芥川賞のすべて・のようなもの
第64回
  • =受賞者=
  • 古井由吉
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Last Update[H26]2014/8/20

古井由吉
Furui Yoshikichi
生没年月日【注】 昭和12年/1937年11月19日~
受賞年齢 33歳1ヵ月
経歴 東京府荏原区生まれ。東京大学文学部独文科卒、同大学大学院文学研究科独文学専攻修士課程修了。大学で研究、翻訳などを手がけるかたわら創作を始める。
受賞歴・候補歴
個人全集 『古井由吉作品』全7巻(昭和57年/1982年9月~昭和58年/1983年3月・河出書房新社刊)
芥川賞
選考委員歴
第94回~第132回(通算19.5年・39回)
備考
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えんじん おんな
円陣を 組む 女たち」(『海』昭和44年/1969年8月号)
媒体・作品情報
誌名 「海」  別表記表紙 「文芸総合誌」併記
巻号 第1巻 第3号  別表記8月号
印刷/発行年月日 発行 昭和44年/1969年8月1日
発行者等 編集人 近藤信行 発行人 山越 豊 印刷所 大日本印刷株式会社
発行所 中央公論社(東京都)
総ページ数 252 表記上の枚数 目次 80枚 基本の文字組
(1ページ当り)
31字
×24行
×2段
本文ページ 102~122
(計21頁)
測定枚数 73
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書誌
>>昭和45年/1970年6月・中央公論社刊『円陣を組む女たち』所収
>>昭和45年/1970年☆月・講談社刊『文学選集35 昭和45年版』所収
>>昭和46年/1971年11月・河出書房新社/新鋭作家叢書『古井由吉集』所収
>>昭和49年/1974年3月・中央公論社/中公文庫『円陣を組む女たち』所収
>>昭和55年/1980年4月・講談社/講談社文庫『現代短編名作選9 1969~1973』所収
>>昭和57年/1982年9月・河出書房新社刊『古井由吉作品1』所収
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候補者 古井由吉 男32歳
選考委員 評価 行数 評言
三島由紀夫
男45歳
0  
石川達三
男64歳
6 「密度の高い作品であるが、各節が各々孤立しているようで、少しくばらばらな印象を受けた。」「実力ある作家として、委員のおおかたが認めていたようであった。」
舟橋聖一
男65歳
0  
丹羽文雄
男65歳
6 「(引用者注:新風を)感じた。」「が、「円陣を組む女たち」はいまひとつ構成力に欠けていた。」
井上靖
男62歳
4 「もう一度手を入れたら、しゃれた芸術作品になるだろうと思われた。前半の描写がイメージを形成しないので損をしているが、なかなかの才能である。」
瀧井孝作
男75歳
0  
大岡昇平
男60歳
5 「特異な題材によるメルヘン的な作品である。」「ただ少し題材負けの気味があるように思われた。」
石川淳
男70歳
0  
永井龍男
男65歳
7 「今度の候補作中もっとも興味をそそられた。」「書き出しの円陣の晦渋な描写(あるいは力み)と、結末に近い中年者の独白のあいまいさが、著しく損をしているように、私には思われた。」
中村光夫
男58歳
9 「最後まで残った作品のなかでは、(引用者中略)いいと思いました。」「いい気になって書いているわりに、筆づかいが清潔で、女性にたいする作者の嫌悪乃至は恐怖を、一個の作品化することになかば成功しています。」
川端康成
男70歳
5 「意図、手法に特色も長所も見えるが、成功作、いやな言い方をすれば、芥川賞の当選作とするには、いずれももう一歩、二歩というところがあったようである。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和45年/1970年3月号)
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おとこ まどい
男たちの 円居」(『新潮』昭和45年/1970年5月号)
媒体・作品情報
誌名 「新潮」  別表記表紙 「THE SHINCHO^」併記
巻号 第67巻 第5号  別表記5月号/781号
作品名 別表記 「男たちの圓居」
印刷/発行年月日 発行 昭和45年/1970年5月1日
発行者等 編集兼発行者 酒井健次郎 印刷者 高橋武夫 印刷所 大日本印刷株式会社(東京都)
発行所 株式会社新潮社(東京都)
総ページ数 260 表記上の枚数 基本の文字組
(1ページ当り)
26字
×24行
×2段
本文ページ 141~197
(計57頁)
測定枚数 172
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書誌
