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第106回
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平成3年/1991年下半期
(平成4年/1992年1月16日決定発表/『オール讀物』平成4年/1992年3月号選評掲載)
選考委員  陳舜臣
男67歳
平岩弓枝
女59歳
五木寛之
男59歳
田辺聖子
女63歳
黒岩重吾
男67歳
渡辺淳一
男58歳
井上ひさし
男57歳
山口瞳
男65歳
藤沢周平
男64歳
選評総行数  109 89 92 117 107 89 110 133 130
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
高橋義夫 「狼奉行」
105
男46歳
13 26 29 15 23 19 19 46 22
高橋克彦 『緋い記憶』
489
男44歳
33 13 18 12 32 13 21 29 33
宮部みゆき 『返事はいらない』
409
女31歳
9 14 8 9 0 0 12 0 9
小嵐九八郎 『鉄塔の泣く街』
374
男47歳
17 7 11 30 7 0 9 0 18
東郷隆 「猫間(ねこま)
81
男40歳
10 4 14 9 10 0 13 0 8
多島斗志之 『不思議島』
400
男43歳
11 11 0 16 11 0 14 0 13
中島らも 『人体模型の夜』
406
男39歳
16 15 11 26 30 8 18 58 28
                 
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』平成4年/1992年3月号
1行当たりの文字数:13字


選考委員
陳舜臣男67歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
実力派に期待する 総行数109 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
高橋義夫
男46歳
13 「人間生活のある切断面をのぞかせて、読者の頭に人生の全体像を刻みこむのが中短篇の基本であるとおもう。この作品はそれに成功している。ひきしまって、「完結感」とでもいうべきものをかんじた。」
高橋克彦
男44歳
33 「通しのテーマをもつ作品集は、同工異曲におちいりやすい危険性と、同工異曲に読まれやすい不安をはらんでいる。それに挑戦した勇気に敬意を払いたい。」「「ねじれた記憶」がとくにすぐれている。「冥い記憶」は登場人物よりも作者の苦しげな息づかいがかんじられた。」「私は氏の将来に一点の疑念も抱いていない。」
宮部みゆき
女31歳
9 「好感がもてる」「あまりにも「毒」が無さすぎる。むしろ前回の『竜は眠る』のほうが問題性があってよかったとおもう。才能はまちがいないのだから、もっと人間観察の眼力を磨いてほしい。」
小嵐九八郎
男47歳
17 「方言と軽薄体の戯文が効果をあげている。なぜ主人公が左翼運動にのめりこんだのか説明不足のようにおもう。」「作者が大問題に照れてのカリカチュアだとすれば、徹底を欠いているかんじがする。」
東郷隆
男40歳
10 「大長篇の序章のようにかんじられた。読後の「完結感」がゆるい。登場人物が読者にとって、熟知の史上の人物なので、勝手に読者の脳中でうごくせいかもしれない。」
多島斗志之
男43歳
11 「推理小説としては秀作である。ただし、犯人を最後まで伏せるために、人物描写が及び腰になって、作品としてのふくらみが不足している。」「文章は平明で、好感がもてる。」
中島らも
男39歳
16 「文章とストーリー構成力は相当なもので、私はそれを高く評価した。」「オカルトとグロの角度から、なにをのぞかせようとするのだろうか。これは読者のほうも、読む技術を要求される小説である。非凡とはおもうが、三十数年前の星新一氏の登場のときほどのショックはなかった。」
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他の選考委員
平岩弓枝
五木寛之
田辺聖子
黒岩重吾
渡辺淳一
井上ひさし
山口瞳
藤沢周平
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選考委員
平岩弓枝女59歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
二人の高橋さんの底力を推す 総行数89 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
高橋義夫
男46歳
26 「東北の、きびしい自然の中で生きる人々の明暗を抑えた描写で読者に語りかけている。それが、かえって心を打つのだろうと思う。登場人物の性格も、心の動きも、行動も無理がなく、作品全体には雪国の良い季節の青空をみるような明るさがあった。」
高橋克彦
男44歳
13 「実に巧緻な作品集であった。一つ間違うと才智だけが目立ってしまうところを、人間の記憶の怖しさでまとめ上げたのが成功していると思う。」
宮部みゆき
女31歳
14 「面白かった。こういうふうに、現実の社会から距離をおいたところで作品を成立させる方法も、それはそれでエンターティメントとして悪くはないと思う。けれども、それとは別に人間と深く取り組む作品も書かれては如何。」「才気だけで終らせてしまうにはもったいないものを持っている作家だと思う故である。」
