芥川賞のすべて・のようなもの
第124回
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平成12年/2000年下半期
(平成13年/2001年1月16日決定発表/『文藝春秋』平成13年/2001年3月号選評掲載)
選考委員  三浦哲郎
男69歳
宮本輝
男53歳
日野啓三
男71歳
石原慎太郎
男68歳
池澤夏樹
男55歳
黒井千次
男68歳
古井由吉
男63歳
田久保英夫
男72歳
河野多恵子
女74歳
村上龍
男48歳
選評総行数  34 49 44 36 38 36 35 43 37 30
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
青来有一 「聖水」
190
男42歳
11 9 4 24 17 11 28 21 5 0
堀江敏幸 「熊の敷石」
117
男37歳
10 12 22 0 16 15 4 24 15 10
大道珠貴 「スッポン」
121
女34歳
0 4 0 0 0 0 0 0 4 0
吉田修一 「熱帯魚」
168
男32歳
0 6 3 0 0 0 0 0 4 17
玄侑宗久 「水の舳先」
165
男44歳
6 11 0 0 0 0 29 0 12 0
黒川創 「もどろき」
213
男39歳
8 15 7 0 0 7 0 0 2 0
                   
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『芥川賞全集 第十九巻』平成14年/2002年12月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』平成13年/2001年3月号)
1行当たりの文字数:24字


選考委員
三浦哲郎男69歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
感想 総行数34 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
青来有一
男42歳
11 「私は結局、(引用者中略)推した」「これまでの作品に比べて文章も構成も格段に優れていると思った。ガンを病む父親を中心に背教キリシタンの末裔と伝えられる一族の入り組んだ人間模様と皮肉な運命を力まずに描いて破綻がない。」
堀江敏幸
男37歳
10 「隙のない堅固な文章が印象的であった。」「けれども、欠点のない、どこからも文句のつけようのない立派な散文でも、それが必ずしもそのままよい小説の文章になるとは限らないのだから、厄介である。」「この作品はあまりにもエッセー風で小説としての魅力に乏しかった。」
大道珠貴
女34歳
0  
吉田修一
男32歳
0  
玄侑宗久
男44歳
6 「(引用者注:「もどろき」と共に)興味深く読んだが、(引用者中略)納得しかねる部分があって推すまでには至らなかった。」「適確な描写力には注目した。けれども、最後の湯灌の場面は書きすぎだろう。」
黒川創
男39歳
8 「(引用者注:「水の舳先」と共に)興味深く読んだが、(引用者中略)納得しかねる部分があって推すまでには至らなかった。」「長すぎる。」「私には未推敲のままの習作にしか見えなかった。」
  「今回の候補作は水準が高く、粒ぞろいで、順位をつけるのが難しかった。」
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他の選考委員
宮本輝
日野啓三
石原慎太郎
池澤夏樹
黒井千次
古井由吉
田久保英夫
河野多恵子
村上龍
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選考委員
宮本輝男53歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
後半の弱さ 総行数49 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
青来有一
男42歳
9 「従来の氏の欠点であった「創る手つきの浅さ」といったものが改善されている。少々神がかり的なところがあるにすぎない人間が、周りに信奉者を得て、それらがいつのまにか一種のカルト集団へと増殖していくさまを予知させる部分は、これまでの青来氏を越える何かがある。」
堀江敏幸
男37歳
12 「私は積極的には推せなかった。」「作品の主題なのかどうなのか、熊の敷石なるものも、私には別段どうといったことのないただのエスプリにすぎないのではないかという感想しか持てなかった。」
大道珠貴
女34歳
4 「なによりも題が悪い。けれども大道氏も、いつでも大化けするだけの力を秘めている。」
吉田修一
男32歳
