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平成20年/2008年上半期
(平成20年/2008年7月15日決定発表/『オール讀物』平成20年/2008年9月号選評掲載)
選考委員  平岩弓枝
女76歳
林真理子
女54歳
渡辺淳一
男74歳
五木寛之
男75歳
浅田次郎
男56歳
宮城谷昌光
男63歳
北方謙三
男60歳
阿刀田高
男73歳
井上ひさし
男73歳
選評総行数  100 90 53 118 104 93 102 96 166
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
井上荒野 『切羽へ』
336
女47歳
22 47 26 18 18 20 23 21 42
荻原浩 『愛しの座敷わらし』
761
男52歳
13 6 3 8 13 21 15 12 19
新野剛志 『あぽやん』
597
男43歳
8 5 3 12 35 5 11 11 16
三崎亜記 『鼓笛隊の襲来』
268
男37歳
5 7 4 11 11 26 14 22 21
山本兼一 『千両花嫁』
674
男51歳
33 10 12 11 11 16 12 13 21
和田竜 『のぼうの城』
619
男38歳
22 12 18 10 10 6 26 6 21
                 
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』平成20年/2008年9月号
1行当たりの文字数:12字


選考委員
平岩弓枝女76歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
豊かな表現力 総行数100 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
井上荒野
女47歳
22 「(引用者注:「千両花嫁」と共に)心に残った」「作者の感性と構成力の確かさがよくわかる作品」「人間描写、とりわけ、心の表裏や僅かな動きを捕える表現力に秀れていて、文句なしの受賞作品と思った。」
荻原浩
男52歳
13 「好意を持って読んだ」「惜しむらくは全体の構成に調和を欠く点と書き手の位置が登場人物の中で移り変りする部分があることで、連載小説を本にする時は特に念入りに加筆修正をお願いしたい。」
新野剛志
男43歳
8 「空港で働く人々の中に、こうした仕事があるのを知っただけでも面白く読めた。人間を描くということに広さと厚味が出ると作品が大きくなる点に留意されたらと思った。」
三崎亜記
男37歳
5 「作者の着想の豊かさには敬服するが、着想だけで小説を創るには限界がある。」
山本兼一
男51歳
33 「(引用者注:「切羽へ」と共に)心に残った」「大舞台を幕末の京都にして、その中に小さな道具屋を構築し、美人で度胸のすわった女房を持つ、みかけは平凡だが懐の深い主人公をおいたのが第一の成功の鍵。第二には見立てという遊び心のある趣向を商売に生かした着想と、一話に一人ずつ登場させている幕末の有名人の容貌を独特のデフォルメで描写することで新機軸を打ち出したところが作者の腕であろう。」
和田竜
男38歳
22 「今回、珍らしく歴史小説が候補に上った点で注目された。」「魅力は荒削りの迫力と独特のテンポの良さであろうか。但し、文章のほうは評価出来ない。小説の要件の中に文章力の占める分量は大きい。」
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林真理子
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浅田次郎
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北方謙三
阿刀田高
井上ひさし
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選考委員
林真理子女54歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選び抜かれた文章 総行数90 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
井上荒野
女47歳
47 「これは文学のひとつの挑戦だと思った。」「性交のシーンは、恋愛小説において心臓部分である。我々作家は、そこをいかにエロティックに、新鮮に描くか苦心する。」「ところがどうだろう、「切羽へ」は、この心臓部分をまるっきり失くしたのだ。そのかわり、指から踵の端まで、神経と血液を張りめぐらした。選び抜かれた比喩、文章のリズム、巧みな心理描写。どれをとっても素晴らしい。当然の受賞であろう。」
荻原浩
男52歳
6 「新聞小説のためかやや冗長なきらいがある。座敷わらしの存在が、これほど容易に家族の心をひとつにするのか、という疑問もわく。」
新野剛志
男43歳
5 「さわやかな小説で好意を持ったが、それ以上の気持ちにはなれない。小さくまとまった小説というべきか。」
三崎亜記
男37歳
7 「あまり共感出来なかった。シュールというべきか、まるで意図がつかめない。」
