芥川賞のすべて・のようなもの
第118回
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平成9年/1997年下半期
(平成10年/1998年1月16日決定発表/『文藝春秋』平成10年/1998年3月号選評掲載)
選考委員  丸谷才一
男72歳
石原慎太郎
男65歳
古井由吉
男60歳
日野啓三
男68歳
田久保英夫
男69歳
河野多恵子
女71歳
三浦哲郎
男66歳
黒井千次
男65歳
宮本輝
男50歳
池澤夏樹
男52歳
選評総行数  31 37 31 32 36 36 30 38 35 38
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
阿部和重 「トライアングルズ」
112
男29歳
0 0 7 0 22 0 0 8 4 23
吉田修一 「破片」
123
男29歳
0 5 5 6 3 5 4 4 5 3
広谷鏡子 「げつようびのこども」
163
女37歳
0 0 0 0 3 0 0 3 5 9
藤沢周 「砂と光」
79
男39歳
14 0 6 4 5 9 0 11 6 2
弓透子 「ハドソン河の夕日」
130
女(65歳)
20 12 6 5 4 11 0 9 5 9
                   
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『芥川賞全集 第十八巻』平成14年/2002年10月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成10年/1998年3月号)
1行当たりの文字数:24字


選考委員
丸谷才一男72歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
弓さんと藤沢さん 総行数31 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
阿部和重
男29歳
0  
吉田修一
男29歳
0  
広谷鏡子
女37歳
0  
藤沢周
男39歳
14 「筋のある話は見せかけだけで、作中人物の感慨ないし感懐だけが中身になつてゐる。」「登場人物たちの関係のもつれもなく、物語の始め半ば終りもない。」「これは短篇小説ではなくてスケッチだらう。スケッチとしては、基本的な筆力がある。この作者が本式の短篇小説に挑戦することを望む。」
弓透子
女(65歳)
20 「話の筋のある小説らしい仕立てなのがいい。本当はそこに問題がひそんでゐるのだが、一応のところこれは取り柄である。」「話の筋にはいろいろ無理があるし、きれい事にしたいといふ欲求が作者の心の底にあるため、小説的な際どい所への迫り方が足りない。何もむやみ汚すことはないけれど、触れなければならないことはやはりはふつて置いてはいけないはずなのに、それを怠ることで小説の形を整へてゐる気配なのは残念な気がした。」
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他の選考委員
石原慎太郎
古井由吉
日野啓三
田久保英夫
河野多恵子
三浦哲郎
黒井千次
宮本輝
池澤夏樹
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選考委員
石原慎太郎男65歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
雪多けれど、実りなし 総行数37 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
阿部和重
男29歳
0  
吉田修一
男29歳
5 「たいそう読みやすくある種の納得もあるのだが、それが、一つの文学に触れ得たというカタルシスにまでなり切れない。」
広谷鏡子
女37歳
0  
藤沢周
男39歳
0  
弓透子
女(65歳)
12 「エイズに関しての小説として新しい視点を構えてはいるが、焦点がばらばらで迫力に欠ける。」「なるほどニューヨークになら在り得るだろう男同士のレイプという悲劇の鍵はショッキングではあるが、それに対する主人公や語り手である母親の反応が鈍すぎる。」
  「今回の何人かの候補作はごく最近にも候補に上った人が多かったが、誰も以前より進歩したという印象は持てなかった。その低迷の理由を深刻に考える義理は毛頭なかろうが、総じて、描こうとしている作品の主題を十分に発酵も濾過もしていないような気がする。」
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他の選考委員
丸谷才一
古井由吉
日野啓三
田久保英夫
河野多恵子
三浦哲郎
黒井千次
宮本輝
池澤夏樹
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選考委員
古井由吉男60歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
見取り図の試み 総行数31 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
