芥川賞のすべて・のようなもの
第6回
  • =受賞者=
  • 火野葦平
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火野葦平
Hino Ashihei
生没年月日【注】 明治39年/1906年12月3日(戸籍上は明治40年/1907年1月25日)~昭和35年/1960年1月24日
受賞年齢 31歳2ヵ月
経歴 本名=玉井勝則。福岡県遠賀郡若松町(現・北九州市)生まれ。早稲田大学英文科中退。昭和9年/1934年、劉寒吉岩下俊作らの同人詩誌『とらんしつと』に参加。日中戦争出征中に芥川賞受賞。従軍記『麦と兵隊』がベストセラーとなる。昭和35年/1960年自殺。
受賞歴・候補歴
  • 第6回芥川賞(昭和12年/1937年下期)「糞尿譚」
  • 朝日賞(昭和14年/1939年度)"戦争文学三部作の完成"
  • 第1回福日文化賞[文学賞](昭和15年/1940年)兵隊三部作
  • |候補| 第3回探偵作家クラブ賞[短編部門](昭和25年/1950年)「亡霊の言葉」
  • |候補| 第5回読売文学賞[小説賞](昭和28年/1953年)「戦争犯罪人」
  • 第16回日本藝術院賞[文芸](昭和34年/1959年度)『革命前後』その他生前の業績
個人全集 『火野葦平選集』全8巻(昭和33年/1958年2月~昭和34年/1959年6月・東京創元社刊)
芥川賞
選考委員歴
第18回~第20回(通算1.5年・3回)
備考
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芥川賞 第6受賞  一覧へ

ふんにょうたん
糞尿譚」(『文學會議』4冊[昭和12年/1937年11月])
媒体・作品情報
誌名 「文學會議」
巻号 第4冊  別表記表紙・扉・目次 「第四册」 背・奥付・裏表紙 「第四冊」
印刷/発行年月日 印刷納本 昭和12年/1937年11月13日 発行 昭和12年/1937年11月18日
発行者等 編輯兼発行人 池上憲介 印刷人 稲本富次 印刷所 稲本印刷所(久留米市)
発行所 文學會議社(久留米市) 発売 金文堂書店
総ページ数 116 表記上の枚数 目次 130枚 基本の文字組
(1ページ当り)
52字
×20行
×1段
本文ページ 65~116
(計52頁)
測定枚数 133
上記のうち紫の太字はブラウザでの表示が困難な異体字(主に正字など)
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書誌
>>『文藝春秋』昭和13年/1938年3月号
>>昭和13年/1938年3月・小山書店刊『糞尿譚』所収
>>昭和15年/1940年8月・新潮社/昭和名作選集『河豚』所収
>>昭和22年/1947年5月・日東出版社刊『糞尿譚』所収
>>昭和23年/1948年☆月・新潮社/新潮文庫『糞尿譚』所収
>>昭和24年/1949年6月・小山書店刊『芥川賞全集 第2巻』所収
>>昭和25年/1950年5月・春陽堂刊『現代長篇小説全集 第5巻 黄金部落・糞尿譚・青春発掘・其他』所収
>>昭和26年/1951年2月・河出書房刊『現代日本小説大系 第51巻 昭和10年代6』所収
>>昭和28年/1953年☆月・筑摩書房/現代日本名作選『青春と泥濘・糞尿譚』所収
>>昭和30年/1955年4月・河出書房刊『現代日本小説大系 第53巻 昭和10年代6』所収
>>昭和30年/1955年11月・筑摩書房刊『現代日本文学全集48 尾崎士郎・石川達三・火野葦平集』所収
>>昭和30年/1955年☆月・角川書店/角川文庫『糞尿譚 他九篇』所収
>>昭和31年/1956年3月・河出書房/河出新書『中国艶笑物語 私版聊斎志異』所収
>>昭和33年/1958年5月・東京創元社刊『火野葦平選集 第1巻』所収