山本兼一
男51歳
10 「達者な小説であるが、あまり魅力を感じない。坂本龍馬をはじめとする幕末のヒーローたちが、次々と近くに現れるのもご都合主義の感を持つ。」
和田竜
男38歳
12 「「のぼうの城」の、破天荒な魅力も捨てがたいものがあった。このスピードとダイナミズムは、まさに新しい時代小説であろう。」「私はとても面白く読んだ。」
  「今回は、読んでいて気持ちよい候補作が揃った。これも時代の流れだろうか。」
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平岩弓枝
渡辺淳一
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浅田次郎
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阿刀田高
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選考委員
渡辺淳一男74歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
軽くて安易 総行数53 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
井上荒野
女47歳
26 「(引用者注:最後に残った「切羽へ」「のぼうの城」「千両花嫁」の)三作のなかでは、もっとも人間を見詰めて説得力があった。」「だが、後半、主人公の内面の書き込みが浅く、男が去り、夫の子供を妊娠したというだけでは、いささか安易な結末といわざるをえない。」「しかし、全作品のなかでは、もっとも小説らしい小説で、この作品を受賞作とするのに、異論はない。」
荻原浩
男52歳
3 「(引用者注:「鼓笛隊の襲来」「あぽやん」と共に)思いつきの域を出ず、内容も甘すぎる。」
新野剛志
男43歳
3 「(引用者注:「鼓笛隊の襲来」「愛しの座敷わらし」と共に)思いつきの域を出ず、内容も甘すぎる。」
三崎亜記
男37歳
4 「(引用者注:「愛しの座敷わらし」「あぽやん」と共に)思いつきの域を出ず、内容も甘すぎる。」
山本兼一
男51歳
12 「リズムのいい文章で、読み易いが、たんなるお話づくりの域を出ていない。このような時代小説があってもいいし、好む読者がいても一向にかまわないが、文学賞の対象としては軽すぎる。」
和田竜
男38歳
18 「ユニークな面白い武将をつくろうとする意企はよくわかるが、その気持ちが先行しすぎてリアリティーに欠ける。」「小説としては、この軽さでは説得力に欠けるし、それ以前に文章が甘すぎる。また各々の挿話のあとに、もっともらしく資料を付加するのは、むしろ逆効果でしらける。」
  「今回、最終候補に残ったのは、「切羽へ」「のぼうの城」「千両花嫁」の三作であった。」
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五木寛之
浅田次郎
宮城谷昌光
北方謙三
阿刀田高
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選考委員
五木寛之男75歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
最後の一作 総行数118 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
井上荒野
女47歳
18 「最後に残り、私も一票を投じた。」「主人公の「私」をはじめ登場人物の心と体の揺れうごくきわどさが、人間存在のきわどさを反映していると同時に、文章のもつ官能の力を巧みに使いこなしているところに、この作家の成熟度を感じた。その完成度の高さにかすかな不安もある。しかし、自然描写にさえセクシーな気配が漂うのは、貴重な才能というべきだろう。」
荻原浩
男52歳
8 「軽妙な文体で現代の都市民話をつくろうとする作家の志に共感しつつも、座敷わらしの解釈になにか物足りない気がしたというのが本音である。」
新野剛志
男43歳
12 「(引用者注:「千両花嫁」と共に)楽しく読ませる力量はなかなかのものであった。」「なんとなく「いつか来た道」という感じがするところが気になった」
三崎亜記
男37歳
11 「私は最初、(引用者中略)推したが、ほかに支持する人がなく、あっさり空振りに終った。表題作も興味ぶかく読んだし、『突起型選択装置』の奇妙な魅力も捨てがたい。エンターテインメント界の安部公房といった作風は、今後どこまで進化するのだろうか。」
山本兼一
男51歳
11 「(引用者注:「あぽやん」と共に)楽しく読ませる力量はなかなかのものであった。」「なんとなく「いつか来た道」という感じがするところが気になった」
和田竜
男38歳
10 「時代小説も変ってきたな、としみじみ思う。テンポもあり、キャラクターも際立ち、抜群の好読物といえるが、結末がやや型どおりで意外性に欠けるといっては欲ばりすぎかもしれない。」
  「第一回目の投票では、各選者の支持作品が分散して、今回はかなり難航しそうな気がしていたのだが、最後は意外にあっさり受賞作が決定した。」「かつてこの賞の選考会は、良くいえば豪快、悪くいえばおおざっぱに事が運ぶのが特徴だったように思う。」「最近では皆さんが試験勉強のように微に入り細をうがって徹底的に準備をなさって選考会にのぞまれる。」
