芥川賞のすべて・のようなもの
第37回
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昭和32年/1957年上半期
(昭和32年/1957年7月22日決定発表/『文藝春秋』昭和32年/1957年9月号選評掲載)
選考委員  石川達三
男52歳
舟橋聖一
男52歳
丹羽文雄
男52歳
川端康成
男58歳
佐藤春夫
男65歳
井上靖
男50歳
中村光夫
男46歳
瀧井孝作
男63歳
宇野浩二
男65歳
選評総行数  28 57 27 23 32 34 26 31 92
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
菊村到 「硫黄島」等
68
男32歳
18 30 7 13 25 24 17 11 23
北杜夫 「狂詩」
106
男30歳
0 0 5 0 0 2 0 1 9
小池多米司 「雪子」
111
男(31歳)
2 7 4 0 0 3 0 1 16
島村利正 「残菊抄」
71
男45歳
6 2 8 3 5 4 3 11 16
相見とし子 「魔法瓶」
102
女(32歳)
1 0 7 2 9 6 3 5 19
津田信 「風の中の」
120
男31歳
6 9 4 0 0 2 3 3 14
                 
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『芥川賞全集 第五巻』昭和57年/1982年6月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和32年/1957年9月号)
1行当たりの文字数:26字


選考委員
石川達三男52歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
満場一致 総行数28 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
菊村到
男32歳
18 「多少の異論はあったけれども、大体満場一致と云ってもいいような形で、菊村君にきまった。」「今後相当多作する人ではないかという予想をした選者も二三あった。私もそう思う。」「巧みなストーリーライターではあるが、(引用者中略・注:質的な)浅さから逃れている。もっと奥ふかい、不気味なものを描いている。」
北杜夫
男30歳
0  
小池多米司
男(31歳)
2 「書くことの楽しみに溺れているのではないかと思う。」
島村利正
男45歳
6 「評論家に云わせれば一言にして(風俗小説)と云うのではないだろうか。小説が風俗を描写することの興味だけで終っては、足りないものがある。」
相見とし子
女(32歳)
1 「難解な文章について一考を要する。」
津田信
男31歳
6 「評論家に云わせれば一言にして(風俗小説)と云うのではないだろうか。小説が風俗を描写することの興味だけで終っては、足りないものがある。」
  「今度の候補作品は大体に於て、ストーリーライターが多かったように思う。その点ではみな達者に書いている。しかし私はもっと新人らしい野心や冒険を期待したい。」
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他の選考委員
舟橋聖一
丹羽文雄
川端康成
佐藤春夫
井上靖
中村光夫
瀧井孝作
宇野浩二
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選考委員
舟橋聖一男52歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
変り咲き 総行数57 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
菊村到
男32歳
30 「菊村到の受賞は、妥当だ。この人の作品の素材となっている知識は、雑ぱくのようでいて、あいまいではない。」「うるささがなく、適度に整理されているから、推理小説とはちがった知的な印象をあたえるのだろう。」「菊村の二作のうち、「硫黄島」が多数決で入賞したが、私は格別甲乙を附し難かった。」「私は翌日の新聞ではじめて菊村の素性を知ったような次第である。従って、文壇血統が物を云った縁故入賞ではない。」
北杜夫
男30歳
0  
小池多米司
男(31歳)
7 「支持したのは、私一人だったが、素材が甘いので、銓衡委員のお気に召さなかったのではないか。然し、描き方や扱い方には、抒情主義より深い心理的なものがあって、読者としては、一番素直に、安心して読めた。」「近い将来、中間小説を達者に書ける人になりそうだ。」
島村利正
男45歳
2 「古臭く、不必要なほどの知識の羅列が、小うるさい。」
相見とし子
女(32歳)
0  
津田信
男31歳
