芥川賞のすべて・のようなもの
選評の概要
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Last Update[H26]2014/6/20

田久保英夫
Takubo Hideo
生没年月日【注】 昭和3年/1928年1月25日~平成13年/2001年4月14日
在任期間 第94回~第124回(通算15.5年・31回)
在任年齢 57歳11ヶ月~72歳11ヶ月
経歴 旧名義=塩野俊彦。東京市浅草区生まれ。慶應義塾大学文学部仏文科卒。山川方夫らと第二次・第三次『三田文学』に参加。
受賞歴・候補歴
芥川賞候補歴 第46回候補 「解禁」(『新潮』昭和36年/1961年8月号)
第47回候補 「睡蓮」(『文學界』昭和37年/1962年5月号)
第48回候補 「奢りの春」(『文學界』昭和37年/1962年12月号)
第61回受賞 「深い河」(『新潮』昭和44年/1969年6月号)
備考
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下記の選評の概要には、評価として◎か○をつけたもの(見方・注意点を参照)、または受賞作に対するもののみ抜粋しました。さらにくわしい情報は、各回の「この回の全概要」をクリックしてご覧ください。

芥川賞 94 昭和60年/1985年下半期   一覧へ
選評の概要 四つの作品 総行数33 (1行=26字)
選考委員 田久保英夫 男57歳
候補 評価 行数 評言
女55歳
10 「頭一つほど抜いているのではないか、と思っていた。」「私たちの生半可な西欧への観念や理解に、重いひび割れを起す力を持っている。ただ小説が容易に動き出さず、姑や小姑への女の感情が、ときにナマすぎる欠点もいなめない。」
  「初めて選考の場に加わって、すべてを新鮮に感じた。」
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和61年/1986年3月号)
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芥川賞 95 昭和61年/1986年上半期   一覧へ
選評の概要 心のこり 総行数31 (1行=26字)
選考委員 田久保英夫 男58歳
候補 評価 行数 評言
  「何とか当選に価するよいものを、見つけ出そうと懸命になった。」「私は以前の選考のことはわからないが、今までこれほど何度も議論し、決をとったことはあまりなかったのではないか、と思う。」
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和61年/1986年9月号)
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芥川賞 96 昭和61年/1986年下半期   一覧へ
選評の概要 「苺」を推す 総行数30 (1行=26字)
選考委員 田久保英夫 男58歳
候補 評価 行数 評言
新井満
男40歳
15 「今回の候補作品を読んでいて、「苺」に出あった時、ほっとした。」「人の生命は、知らぬまに纜をとかれた帆船のようなものだ。(引用者中略)これはその白い帆に当る見えない大きな力を、風の気配や鐘の音など、小説的な点景のなかに表現している。」「吉行氏の影響が色濃く、シオランの言葉やワイエスの絵にやや依存しすぎている。しかし、私はからくも賞の水準をクリアしたと思ったし、比較の上では最高点をえたが、残念ながら、ほかの委員の方々の賛同をえられなかった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和62年/1987年3月号)
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芥川賞 97 昭和62年/1987年上半期   一覧へ
選評の概要 熱い時間 総行数34 (1行=26字)
選考委員 田久保英夫 男59歳
候補 評価 行数 評言
女42歳
16 「十七歳の娘の眼を通した筆致と意図がうまく融け合って、自然のうちに血縁という不思議な〈煮鍋〉の光景を現出している。」「不気味さもあり、ユーモアもある。祖母と娘が風呂に入る情景、「心中」した二本の杉が髪のように葉をからみ合わせる描写など、まことに鮮かだ。」「ただ全体に文章がゆるみ気味で、最後に理に落ちそうな危険はあるが、今後この女流がどんな特異な世界を展開してくれるか、たのしみである。」
新井満
男41歳
15 「(引用者注:「鍋の中」が受賞するなら)同時授賞でいい、と私は思った。しかし、この作品は前回の「苺」ほど、すっきりと仕上っていない。」「しかし、この作者には日常のなかで不可視なもの、耳に聴えぬものながら、人間の生活の源泉を支えるものへの鋭敏な感受性と、それを小説に表現しようとする力業があり、それを認めたいと思う。」