>>昭和35年/1960年6月・新潮社刊『日本文学全集52 火野葦平集』所収
>>昭和40年/1965年4月・現代芸術社刊『芥川賞作品全集 第1巻』所収
>>昭和42年/1967年9月・筑摩書房刊『現代文学大系45 尾崎士郎・火野葦平集』所収
>>昭和43年/1968年6月・中央公論社刊『日本の文学51 尾崎士郎・火野葦平』所収
>>昭和44年/1969年5月・集英社刊『日本文学全集67 火野葦平・田村泰次郎集』所収
>>昭和47年/1972年11月・筑摩書房刊『現代日本文学大系75 石川達三・火野葦平集』所収
>>昭和48年/1973年10月・集英社刊『日本文学全集67 火野葦平・田村泰次郎』[豪華版]所収
>>昭和48年/1973年☆月・中央公論社刊『日本の文学51 尾崎士郎・火野葦平』[アイボリーバックス]所収
>>昭和53年/1978年4月・筑摩書房刊『筑摩現代文学大系46 尾崎士郎・火野葦平集』所収
>>昭和57年/1982年3月・文藝春秋刊『芥川賞全集 第2巻』所収
>>平成9年/1997年6月・講談社/講談社文芸文庫『糞尿譚・河童曼陀羅(抄)』所収
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候補者 火野葦平 男31歳
選考委員 評価 行数 評言
川端康成
男38歳
7 「少し大袈裟に云えば、大旱の雲を望むが如くで、その多少の欠陥は二の次とし、先ず喜んで「糞尿譚」を推した。」「芥川賞としては、火野君を選ぶのが面白いと考えたのである。優劣論ではない。」
久米正雄
男46歳
16 「私は一読、此の作家を目して、「新泡鳴」と呼んだ。」「出征中と云う政治的条件すら、申分無かった。地方の文芸雑誌に載ったのなぞ、更に錦上花を添うるものだった。只此の材料が、通俗的に甘い私には、絶対には受入れ得なかっただけだ、読者も恐らくは、そうだろうと思う。」「強いて材料を、こう云う汚ない所に求めずに、自然と深刻な味を出せたら、相当異色ある作家に、成るに違いないと思う。或いは凄惨な戦場なども、恰好の題目かも知れない。そう云う意味で、思い切って吾々は此の授賞に、双手を挙げて賛成した。」
室生犀星
男48歳
11 「特に未来の文学をひらかせるものでもなく、亦、逞しさや旺盛さもない、凡作のちょっと上くらいのところである。だが、この作品にある物見高い呼声はそっくり物見高いところにまで、二三の委員の黙認のまませり上げられて行ったのである。」「一地方文学雑誌の小説がかくのごとく穏かに認められたということでは、私の好みの小ささを棄てさせ、そして私は諸委員に賛成の意を表したのである。」
横光利一
男39歳
9 「この作には排泄物の処置に絡むいろいろな経済と政治の問題がある。それもただ問題ばかりではない。排泄物という最も人々の厭う悪感を、文章から感ぜしめない独特の新しいスタイルがある。」「ただ遺憾なところは無邪気を装い、烈しさを敢行した傾跡の見える乱暴さのあることだが、しかし、それも今は人々は赦すだろう。」
佐藤春夫
男45歳
16 「いかにも骨組の逞しい力のある作である。」「しかし、久米氏が推賞しながらも「お座敷へ出せる品物だろうか(原文傍点)」と一応躊躇するのも至極同感な節がある。気の弱い人間にはまともに凝視出来ない文字がところどころある。」「当選は「どうかと思う」のであったが、大勢が決して地方の同人文芸雑誌から文字通りの新人を抜擢することの有意義を考えると、美に対する既成観念などは吹っ飛ばされて、先刻の躊躇を引っこまして異議なしとする。」
瀧井孝作
男43歳
17 「火野葦平と云う人の作品は、今回はじめてで、山芋、河豚、糞尿譚と三篇読んでみた。三篇読んで、今回の芥川賞の候補者のねうちはあると思った。」「此の端倪できない程の変った素材を駆使する点、面白い作家だが、只行文が未だお話の程度で創作の域に至らない憾があった。筆が力強くなれば勿論並々でない大物だろうと思われた。」
