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第119回
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平成10年/1998年上半期
(平成10年/1998年7月16日決定発表/『オール讀物』平成10年/1998年9月号選評掲載)
選考委員  田辺聖子
女70歳
阿刀田高
男63歳
黒岩重吾
男74歳
津本陽
男69歳
平岩弓枝
女66歳
渡辺淳一
男64歳
五木寛之
男65歳
井上ひさし
男63歳
選評総行数  101 123 115 87 105 89 83 153
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
車谷長吉 『赤目四十八瀧心中未遂』
415
男53歳
28 20 40 19 18 23 24 33
重松清 『定年ゴジラ』
593
男35歳
8 15 0 7 20 8 16 28
なかにし礼 『兄弟』
669
男59歳
19 27 22 13 10 16 16 27
東郷隆 『洛中の露』
558
男46歳
12 16 6 12 16 8 0 19
梁石日 『血と骨』
1337
男61歳
19 20 30 17 8 15 21 20
宇江佐真理 「桜花を見た」
89
女48歳
7 11 0 8 14 6 9 11
乙川優三郎 『喜知次』
658
男45歳
8 13 13 10 19 9 0 18
               
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』平成10年/1998年9月号
1行当たりの文字数:13字


選考委員
田辺聖子女70歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
白熱の選考 総行数101 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
車谷長吉
男53歳
28 「導入部とラストが精緻にととのい、構成をゆるぎないものにしている。」「小説を読む楽しさを満喫させてくれる佳作である。」「暗いようでいて、仄明るく、読後、さわやかな余韻を与えられ、生への活力を感じとれる。文章に気骨と品位があった。」
重松清
男35歳
8 「文章は甚だよみやすく、テーマも面白いが、実際の定年人種たちはもっとどろどろしているだろう。淡々としすぎる気がする。」
なかにし礼
男59歳
19 「作詞家・詩人であられるなかにし礼氏が、小説の骨法を会得していられるのに一驚した。」「これはたしかに、手記ではなく、小説になっていると思った。しかし小説として読むとまた、鬆が入っている気がする。(主人公と女性の関係など)」
東郷隆
男46歳
12 「私は氏のお作品に親昵する者の一人だが、この本はすこし難解だった。」「入念で凝ったつくり、しかし作者が気を入れているわりに読者は楽しめないのではなかろうか。」「私は「弥助」が好もしかった。この一篇を推したい。」
梁石日
男61歳
19 「はじめは金俊平という主人公に共感をおぼえさせられるが、次第に、獰猛な野獣の如き、人間ばなれした彼に、読者は心がはなれてゆく。しかしその無法ぶりもまた、小説的興味ではある。」「ワンパターンの最近の小説群の中ではひときわ異色の、不逞な面構えの小説である。」「男の子(原文傍点)の読む小説だなあ、と思いながら、しかし読後感は〈憎めない〉というもの。」
宇江佐真理
女48歳
7 「ちょっと期待はずれ。時代ものは制約が多いので苦労されるだろうが、初心のころのキラキラの輝きを忘れずに。」
乙川優三郎
男45歳
8 「ヒロインの女の子をもっと活躍させてほしかった。ここでもっと色気が出るか出るかと(小説的色気)読みすすめていったが、〈キザにきめる〉というところがなくて肩すかし。」
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他の選考委員
阿刀田高
黒岩重吾
津本陽
平岩弓枝
渡辺淳一
五木寛之
井上ひさし
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選考委員
阿刀田高男63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
大人のおもしろさ 総行数123 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
車谷長吉
男53歳
20 「特別にドラマチックな出来事があるわけではないのだが、――これが小説を読む楽しさだ――と、こころよく脳味噌を預けて最後まで読み進むことができた。私にはとてもおもしろい小説であった。」「純文学とかエンターテインメントとかいう区分は、多くの場合、それほどの意味を持たない。直木賞は大人の鑑賞にたえるおもしろさをしっかりと見据えていけばよいのだ、と思う。」
重松清
男35歳
15 「巧みな作家である。ユーモアもあるし、うまい表現も多い。泣かせる場面も心得ている。が、傍観者の印象が拭いきれない。」「作りものの弱点が見え隠れし、――六十代、七十代の男は、こうじゃないなあ――と、もの足りなさを感じてしまった。」
なかにし礼
男59歳