>>昭和45年/1970年7月・講談社刊『男たちの円居』所収
>>昭和48年/1973年☆月・講談社/講談社文庫『雪の下の蟹・男たちの円居』所収
>>昭和56年/1981年6月・新潮社刊『新潮現代文学80 古井由吉』所収
>>昭和57年/1982年9月・河出書房新社刊『古井由吉作品1』所収
>>昭和63年/1988年2月・講談社/講談社文芸文庫『雪の下の蟹・男たちの円居』所収
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候補者 古井由吉 男32歳
選考委員 評価 行数 評言
井上靖
男63歳
0  
石川達三
男65歳
0  
三島由紀夫
男45歳
3 「感心した。」「前作よりもよく、粘着力の限りを尽して、見事に書き切っている。」
丹羽文雄
男65歳
0  
舟橋聖一
男65歳
6 「熱の入ったアレゴリーで、私には面白かった。」「執拗でやや退屈な文体を練りあげるが、こういう小説にありがちな作者の一人合点がしめくくりを弱いものにしている。」
大岡昇平
男61歳
8 「私は六〇年安保世代と今の世代の対比のアレゴリイと読んだ。野心的な構図の、知的構成を持った作品で、いつもながら群集のダイナミックな描出にすぐれている。ただ人物の個々の動きがぎごちがないように感じられた。」
川端康成
男71歳
10 「(引用者注:「無明長夜」の次に)選ばれてもいいと思った。」「他の委員たちが挙げるなら、私もそれに従いたいというほどの意味である。」「読後に、鮮明な印象、または感動があざやかに残らないので、特に推挙する自信はなかったのである。」
石川淳
男71歳
10 「三篇(引用者注:「赤い樹木」「男たちの円居」「夢の時間」)を取る。」「この一作だけではなく、ちかごろの仕事をざっと見わたしたところ、(わたしもそうたくさん読んでいるわけではないが)その現在価値に於て、賞を受けて妥当のようである。」
永井龍男
男66歳
2 「力倆は充分認められながら、最後の選には落ちた。」
中村光夫
男59歳
0  
瀧井孝作
男76歳
6 「何か戯画化した小説と見たが、まだ描写の線が生硬で、読み難かった。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和45年/1970年9月号)
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ようこ
杳子」(『文芸』昭和45年/1970年8月号)
媒体・作品情報
誌名 「文芸」
巻号 第9巻 第8号  別表記8月特大号
印刷/発行年月日 発行 昭和45年/1970年8月1日
発行者等 編集者 寺田 博 発行者 中島隆之 印刷者 高橋武夫 印刷所 大日本印刷株式会社(東京都)
発行所 株式会社河出書房新社(東京都)
総ページ数 296 表記上の枚数 表紙・目次 240枚 基本の文字組
(1ページ当り)
26字
×24行
×2段
本文ページ 10~86
(計77頁)
測定枚数 231
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書誌
>>昭和46年/1971年1月・河出書房新社刊『杳子・妻隠』所収
>>『文藝春秋』昭和46年/1971年3月号
>>昭和46年/1971年11月・河出書房新社/新鋭作家叢書『古井由吉集』所収
>>昭和50年/1975年☆月・河出書房新社/河出文芸選書『杳子・妻隠』所収
>>昭和54年/1979年12月・新潮社/新潮文庫『杳子・妻隠』所収
>>昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊『芥川賞全集 第8巻』所収
>>昭和57年/1982年10月・河出書房新社刊『古井由吉作品2』所収
>>昭和62年/1987年9月・小学館刊『昭和文学全集23 吉田健一・福永武彦・丸谷才一・三浦哲郎・古井由吉』所収
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候補者 古井由吉 男33歳
選考委員 評価 行数 評言
瀧井孝作
男76歳
17 「「杳子」は(引用者中略)何か混沌とした、暗い明晰でない、灰色の感じが、この小説の場合には、この灰色の混沌も、小説の色どりと持味になって、密度の濃い、面白いヤヤコシさで、筆の妙味に陶然とさせられた。」「次に同じ作者の「妻隠」を読んで、(引用者中略)明るい明晰で、別人の筆かと思う位に変って居た。これも佳作だが水彩画のような味で、「杳子」は油彩のようなねっとりした味の小説。」「これだけ打込んで描いたのは、大いに褒めてもよいと思った。」
丹羽文雄
男66歳
9 「「杳子」はこの作者の持味が完璧にあらわれている。そのあとで「妻隠」を読んだが、前のあざやかな印象のためにさらに感心した。」「このひとの才能のゆたかさに感心した。「杳子」の世界にとどまるとなると、多少の不安を感じないでもないが、「妻隠」の方向にのびていくとなれば、この作者には洋々たる将来が約束されるような気がする。」