宇野浩二
男46歳
87 「題名だけで当て推量して、敬遠して、読まない人があったなら、その人は文学の神に見放されるであろう。それ程この小説が傑作であると云うのではないが、老いも若きも、この小説を読んで、損をした気にならぬであろう、という程の意味である。」「一口に云うと、構想も手法も、大胆不敵の如くに見えて、実は可なり小心で細かい気配りの行きとどいている小説である。」「『糞尿譚』の善さはそういう所だけでなく、(引用者中略)主人公が、正義派の如くなったり、頽廃派の如くなったり、人情家の如くなったり、その他、色々するところ、誠にえたい(原文傍点)の知れないところにある。」
小島政二郎
男44歳
12 「実に意外な掘出物をした感じで読んだ。実に不敵な作家である。この作品に於ける作者の心の置きどころの丁度よさ加減が、得も云えぬ魅力の発光体となっていると思う。」「この作で若し難があるとすれば、初めの二三頁の語り出しであろう。欲を云えば、温泉場のおせいと云う女の描写が稍精彩を欠いている恨みがある。」
佐佐木茂索
男43歳
8 「詩集「山上軍艦」を見たとき、此著者は嫌なところを、沢山持っている男じゃなかろうかと――或は鼻もちならぬ処のある男じゃなかろうかと、失礼乍らそう思いあまり読まなかった。しかし「糞尿譚」の作者として現れた火野氏には、そういうものとは寧ろ反対なものを感じた。戦地から帰ったあとに期待は大きい。」「此作者に注意を向けさせた鶴田知也君に感謝する。」
菊池寛
男49歳
  「無名の新進作家に贈り得たことは、芥川賞創設の主旨にも適し、我々としても欣快であった。作品も、題は汚らしいが、手法雄健でしかも割合に味が細く、一脈の哀感を蔵し、整然たる描写といい、立派なものである。しかも、作者が出征中であるなどは、興行価値百パーセントで、近来やや精彩を欠いていた芥川賞の単調を救い得て十分であった。この作品を、委員会に推薦してくれたやはり芥川賞の鶴田知也君に改めて感謝する。」「我々は火野君から、的確に新しい戦争文学を期待してもいいのではないかと思う。」
選評出典:『芥川賞全集 第二巻』昭和57年/1982年3月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和13年/1938年3月号)
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芥川賞 第6回参考作品  一覧へ

やまいも
山芋」(『文學會議』2冊[昭和12年/1937年6月])
媒体・作品情報
測定媒体 昭和13年/1938年3月・小山書店刊『糞尿譚』
印刷/発行年月日 印刷 昭和13年/1938年3月10日 発行 昭和13年/1938年3月17日
発行者等 発行者 小山久二 印刷者 北川武之輔(細川活版所)(東京市)
発行所 小山書店(東京市)
装幀/装画等 装幀 柳喜兵衞 扉繪 中山省三
総ページ数 319 表記上の枚数 基本の文字組
(1ページ当り)
33字
×11行
×1段
本文ページ 213~262
(計50頁)
測定枚数 41
上記のうち紫の太字はブラウザでの表示が困難な異体字(主に正字など)
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書誌
>>昭和13年/1938年3月・小山書店刊『糞尿譚』所収
>>昭和15年/1940年8月・新潮社/昭和名作選集『河豚』所収
>>昭和22年/1947年5月・日東出版社刊『糞尿譚』所収
>>昭和33年/1958年5月・東京創元社刊『火野葦平選集 第1巻』所収
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候補者 火野葦平 男31歳
選考委員 評価 行数 評言
川端康成
男38歳