6 「これまでの氏の作品よりも格段に腕をあげている。それだけに、熱帯魚が何を意味するのか、(引用者中略)そこのところの散漫さが、余計に欠点として浮きあがってしまった。」
玄侑宗久
男44歳
11 「前半は申し分ないのだが、死期の迫った女性が主軸となる後半部の、とりわけ最後の風呂場の湯灌の場面で、首をひねらざるを得ないという意見には納得するしかなかった。」
黒川創
男39歳
15 「私は前半の、「自転車を愛した祖父」や、彼等三世代が暮らした京都市内の古い仕舞屋の描写に感心した。導入部もここち良くて、描こうとしている世界への密な筆運びも受賞に値いすると思ったが、もどろき伝承が主役となる後半の弱さを指摘されると、それに強く反発できなかった。」
  「候補作六篇、それぞれに作者の持ち味が出ていて、今回は豊作だという印象を抱いて選考会に出席した。」
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他の選考委員
三浦哲郎
日野啓三
石原慎太郎
池澤夏樹
黒井千次
古井由吉
田久保英夫
河野多恵子
村上龍
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選考委員
日野啓三男71歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
静かな知恵の言葉 総行数44 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
青来有一
男42歳
4 「この作者としてはこれまでの候補作品と比べると出色ではあったが、あったこと、起こったことを正面から受け取る素朴リアリズム風の知覚様式と直線的な物語り構造は退屈であった。」
堀江敏幸
男37歳
22 「「熊の敷石」のような派手でもどぎつくもない静かな短篇が、第一回投票から最高点を集めて逃げ切った」「よく見ると、(引用者中略)人間の心のゆがみや人間同士の関係のずれで偏光する精神の微妙な光も挿しこんでいて、緻密に感じとるとなかなか複雑で不気味でさえある非凡な作風なのであった。」
大道珠貴
女34歳
0  
吉田修一
男32歳
3 「素直な記述であったが、プロの小説家としては素直なだけでは足りない。」
玄侑宗久
男44歳
0  
黒川創
男39歳
7 「その文体と小説の作り方はくろうとはだしの巧みさであった。ただ京都の細長く奥深い家の作りのように、何かまだ見えない要素が隠されているようだ、というまだるっこさを拭えなかった。」
  「今回の候補作品は総じて水準に達したものばかりであった。」
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他の選考委員
三浦哲郎
宮本輝
石原慎太郎
池澤夏樹
黒井千次
古井由吉
田久保英夫
河野多恵子
村上龍
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選考委員
石原慎太郎男68歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
物語性の強さ 総行数36 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
青来有一
男42歳
24 「この作家が従来の作品が暗示していた可能性を裏書きして妥当な成長を遂げてきたことを証していると思う。」「この作者の特質は群像なりかなりの複数の人間たちを描ける力量にあって、それは前回の評にも記したが、良き素材を得れば悪くてもアーサー・ヘイリーほどの作品はものすることが出来るだろうが、今回の作品を読んでその上のレベルの作品をものせる可能性が十分あるものと思った。」
堀江敏幸
男37歳
0  
大道珠貴
女34歳
0  
吉田修一
男32歳
0  
玄侑宗久
男44歳
0  
黒川創
男39歳
0  
  「昨今、小説に関してその真髄であるべき物語性があまり斟酌されないような傾向だが、最後まで読者を引きずっていく力こそエンターテイナーの必要条件だが、それが芸術性の負の要因となることなどあり得まい。読みながら間をおかぬ訳にいかぬ小説など、退屈の同義語としかいいようない。」「そういう意味でも、青来氏以外の作品は私には論ずるに足りないものにしか思えなかった。」
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他の選考委員
三浦哲郎
宮本輝
日野啓三
池澤夏樹
黒井千次
古井由吉
田久保英夫
河野多恵子
村上龍
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選考委員
池澤夏樹男55歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
この二作品の間に 総行数38 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