阿部和重
男29歳
7 「報告のスタイルである。これは不自然と言われればそれまでだが、すぐれた試みと私は読んだ。この子供の「大人語り」はおのずと、周囲の成人たちのありさまを諧謔の光で照らすはずだ。もっとじっくりと、ハレイションを避けて、照らすべきだった。」
吉田修一
男29歳
5 「下の息子の哀しい性(ルビ:さが)も伝わり、佳篇となる要素も備わった。しかし作者の欲求は、好短篇をモノするというのと、別なところにあったのではないか。」
広谷鏡子
女37歳
0  
藤沢周
男39歳
6 「作中の比喩の多さは半端でない。これを私は、著者と粘りくらべで、片端から吟味したところが、使い捨ての覚悟ではあるが、けっして安易なものではなかった。評価はどうあれ、何かは残った、と著者はひとまずの安堵の中にあるのではないか。」
弓透子
女(65歳)
6 「この世に短期滞在するような幸せな息子と、それにたいする畏愛とでもいうような母親の情とを、抑えのぎりぎり利いた甘やかさで表わしたのは、今の世では作品の功徳だと私は受けた。レイプの衝撃を男親に受け止めさせたら、母子の情の美しさは、さらに残酷に浮き出したことだろう。」
  「候補作五篇のうち四篇までが家および家族をめぐる作品だった。いずれも用意は周到である。見取り図を引くような慎重さが筆致に感じられる。」「その分だけ集中力も凝縮力も減じたかと思われる。」
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他の選考委員
丸谷才一
石原慎太郎
日野啓三
田久保英夫
河野多恵子
三浦哲郎
黒井千次
宮本輝
池澤夏樹
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選考委員
日野啓三男68歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
ある一線 総行数32 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
阿部和重
男29歳
0  
吉田修一
男29歳
6 「細部は良く描けているが、連関を失った破片から美しいものを創造しようとするメッセージの描き方に自信と力が欲しい。」
広谷鏡子
女37歳
0  
藤沢周
男39歳
4 「構成にも文章にももう少し、柔らかさとか余裕の力のようなものが欲しい。これだけでは奥行のない風景画面のようだ。」
弓透子
女(65歳)
5 「いわばマリアの嘆きと恍惚を書こうとした意欲作、と私は読んだが、神話的表現の自覚と技術がいまひとつ足らない。」
  「文学観も小説の書き方も異る委員たちが、「ここまでいってないと入選作とは思えない」というその“一線”の了解において、ほぼ暗黙の一致をみた」「言葉では簡単に言い難い基本的な文学的リアリティーというものが(作品の表層が古いとか新しいとかいうことを超えて)、いまも生きている、と私はむしろ心強く思いもしたのだった。」
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他の選考委員
丸谷才一
石原慎太郎
古井由吉
田久保英夫
河野多恵子
三浦哲郎
黒井千次
宮本輝
池澤夏樹
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選考委員
田久保英夫男69歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
心残り 総行数36 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
阿部和重
男29歳
22 「とくに私に惜しく思われた」「一見とぼけて皮肉な筆致の底から、作者の真率なモティーフが感じとれた。」「「ストーキング」「不倫」といった流行の風俗を、ことさら使いながら、世に氾濫する男女の《物語》を辛辣にうち砕こうとするかのようだ。つまり、これは反物語といえる。」「作者の目は真剣だが、文章の衒いや荒さがそれを伝えにくくしている。」
吉田修一
男29歳
3 「母の不在感がよく出ているが、技巧的な手つきが逆に訴求力を削ぐ。」
広谷鏡子
女37歳
3 「夫の造型に疑問が残る。」
藤沢周
男39歳
5 「単に美しい対象より、醜く異様で、危険な刺を含む異性に、躰ごと触れたいという性的衝動をとらえ、一つの発見を感じる。しかし、比喩を多用した文章の感覚的な凝り方は、世界を狭く窮屈にしている。」
弓透子
女(65歳)
4 「三男のエイズ発症に当面した夫が、あざやかに描けている。しかし、この母親の視点は肝心な部分で情合いに流され、作者としての事態の追求が甘くなっている。」
  「今回どの作品も、当選作にはもう一つ背丈が足りない、という印象だった。」
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他の選考委員
丸谷才一
石原慎太郎
古井由吉
日野啓三
河野多恵子
三浦哲郎
黒井千次
宮本輝
池澤夏樹
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選考委員
