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第146回
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平成23年/2011年下半期
(平成24年/2012年1月17日決定発表/『オール讀物』平成24年/2012年3月号選評掲載)
選考委員  渡辺淳一
男78歳
宮部みゆき
女51歳
阿刀田高
男77歳
林真理子
女57歳
浅田次郎
男60歳
宮城谷昌光
男66歳
桐野夏生
女60歳
北方謙三
男64歳
伊集院静
男61歳
選評総行数  67 193 100 98 82 121 107 136 102
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
葉室麟 『蜩ノ記』
572
男60歳
19 48 29 10 18 29 27 19 37
伊東潤 『城を噛ませた男』
518
男51歳
8 25 9 21 13 24 14 8 7
歌野晶午 『春から夏、やがて冬』
458
男50歳
6 16 13 15 10 9 14 7 7
恩田陸 『夢違』
902
女47歳
4 91 23 15 15 20 20 40 17
桜木紫乃 『ラブレス』
571
女46歳
20 23 16 22 11 6 20 48 22
真山仁 『コラプティオ』
975
男49歳
5 0 10 15 11 6 12 7 4
                 
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』平成24年/2012年3月号
1行当たりの文字数:12字


選考委員
渡辺淳一男78歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
描写のたしかさ 総行数67 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
葉室麟
男60歳
19 「なによりも優れているところは、デッサン力がたしかで、安心して読めるところである。」「著者はこれまで、何回か賞を逸してきたようだが、今回はたしかな筆致で作品の奥行きを増し、受賞に値する作品となっている。」
伊東潤
男51歳
8 「大名ではない、中、小城主を主人公にしたところが面白く、ひきつけられる。」「しかし、いずれも思い付きの域をこえず、人間の内面に入っていないところがもの足りなかった。」
歌野晶午
男50歳
6 「小説がつくられすぎていて、遊び過ぎである。」
恩田陸
女47歳
4 「何度か読み返したが、夢の中に入っていけず、独善的にすぎる。」
桜木紫乃
女46歳
20 「(引用者注:受賞作の「蜩ノ記」に)次いで注目した」「しかし、読者を対象とした小説なのだから、今少し焦点を絞り、軽重を考慮して書くべきだろう。」「百合江の北海道での過酷な生きざまなど、愛とか信頼などと無縁な視点で書きたかったとしても、取捨選択し、人間の一般的な思考や願望も含めて書けば、よりたしかで、深味のあるものになったろう。」
真山仁
男49歳
5 「こういう小説があってもかまわないが、新聞や雑誌の記事に近く、人物がありきたりである。」
  「今回は「蜩ノ記」一作で、スムーズに決めることができた。」「小説はあくまで事件を書くものではなく、人間を描くものである。」
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他の選考委員
宮部みゆき
阿刀田高
林真理子
浅田次郎
宮城谷昌光
桐野夏生
北方謙三
伊集院静
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選考委員
宮部みゆき女51歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
さまざまな試み 総行数193 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
葉室麟
男60歳
48 「深い教養がなくては書けない作品」「私は、武士という〈統べる者〉と農民という〈耕す者〉との対比・対立は、そのまま現代社会の〈情報・サービス業〉と〈製造業〉との対比、または〈政治〉と〈生活〉の対比に読み替えることができるとも思いました。踏み込んで読み過ぎているかもしれませんが、そういう読みを誘われるほど重層的な作品だったということです。」
伊東潤
男51歳
25 「久々に登場した直球投手」「今の段階ではまだちょっと一本調子。球が揃ってきてしまうと、パターンが見えます。特に短編集では見破られ易い。」
歌野晶午
男50歳
16 「本当に惜しい作品でした。主人公の平田とますみのあいだに、事件の解決(真相)など存在しない方がよかったと、私は思います。ただ、それぞれに苦しみや生き辛さを抱えた二人が寄り添って生きてゆく、あるいはどこかで袂を分かつ、その有り様を淡々と描く小説であってよかった。」
恩田陸
女47歳
91 「物語のなかに多くの謎を仕掛け、解読のキーもたくさん埋め込み、しかし作者からは「これが真相です」というまとまった解答は示さない。」「誰が読んでもわかり易い文章と鮮やかなイメージで、誰もが平等に、この幻視的な物語の読み解きに参加し、楽しむことができるよう用意する。これは大変なチャレンジです。私はその勇気と努力に深い敬意を覚えました。」