青来有一
男42歳
17 「緻密で技術的な作品である。」「中心にあるテーマは「生きていくには信心はいらないが、死んでいくには信心がいる」という言葉である。ずいぶん安直な宗教観だと言うのは簡単だけれど、このあたりが死を前にした今の日本人の基本姿勢なのだろう。」「きちんと書けていて破綻もないし、受賞に価すると信じるが、それを突き抜けたものがない。」
堀江敏幸
男37歳
16 「言ってみれば破綻だらけだ。エッセーから小説になりきっていない。細部がゆるい。タイトルに魅力がない。」「しかし、内奥にはなかなか凄いものがある。ヨーロッパ人の思考法の精髄をさりげなく取り出して並べる手つきがいい。軽い展開の中に重い原石が散りばめられている。」「こういうものをありがたがるのは日本人のヨーロッパ・コンプレックスだという意見があったがそれは逆。もうヨーロッパに学ぶものはないと言い張る心理がヨーロッパ・コンプレックスである。」
大道珠貴
女34歳
0  
吉田修一
男32歳
0  
玄侑宗久
男44歳
0  
黒川創
男39歳
0  
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他の選考委員
三浦哲郎
宮本輝
日野啓三
石原慎太郎
黒井千次
古井由吉
田久保英夫
河野多恵子
村上龍
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選考委員
黒井千次男68歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
対照的な二作 総行数36 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
青来有一
男42歳
11 「様々の材料を集めて組み合わせ、積み上げ、小説の世界を生み出そうとした作品である。」「視点の広がりとストーリーを編み出す力は確かに認められるが、話の展開に比して人間の魂の凹凸の上を言葉が滑らかに進み過ぎる感が否めない。」
堀江敏幸
男37歳
15 「人と人との関りの内にある微妙な温もりを知的な言葉で刻み込もうとした大作品であるといえよう。民族の歴史の孕む必然と個々の偶然との織り成す人間の生の光景が、幾つものエピソードを通して浮上する。」
大道珠貴
女34歳
0  
吉田修一
男32歳
0  
玄侑宗久
男44歳
0  
黒川創
男39歳
7 「祖父、父、主人公と三代の生き方を追う力作であり、戦前、戦中、戦後を夫々の形で生きた家族像に惹かれた。現代史の中で人間の生はどうしたら完結するか、という問いかけは読後にずっしり残る。」
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他の選考委員
三浦哲郎
宮本輝
日野啓三
石原慎太郎
池澤夏樹
古井由吉
田久保英夫
河野多恵子
村上龍
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選考委員
古井由吉男63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
水の誘い 総行数35 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
青来有一
男42歳
28 「(引用者注:「水の舳先」と共に)生苦病苦からの快癒を願うばかりでなく、人を生から死へやすらかに渡す霊験のひそむものと、これを現に頼む人間の在るところの、「水」の話である。」「とにかく救いを求める切羽詰まった人の姿がそこにある。凄まじいほどにストイックなところまで行くが、かならずしもファナティックではない。絶望と楽天がひとつに融ける。それを見て取るだけの、広い目が両作品に備っていると思われる。」
堀江敏幸
男37歳
4 「人がどこそこに在る、住まう、あるいは滞在する心において、二人(ルビ:ににん)の間でも交差のしようもないズレがある。いや、むしろ驚くべきはそれでも時折話の通るということだ、と感じさせる作品である。」
大道珠貴
女34歳
0  
吉田修一
男32歳
0  
玄侑宗久
男44歳
29 「(引用者注:「聖水」と共に)生苦病苦からの快癒を願うばかりでなく、人を生から死へやすらかに渡す霊験のひそむものと、これを現に頼む人間の在るところの、「水」の話である。」「とにかく救いを求める切羽詰まった人の姿がそこにある。凄まじいほどにストイックなところまで行くが、かならずしもファナティックではない。絶望と楽天がひとつに融ける。それを見て取るだけの、広い目が両作品に備っていると思われる。」
黒川創
男39歳
0  
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他の選考委員
