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第108回
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平成4年/1992年下半期
(平成5年/1993年1月13日決定発表/『オール讀物』平成5年/1993年3月号選評掲載)
選考委員  田辺聖子
女64歳
黒岩重吾
男68歳
山口瞳
男66歳
陳舜臣
男68歳
渡辺淳一
男59歳
平岩弓枝
女60歳
井上ひさし
男58歳
藤沢周平
男65歳
五木寛之
男60歳
選評総行数  111 116 117 71 100 88 164 131 51
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
出久根達郎 『佃島ふたり書房』
555
男48歳
75 47 117 14 21 34 41 55 29
内海隆一郎 『風の渡る町』
479
男55歳
0 11 0 11 12 15 31 11 0
東郷隆 『打てや叩けや』
735
男41歳
0 10 0 15 15 6 19 24 12
小嵐九八郎 『清十郎』
507
男48歳
0 13 0 11 7 12 30 16 10
宮部みゆき 『火車』
932
女32歳
34 35 0 14 37 21 47 25 0
      欠席
書面回答
      欠席
書面回答
 
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』平成5年/1993年3月号
1行当たりの文字数:13字


選考委員
田辺聖子女64歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
文字のちから 総行数111 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
出久根達郎
男48歳
75 「小説に翻弄されるという醍醐味を久しぶりに味わった。」「文章で昂奮させられる作品、というのは、うれしいものだ。」「過去と現在のもつれかたに、えもいえぬ詩情がたちのぼる。」「最後のページを閉じたとき、実にあとあじよく、感慨が心を濡らすのに気付く。」
内海隆一郎
男55歳
0  
東郷隆
男41歳
0  
小嵐九八郎
男48歳
0  
宮部みゆき
女32歳
34 「息もつがせずという感じで読まされた。」「出色のミステリーであろう。謎ときの面白さは抜群。ただ読み終ってみると、設定の不自然さが気になった。(引用者中略)たぶんそういうことは、作品中にそれを圧倒してしまう魅力があれば消滅してしまう欠点であろう。」「私は本間刑事の環境がもっと面白ければ、という、ないものねだりをせずにいられなかった。」
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他の選考委員
黒岩重吾
山口瞳
陳舜臣
渡辺淳一
平岩弓枝
井上ひさし
藤沢周平
五木寛之
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選考委員
黒岩重吾男68歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
受賞作の魅力 総行数116 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
出久根達郎
男48歳
47 「私はこの作品一本に絞り選考会に出席した。」「某委員が指摘したように、ところどころに作者の作意を感じなくもないが、これだけの登場人物の一人一人に個性を持たせ、最後まで読者を飽かせない腕力は貴重といえよう。」「作者は小説の本質を?んだような気がする。」
内海隆一郎
男55歳
11 「殆どは、エッセーかコントに味つけしたような読物で終っている。人間や風土に対する作者の暖かい気持は分るが、読者の胸を叩くためには、小説としての切れ味がなければならない。その中で佳作と感じたのは、「教え子たち」であった。」
東郷隆
男41歳
10 「本人が面白がっている割には読者は面白くない。」「登場人物が多過ぎるために、大事な人物像が曖昧なままで終っている。このような書き方なら前半の阿古丸、湛海、百合根などにもっと焦点を当て、余り幻術に溺れず、描き切るべきであった。」
小嵐九八郎
男48歳
13 「読み辛いが読み終った後で詩情を感じる。これだけの方言を並べ、何度も文章を読み返さざるを得ない小説なのに詩情が漂っているのは作者の筆力のせいである。ただ題が清十郎という馬である以上、馬と主人公の少年との関係をもっと濃密に書き込むべきであろう。」
宮部みゆき
女32歳
35 「これまでの氏の作品の中では力作といえよう。」「ただ作者が力を込めている割合には小説としての印象が薄い。」「私が納得出来なかったのは、新城喬子が説明でしか書かれていないことだった。大事な人物なのに人物像が不明確である。」