河野多恵子女71歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
惜しい作品 総行数36 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
阿部和重
男29歳
0  
吉田修一
男29歳
5 「最も完成度が高かった。」「ただ、張りが足りない。しかし、前回の候補作「最後の息子」が示していた資質のよさは今度の作品にも表われている。」
広谷鏡子
女37歳
0  
藤沢周
男39歳
9 「作者はこういうテーマには抽象性が必要なことを承知しているらしい。感覚の表現にその種の形容語を熱心に作りだしている。だが、作品の基盤がべた(原文傍点)リアリズムなのである。ヴァイオリンを弾くには、弓の使い方ばかりでなく、弦の張り工合、左手の指の押え方からして大事なのだ。」
弓透子
女(65歳)
11 「惜しい作品だった。」「(引用者注:主人公である母親の鈴子と夫が)やがて、息子の感染がレイプによるものだったらしいことに気づく。その時の鈴子の反応こそ、この作品の核であるべきだった。」「成功しておれば、エイズを扱った作品に新機軸をもたらしたであろうし、さらに母親なるものにとっての息子というものの未知の部分に光を当て得て、新鮮な普遍性を示すことにもなったであろう。」
  「(引用者注:受賞作なしは)たまたま佳作に出会えなかっただけのことで、そこに何等かの傾向を問おうとするのは、早計ではあるまいか。」
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他の選考委員
丸谷才一
石原慎太郎
古井由吉
日野啓三
田久保英夫
三浦哲郎
黒井千次
宮本輝
池澤夏樹
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選考委員
三浦哲郎男66歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
感想 総行数30 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
阿部和重
男29歳
0  
吉田修一
男29歳
4 「地方都市を舞台にある男所帯の暮らしぶりを味わい深く描いていた「破片」の作者に、ひとこと次作を楽しみにしていると伝えたい。」
広谷鏡子
女37歳
0  
藤沢周
男39歳
0  
弓透子
女(65歳)
0  
  「今回は該当作がないのではないかと危ぶんでいたが、結果はその通りになった。」「みなそれぞれに野心を持ち、主題を持ち、それを表現するための技倆も方法も持ち合わせているのだが、出来上がった作品には肝腎ななにかが欠けている。読む者の心を突き動かす力が欠けている。」「ただ事のなりゆきを抜かりなく丁寧に記述しただけで推敲のあとなどまるで感じられないやわ(原文傍点)な文章の、いかに多いことか。」
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他の選考委員
丸谷才一
石原慎太郎
古井由吉
日野啓三
田久保英夫
河野多恵子
黒井千次
宮本輝
池澤夏樹
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選考委員
黒井千次男65歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数38 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
阿部和重
男29歳
8 「小説を作ろうとする意欲の強い作品として注目しつつ読んだ。しかし人と人との間に強引に割り込んで来る家庭教師の〈先生〉の行動が関係を押し曲げようとする過程に興味は覚えても、作品の目指すものがしかとは見えて来ない。」
吉田修一
男29歳
4 「地方都市の男世帯の生活感覚と青年の鬱屈に実感がこもっている。しかしこのくすんだような絵には、画面から突き上げる輝きが不足している。」
広谷鏡子
女37歳
3 「長過ぎる。切実な主題ではあるが、これとは別の切り口もあろう、との感想を持った。」
藤沢周
男39歳
11 「性を意識しはじめる少年を主人公に海辺の日々を描いてその限りでは鮮やかな印象を残すのだが、回想の枠組と内容の時間とがうまく噛み合っていない憾みが残った。」「もう一工夫が試みられて別種の光が差し込めば、性への関心の対象となる奇妙な女も、少年の姿も、違った陰影を帯びたのではあるまいか。」
弓透子
女(65歳)
9 「死に臨む美しい息子に対する母親の鎮魂の賦の趣きがある。」「土地がニューヨークであるために母子の関係が抽象性を帯びているのも頷ける。しかしそれなら、レイプの問題を含めて抽象の方向にもう一歩踏み込んで書いて欲しかった。経過の道幅が狭く、なだらかに作品が終ってしまった点が惜しまれる。」
  「今回の候補作は、いずれもそれなりの達成を見せながらも、この一作を、と強く推す気持ちになれぬ作品が並んだ。」
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他の選考委員