9 「一代記でありすぎるが、ところどころ、捨て難い味と感覚があって、面白く読んだ。」「小説の最後で(引用者中略)あざとい小説作法が、作品の程度を落としているが、前半は気がはいっている書き方である。」「それにしても、題は変だ。」「近い将来、中間小説を達者に書ける人になりそうだ。」
  「今回の六篇は通俗性が濃密である。若し、中間小説には、思想がないという文壇通念に従うとすれば、(この通念には、私は異議があるが――)みな、中間小説的である。」「こうした新人達の傾向は、やはり、マス・コミが中間小説の需要をますます増大しつつある現代性に根ざしているのだろう。」
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他の選考委員
石川達三
丹羽文雄
川端康成
佐藤春夫
井上靖
中村光夫
瀧井孝作
宇野浩二
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選考委員
丹羽文雄男52歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
読後感 総行数27 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
菊村到
男32歳
7 「これほど小説作りに上手になっているのには、おどろいたが、「文學界」に発表していた当時からこの素質はあった。文壇の姑根性に毒されず、どしどし書きまくってもらいたい。」
北杜夫
男30歳
5 「ひねくりすぎたきらいがある。後書で、一度発表したものを訂正をしたと書いていたが、訂正のための悪さが出ている。」
小池多米司
男(31歳)
4 「最初の主人公の説明が面白かったので、期待して読んだが、竜頭蛇尾に終っている。作者が愉しんでいるほど読者にはひびいて来なかった。」
島村利正
男45歳
8 「ちょっと印象的である。が、どうにも古い。」「悪い作品というのではないが、あまりに過去の作家の態度を聯想させる。自分はこれでよいのだと作者が考えているなら、それでも結構である。非難することもない。」
相見とし子
女(32歳)
7 「文章がこなれていたならば、三割はよくなったろう。漢語の使い方が拙劣である。」「この作は最後まで残ったものである。しかし、この作者は何かもっているらしい。」
津田信
男31歳
4 「材料整理にこの形式をとったのが失敗であった。妻が良人に宛てて書くには、もうすこし工夫がほしかった。」
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石川達三
舟橋聖一
川端康成
佐藤春夫
井上靖
中村光夫
瀧井孝作
宇野浩二
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選考委員
川端康成男58歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
現代の「小説作り」 総行数23 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
菊村到
男32歳
13 「(引用者注:他の候補作は)あまりに古風であったために、議論のしようもなく、菊村氏に決定したわけである。」「その他の候補作といちじるしく異っていた。現在の小説作法による小説である。したがって、作者が「小説作り」であるという感もないではない。」「要は作者が小説を作らないではいられないところまで、どういう風に追われて来たかの問題であろう。」
北杜夫
男30歳
0  
小池多米司
男(31歳)
0  
島村利正
男45歳
3 「古くから確な作家であり、今回の「残菊抄」も読後に印象をとどめる作品であるけれども、いまさら芥川賞とするには新鮮さを欠いているだろう。」
相見とし子
女(32歳)
2 「自然主義風である。」
津田信
男31歳
0  
  「直木賞の委員の間から、委員の任期という問題が出たそうだが、芥川賞の方も委員の任期はあっていいだろうと思う。」
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他の選考委員
石川達三
舟橋聖一
丹羽文雄
佐藤春夫
井上靖
中村光夫
瀧井孝作
宇野浩二
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選考委員
佐藤春夫男65歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
重量感のある好短篇 総行数32 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
菊村到
男32歳