石川達三
男65歳
3 「大部分が古井君を支持していた。古井君の作品に関しては私は異論がある。」
舟橋聖一
男66歳
40 「作者の進境がよく見えた。「妻隠」と「杳子」の二作のどちらを受賞させるかについて、論議がわかれ、一票の差で「杳子」に決った。」「私は「杳子」のほうに票を入れた。これを古井の鉱脈とまでは言わないが、私はこの作品に陶酔したのだ。」「同じことをこんなに重複させて書きながら、退屈させないのは、至難の技であると共に個性的である。そこをよく乗り切っていると思った。」
中村光夫
男59歳
21 「「杳子」よりも、「妻隠」の方がすぐれていると思い、これを当選作として推すつもりでした。」「「杳子」は(引用者中略)主人公の独り合点な抒情が、そのまま作者によって肯定されているようなところが、終りになるほど露骨になります。」「「妻隠」は、(引用者中略)若夫婦の生活の不安、空しさ、甘さなどが、彼らの肉体の曖昧のように、読者の心にやわらかく浸み透ってきます。」
大岡昇平
男61歳
10 「二作(引用者注:「杳子」「妻隠」)では「杳子」の方が、よく書きこまれている。従来この作者の作品は、一本調子にすぎるのが欠点だが、「妻隠」においては、視点の転換、面の交錯が、実にうまく行われている。私はこの方を推したが、むろん「杳子」も授賞の価値は十分である。」「実感派と目されていた委員が、こぞってこの作品(引用者注:「杳子」)を推したのは、興味深かった。」
川端康成
男71歳
25 「古井由吉氏の二作のほかに、取りあげる作品が見られなかった」「文藝春秋社内予選で意見が全く二分したので(引用者注:古井氏の候補だけ)二作をあげたというが、一編とできなかったのは不明断、不見識であろう。」「私は選後に「妻隠」を読んでみたが、印象は「杳子」にくらべて微弱であった。古井氏の以前の候補作(引用者中略)でも、私は作者の才質に興味と好意を感じていたので、「杳子」での当選をよろこぶ。」
永井龍男
男66歳
9 「「杳子」にぎっしり塗り込められた異常心理は、データとしては格別珍しいものではあるまい。」「閉じられた世界の開花は、この作の上では私には見られなかった。そこへ行くと「妻隠」の手練は大したもので、却って老成というような印象をうけた。」
石川淳
男71歳
20 「「杳子」を推す。」「もう一つの「妻隠」のほうは、力がおもうように行きわたらないけはいがする。」「「杳子」は今まですすんで来た道の里程を示す一本の杭のようである。ここから道のけしきがすこしかわって、「妻隠」のほうに出たのだろうか。」「古井君が硬質なことばをもって組みあげるスタイルは、なにかを表現するのではなくて、なにかを突きとめようとするもののごとくである。」
井上靖
男63歳
13 「「杳子」と「妻隠」の二作が光っていましたので、最近では珍しいらくな銓衡になりました。」「「杳子」「妻隠」それぞれに特色ある作品で、どちらが選ばれても異存はありませんが、私の場合は「妻隠」の方を推しました。久しぶりに、作者の計算が行き届いている短篇らしい短篇にぶつかった思いでした。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和46年/1971年3月号)
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つまごみ
妻隠」(『群像』昭和45年/1970年11月号)
媒体・作品情報
誌名 「群像」
巻号 第25巻 第11号  別表記11月号
作品名 別表記 目次 「妻隠(つまごみ)」 本文 ルビ有り「つまごみ」
印刷/発行年月日 印刷 昭和45年/1970年10月5日 発行 昭和45年/1970年11月1日
発行者等 編集人 中島和夫 発行人 斎藤 稔 印刷人 浜田純治 印刷所 豊国印刷株式会社 凸版印刷株式会社
発行所 株式会社講談社(東京都)
総ページ数 260 表記上の枚数 表紙・目次 118枚 基本の文字組
(1ページ当り)
26字
×22行
×2段
本文ページ 48~91
(計44頁)
測定枚数 121
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書誌
>>昭和46年/1971年1月・河出書房新社刊『杳子・妻隠』所収
>>昭和46年/1971年11月・河出書房新社/新鋭作家叢書『古井由吉集』所収
>>昭和46年/1971年6月・講談社刊『文学選集36 昭和46年版』所収
>>昭和47年/1972年11月・講談社刊『現代の文学36 古井由吉・李恢成・丸山健二・高井有一』所収
>>昭和50年/1975年☆月・河出書房新社/河出文芸選書『杳子・妻隠』所収
>>昭和53年/1978年6月・筑摩書房刊『筑摩現代文学大系96 古井由吉・黒井千次・李恢成・後藤明生集』所収