27 「鰊の押し寄せる海など、心に残る筆さばきが随所にあった。すさまじい性格の兄を描いて、これはまちがいなく小説にふさわしい人物だと思ったが、弟のほうがよくわからない。」「結局のところ、――この小説のリアリティは、なかにし礼さんという著名な作詞家の存在によりかかっている――と判ずるよりほかになかった。」
東郷隆
男46歳
16 「知識の深さに真実舌を巻く。」「だが、残念ながら作者の意図したモチーフがよく見えて来ない。」「この作家にはいつも、――すばらしい筆力なのに――と、もどかしさを感じてしまうのだ。学識を抜きにして単純明快なお話を聞かせていただけないものだろうか。」
梁石日
男61歳
20 「技法的には弱点もあり、相当にあらっぽい作品である。ただ、途方もない主人公をあますところなく描いて、読む者をぐんぐん引き込んでいく。その迫力、そのすさまじさ。」「力作ではあったが、すでに他の賞を受けているという事情もあって、受賞作に一歩譲ることとなった。」
宇江佐真理
女48歳
11 「おもしろい読み物になっているけれど、これ一篇で評価するのはむつかしい。」「他の委員から時代考証の弱点を指摘され、更にマイナス点を考慮せねばならなかった。」
乙川優三郎
男45歳
13 「ひとかどの時代小説だと思った。前半の運びは少しゆるいが、後半は充分に楽しめる。」「だが、結末の二重のどんでん返しには釈然としないものが残る。作品を支える大切な柱だけに、この疵は大きい。」
  「質の高い選考会であった。」
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他の選考委員
田辺聖子
黒岩重吾
津本陽
平岩弓枝
渡辺淳一
五木寛之
井上ひさし
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選考委員
黒岩重吾男74歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
不思議な透明感 総行数115 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
車谷長吉
男53歳
40 「「赤目四十八瀧心中未遂」一作を推した。」「どういう世界にあっても人間が生きねばならない物悲しい呟きに似た呻吟が、行間から低音の旋律となって私に纏いつき、狂おしいほど私を昂揚させまた痛めつけた。」「彫眉の女であったアヤ子が主人公に惚れ、心中未遂現場まで連れて行った気持も納得させられる。」
重松清
男35歳
0  
なかにし礼
男59歳
22 「終戦後に、特攻隊の生き残りと称して復員した兄の破滅的な生活に或る種の衝撃を受けた。」「この作品も受賞圏内だったが、最終決で推しかねたのは、兄に対する主人公の愛憎が少し不鮮明だったからである。もっと裸になって欲しかった。」
東郷隆
男46歳
6 「文献に頼り過ぎ、登場人物が多く、想像力が活かされていないので読み難い。かつての「人造記」のような面白味を復活させて貰いたい。」
梁石日
男61歳
30 「日本人によって差別された人達の憤りと苦しみ、悲しみは読者の胸を衝く。」「私は、金俊平の暴力が余りにも凄まじ過ぎるが故に、作者はその人物像をやや把握しかねているようにも思えた。」「成漢の父に対する憎悪には息を呑む。」「ただ、すでに山本周五郎賞を受賞している上での直木賞ということになると、受賞圏内ではあるが、やや平面的な仕上がりが気になった。」
宇江佐真理
女48歳
0  
乙川優三郎
男45歳
13 「優等生らしい作品だが、読んでいて面白くなかった。」「台助の仇討ちに仲間の全員が登場するのも奇妙だが、最後になって、小太郎と花哉の間に血の繋がりがなかったとするのは安易過ぎる。」
  「受賞に価する作品が三作もあったのは嬉しい驚きだった。」
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他の選考委員
田辺聖子
阿刀田高
津本陽
平岩弓枝
渡辺淳一
五木寛之
井上ひさし
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選考委員
津本陽男69歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
小説の醍醐味 総行数87 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
車谷長吉
男53歳
19 「振幅のすくない作品で、雑誌で読んだとき、いくらかくりかえしが目につくようにも思ったが、一冊を読み通すと納得した。」「尼の出屋敷あたりにいる、くすぼりの男女の暗澹としたいろどりのなかに、稲妻のようにひらめく性のいとなみは、夢幻のような残像を残す。小説の醍醐味を覚えた一篇である。」
重松清
男35歳
7 「進めかたがうまいので、読まされるが、さほど盛りあがることもなく、特に感じるところもすくなかった。」
なかにし礼
男59歳
13 「これだけの表現力は、非常な才筆というべきだろう。ニシン漁の場面には、おどろかされた。」「力量は充分である。物足りなかったのは、弟の動きがいくらか稀薄な感じがした点である。」
東郷隆
男46歳
12 「綿密な考証に全篇が覆われているので、読み進むのがきわめて繁雑で、小説を楽しむ余裕がない。」「充分に力量のある作家であるが、作風に迷いが出てきたのではないかと、気がかりである。」