25 「僕は菊村到一辺倒で、問題は「不法所持」か「硫黄島」かにのみあった。」「ドライな文体で針金細工のように構成された二作は甚だ斬新である。」「「不法所持」には映画物語風な通俗性があって、新しい大衆小説を見るような面白さがある。」「僕は二作のうちでは「硫黄島」を採る。」「正に自然主義描写の残滓を洗い落して新生面を拓いた、簡潔に重量感のあるこの好短篇(引用者注:「硫黄島」)を、僕は芥川賞近年のヒットだと思っている。」
北杜夫
男30歳
0  
小池多米司
男(31歳)
0  
島村利正
男45歳
5 「最後の銓衡に残されたのは先ず妥当であろう。」「題名の如く古風に過ぎた。とは云え古風なところに逆の新しさを見出せぬでもなかった。」
相見とし子
女(32歳)
9 「最後の銓衡に残されたのは先ず妥当であろう。」「庶民的な世界が面白く特にかみがた風な会話に興趣があった。然し僕はこういう自然主義風の平面描写に物語性を加味したこの手の作品はいかに手堅く巧妙でも、もう飽き飽きしている。」
津田信
男31歳
0  
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他の選考委員
石川達三
舟橋聖一
丹羽文雄
川端康成
井上靖
中村光夫
瀧井孝作
宇野浩二
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選考委員
井上靖男50歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「硫黄島」を推す 総行数34 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
菊村到
男32歳
24 「うまいという点で、他の候補作を引きはなしていた。菊村氏の二篇の中では、私は「硫黄島」の方をいいと思った。」「この種の作品はとかく観念的なものになり易いが、それをこれだけ書きこなした手腕は買っていいだろう。」「「不法所持」は、成功すれば、「硫黄島」より気の利いた、本当の意味で新しいものになったろうが、書き切れているとはいえない。」「この作者は今後どしどし書ける人である。」
北杜夫
男30歳
2 「筆力及ばずといったところ。」
小池多米司
男(31歳)
3 「筆力及ばずといったところ。」
島村利正
男45歳
4 「飾り気ない地味な筆できちんと書いてあった。」「(引用者注:菊村到にくらべると)ひどく古臭く感じられる。」
相見とし子
女(32歳)
6 「よかった。人間を見据えている作家の眼を感じさせられたのはこの作品一つであった。」「(引用者注:菊村到にくらべると)ひどく古臭く感じられる。」
津田信
男31歳
2 「作品の中を流れている感傷的な甘さが読物ならいいが、文学作品としては困る。」
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他の選考委員
石川達三
舟橋聖一
丹羽文雄
川端康成
佐藤春夫
中村光夫
瀧井孝作
宇野浩二
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選考委員
中村光夫男46歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
疑問と期待 総行数26 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
菊村到
男32歳
17 「候補作のなかで、菊村氏が抜群の才を感じさせるのは事実ですが、氏の作風にはかなり疑問の点があります。「不法所持」は力作であるだけに、物語をつくりあげる才能の逞しさとともに、欠点もはっきりでています。(引用者中略)普通の犯罪小説以上のものを狙った作者の意図は納得できても、安手なつくりものという印象を拭いきれません。」「「硫黄島」はそれにくらべると、力が弱い代りによくまとまっていて、厭味もないので、授賞作としてはこの方が適当と思いました。」
北杜夫
男30歳
0  
小池多米司
男(31歳)
0  
島村利正
男45歳
3 「克明に書きこんであるわりに印象がうすく、作者の人間にたいする興味にどこか隙があるような気がします。」
相見とし子
女(32歳)
3 「洋パンの前歴をもつ女露天商を、新味はないがしっかりした筆致で描いているのが心にのこりました。」
津田信
男31歳
3 「題材をこなしきれず、構成に無理があるので問題になりませんでしたが、前々回に候補作になった「瞋恚の果て」よりよほどよくなっています。」
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他の選考委員
石川達三
舟橋聖一
丹羽文雄
川端康成
佐藤春夫
井上靖
瀧井孝作
宇野浩二
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選考委員
