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第123回
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Last Update[H27]2015/4/22

船戸与一
Funado Yoichi
生没年月日【注】 昭和19年/1944年2月8日~平成27年/2015年4月22日
受賞年齢 56歳5ヵ月
経歴 本名=原田建司。筆名・豊浦志朗。山口県下関市生まれ。早稲田大学法学部卒。
受賞歴・候補歴
処女作 『非合法員』(昭和54年/1979年3月・講談社刊)
サイト内リンク 直木賞受賞作全作読破への道Part1
リンク集
備考
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やまねこ なつ
山猫の 夏』(昭和59年/1984年8月・講談社刊)
書誌
>>昭和62年/1987年8月・講談社/講談社文庫『山猫の夏』(上)(下)
>>平成5年/1993年5月・埼玉福祉会/大活字本シリーズ『山猫の夏』(1)~(4)
>>平成7年/1995年11月・講談社/講談社文庫『山猫の夏』[新装版]
>>平成26年/2014年8月・小学館/小学館文庫『山猫の夏』
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他文学賞 吉川英治文学新人賞 6受賞 一覧へ
候補者 船戸与一 男41歳
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし
男50歳
8 「言葉のもつ力を十二分に駆使して南米大陸に壮大な冒険王国を構築する。」「船戸作品と島田作品とをわたしは推したが、結果はまことに読みでのある船戸作品が選ばれた。読みでがあるとは小説という形式に誠実であるということと同義だ。」
尾崎秀樹
男56歳
26 「候補作のうちで一番強烈な印象を受けた」「パンチのきいたややバタくさい表現のほかに、作者なりの物語性への肉迫が感じられ、ストーリーテラーとしての資質も群を抜いている。」「私は“山猫”の軌跡の中に、船戸与一の反権力思考を読む思いであった。」
佐野洋
男56歳
29 「私自身は、こういうタイプの小説は嫌いなのだが、一歩退いて客観的に見てみると、なにしろ、力作感があり、波乱万丈のストーリーにも取り立てて破綻や矛盾がない。」「しかし、もし、選考委員という立場を離れて、この作品を読んだら、恐らく、私は最後まで読み通さなかっただろう。」「感情移入できる登場人物がいない。」
野坂昭如
男54歳
30 「アラ探ししてやろうと、意地悪い眼で読みつづけたのだが、ついついひきこまれてしまった。」「荒っぽいけれど、たいへんな腕力である。波乱万丈奇想天外の小説は、近頃少ない。もっとも吉川英治の名を戴く賞にふさわしく、しかもその新人としての名乗りは、作者の本懐であろう。」
半村良
男51歳
20 「「山猫の夏」一本槍で行くことにきめ、選考の席に臨んだ。」「膂力において群を抜いているのだ。」「船戸さんに受賞のお祝いを申しあげるとともに、こういう作家を持った冒険小説ファンにもお祝いを言いたい。」
選評出典:『群像』昭和60年/1985年5月号
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たけ はこぶね
猛き 箱舟』(上)(下)(昭和62年/1987年4月・集英社刊)
書誌
>>(1)(2)=平成2年/1990年7月、(3)(4)=平成2年/1990年8月・集英社/集英社文庫『猛き箱舟』
>>平成9年/1997年5月・集英社/集英社文庫『猛き箱舟』[新装版](上)(下)
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他文学賞 山本周五郎賞 1回候補 一覧へ
候補者 船戸与一 男44歳
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし
男53歳
33 4点「日本の侵略的な経済成長を批判するテーマは素晴らしいと思いました。」「このテーマを復讐物語に織り込んだ以上、日本の支配層のもっと深い部分を復讐してほしかった。」「また、主人公が最初に死んでしまうという設定、これも、僕の個人的な趣味なんですがもうひとつ気にいらない。」
田辺聖子
女60歳
48 4.9点→5点「なぜ〇・一駄目だったかというと、登場人物がみんな死んでしまうんですね。」「これだけ波瀾万丈の、かつての山中峯太郎みたいな小説を書く腕力に敬服しましたね。」「女の人の書き方にしても、冒険小説で一番おざなりの部分だと思うんですが、この作品のシャヒーナという女主人公はよく書けています。」
野坂昭如
男57歳
52 2点→3点「主人公がテロリストに成長していく上で、どうも僕は説得されなかった。」「冒険小説の場合、人物が類型的であるのは当然なんで、別段それを欠点として特にあげつらいはしませんが、僕には主人公の顔が全然浮かんでこなかった。」「趣味的に言わせてもらえば、ああも無闇に人を殺す「猛き箱舟」のような小説は好きじゃないですよ。」
