芥川賞のすべて・のようなもの
第6回
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昭和12年/1937年下半期
(昭和13年/1938年2月7日決定発表/『文藝春秋』昭和13年/1938年3月号経緯掲載)
選考委員  川端康成
男38歳
久米正雄
男46歳
室生犀星
男48歳
横光利一
男39歳
佐藤春夫
男45歳
瀧井孝作
男43歳
宇野浩二
男46歳
小島政二郎
男44歳
佐佐木茂索
男43歳
菊池寛
男49歳
谷崎潤一郎
男51歳
山本有三
男50歳
選評総行数  14 84 11 9 16 30 136 17 8 「話の屑籠」より    
選評なし 選評なし
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
火野葦平 「糞尿譚」等
227
男31歳
7 16 11 9 16 17 87 12 8          
中本たか子 「白衣作業」
212
女34歳
0 8 0 0 0 0 2 4 0          
大鹿卓 「探鉱日記」他
82
男39歳
4 11 0 0 0 0 6 2 0          
間宮茂輔 「あらがね」
429
男38歳
7 14 0 0 0 0 9 5 0          
和田傳 『沃土』
333
男38歳
7 11 0 0 0 7 12 0 0          
中谷孝雄 「春の絵巻」
39
男36歳
7 10 0 0 0 0 9 0 0          
伊藤永之介 「梟」
112
男34歳
0 0 0 0 0 0 5 0 0          
    欠席     欠席         欠席 欠席
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『芥川賞全集 第二巻』昭和57年/1982年3月・文藝春秋刊 再録(初出:『文藝春秋』昭和13年/1938年3月号)
1行当たりの文字数:26字

このページの「話の屑籠」出典:昭和35年/1960年4月・文藝春秋新社刊『菊池寛文學全集 第七巻』(初出:『文藝春秋』昭和13年/1938年3月号)


