芥川賞のすべて・のようなもの
第110回
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平成5年/1993年下半期
(平成6年/1994年1月13日決定発表/『文藝春秋』平成6年/1994年3月号選評掲載)
選考委員  大江健三郎
男58歳
大庭みな子
女63歳
丸谷才一
男68歳
吉行淳之介
男69歳
日野啓三
男64歳
田久保英夫
男65歳
黒井千次
男61歳
三浦哲郎
男62歳
河野多恵子
女67歳
古井由吉
男56歳
選評総行数  26 21 27 26 28 32 27 25 27 24
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
奥泉光 「石の来歴」
162
男37歳
15 12 7 6 13 5 17 12 7 17
角田光代 「もう一つの扉」
117
女26歳
0 0 0 0 0 0 0 0 4 0
笙野頼子 「二百回忌」
79
女37歳
6 3 0 3 0 2 6 0 7 0
石黒達昌 「平成3年5月2日、後天性免疫不全症候群にて
急逝された明寺伸彦博士、並びに……」
115
男32歳
5 4 0 4 9 23 5 5 0 2
引間徹 「19分25秒」
210
男29歳
0 0 20 15 0 2 0 8 5 0
辻仁成 「母なる凪と父なる時化」
183
男34歳
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
                   
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『芥川賞全集 第十六巻』平成14年/2002年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成6年/1994年3月号)
1行当たりの文字数:24字


選考委員
大江健三郎男58歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
ハネネズミ 総行数26 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
奥泉光
男37歳
15 「これまでの氏の力作と並び、創作意図は強くつらぬかれている。こうしてみれば、講談調にうわずる文体も粗雑な細部も、つまりは氏の個性なのだ。それを見きわめての、氏の剛腕への評価は、選考会でよく納得できた。したがって授賞に積極的な反対はしない。」
角田光代
女26歳
0  
笙野頼子
女37歳
6 「最初に特殊な調性で語りはじめた小説は、ごく短いものならいざ知らず、中篇に近い長さでは、転調が必要となる。それがなされないことに不満が残る。」
石黒達昌
男32歳
5 「小説の技法として意図されたものと、そうでないものと、未熟な混交を表わしているが、「ハネネズミ」の発明、文体、細部こぞってもっとも刺戟的だった。」
引間徹
男29歳
0  
辻仁成
男34歳
0  
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他の選考委員
大庭みな子
丸谷才一
吉行淳之介
日野啓三
田久保英夫
黒井千次
三浦哲郎
河野多恵子
古井由吉
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選考委員
大庭みな子女63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
石の叫び 総行数21 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
奥泉光
男37歳
12 「「石」というものを中心に据えて、石の叫びを聞こうとするところに、今までよりぐっと突き進んだ深さを感じた。しかし、私としてはわからない部分もかなりあり、判断に苦しんだが、(引用者中略)闇と光の間を、今後もがきながら進むことでむしろ作品としての力が加わるのではないか。」
角田光代
女26歳
0  
笙野頼子
女37歳
3 「頷きながら読んだが、少し詰め込みすぎてイメージが拡散するのが惜しい。」
石黒達昌
男32歳
4 「受賞にはならなかったが、さまざまな視点、角度から議論の対象になった。科学分野の人らしいが、どのような形で伸びるか愉しみである。」
引間徹
男29歳
0  
辻仁成
男34歳
0  
  「選考過程は大体、予想していた通りに進み、そのように決った。」
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他の選考委員
大江健三郎
丸谷才一
吉行淳之介
日野啓三
田久保英夫
黒井千次
三浦哲郎
河野多恵子
古井由吉
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選考委員
丸谷才一男68歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