梁石日
男61歳
17 「怒濤のとどろきのような、有無をいわせないで押し寄せてくる筆力には、感心する。」「凶暴で魅力ある男の典型をえがきだした筆者が、多くの読者に迎えられる理由は、この作品を読めば分る。」「父を憎みつつ、わが原型をそこに見る息子の、ほとばしる愛情がなお書きこまれておれば、一段の説得力を増したのではないか。」
宇江佐真理
女48歳
8 「前作のような独得の情緒がうすらいだようである。時代小説の考証をこころがけ、ていねいに書きこむことに努力すべきだろう。遠山金四郎を材料にするのは、得るところがすくないのではないか。」
乙川優三郎
男45歳
10 「「霧の橋」で登場以来、短時日のうちにこまかい技巧を身につけた。」「ただ、話の運びにとまどうような、ためらい淀む部分がある。もう一段の、たたみこむようないきおいがつけば、いうことがない。」
  「今度の候補作は、それぞれ水準が高かった。」
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他の選考委員
田辺聖子
阿刀田高
黒岩重吾
平岩弓枝
渡辺淳一
五木寛之
井上ひさし
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選考委員
平岩弓枝女66歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
好きだった「定年ゴジラ」 総行数105 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
車谷長吉
男53歳
18 「私小説として読むべきかどうかに問題があるように思った。」「秀れた筆力に違いない。凄いと感じたのは、これだけ底面の社会を書きながら、作品がなんとも品がよいことで、これは作者の人生観と抑制のきいた表現力のたまものだろうか。」
重松清
男35歳
20 「もっとも楽しく読めて、読後感がさわやかだった」「殊に作者の、父親ほどの年代の男達への優しい視線がこの作品を上質のユーモア小説に仕上げていると思う。推察するに、六十以上の男性読者にはそのあたりが不快だったのかも知れない。なんにせよ、私はこの作品を高く評価している。」
なかにし礼
男59歳
10 「兄が加害者、弟は被害者ときめてかかった点が作品を浅くしてしまった。」「弟の知らなかった兄の別な顔をもっと書き出すことで、作品の奥行きを出してもらいたかった。」
東郷隆
男46歳
16 「最初の「弥助」がよかった。」「あとへ行くほど衒学趣味が濃くなって、書かれねばならない人間像が薄くなってしまったのは残念である。エピソードをばらばらに積み重ねるのではなく、金森宗和の多面性にしぼり込んで、その人間性を浮び上らせるためにエピソードを活用出来たらと思う。」
梁石日
男61歳
8 「文章、構成ともに荒い。荒々しさは、時にエネルギーと解釈されるが、適度に抑制のきいた文章、しっかりした土台をふまえた構成力は、小説の必須条件で、力にまかせて長々と書けばよいというものではない。」
宇江佐真理
女48歳
14 「この作者は今、こうした作品を書いている場合ではないと、忠告したい。」「一応、時代考証を下敷にして作品を創り上げようとしているこの小説の書き方からすると、間違いが多く指摘されるし、安易にすぎる。」
乙川優三郎
男45歳
19 「この作者は数年の中に随分、力をつけて来たようで、それがまず嬉しかった。この作品の難は構成力で、少年時代からのびのびと書いて来たものが、最後の五分の一くらいで、突然、なにもかも説明で片付けようとして、こじつけが目立ったことだろう。」
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他の選考委員
田辺聖子
阿刀田高
黒岩重吾
津本陽
渡辺淳一
五木寛之
井上ひさし
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選考委員
渡辺淳一男64歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
感想さまざま 総行数89 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
車谷長吉
男53歳
23 「なによりもまず文章が力強く、人物の出し入れも奇智に富んで、ときに凄味さえ覚える。」「しかし一篇の小説として読むとそれなりに不満がないわけではなく、(引用者中略)主人公の「世を避けて……」という生きざまがいささか甘く、いわゆる私小説としての切実感は薄い。」「ラストの心中行が大袈裟なわりに通俗で、いささか拍子抜けの感がある。」
重松清
男35歳
8 「爽やかなタッチだが、それだけ印象は薄く、とくに老年の人物像にリアリティがない。自分が体験したことのない年代を書くことは、余程のことがないかぎり、危険である。」
なかにし礼
男59歳
16 「なかなかに読みごたえがあった。この作品の魅力はまず文章のセンスがいいことで、会話の巧さとともに、車谷氏とは別の意味で、文章力ある作家である。」「部分的には、兄弟という関係に頼りすぎ、自らを凝視する部分が弱いが、そのあたりは、いい意味での開き直りができれば、かなり解決できる問題かもしれない。」
東郷隆