選考委員
川端康成男38歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
総行数14 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
火野葦平
男31歳
7 「少し大袈裟に云えば、大旱の雲を望むが如くで、その多少の欠陥は二の次とし、先ず喜んで「糞尿譚」を推した。」「芥川賞としては、火野君を選ぶのが面白いと考えたのである。優劣論ではない。」
中本たか子
女34歳
0  
大鹿卓
男39歳
4  
間宮茂輔
男38歳
7 「作品としては、(引用者中略)私は推賞したかった。芥川賞は別としても、この長篇力作は、十分表彰に価し、注目さるべきと思う。」
和田傳
男38歳
7 「作品の立派さ、作家の確かさという点では、和田君の「沃土」と中谷君の「春の絵巻」を推賞すべきであった。」
中谷孝雄
男36歳
7 「作品の立派さ、作家の確かさという点では、和田君の「沃土」と中谷君の「春の絵巻」を推賞すべきであった。」
伊藤永之介
男34歳
0  
  「文壇諸方面の人々が推薦してくれた作品は、全部読んだ。その結果、実に悲しむべきは、新人の作品で問題とするに足るものが、殆ど無かったということである。」
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他の選考委員
久米正雄
室生犀星
横光利一
佐藤春夫
瀧井孝作
宇野浩二
小島政二郎
佐佐木茂索
菊池寛
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選考委員
久米正雄男46歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
総行数84 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
火野葦平
男31歳
16 「私は一読、此の作家を目して、「新泡鳴」と呼んだ。」「出征中と云う政治的条件すら、申分無かった。地方の文芸雑誌に載ったのなぞ、更に錦上花を添うるものだった。只此の材料が、通俗的に甘い私には、絶対には受入れ得なかっただけだ、読者も恐らくは、そうだろうと思う。」「強いて材料を、こう云う汚ない所に求めずに、自然と深刻な味を出せたら、相当異色ある作家に、成るに違いないと思う。或いは凄惨な戦場なども、恰好の題目かも知れない。そう云う意味で、思い切って吾々は此の授賞に、双手を挙げて賛成した。」
中本たか子
女34歳
8 「此の作家たち(引用者注:中本たか子、間宮茂輔)が、再生の努力の前には、一方でない敬意を持ったが、今更此の人たちに、「芥川賞」でもあるまい。」「おとなしい写実風に還った、充分叩き込んだ腕の冴えは、中堅作家以上」
大鹿卓
男39歳
11 「無条件で云えば、短篇では最も(引用者中略)感心した。」「併し此の三君(引用者注:大鹿卓、和田傳、中谷孝雄)の如き、一両年ならずして、いずれも将来文壇の中堅として、芥川賞などの必要なく、存在を続けて行くに違いない。」
間宮茂輔
男38歳
14 「此の作家たち(引用者注:中本たか子、間宮茂輔)が、再生の努力の前には、一方でない敬意を持ったが、今更此の人たちに、「芥川賞」でもあるまい。」「其素材のまま少し「あらがね」過ぎるが、努力恐るべきものがあった。尤も私は此の鉱山物を読み乍ら、そぞろにプロレタリア前派の、宮島資夫君の「坑夫」を思い出し、十数年の「時代」の科学的進歩を感ずると共に、芸術的退歩を悲しく感じた。」
和田傳
男38歳
11 「長篇力作では、和田傳氏の「沃土」に頭を下げ、」「併し此の三君(引用者注:大鹿卓、和田傳、中谷孝雄)の如き、一両年ならずして、いずれも将来文壇の中堅として、芥川賞などの必要なく、存在を続けて行くに違いない。」「「新潮賞」が殆んど確定して居り、爾余の諸氏も、貰うに越した事はあるまいが、別な「賞」を貰った方が、更に意義があるのではなかろうか。」
中谷孝雄
男36歳
10 「渾然たる中谷孝雄氏の「春の絵巻」にも心牽かれた。中谷君の高等学校物は、或る意味で私の作風に最も近く、自分の青春をすら其中に憶い出した。が、渾然と穏健なだけに少し古い感じ」「併し此の三君(引用者注:大鹿卓、和田傳、中谷孝雄)の如き、一両年ならずして、いずれも将来文壇の中堅として、芥川賞などの必要なく、存在を続けて行くに違いない。」
伊藤永之介
男34歳
0  
  「今度の芥川賞候補に上った人々は、割合に中年の、既に一家を成したような作家が多かった。」「ここに於て、昨今の芥川賞の銓衡は、一つの危機に際会し、佐藤春夫君の提議もあって、改めて其授賞の定義を限定したいと云う事になり、大体曖昧ながら、外形としては「新作家の短篇小説」と云うような所に定った。」
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他の選考委員
川端康成
室生犀星
横光利一
佐藤春夫
瀧井孝作
宇野浩二
小島政二郎
佐佐木茂索
菊池寛
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選考委員
室生犀星男48歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
総行数11 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
火野葦平
男31歳