7 「少し大袈裟に云えば、大旱の雲を望むが如くで、その多少の欠陥は二の次とし、先ず喜んで「糞尿譚」を推した。」「芥川賞としては、火野君を選ぶのが面白いと考えたのである。優劣論ではない。」
久米正雄
男46歳
16 「私は一読、此の作家を目して、「新泡鳴」と呼んだ。」「出征中と云う政治的条件すら、申分無かった。地方の文芸雑誌に載ったのなぞ、更に錦上花を添うるものだった。只此の材料が、通俗的に甘い私には、絶対には受入れ得なかっただけだ、読者も恐らくは、そうだろうと思う。」「強いて材料を、こう云う汚ない所に求めずに、自然と深刻な味を出せたら、相当異色ある作家に、成るに違いないと思う。或いは凄惨な戦場なども、恰好の題目かも知れない。そう云う意味で、思い切って吾々は此の授賞に、双手を挙げて賛成した。」
室生犀星
男48歳
11 「特に未来の文学をひらかせるものでもなく、亦、逞しさや旺盛さもない、凡作のちょっと上くらいのところである。だが、この作品にある物見高い呼声はそっくり物見高いところにまで、二三の委員の黙認のまませり上げられて行ったのである。」「一地方文学雑誌の小説がかくのごとく穏かに認められたということでは、私の好みの小ささを棄てさせ、そして私は諸委員に賛成の意を表したのである。」
横光利一
男39歳
9 「この作には排泄物の処置に絡むいろいろな経済と政治の問題がある。それもただ問題ばかりではない。排泄物という最も人々の厭う悪感を、文章から感ぜしめない独特の新しいスタイルがある。」「ただ遺憾なところは無邪気を装い、烈しさを敢行した傾跡の見える乱暴さのあることだが、しかし、それも今は人々は赦すだろう。」
佐藤春夫
男45歳
16 「いかにも骨組の逞しい力のある作である。」「しかし、久米氏が推賞しながらも「お座敷へ出せる品物だろうか(原文傍点)」と一応躊躇するのも至極同感な節がある。気の弱い人間にはまともに凝視出来ない文字がところどころある。」「当選は「どうかと思う」のであったが、大勢が決して地方の同人文芸雑誌から文字通りの新人を抜擢することの有意義を考えると、美に対する既成観念などは吹っ飛ばされて、先刻の躊躇を引っこまして異議なしとする。」
瀧井孝作
男43歳
17 「火野葦平と云う人の作品は、今回はじめてで、山芋、河豚、糞尿譚と三篇読んでみた。三篇読んで、今回の芥川賞の候補者のねうちはあると思った。」「此の端倪できない程の変った素材を駆使する点、面白い作家だが、只行文が未だお話の程度で創作の域に至らない憾があった。筆が力強くなれば勿論並々でない大物だろうと思われた。」
宇野浩二
男46歳
87 「題名だけで当て推量して、敬遠して、読まない人があったなら、その人は文学の神に見放されるであろう。それ程この小説が傑作であると云うのではないが、老いも若きも、この小説を読んで、損をした気にならぬであろう、という程の意味である。」「一口に云うと、構想も手法も、大胆不敵の如くに見えて、実は可なり小心で細かい気配りの行きとどいている小説である。」「『糞尿譚』の善さはそういう所だけでなく、(引用者中略)主人公が、正義派の如くなったり、頽廃派の如くなったり、人情家の如くなったり、その他、色々するところ、誠にえたい(原文傍点)の知れないところにある。」
小島政二郎
男44歳
12 「実に意外な掘出物をした感じで読んだ。実に不敵な作家である。この作品に於ける作者の心の置きどころの丁度よさ加減が、得も云えぬ魅力の発光体となっていると思う。」「この作で若し難があるとすれば、初めの二三頁の語り出しであろう。欲を云えば、温泉場のおせいと云う女の描写が稍精彩を欠いている恨みがある。」
佐佐木茂索
男43歳
8 「詩集「山上軍艦」を見たとき、此著者は嫌なところを、沢山持っている男じゃなかろうかと――或は鼻もちならぬ処のある男じゃなかろうかと、失礼乍らそう思いあまり読まなかった。しかし「糞尿譚」の作者として現れた火野氏には、そういうものとは寧ろ反対なものを感じた。戦地から帰ったあとに期待は大きい。」「此作者に注意を向けさせた鶴田知也君に感謝する。」