男46歳
8 「この著者が大変な博識であることはわかるが、いうまでもなく、小説は知識を書くことではない。」「知に溺れて小説的妙味を失っているのは、いかにも残念である。」
梁石日
男61歳
15 「大変な力わざではあるが、全面、厚塗りの油絵を見るようで、読むうちにむしろ平板化し、退屈してくる。なによりも不満なのは、金俊平が老いて弱っていく部分があっさりしすぎていることで、死にいたるまで刻明に描くべきではなかったか。」
宇江佐真理
女48歳
6 「前回、彗星のような登場に目を奪われたが、今回はそれに比べて数段落ちる。」
乙川優三郎
男45歳
9 「久しぶりに情感のある時代小説作家の登場で、好意をもって読んだ。」「花哉はいささかつくりすぎで、「喜知次」と題名にまでするには、弱すぎるようである。」
  「今回は、推理仕立ての小説が減って、それだけ普通の小説を読む楽しさを味わった。」
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他の選考委員
田辺聖子
阿刀田高
黒岩重吾
津本陽
平岩弓枝
五木寛之
井上ひさし
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選考委員
五木寛之男65歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
梁、車谷の両氏を推す 総行数83 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
車谷長吉
男53歳
24 「私は梁、車谷、両氏の二作受賞を提案した」「文句なしの受賞だった。」「一気に読み終えたあと、奇妙な満足感をおぼえた。ふと椎名麟三のことを思い出した、という友人がいたが、私も同じ印象を受けた。」
重松清
男35歳
16 「この二作(引用者注:「血と骨」「赤目四十八瀧心中未遂」)についで感心した」「人間の存在があらためていとおしくなってくるような作品だった。前作の「ナイフ」のほうがヒリヒリと強く心に刺さってくる感じはあるが、「定年ゴジラ」もまたこの作家の独特の世界であることはまちがない。いずれ必ず受賞して一家をなす才能だと信じている。」
なかにし礼
男59歳
16 「惜しくも受賞を逸しはしたが、選考の席上、活気のある話題を呼んだ」「読みだしたら最後までぐいぐい読者を引っぱってゆく巧みな構成に感心させられた。ただ、一生に一度、と思われる貴重な題材だけに、読物としての結構を突き抜けた取り組みかたもあったのではないか。他者と同時に自己を凝視する辛さがもう少し出ていたら、と残念な気もした。」
東郷隆
男46歳
0  
梁石日
男61歳
21 「私は梁、車谷、両氏の二作受賞を提案した」「荒けずりな文章がむしろ効果的といっていいような骨太の物語である。」「この作家の会心の力作と言っていいだろう。いかに才能ある書き手にしても、そうちょくちょく書ける作品ではあるまいと思われるだけに、今回の受賞を逸したことは惜しまれる。」
宇江佐真理
女48歳
9 「私の期待の星と言っていい書き手なのだが、(引用者中略)いささか肩すかしをくらった感があった。」「単行本で出ている「銀の雨」のほうがはるかにいい。」
乙川優三郎
男45歳
0  
  「今回の候補作品は、いずれもくっきりした個性を帯びたものが多く、読んでいて非常に興味をそそられるところがあった。」
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他の選考委員
田辺聖子
阿刀田高
黒岩重吾
津本陽
平岩弓枝
渡辺淳一
井上ひさし
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選考委員
井上ひさし男63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
秀作を得てよろこぶ 総行数153 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
車谷長吉
男53歳
33 「(引用者注:「血と骨」を)凌駕する秀作」「小説は、ことばで人間を、そしてその人間と他の人間との関係を映し出す仕事だが、その完璧な見本がここにある。」「心中未遂は、いったん「死」を通って「生」へ再生する儀式である。その儀式を終えたアヤちゃんが、「たとえそこが地獄でも生きねばならぬ」と思い定める結末に、人間という存在に寄せる作者の深い愛を読んで、思わず涙がこぼれた。」
重松清
男35歳
28 「文章も小説技術もうまい。」「だが、全体に信用できないところがあって、一例をあげれば、六十代の人間のセクシュアリテ(性、性現象、性生活、性的欲求など)を、いったいどうお考えなのだろうか。(引用者中略)ここに登場するのは、セクシュアリテと縁を切った人たちばかりで、あまりにもきれいごとにすぎる。」
なかにし礼
男59歳
27 「いたるところに聞かせどころや読ませどころがちりばめられていて、ここまでは申し分のない上々吉の出来栄えである。ただし、作者は、自分の分身である弟(同時に語り手)にずいぶん甘い。そこで「こういう兄がおりました」という〈ものがたり〉の域から離陸することができなかった。いや、離陸はしたけれど、空の高みを自在に飛ぶまでには至らなかった。」
東郷隆
男46歳