11 「特に未来の文学をひらかせるものでもなく、亦、逞しさや旺盛さもない、凡作のちょっと上くらいのところである。だが、この作品にある物見高い呼声はそっくり物見高いところにまで、二三の委員の黙認のまませり上げられて行ったのである。」「一地方文学雑誌の小説がかくのごとく穏かに認められたということでは、私の好みの小ささを棄てさせ、そして私は諸委員に賛成の意を表したのである。」
中本たか子
女34歳
0  
大鹿卓
男39歳
0  
間宮茂輔
男38歳
0  
和田傳
男38歳
0  
中谷孝雄
男36歳
0  
伊藤永之介
男34歳
0  
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他の選考委員
川端康成
久米正雄
横光利一
佐藤春夫
瀧井孝作
宇野浩二
小島政二郎
佐佐木茂索
菊池寛
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選考委員
横光利一男39歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
総行数9 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
火野葦平
男31歳
9 「この作には排泄物の処置に絡むいろいろな経済と政治の問題がある。それもただ問題ばかりではない。排泄物という最も人々の厭う悪感を、文章から感ぜしめない独特の新しいスタイルがある。」「ただ遺憾なところは無邪気を装い、烈しさを敢行した傾跡の見える乱暴さのあることだが、しかし、それも今は人々は赦すだろう。」
中本たか子
女34歳
0  
大鹿卓
男39歳
0  
間宮茂輔
男38歳
0  
和田傳
男38歳
0  
中谷孝雄
男36歳
0  
伊藤永之介
男34歳
0  
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他の選考委員
川端康成
久米正雄
室生犀星
佐藤春夫
瀧井孝作
宇野浩二
小島政二郎
佐佐木茂索
菊池寛
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選考委員
佐藤春夫男45歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
総行数16 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
火野葦平
男31歳
16 「いかにも骨組の逞しい力のある作である。」「しかし、久米氏が推賞しながらも「お座敷へ出せる品物だろうか(原文傍点)」と一応躊躇するのも至極同感な節がある。気の弱い人間にはまともに凝視出来ない文字がところどころある。」「当選は「どうかと思う」のであったが、大勢が決して地方の同人文芸雑誌から文字通りの新人を抜擢することの有意義を考えると、美に対する既成観念などは吹っ飛ばされて、先刻の躊躇を引っこまして異議なしとする。」
中本たか子
女34歳
0  
大鹿卓
男39歳
0  
間宮茂輔
男38歳
0  
和田傳
男38歳
0  
中谷孝雄
男36歳
0  
伊藤永之介
男34歳
0  
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他の選考委員
川端康成
久米正雄
室生犀星
横光利一
瀧井孝作
宇野浩二
小島政二郎
佐佐木茂索
菊池寛
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選考委員
瀧井孝作男43歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
総行数30 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
火野葦平
男31歳
17 「火野葦平と云う人の作品は、今回はじめてで、山芋、河豚、糞尿譚と三篇読んでみた。三篇読んで、今回の芥川賞の候補者のねうちはあると思った。」「此の端倪できない程の変った素材を駆使する点、面白い作家だが、只行文が未だお話の程度で創作の域に至らない憾があった。筆が力強くなれば勿論並々でない大物だろうと思われた。」
中本たか子
女34歳
0  
大鹿卓
男39歳
0  
間宮茂輔
男38歳
0  
和田傳
男38歳
7 「立派な作品で、一等らしかった。沃土は新潮社賞の候補の第一席に上っていた由で、そう云う賞に極りかけたと分り乍ら、芥川賞にもと云うことは、芸もない話だとも思われた。」「芥川賞の方は已に十目の認める所に賞の必要のない建前で、沃土の作者は已に一般に認められた感じもあった。」
中谷孝雄
男36歳
0  
伊藤永之介
男34歳
0  
  「(引用者注:火野葦平の)他は皆、各々名前も出て已に活躍している人々で、名前の古い例では前回の尾崎一雄君の例もあるが、前回の場合位に芥川賞も活きるかどうか分らなんだ。今回も名は古いけれど此の人に、格別に芥川賞と云う程の感じは淡かった。」
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他の選考委員
川端康成
久米正雄
室生犀星
横光利一
佐藤春夫
宇野浩二
小島政二郎
佐佐木茂索
菊池寛
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選考委員
宇野浩二男46歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
総行数136 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
火野葦平
男31歳