小嵐九八郎
男47歳
7 「労作と思うが、少々、くどすぎるところがあって、その分、作品が軽くなってしまった。それと、この題名は内容からいって、そぐわないような気がした。」
東郷隆
男40歳
4 「この中篇が候補作になったことが、東郷さんにはお気の毒だったという印象を受けた。」
多島斗志之
男43歳
11 「よく出来たミステリーであった。登場人物の一人一人が旨く書けているし、ミステリーに必要な石の打ち方もきちんとしている。但し、大事なトリックの一つである海や舟に関する部分に無理があると専門家に指摘されると、そっちに無知な私はなにもいえなくなってしまう。」
中島らも
男39歳
15 「才気煥発の小説とでもいったらよいだろうか。」「同じ傾向の短篇を並べると、どうしても無理に創った作品が出て来る。技巧で勝負しようとするとそれがマイナスに働いて損をすることがある。」
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他の選考委員
陳舜臣
五木寛之
田辺聖子
黒岩重吾
渡辺淳一
井上ひさし
山口瞳
藤沢周平
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選考委員
五木寛之男59歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
一作を選ぶ激論も 総行数92 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
高橋義夫
男46歳
29 「小説としての結構がもっともよくととのっていた」「読んでいて素直にたのしむことができた。主人公の祝靱負の描きかたにふくらみがある。下級官吏の十兵衛にも人間的な魅力が感じられるし、狼狩りの絵巻物もなかなかの壮観だ。」
高橋克彦
男44歳
18 「すでに独自の作風を確立している小説家である。そういう作家が受賞するためには、一種、新しい境地を切りひらく野心的な作品が現れなければならない。その困難を見事にクリアした」「モダンな描写の底に、どこか縄文的な粘りが感じられるのが、この作家の資質をこえた才能だろう。」
宮部みゆき
女31歳
8 「風俗的な現代を描くのは資質に合わないのではないか。物語の背景と登場人物を、地味で生活感のあるものにすれば、きっとこの作者の本来の才能が発揮できるだろう。」
小嵐九八郎
男47歳
11 「いっぷう変った全共闘家庭小説だが、両親や周囲の人物の描きかたに卓抜な才能が光っている。平成版の「坊っちゃん」とも読め、私はこの作品が受賞二作の内に入ってもいいな、と思った。」
東郷隆
男40歳
14 「老成した文章は、この主人公を描くにふさわしい落着きがある。細部にも配慮がゆきとどいた小説だし、義仲の純情ぶりもすこぶるおもしろい。」「政治にかかわりあうまいと心をくだく男たちが小説の主人公となるのが、現代というものだろうか。」
多島斗志之
男43歳
0  
中島らも
男39歳
11 「中島らもさんの才気は、今回の「人体模型の夜」では十分に開花していないと思う。」「文中にはさまれるペダントリイの底の浅いのも気になった。小説を書くには、鋭い感覚の背後に鈍重な何かが必要な気がする。」
  「両高橋氏の受賞をよろこぶ反面、どちらか一篇にしぼる激論もたたかわせてみたかったと思う気持ちもあった。」
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他の選考委員
陳舜臣
平岩弓枝
田辺聖子
黒岩重吾
渡辺淳一
井上ひさし
山口瞳
藤沢周平
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選考委員
田辺聖子女63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
読みごたえあった今回候補作 総行数117 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
高橋義夫
男46歳
15 「今回の受賞はほとんど満場一致といっていい。私は雪国の日常感覚の描写が作品の構成上、まことにめでたき効果をもたらしているのに感銘をうけた。」「人物描写も簡潔ながら彫りが深く魅力的だ。時代小説の醍醐味を堪能した。」
高橋克彦
男44歳
12 「一話一話が精緻に作られている。(「冥い記憶」はちょっと作りすぎ、という感がなくもないが)しかし、「ねじれた記憶」のショック性というものは物凄い。これだけ怖い小説を作る作者の蓄積に感じ入った。」
宮部みゆき
女31歳
9 「たいへん生産性のたかい作家で、その筆力には脱帽する。みな水準以上の作品ではあるが、どうしてもこれを推したいという切実な作品ではなく、長篇を待ちたい。」
小嵐九八郎
男47歳
30 「会話がよかったなあ。子供がおっ母さんと「死」について話す東北弁なんか、じつに秀逸であった。」「運動、活動ぶりをテレる、そのテレぶりが芸になっていないので、読んでいるうち読者のほうがテレてしまう。」
東郷隆
男40歳
9 「東郷氏のお作品の玄妙はもっと自由奔放な世界にありそう。これは少し渋くまとまりすぎ、細部のデコレーションを楽しむにとどまった。そのため、主人公の印象が稀薄なのは惜しい。」
多島斗志之
男43歳