19 「知識の幅と深さには毎度、驚嘆させられる。しかし、その分だけ、想像の翼が小さくなり、困った揚句、妖怪変化の棲む世界へ逃げ込むいつもの型に、今回もまたはまってしまった気味がある。勉強の成果がうまく生かされていないのが残念だ。」
梁石日
男61歳
20 「リチャード三世とリア王を合わせたような神話的人物を創造し得た傑作である。」「瑕は多いのだが、それでもとにかく、金俊平という途方もない巨人をみごとに出現させ、十二分に生きさせ、そして完膚なきまでに老いぼれさせたところは、一つの文学的偉業であった」
宇江佐真理
女48歳
11 「江戸の時空間の把握に疑問がある。」「話のつくりもずいぶん安直だし、なによりも、このあいだまでたしかにあったはずの、素直で清潔な持ち味が、なぜかすっかり汚れてしまっている。」
乙川優三郎
男45歳
18 「筋立てに無理がある。」「(引用者注:兄妹が実は血がつながっていないことを、親たちが二人に告げない)そのせいで悲しいことがおこるのだが、これにはほとんど呆然となった。こんなに無責任で、ひとでなしの親は、これまで見たことがない。」
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他の選考委員
田辺聖子
阿刀田高
黒岩重吾
津本陽
平岩弓枝
渡辺淳一
五木寛之
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受賞者・作品
車谷長吉男53歳×各選考委員 
『赤目四十八瀧心中未遂』
長篇 415
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
田辺聖子
女70歳
28 「導入部とラストが精緻にととのい、構成をゆるぎないものにしている。」「小説を読む楽しさを満喫させてくれる佳作である。」「暗いようでいて、仄明るく、読後、さわやかな余韻を与えられ、生への活力を感じとれる。文章に気骨と品位があった。」
阿刀田高
男63歳
20 「特別にドラマチックな出来事があるわけではないのだが、――これが小説を読む楽しさだ――と、こころよく脳味噌を預けて最後まで読み進むことができた。私にはとてもおもしろい小説であった。」「純文学とかエンターテインメントとかいう区分は、多くの場合、それほどの意味を持たない。直木賞は大人の鑑賞にたえるおもしろさをしっかりと見据えていけばよいのだ、と思う。」
黒岩重吾
男74歳
40 「「赤目四十八瀧心中未遂」一作を推した。」「どういう世界にあっても人間が生きねばならない物悲しい呟きに似た呻吟が、行間から低音の旋律となって私に纏いつき、狂おしいほど私を昂揚させまた痛めつけた。」「彫眉の女であったアヤ子が主人公に惚れ、心中未遂現場まで連れて行った気持も納得させられる。」
津本陽
男69歳
19 「振幅のすくない作品で、雑誌で読んだとき、いくらかくりかえしが目につくようにも思ったが、一冊を読み通すと納得した。」「尼の出屋敷あたりにいる、くすぼりの男女の暗澹としたいろどりのなかに、稲妻のようにひらめく性のいとなみは、夢幻のような残像を残す。小説の醍醐味を覚えた一篇である。」
平岩弓枝
女66歳
18 「私小説として読むべきかどうかに問題があるように思った。」「秀れた筆力に違いない。凄いと感じたのは、これだけ底面の社会を書きながら、作品がなんとも品がよいことで、これは作者の人生観と抑制のきいた表現力のたまものだろうか。」
渡辺淳一
男64歳
23 「なによりもまず文章が力強く、人物の出し入れも奇智に富んで、ときに凄味さえ覚える。」「しかし一篇の小説として読むとそれなりに不満がないわけではなく、(引用者中略)主人公の「世を避けて……」という生きざまがいささか甘く、いわゆる私小説としての切実感は薄い。」「ラストの心中行が大袈裟なわりに通俗で、いささか拍子抜けの感がある。」
五木寛之
男65歳
24 「私は梁、車谷、両氏の二作受賞を提案した」「文句なしの受賞だった。」「一気に読み終えたあと、奇妙な満足感をおぼえた。ふと椎名麟三のことを思い出した、という友人がいたが、私も同じ印象を受けた。」
井上ひさし
男63歳
33 「(引用者注:「血と骨」を)凌駕する秀作」「小説は、ことばで人間を、そしてその人間と他の人間との関係を映し出す仕事だが、その完璧な見本がここにある。」「心中未遂は、いったん「死」を通って「生」へ再生する儀式である。その儀式を終えたアヤちゃんが、「たとえそこが地獄でも生きねばならぬ」と思い定める結末に、人間という存在に寄せる作者の深い愛を読んで、思わず涙がこぼれた。」
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他の候補作
重松清
『定年ゴジラ』
なかにし礼
『兄弟』
東郷隆
『洛中の露』
梁石日
『血と骨』
宇江佐真理
「桜花を見た」
乙川優三郎
『喜知次』
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候補者・作品
重松清男35歳×各選考委員 
『定年ゴジラ』
連作長篇 593
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
田辺聖子
女70歳
8 「文章は甚だよみやすく、テーマも面白いが、実際の定年人種たちはもっとどろどろしているだろう。淡々としすぎる気がする。」