87 「題名だけで当て推量して、敬遠して、読まない人があったなら、その人は文学の神に見放されるであろう。それ程この小説が傑作であると云うのではないが、老いも若きも、この小説を読んで、損をした気にならぬであろう、という程の意味である。」「一口に云うと、構想も手法も、大胆不敵の如くに見えて、実は可なり小心で細かい気配りの行きとどいている小説である。」「『糞尿譚』の善さはそういう所だけでなく、(引用者中略)主人公が、正義派の如くなったり、頽廃派の如くなったり、人情家の如くなったり、その他、色々するところ、誠にえたい(原文傍点)の知れないところにある。」
中本たか子
女34歳
2  
大鹿卓
男39歳
6 「『探鉱日記』も、『春の絵巻』も、別々の意味で、「今ひと息」という如き感がないであろうか。」
間宮茂輔
男38歳
9 「私が、両方とも、作者が商売雑誌に書いていない上に、(引用者中略)今度の候補作品の中で最も勝れた小説であると思った、『沃土』も、『あらがね』も、長篇であるという事と、もう一つ外の理由で、賞に這入らなかった。」
和田傳
男38歳
12 「私が、両方とも、作者が商売雑誌に書いていない上に、(引用者中略)今度の候補作品の中で最も勝れた小説であると思った、『沃土』も、『あらがね』も、長篇であるという事と、もう一つ外の理由で、賞に這入らなかった。」
中谷孝雄
男36歳
9 「『探鉱日記』も、『春の絵巻』も、別々の意味で、「今ひと息」という如き感がないであろうか。」
伊藤永之介
男34歳
5  
  「今度はじめて芥川賞銓衡委員になって、芥川賞と文芸懇話会賞の銓衡の仕方が随分ちがうのに、私は深い興味を覚えた。」「文芸懇話会の銓衡の方法と比べると、銓衡委員の顔触が分っている事と、各委員が討議する事と、かくの如く各委員が銓衡に就いての感想を発表する事と、この三つの事だけでも、芥川賞の銓衡の仕方の方が遙かに増しであろうか。」
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他の選考委員
川端康成
久米正雄
室生犀星
横光利一
佐藤春夫
瀧井孝作
小島政二郎
佐佐木茂索
菊池寛
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選考委員
小島政二郎男44歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
総行数17 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
火野葦平
男31歳
12 「実に意外な掘出物をした感じで読んだ。実に不敵な作家である。この作品に於ける作者の心の置きどころの丁度よさ加減が、得も云えぬ魅力の発光体となっていると思う。」「この作で若し難があるとすれば、初めの二三頁の語り出しであろう。欲を云えば、温泉場のおせいと云う女の描写が稍精彩を欠いている恨みがある。」
中本たか子
女34歳
4 「心に残った。」「まず(原文傍点)くとも真実を書こうとしている意気込をスタイルに感じて心を引かれた。」
大鹿卓
男39歳
2 「心に残った。」
間宮茂輔
男38歳
5 「心に残った。」「まず(原文傍点)くとも真実を書こうとしている意気込をスタイルに感じて心を引かれた。」
和田傳
男38歳
0  
中谷孝雄
男36歳
0  
伊藤永之介
男34歳
0  
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他の選考委員
川端康成
久米正雄
室生犀星
横光利一
佐藤春夫
瀧井孝作
宇野浩二
佐佐木茂索
菊池寛
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選考委員
佐佐木茂索男43歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
総行数8 (1行=26字)
候補 評価 行数 評言
火野葦平
男31歳
8 「詩集「山上軍艦」を見たとき、此著者は嫌なところを、沢山持っている男じゃなかろうかと――或は鼻もちならぬ処のある男じゃなかろうかと、失礼乍らそう思いあまり読まなかった。しかし「糞尿譚」の作者として現れた火野氏には、そういうものとは寧ろ反対なものを感じた。戦地から帰ったあとに期待は大きい。」「此作者に注意を向けさせた鶴田知也君に感謝する。」
中本たか子
女34歳
0  
大鹿卓
男39歳
0  
間宮茂輔
男38歳
0  
和田傳
男38歳
0  
中谷孝雄
男36歳
0  
伊藤永之介
男34歳
0  
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他の選考委員
川端康成
久米正雄
室生犀星
横光利一
佐藤春夫
瀧井孝作
宇野浩二
小島政二郎
菊池寛
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選考委員
菊池寛男49歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
(話の屑籠より) 
候補 評価 行数 評言
火野葦平
男31歳
  「無名の新進作家に贈り得たことは、芥川賞創設の主旨にも適し、我々としても欣快であった。作品も、題は汚らしいが、手法雄健でしかも割合に味が細く、一脈の哀感を蔵し、整然たる描写といい、立派なものである。しかも、作者が出征中であるなどは、興行価値百パーセントで、近来やや精彩を欠いていた芥川賞の単調を救い得て十分であった。この作品を、委員会に推薦してくれたやはり芥川賞の鶴田知也君に改めて感謝する。」「我々は火野君から、的確に新しい戦争文学を期待してもいいのではないかと思う。」
中本たか子
女34歳
   