16 「文章がよく、描写力はあり、海辺の匂いをよく机辺に運んできた。」「間然するところなき作品になるはずなのに、なぜかあとくちが、いまいち、よくない。」「どうも里見という男が、ヨクナイのだ。ヒロインに同調すると思わせて、どたんばでまた裏切るというところ、ほとんど人物造型の計算が狂ってしまったとしか思えない。残念。」
中島らも
男39歳
26 「私はこの毒性の強い才気に生理的快感をおぼえ、ぜひこういう作品にも受賞してもらいたいと思ったが、票を集めるに至らなかった。」「作品の方が賞をえらぶ躰のものであろう。されば賞を貰えないのがこの手の作品の栄光という場合もある。」
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他の選考委員
陳舜臣
平岩弓枝
五木寛之
黒岩重吾
渡辺淳一
井上ひさし
山口瞳
藤沢周平
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選考委員
黒岩重吾男67歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「狼奉行」の技倆 総行数107 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
高橋義夫
男46歳
23 「三作(引用者注:「狼奉行」「緋い記憶」「人体模型の夜」)を受賞圏内の作品とし、選考会に出席した。」「この作品の魅力は、作者が主人公を始め総ての登場人物を自然に描き、押しつけがましさのないところにある。人間の絡み合いを淡々と描きながら、これだけの迫力を読者に与えた作者の技倆は、並大抵のものではない。」
高橋克彦
男44歳
32 「三作(引用者注:「狼奉行」「緋い記憶」「人体模型の夜」)を受賞圏内の作品とし、選考会に出席した。」「各作品にはそれぞれ味があり、比較的佳作が多い。」「感性豊かな新しい才能の持ち主といえよう。」
宮部みゆき
女31歳
0  
小嵐九八郎
男47歳
7 「小説として構築されていない。それに何となく手の内が見えるのも残念である。ただこの作者には、才気が感じられるので次作を是非読みたい気がした。」
東郷隆
男40歳
10 「私が思ったよりも点が入らなかった。木曾冠者義仲が都に入ってからの公家の狼狽ぶりや、義仲の野性味と情などがよく描けている。主人公も面白いが、この人物を活かすには、作品にもっとうねりがなければならない。」
多島斗志之
男43歳
11 「謎解きに入った途端、作品の味が薄れてしまった。潮流を利用したトリックは一見新しそうだが、海は、何時どう変化するか、分らない。ゆり子の人間像もはっきりせず、里見を本気で殺そうとしたのなら行き過ぎであろう。」
中島らも
男39歳
30 「三作(引用者注:「狼奉行」「緋い記憶」「人体模型の夜」)を受賞圏内の作品とし、選考会に出席した。」「短い枚数で、これだけ面白い短篇を揃えた作者の才筆には、なみなみならぬものがある。」「ただこの作品集が受賞を逸したのは、この種の小説に必要な無気味な鬼が存在せず、人間が持つ本質的な謎に迫るものがなかったせいであろう。」
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他の選考委員
陳舜臣
平岩弓枝
五木寛之
田辺聖子
渡辺淳一
井上ひさし
山口瞳
藤沢周平
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選考委員
渡辺淳一男58歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
慎重論として 総行数89 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
高橋義夫
男46歳
19 「頭一つ抜けて、安定した筆力が感じられた。」「全体としてまとまり、前回より一段と巧みになったが、その分だけ、作者の一途さは薄れたようである。個人的な好みからいえば、以前の「闇の葬列」のほうが好きだが、その他のさまざまな候補作に見せた安定した力も含めて、積極的に評価した。」
高橋克彦
男44歳
13 「記憶という不確かなものに挑んだ意欲はかうが、全体に抽象化が不完全で、生でぶつけすぎるところがある。このため、やや同工異曲の嫌いあり、ここから一歩すすめて妖しい深層心理に行きつくためには、いまの明晰な文体では無理かもしれない。」
宮部みゆき
女31歳
0  
小嵐九八郎
男47歳
0  
東郷隆
男40歳
0  
多島斗志之
男43歳
0  
中島らも
男39歳
8 「才気は認めるが、いささか知識だけが先行して、小器用なこけおどしに終ってしまった。なによりも、わたしが医師であったせいか、恐怖をまったく感じなかったことに当惑した。」
  「たしかに直木賞もかつては新人賞的な意味合いがあったが、いまや世間的な知名度も高く、受賞したことが立派な肩書きになる時代である。」「当然、それに見合った秀作に賞を出すべきで、その都度、少しうまいとか、小器用といったことで授賞にするのは考えものだろう。」
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他の選考委員
陳舜臣
平岩弓枝
五木寛之
田辺聖子
黒岩重吾
井上ひさし
山口瞳
藤沢周平
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選考委員
井上ひさし男57歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