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和62年/1987年9月号)
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芥川賞 98 昭和62年/1987年下半期   一覧へ
選評の概要 二つのベクトル 総行数31 (1行=26字)
選考委員 田久保英夫 男59歳
候補 評価 行数 評言
男42歳
20 「(引用者注:「長男の出家」と)共に捨てがたい思いでいた。」「魅力は、星のような自分の外の世界と、内部の世界が呼応する詩的な感覚を保ちながら、染色工場の作業や、大きな屋敷の中で株の売買をする現実的な生活も、かなり生なましく描きえていることだ。」「欠点も、読みおえると許せる気持がしてしまうのは、不思議な資質だ。」
男57歳
16 「(引用者注:「スティル・ライフ」と)共に捨てがたい思いでいた。」「宗教と家庭生活という今日、もう一つのベクトルで、もっとも切実な主題を扱っている。」「出家後の息子が、あまりにきちんと修行僧になりすぎて、この思春期にはまだ人間臭い破綻も出るのでは、という気がするし、住職の老尼の禅僧としての境地と、寺の旺盛な経営とのつながりなど、疑問もあるが、妻や子との周到な距離のとり方が、それを補っている。」
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和63年/1988年3月号)
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芥川賞 99 昭和63年/1988年上半期   一覧へ
選評の概要 ある真価 総行数34 (1行=26字)
選考委員 田久保英夫 男60歳
候補 評価 行数 評言
男42歳
20 「問題は前作の「ヴェクサシオン」より、出来栄えがやや落ちることにある。」「今回はずいぶん考えた末に一票を投じた。最初の男主人公の状況設定や、それに配する圭子という女も、あまり巧く描けていない。」「しかし、おそらくこの作者の真価は、一見軽そうな野暮にあるので、そうした執拗な追求力は、「苺」以来変っていない。」「イメージの喚起力を持つ文章と、それへの工夫や労苦を持続するのは、並なみのことではない。」
  「よく言われることだが、賞には運不運があるらしい。候補のなかに際立っていい作品があれば、相当の水準の作でも落ちることがあるし、強力な作品がなければ、微妙な比較上の評価できまることもある。」
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和63年/1988年9月号)
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芥川賞 100 昭和63年/1988年下半期   一覧へ
選評の概要 三つの作品 総行数34 (1行=26字)
選考委員 田久保英夫 男60歳
候補 評価 行数 評言
大岡玲
男30歳
6 「最も新鮮な魅力を感じた。」「文章は荒いが、作者にはテーゼから反措定へと働く徹底した内的な運動力があり、都市や海中を描く感性もゆたかだ。私はこういう作こそ、百回目の冒険に、と推したが、ほとんど賛同は得られなかった。」
男37歳
12 「私は何より癌を病む米国人宣教師マイクと、主人公の父親松吉との交流に惹かれた。」「カリフォルニアの留学から戻った農家の娘や、看護士をつとめる主人公の妻の死の経緯など、いくつか描き方に隙間があるが、私はこの作者の生と死を貫く垂直な視線に、一票を入れた。」
女33歳
11 「異国間の血と文化の問題を、言葉の「音(ルビ:おん)」と息づきからとらえた感覚はまことに鮮かだ。」「この主題は政治の局面ぬきで、全民族の視野を含めて描くべきではないか、という疑問が残る。また由煕と「私」は、作者という一人の存在の分身の趣きがつよく、その結果、意図が鮮明に、露骨に出るわりに、人物の肉づけは薄い。」
  「八編の候補作はボリュームたっぷりの力編が多く、容易に優劣がつけにくかった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十四巻』平成1年/1989年5月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成1年/1989年3月号)
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芥川賞 101 平成1年/1989年上半期   一覧へ
選評の概要 時間をかけて 総行数34 (1行=24字)