丸谷才一
石原慎太郎
古井由吉
日野啓三
田久保英夫
河野多恵子
三浦哲郎
宮本輝
池澤夏樹
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選考委員
宮本輝男50歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
大切な何かが足りない 総行数35 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
阿部和重
男29歳
4 「一部の評論家やマスコミの評価が高いそうだが、私にはその理由がわからない。言葉遊びに酔って、作中ではロボットが動いているにすぎない。」
吉田修一
男29歳
5 「内容がどうのこうのと言う前に、この題のあまりの工夫のなさにあきれる。」「読後、何の感動もなかった。」
広谷鏡子
女37歳
5 「素人の文章である。」「小説の要のところを描写でなく説明で逃げた。」
藤沢周
男39歳
6 「思春期の少年たちの性的衝動や、社会と向き合っていく時期の脈絡のない妄想を描いているが、それだけでしかなく、作品の奥から立ち上がってくる何かがない。」
弓透子
女(65歳)
5 「最終的に最も得点の多かった」「レイプされてエイズにかかった息子を見る母親の視線は、あまりにも淡彩すぎて、作者自らが小説の正念場との葛藤を避けたという印象をぬぐい切れない。」
  「今回、私は芥川賞に推せる作品をみつけることができなかった。」「どの候補作も、何かが足りない。そしてその何かは、極めて重要な何かである。」
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他の選考委員
丸谷才一
石原慎太郎
古井由吉
日野啓三
田久保英夫
河野多恵子
三浦哲郎
黒井千次
池澤夏樹
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選考委員
池澤夏樹男52歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
蛮勇の限界 総行数38 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
阿部和重
男29歳
23 「推した。難点はいろいろあるけれども、それを超えて蛮勇に近い勇気がある。」「自分勝手な思い込みと自己弁護・自己説明に終始するパラノイアの主人公を見事に作り出している。ストーカーとしての「先生」の性癖が「私」に移るからくりもおもしろい。」「言葉の過剰、無駄口ぶりが巧妙にこの種の人物像の典型を作っている。」「一次選考の段階で五つの候補作品に投じられた積極票四票(全体でたった四票!)のうちの二票はこれに寄せられたものだ。蛮勇の力と限界。」
吉田修一
男29歳
3 「「女なき男たち」というヘミングウェイ風の主題がもう一つくっきり見えない。」
広谷鏡子
女37歳
9 「文章はまずまずだが、話の組立てはノンフィクションである。この先でもう一つ引っ繰り返してこそ小説ではないか。」
藤沢周
男39歳
2 「これだけのディテイルを担うに足るボディーがない。」
弓透子
女(65歳)
9 「母親の視点というところに拘束されて話が充分に展開しない。奔放なものが足りない。」
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他の選考委員
丸谷才一
石原慎太郎
古井由吉
日野啓三
田久保英夫
河野多恵子
三浦哲郎
黒井千次
宮本輝
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候補者・作品
阿部和重男29歳×各選考委員 
「トライアングルズ」
短篇 112
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
丸谷才一
男72歳
0  
石原慎太郎
男65歳
0  
古井由吉
男60歳
7 「報告のスタイルである。これは不自然と言われればそれまでだが、すぐれた試みと私は読んだ。この子供の「大人語り」はおのずと、周囲の成人たちのありさまを諧謔の光で照らすはずだ。もっとじっくりと、ハレイションを避けて、照らすべきだった。」
日野啓三
男68歳
0  
田久保英夫
男69歳
22 「とくに私に惜しく思われた」「一見とぼけて皮肉な筆致の底から、作者の真率なモティーフが感じとれた。」「「ストーキング」「不倫」といった流行の風俗を、ことさら使いながら、世に氾濫する男女の《物語》を辛辣にうち砕こうとするかのようだ。つまり、これは反物語といえる。」「作者の目は真剣だが、文章の衒いや荒さがそれを伝えにくくしている。」
河野多恵子
女71歳
0  
三浦哲郎
男66歳
0  
黒井千次
男65歳
8 「小説を作ろうとする意欲の強い作品として注目しつつ読んだ。しかし人と人との間に強引に割り込んで来る家庭教師の〈先生〉の行動が関係を押し曲げようとする過程に興味は覚えても、作品の目指すものがしかとは見えて来ない。」
宮本輝
男50歳
4 「一部の評論家やマスコミの評価が高いそうだが、私にはその理由がわからない。言葉遊びに酔って、作中ではロボットが動いているにすぎない。」