粒よりの力作揃い 総行数110 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
高橋義夫
男46歳
19 「平凡な非凡さで光る。」「いやなやつのよさ、いいやつのよわさ、作者は登場人物ひとりひとりのいろんな面に描写の光を当てる。その方法が人生の深さと重さとを摘出させるわけで、評者は、作者の長年の努力がここに見事に結実したことを喜ぶ。」
高橋克彦
男44歳
21 「物凄い秀作があった。「ねじれた記憶」がそれで、深夜、ひとり個室で合わせ鏡の中の自分の姿を見たときのような怖ろしさを味わった。」「小説の題材も形式もすべて書きつくされたという噂さえあるのに、これはまったく新手の物語構造である。」
宮部みゆき
女31歳
12 「結末の温かさと爽やかさで、いつも評者を楽しませてくれるが、今回の『返事はいらない』にもその美点が満載されている。ただし、作中人物を少し動かしすぎ、弄りすぎるような気がする。」
小嵐九八郎
男47歳
9 「破格の文体をひっさげて現れた。話し言葉をどう書き言葉にまで練り上げるか。(引用者中略)この日本語の冒険がほぼ成就している。」「難点は主人公がどうもぼやけていることで、じつに惜しい。」
東郷隆
男40歳
13 「細部がほんとうにおもしろい。ただ、その細部が集積されて一編の小説に編み上げる際の戦略にいささかの誤算が見られるようだ。なんだかおとなしいのだ。もとよりそのおとなしさがこの『猫間』の魅力でもあるのだけれど。」
多島斗志之
男43歳
14 「構えの大きさにはいつも舌を巻くが、『不思議島』のトリックもまた壮大である。ちょっと屈折のあるヒロインもよく書けていた。問題はその恋人の診療所医師で、胸中にたくさんの思惑を秘めているので物語が進展するにつれて、その思惑に引きずられるのか、少しずつ安手な人間になって行く。」
中島らも
男39歳
18 「「邪眼」や「EIGHT ARMS TO HOLD YOU」は展開の巧みさや落ちの鋭さで読む者の度肝を抜く。ただ、どのコントもどこかで人間を信用していないところがあって、それが読者を常に不安に陥れる。もちろんそれは欠点ではない、むしろ長所でさえあるのだが、しかしなにか空しく、感心するが愛せない。」
  「今回の候補作はどれもみな読み応えがあった。」
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他の選考委員
陳舜臣
平岩弓枝
五木寛之
田辺聖子
黒岩重吾
渡辺淳一
山口瞳
藤沢周平
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選考委員
山口瞳男65歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
中島らも、だ 総行数133 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
高橋義夫
男46歳
46 「私は買わない。」「藩の内紛のことを書きたかったのか、マタギを書きたかったのか、狼の話を書きたかったのかがよくわからず、分裂しているように思われる。」「主人公の妻のすえはどうして山に同行しないのか、なぜ夫を拒むのか、なぜ自害したのか、よくわからない。」
高橋克彦
男44歳
29 「「遠い記憶」が傑作だと思っている。」「誰にでもある甘美な記憶、思いだしたくない怖しい記憶という狙いは面白いが、同時に無理が生ずる。」「設定が似てきてしまって、通読するとやや靠れる感じを免れない。」「「遠い記憶」と視覚的に鮮やかな「言えない記憶」があるので、私は中島らもさんが除外された後ではこの短篇集を支持することになった。」
宮部みゆき
女31歳
0  
小嵐九八郎
男47歳
0  
東郷隆
男40歳
0  
多島斗志之
男43歳
0  
中島らも
男39歳
58 「才気だか才能だかわからないが、それのあるのは中島さんが一番だと思った。」「この明るい厭世主義、無手勝流の虚無主義は間違いなく新しい文学の行方を示唆しているように思われる。」「好い加減に書いているように見えるが作者は背景や小道具にも細心の注意を払っていて、それも快い。」
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他の選考委員
陳舜臣
平岩弓枝
五木寛之
田辺聖子
黒岩重吾
渡辺淳一
井上ひさし
藤沢周平
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選考委員
藤沢周平男64歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
底力秘める二作品 総行数130 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
高橋義夫
男46歳
22 「よくまとまった時代小説だった。」「これまでの高橋さんの山形ものには風俗に気持を奪われるところがあったが、この作品では風俗は底に沈みこんで、その分だけ厚みのある物語ができ上がった。底力を感じさせる作品だった。」
高橋克彦
男44歳
33 「恐怖小説という形になっているにもかかわらず、作品には実在の世界の手ざわりがあり、またこの短篇集には、小説でなければ表現出来ないものが書けていて、この作品にも私は底力を感じた。」「この作家にはむかしからどこかに未完成な感じがあり、(引用者中略)私はむしろその未完成の気配に魅力を感じる。」