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他の選考委員
田辺聖子
山口瞳
陳舜臣
渡辺淳一
平岩弓枝
井上ひさし
藤沢周平
五木寛之
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選考委員
山口瞳男66歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
出久根さんの文章 総行数117 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
出久根達郎
男48歳
117 「一言一句が粒立っているとか、活字が立ち上ってくるとかいう言い方があるが、そういう文章に久し振りにお目にかかったような気がしている。」「第四章の「鬼火あやしき黒い大川」が傑出している。」「畜生! うめえなあと思い、私は何度も唸ったのである。」「これは瑕瑾の多い小説である。(引用者中略)出久根さんにはキリッとした中年男女の恋愛小説の短篇を書いてもらいたいと切に願っている。」
内海隆一郎
男55歳
0  
東郷隆
男41歳
0  
小嵐九八郎
男48歳
0  
宮部みゆき
女32歳
0  
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他の選考委員
田辺聖子
黒岩重吾
陳舜臣
渡辺淳一
平岩弓枝
井上ひさし
藤沢周平
五木寛之
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選考委員
陳舜臣男68歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
僅かの差 総行数71 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
出久根達郎
男48歳
14 「きめのこまかい文章で、前半はみごとで、これはと思わせたが、幸徳秋水や管野スガといった実在の人物が出てくると、とみに厚みを失ったかんじがした。自分ひとりで面白がっていて、その面白さが読者に伝わってこないうらみがある。」
内海隆一郎
男55歳
11 「前回の同氏の候補作とおなじ不満をもった。一つ一つの作品が短かすぎて、なかにはぴったりときまったのもあれば、密度の薄いまま終わったのもある。この作家には、短篇の集合体ではなく、構成力を試される長篇に挑戦してほしいとおもう。」
東郷隆
男41歳
15 「中世の雰囲気がよく出ていた。妖術や幻術のたぐいは、中世をいろどるおもなトーンといってよい。小説に登場させるのはかなり危険だが、東郷氏は大手を振ってそれをやってのけた。その度胸のよさを買いたい。構成にもさしたる破綻はなく、良質のエンターテインメントになっている。」
小嵐九八郎
男48歳
11 「馬と少年との交歓を書こうとしたのであろうが、残念ながら描き切れていなかった。意識しすぎたのかもしれないが、読者のほうが息切れしそうである。方言も読みづらく、作者もそれを承知で、散文詩ふうに仕立てようとしたのであろう。かならずしも成功したとは言いがたい。」
宮部みゆき
女32歳
14 「今日的なテーマを、掘り下げて描いた秀作だが、すこし肥満気味である。会話などにやや冗長な部分があり、それを苅りこんで、もっとスリムにできたのではないか。いずれにしても、宮部氏の力量が安定感を増したことを証明する作品といえるだろう。」
  「今回の候補作五作は、あまり優劣の差はないようにおもえた。」「選考委員会に出席することができず、やむをえず書面回答となった。各作品僅差とおもったので、どの作品が受賞作になっても反対しないことを、選考委員会にお伝えした。」
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他の選考委員
田辺聖子
黒岩重吾
山口瞳
渡辺淳一
平岩弓枝
井上ひさし
藤沢周平
五木寛之
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選考委員
渡辺淳一男59歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
目のたしかさ 総行数100 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
出久根達郎
男48歳
21 「頭一つ抜けていた。なによりもこの作者の優れているところは、人間を見る目がたしかなことで、その目が老獪ともいえる文章できっかりと裏打ちされている。」「気になったのは、全体としてじじくさく華がないところだが、もしかするとこの作家は、表面じじくささを装いながら、意外に化ける余力を秘めているのではないか。そのあたりへの期待もこめて、授賞に賛成した。」
