当サイトで扱うまでにはまとまっていない直木賞関連情報を、だいたい週イチでアップする「直木賞のすべて 余聞と余分」を平成19年/2007年5月から始めました。こっちの本サイトの更新を怠らないように、心してやっていきたいものです。
 直木賞では多くの場合、選考委員と候補者は同業者です。  同じ商業雑誌にいっしょに名前が並んで載ることもあれば、本屋さんに行けば近いところに本が置かれる機会もたくさんある。小説を書いてお金を得る。同じ世界で生きているプロフェッショナル同士です。選考の段階で面識があったり、仲がいい、あるいはちょっと険悪な関係にあった、なんてことも少ないとは言えません。そういうのをはたから眺めるのもまた、直木賞を見...
 無駄に歴史の長い直木賞は、日中戦争や太平洋戦争という、国家あげての一大事のときにも、話題になっているのかどうなのか、よくわからない状況のなかで選考を続けていた時代があります。  時でいうと昭和10年代です。そのころ直木賞には、ひとつの風物詩がありました。何でしょうか。  ……何でしょうかと、クイズの出題者よろしくエバり腐っている場合じゃありませんね。すいません。  直木賞の風物詩。それは選...
 直木賞は、いま現在リアルタイムで盛り上がっています。なのに昔のことなんか調べて何が楽しんだ。たしかにワタクシも思います。  ……そうは思うんですけど、こないだ候補作が発表された最新の第173回(令和7年/2025年・上半期)の直木賞に接すると、テンション爆上がりでウキウキしてくるのは言うまでもない。だけど、これまで刻々と築かれてきた歴史的な直木賞の流れだって、それぞれの時代、それぞれの回が同じ...
 第10回(昭和14年/1939年・下半期)の直木賞は相当モメた、と言われています。  あまりにモメすぎて、本来選評が載るはずだった『文藝春秋』昭和15年/1940年3月号には間に合わず、とりあえずそのときはアクタ何トカ賞というどうでもいい賞の選評だけが掲載されて、翌月4月号に直木賞だけの選評がこっそり公けにされたという、なかなかいわくつきの回でした。  「いわく」になってしまった最大の原因は...
 直木賞の選評なのに、直木賞とは関係ないことが書いてある。  ……と、そうは言ってもさすがにまったく関係がないと言えるのか、書いている選者本人のなかでは、その回の直木賞の選考から派生して、あるいは連想を働かせて書かれたものでしょうから、まったく関係がないと断言できるものは、さすがにそれほどはないような気がします。今回取り上げる選評も、多少は直木賞とつながりがあります。  ときは第6回(昭和12...