宮部みゆき
女31歳
9 「最近とみに筆力が安定し、またつねに人間を描こうとしているところに好感が持てるのだが、候補になった短篇集には三作ほど話のつくり過ぎ、ひねり過ぎの作品があって、みずからリアリティを壊していたのは残念だった。」
小嵐九八郎
男47歳
18 「野蛮な筆力といったものを感じさせてわるくなかった。」「第七章あたりはきびしい外側の流れと、すべての現象を内側から喜劇化してしまう母親の存在がうまく噛み合って魅力的だった。大変おもしろく読んだが、このひとは一番書きたいところをこの小説で書いてしまったようにもみえる。ぜひもう一作読みたい。」
東郷隆
男40歳
8 「骨法正しい短篇で、歴史上のエピソードをひっくり返してみせた手腕があざやかだった。ただ前半が説明過多で、そのせいか話が小柄にすぎて授賞を云々するには不足に思われた。」
多島斗志之
男43歳
13 「初期にくらべると文章が柔軟になり、うまくなった。ただ作品を読み通してみて、母親の犯罪を隠すためとはいえ、誘拐事件を仕立てて小学生の娘を夜の無人島に置き去りにする設定は、大げさというか、娘に過酷ではないかという疑問が残った。」「すらすらと読めたが、水準を抜く作品ではなかった。」
中島らも
男39歳
28 「びっくりさせられるのはこの作家の才気煥発ぶり。」「ただこうした博識の部分をのぞくと小説の底は意外に浅く、こういう軽快なつくりの小説の魅力を認めながらも、賞という形で称揚すべきほどのものかどうか、私には疑問に思われた。」
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他の選考委員
陳舜臣
平岩弓枝
五木寛之
田辺聖子
黒岩重吾
渡辺淳一
井上ひさし
山口瞳
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受賞者・作品
高橋義夫男46歳×各選考委員 
「狼奉行」
短篇 105
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
陳舜臣
男67歳
13 「人間生活のある切断面をのぞかせて、読者の頭に人生の全体像を刻みこむのが中短篇の基本であるとおもう。この作品はそれに成功している。ひきしまって、「完結感」とでもいうべきものをかんじた。」
平岩弓枝
女59歳
26 「東北の、きびしい自然の中で生きる人々の明暗を抑えた描写で読者に語りかけている。それが、かえって心を打つのだろうと思う。登場人物の性格も、心の動きも、行動も無理がなく、作品全体には雪国の良い季節の青空をみるような明るさがあった。」
五木寛之
男59歳
29 「小説としての結構がもっともよくととのっていた」「読んでいて素直にたのしむことができた。主人公の祝靱負の描きかたにふくらみがある。下級官吏の十兵衛にも人間的な魅力が感じられるし、狼狩りの絵巻物もなかなかの壮観だ。」
田辺聖子
女63歳
15 「今回の受賞はほとんど満場一致といっていい。私は雪国の日常感覚の描写が作品の構成上、まことにめでたき効果をもたらしているのに感銘をうけた。」「人物描写も簡潔ながら彫りが深く魅力的だ。時代小説の醍醐味を堪能した。」
黒岩重吾
男67歳
23 「三作(引用者注:「狼奉行」「緋い記憶」「人体模型の夜」)を受賞圏内の作品とし、選考会に出席した。」「この作品の魅力は、作者が主人公を始め総ての登場人物を自然に描き、押しつけがましさのないところにある。人間の絡み合いを淡々と描きながら、これだけの迫力を読者に与えた作者の技倆は、並大抵のものではない。」
渡辺淳一
男58歳
19 「頭一つ抜けて、安定した筆力が感じられた。」「全体としてまとまり、前回より一段と巧みになったが、その分だけ、作者の一途さは薄れたようである。個人的な好みからいえば、以前の「闇の葬列」のほうが好きだが、その他のさまざまな候補作に見せた安定した力も含めて、積極的に評価した。」
井上ひさし
男57歳
19 「平凡な非凡さで光る。」「いやなやつのよさ、いいやつのよわさ、作者は登場人物ひとりひとりのいろんな面に描写の光を当てる。その方法が人生の深さと重さとを摘出させるわけで、評者は、作者の長年の努力がここに見事に結実したことを喜ぶ。」
山口瞳
男65歳
46 「私は買わない。」「藩の内紛のことを書きたかったのか、マタギを書きたかったのか、狼の話を書きたかったのかがよくわからず、分裂しているように思われる。」「主人公の妻のすえはどうして山に同行しないのか、なぜ夫を拒むのか、なぜ自害したのか、よくわからない。」
藤沢周平
男64歳
22 「よくまとまった時代小説だった。」「これまでの高橋さんの山形ものには風俗に気持を奪われるところがあったが、この作品では風俗は底に沈みこんで、その分だけ厚みのある物語ができ上がった。底力を感じさせる作品だった。」
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他の候補作
高橋克彦
『緋い記憶』
宮部みゆき
『返事はいらない』
小嵐九八郎
『鉄塔の泣く街』
東郷隆
「猫間(ねこま)
多島斗志之
『不思議島』
中島らも
『人体模型の夜』
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受賞者・作品
高橋克彦男44歳×各選考委員 
『緋い記憶』
短篇集7篇 489
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