選考委員 田久保英夫 男61歳
候補 評価 行数 評言
大岡玲
男30歳
15 「とくに注目した。」「私は一票をいれた。前作の荒っぽいなかに見えた思考の生動力、イメージの鮮鋭さは、この作にもあり、文章はなお柔軟になっている。」「現代の〈寺〉と〈広告〉という背反したものの間に、虚点のように身をおき、行動する〈ぼく〉、それは大乗的な理念の肉づけされた運動さながら興味深いが、しかし後半、廃棄物処理場や反対運動と背景が拡がるにつれ、虚構が浮き出し、「御前」や「ぼく」の肉づけが薄くなった。」
  「今回はかなり票が割れた。それが時間のかかった理由の一つだろう。」
選評出典:『芥川賞全集 第十五巻』平成14年/2002年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成1年/1989年9月号)
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芥川賞 102 平成1年/1989年下半期   一覧へ
選評の概要 質が揃う 総行数36 (1行=24字)
選考委員 田久保英夫 男61歳
候補 評価 行数 評言
男31歳
14 「私は(引用者中略)結局大岡氏と荻野さんの作品に絞った。」「コンピューターやサブリミナルテープを通して、徹底した知能犯的な意識で、裏側から人間支配を企む男を、その観察者・同伴者の友人の眼で追っている。」「これは現代生活に潜む切実な主題でもあって、それに執拗にとりくむ力業に、私は注目した。」
荻野アンナ
女33歳
13 「私は(引用者中略)結局大岡氏と荻野さんの作品に絞った。」「かなりの才筆だが、何よりこの作品の魅力は、フランス人の男と旅行する情景のような女性らしい濃い感覚と、果敢な言葉の駆動力だろう。」
女50歳
10 「軽やかで抑えた筆が血縁や人間のかかわりの陰影を捉えている。もう一歩内へ踏みこめば、その造型が毀れかねない手前で、支えているのが巧い。またこの自然な巧さが、今後の不安でもある。」
  「今回の候補作は、全体に質が揃っていた。」
選評出典:『芥川賞全集 第十五巻』平成14年/2002年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成2年/1990年3月号)
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芥川賞 103 平成2年/1990年上半期   一覧へ
選評の概要 異空間への招き 総行数35 (1行=24字)
選考委員 田久保英夫 男62歳
候補 評価 行数 評言
男44歳
16 「陶淵明の〈桃源郷〉を思わせる土地と、主人公の郷里岐阜の揖斐川に近い山村を重ねたところが、独創的だ。」「この作品のよさは、(引用者中略)現実の様相の下にも、千年以上も前から人が夢み、求めた桃源郷のような異空間が、たえず働きかけてくることに、眼を注いでいる点だ。」「後半ストーリーの展開に追われ、やや長すぎるとは思うが、私はこの作者の果敢な表現への執心にひかれた。」
小川洋子
女28歳
20 「作中では彼ら(引用者注:K君と、一緒に暮す女)が死んでいるとは、ひと言も書いてない。」「これはおそらく作者の意図でもあり、悪くないのだが、しかし、この世界と異界を二重露出するには、何かもう一手、技術的な配慮がいる。」「とは言っても、(引用者中略)作者のこれまで一貫して追ってきた主題(引用者中略)が最もいい形で表現されている。私は「村の名前」と同時受賞と、考えていた」
  「今回はほとんどの作品が、密度の濃い論議を呼んだ。それだけ一長一短、力が籠っていたのだろう。」
選評出典:『芥川賞全集 第十五巻』平成14年/2002年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成2年/1990年9月号)
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芥川賞 104 平成2年/1990年下半期   一覧へ
選評の概要 女の身体感覚 総行数35 (1行=24字)
選考委員 田久保英夫 男62歳
候補 評価 行数 評言
女28歳
16 「ほぼ予期通り、(引用者中略)受賞した。これまでの作にも、女性の身体や食べることへの鋭敏な感覚が目立ったが、今度の作品では殊にそれがよく機能している。」「何より出産する姉と、まだ未経験の妹との女だけの感じ合う世界が、色濃い相互性で描かれ、ひきこむ力がある。」
選評出典:『芥川賞全集 第十五巻』平成14年/2002年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成3年/1991年3月号)
