしい、と分りました。」「新聞小説でも書ける腕達者で、小説らしい形式で行く所に、私は、心からまだ好きではない、段々に好きになれるかもしれない、が今の所まだ、と考えました。」
佐藤春夫
男57歳
40 「他の候補作品を残らず読んで見た上でもその力倆から見て井上に優る人がいるとも思わなかった。」「自分は席上での「猟銃」を採るか「闘牛」をかの意見が出た時、一議なく闘牛説であった。年若な読者でない限り「猟銃」は誰しもあまり好まない作品だと思ったものである。」「闘牛を新聞社内部を描いたものとして見るか、恋愛小説としてみるかという意見も両立する。自分は恋愛小説と見る側である。」「井上は腕達者で作風も常識的ではあるが、飽くまで正直に腕にまかせて人を煙にまいてやろうというようなすれっからしの下劣なものの無いのがよい。作者の人柄であろう。」
石川達三
男44歳
19 「すぐれた才能をもった人だと思う」「一回の委員会では済むまいと思ったが、案外意見が早くまとまった。」「なかなか巧みな技巧のある人で、小説を面白く構成して行く技術をもっている。将来相当の多作濫作にも耐え得る作家だろうと思う。しかしなるべくならば多作はすすめたくない。」
岸田國士
男59歳
7 「「闘牛」(井上靖)は、わが国では珍しい、既に成熟を感じさせる、一個の文学的才能の所産である。常識に富んだ、余情ある巧みな作品がどしどし書ける作家の手腕を示している。」「衆目の見るところ、入選作として、これも、当を得たものである。私も敢て反対する気持はない。」
舟橋聖一
男45歳
17 「井上靖のものが、断然、他を大差に引放し、前回とはうって代って、委員会は、円満裡に、すぐ結論を出した。」「私と丹羽とが、「猟銃」を推し、他の委員は、みな「闘牛」を推した」「「猟銃」の場合、(彩子の遺書)は、蛇足のように思われる。「闘牛」の方には、取り立てて欠点がない。その代り、月並である。」「どうしても、無難で月並作品の方へ、委員たちの目が向いてしまうのではないかしらん。」
丹羽文雄
男45歳
32 「係りから推薦作品を知らせよと電報が来たので、「猟銃」と書いた。」「「闘牛」の推薦は、まあ一番無難だ。(引用者中略)もう完全に出来上った作家だ。何もいうことはない。(引用者中略)が、第二作のこれを読んだ時、正直なところ私は何の驚異も覚えなかった。」「「猟銃」には、往年の石坂洋次郎君の短篇にびっくりさせられたような或るものがあった。ロマンチックな一陣の風を感じたものである。」
宇野浩二
男58歳
21 「新聞に、全委員一致で、井上靖の『闘牛』ときまった、と出ていた。しかし、「全委員一致」はちょっと『まちがい』で、私だけは反対であった。」「なるほど、こんどの数篇の候補作品のなかでは、『うまさ』という点だけでみれば、づぬけていた。ただ、私には、出てくる人物たちが、みな、自分の意志ではなく、作者の『かんがえ』どおりに、思考し、行動しているのが、気になった。大衆小説ふうの興味があり芸術味にかけているのが『いや』であった。」
坂口安吾
男43歳
4 「作者は人間の見方や掴み方には深みも新しさもないが、俗才で人間を処理してゆく手際は巧妙で、なんといっても、大人である。「猟銃」はとらない。「闘牛」の方向にのびる方が、はるかに逞しい作品を書きうるだろう。」
川端康成
男50歳
24 「「闘牛」を推薦した。」「しかし、「闘牛」の推薦に大した感動も冒険もなかった。なんだか常識で片づいてしまったようなあっけなさが残った。」「私には「猟銃」は取れなかった。(引用者中略)しかし「闘牛」を選ぶ支えにはなっていた。」「珍らしい筋の運び、脇役のタイプの扱いに、作者はあざやかな書き方を見せながら、主人公の性格や心理及びその恋愛の書き方に、やはりあざやかなようでいて、実は動揺と晦冥とを残しているのは、かえって作者の未来を約束しているのかもしれない。」
選評出典:『芥川賞全集 第四巻』昭和57年/1982年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和25年/1950年4月号)
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芥川賞 第22回候補  一覧へ