陳舜臣
男67歳
33 「通しのテーマをもつ作品集は、同工異曲におちいりやすい危険性と、同工異曲に読まれやすい不安をはらんでいる。それに挑戦した勇気に敬意を払いたい。」「「ねじれた記憶」がとくにすぐれている。「冥い記憶」は登場人物よりも作者の苦しげな息づかいがかんじられた。」「私は氏の将来に一点の疑念も抱いていない。」
平岩弓枝
女59歳
13 「実に巧緻な作品集であった。一つ間違うと才智だけが目立ってしまうところを、人間の記憶の怖しさでまとめ上げたのが成功していると思う。」
五木寛之
男59歳
18 「すでに独自の作風を確立している小説家である。そういう作家が受賞するためには、一種、新しい境地を切りひらく野心的な作品が現れなければならない。その困難を見事にクリアした」「モダンな描写の底に、どこか縄文的な粘りが感じられるのが、この作家の資質をこえた才能だろう。」
田辺聖子
女63歳
12 「一話一話が精緻に作られている。(「冥い記憶」はちょっと作りすぎ、という感がなくもないが)しかし、「ねじれた記憶」のショック性というものは物凄い。これだけ怖い小説を作る作者の蓄積に感じ入った。」
黒岩重吾
男67歳
32 「三作(引用者注:「狼奉行」「緋い記憶」「人体模型の夜」)を受賞圏内の作品とし、選考会に出席した。」「各作品にはそれぞれ味があり、比較的佳作が多い。」「感性豊かな新しい才能の持ち主といえよう。」
渡辺淳一
男58歳
13 「記憶という不確かなものに挑んだ意欲はかうが、全体に抽象化が不完全で、生でぶつけすぎるところがある。このため、やや同工異曲の嫌いあり、ここから一歩すすめて妖しい深層心理に行きつくためには、いまの明晰な文体では無理かもしれない。」
井上ひさし
男57歳
21 「物凄い秀作があった。「ねじれた記憶」がそれで、深夜、ひとり個室で合わせ鏡の中の自分の姿を見たときのような怖ろしさを味わった。」「小説の題材も形式もすべて書きつくされたという噂さえあるのに、これはまったく新手の物語構造である。」
山口瞳
男65歳
29 「「遠い記憶」が傑作だと思っている。」「誰にでもある甘美な記憶、思いだしたくない怖しい記憶という狙いは面白いが、同時に無理が生ずる。」「設定が似てきてしまって、通読するとやや靠れる感じを免れない。」「「遠い記憶」と視覚的に鮮やかな「言えない記憶」があるので、私は中島らもさんが除外された後ではこの短篇集を支持することになった。」
藤沢周平
男64歳
33 「恐怖小説という形になっているにもかかわらず、作品には実在の世界の手ざわりがあり、またこの短篇集には、小説でなければ表現出来ないものが書けていて、この作品にも私は底力を感じた。」「この作家にはむかしからどこかに未完成な感じがあり、(引用者中略)私はむしろその未完成の気配に魅力を感じる。」
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他の候補作
高橋義夫
「狼奉行」
宮部みゆき
『返事はいらない』
小嵐九八郎
『鉄塔の泣く街』
東郷隆
「猫間(ねこま)
多島斗志之
『不思議島』
中島らも
『人体模型の夜』
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候補者・作品
宮部みゆき女31歳×各選考委員 
『返事はいらない』
短篇集6篇 409
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
陳舜臣
男67歳
9 「好感がもてる」「あまりにも「毒」が無さすぎる。むしろ前回の『竜は眠る』のほうが問題性があってよかったとおもう。才能はまちがいないのだから、もっと人間観察の眼力を磨いてほしい。」
平岩弓枝
女59歳
14 「面白かった。こういうふうに、現実の社会から距離をおいたところで作品を成立させる方法も、それはそれでエンターティメントとして悪くはないと思う。けれども、それとは別に人間と深く取り組む作品も書かれては如何。」「才気だけで終らせてしまうにはもったいないものを持っている作家だと思う故である。」
五木寛之
男59歳
8 「風俗的な現代を描くのは資質に合わないのではないか。物語の背景と登場人物を、地味で生活感のあるものにすれば、きっとこの作者の本来の才能が発揮できるだろう。」
田辺聖子
女63歳
9 「たいへん生産性のたかい作家で、その筆力には脱帽する。みな水準以上の作品ではあるが、どうしてもこれを推したいという切実な作品ではなく、長篇を待ちたい。」
黒岩重吾
男67歳
0  
渡辺淳一
男58歳
0  
井上ひさし
男57歳
12 「結末の温かさと爽やかさで、いつも評者を楽しませてくれるが、今回の『返事はいらない』にもその美点が満載されている。ただし、作中人物を少し動かしすぎ、弄りすぎるような気がする。」
山口瞳
男65歳
0  
藤沢周平
男64歳
9 「最近とみに筆力が安定し、またつねに人間を描こうとしているところに好感が持てるのだが、候補になった短篇集には三作ほど話のつくり過ぎ、ひねり過ぎの作品があって、みずからリアリティを壊していたのは残念だった。」
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他の候補作
高橋義夫
「狼奉行」
高橋克彦
『緋い記憶』
小嵐九八郎
『鉄塔の泣く街』
東郷隆
「猫間(ねこま)
多島斗志之
『不思議島』
中島らも
『人体模型の夜』
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候補者・作品