阿刀田高
男63歳
15 「巧みな作家である。ユーモアもあるし、うまい表現も多い。泣かせる場面も心得ている。が、傍観者の印象が拭いきれない。」「作りものの弱点が見え隠れし、――六十代、七十代の男は、こうじゃないなあ――と、もの足りなさを感じてしまった。」
黒岩重吾
男74歳
0  
津本陽
男69歳
7 「進めかたがうまいので、読まされるが、さほど盛りあがることもなく、特に感じるところもすくなかった。」
平岩弓枝
女66歳
20 「もっとも楽しく読めて、読後感がさわやかだった」「殊に作者の、父親ほどの年代の男達への優しい視線がこの作品を上質のユーモア小説に仕上げていると思う。推察するに、六十以上の男性読者にはそのあたりが不快だったのかも知れない。なんにせよ、私はこの作品を高く評価している。」
渡辺淳一
男64歳
8 「爽やかなタッチだが、それだけ印象は薄く、とくに老年の人物像にリアリティがない。自分が体験したことのない年代を書くことは、余程のことがないかぎり、危険である。」
五木寛之
男65歳
16 「この二作(引用者注:「血と骨」「赤目四十八瀧心中未遂」)についで感心した」「人間の存在があらためていとおしくなってくるような作品だった。前作の「ナイフ」のほうがヒリヒリと強く心に刺さってくる感じはあるが、「定年ゴジラ」もまたこの作家の独特の世界であることはまちがない。いずれ必ず受賞して一家をなす才能だと信じている。」
井上ひさし
男63歳
28 「文章も小説技術もうまい。」「だが、全体に信用できないところがあって、一例をあげれば、六十代の人間のセクシュアリテ(性、性現象、性生活、性的欲求など)を、いったいどうお考えなのだろうか。(引用者中略)ここに登場するのは、セクシュアリテと縁を切った人たちばかりで、あまりにもきれいごとにすぎる。」
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他の候補作
車谷長吉
『赤目四十八瀧心中未遂』
なかにし礼
『兄弟』
東郷隆
『洛中の露』
梁石日
『血と骨』
宇江佐真理
「桜花を見た」
乙川優三郎
『喜知次』
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候補者・作品
なかにし礼男59歳×各選考委員 
『兄弟』
長篇 669
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
田辺聖子
女70歳
19 「作詞家・詩人であられるなかにし礼氏が、小説の骨法を会得していられるのに一驚した。」「これはたしかに、手記ではなく、小説になっていると思った。しかし小説として読むとまた、鬆が入っている気がする。(主人公と女性の関係など)」
阿刀田高
男63歳
27 「鰊の押し寄せる海など、心に残る筆さばきが随所にあった。すさまじい性格の兄を描いて、これはまちがいなく小説にふさわしい人物だと思ったが、弟のほうがよくわからない。」「結局のところ、――この小説のリアリティは、なかにし礼さんという著名な作詞家の存在によりかかっている――と判ずるよりほかになかった。」
黒岩重吾
男74歳
22 「終戦後に、特攻隊の生き残りと称して復員した兄の破滅的な生活に或る種の衝撃を受けた。」「この作品も受賞圏内だったが、最終決で推しかねたのは、兄に対する主人公の愛憎が少し不鮮明だったからである。もっと裸になって欲しかった。」
津本陽
男69歳
13 「これだけの表現力は、非常な才筆というべきだろう。ニシン漁の場面には、おどろかされた。」「力量は充分である。物足りなかったのは、弟の動きがいくらか稀薄な感じがした点である。」
平岩弓枝
女66歳
10 「兄が加害者、弟は被害者ときめてかかった点が作品を浅くしてしまった。」「弟の知らなかった兄の別な顔をもっと書き出すことで、作品の奥行きを出してもらいたかった。」
渡辺淳一
男64歳
16 「なかなかに読みごたえがあった。この作品の魅力はまず文章のセンスがいいことで、会話の巧さとともに、車谷氏とは別の意味で、文章力ある作家である。」「部分的には、兄弟という関係に頼りすぎ、自らを凝視する部分が弱いが、そのあたりは、いい意味での開き直りができれば、かなり解決できる問題かもしれない。」
五木寛之
男65歳
16 「惜しくも受賞を逸しはしたが、選考の席上、活気のある話題を呼んだ」「読みだしたら最後までぐいぐい読者を引っぱってゆく巧みな構成に感心させられた。ただ、一生に一度、と思われる貴重な題材だけに、読物としての結構を突き抜けた取り組みかたもあったのではないか。他者と同時に自己を凝視する辛さがもう少し出ていたら、と残念な気もした。」
井上ひさし
男63歳
27 「いたるところに聞かせどころや読ませどころがちりばめられていて、ここまでは申し分のない上々吉の出来栄えである。ただし、作者は、自分の分身である弟(同時に語り手)にずいぶん甘い。そこで「こういう兄がおりました」という〈ものがたり〉の域から離陸することができなかった。いや、離陸はしたけれど、空の高みを自在に飛ぶまでには至らなかった。」
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他の候補作
車谷長吉
『赤目四十八瀧心中未遂』
重松清
『定年ゴジラ』
東郷隆
『洛中の露』
梁石日
『血と骨』
宇江佐真理