内海隆一郎
男55歳
12 「その意企はわかるが、あまりに淡彩画風で迫力に欠けていた。このような手法は洒落てはいるが、余程の技巧派か老成した作家がやるべきことで、直木賞を狙うにはいささか小手先の仕事にすぎるようである。」
東郷隆
男41歳
15 「困ったことに、小説は知識が豊かなら書けるというものでなく、むしろありすぎて失敗する場合もある。今回はまさしくその例で、あるかぎりの知識を詰めこみすぎて、ごった煮のような騒然さだけで終ってしまった。」
小嵐九八郎
男48歳
7 「大胆に方言をとり入れているが、これほど多用してはさすがに読みにくい。しかし小説の出し入れは巧みでそれなりにでき上っているが、いささか俗で古めかしい。」
宮部みゆき
女32歳
37 「導入部が巧みで、かなりの長篇を最後まで飽きもせず読み通せたが、ラストを読み切った途端、肩すかしをくらったような失望を覚えた。その最大の理由は、いったいこの作者はなにを書きたかったのか、そこがわからず、ただ筆を流しているとしか思えなかったことである。」「むろんこのようなお遊びの小説があっても一向にかまわないが、思いつきだけで書くかぎり、所詮、心を打つものとはなりえない。」
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田辺聖子
黒岩重吾
山口瞳
陳舜臣
平岩弓枝
井上ひさし
藤沢周平
五木寛之
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選考委員
平岩弓枝女60歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
心に残った「風の渡る町」 総行数88 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
出久根達郎
男48歳
34 「如何にも小説的小説というか、よくも悪くも技巧的という印象を受けた。」「主人公のパートナーの人のいい、気の弱い、しかも誠実な男というのも或るパターンではあった。一つ間違うと、えらく古くさい作品になるのを、そう仕上げなかったのは、作者の腕であり、キャリアであろう。」
内海隆一郎
男55歳
15 「私の心に最後まで残った」「文章が簡潔で描写が行き届いている。登場人物の一人一人に身近かなものを感じたし、そういう意味ではこの風の渡る町は、私自身、長年住んでいる町にも似ているような気がした。」
東郷隆
男41歳
6 「惜しいと思ったのは主人公のキャラクターの設定が少々、不安定で、人間がふくらまなかったことである。」
小嵐九八郎
男48歳
12 「方言を使うことに反対ではないし、方言を軽んずる気持は毛頭ないけれども、小説ではもっとうまく、読者に理解出来るような書き方があるので、そうしないと作者の書きたかったことが、読者に伝わらない。」
宮部みゆき
女32歳
21 「大変、面白かった。」「一つだけ、これは私自身、若い日に恩師から教えられたことだが、資料や調査は百パーセントやり抜くこと、ただ、作品にとりかかる時はその八十パーセントは思いきりよく捨てる、それも自分の内部に完全に消化させて捨てるのが、作品を成功させる秘訣だという真実である。」
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田辺聖子
黒岩重吾
山口瞳
陳舜臣
渡辺淳一
井上ひさし
藤沢周平
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選考委員
井上ひさし男58歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
練達の作 総行数164 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
出久根達郎
男48歳
41 「文章にやや臭み(「いかにも玄人の、プロならではの」という言い方も出来るが)はあるものの、単に意味を伝達するだけではない徳、つまり作者の駆使する言葉そのものがおもしろさと美しさを備えており、かつ的確(とくに、主人公が彫物をする場面)でもある。」「読者はとても気分よく巻を閉じることができるわけで、すべてをひっくるめて作者はまことに練達である。」
内海隆一郎
男55歳
31 「正直のところ、この作品では一編一編が淡白に出来ていて、さらに淡い文章がその淡白さを割り薄めており、全編が結集したときの迫力(別にいえば、感動)に欠けるところがあったような気がする。ひと言で言えば欲のない作品である。」
東郷隆
男41歳
19 「博捜ぶり(別にいえば、作者の知ったかぶり)がいたるところで露骨に現れて、せっかくの物語世界に読者が没入するのを妨げる。いちいち邪魔なのだ。また、雄大な冒頭部に較べて結末が縮こまり過ぎてもいる。」
小嵐九八郎
男48歳