三浦哲郎
宮本輝
日野啓三
石原慎太郎
池澤夏樹
黒井千次
田久保英夫
河野多恵子
村上龍
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選考委員
田久保英夫男72歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
物語への問い 総行数43 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
青来有一
男42歳
21 「物語づくりに徹して、描きぬこうとする作品」「渾身で物語を展開しようとする力篇だ。しかし、主人公の青年の、死に瀕した父親が、互いの事業を合併して托そうという、教祖風の男の実体がよく伝わってこない。」「憤怒する父の臨終を「オラショ」で和めることも、若い息子と娘が結ばれるらしい暗示も、物語の終りに符節が合いすぎる。」
堀江敏幸
男37歳
24 「(引用者注:物語づくりを)あえて底に沈めようとする作品」「安易な虚構のなかの人物の対立や波乱と違い、私たちの卑近な日常では、個人と個人の関係には、多くこういう言葉に置き換えがたい契機が働く。」「あまりに知的傾斜がすぎ、ときに廻りくどい文脈も見えて、欠点もあるが、私は小説への一つの活路を願って、これを推した。」
大道珠貴
女34歳
0  
吉田修一
男32歳
0  
玄侑宗久
男44歳
0  
黒川創
男39歳
0  
  「(引用者注:受賞二作以外の)ほかの作品も水準が揃い、ここで触れえないのが残念だ。」
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他の選考委員
三浦哲郎
宮本輝
日野啓三
石原慎太郎
池澤夏樹
黒井千次
古井由吉
河野多恵子
村上龍
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選考委員
河野多恵子女74歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
六候補作について 総行数37 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
青来有一
男42歳
5 「後半に聊か無駄が混じっているが、これまでの候補作でかなりよかった「泥海の兄弟」「信長の守護神」に較べても成長している。」
堀江敏幸
男37歳
15 「とても推せなかった。」「彼等(引用者注:主人公とその友人)の会話、幾つものエピソード、食事や風景のこと、いずれもエスプリもどき、知性まがいの筆触しか感じられない。「私」のような閲歴であるらしい作者がそういう自分を直接に当てにして「私」を書いているからだろう。」
大道珠貴
女34歳
4 「これほど作品に表情(作品としての表情)の出せる人は珍しい。筋骨の発達を願っている。」
吉田修一
男32歳
4 「いつも人物の描き方に妙味があるが、設定あるいは作中の出来事に弱点があるせいか、手応えが充分ではない。」
玄侑宗久
男44歳
12 「「玄山」は僧侶の描いた僧侶に堕していない。作者の僧侶としての経験や認識が基盤になっておりながら、作家としての眼と姿勢が終始鮮やかに感じられ、私は専らこれを推した。」
黒川創
男39歳
2 「書きたいことがあまりに多く、しかも実力不足で破綻している。」
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他の選考委員
三浦哲郎
宮本輝
日野啓三
石原慎太郎
池澤夏樹
黒井千次
古井由吉
田久保英夫
村上龍
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選考委員
村上龍男48歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数30 (1行=24字)
候補 評価 行数 評言
青来有一
男42歳
0  
堀江敏幸
男37歳
10 「候補作の中で(引用者注:「熱帯魚」に次いで)二番目に好きな作品だった。他者とのコミュニケーションというのは簡単ではない、ということを作者は描いているのだと判断した。」「コミュニケーション不全という普遍的なモチーフが、ペダンチックに単純に堕するのを、かろうじて防いでいる。ただ冒頭の夢のシーンは不要なのではないかと思った。」
大道珠貴
女34歳
0  
吉田修一
男32歳
17 「面白く読んだ。」「自然発生的に起こるエピソードにも、周囲の人々との会話にもリアリティを感じた。だが、同棲している子持ちの女性が、主人公に向かって最後にほうで言う台詞が致命的だったように思う。」「しかし、好きなディテールがたくさんあり、受賞に値する作品だと思ったので、わたしは一番に推した」
玄侑宗久
男44歳
0  
黒川創
男39歳