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芥川賞 105 平成3年/1991年上半期   一覧へ
選評の概要 覚醒と眠りの間 総行数36 (1行=24字)
選考委員 田久保英夫 男63歳
候補 評価 行数 評言
男46歳
16 「人の一生の半分は睡眠の時間だ、というが、これはそういう時間の量だけでなく、質にまで踏みこんで、日常の覚醒時を、睡眠時より優位におく通念の世界をひっくり返している。」「オノマトペが多すぎるのか、文章を平易にしているようでいて煩雑にし、守衛の一人が死にかける情景なども、終りのための終りで、うまく主題をいかしていないが、それでは私はこの独特の着想と、小説的なとらえ方に一票を入れた。」
女34歳
13 「以前の候補作「ドアを閉めるな」の方がいい、と思った。」「「嘘」と「実」の変転は、うまく女の生きる像に一つの焦点を結んでこない。私たちの「背負い水」は生命維持に不可欠なものだが、「わたし」にとってジュリーとの間がそうであるにしては、裕さんに興味を持ったり、カンノと性的関係を持ったりしすぎる。」
  「今回はことにむずかしい選考だった。これが今日の文学の状況なのかも知れない。ずいぶん時間がかかり、辛くも二作受賞となった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十五巻』平成14年/2002年4月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成3年/1991年9月号)
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芥川賞 106 平成3年/1991年下半期   一覧へ
選評の概要 人と鉱物の間 総行数38 (1行=24字)
選考委員 田久保英夫 男63歳
候補 評価 行数 評言
女30歳
19 「やや抜け出ていると思っていたが、実際も終始、評価点がほかの作より高かった。」「女子学生の乾いた生活感覚と心の痛みを描いて、まことに鮮度のいい小説的感性を見せている。」「最後にそれ(引用者注:痛み)を癒すため、夜大学の図書館の石柱の下に眠りを求めて行く情景は、古代ギリシャの医療の神の神殿と二重映しにして、とにかく難しい結末を乗り切り、まるで夜想曲のアンダンテの響きを聞く思いがする。」
選評出典:『芥川賞全集 第十六巻』平成14年/2002年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成4年/1992年3月号)
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芥川賞 107 平成4年/1992年上半期   一覧へ
選評の概要 レールの彼方 総行数39 (1行=24字)
選考委員 田久保英夫 男64歳
候補 評価 行数 評言
男36歳
28 「今日の小説表現の世界で、いささか間隙をつかれるような思いがした。」「彼(引用者注:主人公の運転士)が地上から地下へ光と闇の間を走行するうち、そうした具体そのものの生活が、しだいに奥行も拡がりもある抽象の気配を帯びてくる。これは現代小説の当面する写実と抽象との間に、今まであまり眼をむけなかったような橋を架ける試みだ。」「作家としてはまだ未知数で、冒険の気味はあるが、それでも芥川賞はこういう新人にふさわしい、と思う。」
選評出典:『芥川賞全集 第十六巻』平成14年/2002年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成4年/1992年9月号)
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芥川賞 108 平成4年/1992年下半期   一覧へ
選評の概要 該当作なし 総行数38 (1行=24字)
選考委員 田久保英夫 男64歳
候補 評価 行数 評言
女32歳
17 「言葉の小さな槌で、読み手の通念を一つ一つ壊していくような小説である。それはときには快く、ときには不快にも思える。」「これほど「変身」し、無限定なのは、ほとんど恣意と変らないのではないか。」「しかし、ラストに突然、「犬」のような性癖を持った太郎と、ゲイのような男が旅立ち、女塾教師と風変りな女生徒が土地を去るあたりは、ただ単に話のおわり方とみても型どおり、人物の関係づけも安易に思える。」
  「私は今回、受賞作が出なくてもやむをえない、と思っていた。」
選評出典:『芥川賞全集 第十六巻』平成14年/2002年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成5年/1993年3月号)
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芥川賞 109 平成5年/1993年上半期   一覧へ