大鹿卓
男39歳
   
間宮茂輔
男38歳
   
和田傳
男38歳
   
中谷孝雄
男36歳
   
伊藤永之介
男34歳
   
  「文学賞の決定は、あくまで公平無私でなければならない。一度でも公明を欠くと、たちまちその賞金の権威が無くなってしまうのである。人間のやることだから、価値判定の過ちはあってもよいが、情実だけは絶対に排斥しなければならない。芥川賞、直木賞の委員は、怠惰で往々ずぼらをきめるが、情実や縁故で動く人が一人もいないことは、はなはだ欣ばしいことである。」
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他の選考委員
川端康成
久米正雄
室生犀星
横光利一
佐藤春夫
瀧井孝作
宇野浩二
小島政二郎
佐佐木茂索
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受賞者・作品
火野葦平男31歳×各選考委員 
「糞尿譚」等
短篇3篇 227
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
川端康成
男38歳
7 「少し大袈裟に云えば、大旱の雲を望むが如くで、その多少の欠陥は二の次とし、先ず喜んで「糞尿譚」を推した。」「芥川賞としては、火野君を選ぶのが面白いと考えたのである。優劣論ではない。」
久米正雄
男46歳
16 「私は一読、此の作家を目して、「新泡鳴」と呼んだ。」「出征中と云う政治的条件すら、申分無かった。地方の文芸雑誌に載ったのなぞ、更に錦上花を添うるものだった。只此の材料が、通俗的に甘い私には、絶対には受入れ得なかっただけだ、読者も恐らくは、そうだろうと思う。」「強いて材料を、こう云う汚ない所に求めずに、自然と深刻な味を出せたら、相当異色ある作家に、成るに違いないと思う。或いは凄惨な戦場なども、恰好の題目かも知れない。そう云う意味で、思い切って吾々は此の授賞に、双手を挙げて賛成した。」
室生犀星
男48歳
11 「特に未来の文学をひらかせるものでもなく、亦、逞しさや旺盛さもない、凡作のちょっと上くらいのところである。だが、この作品にある物見高い呼声はそっくり物見高いところにまで、二三の委員の黙認のまませり上げられて行ったのである。」「一地方文学雑誌の小説がかくのごとく穏かに認められたということでは、私の好みの小ささを棄てさせ、そして私は諸委員に賛成の意を表したのである。」
横光利一
男39歳
9 「この作には排泄物の処置に絡むいろいろな経済と政治の問題がある。それもただ問題ばかりではない。排泄物という最も人々の厭う悪感を、文章から感ぜしめない独特の新しいスタイルがある。」「ただ遺憾なところは無邪気を装い、烈しさを敢行した傾跡の見える乱暴さのあることだが、しかし、それも今は人々は赦すだろう。」
佐藤春夫
男45歳
16 「いかにも骨組の逞しい力のある作である。」「しかし、久米氏が推賞しながらも「お座敷へ出せる品物だろうか(原文傍点)」と一応躊躇するのも至極同感な節がある。気の弱い人間にはまともに凝視出来ない文字がところどころある。」「当選は「どうかと思う」のであったが、大勢が決して地方の同人文芸雑誌から文字通りの新人を抜擢することの有意義を考えると、美に対する既成観念などは吹っ飛ばされて、先刻の躊躇を引っこまして異議なしとする。」
瀧井孝作
男43歳
17 「火野葦平と云う人の作品は、今回はじめてで、山芋、河豚、糞尿譚と三篇読んでみた。三篇読んで、今回の芥川賞の候補者のねうちはあると思った。」「此の端倪できない程の変った素材を駆使する点、面白い作家だが、只行文が未だお話の程度で創作の域に至らない憾があった。筆が力強くなれば勿論並々でない大物だろうと思われた。」
宇野浩二
男46歳
87 「題名だけで当て推量して、敬遠して、読まない人があったなら、その人は文学の神に見放されるであろう。それ程この小説が傑作であると云うのではないが、老いも若きも、この小説を読んで、損をした気にならぬであろう、という程の意味である。」「一口に云うと、構想も手法も、大胆不敵の如くに見えて、実は可なり小心で細かい気配りの行きとどいている小説である。」「『糞尿譚』の善さはそういう所だけでなく、(引用者中略)主人公が、正義派の如くなったり、頽廃派の如くなったり、人情家の如くなったり、その他、色々するところ、誠にえたい(原文傍点)の知れないところにある。」
小島政二郎
男44歳
12 「実に意外な掘出物をした感じで読んだ。実に不敵な作家である。この作品に於ける作者の心の置きどころの丁度よさ加減が、得も云えぬ魅力の発光体となっていると思う。」「この作で若し難があるとすれば、初めの二三頁の語り出しであろう。欲を云えば、温泉場のおせいと云う女の描写が稍精彩を欠いている恨みがある。」
佐佐木茂索
男43歳
8 「詩集「山上軍艦」を見たとき、此著者は嫌なところを、沢山持っている男じゃなかろうかと――或は鼻もちならぬ処のある男じゃなかろうかと、失礼乍らそう思いあまり読まなかった。しかし「糞尿譚」の作者として現れた火野氏には、そういうものとは寧ろ反対なものを感じた。戦地から帰ったあとに期待は大きい。」「此作者に注意を向けさせた鶴田知也君に感謝する。」
菊池寛
男49歳
  「無名の新進作家に贈り得たことは、芥川賞創設の主旨にも適し、我々としても欣快であった。作品も、題は汚らしいが、手法雄健でしかも割合に味が細く、一脈の哀感を蔵し、整然たる描写といい、立派なものである。しかも、作者が出征中であるなどは、興行価値百パーセントで、近来やや精彩を欠いていた芥川賞の単調を救い得て十分であった。この作品を、委員会に推薦してくれたやはり芥川賞の鶴田知也君に改めて感謝する。」「我々は火野君から、的確に新しい戦争文学を期待してもいいのではないかと思う。」
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他の候補作
中本たか子
「白衣作業」
大鹿卓
「探鉱日記」他
間宮茂輔
「あらがね」
和田傳
『沃土』
中谷孝雄
「春の絵巻」
伊藤永之介
「梟」
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候補者・作品
中本たか子女34歳×各選考委員 
「白衣作業」
中篇 212
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
川端康成
男38歳
0  
久米正雄
男46歳
8 「此の作家たち(引用者注:中本たか子、間宮茂輔)が、再生の努力の前には、一方でない敬意を持ったが、今更此の人たちに、「芥川賞」でもあるまい。」「おとなしい写実風に還った、充分叩き込んだ腕の冴えは、中堅作家以上」
室生犀星
男48歳
0  
横光利一
男39歳
0  
佐藤春夫
男45歳
0  
瀧井孝作
男43歳
0  
宇野浩二
男46歳
2  
小島政二郎
男44歳
4 「心に残った。」「まず(原文傍点)くとも真実を書こうとしている意気込をスタイルに感じて心を引かれた。」
佐佐木茂索
男43歳
0  
菊池寛
男49歳
   