小嵐九八郎男47歳×各選考委員 
『鉄塔の泣く街』
長篇 374
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
陳舜臣
男67歳
17 「方言と軽薄体の戯文が効果をあげている。なぜ主人公が左翼運動にのめりこんだのか説明不足のようにおもう。」「作者が大問題に照れてのカリカチュアだとすれば、徹底を欠いているかんじがする。」
平岩弓枝
女59歳
7 「労作と思うが、少々、くどすぎるところがあって、その分、作品が軽くなってしまった。それと、この題名は内容からいって、そぐわないような気がした。」
五木寛之
男59歳
11 「いっぷう変った全共闘家庭小説だが、両親や周囲の人物の描きかたに卓抜な才能が光っている。平成版の「坊っちゃん」とも読め、私はこの作品が受賞二作の内に入ってもいいな、と思った。」
田辺聖子
女63歳
30 「会話がよかったなあ。子供がおっ母さんと「死」について話す東北弁なんか、じつに秀逸であった。」「運動、活動ぶりをテレる、そのテレぶりが芸になっていないので、読んでいるうち読者のほうがテレてしまう。」
黒岩重吾
男67歳
7 「小説として構築されていない。それに何となく手の内が見えるのも残念である。ただこの作者には、才気が感じられるので次作を是非読みたい気がした。」
渡辺淳一
男58歳
0  
井上ひさし
男57歳
9 「破格の文体をひっさげて現れた。話し言葉をどう書き言葉にまで練り上げるか。(引用者中略)この日本語の冒険がほぼ成就している。」「難点は主人公がどうもぼやけていることで、じつに惜しい。」
山口瞳
男65歳
0  
藤沢周平
男64歳
18 「野蛮な筆力といったものを感じさせてわるくなかった。」「第七章あたりはきびしい外側の流れと、すべての現象を内側から喜劇化してしまう母親の存在がうまく噛み合って魅力的だった。大変おもしろく読んだが、このひとは一番書きたいところをこの小説で書いてしまったようにもみえる。ぜひもう一作読みたい。」
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他の候補作
高橋義夫
「狼奉行」
高橋克彦
『緋い記憶』
宮部みゆき
『返事はいらない』
東郷隆
「猫間(ねこま)
多島斗志之
『不思議島』
中島らも
『人体模型の夜』
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候補者・作品
東郷隆男40歳×各選考委員 
「猫間(ねこま)
短篇 81
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
陳舜臣
男67歳
10 「大長篇の序章のようにかんじられた。読後の「完結感」がゆるい。登場人物が読者にとって、熟知の史上の人物なので、勝手に読者の脳中でうごくせいかもしれない。」
平岩弓枝
女59歳
4 「この中篇が候補作になったことが、東郷さんにはお気の毒だったという印象を受けた。」
五木寛之
男59歳
14 「老成した文章は、この主人公を描くにふさわしい落着きがある。細部にも配慮がゆきとどいた小説だし、義仲の純情ぶりもすこぶるおもしろい。」「政治にかかわりあうまいと心をくだく男たちが小説の主人公となるのが、現代というものだろうか。」
田辺聖子
女63歳
9 「東郷氏のお作品の玄妙はもっと自由奔放な世界にありそう。これは少し渋くまとまりすぎ、細部のデコレーションを楽しむにとどまった。そのため、主人公の印象が稀薄なのは惜しい。」
黒岩重吾
男67歳
10 「私が思ったよりも点が入らなかった。木曾冠者義仲が都に入ってからの公家の狼狽ぶりや、義仲の野性味と情などがよく描けている。主人公も面白いが、この人物を活かすには、作品にもっとうねりがなければならない。」
渡辺淳一
男58歳
0  
井上ひさし
男57歳
13 「細部がほんとうにおもしろい。ただ、その細部が集積されて一編の小説に編み上げる際の戦略にいささかの誤算が見られるようだ。なんだかおとなしいのだ。もとよりそのおとなしさがこの『猫間』の魅力でもあるのだけれど。」
山口瞳
男65歳
0  
藤沢周平
男64歳
8 「骨法正しい短篇で、歴史上のエピソードをひっくり返してみせた手腕があざやかだった。ただ前半が説明過多で、そのせいか話が小柄にすぎて授賞を云々するには不足に思われた。」
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他の候補作
高橋義夫
「狼奉行」
高橋克彦
『緋い記憶』
宮部みゆき
『返事はいらない』
小嵐九八郎
『鉄塔の泣く街』
多島斗志之
『不思議島』
中島らも
『人体模型の夜』
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候補者・作品
多島斗志之男43歳×各選考委員 
『不思議島』
長篇 400
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
陳舜臣
男67歳
11 「推理小説としては秀作である。ただし、犯人を最後まで伏せるために、人物描写が及び腰になって、作品としてのふくらみが不足している。」「文章は平明で、好感がもてる。」
平岩弓枝
女59歳
11 「よく出来たミステリーであった。登場人物の一人一人が旨く書けているし、ミステリーに必要な石の打ち方もきちんとしている。但し、大事なトリックの一つである海や舟に関する部分に無理があると専門家に指摘されると、そっちに無知な私はなにもいえなくなってしまう。」