瀧井孝作男63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「残菊抄」を推す 総行数31 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
菊村到
男32歳
11 「(引用者注:「残菊抄」の)次に(引用者中略)「不法所持」が佳いと思った。殺人事件の犯人を探す、探偵小説のようだが、しかし人物の心持が主に描かれて、人物の心持を追求する筆もよく伸びて、面白いと思った。」「「硫黄島」は、「不法所持」にくらべると、描写の肉附が手薄のようで、か細い弱々しい感じで、話の筋はいろいろ引っぱられるが、線だけで淡い感じだ。」
北杜夫
男30歳
1 「論外だと見た。」
小池多米司
男(31歳)
1 「論外だと見た。」
島村利正
男45歳
11 「一番佳いと思った。」「美しい小説で、一寸古風なようだが、古風なところが今の流行小説にない清新な感じだと見た。これは古くさいのではない、生き生きした古風で、絵の方で云えば版画の味に似たものとでも云えようか。この版画の味も、小説としてはまた清新の手法で面白いと思った。」
相見とし子
女(32歳)
5 「筆のギコチない、こなれない、稚拙なところが、また妙な味わいにもなって、心持には生き生きした流露感があった。」
津田信
男31歳
3 「これは中間小説だが、前にこの人の「瞋恚の果て」という達者なのを読んだが、それよりもこんどの方が、稍佳いかと見た。」
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他の選考委員
石川達三
舟橋聖一
丹羽文雄
川端康成
佐藤春夫
井上靖
中村光夫
宇野浩二
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選考委員
宇野浩二男65歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
骨折り詮衡 総行数92 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
菊村到
男32歳
23 「『不法所持』は、最初は、新聞種だなと思って、いやいや読みはじめたが、読んでゆくうちに、突飛な話がつぎつぎに出てくるのに、ハッタリめいた所があるのに、なかなか『味』があるので、文学的に楽しみながら読みつづけた、が、終りのところで、ちょいと興ざめがした、が、「これなら、」と思った。」「(引用者注:「不法所持」「硫黄島」とも)大へんカサカサした乾燥した筆で書きながら、そのために却って効果がある。これはこれらの小説に重要な事である。唯、この二篇の小説だけではこれからの作者がどういう道をゆくかはわからない。」
北杜夫
男30歳
9 「実感めいた場面があるところに面白いところもあるが、肝心の『新奇』さが殆んどない、」「最後の方の、辞書を見て、『狂詩』が「諧謔を旨とする詩」と知って、呆然とするところなど、読む方が却って呆然とした。」
小池多米司
男(31歳)
16 「全部一人称で、実に微細に書いてあるが、それがあまりに微細に過ぎたために冗漫になり退屈になった、」「くどいほど、雪子、雪子、という名をくりかえしながら、主人公のほのかな恋い心は、しいてほめると、或る程度までは出ている。が、この小説は、読んでいるうちに大いに退屈するところ『労して功なし』とでも云うべきところ、『狂詩』と共通している。」
島村利正
男45歳
16 「祖父、その娘、その孫娘、――この三代の菊作りと菊売り、と、こういう果ない生業をしている果ない人たちの薄倖な生活は一と通り述べられており、(引用者中略)みな、巧みに書かれてあるが、題材が古風なためか、話が在り来たりのせいか、作者が苦心したわりに、肝心の『実感』がうすい。」
相見とし子
女(32歳)
19 「風がわりな色事と夜店の有り様を書いただけで、題材が変っているというだけで、有りふれた古めかしい小説である。」「いろいろと細工はしてあるが取るに足りないこの小説が(直木賞共通)とは何たることか。」
津田信
男31歳
14 「かなり凝った、組み立ての、小説である、」「ずいぶん深刻な小説であるべき筈なのに、深刻な感じは全くなく、甘い感じさえする、わりに読みつづけてゆけるのに、ほめて云っても、『骨おり損』の小説である。」
  「(引用者注:「魔法瓶」の)(直木賞共通)といえば、今回の候補作品も、何回の時の候補作品でも、その半分ぐらいは、そういう事になりはしないか。(係りの方の御一考を乞う。)」
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他の選考委員
石川達三
舟橋聖一
丹羽文雄
川端康成
佐藤春夫
井上靖
中村光夫
瀧井孝作