0  
  「今回は前回より、作品の密度が相対的に高かった。」
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他の選考委員
三浦哲郎
宮本輝
日野啓三
石原慎太郎
池澤夏樹
黒井千次
古井由吉
田久保英夫
河野多恵子
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受賞者・作品
青来有一男42歳×各選考委員 
「聖水」
中篇 190
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
三浦哲郎
男69歳
11 「私は結局、(引用者中略)推した」「これまでの作品に比べて文章も構成も格段に優れていると思った。ガンを病む父親を中心に背教キリシタンの末裔と伝えられる一族の入り組んだ人間模様と皮肉な運命を力まずに描いて破綻がない。」
宮本輝
男53歳
9 「従来の氏の欠点であった「創る手つきの浅さ」といったものが改善されている。少々神がかり的なところがあるにすぎない人間が、周りに信奉者を得て、それらがいつのまにか一種のカルト集団へと増殖していくさまを予知させる部分は、これまでの青来氏を越える何かがある。」
日野啓三
男71歳
4 「この作者としてはこれまでの候補作品と比べると出色ではあったが、あったこと、起こったことを正面から受け取る素朴リアリズム風の知覚様式と直線的な物語り構造は退屈であった。」
石原慎太郎
男68歳
24 「この作家が従来の作品が暗示していた可能性を裏書きして妥当な成長を遂げてきたことを証していると思う。」「この作者の特質は群像なりかなりの複数の人間たちを描ける力量にあって、それは前回の評にも記したが、良き素材を得れば悪くてもアーサー・ヘイリーほどの作品はものすることが出来るだろうが、今回の作品を読んでその上のレベルの作品をものせる可能性が十分あるものと思った。」
池澤夏樹
男55歳
17 「緻密で技術的な作品である。」「中心にあるテーマは「生きていくには信心はいらないが、死んでいくには信心がいる」という言葉である。ずいぶん安直な宗教観だと言うのは簡単だけれど、このあたりが死を前にした今の日本人の基本姿勢なのだろう。」「きちんと書けていて破綻もないし、受賞に価すると信じるが、それを突き抜けたものがない。」
黒井千次
男68歳
11 「様々の材料を集めて組み合わせ、積み上げ、小説の世界を生み出そうとした作品である。」「視点の広がりとストーリーを編み出す力は確かに認められるが、話の展開に比して人間の魂の凹凸の上を言葉が滑らかに進み過ぎる感が否めない。」
古井由吉
男63歳
28 「(引用者注:「水の舳先」と共に)生苦病苦からの快癒を願うばかりでなく、人を生から死へやすらかに渡す霊験のひそむものと、これを現に頼む人間の在るところの、「水」の話である。」「とにかく救いを求める切羽詰まった人の姿がそこにある。凄まじいほどにストイックなところまで行くが、かならずしもファナティックではない。絶望と楽天がひとつに融ける。それを見て取るだけの、広い目が両作品に備っていると思われる。」
田久保英夫
男72歳
21 「物語づくりに徹して、描きぬこうとする作品」「渾身で物語を展開しようとする力篇だ。しかし、主人公の青年の、死に瀕した父親が、互いの事業を合併して托そうという、教祖風の男の実体がよく伝わってこない。」「憤怒する父の臨終を「オラショ」で和めることも、若い息子と娘が結ばれるらしい暗示も、物語の終りに符節が合いすぎる。」
河野多恵子
女74歳
5 「後半に聊か無駄が混じっているが、これまでの候補作でかなりよかった「泥海の兄弟」「信長の守護神」に較べても成長している。」
村上龍
男48歳
0  
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他の候補作
堀江敏幸
「熊の敷石」
大道珠貴
「スッポン」
吉田修一
「熱帯魚」
玄侑宗久
「水の舳先」
黒川創
「もどろき」
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受賞者・作品
堀江敏幸男37歳×各選考委員 
「熊の敷石」
短篇 117
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
三浦哲郎
男69歳
10 「隙のない堅固な文章が印象的であった。」「けれども、欠点のない、どこからも文句のつけようのない立派な散文でも、それが必ずしもそのままよい小説の文章になるとは限らないのだから、厄介である。」「この作品はあまりにもエッセー風で小説としての魅力に乏しかった。」
宮本輝
男53歳
12 「私は積極的には推せなかった。」「作品の主題なのかどうなのか、熊の敷石なるものも、私には別段どうといったことのないただのエスプリにすぎないのではないかという感想しか持てなかった。」