五木寛之
男59歳
0  
田辺聖子
女63歳
16 「文章がよく、描写力はあり、海辺の匂いをよく机辺に運んできた。」「間然するところなき作品になるはずなのに、なぜかあとくちが、いまいち、よくない。」「どうも里見という男が、ヨクナイのだ。ヒロインに同調すると思わせて、どたんばでまた裏切るというところ、ほとんど人物造型の計算が狂ってしまったとしか思えない。残念。」
黒岩重吾
男67歳
11 「謎解きに入った途端、作品の味が薄れてしまった。潮流を利用したトリックは一見新しそうだが、海は、何時どう変化するか、分らない。ゆり子の人間像もはっきりせず、里見を本気で殺そうとしたのなら行き過ぎであろう。」
渡辺淳一
男58歳
0  
井上ひさし
男57歳
14 「構えの大きさにはいつも舌を巻くが、『不思議島』のトリックもまた壮大である。ちょっと屈折のあるヒロインもよく書けていた。問題はその恋人の診療所医師で、胸中にたくさんの思惑を秘めているので物語が進展するにつれて、その思惑に引きずられるのか、少しずつ安手な人間になって行く。」
山口瞳
男65歳
0  
藤沢周平
男64歳
13 「初期にくらべると文章が柔軟になり、うまくなった。ただ作品を読み通してみて、母親の犯罪を隠すためとはいえ、誘拐事件を仕立てて小学生の娘を夜の無人島に置き去りにする設定は、大げさというか、娘に過酷ではないかという疑問が残った。」「すらすらと読めたが、水準を抜く作品ではなかった。」
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他の候補作
高橋義夫
「狼奉行」
高橋克彦
『緋い記憶』
宮部みゆき
『返事はいらない』
小嵐九八郎
『鉄塔の泣く街』
東郷隆
「猫間(ねこま)
中島らも
『人体模型の夜』
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候補者・作品
中島らも男39歳×各選考委員 
『人体模型の夜』
連作14篇 406
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
陳舜臣
男67歳
16 「文章とストーリー構成力は相当なもので、私はそれを高く評価した。」「オカルトとグロの角度から、なにをのぞかせようとするのだろうか。これは読者のほうも、読む技術を要求される小説である。非凡とはおもうが、三十数年前の星新一氏の登場のときほどのショックはなかった。」
平岩弓枝
女59歳
15 「才気煥発の小説とでもいったらよいだろうか。」「同じ傾向の短篇を並べると、どうしても無理に創った作品が出て来る。技巧で勝負しようとするとそれがマイナスに働いて損をすることがある。」
五木寛之
男59歳
11 「中島らもさんの才気は、今回の「人体模型の夜」では十分に開花していないと思う。」「文中にはさまれるペダントリイの底の浅いのも気になった。小説を書くには、鋭い感覚の背後に鈍重な何かが必要な気がする。」
田辺聖子
女63歳
26 「私はこの毒性の強い才気に生理的快感をおぼえ、ぜひこういう作品にも受賞してもらいたいと思ったが、票を集めるに至らなかった。」「作品の方が賞をえらぶ躰のものであろう。されば賞を貰えないのがこの手の作品の栄光という場合もある。」
黒岩重吾
男67歳
30 「三作(引用者注:「狼奉行」「緋い記憶」「人体模型の夜」)を受賞圏内の作品とし、選考会に出席した。」「短い枚数で、これだけ面白い短篇を揃えた作者の才筆には、なみなみならぬものがある。」「ただこの作品集が受賞を逸したのは、この種の小説に必要な無気味な鬼が存在せず、人間が持つ本質的な謎に迫るものがなかったせいであろう。」
渡辺淳一
男58歳
8 「才気は認めるが、いささか知識だけが先行して、小器用なこけおどしに終ってしまった。なによりも、わたしが医師であったせいか、恐怖をまったく感じなかったことに当惑した。」
井上ひさし
男57歳
18 「「邪眼」や「EIGHT ARMS TO HOLD YOU」は展開の巧みさや落ちの鋭さで読む者の度肝を抜く。ただ、どのコントもどこかで人間を信用していないところがあって、それが読者を常に不安に陥れる。もちろんそれは欠点ではない、むしろ長所でさえあるのだが、しかしなにか空しく、感心するが愛せない。」
山口瞳
男65歳
58 「才気だか才能だかわからないが、それのあるのは中島さんが一番だと思った。」「この明るい厭世主義、無手勝流の虚無主義は間違いなく新しい文学の行方を示唆しているように思われる。」「好い加減に書いているように見えるが作者は背景や小道具にも細心の注意を払っていて、それも快い。」
藤沢周平
男64歳
28 「びっくりさせられるのはこの作家の才気煥発ぶり。」「ただこうした博識の部分をのぞくと小説の底は意外に浅く、こういう軽快なつくりの小説の魅力を認めながらも、賞という形で称揚すべきほどのものかどうか、私には疑問に思われた。」
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他の候補作
高橋義夫
「狼奉行」
高橋克彦
『緋い記憶』
宮部みゆき
『返事はいらない』
小嵐九八郎
『鉄塔の泣く街』
東郷隆
「猫間(ねこま)
多島斗志之
『不思議島』
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