「桜花を見た」
乙川優三郎
『喜知次』
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候補者・作品
東郷隆男46歳×各選考委員 
『洛中の露』
連作長篇 558
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
田辺聖子
女70歳
12 「私は氏のお作品に親昵する者の一人だが、この本はすこし難解だった。」「入念で凝ったつくり、しかし作者が気を入れているわりに読者は楽しめないのではなかろうか。」「私は「弥助」が好もしかった。この一篇を推したい。」
阿刀田高
男63歳
16 「知識の深さに真実舌を巻く。」「だが、残念ながら作者の意図したモチーフがよく見えて来ない。」「この作家にはいつも、――すばらしい筆力なのに――と、もどかしさを感じてしまうのだ。学識を抜きにして単純明快なお話を聞かせていただけないものだろうか。」
黒岩重吾
男74歳
6 「文献に頼り過ぎ、登場人物が多く、想像力が活かされていないので読み難い。かつての「人造記」のような面白味を復活させて貰いたい。」
津本陽
男69歳
12 「綿密な考証に全篇が覆われているので、読み進むのがきわめて繁雑で、小説を楽しむ余裕がない。」「充分に力量のある作家であるが、作風に迷いが出てきたのではないかと、気がかりである。」
平岩弓枝
女66歳
16 「最初の「弥助」がよかった。」「あとへ行くほど衒学趣味が濃くなって、書かれねばならない人間像が薄くなってしまったのは残念である。エピソードをばらばらに積み重ねるのではなく、金森宗和の多面性にしぼり込んで、その人間性を浮び上らせるためにエピソードを活用出来たらと思う。」
渡辺淳一
男64歳
8 「この著者が大変な博識であることはわかるが、いうまでもなく、小説は知識を書くことではない。」「知に溺れて小説的妙味を失っているのは、いかにも残念である。」
五木寛之
男65歳
0  
井上ひさし
男63歳
19 「知識の幅と深さには毎度、驚嘆させられる。しかし、その分だけ、想像の翼が小さくなり、困った揚句、妖怪変化の棲む世界へ逃げ込むいつもの型に、今回もまたはまってしまった気味がある。勉強の成果がうまく生かされていないのが残念だ。」
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他の候補作
車谷長吉
『赤目四十八瀧心中未遂』
重松清
『定年ゴジラ』
なかにし礼
『兄弟』
梁石日
『血と骨』
宇江佐真理
「桜花を見た」
乙川優三郎
『喜知次』
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候補者・作品
梁石日男61歳×各選考委員 
『血と骨』
長篇 1337
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
田辺聖子
女70歳
19 「はじめは金俊平という主人公に共感をおぼえさせられるが、次第に、獰猛な野獣の如き、人間ばなれした彼に、読者は心がはなれてゆく。しかしその無法ぶりもまた、小説的興味ではある。」「ワンパターンの最近の小説群の中ではひときわ異色の、不逞な面構えの小説である。」「男の子(原文傍点)の読む小説だなあ、と思いながら、しかし読後感は〈憎めない〉というもの。」
阿刀田高
男63歳
20 「技法的には弱点もあり、相当にあらっぽい作品である。ただ、途方もない主人公をあますところなく描いて、読む者をぐんぐん引き込んでいく。その迫力、そのすさまじさ。」「力作ではあったが、すでに他の賞を受けているという事情もあって、受賞作に一歩譲ることとなった。」
黒岩重吾
男74歳
30 「日本人によって差別された人達の憤りと苦しみ、悲しみは読者の胸を衝く。」「私は、金俊平の暴力が余りにも凄まじ過ぎるが故に、作者はその人物像をやや把握しかねているようにも思えた。」「成漢の父に対する憎悪には息を呑む。」「ただ、すでに山本周五郎賞を受賞している上での直木賞ということになると、受賞圏内ではあるが、やや平面的な仕上がりが気になった。」
津本陽
男69歳
17 「怒濤のとどろきのような、有無をいわせないで押し寄せてくる筆力には、感心する。」「凶暴で魅力ある男の典型をえがきだした筆者が、多くの読者に迎えられる理由は、この作品を読めば分る。」「父を憎みつつ、わが原型をそこに見る息子の、ほとばしる愛情がなお書きこまれておれば、一段の説得力を増したのではないか。」
平岩弓枝
女66歳
8 「文章、構成ともに荒い。荒々しさは、時にエネルギーと解釈されるが、適度に抑制のきいた文章、しっかりした土台をふまえた構成力は、小説の必須条件で、力にまかせて長々と書けばよいというものではない。」
渡辺淳一
男64歳
15 「大変な力わざではあるが、全面、厚塗りの油絵を見るようで、読むうちにむしろ平板化し、退屈してくる。なによりも不満なのは、金俊平が老いて弱っていく部分があっさりしすぎていることで、死にいたるまで刻明に描くべきではなかったか。」
五木寛之
男65歳
21 「私は梁、車谷、両氏の二作受賞を提案した」「荒けずりな文章がむしろ効果的といっていいような骨太の物語である。」「この作家の会心の力作と言っていいだろう。いかに才能ある書き手にしても、そうちょくちょく書ける作品ではあるまいと思われるだけに、今回の受賞を逸したことは惜しまれる。」