菊池寛
男49歳
  「無名の新進作家に贈り得たことは、芥川賞創設の主旨にも適し、我々としても欣快であった。作品も、題は汚らしいが、手法雄健でしかも割合に味が細く、一脈の哀感を蔵し、整然たる描写といい、立派なものである。しかも、作者が出征中であるなどは、興行価値百パーセントで、近来やや精彩を欠いていた芥川賞の単調を救い得て十分であった。この作品を、委員会に推薦してくれたやはり芥川賞の鶴田知也君に改めて感謝する。」「我々は火野君から、的確に新しい戦争文学を期待してもいいのではないかと思う。」
選評出典:『芥川賞全集 第二巻』昭和57年/1982年3月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和13年/1938年3月号)
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芥川賞 第6回参考作品  一覧へ

ふぐ
河豚」(『文學會議』3冊[昭和12年/1937年8月])
媒体・作品情報
測定媒体 昭和13年/1938年3月・小山書店刊『糞尿譚』
印刷/発行年月日 印刷 昭和13年/1938年3月10日 発行 昭和13年/1938年3月17日
発行者等 発行者 小山久二 印刷者 北川武之輔(細川活版所)(東京市)
発行所 小山書店(東京市)
装幀/装画等 装幀 柳喜兵衞 扉繪 中山省三
総ページ数 319 表記上の枚数 基本の文字組
(1ページ当り)
33字
×11行
×1段
本文ページ 149~211
(計63頁)
測定枚数 53
上記のうち紫の太字はブラウザでの表示が困難な異体字(主に正字など)
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書誌
>>昭和13年/1938年3月・小山書店刊『糞尿譚』所収
>>昭和13年/1938年10月・新潮社刊『日本小説代表作全集 第1 昭和13年・前半期』所収
>>昭和15年/1940年8月・新潮社/昭和名作選集『河豚』所収
>>昭和22年/1947年5月・日東出版社刊『糞尿譚』所収
>>昭和33年/1958年5月・東京創元社刊『火野葦平選集 第1巻』所収
>>昭和45年/1970年3月・筑摩書房刊『日本短篇文学全集 第43巻 石川達三・火野葦平・松本清張・きだみのる』所収
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候補者 火野葦平 男31歳
選考委員 評価 行数 評言
川端康成
男38歳
7 「少し大袈裟に云えば、大旱の雲を望むが如くで、その多少の欠陥は二の次とし、先ず喜んで「糞尿譚」を推した。」「芥川賞としては、火野君を選ぶのが面白いと考えたのである。優劣論ではない。」
久米正雄
男46歳
16 「私は一読、此の作家を目して、「新泡鳴」と呼んだ。」「出征中と云う政治的条件すら、申分無かった。地方の文芸雑誌に載ったのなぞ、更に錦上花を添うるものだった。只此の材料が、通俗的に甘い私には、絶対には受入れ得なかっただけだ、読者も恐らくは、そうだろうと思う。」「強いて材料を、こう云う汚ない所に求めずに、自然と深刻な味を出せたら、相当異色ある作家に、成るに違いないと思う。或いは凄惨な戦場なども、恰好の題目かも知れない。そう云う意味で、思い切って吾々は此の授賞に、双手を挙げて賛成した。」
室生犀星
男48歳
11 「特に未来の文学をひらかせるものでもなく、亦、逞しさや旺盛さもない、凡作のちょっと上くらいのところである。だが、この作品にある物見高い呼声はそっくり物見高いところにまで、二三の委員の黙認のまませり上げられて行ったのである。」「一地方文学雑誌の小説がかくのごとく穏かに認められたということでは、私の好みの小ささを棄てさせ、そして私は諸委員に賛成の意を表したのである。」