30 「たしかに言葉は一つ一つ吟味されていて、そのことに言葉を扱う者としての誠意は感じられ、そこに敬意を持つが、しかし、いじくりまわされた言葉の群れは、こんどは意味を、作者の思考をすっぽりと覆い隠してしまう。」「少年と愛馬清十郎との一年にわたる心の交流、この主題も後半になるにつれて薄められて行く。」
宮部みゆき
女32歳
47 「大いに感心し、選考という立場を忘れて夢中で読んだ(文章がいいから読者の邪魔をしない)。」「じつによく出来た風俗小説として読んだ。たとえばバルザックのようなという形容句を呈しても褒め過ぎにはならないだろう。持てる力と才能を振り絞って「現在そのもの」に挑戦し、立派に成功をおさめたその驚くべき力業に何度でも最敬礼する。」
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他の選考委員
田辺聖子
黒岩重吾
山口瞳
陳舜臣
渡辺淳一
平岩弓枝
藤沢周平
五木寛之
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選考委員
藤沢周平男65歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
見事な表現力 総行数131 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
出久根達郎
男48歳
55 「作品全体を読み終ってみると、二、三気持にひっかかるものが残る作品でもあった。」「しかし(引用者中略)第一章の最後にあらわれる文章、あるいは関東大震災当日の光景など、この作者が正面から取り組んだ文章には懐の深い、見事な表現力が示されていた。隅田川がブリキの切片を一面にまきちらしたようにさざなみ立ったなどという文章は容易に書けるものではない。」
内海隆一郎
男55歳
11 「一行を大事にする文章と、全体の連続性とはべつに、それぞれの一篇の主題の独立性がもとめられるところだが、二、三篇をのぞいてこの条件は満たされていない感じがある。ただしこの短篇集には人肌のあたたか味があって、読後に余韻が残った。」
東郷隆
男41歳
24 「骨格の正しい小説で、文章にも瑕瑾がなく、プロとして通用する完成度をそなえた作品だったが、小説の主題が歴史的な出来事としてあまりにもよく知られている事柄なので、感興がもうひとつ盛り上がらない憾みがある。」
小嵐九八郎
男48歳
16 「気合いの入った文章で平面的でない風景、人物を把え得た佳作だった。主人公の少年と馬の清十郎の交流といった細部が抜群によく、清十郎が鳴らす鼻声は時にそのまま詩と化す。」「ただ惜しむらくは主題が単純すぎることで、読み終ってこれだけの話だったのかと思わせるところがある。」
宮部みゆき
女32歳
25 「小さな疑問点が目につくものの、この作品には着想の非凡さとすぐれた推理小説だけが持つ、興味を先へ先へとつなぐ綿密な論理性がある。」「作品の最終場面には、表現をみがいて作品の質を高めようとする禁欲的な意志と、そのことに物を書く喜びを見ている作者の姿勢が出ている。それらを総合して「火車」も十分に受賞の水準に達していた。」
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他の選考委員
田辺聖子
黒岩重吾
山口瞳
陳舜臣
渡辺淳一
平岩弓枝
井上ひさし
五木寛之
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選考委員
五木寛之男60歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
余裕の受賞 総行数51 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
出久根達郎
男48歳
29 「余裕の受賞という感じで今回の選考会は終った。」「なによりも文章が練れているというか、こなれた筆である。」「この作品のなによりの成功は、物語りの舞台に佃島という場所を選んだことだ。(引用者中略)このあたりには、まだまだ沢山の物語りが埋まっていそうである。」
内海隆一郎
男55歳
0  
東郷隆
男41歳
12 「惹かれるものがあった。山田風太郎山脈、隆慶一郎連山の系譜につらなる作家として、期待できそうな気がする。」「いつ受賞してもおかしくない才能だと確信している。」
小嵐九八郎
男48歳
10 「いささか期待はずれだった。どこが悪いという作品ではないのだが、なぜか全体として魅力に欠けるのである。」
宮部みゆき
女32歳
0  
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田辺聖子
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山口瞳
陳舜臣
渡辺淳一
平岩弓枝
井上ひさし
藤沢周平