池澤夏樹
男52歳
23 「推した。難点はいろいろあるけれども、それを超えて蛮勇に近い勇気がある。」「自分勝手な思い込みと自己弁護・自己説明に終始するパラノイアの主人公を見事に作り出している。ストーカーとしての「先生」の性癖が「私」に移るからくりもおもしろい。」「言葉の過剰、無駄口ぶりが巧妙にこの種の人物像の典型を作っている。」「一次選考の段階で五つの候補作品に投じられた積極票四票(全体でたった四票!)のうちの二票はこれに寄せられたものだ。蛮勇の力と限界。」
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他の候補作
吉田修一
「破片」
広谷鏡子
「げつようびのこども」
藤沢周
「砂と光」
弓透子
「ハドソン河の夕日」
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候補者・作品
吉田修一男29歳×各選考委員 
「破片」
短篇 123
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
丸谷才一
男72歳
0  
石原慎太郎
男65歳
5 「たいそう読みやすくある種の納得もあるのだが、それが、一つの文学に触れ得たというカタルシスにまでなり切れない。」
古井由吉
男60歳
5 「下の息子の哀しい性(ルビ:さが)も伝わり、佳篇となる要素も備わった。しかし作者の欲求は、好短篇をモノするというのと、別なところにあったのではないか。」
日野啓三
男68歳
6 「細部は良く描けているが、連関を失った破片から美しいものを創造しようとするメッセージの描き方に自信と力が欲しい。」
田久保英夫
男69歳
3 「母の不在感がよく出ているが、技巧的な手つきが逆に訴求力を削ぐ。」
河野多恵子
女71歳
5 「最も完成度が高かった。」「ただ、張りが足りない。しかし、前回の候補作「最後の息子」が示していた資質のよさは今度の作品にも表われている。」
三浦哲郎
男66歳
4 「地方都市を舞台にある男所帯の暮らしぶりを味わい深く描いていた「破片」の作者に、ひとこと次作を楽しみにしていると伝えたい。」
黒井千次
男65歳
4 「地方都市の男世帯の生活感覚と青年の鬱屈に実感がこもっている。しかしこのくすんだような絵には、画面から突き上げる輝きが不足している。」
宮本輝
男50歳
5 「内容がどうのこうのと言う前に、この題のあまりの工夫のなさにあきれる。」「読後、何の感動もなかった。」
池澤夏樹
男52歳
3 「「女なき男たち」というヘミングウェイ風の主題がもう一つくっきり見えない。」
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他の候補作
阿部和重
「トライアングルズ」
広谷鏡子
「げつようびのこども」
藤沢周
「砂と光」
弓透子
「ハドソン河の夕日」
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候補者・作品
広谷鏡子女37歳×各選考委員 
「げつようびのこども」
中篇 163
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
丸谷才一
男72歳
0  
石原慎太郎
男65歳
0  
古井由吉
男60歳
0  
日野啓三
男68歳
0  
田久保英夫
男69歳
3 「夫の造型に疑問が残る。」
河野多恵子
女71歳
0  
三浦哲郎
男66歳
0  
黒井千次
男65歳
3 「長過ぎる。切実な主題ではあるが、これとは別の切り口もあろう、との感想を持った。」
宮本輝
男50歳
5 「素人の文章である。」「小説の要のところを描写でなく説明で逃げた。」
池澤夏樹
男52歳
9 「文章はまずまずだが、話の組立てはノンフィクションである。この先でもう一つ引っ繰り返してこそ小説ではないか。」
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他の候補作
阿部和重
「トライアングルズ」
吉田修一
「破片」
藤沢周
「砂と光」
弓透子
「ハドソン河の夕日」
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候補者・作品
藤沢周男39歳×各選考委員 
「砂と光」
短篇 79
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
丸谷才一
男72歳
14 「筋のある話は見せかけだけで、作中人物の感慨ないし感懐だけが中身になつてゐる。」「登場人物たちの関係のもつれもなく、物語の始め半ば終りもない。」「これは短篇小説ではなくてスケッチだらう。スケッチとしては、基本的な筆力がある。この作者が本式の短篇小説に挑戦することを望む。」
石原慎太郎
男65歳
0  
古井由吉
男60歳
6 「作中の比喩の多さは半端でない。これを私は、著者と粘りくらべで、片端から吟味したところが、使い捨ての覚悟ではあるが、けっして安易なものではなかった。評価はどうあれ、何かは残った、と著者はひとまずの安堵の中にあるのではないか。」