横光利一
男39歳
9 「この作には排泄物の処置に絡むいろいろな経済と政治の問題がある。それもただ問題ばかりではない。排泄物という最も人々の厭う悪感を、文章から感ぜしめない独特の新しいスタイルがある。」「ただ遺憾なところは無邪気を装い、烈しさを敢行した傾跡の見える乱暴さのあることだが、しかし、それも今は人々は赦すだろう。」
佐藤春夫
男45歳
16 「いかにも骨組の逞しい力のある作である。」「しかし、久米氏が推賞しながらも「お座敷へ出せる品物だろうか(原文傍点)」と一応躊躇するのも至極同感な節がある。気の弱い人間にはまともに凝視出来ない文字がところどころある。」「当選は「どうかと思う」のであったが、大勢が決して地方の同人文芸雑誌から文字通りの新人を抜擢することの有意義を考えると、美に対する既成観念などは吹っ飛ばされて、先刻の躊躇を引っこまして異議なしとする。」
瀧井孝作
男43歳
17 「火野葦平と云う人の作品は、今回はじめてで、山芋、河豚、糞尿譚と三篇読んでみた。三篇読んで、今回の芥川賞の候補者のねうちはあると思った。」「此の端倪できない程の変った素材を駆使する点、面白い作家だが、只行文が未だお話の程度で創作の域に至らない憾があった。筆が力強くなれば勿論並々でない大物だろうと思われた。」
宇野浩二
男46歳
87 「題名だけで当て推量して、敬遠して、読まない人があったなら、その人は文学の神に見放されるであろう。それ程この小説が傑作であると云うのではないが、老いも若きも、この小説を読んで、損をした気にならぬであろう、という程の意味である。」「一口に云うと、構想も手法も、大胆不敵の如くに見えて、実は可なり小心で細かい気配りの行きとどいている小説である。」「『糞尿譚』の善さはそういう所だけでなく、(引用者中略)主人公が、正義派の如くなったり、頽廃派の如くなったり、人情家の如くなったり、その他、色々するところ、誠にえたい(原文傍点)の知れないところにある。」
小島政二郎
男44歳
12 「実に意外な掘出物をした感じで読んだ。実に不敵な作家である。この作品に於ける作者の心の置きどころの丁度よさ加減が、得も云えぬ魅力の発光体となっていると思う。」「この作で若し難があるとすれば、初めの二三頁の語り出しであろう。欲を云えば、温泉場のおせいと云う女の描写が稍精彩を欠いている恨みがある。」
佐佐木茂索
男43歳
8 「詩集「山上軍艦」を見たとき、此著者は嫌なところを、沢山持っている男じゃなかろうかと――或は鼻もちならぬ処のある男じゃなかろうかと、失礼乍らそう思いあまり読まなかった。しかし「糞尿譚」の作者として現れた火野氏には、そういうものとは寧ろ反対なものを感じた。戦地から帰ったあとに期待は大きい。」「此作者に注意を向けさせた鶴田知也君に感謝する。」
菊池寛
男49歳
  「無名の新進作家に贈り得たことは、芥川賞創設の主旨にも適し、我々としても欣快であった。作品も、題は汚らしいが、手法雄健でしかも割合に味が細く、一脈の哀感を蔵し、整然たる描写といい、立派なものである。しかも、作者が出征中であるなどは、興行価値百パーセントで、近来やや精彩を欠いていた芥川賞の単調を救い得て十分であった。この作品を、委員会に推薦してくれたやはり芥川賞の鶴田知也君に改めて感謝する。」「我々は火野君から、的確に新しい戦争文学を期待してもいいのではないかと思う。」
選評出典:『芥川賞全集 第二巻』昭和57年/1982年3月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和13年/1938年3月号)
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