井上ひさし
男63歳
20 「リチャード三世とリア王を合わせたような神話的人物を創造し得た傑作である。」「瑕は多いのだが、それでもとにかく、金俊平という途方もない巨人をみごとに出現させ、十二分に生きさせ、そして完膚なきまでに老いぼれさせたところは、一つの文学的偉業であった」
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他の候補作
車谷長吉
『赤目四十八瀧心中未遂』
重松清
『定年ゴジラ』
なかにし礼
『兄弟』
東郷隆
『洛中の露』
宇江佐真理
「桜花を見た」
乙川優三郎
『喜知次』
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候補者・作品
宇江佐真理女48歳×各選考委員 
「桜花を見た」
短篇 89
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
田辺聖子
女70歳
7 「ちょっと期待はずれ。時代ものは制約が多いので苦労されるだろうが、初心のころのキラキラの輝きを忘れずに。」
阿刀田高
男63歳
11 「おもしろい読み物になっているけれど、これ一篇で評価するのはむつかしい。」「他の委員から時代考証の弱点を指摘され、更にマイナス点を考慮せねばならなかった。」
黒岩重吾
男74歳
0  
津本陽
男69歳
8 「前作のような独得の情緒がうすらいだようである。時代小説の考証をこころがけ、ていねいに書きこむことに努力すべきだろう。遠山金四郎を材料にするのは、得るところがすくないのではないか。」
平岩弓枝
女66歳
14 「この作者は今、こうした作品を書いている場合ではないと、忠告したい。」「一応、時代考証を下敷にして作品を創り上げようとしているこの小説の書き方からすると、間違いが多く指摘されるし、安易にすぎる。」
渡辺淳一
男64歳
6 「前回、彗星のような登場に目を奪われたが、今回はそれに比べて数段落ちる。」
五木寛之
男65歳
9 「私の期待の星と言っていい書き手なのだが、(引用者中略)いささか肩すかしをくらった感があった。」「単行本で出ている「銀の雨」のほうがはるかにいい。」
井上ひさし
男63歳
11 「江戸の時空間の把握に疑問がある。」「話のつくりもずいぶん安直だし、なによりも、このあいだまでたしかにあったはずの、素直で清潔な持ち味が、なぜかすっかり汚れてしまっている。」
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他の候補作
車谷長吉
『赤目四十八瀧心中未遂』
重松清
『定年ゴジラ』
なかにし礼
『兄弟』
東郷隆
『洛中の露』
梁石日
『血と骨』
乙川優三郎
『喜知次』
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候補者・作品
乙川優三郎男45歳×各選考委員 
『喜知次』
長篇 658
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
田辺聖子
女70歳
8 「ヒロインの女の子をもっと活躍させてほしかった。ここでもっと色気が出るか出るかと(小説的色気)読みすすめていったが、〈キザにきめる〉というところがなくて肩すかし。」
阿刀田高
男63歳
13 「ひとかどの時代小説だと思った。前半の運びは少しゆるいが、後半は充分に楽しめる。」「だが、結末の二重のどんでん返しには釈然としないものが残る。作品を支える大切な柱だけに、この疵は大きい。」
黒岩重吾
男74歳
13 「優等生らしい作品だが、読んでいて面白くなかった。」「台助の仇討ちに仲間の全員が登場するのも奇妙だが、最後になって、小太郎と花哉の間に血の繋がりがなかったとするのは安易過ぎる。」
津本陽
男69歳
10 「「霧の橋」で登場以来、短時日のうちにこまかい技巧を身につけた。」「ただ、話の運びにとまどうような、ためらい淀む部分がある。もう一段の、たたみこむようないきおいがつけば、いうことがない。」
平岩弓枝
女66歳
19 「この作者は数年の中に随分、力をつけて来たようで、それがまず嬉しかった。この作品の難は構成力で、少年時代からのびのびと書いて来たものが、最後の五分の一くらいで、突然、なにもかも説明で片付けようとして、こじつけが目立ったことだろう。」
渡辺淳一
男64歳
9 「久しぶりに情感のある時代小説作家の登場で、好意をもって読んだ。」「花哉はいささかつくりすぎで、「喜知次」と題名にまでするには、弱すぎるようである。」
五木寛之
男65歳
0  
井上ひさし
男63歳
18 「筋立てに無理がある。」「(引用者注:兄妹が実は血がつながっていないことを、親たちが二人に告げない)そのせいで悲しいことがおこるのだが、これにはほとんど呆然となった。こんなに無責任で、ひとでなしの親は、これまで見たことがない。」
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他の候補作
車谷長吉
『赤目四十八瀧心中未遂』
重松清
『定年ゴジラ』
なかにし礼
『兄弟』
東郷隆
『洛中の露』
梁石日
『血と骨』
宇江佐真理
「桜花を見た」
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