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受賞者・作品
出久根達郎男48歳×各選考委員 
『佃島ふたり書房』
長篇 555
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
田辺聖子
女64歳
75 「小説に翻弄されるという醍醐味を久しぶりに味わった。」「文章で昂奮させられる作品、というのは、うれしいものだ。」「過去と現在のもつれかたに、えもいえぬ詩情がたちのぼる。」「最後のページを閉じたとき、実にあとあじよく、感慨が心を濡らすのに気付く。」
黒岩重吾
男68歳
47 「私はこの作品一本に絞り選考会に出席した。」「某委員が指摘したように、ところどころに作者の作意を感じなくもないが、これだけの登場人物の一人一人に個性を持たせ、最後まで読者を飽かせない腕力は貴重といえよう。」「作者は小説の本質を?んだような気がする。」
山口瞳
男66歳
117 「一言一句が粒立っているとか、活字が立ち上ってくるとかいう言い方があるが、そういう文章に久し振りにお目にかかったような気がしている。」「第四章の「鬼火あやしき黒い大川」が傑出している。」「畜生! うめえなあと思い、私は何度も唸ったのである。」「これは瑕瑾の多い小説である。(引用者中略)出久根さんにはキリッとした中年男女の恋愛小説の短篇を書いてもらいたいと切に願っている。」
陳舜臣
男68歳
14 「きめのこまかい文章で、前半はみごとで、これはと思わせたが、幸徳秋水や管野スガといった実在の人物が出てくると、とみに厚みを失ったかんじがした。自分ひとりで面白がっていて、その面白さが読者に伝わってこないうらみがある。」
渡辺淳一
男59歳
21 「頭一つ抜けていた。なによりもこの作者の優れているところは、人間を見る目がたしかなことで、その目が老獪ともいえる文章できっかりと裏打ちされている。」「気になったのは、全体としてじじくさく華がないところだが、もしかするとこの作家は、表面じじくささを装いながら、意外に化ける余力を秘めているのではないか。そのあたりへの期待もこめて、授賞に賛成した。」
平岩弓枝
女60歳
34 「如何にも小説的小説というか、よくも悪くも技巧的という印象を受けた。」「主人公のパートナーの人のいい、気の弱い、しかも誠実な男というのも或るパターンではあった。一つ間違うと、えらく古くさい作品になるのを、そう仕上げなかったのは、作者の腕であり、キャリアであろう。」
井上ひさし
男58歳
41 「文章にやや臭み(「いかにも玄人の、プロならではの」という言い方も出来るが)はあるものの、単に意味を伝達するだけではない徳、つまり作者の駆使する言葉そのものがおもしろさと美しさを備えており、かつ的確(とくに、主人公が彫物をする場面)でもある。」「読者はとても気分よく巻を閉じることができるわけで、すべてをひっくるめて作者はまことに練達である。」
藤沢周平
男65歳
55 「作品全体を読み終ってみると、二、三気持にひっかかるものが残る作品でもあった。」「しかし(引用者中略)第一章の最後にあらわれる文章、あるいは関東大震災当日の光景など、この作者が正面から取り組んだ文章には懐の深い、見事な表現力が示されていた。隅田川がブリキの切片を一面にまきちらしたようにさざなみ立ったなどという文章は容易に書けるものではない。」
五木寛之
男60歳
29 「余裕の受賞という感じで今回の選考会は終った。」「なによりも文章が練れているというか、こなれた筆である。」「この作品のなによりの成功は、物語りの舞台に佃島という場所を選んだことだ。(引用者中略)このあたりには、まだまだ沢山の物語りが埋まっていそうである。」
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他の候補作
内海隆一郎
『風の渡る町』
東郷隆
『打てや叩けや』
小嵐九八郎
『清十郎』
宮部みゆき
『火車』
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候補者・作品
内海隆一郎男55歳×各選考委員 
『風の渡る町』
連作長篇 479
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
田辺聖子
女64歳
0  
黒岩重吾
男68歳
11 「殆どは、エッセーかコントに味つけしたような読物で終っている。人間や風土に対する作者の暖かい気持は分るが、読者の胸を叩くためには、小説としての切れ味がなければならない。その中で佳作と感じたのは、「教え子たち」であった。」
山口瞳
男66歳
0  
陳舜臣
男68歳
11 「前回の同氏の候補作とおなじ不満をもった。一つ一つの作品が短かすぎて、なかにはぴったりときまったのもあれば、密度の薄いまま終わったのもある。この作家には、短篇の集合体ではなく、構成力を試される長篇に挑戦してほしいとおもう。」
渡辺淳一
男59歳