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平岩弓枝
林真理子
渡辺淳一
浅田次郎
宮城谷昌光
北方謙三
阿刀田高
井上ひさし
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選考委員
浅田次郎男56歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
文学の核 総行数104 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
井上荒野
女47歳
18 「伝統的な文学のスタイルを踏襲している」「自然主義の様式に呪縛されたフィクションなので、ダイナミックなストーリー展開がかなわず、かといって内面に踏みこむにも限界がある。しかしそうした基本構造上の矛盾を、文章の力によって静謐な絵に描きおえたのはさすがである。いささか苦言は呈したものの受賞には異論がない。」
荻原浩
男52歳
13 「新聞連載の原稿であることが祟ったと思われる。」「千枚に及ぶ新聞連載が直木賞の候補に上がったという事実だけでも、敢闘とするべきであろう。」
新野剛志
男43歳
35 「平和で豊かな世の中というのも、こと文学にとっては考えもので、小説家は本来文学の核となるべき苦悩を個人的に探し回らねばならない。そうした頽廃の原理に気付き、懸命に現実生活の苦悩をノベライズした作品として、私は(引用者中略)推した。」「小説とは何か、という哲学を修めたうえで、歴史的には笑止千万な現代青年の苦悩を表現したように思えた。」「たぶん作者はこの一作を前菜として、まったく思いがけない料理の用意があると私は考えた。あえて強く推さなかった理由は、その期待感である。」
三崎亜記
男37歳
11 「一見ユニークな作品集のように思えても、やはり既視感があった。むしろいつの時代にも指定席がひとつ確保されている小説ではあるまいか。この指定席に安住することなく、立ち上がるか、もしくは新たな価値観を見出してほしい。」
山本兼一
男51歳
11 「シリーズの一部分が選考の対象となったという点が不利に働いてしまったと思う。それをさておくとしても、人物が機能しているわりには空気感に欠ける印象をどうしても否めなかった。」
和田竜
男38歳
10 「引きこもりの読者を日ざかりの庭に叩き出すような物語で、市井を賑わせた理由はそうした効果によるのであろう。それもまた小説のもたらすあらたかな福音にはちがいないけれど、そもそも社会的効果と文学的価値は無縁である。」
  「文学の核たるべき苦悩を免れたわれわれが「漠然たる不安」などと言わずにどうすれば小説をなしうるのかと、真剣に考えさせられる選考会であった。」
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他の選考委員
平岩弓枝
林真理子
渡辺淳一
五木寛之
宮城谷昌光
北方謙三
阿刀田高
井上ひさし
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選考委員
宮城谷昌光男63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
覇気不足 総行数93 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
井上荒野
女47歳
20 「品の悪くない小説であるが、全体が平面的で、人と物の厚みも不足している。」「ときどきいらいらする。リズムに弱点がある。」「人が人を好きになるという新しい形態を示している点で、その(引用者注:受賞の)決定に異存はないが、さらに大きな作家になるためには、自制の外へ踏みだす足が欲しい。」
荻原浩
男52歳
21 「荻原氏の語りの上達にはおどろかされた。それはけっして悪いことではないとおもいたいが、かつてあった人間の芯のようなものが、ここではみえなくなった。」「ファンタジー小説では、作者と読者とのあいだにある契約事項を明示しなければならないのに、その点に曖昧さがある」
新野剛志
男43歳
5 「氏の領域内での進退であろうとおもわれるので、領域外での進展をみる必要がある。」
三崎亜記
男37歳
26 「ここには、実在することへの不信感が、端的にあらわれている。」「この種の小説は、自然主義的な描写をはっきりと拒絶して、文体だけで呼吸してゆかねばならないのに、そのあたりに思い切りと工夫が弱い。氏は自身に甘い。妥協はなんの利点にもならない。文学的弱点になるだけである。」
山本兼一
男51歳
16 「柴田錬三郎に通う資質をもっているかもしれない。が、柴田錬三郎の文体の美しさに、この作品は及んでおらず、陰翳にも欠ける。作中で偶然や幸運を連続させても、読者にみすかされず、厭きられないためには、もうひと工夫が要る。」
和田竜
男38歳
6 「問題点は、地の文のうすさである。歴史小説の地の文は、交響的でなければならない。」