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受賞者・作品
菊村到男32歳×各選考委員 
「硫黄島」等
短篇 68
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
石川達三
男52歳
18 「多少の異論はあったけれども、大体満場一致と云ってもいいような形で、菊村君にきまった。」「今後相当多作する人ではないかという予想をした選者も二三あった。私もそう思う。」「巧みなストーリーライターではあるが、(引用者中略・注:質的な)浅さから逃れている。もっと奥ふかい、不気味なものを描いている。」
舟橋聖一
男52歳
30 「菊村到の受賞は、妥当だ。この人の作品の素材となっている知識は、雑ぱくのようでいて、あいまいではない。」「うるささがなく、適度に整理されているから、推理小説とはちがった知的な印象をあたえるのだろう。」「菊村の二作のうち、「硫黄島」が多数決で入賞したが、私は格別甲乙を附し難かった。」「私は翌日の新聞ではじめて菊村の素性を知ったような次第である。従って、文壇血統が物を云った縁故入賞ではない。」
丹羽文雄
男52歳
7 「これほど小説作りに上手になっているのには、おどろいたが、「文學界」に発表していた当時からこの素質はあった。文壇の姑根性に毒されず、どしどし書きまくってもらいたい。」
川端康成
男58歳
13 「(引用者注:他の候補作は)あまりに古風であったために、議論のしようもなく、菊村氏に決定したわけである。」「その他の候補作といちじるしく異っていた。現在の小説作法による小説である。したがって、作者が「小説作り」であるという感もないではない。」「要は作者が小説を作らないではいられないところまで、どういう風に追われて来たかの問題であろう。」
佐藤春夫
男65歳
25 「僕は菊村到一辺倒で、問題は「不法所持」か「硫黄島」かにのみあった。」「ドライな文体で針金細工のように構成された二作は甚だ斬新である。」「「不法所持」には映画物語風な通俗性があって、新しい大衆小説を見るような面白さがある。」「僕は二作のうちでは「硫黄島」を採る。」「正に自然主義描写の残滓を洗い落して新生面を拓いた、簡潔に重量感のあるこの好短篇(引用者注:「硫黄島」)を、僕は芥川賞近年のヒットだと思っている。」
井上靖
男50歳
24 「うまいという点で、他の候補作を引きはなしていた。菊村氏の二篇の中では、私は「硫黄島」の方をいいと思った。」「この種の作品はとかく観念的なものになり易いが、それをこれだけ書きこなした手腕は買っていいだろう。」「「不法所持」は、成功すれば、「硫黄島」より気の利いた、本当の意味で新しいものになったろうが、書き切れているとはいえない。」「この作者は今後どしどし書ける人である。」
中村光夫
男46歳
17 「候補作のなかで、菊村氏が抜群の才を感じさせるのは事実ですが、氏の作風にはかなり疑問の点があります。「不法所持」は力作であるだけに、物語をつくりあげる才能の逞しさとともに、欠点もはっきりでています。(引用者中略)普通の犯罪小説以上のものを狙った作者の意図は納得できても、安手なつくりものという印象を拭いきれません。」「「硫黄島」はそれにくらべると、力が弱い代りによくまとまっていて、厭味もないので、授賞作としてはこの方が適当と思いました。」
瀧井孝作
男63歳
11 「(引用者注:「残菊抄」の)次に(引用者中略)「不法所持」が佳いと思った。殺人事件の犯人を探す、探偵小説のようだが、しかし人物の心持が主に描かれて、人物の心持を追求する筆もよく伸びて、面白いと思った。」「「硫黄島」は、「不法所持」にくらべると、描写の肉附が手薄のようで、か細い弱々しい感じで、話の筋はいろいろ引っぱられるが、線だけで淡い感じだ。」
宇野浩二
男65歳
23 「『不法所持』は、最初は、新聞種だなと思って、いやいや読みはじめたが、読んでゆくうちに、突飛な話がつぎつぎに出てくるのに、ハッタリめいた所があるのに、なかなか『味』があるので、文学的に楽しみながら読みつづけた、が、終りのところで、ちょいと興ざめがした、が、「これなら、」と思った。」「(引用者注:「不法所持」「硫黄島」とも)大へんカサカサした乾燥した筆で書きながら、そのために却って効果がある。これはこれらの小説に重要な事である。唯、この二篇の小説だけではこれからの作者がどういう道をゆくかはわからない。」
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他の候補作
北杜夫
「狂詩」
小池多米司
「雪子」
島村利正
「残菊抄」
相見とし子
「魔法瓶」
津田信
「風の中の」
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候補者・作品
北杜夫男30歳×各選考委員 