12 「その意企はわかるが、あまりに淡彩画風で迫力に欠けていた。このような手法は洒落てはいるが、余程の技巧派か老成した作家がやるべきことで、直木賞を狙うにはいささか小手先の仕事にすぎるようである。」
平岩弓枝
女60歳
15 「私の心に最後まで残った」「文章が簡潔で描写が行き届いている。登場人物の一人一人に身近かなものを感じたし、そういう意味ではこの風の渡る町は、私自身、長年住んでいる町にも似ているような気がした。」
井上ひさし
男58歳
31 「正直のところ、この作品では一編一編が淡白に出来ていて、さらに淡い文章がその淡白さを割り薄めており、全編が結集したときの迫力(別にいえば、感動)に欠けるところがあったような気がする。ひと言で言えば欲のない作品である。」
藤沢周平
男65歳
11 「一行を大事にする文章と、全体の連続性とはべつに、それぞれの一篇の主題の独立性がもとめられるところだが、二、三篇をのぞいてこの条件は満たされていない感じがある。ただしこの短篇集には人肌のあたたか味があって、読後に余韻が残った。」
五木寛之
男60歳
0  
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他の候補作
出久根達郎
『佃島ふたり書房』
東郷隆
『打てや叩けや』
小嵐九八郎
『清十郎』
宮部みゆき
『火車』
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候補者・作品
東郷隆男41歳×各選考委員 
『打てや叩けや』
長篇 735
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
田辺聖子
女64歳
0  
黒岩重吾
男68歳
10 「本人が面白がっている割には読者は面白くない。」「登場人物が多過ぎるために、大事な人物像が曖昧なままで終っている。このような書き方なら前半の阿古丸、湛海、百合根などにもっと焦点を当て、余り幻術に溺れず、描き切るべきであった。」
山口瞳
男66歳
0  
陳舜臣
男68歳
15 「中世の雰囲気がよく出ていた。妖術や幻術のたぐいは、中世をいろどるおもなトーンといってよい。小説に登場させるのはかなり危険だが、東郷氏は大手を振ってそれをやってのけた。その度胸のよさを買いたい。構成にもさしたる破綻はなく、良質のエンターテインメントになっている。」
渡辺淳一
男59歳
15 「困ったことに、小説は知識が豊かなら書けるというものでなく、むしろありすぎて失敗する場合もある。今回はまさしくその例で、あるかぎりの知識を詰めこみすぎて、ごった煮のような騒然さだけで終ってしまった。」
平岩弓枝
女60歳
6 「惜しいと思ったのは主人公のキャラクターの設定が少々、不安定で、人間がふくらまなかったことである。」
井上ひさし
男58歳
19 「博捜ぶり(別にいえば、作者の知ったかぶり)がいたるところで露骨に現れて、せっかくの物語世界に読者が没入するのを妨げる。いちいち邪魔なのだ。また、雄大な冒頭部に較べて結末が縮こまり過ぎてもいる。」
藤沢周平
男65歳
24 「骨格の正しい小説で、文章にも瑕瑾がなく、プロとして通用する完成度をそなえた作品だったが、小説の主題が歴史的な出来事としてあまりにもよく知られている事柄なので、感興がもうひとつ盛り上がらない憾みがある。」
五木寛之
男60歳
12 「惹かれるものがあった。山田風太郎山脈、隆慶一郎連山の系譜につらなる作家として、期待できそうな気がする。」「いつ受賞してもおかしくない才能だと確信している。」
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他の候補作
出久根達郎
『佃島ふたり書房』
内海隆一郎
『風の渡る町』
小嵐九八郎
『清十郎』
宮部みゆき
『火車』
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候補者・作品
小嵐九八郎男48歳×各選考委員 
『清十郎』
長篇 507
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
田辺聖子
女64歳
0  
黒岩重吾
男68歳
13 「読み辛いが読み終った後で詩情を感じる。これだけの方言を並べ、何度も文章を読み返さざるを得ない小説なのに詩情が漂っているのは作者の筆力のせいである。ただ題が清十郎という馬である以上、馬と主人公の少年との関係をもっと濃密に書き込むべきであろう。」
山口瞳
男66歳
0  
陳舜臣
男68歳
11 「馬と少年との交歓を書こうとしたのであろうが、残念ながら描き切れていなかった。意識しすぎたのかもしれないが、読者のほうが息切れしそうである。方言も読みづらく、作者もそれを承知で、散文詩ふうに仕立てようとしたのであろう。かならずしも成功したとは言いがたい。」
渡辺淳一
男59歳