引間徹さんを推す 総行数27 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
奥泉光
男37歳
7 「この前の『三つ目の鯰』のほうがよかつた。登場人物が生き生きしてゐたし、ゆつたりした感じで呼吸してゐて、親愛感をいだくことができた。」「受賞はまことにめでたいことだが、これを機会にあの『三つ目の鯰』の調子に戻つてもらひたいと思ふ。」
角田光代
女26歳
0  
笙野頼子
女37歳
0  
石黒達昌
男32歳
0  
引間徹
男29歳
20 「久方ぶりに属望するに足る才能に出会つたといふ気がする。」「第一に発想がいいし、筋の展開がいちいち気がきいてゐる。」「第二に登場人物たちがみな隣人のやうになつかしい。」「第三に文章が、ときどき変なこともあるけれど、全体としてはしつかりしてゐて、着実に前へ進む。第四に、いまの日本人の生活感、をかしな時代に生きて困つてゐる感じがよくつかまへてある。」
辻仁成
男34歳
0  
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他の選考委員
大江健三郎
大庭みな子
吉行淳之介
日野啓三
田久保英夫
黒井千次
三浦哲郎
河野多恵子
古井由吉
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選考委員
吉行淳之介男69歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
どこか光るもの 総行数26 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
奥泉光
男37歳
6 「(引用者注:奥泉光の作品には)いつもその腕力と言葉の氾濫に負けそうになっていたが、今回は素直に降参することにした。」
角田光代
女26歳
0  
笙野頼子
女37歳
3 「時間や距離の捩れも面白く、二百回忌でのいろいろの趣向は、うっかりすると子供だましになるところを持ちこたえている。」
石黒達昌
男32歳
4 「題名をつけないシロウト写真十六枚入り横組みの作品」「その悪趣味を跳ね飛ばすだけの力はなかったが、次作を読みたい。」
引間徹
男29歳
15 「左足の膝から下が義足で競歩の世界記録を狙える男というのは、お伽話の世界のもののようでいて、しだいにリアリティを増してくる。と同時に、余分の場面と余分の言葉が増えてきて、惜しいと思った。」
辻仁成
男34歳
0  
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他の選考委員
大江健三郎
大庭みな子
丸谷才一
日野啓三
田久保英夫
黒井千次
三浦哲郎
河野多恵子
古井由吉
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選考委員
日野啓三男64歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
気流が変るのか 総行数28 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
奥泉光
男37歳
13 「受賞は、私としては少し意外でもあり、また当然であるようにも思えた。この作品にはこれまでの氏の作品と同じように、あるいはそれ以上の力がある。」「書物から集めた戦場の情景や地質学的知識などを承知の上で使い、それらを講談調の物語形式で強引につなぎ合わせてゆく観念の腕力。それはこの数年間の受賞作に目だった内向きの繊細な感性の求心力とは、違うヴェクトルである。」
角田光代
女26歳
0  
笙野頼子
女37歳
0  
石黒達昌
男32歳
9 「私は底深い悲しみと恐れをもって読んだ。」「最後の二匹が仄かに光りながら死んでゆく箇所に、私は涙を流しかけた。人類という種の最期を思った。多分全くの虚構の物語を、緊迫して支え続ける科学論文調の特異な文体の“静かな力”はほとんど美しい。」
引間徹
男29歳
0  
辻仁成
男34歳
0  
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他の選考委員
大江健三郎
大庭みな子
丸谷才一
吉行淳之介
田久保英夫
黒井千次
三浦哲郎
河野多恵子
古井由吉
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選考委員
田久保英夫男65歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
小さなメス 総行数32 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
奥泉光
男37歳
5 「候補四回目の実績や能力が、認められたといえよう。」「今度の作品は、言葉の過剰な使い方、何人も殺し殺される話のつくりすぎ、反面で中心の殺人事件の曖昧さなど、私にはうけ入れかねた。」