りょうじゅう
猟銃」(『文學界』昭和24年/1949年10月号)
媒体・作品情報
誌名 「文學界」  別表記表紙 「文藝春秋編輯」併記
巻号 第3巻 第8号  別表記10月号
作品名 別表記 「獵銃」
印刷/発行年月日 印刷 昭和24年/1949年9月20日 発行 昭和24年/1949年10月1日
発行者等 編輯人 上林吾郎 発行人 池島信 印刷人 中田末男 印刷所 ダイヤモンド印刷株式会社
発行所 文藝春秋新社(東京都)
総ページ数 102 表記上の枚数 目次 100枚 基本の文字組
(1ページ当り)
31字
×26行
×2段
本文ページ 8~36
(計29頁)
測定枚数 109
上記のうち紫の太字はブラウザでの表示が困難な異体字(主に正字など)
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書誌
>>昭和25年/1950年3月・文藝春秋新社刊『闘牛』所収
>>昭和25年/1950年5月・小山書店刊『日本小説代表作全集21 昭和24年・後半期』所収
>>昭和25年/1950年8月・家城書房刊『猟銃・脱出・警視総監の笑ひ・浮虜記』所収
>>昭和25年/1950年11月・新潮社/新潮文庫『猟銃・闘牛』所収
>>昭和27年/1952年☆月・河出書房刊『新文学全集 井上靖集』所収
>>昭和29年/1954年5月・大日本雄弁会講談社刊『井上靖作品集 第2巻』所収
>>昭和29年/1954年10月・新潮社/昭和名作選『末裔』所収
>>昭和30年/1955年4月・光文社/カッパ・ブックス『戦後十年名作選集 第1集』所収
>>昭和31年/1956年12月・筑摩書房刊『現代日本文学全集81 永井龍男・井上友一郎・織田作之助・井上靖集』所収
>>昭和32年/1957年☆月・芸文書院刊『現代文学3 井上靖集』所収
>>昭和36年/1961年2月・新潮社刊『井上靖文庫 第20』所収
>>昭和36年/1961年8月・講談社刊『日本現代文学全集102 井上靖・田宮虎彦集』所収
>>昭和39年/1964年11月・中央公論社刊『日本の文学71 井上靖』所収
>>昭和39年/1964年☆月・学習研究社/ガッケン・ブックス『日本青春文学名作選9』所収
>>昭和40年/1965年☆月・集英社刊『井上靖自選集』[特装版]所収
>>昭和41年/1966年1月・講談社刊『われらの文学6 井上靖』所収
>>昭和41年/1966年5月・文藝春秋刊『現代日本文学館43 井上靖』所収
>>昭和41年/1966年7月・集英社刊『日本文学全集83 井上靖』所収
>>昭和44年/1969年1月・新潮社刊『新潮日本文学44 井上靖集』所収
>>昭和44年/1969年4月・筑摩書房刊『現代日本文学大系86 井上靖・永井龍男集』所収
>>昭和45年/1970年1月・人文書院刊『井上靖短篇全集 自選』所収
>>昭和47年/1972年4月・集英社刊『日本文学全集83 井上靖』[豪華版]所収
>>昭和47年/1972年12月・ほるぷ出版刊、図書月販発売『日本名作自選文学館10 猟銃他二十三篇』所収
>>昭和47年/1972年☆月・中央公論社刊『日本の文学71 井上靖』[アイボリーバックス]所収
>>昭和48年/1973年6月・講談社刊『現代の文学12 井上靖』所収
>>昭和49年/1974年1月・新潮社刊『井上靖小説全集1 猟銃・闘牛』所収
>>昭和50年/1975年7月・筑摩書房刊『筑摩現代文学大系70 井上靖集』所収
>>昭和55年/1980年5月・講談社刊『日本現代文学全集102 井上靖・田宮虎彦集』[増補改訂版]所収
>>平成2年/1990年10月・埼玉福祉会/大活字本シリーズ『猟銃・闘牛』所収
>>平成6年/1994年12月・ぎょうせい刊『ふるさと文学館 第26巻 静岡』所収
>>平成7年/1995年4月・新潮社刊『井上靖全集 第1巻』所収
>>平成10年/1998年12月・岩波書店刊『井上靖短篇集 第1巻』所収
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候補者 井上靖 男42歳
選考委員 評価 行数 評言
瀧井孝作
男55歳