7 「大胆に方言をとり入れているが、これほど多用してはさすがに読みにくい。しかし小説の出し入れは巧みでそれなりにでき上っているが、いささか俗で古めかしい。」
平岩弓枝
女60歳
12 「方言を使うことに反対ではないし、方言を軽んずる気持は毛頭ないけれども、小説ではもっとうまく、読者に理解出来るような書き方があるので、そうしないと作者の書きたかったことが、読者に伝わらない。」
井上ひさし
男58歳
30 「たしかに言葉は一つ一つ吟味されていて、そのことに言葉を扱う者としての誠意は感じられ、そこに敬意を持つが、しかし、いじくりまわされた言葉の群れは、こんどは意味を、作者の思考をすっぽりと覆い隠してしまう。」「少年と愛馬清十郎との一年にわたる心の交流、この主題も後半になるにつれて薄められて行く。」
藤沢周平
男65歳
16 「気合いの入った文章で平面的でない風景、人物を把え得た佳作だった。主人公の少年と馬の清十郎の交流といった細部が抜群によく、清十郎が鳴らす鼻声は時にそのまま詩と化す。」「ただ惜しむらくは主題が単純すぎることで、読み終ってこれだけの話だったのかと思わせるところがある。」
五木寛之
男60歳
10 「いささか期待はずれだった。どこが悪いという作品ではないのだが、なぜか全体として魅力に欠けるのである。」
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他の候補作
出久根達郎
『佃島ふたり書房』
内海隆一郎
『風の渡る町』
東郷隆
『打てや叩けや』
宮部みゆき
『火車』
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候補者・作品
宮部みゆき女32歳×各選考委員 
『火車』
長篇 932
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
田辺聖子
女64歳
34 「息もつがせずという感じで読まされた。」「出色のミステリーであろう。謎ときの面白さは抜群。ただ読み終ってみると、設定の不自然さが気になった。(引用者中略)たぶんそういうことは、作品中にそれを圧倒してしまう魅力があれば消滅してしまう欠点であろう。」「私は本間刑事の環境がもっと面白ければ、という、ないものねだりをせずにいられなかった。」
黒岩重吾
男68歳
35 「これまでの氏の作品の中では力作といえよう。」「ただ作者が力を込めている割合には小説としての印象が薄い。」「私が納得出来なかったのは、新城喬子が説明でしか書かれていないことだった。大事な人物なのに人物像が不明確である。」
山口瞳
男66歳
0  
陳舜臣
男68歳
14 「今日的なテーマを、掘り下げて描いた秀作だが、すこし肥満気味である。会話などにやや冗長な部分があり、それを苅りこんで、もっとスリムにできたのではないか。いずれにしても、宮部氏の力量が安定感を増したことを証明する作品といえるだろう。」
渡辺淳一
男59歳
37 「導入部が巧みで、かなりの長篇を最後まで飽きもせず読み通せたが、ラストを読み切った途端、肩すかしをくらったような失望を覚えた。その最大の理由は、いったいこの作者はなにを書きたかったのか、そこがわからず、ただ筆を流しているとしか思えなかったことである。」「むろんこのようなお遊びの小説があっても一向にかまわないが、思いつきだけで書くかぎり、所詮、心を打つものとはなりえない。」
平岩弓枝
女60歳
21 「大変、面白かった。」「一つだけ、これは私自身、若い日に恩師から教えられたことだが、資料や調査は百パーセントやり抜くこと、ただ、作品にとりかかる時はその八十パーセントは思いきりよく捨てる、それも自分の内部に完全に消化させて捨てるのが、作品を成功させる秘訣だという真実である。」
井上ひさし
男58歳
47 「大いに感心し、選考という立場を忘れて夢中で読んだ(文章がいいから読者の邪魔をしない)。」「じつによく出来た風俗小説として読んだ。たとえばバルザックのようなという形容句を呈しても褒め過ぎにはならないだろう。持てる力と才能を振り絞って「現在そのもの」に挑戦し、立派に成功をおさめたその驚くべき力業に何度でも最敬礼する。」
藤沢周平
男65歳
25 「小さな疑問点が目につくものの、この作品には着想の非凡さとすぐれた推理小説だけが持つ、興味を先へ先へとつなぐ綿密な論理性がある。」「作品の最終場面には、表現をみがいて作品の質を高めようとする禁欲的な意志と、そのことに物を書く喜びを見ている作者の姿勢が出ている。それらを総合して「火車」も十分に受賞の水準に達していた。」
五木寛之
男60歳
0  
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他の候補作
出久根達郎
『佃島ふたり書房』
内海隆一郎
『風の渡る町』
東郷隆
『打てや叩けや』
小嵐九八郎
『清十郎』
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