日野啓三
男71歳
22 「「熊の敷石」のような派手でもどぎつくもない静かな短篇が、第一回投票から最高点を集めて逃げ切った」「よく見ると、(引用者中略)人間の心のゆがみや人間同士の関係のずれで偏光する精神の微妙な光も挿しこんでいて、緻密に感じとるとなかなか複雑で不気味でさえある非凡な作風なのであった。」
石原慎太郎
男68歳
0  
池澤夏樹
男55歳
16 「言ってみれば破綻だらけだ。エッセーから小説になりきっていない。細部がゆるい。タイトルに魅力がない。」「しかし、内奥にはなかなか凄いものがある。ヨーロッパ人の思考法の精髄をさりげなく取り出して並べる手つきがいい。軽い展開の中に重い原石が散りばめられている。」「こういうものをありがたがるのは日本人のヨーロッパ・コンプレックスだという意見があったがそれは逆。もうヨーロッパに学ぶものはないと言い張る心理がヨーロッパ・コンプレックスである。」
黒井千次
男68歳
15 「人と人との関りの内にある微妙な温もりを知的な言葉で刻み込もうとした大作品であるといえよう。民族の歴史の孕む必然と個々の偶然との織り成す人間の生の光景が、幾つものエピソードを通して浮上する。」
古井由吉
男63歳
4 「人がどこそこに在る、住まう、あるいは滞在する心において、二人(ルビ:ににん)の間でも交差のしようもないズレがある。いや、むしろ驚くべきはそれでも時折話の通るということだ、と感じさせる作品である。」
田久保英夫
男72歳
24 「(引用者注:物語づくりを)あえて底に沈めようとする作品」「安易な虚構のなかの人物の対立や波乱と違い、私たちの卑近な日常では、個人と個人の関係には、多くこういう言葉に置き換えがたい契機が働く。」「あまりに知的傾斜がすぎ、ときに廻りくどい文脈も見えて、欠点もあるが、私は小説への一つの活路を願って、これを推した。」
河野多恵子
女74歳
15 「とても推せなかった。」「彼等(引用者注:主人公とその友人)の会話、幾つものエピソード、食事や風景のこと、いずれもエスプリもどき、知性まがいの筆触しか感じられない。「私」のような閲歴であるらしい作者がそういう自分を直接に当てにして「私」を書いているからだろう。」
村上龍
男48歳
10 「候補作の中で(引用者注:「熱帯魚」に次いで)二番目に好きな作品だった。他者とのコミュニケーションというのは簡単ではない、ということを作者は描いているのだと判断した。」「コミュニケーション不全という普遍的なモチーフが、ペダンチックに単純に堕するのを、かろうじて防いでいる。ただ冒頭の夢のシーンは不要なのではないかと思った。」
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他の候補作
青来有一
「聖水」
大道珠貴
「スッポン」
吉田修一
「熱帯魚」
玄侑宗久
「水の舳先」
黒川創
「もどろき」
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候補者・作品
大道珠貴女34歳×各選考委員 
「スッポン」
短篇 121
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
三浦哲郎
男69歳
0  
宮本輝
男53歳
4 「なによりも題が悪い。けれども大道氏も、いつでも大化けするだけの力を秘めている。」
日野啓三
男71歳
0  
石原慎太郎
男68歳
0  
池澤夏樹
男55歳
0  
黒井千次
男68歳
0  
古井由吉
男63歳
0  
田久保英夫
男72歳
0  
河野多恵子
女74歳
4 「これほど作品に表情(作品としての表情)の出せる人は珍しい。筋骨の発達を願っている。」
村上龍
男48歳
0  
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他の候補作
青来有一
「聖水」
堀江敏幸
「熊の敷石」
吉田修一
「熱帯魚」
玄侑宗久
「水の舳先」
黒川創
「もどろき」
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候補者・作品
吉田修一男32歳×各選考委員 
「熱帯魚」
中篇 168
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
三浦哲郎
男69歳
0  
宮本輝
男53歳
6 「これまでの氏の作品よりも格段に腕をあげている。それだけに、熱帯魚が何を意味するのか、(引用者中略)そこのところの散漫さが、余計に欠点として浮きあがってしまった。」
日野啓三
男71歳
3 「素直な記述であったが、プロの小説家としては素直なだけでは足りない。」
石原慎太郎
男68歳
0  
池澤夏樹
男55歳
0  
黒井千次
男68歳
0  
古井由吉
男63歳
0  