>>昭和54年/1979年12月・新潮社/新潮文庫『杳子・妻隠』所収
>>昭和56年/1981年6月・新潮社刊『新潮現代文学80 古井由吉』所収
>>昭和57年/1982年10月・河出書房新社刊『古井由吉作品2』所収
>>昭和62年/1987年9月・小学館刊『昭和文学全集23 吉田健一・福永武彦・丸谷才一・三浦哲郎・古井由吉』所収
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候補者 古井由吉 男33歳
選考委員 評価 行数 評言
瀧井孝作
男76歳
17 「「杳子」は(引用者中略)何か混沌とした、暗い明晰でない、灰色の感じが、この小説の場合には、この灰色の混沌も、小説の色どりと持味になって、密度の濃い、面白いヤヤコシさで、筆の妙味に陶然とさせられた。」「次に同じ作者の「妻隠」を読んで、(引用者中略)明るい明晰で、別人の筆かと思う位に変って居た。これも佳作だが水彩画のような味で、「杳子」は油彩のようなねっとりした味の小説。」「これだけ打込んで描いたのは、大いに褒めてもよいと思った。」
丹羽文雄
男66歳
9 「「杳子」はこの作者の持味が完璧にあらわれている。そのあとで「妻隠」を読んだが、前のあざやかな印象のためにさらに感心した。」「このひとの才能のゆたかさに感心した。「杳子」の世界にとどまるとなると、多少の不安を感じないでもないが、「妻隠」の方向にのびていくとなれば、この作者には洋々たる将来が約束されるような気がする。」
石川達三
男65歳
3 「大部分が古井君を支持していた。古井君の作品に関しては私は異論がある。」
舟橋聖一
男66歳
40 「作者の進境がよく見えた。「妻隠」と「杳子」の二作のどちらを受賞させるかについて、論議がわかれ、一票の差で「杳子」に決った。」「私は「杳子」のほうに票を入れた。これを古井の鉱脈とまでは言わないが、私はこの作品に陶酔したのだ。」「同じことをこんなに重複させて書きながら、退屈させないのは、至難の技であると共に個性的である。そこをよく乗り切っていると思った。」
中村光夫
男59歳
21 「「杳子」よりも、「妻隠」の方がすぐれていると思い、これを当選作として推すつもりでした。」「「杳子」は(引用者中略)主人公の独り合点な抒情が、そのまま作者によって肯定されているようなところが、終りになるほど露骨になります。」「「妻隠」は、(引用者中略)若夫婦の生活の不安、空しさ、甘さなどが、彼らの肉体の曖昧のように、読者の心にやわらかく浸み透ってきます。」
大岡昇平
男61歳
10 「二作(引用者注:「杳子」「妻隠」)では「杳子」の方が、よく書きこまれている。従来この作者の作品は、一本調子にすぎるのが欠点だが、「妻隠」においては、視点の転換、面の交錯が、実にうまく行われている。私はこの方を推したが、むろん「杳子」も授賞の価値は十分である。」「実感派と目されていた委員が、こぞってこの作品(引用者注:「杳子」)を推したのは、興味深かった。」
川端康成
男71歳
25 「古井由吉氏の二作のほかに、取りあげる作品が見られなかった」「文藝春秋社内予選で意見が全く二分したので(引用者注:古井氏の候補だけ)二作をあげたというが、一編とできなかったのは不明断、不見識であろう。」「私は選後に「妻隠」を読んでみたが、印象は「杳子」にくらべて微弱であった。古井氏の以前の候補作(引用者中略)でも、私は作者の才質に興味と好意を感じていたので、「杳子」での当選をよろこぶ。」
永井龍男
男66歳
9 「「杳子」にぎっしり塗り込められた異常心理は、データとしては格別珍しいものではあるまい。」「閉じられた世界の開花は、この作の上では私には見られなかった。そこへ行くと「妻隠」の手練は大したもので、却って老成というような印象をうけた。」
石川淳
男71歳
20 「「杳子」を推す。」「もう一つの「妻隠」のほうは、力がおもうように行きわたらないけはいがする。」「「杳子」は今まですすんで来た道の里程を示す一本の杭のようである。ここから道のけしきがすこしかわって、「妻隠」のほうに出たのだろうか。」「古井君が硬質なことばをもって組みあげるスタイルは、なにかを表現するのではなくて、なにかを突きとめようとするもののごとくである。」
井上靖
男63歳
13 「「杳子」と「妻隠」の二作が光っていましたので、最近では珍しいらくな銓衡になりました。」「「杳子」「妻隠」それぞれに特色ある作品で、どちらが選ばれても異存はありませんが、私の場合は「妻隠」の方を推しました。久しぶりに、作者の計算が行き届いている短篇らしい短篇にぶつかった思いでした。」
選評出典:『芥川賞全集 第八巻』昭和57年/1982年9月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和46年/1971年3月号)
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