選評の概要 作品への考え 総行数35 (1行=24字)
選考委員 田久保英夫 男65歳
候補 評価 行数 評言
男36歳
13 「終章近くでは、妻が「回復するために力を尽くすのが、何にも増して値打ちのあることだとまでは思わないわね」と言うほど、人間の意識へのぎりぎりの問いが、発せられている。私は当選が出れば、この作しかないと思ったが、資料や取材を駆使する表現方法のせいか、人物たちと作者の間に、一抹の隙間風があるようで、疑問も残った。」
  「今回は相当割れて、難航するのではないか、と思っていたが、意外に(引用者注:「寂寥郊野」)一作に点が集まり、順調にきまった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十六巻』平成14年/2002年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成5年/1993年9月号)
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芥川賞 110 平成5年/1993年下半期   一覧へ
選評の概要 小さなメス 総行数32 (1行=24字)
選考委員 田久保英夫 男65歳
候補 評価 行数 評言
石黒達昌
男32歳
23 「スリリングなのは、明寺がハネネズミは「永遠に近い寿命を持つが、生殖と死が同時」など、さまざまな仮説を立て、それを検証していく経過だ。」「ここにはハネネズミの死滅が、外からの感染症なのか、内からの生態系なのか、という問いがあって、冒頭の明寺と榊原の「急逝」という言葉に、現代文明の恐怖に通じるメッセージも、潜んでいるように思われる。人物写真の挿入など、作者のプレイのしすぎもあるが、私はこれを推した。」
男37歳
5 「候補四回目の実績や能力が、認められたといえよう。」「今度の作品は、言葉の過剰な使い方、何人も殺し殺される話のつくりすぎ、反面で中心の殺人事件の曖昧さなど、私にはうけ入れかねた。」
  「今回はいろいろな面で、小さなメスの刃さきを、受け手の私自身つきつけられるような思いがした。」
選評出典:『芥川賞全集 第十六巻』平成14年/2002年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成6年/1994年3月号)
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芥川賞 111 平成6年/1994年上半期   一覧へ
選評の概要 二つの作品 総行数40 (1行=24字)
選考委員 田久保英夫 男66歳
候補 評価 行数 評言
女38歳
18 「語り口に、とぼけた味のあるユーモアが漂い、虚と実のあわいのような世界に、自然に誘いこまれる。」「過去、現在、未来がぬるりと浸し合う存在の描出は、巧みだが、作品の力は前回の「二百回忌」の方がつよいと思う。この夢と現実を支える主体の意識が、根底で曖昧なのだ。」「私はつくづく考えた結果、(引用者中略)次作を待とう、と判断した。」
男39歳
22 「魅力的な主題である。」「ことに面白いのは、「コリャード懺悔録」と啄木の「ローマ字日記」の性的叙述を対照し、告解をうける神父と、男の体に馴れきった娼婦を重ねるところだろう。」「しかし反面で、こうした文献的な道具立てが多すぎる。」「私はつくづく考えた結果、(引用者中略)次作を待とう、と判断した。」
  「今回は私にとって、二作(引用者注:「タイムスリップ・コンビナート」と「おどるでく」)に絞るのは比較的容易だった。しかし、それから先が難渋し、何度も読み返した。」
選評出典:『芥川賞全集 第十七巻』平成14年/2002年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成6年/1994年9月号)
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芥川賞 112 平成6年/1994年下半期   一覧へ
選評の概要 ある試み 総行数41 (1行=24字)
選考委員 田久保英夫 男66歳
候補 評価 行数 評言
中村邦生
男48歳
27 「私は(引用者中略)眼をひかれた。」「都会で、さまざまな他人と関わりつつ暮す人間として、こういう生の逆説的な対処法(引用者注:「決断」より、誠実に「その場しのぎ」をする)を認めるか認めないかは、興味深い主題だ。」「全体にインテリ臭い意識の屈折の出すぎるのが欠点だ。それが作品の狙いを見えにくくしてしまう。けれども私は、現代小説にこうした独特な静かな音律のような語り口があっていい、と思い、あえて一票を投じたが、残念ながら多くの支持を得られなかった。」