「狂詩」
短篇 106
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
石川達三
男52歳
0  
舟橋聖一
男52歳
0  
丹羽文雄
男52歳
5 「ひねくりすぎたきらいがある。後書で、一度発表したものを訂正をしたと書いていたが、訂正のための悪さが出ている。」
川端康成
男58歳
0  
佐藤春夫
男65歳
0  
井上靖
男50歳
2 「筆力及ばずといったところ。」
中村光夫
男46歳
0  
瀧井孝作
男63歳
1 「論外だと見た。」
宇野浩二
男65歳
9 「実感めいた場面があるところに面白いところもあるが、肝心の『新奇』さが殆んどない、」「最後の方の、辞書を見て、『狂詩』が「諧謔を旨とする詩」と知って、呆然とするところなど、読む方が却って呆然とした。」
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他の候補作
菊村到
「硫黄島」等
小池多米司
「雪子」
島村利正
「残菊抄」
相見とし子
「魔法瓶」
津田信
「風の中の」
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候補者・作品
小池多米司男(31歳)×各選考委員 
「雪子」
短篇 111
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
石川達三
男52歳
2 「書くことの楽しみに溺れているのではないかと思う。」
舟橋聖一
男52歳
7 「支持したのは、私一人だったが、素材が甘いので、銓衡委員のお気に召さなかったのではないか。然し、描き方や扱い方には、抒情主義より深い心理的なものがあって、読者としては、一番素直に、安心して読めた。」「近い将来、中間小説を達者に書ける人になりそうだ。」
丹羽文雄
男52歳
4 「最初の主人公の説明が面白かったので、期待して読んだが、竜頭蛇尾に終っている。作者が愉しんでいるほど読者にはひびいて来なかった。」
川端康成
男58歳
0  
佐藤春夫
男65歳
0  
井上靖
男50歳
3 「筆力及ばずといったところ。」
中村光夫
男46歳
0  
瀧井孝作
男63歳
1 「論外だと見た。」
宇野浩二
男65歳
16 「全部一人称で、実に微細に書いてあるが、それがあまりに微細に過ぎたために冗漫になり退屈になった、」「くどいほど、雪子、雪子、という名をくりかえしながら、主人公のほのかな恋い心は、しいてほめると、或る程度までは出ている。が、この小説は、読んでいるうちに大いに退屈するところ『労して功なし』とでも云うべきところ、『狂詩』と共通している。」
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他の候補作
菊村到
「硫黄島」等
北杜夫
「狂詩」
島村利正
「残菊抄」
相見とし子
「魔法瓶」
津田信
「風の中の」
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候補者・作品
島村利正男45歳×各選考委員 
「残菊抄」
短篇 71
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
石川達三
男52歳
6 「評論家に云わせれば一言にして(風俗小説)と云うのではないだろうか。小説が風俗を描写することの興味だけで終っては、足りないものがある。」
舟橋聖一
男52歳
2 「古臭く、不必要なほどの知識の羅列が、小うるさい。」
丹羽文雄
男52歳
8 「ちょっと印象的である。が、どうにも古い。」「悪い作品というのではないが、あまりに過去の作家の態度を聯想させる。自分はこれでよいのだと作者が考えているなら、それでも結構である。非難することもない。」
川端康成
男58歳
3 「古くから確な作家であり、今回の「残菊抄」も読後に印象をとどめる作品であるけれども、いまさら芥川賞とするには新鮮さを欠いているだろう。」
佐藤春夫
男65歳
5 「最後の銓衡に残されたのは先ず妥当であろう。」「題名の如く古風に過ぎた。とは云え古風なところに逆の新しさを見出せぬでもなかった。」
井上靖
男50歳
4 「飾り気ない地味な筆できちんと書いてあった。」「(引用者注:菊村到にくらべると)ひどく古臭く感じられる。」
中村光夫
男46歳
3 「克明に書きこんであるわりに印象がうすく、作者の人間にたいする興味にどこか隙があるような気がします。」
瀧井孝作
男63歳
11 「一番佳いと思った。」「美しい小説で、一寸古風なようだが、古風なところが今の流行小説にない清新な感じだと見た。これは古くさいのではない、生き生きした古風で、絵の方で云えば版画の味に似たものとでも云えようか。この版画の味も、小説としてはまた清新の手法で面白いと思った。」