田久保英夫
男72歳
0  
河野多恵子
女74歳
4 「いつも人物の描き方に妙味があるが、設定あるいは作中の出来事に弱点があるせいか、手応えが充分ではない。」
村上龍
男48歳
17 「面白く読んだ。」「自然発生的に起こるエピソードにも、周囲の人々との会話にもリアリティを感じた。だが、同棲している子持ちの女性が、主人公に向かって最後にほうで言う台詞が致命的だったように思う。」「しかし、好きなディテールがたくさんあり、受賞に値する作品だと思ったので、わたしは一番に推した」
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他の候補作
青来有一
「聖水」
堀江敏幸
「熊の敷石」
大道珠貴
「スッポン」
玄侑宗久
「水の舳先」
黒川創
「もどろき」
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候補者・作品
玄侑宗久男44歳×各選考委員 
「水の舳先」
中篇 165
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
三浦哲郎
男69歳
6 「(引用者注:「もどろき」と共に)興味深く読んだが、(引用者中略)納得しかねる部分があって推すまでには至らなかった。」「適確な描写力には注目した。けれども、最後の湯灌の場面は書きすぎだろう。」
宮本輝
男53歳
11 「前半は申し分ないのだが、死期の迫った女性が主軸となる後半部の、とりわけ最後の風呂場の湯灌の場面で、首をひねらざるを得ないという意見には納得するしかなかった。」
日野啓三
男71歳
0  
石原慎太郎
男68歳
0  
池澤夏樹
男55歳
0  
黒井千次
男68歳
0  
古井由吉
男63歳
29 「(引用者注:「聖水」と共に)生苦病苦からの快癒を願うばかりでなく、人を生から死へやすらかに渡す霊験のひそむものと、これを現に頼む人間の在るところの、「水」の話である。」「とにかく救いを求める切羽詰まった人の姿がそこにある。凄まじいほどにストイックなところまで行くが、かならずしもファナティックではない。絶望と楽天がひとつに融ける。それを見て取るだけの、広い目が両作品に備っていると思われる。」
田久保英夫
男72歳
0  
河野多恵子
女74歳
12 「「玄山」は僧侶の描いた僧侶に堕していない。作者の僧侶としての経験や認識が基盤になっておりながら、作家としての眼と姿勢が終始鮮やかに感じられ、私は専らこれを推した。」
村上龍
男48歳
0  
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他の候補作
青来有一
「聖水」
堀江敏幸
「熊の敷石」
大道珠貴
「スッポン」
吉田修一
「熱帯魚」
黒川創
「もどろき」
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候補者・作品
黒川創男39歳×各選考委員 
「もどろき」
中篇 213
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
三浦哲郎
男69歳
8 「(引用者注:「水の舳先」と共に)興味深く読んだが、(引用者中略)納得しかねる部分があって推すまでには至らなかった。」「長すぎる。」「私には未推敲のままの習作にしか見えなかった。」
宮本輝
男53歳
15 「私は前半の、「自転車を愛した祖父」や、彼等三世代が暮らした京都市内の古い仕舞屋の描写に感心した。導入部もここち良くて、描こうとしている世界への密な筆運びも受賞に値いすると思ったが、もどろき伝承が主役となる後半の弱さを指摘されると、それに強く反発できなかった。」
日野啓三
男71歳
7 「その文体と小説の作り方はくろうとはだしの巧みさであった。ただ京都の細長く奥深い家の作りのように、何かまだ見えない要素が隠されているようだ、というまだるっこさを拭えなかった。」
石原慎太郎
男68歳
0  
池澤夏樹
男55歳
0  
黒井千次
男68歳
7 「祖父、父、主人公と三代の生き方を追う力作であり、戦前、戦中、戦後を夫々の形で生きた家族像に惹かれた。現代史の中で人間の生はどうしたら完結するか、という問いかけは読後にずっしり残る。」
古井由吉
男63歳
0  
田久保英夫
男72歳
0  
河野多恵子
女74歳
2 「書きたいことがあまりに多く、しかも実力不足で破綻している。」
村上龍
男48歳
0  
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他の候補作
青来有一
「聖水」
堀江敏幸
「熊の敷石」
大道珠貴
「スッポン」
吉田修一
「熱帯魚」
玄侑宗久
「水の舳先」
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