角田光代
女26歳
0  
笙野頼子
女37歳
2 「注目した。」
石黒達昌
男32歳
23 「スリリングなのは、明寺がハネネズミは「永遠に近い寿命を持つが、生殖と死が同時」など、さまざまな仮説を立て、それを検証していく経過だ。」「ここにはハネネズミの死滅が、外からの感染症なのか、内からの生態系なのか、という問いがあって、冒頭の明寺と榊原の「急逝」という言葉に、現代文明の恐怖に通じるメッセージも、潜んでいるように思われる。人物写真の挿入など、作者のプレイのしすぎもあるが、私はこれを推した。」
引間徹
男29歳
2 「注目した。」
辻仁成
男34歳
0  
  「今回はいろいろな面で、小さなメスの刃さきを、受け手の私自身つきつけられるような思いがした。」
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他の選考委員
大江健三郎
大庭みな子
丸谷才一
吉行淳之介
日野啓三
黒井千次
三浦哲郎
河野多恵子
古井由吉
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選考委員
黒井千次男61歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
力量 総行数27 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
奥泉光
男37歳
17 「才能とか資質という言葉よりも、力量という表現のまず頭に浮かぶ」「石への執念、誰が誰を殺したかという疑惑などがストーリーを強引に押し進めて行く展開には、読者を引きずり込む力が認められる。それでいて、どこかにふと寂しい風の吹き抜ける気配もある。」「この作品を受賞作として推すことに躊躇いはなかった。」
角田光代
女26歳
0  
笙野頼子
女37歳
6 「油絵具を厚く塗りたくったような書き方の内に、怒りと勢いが感じられて面白かった。」
石黒達昌
男32歳
5 「種の絶滅のテーマを小動物とそれを扱う医学者のドラマとして描いた報告書の形式に注目した。」
引間徹
男29歳
0  
辻仁成
男34歳
0  
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他の選考委員
大江健三郎
大庭みな子
丸谷才一
吉行淳之介
日野啓三
田久保英夫
三浦哲郎
河野多恵子
古井由吉
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選考委員
三浦哲郎男62歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
感想 総行数25 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
奥泉光
男37歳
12 「読後の疲労感はこれまでよりも快かったといっていい。これはおそらく、この作者の持ち味である淀みのない語りくち、読ませる力、読者を引きずっていく力技に、いよいよ磨きがかかってきた証拠かと思われる。」「多少強引にすぎるところ、どぎつさが目立つところがなきにしもあらずだが、この光彩に満ちた文章力は顕彰されてしかるべきだろう。」
角田光代
女26歳
0  
笙野頼子
女37歳
0  
石黒達昌
男32歳
5 「無題とはどういうことであろうか。ほかに、いくつかの点で読む者の意表を突く労作だが、行間に不用の気取りがちらついて邪魔だった。それでも、次作が待たれる作者ではある。」
引間徹
男29歳
8 「全体にフレッシュな活力がみなぎっていて、面白く読めた。ただ、文章が、スポーツ小説にふさわしく平易明解なのはいいとしても、ところどころ荒さの目立つのが難点であった。それに、文学作品としてはやはり深みが不足だと感じた。」
辻仁成
男34歳
0  
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他の選考委員
大江健三郎
大庭みな子
丸谷才一
吉行淳之介
日野啓三
田久保英夫
黒井千次
河野多恵子
古井由吉
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選考委員
河野多恵子女67歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
見事な標題 総行数27 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
奥泉光
男37歳
7 「人を殺した者のその後の様相を捉えている。」「結末で、(引用者中略)石に全編が重層的抽象性をもって結ばれており、標題の中心の意味もその石にある。読み終えてみて、見事な題であることがよく判った。」
角田光代
女26歳
4 「意外に票が集まらなかったが、私はこれまでの二候補作からずっと成長していると思った。モチーフが鮮明になり、取り込まれている事柄もなかなか効いている。」