  「候補作品全体についていえば、覇気が足りない。小説における覇気とは、その作品の著者の志の高さと小説を構成する力とに関係する。」
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他の選考委員
平岩弓枝
林真理子
渡辺淳一
五木寛之
浅田次郎
北方謙三
阿刀田高
井上ひさし
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選考委員
北方謙三男60歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
心理の切羽 総行数102 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
井上荒野
女47歳
23 「いつ崩れるかわからない切羽へ、なかなかいかないという、もどかしさがつきまとった。」「しかし切羽を、情況的なものでなく心理的なものだと考えると、世界は俄然色彩を帯びてくる。」「三作(引用者注:「切羽へ」「のぼうの城」「千両花嫁」)の決戦では、迷わず『切羽へ』と『のぼうの城』に票を投じた。」
荻原浩
男52歳
15 「私は愉しみながら読んだ。」「ただ、日常に入りこんでくる非日常という点で、日常が平凡すぎるという印象は拭いきれない。座敷わらしが、それなりに役割を果すには、もっと強く、あざといほどの日常が必要だったと思う。」
新野剛志
男43歳
11 「好感が持てた。『八月のマルクス』以来、二冊目を読んだことになるが、かなり違う資質を私に感じさせた。それは私にとっては可能性を見せられたということであり、期待の予感がふくらんでいる。」
三崎亜記
男37歳
14 「寓意性はあるが、情況の説明が多い。すべての説明を排除して、細部の描写を積み重ねることに、もっと力を注ぐべきだった。」「この作者の、卓抜なイメージの描出力は、長篇でこそ生きるのかもしれない、と思った。」
山本兼一
男51歳
12 「見立てについてなど、私にはよくわからないが、無理なく物語の中にとけこんでいた。そのあたりはうまいのだが、こういう小説に欲しい痛快さが不足している気がした。歴史上の有名人に、強烈な存在感を与えれなかったからなのではないか、と読後に考えこんだ。」
和田竜
男38歳
26 「ちょっと芝居がかってはいるが、関東武士の奮戦記である忍城戦を、人間臭い物語に仕立てあげていて、読後感がよかった。」「三作(引用者注:「切羽へ」「のぼうの城」「千両花嫁」)の決戦では、迷わず『切羽へ』と『のぼうの城』に票を投じた。」
  「今回の候補作は、粒が揃っている、という印象だった。ただ、大きく弾けたものがなく、小粒だという気もしないわけではなかった。」
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他の選考委員
平岩弓枝
林真理子
渡辺淳一
五木寛之
浅田次郎
宮城谷昌光
阿刀田高
井上ひさし
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選考委員
阿刀田高男73歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
文章のしなやかさ 総行数96 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
井上荒野
女47歳
21 「波乱万丈のストーリーが展開されるわけではない。どこにでもあるような歪な恋のかけら、それをしなやかな文章で綴って快い。切羽というタイトルに籠められた寓意がもっとはっきりと作品の中に示されたら、ストーリー性も豊かになっただろうに、と惜しんだが、それはこの作者の狙いではなかったろう。ともあれ、よい受賞作をえた、と嬉しかった。」
荻原浩
男52歳
12 「――訴えるものが乏しい――と、それが実感だった。なかなかストーリーの核心に入ってくれないし、座敷わらしをどう考えるか、という最重要ポイントについても鮮かなものが見えにくかった。」
新野剛志
男43歳
11 「作者のモチーフが見えにくい。作品の舞台が特殊なせいかどうか、感情移入がむつかしい。」「小説の書き方は、どの候補作よりも整っているのだが……残念である。」
三崎亜記
男37歳
22 「――もったいないなあ。つらいなあ。――と思い悩んだ。」「アイデアだけが先行し、私たちの日常との絡みあいに足りないものを感じた。百枚にまで膨らませて書いたら、どうだったろう。このままではアイデアを無駄使いしているようにも思え、作者のつらさに同情を覚えてしまうのである。」
山本兼一
男51歳
13 「楽しく読める作品だ。」「文章も闊達で、ストーリーもテンポよく進んでいく。」「よい作品だが、受賞作に比べて文学としての味わいで一歩譲っていた。」
和田竜
男38歳
6 「おもしろく読んだが、小説としての創り方に荒っぽいところが目立ち、一途な挑戦を評価しながらも、次の作品を待とうという判断に傾いた。」
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他の選考委員
平岩弓枝
林真理子
渡辺淳一
五木寛之
浅田次郎
宮城谷昌光
北方謙三
井上ひさし