日野啓三
男68歳
4 「構成にも文章にももう少し、柔らかさとか余裕の力のようなものが欲しい。これだけでは奥行のない風景画面のようだ。」
田久保英夫
男69歳
5 「単に美しい対象より、醜く異様で、危険な刺を含む異性に、躰ごと触れたいという性的衝動をとらえ、一つの発見を感じる。しかし、比喩を多用した文章の感覚的な凝り方は、世界を狭く窮屈にしている。」
河野多恵子
女71歳
9 「作者はこういうテーマには抽象性が必要なことを承知しているらしい。感覚の表現にその種の形容語を熱心に作りだしている。だが、作品の基盤がべた(原文傍点)リアリズムなのである。ヴァイオリンを弾くには、弓の使い方ばかりでなく、弦の張り工合、左手の指の押え方からして大事なのだ。」
三浦哲郎
男66歳
0  
黒井千次
男65歳
11 「性を意識しはじめる少年を主人公に海辺の日々を描いてその限りでは鮮やかな印象を残すのだが、回想の枠組と内容の時間とがうまく噛み合っていない憾みが残った。」「もう一工夫が試みられて別種の光が差し込めば、性への関心の対象となる奇妙な女も、少年の姿も、違った陰影を帯びたのではあるまいか。」
宮本輝
男50歳
6 「思春期の少年たちの性的衝動や、社会と向き合っていく時期の脈絡のない妄想を描いているが、それだけでしかなく、作品の奥から立ち上がってくる何かがない。」
池澤夏樹
男52歳
2 「これだけのディテイルを担うに足るボディーがない。」
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他の候補作
阿部和重
「トライアングルズ」
吉田修一
「破片」
広谷鏡子
「げつようびのこども」
弓透子
「ハドソン河の夕日」
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候補者・作品
弓透子女(65歳)×各選考委員 
「ハドソン河の夕日」
短篇 130
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
丸谷才一
男72歳
20 「話の筋のある小説らしい仕立てなのがいい。本当はそこに問題がひそんでゐるのだが、一応のところこれは取り柄である。」「話の筋にはいろいろ無理があるし、きれい事にしたいといふ欲求が作者の心の底にあるため、小説的な際どい所への迫り方が足りない。何もむやみ汚すことはないけれど、触れなければならないことはやはりはふつて置いてはいけないはずなのに、それを怠ることで小説の形を整へてゐる気配なのは残念な気がした。」
石原慎太郎
男65歳
12 「エイズに関しての小説として新しい視点を構えてはいるが、焦点がばらばらで迫力に欠ける。」「なるほどニューヨークになら在り得るだろう男同士のレイプという悲劇の鍵はショッキングではあるが、それに対する主人公や語り手である母親の反応が鈍すぎる。」
古井由吉
男60歳
6 「この世に短期滞在するような幸せな息子と、それにたいする畏愛とでもいうような母親の情とを、抑えのぎりぎり利いた甘やかさで表わしたのは、今の世では作品の功徳だと私は受けた。レイプの衝撃を男親に受け止めさせたら、母子の情の美しさは、さらに残酷に浮き出したことだろう。」
日野啓三
男68歳
5 「いわばマリアの嘆きと恍惚を書こうとした意欲作、と私は読んだが、神話的表現の自覚と技術がいまひとつ足らない。」
田久保英夫
男69歳
4 「三男のエイズ発症に当面した夫が、あざやかに描けている。しかし、この母親の視点は肝心な部分で情合いに流され、作者としての事態の追求が甘くなっている。」
河野多恵子
女71歳
11 「惜しい作品だった。」「(引用者注:主人公である母親の鈴子と夫が)やがて、息子の感染がレイプによるものだったらしいことに気づく。その時の鈴子の反応こそ、この作品の核であるべきだった。」「成功しておれば、エイズを扱った作品に新機軸をもたらしたであろうし、さらに母親なるものにとっての息子というものの未知の部分に光を当て得て、新鮮な普遍性を示すことにもなったであろう。」
三浦哲郎
男66歳
0  
黒井千次
男65歳
9 「死に臨む美しい息子に対する母親の鎮魂の賦の趣きがある。」「土地がニューヨークであるために母子の関係が抽象性を帯びているのも頷ける。しかしそれなら、レイプの問題を含めて抽象の方向にもう一歩踏み込んで書いて欲しかった。経過の道幅が狭く、なだらかに作品が終ってしまった点が惜しまれる。」
宮本輝
男50歳
5 「最終的に最も得点の多かった」「レイプされてエイズにかかった息子を見る母親の視線は、あまりにも淡彩すぎて、作者自らが小説の正念場との葛藤を避けたという印象をぬぐい切れない。」
池澤夏樹
男52歳
9 「母親の視点というところに拘束されて話が充分に展開しない。奔放なものが足りない。」
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他の候補作
阿部和重
「トライアングルズ」
吉田修一
「破片」
広谷鏡子
「げつようびのこども」
藤沢周
「砂と光」
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