  「今回はひさびさに「なし」の結果が出たが、最後まで二作(引用者注:「ドッグ・ウォーカー」「光の形象」)が問題となった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十七巻』平成14年/2002年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成7年/1995年3月号)
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芥川賞 113 平成7年/1995年上半期   一覧へ
選評の概要 少数意見 総行数38 (1行=24字)
選考委員 田久保英夫 男67歳
候補 評価 行数 評言
男38歳
33 「(引用者注:私たちは)小説を読む時、日常の舞台をステップにして、それを一瞬でも超える歓びや充足感を味わいたい、と願う。(引用者中略)私はそうした感覚を味わえなかった。」「ここで終始くり返される会話は、あまりに日常的で散漫すぎる。」「この(引用者注:登場人物の)女性の微妙な識閾を表わそう、という意図はわかるが、それがさまざまなお喋りの見解を通して出てくるところに、問題がある。これらの知的見解は、すべて正反対の意見も可能なのだ。」
選評出典:『芥川賞全集 第十七巻』平成14年/2002年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成7年/1995年9月号)
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芥川賞 114 平成7年/1995年下半期   一覧へ
選評の概要 再び少数意見 総行数35 (1行=24字)
選考委員 田久保英夫 男67歳
候補 評価 行数 評言
中村邦生
男49歳
12 「私は(引用者中略)推した。」「森の闇の中に、視覚、聴覚、触覚を、独特の鋭敏さで具体的に働かせている。」「ただ、前の候補作もそうだが、どこか作の根底に、知的に処理された弱さがある。せっかく森に踏みこんだのなら、もっと主要な人間から野性的な力づよい生命感や蘇生感が漲ってもいい、と思う。」
男48歳
23 「いかにも沖縄らしい太陽と海の光を感じる。」「しかし、私は「豚の報い」には幾つか抵抗があって、(引用者中略)票を投じえなかった。」「ラストで主人公が父の骨を前にして、ここに自分の御嶽を造ろう、ときめるのは、無理に思えた。」「最初から白骨を検証せず、父ときめてしまうのも不自然に思えた。」「全体に現実の重力より、作者の目ざす方向に話が走りすぎる欠点を感じる。」
選評出典:『芥川賞全集 第十七巻』平成14年/2002年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成8年/1996年3月号)
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芥川賞 115 平成8年/1996年上半期   一覧へ
選評の概要 二つの作品 総行数36 (1行=24字)
選考委員 田久保英夫 男68歳
候補 評価 行数 評言
女38歳
18 「殊に注目した。」「昔からの道成寺縁起や秋成の「蛇性の婬」、あるいは現代の作品さえ思い起し、使い古されたような抵抗感を覚えた。しかし、この筆力は相当なもので、しだいにその抵抗を乗りこえさせ、色濃く関係や想念を展開して、私はときに立ちどまり、ときにひと息に読んだ。」「私は最終的に、「天安門」とこれと二作に票を入れた。」
リービ英雄
男45歳
20 「殊に注目した。」「成育する国も言語も、三つに分裂し、自己同一の場を求める内的なつよい欲求が、ここから感得できる。」「ただ、(引用者中略)中国語、英語、日本語とさまざまにくり返され、かえってイメージが抽象的に錯綜して、訴求力を弱めている。」「私は最終的に、「天安門」と(引用者中略・注:「蛇を踏む」と)二作に票を入れた。」
選評出典:『芥川賞全集 第十七巻』平成14年/2002年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成8年/1996年9月号)
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芥川賞 116 平成8年/1996年下半期   一覧へ
選評の概要 日常の彼岸 総行数42 (1行=24字)
選考委員 田久保英夫 男68歳
候補 評価 行数 評言
女28歳
19 「人には日常の煩瑣な現実をぬけ出し、別の超越的な領域に行きたい、という願望がある。」「私は柳美里さんの作品に、(引用者中略・注:過去の二候補作を含めて)それを感じた。」「いずれも家族相互の生臭い関係が、中心にあるが、別の人物を通して、女性のひそかな内部にそれが現われる。」「最終的に、私は「家族シネマ」一作を推した。」