宇野浩二
男65歳
16 「祖父、その娘、その孫娘、――この三代の菊作りと菊売り、と、こういう果ない生業をしている果ない人たちの薄倖な生活は一と通り述べられており、(引用者中略)みな、巧みに書かれてあるが、題材が古風なためか、話が在り来たりのせいか、作者が苦心したわりに、肝心の『実感』がうすい。」
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他の候補作
菊村到
「硫黄島」等
北杜夫
「狂詩」
小池多米司
「雪子」
相見とし子
「魔法瓶」
津田信
「風の中の」
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候補者・作品
相見とし子女(32歳)×各選考委員 
「魔法瓶」
短篇 102
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
石川達三
男52歳
1 「難解な文章について一考を要する。」
舟橋聖一
男52歳
0  
丹羽文雄
男52歳
7 「文章がこなれていたならば、三割はよくなったろう。漢語の使い方が拙劣である。」「この作は最後まで残ったものである。しかし、この作者は何かもっているらしい。」
川端康成
男58歳
2 「自然主義風である。」
佐藤春夫
男65歳
9 「最後の銓衡に残されたのは先ず妥当であろう。」「庶民的な世界が面白く特にかみがた風な会話に興趣があった。然し僕はこういう自然主義風の平面描写に物語性を加味したこの手の作品はいかに手堅く巧妙でも、もう飽き飽きしている。」
井上靖
男50歳
6 「よかった。人間を見据えている作家の眼を感じさせられたのはこの作品一つであった。」「(引用者注:菊村到にくらべると)ひどく古臭く感じられる。」
中村光夫
男46歳
3 「洋パンの前歴をもつ女露天商を、新味はないがしっかりした筆致で描いているのが心にのこりました。」
瀧井孝作
男63歳
5 「筆のギコチない、こなれない、稚拙なところが、また妙な味わいにもなって、心持には生き生きした流露感があった。」
宇野浩二
男65歳
19 「風がわりな色事と夜店の有り様を書いただけで、題材が変っているというだけで、有りふれた古めかしい小説である。」「いろいろと細工はしてあるが取るに足りないこの小説が(直木賞共通)とは何たることか。」
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他の候補作
菊村到
「硫黄島」等
北杜夫
「狂詩」
小池多米司
「雪子」
島村利正
「残菊抄」
津田信
「風の中の」
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候補者・作品
津田信男31歳×各選考委員 
「風の中の」
短篇 120
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
石川達三
男52歳
6 「評論家に云わせれば一言にして(風俗小説)と云うのではないだろうか。小説が風俗を描写することの興味だけで終っては、足りないものがある。」
舟橋聖一
男52歳
9 「一代記でありすぎるが、ところどころ、捨て難い味と感覚があって、面白く読んだ。」「小説の最後で(引用者中略)あざとい小説作法が、作品の程度を落としているが、前半は気がはいっている書き方である。」「それにしても、題は変だ。」「近い将来、中間小説を達者に書ける人になりそうだ。」
丹羽文雄
男52歳
4 「材料整理にこの形式をとったのが失敗であった。妻が良人に宛てて書くには、もうすこし工夫がほしかった。」
川端康成
男58歳
0  
佐藤春夫
男65歳
0  
井上靖
男50歳
2 「作品の中を流れている感傷的な甘さが読物ならいいが、文学作品としては困る。」
中村光夫
男46歳
3 「題材をこなしきれず、構成に無理があるので問題になりませんでしたが、前々回に候補作になった「瞋恚の果て」よりよほどよくなっています。」
瀧井孝作
男63歳
3 「これは中間小説だが、前にこの人の「瞋恚の果て」という達者なのを読んだが、それよりもこんどの方が、稍佳いかと見た。」
宇野浩二
男65歳
14 「かなり凝った、組み立ての、小説である、」「ずいぶん深刻な小説であるべき筈なのに、深刻な感じは全くなく、甘い感じさえする、わりに読みつづけてゆけるのに、ほめて云っても、『骨おり損』の小説である。」
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他の候補作
菊村到
「硫黄島」等
北杜夫
「狂詩」
小池多米司
「雪子」
島村利正
「残菊抄」
相見とし子
「魔法瓶」
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