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選考委員
井上ひさし男73歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
楔の問題 総行数166 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
井上荒野
女47歳
42 「よく企まれた恋愛小説ではあるが、評者には退屈だった。あんまり話がなさすぎる。」「けれども、ここで実現された九州方言による対話は、これまでに類を見ないほど、すばらしいものだった。これほど美しく、たのしく、雄弁な九州方言に、これまでお目にかかったことがあっただろうか。」「最終投票で、評者は、この九州方言による対話に票を投じた。」
荻原浩
男52歳
19 「座敷わらしがある者には見え、ある者には見えないという設定を慎重に扱うあまり、前半がずいぶんもたついた。」「後半はとてもおもしろい。けれども、それでも前半のもたつきを補うには足りなかった。」
新野剛志
男43歳
16 「空港の仕組みとその機能的な美しさ、そこで展開されるさまざまな人生の、その瞬間、その瞬間のおもしろさなど、魅力がたっぷりとあるが、しかし筋立ての展開にリズムがすこし欠けていたのではないだろうか。」
三崎亜記
男37歳
21 「機知にあふれた楔でいっぱいである。」「削ぎに削がれた文章が一篇一篇を寓話のようにくっきりと彫り上げているが、各篇結尾の日常への戻り方がすべて〈人の世の哀しみ〉と一色なのは(ここが意見の分かれるところだが)評者にはもどかしかった。」
山本兼一
男51歳
21 「この作での楔は、道具商には欠かせない〈見立て〉の力ということになるが、この見立てを仕掛ける作者の工夫がもうひとつ練れていればよかった。見立てを仕掛けられた敵役がみな幼く見えたのは残念だった。しかし読み味のいい小説である。」
和田竜
男38歳
21 「語り口には張り扇の音が聞こえてきそうなほど調子がよくてリズムがある。調子がよすぎて「読物」へ堕ちかけてもいるが、袋小路に入ってしまった体のある現代の小説を、もう一度、読者の方へ引き付けるには、この調子のよさは貴重であるとおもい、最初の一票をこの作に投じた。」
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他の選考委員
平岩弓枝
林真理子
渡辺淳一
五木寛之
浅田次郎
宮城谷昌光
北方謙三
阿刀田高
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受賞者・作品
井上荒野女47歳×各選考委員 
『切羽へ』
長篇 336
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
平岩弓枝
女76歳
22 「(引用者注:「千両花嫁」と共に)心に残った」「作者の感性と構成力の確かさがよくわかる作品」「人間描写、とりわけ、心の表裏や僅かな動きを捕える表現力に秀れていて、文句なしの受賞作品と思った。」
林真理子
女54歳
47 「これは文学のひとつの挑戦だと思った。」「性交のシーンは、恋愛小説において心臓部分である。我々作家は、そこをいかにエロティックに、新鮮に描くか苦心する。」「ところがどうだろう、「切羽へ」は、この心臓部分をまるっきり失くしたのだ。そのかわり、指から踵の端まで、神経と血液を張りめぐらした。選び抜かれた比喩、文章のリズム、巧みな心理描写。どれをとっても素晴らしい。当然の受賞であろう。」
渡辺淳一
男74歳
26 「(引用者注:最後に残った「切羽へ」「のぼうの城」「千両花嫁」の)三作のなかでは、もっとも人間を見詰めて説得力があった。」「だが、後半、主人公の内面の書き込みが浅く、男が去り、夫の子供を妊娠したというだけでは、いささか安易な結末といわざるをえない。」「しかし、全作品のなかでは、もっとも小説らしい小説で、この作品を受賞作とするのに、異論はない。」
五木寛之
男75歳
18 「最後に残り、私も一票を投じた。」「主人公の「私」をはじめ登場人物の心と体の揺れうごくきわどさが、人間存在のきわどさを反映していると同時に、文章のもつ官能の力を巧みに使いこなしているところに、この作家の成熟度を感じた。その完成度の高さにかすかな不安もある。しかし、自然描写にさえセクシーな気配が漂うのは、貴重な才能というべきだろう。」
浅田次郎
男56歳
18 「伝統的な文学のスタイルを踏襲している」「自然主義の様式に呪縛されたフィクションなので、ダイナミックなストーリー展開がかなわず、かといって内面に踏みこむにも限界がある。しかしそうした基本構造上の矛盾を、文章の力によって静謐な絵に描きおえたのはさすがである。いささか苦言は呈したものの受賞には異論がない。」
宮城谷昌光
男63歳
20 「品の悪くない小説であるが、全体が平面的で、人と物の厚みも不足している。」「ときどきいらいらする。リズムに弱点がある。」「人が人を好きになるという新しい形態を示している点で、その(引用者注:受賞の)決定に異存はないが、さらに大きな作家になるためには、自制の外へ踏みだす足が欲しい。」
北方謙三
男60歳