男37歳
13 「波濤や船の航行の描写などに、逞しい筆力を感じた。しかし、この作品にはつねに二面があって、(引用者中略)囚人は「邪悪」で、「悪魔」的とも描かれるし、逆に「大仏」のようにも、「超俗」した者にも描かれる。この両面に、読む側は刑務官自身の言うように、すべて「妄念」ではないか、とも思えて、人物の統一像が結ばない。」
  「今回はむずかしい選考になる気がしていたが、予想通り難航した。」
選評出典:『芥川賞全集 第十七巻』平成14年/2002年8月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成9年/1997年3月号)
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芥川賞 117 平成9年/1997年上半期   一覧へ
選評の概要 小説の仕立て 総行数40 (1行=24字)
選考委員 田久保英夫 男69歳
候補 評価 行数 評言
男36歳
21 「一つを選べば目取真俊氏の「水滴」しかない、と思ったが、しかし、抵抗も抑えがたい。」「とぼけたユーモアも漂う語り口で、寓話的な仕立てだが、(引用者中略)戦中の罪責感と哀傷が、裏打ちされている。」「最後に水が効力を失い、従兄弟が群衆に制裁をうけるに至っては、寓話性がきわめて濃厚になり、つくりが目だつ。小説は寓話ではない。寓話染みてもかまわないが、それだけ小説の力は弱まる。」
選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成9年/1997年9月号)
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芥川賞 118 平成9年/1997年下半期   一覧へ
選評の概要 心残り 総行数36 (1行=24字)
選考委員 田久保英夫 男69歳
候補 評価 行数 評言
  「今回どの作品も、当選作にはもう一つ背丈が足りない、という印象だった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成10年/1998年3月号)
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芥川賞 119 平成10年/1998年上半期   一覧へ
選評の概要 読みごたえ 総行数35 (1行=24字)
選考委員 田久保英夫 男70歳
候補 評価 行数 評言
男43歳
11 「私は(引用者中略)強烈な衝迫力にひかれたが、しかし、これは危険な小説である。」「だが、カトリック修道院の付属農場にいる青年を通して、神と悪徳の狭間に籠めた問いには、わが国にはめずらしい追求の情熱を感じる。人物や場面の輪郭も、鮮明である。」
男39歳
12 「犀利な感覚が見える。男の郷里であるその土地と、東京ぐらしの醒めた生活意識。盲目で老耄した女の現実と、妄想かも知れぬ横浜やブエノスアイレスの空間。こうした二つの世界を、フラッシュバックさせながら進む描写はあざやかだ。」「ただ、これまでの作品を見ても、どんな題材も巧みに書けそうで、私はそこに貫くつよい内的なモティーフを感得したい、と思う。」
  「今回は最初から、受賞作二篇が過半の支持をえた。」
選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成10年/1998年9月号)
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芥川賞 120 平成10年/1998年下半期   一覧へ
選評の概要 小説の言葉 総行数35 (1行=24字)
選考委員 田久保英夫 男70歳
候補 評価 行数 評言
男23歳
15 「文章の様式に、積極果敢な試みを感じた。」「この十五世紀のフランスの修道士を中心に、異端審問や錬金術を描いた作品には妙に適合した力を持っている。」「男女の肉のすべてを象徴的に結集した存在を火刑にする光景で、一瞬、至高の極を開示して見せる。まことに若々しい野心と膂力と言えよう。いくつか懸念もあるが、今回この作品がず抜けていた。」
選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成11年/1999年3月号)
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芥川賞 121 平成11年/1999年上半期   一覧へ
選評の概要 生命の水位 総行数31 (1行=24字)
選考委員 田久保英夫 男71歳
候補 評価 行数 評言
松浦寿輝