笙野頼子
女37歳
7 「先祖や身内や郷里との、無関係をも含む関係を、反リアリズムで表現しようとした作品で、一見荒唐無稽な内容にしたたかなリアリティがある。致命的ではないけれども、見逃し得ない二、三の部分的な欠点が授賞を阻んだ。」
石黒達昌
男32歳
0  
引間徹
男29歳
5 「舌たらずの文章が幾つもある。」「一方、すばらしい表現も随所にある。この作者には、生来のすぐれた資質がある。」
辻仁成
男34歳
0  
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他の選考委員
大江健三郎
大庭みな子
丸谷才一
吉行淳之介
日野啓三
田久保英夫
黒井千次
三浦哲郎
古井由吉
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選考委員
古井由吉男56歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
虚構への再接近 総行数24 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
奥泉光
男37歳
17 「われもまた死の専制の下にありき、というようなエピグラムを、私なら振りたくなるところだ。」「石が人の生死を超越した救済の光を真に放つためには、いま一度、死の専制が出現しなくてはならぬ、とそんな運命のけはいである。」「ある情熱(ルビ:パトス)が作家に呼びかける。世の至るところから叫び立てているようにさえ感じられるが、さてその情熱にふさわしい運命の形を周囲に見つけ出すことはむずかしい。」「途上の作だが、受賞はよろこぶべきだ。」
角田光代
女26歳
0  
笙野頼子
女37歳
0  
石黒達昌
男32歳
2 「無表題作の、偽書の緊張には、私も大いに関心をもった。」
引間徹
男29歳
0  
辻仁成
男34歳
0  
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他の選考委員
大江健三郎
大庭みな子
丸谷才一
吉行淳之介
日野啓三
田久保英夫
黒井千次
三浦哲郎
河野多恵子
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受賞者・作品
奥泉光男37歳×各選考委員 
「石の来歴」
中篇 162
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
大江健三郎
男58歳
15 「これまでの氏の力作と並び、創作意図は強くつらぬかれている。こうしてみれば、講談調にうわずる文体も粗雑な細部も、つまりは氏の個性なのだ。それを見きわめての、氏の剛腕への評価は、選考会でよく納得できた。したがって授賞に積極的な反対はしない。」
大庭みな子
女63歳
12 「「石」というものを中心に据えて、石の叫びを聞こうとするところに、今までよりぐっと突き進んだ深さを感じた。しかし、私としてはわからない部分もかなりあり、判断に苦しんだが、(引用者中略)闇と光の間を、今後もがきながら進むことでむしろ作品としての力が加わるのではないか。」
丸谷才一
男68歳
7 「この前の『三つ目の鯰』のほうがよかつた。登場人物が生き生きしてゐたし、ゆつたりした感じで呼吸してゐて、親愛感をいだくことができた。」「受賞はまことにめでたいことだが、これを機会にあの『三つ目の鯰』の調子に戻つてもらひたいと思ふ。」
吉行淳之介
男69歳
6 「(引用者注:奥泉光の作品には)いつもその腕力と言葉の氾濫に負けそうになっていたが、今回は素直に降参することにした。」
日野啓三
男64歳
13 「受賞は、私としては少し意外でもあり、また当然であるようにも思えた。この作品にはこれまでの氏の作品と同じように、あるいはそれ以上の力がある。」「書物から集めた戦場の情景や地質学的知識などを承知の上で使い、それらを講談調の物語形式で強引につなぎ合わせてゆく観念の腕力。それはこの数年間の受賞作に目だった内向きの繊細な感性の求心力とは、違うヴェクトルである。」
田久保英夫
男65歳
5 「候補四回目の実績や能力が、認められたといえよう。」「今度の作品は、言葉の過剰な使い方、何人も殺し殺される話のつくりすぎ、反面で中心の殺人事件の曖昧さなど、私にはうけ入れかねた。」
黒井千次
男61歳
17 「才能とか資質という言葉よりも、力量という表現のまず頭に浮かぶ」「石への執念、誰が誰を殺したかという疑惑などがストーリーを強引に押し進めて行く展開には、読者を引きずり込む力が認められる。それでいて、どこかにふと寂しい風の吹き抜ける気配もある。」「この作品を受賞作として推すことに躊躇いはなかった。」
三浦哲郎
男62歳
12 「読後の疲労感はこれまでよりも快かったといっていい。これはおそらく、この作者の持ち味である淀みのない語りくち、読ませる力、読者を引きずっていく力技に、いよいよ磨きがかかってきた証拠かと思われる。」「多少強引にすぎるところ、どぎつさが目立つところがなきにしもあらずだが、この光彩に満ちた文章力は顕彰されてしかるべきだろう。」