23 「いつ崩れるかわからない切羽へ、なかなかいかないという、もどかしさがつきまとった。」「しかし切羽を、情況的なものでなく心理的なものだと考えると、世界は俄然色彩を帯びてくる。」「三作(引用者注:「切羽へ」「のぼうの城」「千両花嫁」)の決戦では、迷わず『切羽へ』と『のぼうの城』に票を投じた。」
阿刀田高
男73歳
21 「波乱万丈のストーリーが展開されるわけではない。どこにでもあるような歪な恋のかけら、それをしなやかな文章で綴って快い。切羽というタイトルに籠められた寓意がもっとはっきりと作品の中に示されたら、ストーリー性も豊かになっただろうに、と惜しんだが、それはこの作者の狙いではなかったろう。ともあれ、よい受賞作をえた、と嬉しかった。」
井上ひさし
男73歳
42 「よく企まれた恋愛小説ではあるが、評者には退屈だった。あんまり話がなさすぎる。」「けれども、ここで実現された九州方言による対話は、これまでに類を見ないほど、すばらしいものだった。これほど美しく、たのしく、雄弁な九州方言に、これまでお目にかかったことがあっただろうか。」「最終投票で、評者は、この九州方言による対話に票を投じた。」
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他の候補作
荻原浩
『愛しの座敷わらし』
新野剛志
『あぽやん』
三崎亜記
『鼓笛隊の襲来』
山本兼一
『千両花嫁』
和田竜
『のぼうの城』
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候補者・作品
荻原浩男52歳×各選考委員 
『愛しの座敷わらし』
長篇 761
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
平岩弓枝
女76歳
13 「好意を持って読んだ」「惜しむらくは全体の構成に調和を欠く点と書き手の位置が登場人物の中で移り変りする部分があることで、連載小説を本にする時は特に念入りに加筆修正をお願いしたい。」
林真理子
女54歳
6 「新聞小説のためかやや冗長なきらいがある。座敷わらしの存在が、これほど容易に家族の心をひとつにするのか、という疑問もわく。」
渡辺淳一
男74歳
3 「(引用者注:「鼓笛隊の襲来」「あぽやん」と共に)思いつきの域を出ず、内容も甘すぎる。」
五木寛之
男75歳
8 「軽妙な文体で現代の都市民話をつくろうとする作家の志に共感しつつも、座敷わらしの解釈になにか物足りない気がしたというのが本音である。」
浅田次郎
男56歳
13 「新聞連載の原稿であることが祟ったと思われる。」「千枚に及ぶ新聞連載が直木賞の候補に上がったという事実だけでも、敢闘とするべきであろう。」
宮城谷昌光
男63歳
21 「荻原氏の語りの上達にはおどろかされた。それはけっして悪いことではないとおもいたいが、かつてあった人間の芯のようなものが、ここではみえなくなった。」「ファンタジー小説では、作者と読者とのあいだにある契約事項を明示しなければならないのに、その点に曖昧さがある」
北方謙三
男60歳
15 「私は愉しみながら読んだ。」「ただ、日常に入りこんでくる非日常という点で、日常が平凡すぎるという印象は拭いきれない。座敷わらしが、それなりに役割を果すには、もっと強く、あざといほどの日常が必要だったと思う。」
阿刀田高
男73歳
12 「――訴えるものが乏しい――と、それが実感だった。なかなかストーリーの核心に入ってくれないし、座敷わらしをどう考えるか、という最重要ポイントについても鮮かなものが見えにくかった。」
井上ひさし
男73歳
19 「座敷わらしがある者には見え、ある者には見えないという設定を慎重に扱うあまり、前半がずいぶんもたついた。」「後半はとてもおもしろい。けれども、それでも前半のもたつきを補うには足りなかった。」
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他の候補作
井上荒野
『切羽へ』
新野剛志
『あぽやん』
三崎亜記
『鼓笛隊の襲来』
山本兼一
『千両花嫁』
和田竜
『のぼうの城』
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候補者・作品
新野剛志男43歳×各選考委員 
『あぽやん』
連作6篇 597
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
平岩弓枝
女76歳
8 「空港で働く人々の中に、こうした仕事があるのを知っただけでも面白く読めた。人間を描くということに広さと厚味が出ると作品が大きくなる点に留意されたらと思った。」
林真理子
女54歳
5 「さわやかな小説で好意を持ったが、それ以上の気持ちにはなれない。小さくまとまった小説というべきか。」
渡辺淳一
男74歳
3 「(引用者注:「鼓笛隊の襲来」「愛しの座敷わらし」と共に)思いつきの域を出ず、内容も甘すぎる。」
五木寛之
男75歳
12 「(引用者注:「千両花嫁」と共に)楽しく読ませる力量はなかなかのものであった。」「なんとなく「いつか来た道」という感じがするところが気になった」
浅田次郎
男56歳