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他の候補作
火野葦平
「糞尿譚」等
大鹿卓
「探鉱日記」他
間宮茂輔
「あらがね」
和田傳
『沃土』
中谷孝雄
「春の絵巻」
伊藤永之介
「梟」
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候補者・作品
大鹿卓男39歳×各選考委員 
「探鉱日記」他
短篇 82
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
川端康成
男38歳
4  
久米正雄
男46歳
11 「無条件で云えば、短篇では最も(引用者中略)感心した。」「併し此の三君(引用者注:大鹿卓、和田傳、中谷孝雄)の如き、一両年ならずして、いずれも将来文壇の中堅として、芥川賞などの必要なく、存在を続けて行くに違いない。」
室生犀星
男48歳
0  
横光利一
男39歳
0  
佐藤春夫
男45歳
0  
瀧井孝作
男43歳
0  
宇野浩二
男46歳
6 「『探鉱日記』も、『春の絵巻』も、別々の意味で、「今ひと息」という如き感がないであろうか。」
小島政二郎
男44歳
2 「心に残った。」
佐佐木茂索
男43歳
0  
菊池寛
男49歳
   
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他の候補作
火野葦平
「糞尿譚」等
中本たか子
「白衣作業」
間宮茂輔
「あらがね」
和田傳
『沃土』
中谷孝雄
「春の絵巻」
伊藤永之介
「梟」
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候補者・作品
間宮茂輔男38歳×各選考委員 
「あらがね」
長篇 429
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
川端康成
男38歳
7 「作品としては、(引用者中略)私は推賞したかった。芥川賞は別としても、この長篇力作は、十分表彰に価し、注目さるべきと思う。」
久米正雄
男46歳
14 「此の作家たち(引用者注:中本たか子、間宮茂輔)が、再生の努力の前には、一方でない敬意を持ったが、今更此の人たちに、「芥川賞」でもあるまい。」「其素材のまま少し「あらがね」過ぎるが、努力恐るべきものがあった。尤も私は此の鉱山物を読み乍ら、そぞろにプロレタリア前派の、宮島資夫君の「坑夫」を思い出し、十数年の「時代」の科学的進歩を感ずると共に、芸術的退歩を悲しく感じた。」
室生犀星
男48歳
0  
横光利一
男39歳
0  
佐藤春夫
男45歳
0  
瀧井孝作
男43歳
0  
宇野浩二
男46歳
9 「私が、両方とも、作者が商売雑誌に書いていない上に、(引用者中略)今度の候補作品の中で最も勝れた小説であると思った、『沃土』も、『あらがね』も、長篇であるという事と、もう一つ外の理由で、賞に這入らなかった。」
小島政二郎
男44歳
5 「心に残った。」「まず(原文傍点)くとも真実を書こうとしている意気込をスタイルに感じて心を引かれた。」
佐佐木茂索
男43歳
0  
菊池寛
男49歳
   