藤沢周平
男60歳
55 4点「ストーリーはいくら長くてもかまわないんですが、表現が冗漫なために長くなるのは困るんです。」「一部にこれは劇画だという批評もありましたが、私は決してそうは思わなかったですね。」「リアリティがきちんと計算されている物語ではないかと思います。」「こういう小説は、復讐物語なんだから、もっと気持ちがいいはずなんですよ。それがそうでないのは、正義が悪に勝つという図式が曖昧だからでしょうかね。」
山口瞳
男61歳
32 3点「大変な力作だとは思いますが、とにかく長過ぎますね。」「もっとも、こういう作品に関しては、私は選考委員の資格がないと思っています。兵器だとかマシーンだとか、マニアの方が読んだら舌なめずりするような場面があるのかもしれませんが、私にはもうお手上げなんです。」「どんなふうに彼は成長したのか、こんなテロリストになりました、その「こんな」が分からないんです。」
最終投票     1+2+1+2+1=7
選評出典:『小説新潮』昭和63年/1988年8月号
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すな
砂のクロニクル』(平成3年/1991年11月・毎日新聞社刊)
書誌
>>平成6年/1994年12月・新潮社/新潮文庫『砂のクロニクル』(上)(下)
>>平成26年/2014年5月・小学館/小学館文庫『砂のクロニクル』(上)(下)
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他文学賞 山本周五郎賞 5受賞 一覧へ
候補者 船戸与一 男48歳
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男57歳
51 3点「物語性において、この作品は劣っているんじゃないかという気がするわけです。親しくしていた人間が実はスパイであって、それを殺さねばならないとか、非常に似たようなパターンの繰り返しで話が進んでいっているだけではないか。」「本当によく殺す小説で、そうしてその殺しの描写も実に丹念ですけれども、これだけ殺されると、これはいやだなという感じがします。」
井上ひさし
男57歳
67 4点「セックスと殺しが、たくさん出てきますが、パターンが似通っているので、だんだん鼻についてきます。」「これだけの枚数を使って、これだけ調べて、これだけ筆力を使って書いているのに、この血で血を洗う革命や宗教の問題を二十一世紀に向けて超えていく視点が虚無的なんですね。」「ただ、力感みなぎるすごい作品だと思います。」
逢坂剛
男48歳
47 5点「おそらく船戸さん以外には書けないだろうという感じがします。」「細部をつついて、欠点を探し出していくような小説ではない。全体がひとつの叙事詩になっていて、独特の世界観を映し出す、そういう迫力をもっている小説だと思います。」「「砂のクロニクル」が山本周五郎賞を求めているんじゃなくて、山本周五郎賞が「砂のクロニクル」を求めていると私は思います(笑)。」
長部日出雄
男57歳
71 4点「この千六百枚の長さをぐんぐん引っ張っていく筆力には驚きます。」「文章が非常にしきしまっていて切れ味がよく、リズムがあるんで、どんどん読めていくわけですね。」「志のスケールの大きさというのは大変なものだと思ったんですが、次から次に起こる惨憺たる死が、どれもみなハードボイルド的な定石にうまくはまり過ぎるという感じがするんですね。」
山田太一
男57歳
52 4.5点「大変な筆力で、ものすごく調べてあって、とても私には書けない作品だと思います。」「サミルがドキドキするほどよく書けているようには、日本人二人は書けていない。」「もう一人のハジの駒井克人の行動についての説明も、「じぶん自身ですらなぜそんなことをしたのかわかってない場合もずいぶんあるのだ」というふうに行動の内面を突き放されてしまう。」「私は最高点のつもりで四・五点をつけました。」「現実世界へ焦点を当て過ぎて読むのは、この作品のポイントをずらすことになってしまわないでしょうか。」
最終投票      
選評出典:『小説新潮』平成4年/1992年7月号
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直木賞 第123受賞  一覧へ

にじ たに ごがつ
虹の 谷の 五月』(平成12年/2000年5月・集英社刊)
媒体・作品情報
作品名 別表記 奥付 ルビ有り「にじ」「たに」「ごがつ」
印刷/発行年月日 発行 平成12年/2000年5月30日(第1刷)
発行者等 発行者 小島民雄 印刷所 凸版印刷株式会社 製本所 加藤製本株式会社
発行所 株式会社集英社(東京都) 形態 四六判 上製
装幀/装画等 装丁 安彦勝博
総ページ数 516 表記上の枚数 基本の文字組
(1ページ当り)
25字
×23行
×2段
本文ページ 7~513
(計507頁)
測定枚数 1458
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書誌