35 「平和で豊かな世の中というのも、こと文学にとっては考えもので、小説家は本来文学の核となるべき苦悩を個人的に探し回らねばならない。そうした頽廃の原理に気付き、懸命に現実生活の苦悩をノベライズした作品として、私は(引用者中略)推した。」「小説とは何か、という哲学を修めたうえで、歴史的には笑止千万な現代青年の苦悩を表現したように思えた。」「たぶん作者はこの一作を前菜として、まったく思いがけない料理の用意があると私は考えた。あえて強く推さなかった理由は、その期待感である。」
宮城谷昌光
男63歳
5 「氏の領域内での進退であろうとおもわれるので、領域外での進展をみる必要がある。」
北方謙三
男60歳
11 「好感が持てた。『八月のマルクス』以来、二冊目を読んだことになるが、かなり違う資質を私に感じさせた。それは私にとっては可能性を見せられたということであり、期待の予感がふくらんでいる。」
阿刀田高
男73歳
11 「作者のモチーフが見えにくい。作品の舞台が特殊なせいかどうか、感情移入がむつかしい。」「小説の書き方は、どの候補作よりも整っているのだが……残念である。」
井上ひさし
男73歳
16 「空港の仕組みとその機能的な美しさ、そこで展開されるさまざまな人生の、その瞬間、その瞬間のおもしろさなど、魅力がたっぷりとあるが、しかし筋立ての展開にリズムがすこし欠けていたのではないだろうか。」
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他の候補作
井上荒野
『切羽へ』
荻原浩
『愛しの座敷わらし』
三崎亜記
『鼓笛隊の襲来』
山本兼一
『千両花嫁』
和田竜
『のぼうの城』
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候補者・作品
三崎亜記男37歳×各選考委員 
『鼓笛隊の襲来』
短篇集9篇 268
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
平岩弓枝
女76歳
5 「作者の着想の豊かさには敬服するが、着想だけで小説を創るには限界がある。」
林真理子
女54歳
7 「あまり共感出来なかった。シュールというべきか、まるで意図がつかめない。」
渡辺淳一
男74歳
4 「(引用者注:「愛しの座敷わらし」「あぽやん」と共に)思いつきの域を出ず、内容も甘すぎる。」
五木寛之
男75歳
11 「私は最初、(引用者中略)推したが、ほかに支持する人がなく、あっさり空振りに終った。表題作も興味ぶかく読んだし、『突起型選択装置』の奇妙な魅力も捨てがたい。エンターテインメント界の安部公房といった作風は、今後どこまで進化するのだろうか。」
浅田次郎
男56歳
11 「一見ユニークな作品集のように思えても、やはり既視感があった。むしろいつの時代にも指定席がひとつ確保されている小説ではあるまいか。この指定席に安住することなく、立ち上がるか、もしくは新たな価値観を見出してほしい。」
宮城谷昌光
男63歳
26 「ここには、実在することへの不信感が、端的にあらわれている。」「この種の小説は、自然主義的な描写をはっきりと拒絶して、文体だけで呼吸してゆかねばならないのに、そのあたりに思い切りと工夫が弱い。氏は自身に甘い。妥協はなんの利点にもならない。文学的弱点になるだけである。」
北方謙三
男60歳
14 「寓意性はあるが、情況の説明が多い。すべての説明を排除して、細部の描写を積み重ねることに、もっと力を注ぐべきだった。」「この作者の、卓抜なイメージの描出力は、長篇でこそ生きるのかもしれない、と思った。」
阿刀田高
男73歳
22 「――もったいないなあ。つらいなあ。――と思い悩んだ。」「アイデアだけが先行し、私たちの日常との絡みあいに足りないものを感じた。百枚にまで膨らませて書いたら、どうだったろう。このままではアイデアを無駄使いしているようにも思え、作者のつらさに同情を覚えてしまうのである。」
井上ひさし
男73歳
21 「機知にあふれた楔でいっぱいである。」「削ぎに削がれた文章が一篇一篇を寓話のようにくっきりと彫り上げているが、各篇結尾の日常への戻り方がすべて〈人の世の哀しみ〉と一色なのは(ここが意見の分かれるところだが)評者にはもどかしかった。」
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他の候補作
井上荒野
『切羽へ』
荻原浩
『愛しの座敷わらし』
新野剛志
『あぽやん』
山本兼一
『千両花嫁』
和田竜
『のぼうの城』
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候補者・作品
山本兼一男51歳×各選考委員 
『千両花嫁』
連作7篇 674
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
平岩弓枝
女76歳
33 「(引用者注:「切羽へ」と共に)心に残った」「大舞台を幕末の京都にして、その中に小さな道具屋を構築し、美人で度胸のすわった女房を持つ、みかけは平凡だが懐の深い主人公をおいたのが第一の成功の鍵。第二には見立てという遊び心のある趣向を商売に生かした着想と、一話に一人ずつ登場させている幕末の有名人の容貌を独特のデフォルメで描写することで新機軸を打ち出したところが作者の腕であろう。」