河野多恵子
女67歳
7 「人を殺した者のその後の様相を捉えている。」「結末で、(引用者中略)石に全編が重層的抽象性をもって結ばれており、標題の中心の意味もその石にある。読み終えてみて、見事な題であることがよく判った。」
古井由吉
男56歳
17 「われもまた死の専制の下にありき、というようなエピグラムを、私なら振りたくなるところだ。」「石が人の生死を超越した救済の光を真に放つためには、いま一度、死の専制が出現しなくてはならぬ、とそんな運命のけはいである。」「ある情熱(ルビ:パトス)が作家に呼びかける。世の至るところから叫び立てているようにさえ感じられるが、さてその情熱にふさわしい運命の形を周囲に見つけ出すことはむずかしい。」「途上の作だが、受賞はよろこぶべきだ。」
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他の候補作
角田光代
「もう一つの扉」
笙野頼子
「二百回忌」
石黒達昌
「平成3年5月2日、後天性免疫不全症候群にて
急逝された明寺伸彦博士、並びに……」
引間徹
「19分25秒」
辻仁成
「母なる凪と父なる時化」
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候補者・作品
角田光代女26歳×各選考委員 
「もう一つの扉」
短篇 117
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
大江健三郎
男58歳
0  
大庭みな子
女63歳
0  
丸谷才一
男68歳
0  
吉行淳之介
男69歳
0  
日野啓三
男64歳
0  
田久保英夫
男65歳
0  
黒井千次
男61歳
0  
三浦哲郎
男62歳
0  
河野多恵子
女67歳
4 「意外に票が集まらなかったが、私はこれまでの二候補作からずっと成長していると思った。モチーフが鮮明になり、取り込まれている事柄もなかなか効いている。」
古井由吉
男56歳
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他の候補作
奥泉光
「石の来歴」
笙野頼子
「二百回忌」
石黒達昌
「平成3年5月2日、後天性免疫不全症候群にて
急逝された明寺伸彦博士、並びに……」
引間徹
「19分25秒」
辻仁成
「母なる凪と父なる時化」
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候補者・作品
笙野頼子女37歳×各選考委員 
「二百回忌」
短篇 79
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
大江健三郎
男58歳
6 「最初に特殊な調性で語りはじめた小説は、ごく短いものならいざ知らず、中篇に近い長さでは、転調が必要となる。それがなされないことに不満が残る。」
大庭みな子
女63歳
3 「頷きながら読んだが、少し詰め込みすぎてイメージが拡散するのが惜しい。」
丸谷才一
男68歳
0  
吉行淳之介
男69歳
3 「時間や距離の捩れも面白く、二百回忌でのいろいろの趣向は、うっかりすると子供だましになるところを持ちこたえている。」
日野啓三
男64歳
0  
田久保英夫
男65歳
2 「注目した。」
黒井千次
男61歳
6 「油絵具を厚く塗りたくったような書き方の内に、怒りと勢いが感じられて面白かった。」
三浦哲郎
男62歳
0  
河野多恵子
女67歳
7 「先祖や身内や郷里との、無関係をも含む関係を、反リアリズムで表現しようとした作品で、一見荒唐無稽な内容にしたたかなリアリティがある。致命的ではないけれども、見逃し得ない二、三の部分的な欠点が授賞を阻んだ。」
古井由吉
男56歳
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他の候補作
奥泉光
「石の来歴」
角田光代
「もう一つの扉」
石黒達昌
「平成3年5月2日、後天性免疫不全症候群にて
急逝された明寺伸彦博士、並びに……」
引間徹
「19分25秒」
辻仁成
「母なる凪と父なる時化」
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候補者・作品
石黒達昌男32歳×各選考委員 
「平成3年5月2日、後天性免疫不全症候群にて
急逝された明寺伸彦博士、並びに……」
短篇 115
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
大江健三郎
男58歳
5 「小説の技法として意図されたものと、そうでないものと、未熟な混交を表わしているが、「ハネネズミ」の発明、文体、細部こぞってもっとも刺戟的だった。」
大庭みな子
女63歳
4 「受賞にはならなかったが、さまざまな視点、角度から議論の対象になった。科学分野の人らしいが、どのような形で伸びるか愉しみである。」