>>初出『小説すばる』平成10年/1998年7月号~平成12年/2000年3月号/単行本化にあたり加筆修正
>>平成15年/2003年5月・集英社/集英社文庫『虹の谷の五月』(上)(下)
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候補者 船戸与一 男56歳
選考委員 評価 行数 評言
北方謙三
男52歳
26 「重層的で圧倒的な物語性を持っていた。」「人間の弱さがいやというほど描きこまれている。それだけならただの汚濁だが、その汚濁の中から、主人公の少年のピュアな成長という、真珠のひと粒とも言うべきものを掬いあげることに成功している。」「いまこそこういう作品を評価して、小説は本来あるべきその姿を思い出すべきであろう。」
田辺聖子
女72歳
45 「(引用者注:「カカシの夏休み」と)優劣つけがたく、あるいは二本受賞かと思い選考に臨んだ。」「船戸氏はすでにもう大家でいられ、直木賞の土俵では狭い感もあるが、一度は〈貰って頂かないと〉というのが正直な私の気持であった。」「何より南海の島の濃密な温気と暑熱が読者の皮膚感覚に伝わってくる。」
宮城谷昌光
男55歳
20 「作品にある内的方向性の用いかたを私は学ばせてもらったような気がしている。」「氏が置いてゆくことばが象を描くのが早すぎはしないか。両者の距離が短すぎると色あいを内含するゆとりをもたず、さらに語がおなじ方向をむいてしまっているので、単調さを産んでしまう。」
平岩弓枝
女68歳
13 「長さを感じさせないほど面白かった。エンターテイメントの要素を完全に備えていて読者を飽きさせないというのも技術の一つだし、それに元気のよさが加われば鬼に金棒であろう。」
渡辺淳一
男66歳
22 「大変な力作であった。」「努力はわかるが、全体の印象はやや退屈で、華やかな色がつかわれているわりには単彩の感じが残った。」「しかしこれだけの労作を仕上げた気力は見事で、若い金城氏と老練の著者の、二作受賞は悪くないと思って、賛成した。」
五木寛之
男67歳
14 「これまでいくつか読む機会のあった船戸ワールドの諸作品とくらべて、ぬきんでた秀作とはいえないというのが私の感想である。」
林真理子
女46歳
29 「いつものことながらぐいぐいとひき込まれていくが、この作品には多少疑問が残った。」「小説の伏線を張るということと、あら筋がわかるということとは違うのではないか。」「最後に、少年の心のよりどころだったほとんどすべての人たちが死ぬのはいかにもつらい。」「船戸さんの実力は疑うべくもないものであるし、こうしたスケールの大きな小説は抗えない魅力に溢れている。」
阿刀田高
男65歳
42 「取材と構成の充実した骨太の作品で、楽しく読むことができたけれど、この手の作品としては、なにもかも予想通りで、闘争のシーンの凄じい描写力を除けばストーリィそのものに胸を躍らせることができなかった。」「しかし、船戸さんが充分なキャリアを持つ優れたストーリィ・テラーである。(引用者中略)ものさしを当てること自体が失礼のような気もする。あれこれ勘案して、おおかたの推輓があれば尻馬に乗るつもりだった。」
黒岩重吾
男76歳
30 「なかでも闘鶏場の描写は圧巻で、私自身がその場で賭けているような昂奮を覚えた。それに少年の正義感が実に爽やかで心地が良い。確かにところどころ映画調の場面がないではないが、怒濤にも似た迫力に押され余り気にならなかった。」「何よりもの魅力は、読後にロマンを感じたことである。」
津本陽
男71歳
26 「ジャピーノ13歳の章が、もっともすぐれていて、第二章、第三章は、しだいに感動の量がすくなくなってくる。」「しかし、作品全体にわだかまっている野性に好意を持った。」
井上ひさし
男65歳
26 「壮大な主題を、無数の、豊かでおもしろい細部が支えて、じつに読み応えがある。」「闘士の感化を受けながら、自分の内にゆるやかに「志」を育てて行く少年の成長ぶりもさわやかで潔く、評者はこの作品を『GO』(金城一紀)と並べて強く推した。」
選評出典:『オール讀物』平成12年/2000年9月号
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文量
長篇
章立て
「ジャピーノ13歳……1998年5月――フィリピン・セブ島」「ジャピーノ14歳……1999年5月――フィリピン・セブ島」「ジャピーノ15歳……2000年5月――フィリピン・セブ島」
時代設定 場所設定
1998年~2000年 フィリピン・セブ島ガルソボンガ地区~バリリ~メルナンガ山など
登場人物
おいら(語り手、トシオ・マナハン、通称ジャピーノ、日本人とフィリピン人の混血)
ガブリエル・マナハン(トシオの祖父、元戦士)
ホセ・マンガハス(虹の谷に住むゲリラ闘士)
ラモン・スムロン(ガルソボンガ地区の若者)
メグ(ラモンの妹)
シルビア・ガラン・デ・オオシタ(通称クイーン、日本人画家と結婚)
ミゲル・ピログ(ゲリラ組織で元ホセの部下)
マサハル・ナカノ(バリリの日本人医師)




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