17 「猟銃と闘牛と二つ読んでみて、この人は面白く読ませる才人らしい、と分りました。」「新聞小説でも書ける腕達者で、小説らしい形式で行く所に、私は、心からまだ好きではない、段々に好きになれるかもしれない、が今の所まだ、と考えました。」
佐藤春夫
男57歳
40 「他の候補作品を残らず読んで見た上でもその力倆から見て井上に優る人がいるとも思わなかった。」「自分は席上での「猟銃」を採るか「闘牛」をかの意見が出た時、一議なく闘牛説であった。年若な読者でない限り「猟銃」は誰しもあまり好まない作品だと思ったものである。」「闘牛を新聞社内部を描いたものとして見るか、恋愛小説としてみるかという意見も両立する。自分は恋愛小説と見る側である。」「井上は腕達者で作風も常識的ではあるが、飽くまで正直に腕にまかせて人を煙にまいてやろうというようなすれっからしの下劣なものの無いのがよい。作者の人柄であろう。」
石川達三
男44歳
19 「すぐれた才能をもった人だと思う」「一回の委員会では済むまいと思ったが、案外意見が早くまとまった。」「なかなか巧みな技巧のある人で、小説を面白く構成して行く技術をもっている。将来相当の多作濫作にも耐え得る作家だろうと思う。しかしなるべくならば多作はすすめたくない。」
岸田國士
男59歳
7 「「闘牛」(井上靖)は、わが国では珍しい、既に成熟を感じさせる、一個の文学的才能の所産である。常識に富んだ、余情ある巧みな作品がどしどし書ける作家の手腕を示している。」「衆目の見るところ、入選作として、これも、当を得たものである。私も敢て反対する気持はない。」
舟橋聖一
男45歳
17 「井上靖のものが、断然、他を大差に引放し、前回とはうって代って、委員会は、円満裡に、すぐ結論を出した。」「私と丹羽とが、「猟銃」を推し、他の委員は、みな「闘牛」を推した」「「猟銃」の場合、(彩子の遺書)は、蛇足のように思われる。「闘牛」の方には、取り立てて欠点がない。その代り、月並である。」「どうしても、無難で月並作品の方へ、委員たちの目が向いてしまうのではないかしらん。」
丹羽文雄
男45歳
32 「係りから推薦作品を知らせよと電報が来たので、「猟銃」と書いた。」「「闘牛」の推薦は、まあ一番無難だ。(引用者中略)もう完全に出来上った作家だ。何もいうことはない。(引用者中略)が、第二作のこれを読んだ時、正直なところ私は何の驚異も覚えなかった。」「「猟銃」には、往年の石坂洋次郎君の短篇にびっくりさせられたような或るものがあった。ロマンチックな一陣の風を感じたものである。」
宇野浩二
男58歳
21 「新聞に、全委員一致で、井上靖の『闘牛』ときまった、と出ていた。しかし、「全委員一致」はちょっと『まちがい』で、私だけは反対であった。」「なるほど、こんどの数篇の候補作品のなかでは、『うまさ』という点だけでみれば、づぬけていた。ただ、私には、出てくる人物たちが、みな、自分の意志ではなく、作者の『かんがえ』どおりに、思考し、行動しているのが、気になった。大衆小説ふうの興味があり芸術味にかけているのが『いや』であった。」
坂口安吾
男43歳
4 「作者は人間の見方や掴み方には深みも新しさもないが、俗才で人間を処理してゆく手際は巧妙で、なんといっても、大人である。「猟銃」はとらない。「闘牛」の方向にのびる方が、はるかに逞しい作品を書きうるだろう。」
川端康成
男50歳
24 「「闘牛」を推薦した。」「しかし、「闘牛」の推薦に大した感動も冒険もなかった。なんだか常識で片づいてしまったようなあっけなさが残った。」「私には「猟銃」は取れなかった。(引用者中略)しかし「闘牛」を選ぶ支えにはなっていた。」「珍らしい筋の運び、脇役のタイプの扱いに、作者はあざやかな書き方を見せながら、主人公の性格や心理及びその恋愛の書き方に、やはりあざやかなようでいて、実は動揺と晦冥とを残しているのは、かえって作者の未来を約束しているのかもしれない。」
選評出典:『芥川賞全集 第四巻』昭和57年/1982年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和25年/1950年4月号)
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