林真理子
女54歳
10 「達者な小説であるが、あまり魅力を感じない。坂本龍馬をはじめとする幕末のヒーローたちが、次々と近くに現れるのもご都合主義の感を持つ。」
渡辺淳一
男74歳
12 「リズムのいい文章で、読み易いが、たんなるお話づくりの域を出ていない。このような時代小説があってもいいし、好む読者がいても一向にかまわないが、文学賞の対象としては軽すぎる。」
五木寛之
男75歳
11 「(引用者注:「あぽやん」と共に)楽しく読ませる力量はなかなかのものであった。」「なんとなく「いつか来た道」という感じがするところが気になった」
浅田次郎
男56歳
11 「シリーズの一部分が選考の対象となったという点が不利に働いてしまったと思う。それをさておくとしても、人物が機能しているわりには空気感に欠ける印象をどうしても否めなかった。」
宮城谷昌光
男63歳
16 「柴田錬三郎に通う資質をもっているかもしれない。が、柴田錬三郎の文体の美しさに、この作品は及んでおらず、陰翳にも欠ける。作中で偶然や幸運を連続させても、読者にみすかされず、厭きられないためには、もうひと工夫が要る。」
北方謙三
男60歳
12 「見立てについてなど、私にはよくわからないが、無理なく物語の中にとけこんでいた。そのあたりはうまいのだが、こういう小説に欲しい痛快さが不足している気がした。歴史上の有名人に、強烈な存在感を与えれなかったからなのではないか、と読後に考えこんだ。」
阿刀田高
男73歳
13 「楽しく読める作品だ。」「文章も闊達で、ストーリーもテンポよく進んでいく。」「よい作品だが、受賞作に比べて文学としての味わいで一歩譲っていた。」
井上ひさし
男73歳
21 「この作での楔は、道具商には欠かせない〈見立て〉の力ということになるが、この見立てを仕掛ける作者の工夫がもうひとつ練れていればよかった。見立てを仕掛けられた敵役がみな幼く見えたのは残念だった。しかし読み味のいい小説である。」
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他の候補作
井上荒野
『切羽へ』
荻原浩
『愛しの座敷わらし』
新野剛志
『あぽやん』
三崎亜記
『鼓笛隊の襲来』
和田竜
『のぼうの城』
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候補者・作品
和田竜男38歳×各選考委員 
『のぼうの城』
長篇 619
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
平岩弓枝
女76歳
22 「今回、珍らしく歴史小説が候補に上った点で注目された。」「魅力は荒削りの迫力と独特のテンポの良さであろうか。但し、文章のほうは評価出来ない。小説の要件の中に文章力の占める分量は大きい。」
林真理子
女54歳
12 「「のぼうの城」の、破天荒な魅力も捨てがたいものがあった。このスピードとダイナミズムは、まさに新しい時代小説であろう。」「私はとても面白く読んだ。」
渡辺淳一
男74歳
18 「ユニークな面白い武将をつくろうとする意企はよくわかるが、その気持ちが先行しすぎてリアリティーに欠ける。」「小説としては、この軽さでは説得力に欠けるし、それ以前に文章が甘すぎる。また各々の挿話のあとに、もっともらしく資料を付加するのは、むしろ逆効果でしらける。」
五木寛之
男75歳
10 「時代小説も変ってきたな、としみじみ思う。テンポもあり、キャラクターも際立ち、抜群の好読物といえるが、結末がやや型どおりで意外性に欠けるといっては欲ばりすぎかもしれない。」
浅田次郎
男56歳
10 「引きこもりの読者を日ざかりの庭に叩き出すような物語で、市井を賑わせた理由はそうした効果によるのであろう。それもまた小説のもたらすあらたかな福音にはちがいないけれど、そもそも社会的効果と文学的価値は無縁である。」
宮城谷昌光
男63歳
6 「問題点は、地の文のうすさである。歴史小説の地の文は、交響的でなければならない。」
北方謙三
男60歳
26 「ちょっと芝居がかってはいるが、関東武士の奮戦記である忍城戦を、人間臭い物語に仕立てあげていて、読後感がよかった。」「三作(引用者注:「切羽へ」「のぼうの城」「千両花嫁」)の決戦では、迷わず『切羽へ』と『のぼうの城』に票を投じた。」
阿刀田高
男73歳
6 「おもしろく読んだが、小説としての創り方に荒っぽいところが目立ち、一途な挑戦を評価しながらも、次の作品を待とうという判断に傾いた。」
井上ひさし
男73歳
21 「語り口には張り扇の音が聞こえてきそうなほど調子がよくてリズムがある。調子がよすぎて「読物」へ堕ちかけてもいるが、袋小路に入ってしまった体のある現代の小説を、もう一度、読者の方へ引き付けるには、この調子のよさは貴重であるとおもい、最初の一票をこの作に投じた。」
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他の候補作
井上荒野
『切羽へ』
荻原浩
『愛しの座敷わらし』
新野剛志
『あぽやん』
三崎亜記
『鼓笛隊の襲来』
山本兼一
『千両花嫁』
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