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他の候補作
火野葦平
「糞尿譚」等
中本たか子
「白衣作業」
大鹿卓
「探鉱日記」他
和田傳
『沃土』
中谷孝雄
「春の絵巻」
伊藤永之介
「梟」
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候補者・作品
和田傳男38歳×各選考委員 
『沃土』
長篇 333
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
川端康成
男38歳
7 「作品の立派さ、作家の確かさという点では、和田君の「沃土」と中谷君の「春の絵巻」を推賞すべきであった。」
久米正雄
男46歳
11 「長篇力作では、和田傳氏の「沃土」に頭を下げ、」「併し此の三君(引用者注:大鹿卓、和田傳、中谷孝雄)の如き、一両年ならずして、いずれも将来文壇の中堅として、芥川賞などの必要なく、存在を続けて行くに違いない。」「「新潮賞」が殆んど確定して居り、爾余の諸氏も、貰うに越した事はあるまいが、別な「賞」を貰った方が、更に意義があるのではなかろうか。」
室生犀星
男48歳
0  
横光利一
男39歳
0  
佐藤春夫
男45歳
0  
瀧井孝作
男43歳
7 「立派な作品で、一等らしかった。沃土は新潮社賞の候補の第一席に上っていた由で、そう云う賞に極りかけたと分り乍ら、芥川賞にもと云うことは、芸もない話だとも思われた。」「芥川賞の方は已に十目の認める所に賞の必要のない建前で、沃土の作者は已に一般に認められた感じもあった。」
宇野浩二
男46歳
12 「私が、両方とも、作者が商売雑誌に書いていない上に、(引用者中略)今度の候補作品の中で最も勝れた小説であると思った、『沃土』も、『あらがね』も、長篇であるという事と、もう一つ外の理由で、賞に這入らなかった。」
小島政二郎
男44歳
0  
佐佐木茂索
男43歳
0  
菊池寛
男49歳
   
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他の候補作
火野葦平
「糞尿譚」等
中本たか子
「白衣作業」
大鹿卓
「探鉱日記」他
間宮茂輔
「あらがね」
中谷孝雄
「春の絵巻」
伊藤永之介
「梟」
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候補者・作品
中谷孝雄男36歳×各選考委員 
「春の絵巻」
短篇 39
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
川端康成
男38歳
7 「作品の立派さ、作家の確かさという点では、和田君の「沃土」と中谷君の「春の絵巻」を推賞すべきであった。」
久米正雄
男46歳
10 「渾然たる中谷孝雄氏の「春の絵巻」にも心牽かれた。中谷君の高等学校物は、或る意味で私の作風に最も近く、自分の青春をすら其中に憶い出した。が、渾然と穏健なだけに少し古い感じ」「併し此の三君(引用者注:大鹿卓、和田傳、中谷孝雄)の如き、一両年ならずして、いずれも将来文壇の中堅として、芥川賞などの必要なく、存在を続けて行くに違いない。」
室生犀星
男48歳
0  
横光利一
男39歳
0  
佐藤春夫
男45歳
0  
瀧井孝作
男43歳
0  
宇野浩二
男46歳
9 「『探鉱日記』も、『春の絵巻』も、別々の意味で、「今ひと息」という如き感がないであろうか。」
小島政二郎
男44歳
0  
佐佐木茂索
男43歳
0  
菊池寛
男49歳
   
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他の候補作
火野葦平
「糞尿譚」等
中本たか子
「白衣作業」
大鹿卓
「探鉱日記」他
間宮茂輔
「あらがね」
和田傳
『沃土』
伊藤永之介
「梟」
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候補者・作品
伊藤永之介男34歳×各選考委員 
「梟」
短篇 112
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
川端康成
男38歳
0  
久米正雄
男46歳
0  
室生犀星
男48歳
0  
横光利一
男39歳
0  
佐藤春夫
男45歳
0  
瀧井孝作
男43歳
0  
宇野浩二
男46歳
5  
小島政二郎
男44歳
0  
佐佐木茂索
男43歳
0  
菊池寛
男49歳
   
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
火野葦平
「糞尿譚」等
中本たか子
「白衣作業」
大鹿卓
「探鉱日記」他
間宮茂輔
「あらがね」
和田傳
『沃土』
中谷孝雄
「春の絵巻」
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