丸谷才一
男68歳
0  
吉行淳之介
男69歳
4 「題名をつけないシロウト写真十六枚入り横組みの作品」「その悪趣味を跳ね飛ばすだけの力はなかったが、次作を読みたい。」
日野啓三
男64歳
9 「私は底深い悲しみと恐れをもって読んだ。」「最後の二匹が仄かに光りながら死んでゆく箇所に、私は涙を流しかけた。人類という種の最期を思った。多分全くの虚構の物語を、緊迫して支え続ける科学論文調の特異な文体の“静かな力”はほとんど美しい。」
田久保英夫
男65歳
23 「スリリングなのは、明寺がハネネズミは「永遠に近い寿命を持つが、生殖と死が同時」など、さまざまな仮説を立て、それを検証していく経過だ。」「ここにはハネネズミの死滅が、外からの感染症なのか、内からの生態系なのか、という問いがあって、冒頭の明寺と榊原の「急逝」という言葉に、現代文明の恐怖に通じるメッセージも、潜んでいるように思われる。人物写真の挿入など、作者のプレイのしすぎもあるが、私はこれを推した。」
黒井千次
男61歳
5 「種の絶滅のテーマを小動物とそれを扱う医学者のドラマとして描いた報告書の形式に注目した。」
三浦哲郎
男62歳
5 「無題とはどういうことであろうか。ほかに、いくつかの点で読む者の意表を突く労作だが、行間に不用の気取りがちらついて邪魔だった。それでも、次作が待たれる作者ではある。」
河野多恵子
女67歳
0  
古井由吉
男56歳
2 「無表題作の、偽書の緊張には、私も大いに関心をもった。」
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他の候補作
奥泉光
「石の来歴」
角田光代
「もう一つの扉」
笙野頼子
「二百回忌」
引間徹
「19分25秒」
辻仁成
「母なる凪と父なる時化」
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候補者・作品
引間徹男29歳×各選考委員 
「19分25秒」
中篇 210
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
大江健三郎
男58歳
0  
大庭みな子
女63歳
0  
丸谷才一
男68歳
20 「久方ぶりに属望するに足る才能に出会つたといふ気がする。」「第一に発想がいいし、筋の展開がいちいち気がきいてゐる。」「第二に登場人物たちがみな隣人のやうになつかしい。」「第三に文章が、ときどき変なこともあるけれど、全体としてはしつかりしてゐて、着実に前へ進む。第四に、いまの日本人の生活感、をかしな時代に生きて困つてゐる感じがよくつかまへてある。」
吉行淳之介
男69歳
15 「左足の膝から下が義足で競歩の世界記録を狙える男というのは、お伽話の世界のもののようでいて、しだいにリアリティを増してくる。と同時に、余分の場面と余分の言葉が増えてきて、惜しいと思った。」
日野啓三
男64歳
0  
田久保英夫
男65歳
2 「注目した。」
黒井千次
男61歳
0  
三浦哲郎
男62歳
8 「全体にフレッシュな活力がみなぎっていて、面白く読めた。ただ、文章が、スポーツ小説にふさわしく平易明解なのはいいとしても、ところどころ荒さの目立つのが難点であった。それに、文学作品としてはやはり深みが不足だと感じた。」
河野多恵子
女67歳
5 「舌たらずの文章が幾つもある。」「一方、すばらしい表現も随所にある。この作者には、生来のすぐれた資質がある。」
古井由吉
男56歳
0  
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他の候補作
奥泉光
「石の来歴」
角田光代
「もう一つの扉」
笙野頼子
「二百回忌」
石黒達昌
「平成3年5月2日、後天性免疫不全症候群にて
急逝された明寺伸彦博士、並びに……」
辻仁成
「母なる凪と父なる時化」
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候補者・作品
辻仁成男34歳×各選考委員 
「母なる凪と父なる時化」
中篇 183
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
大江健三郎
男58歳
0  
大庭みな子
女63歳
0  
丸谷才一
男68歳
0  
吉行淳之介
男69歳
0  
日野啓三
男64歳
0  
田久保英夫
男65歳
0  
黒井千次
男61歳
0  
三浦哲郎
男62歳
0  
河野多恵子
女67歳
0  
古井由吉
男56歳
0  
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他の候補作
奥泉光
「石の来歴」
角田光代
「もう一つの扉」
笙野頼子
「二百回忌」
石黒達昌
「平成3年5月2日、後天性免疫不全症候群にて
急逝された明寺伸彦博士、並びに……」
引間徹
「19分25秒」
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