男45歳
20 「四十半ばの病後の男を設定しながら、作者の生命の水位は高いと感じた。」「ここでは眼の前に現象する世界と、他界との微妙なあわいが、粘りづよい筆致で捉えられている。」「これはネガティブな作品のようだが、実はこの生の世界の短さ小ささに反して、背後の見えない世界の遥かな大きさを感じさせるという意味で、先鋭な作品だ。私はこの一作を推した。」
選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成11年/1999年9月号)
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芥川賞 122 平成11年/1999年下半期   一覧へ
選評の概要 着実な作品 総行数38 (1行=24字)
選考委員 田久保英夫 男71歳
候補 評価 行数 評言
男→女37歳
10 「相当な力量だが、しかし、こんなに平明な世界で、口あたりがよくていいのか、とも思えてくる。あるいはホモの人たち同士の、あるいは私たち外側の人間への、一脈ぎくっとするような毒気も出ていいはずではないか。」
男34歳
10 「正攻法の現実的な筆致で、大阪の在日朝鮮人の生き証人のような老人を、着実に描き出していた。」「戦争で手首を落し、集落に六十八年暮した老人には、無為の果ての悲哀が滲み、しだいに時代と国との重い奥行きを見せる。しかし、ボランティアにくる日本人女性の肉づけが弱い。」
  「私には特に力を入れて推す作品がなかった。」
選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成12年/2000年3月号)
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芥川賞 123 平成12年/2000年上半期   一覧へ
選評の概要 新たな期待 総行数37 (1行=24字)
選考委員 田久保英夫 男72歳
候補 評価 行数 評言
男46歳
14 「私は(引用者中略)一番あたまに置いていたが、これさえ欠点がないわけではない。」「物語の組み立てにやや無理があり、そのために後半、観念が露わになってしまった。しかし、いつもながらこの作家の都会空間への精妙な感覚と描法は、並のものではない。」「私はこの二作(引用者注:「花腐し」と「きれぎれ」)が同時受賞か否か、ぎりぎりの選択の時、受賞賛成に投じた。」
男38歳
14 「これまでも、世間の底辺を這うような男を通して、固定的な通念の枠を破り、自在な生なましい語り口で、逆に生命的な魅力を放ってきたが、今度の「きれぎれ」は、それをさらに新しいステップへ進めようとする果敢さが見える。けれどもその意欲のあまりか、表現が大仰になり、現実と非現実の流れが見えにくくなった。」「私はこの二作(引用者注:「花腐し」と「きれぎれ」)が同時受賞か否か、ぎりぎりの選択の時、受賞賛成に投じた。」
  「今回はたいへん難航した。主導的な作品がなく、支持が割れたせいだろう。」
選評出典:『芥川賞全集 第十九巻』平成14年/2002年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成12年/2000年9月号)
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芥川賞 124 平成12年/2000年下半期   一覧へ
選評の概要 物語への問い 総行数43 (1行=24字)
選考委員 田久保英夫 男72歳
候補 評価 行数 評言
男37歳
24 「(引用者注:物語づくりを)あえて底に沈めようとする作品」「安易な虚構のなかの人物の対立や波乱と違い、私たちの卑近な日常では、個人と個人の関係には、多くこういう言葉に置き換えがたい契機が働く。」「あまりに知的傾斜がすぎ、ときに廻りくどい文脈も見えて、欠点もあるが、私は小説への一つの活路を願って、これを推した。」
男42歳
21 「物語づくりに徹して、描きぬこうとする作品」「渾身で物語を展開しようとする力篇だ。しかし、主人公の青年の、死に瀕した父親が、互いの事業を合併して托そうという、教祖風の男の実体がよく伝わってこない。」「憤怒する父の臨終を「オラショ」で和めることも、若い息子と娘が結ばれるらしい暗示も、物語の終りに符節が合いすぎる。」
  「(引用者注:受賞二作以外の)ほかの作品も水準が揃い、ここで触れえないのが残念だ。」
選評出典:『芥川賞全集 第十九巻』平成14年/2002年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成13年/2001年3月号)
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