桜木紫乃
女46歳
23 「徹夜で読み、何度も笑い、泣きました。」「どうして受賞に届かなかったのか、振り返って考えてみると不思議で仕方ありません。」「全身全霊でぶつかってくるこの物語に惚れてしまい、駆け落ちしようと決めた刹那にふと我に返り、「出会ったばかりのこの人と、このまま突っ走ってしまっていいのかしら」と急に腰が引けてしまったのよ――と説明するしかないようで、まことに申し訳ありません。」
真山仁
男49歳
0  
  「満票を得た『蜩ノ記』の次には、好対照な二作が同点で並びました。伊東潤さんの『城を噛ませた男』と、桜木紫乃さんの『ラブレス』です。」
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阿刀田高
林真理子
浅田次郎
宮城谷昌光
桐野夏生
北方謙三
伊集院静
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選考委員
阿刀田高男77歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
姿のよい作品 総行数100 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
葉室麟
男60歳
29 「人物の設定、ストーリーの展開など、しなやかに綴られて、説得力がある。腕ききの船頭の操る舟に乗るときみたいに、読者はゆったりと身を委ねて小説を読む楽しさに没頭することができる。」「あえて望蜀の思いを述べれば、入念に創られているが、――やや地味かなあ――血湧き肉躍るような喜びのないのが残念。」
伊東潤
男51歳
9 「時代小説を書く確かな力量を感じた。物見の秘伝や鯨捕りの実際など、興味深い記述もあった。」
歌野晶午
男50歳
13 「滑り出しが好調で、たちまち作品の世界に引き込まれてしまったが、次第に主人公のパーソナリティに納得のできないものを感じて、さらに、――これは謎を含む推理小説であったのか――思案が錯綜してしまった。」
恩田陸
女47歳
23 「この作家のイマジネーションはつねに大きい。」「しかしストーリーを収束させるあたりでは、――これ、どういうことなのかな――破綻があるようにも感じられ、私は悩んでしまった。そういうことを問う作品ではないのかもしれない。受賞には届かなかったが、サムシングを感じさせる作品、と私は思った。」
桜木紫乃
女46歳
16 「片仮名のタイトルも私には違和感があったし、過去と現在が入りまじる部分も読みにくかった。が、力わざがすごい。」「チャーミングが作品ではあったが、いくつかの疵が災いして、一歩及ばなかった。」
真山仁
男49歳
10 「三・一一以後の日本の政界とその周辺を描いて(さらにアフリカにも筆を延ばして)まことにダイナミック。しかし人物の描写・設定に不足があったのではないか。」
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渡辺淳一
宮部みゆき
林真理子
浅田次郎
宮城谷昌光
桐野夏生
北方謙三
伊集院静
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選考委員
林真理子女57歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
小説家の責任 総行数98 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
葉室麟
男60歳
10 「己の美意識を貫いた武士の姿を熟練の筆で描いている。しかし主人公たちがあまりに清廉過ぎるのが、私にはやや物足りなかった。お家騒動の原因が、側室の出自というのも肩すかしをくった気分である。」
伊東潤
男51歳
21 「短篇集であるのに、各篇のレベルがまばらなのも気にかかった。特に表題作となると、登場人物が整理されておらずわかりづらい。しかし、権力者の間で綱渡りしている人々のキャラクターは大層面白かった。」「が、女性が主人公となると、急に精彩を欠くのは残念であった。」
歌野晶午
男50歳
15 「作者はここで主人公たちについて、二つのミスを犯しているような気がする。男は女の嘘を見破れないほど愚かではない。女はこれほど大きな嘘をつくほど賢くない。登場人物のキャラクターを、最後まで積み上げ完成させていくのは作者の責任だ。それをラストで手放してしなったのではないだろうか。」
恩田陸
女47歳
15 「この作品はうまく着地しなかったような気がする。たらたらと冗長に夢の話ばかり続き、読者は次第に疲労感を持ってくるはずだ。これを最後まで乗り切るには、恩田ワールドをこよなく愛する忠実な読者であることが課せられるだろうが、私はとうとうその一員になることが出来なかった。」
桜木紫乃
女46歳
22 「ふつう女性の一代小説というと、あら筋だけ追うようなものが多く、すぐに飽きてしまう。しかし桜木さんの小説は読めば読むほど深みにはまった。物語の蠱惑を味わわせてくれるのは、リアリティもさることながら、一にも二にも文章だとつくづく思った次第である。」
真山仁
男49歳
15 「今回の大震災が小説になるには、あと十年の歳月が必要だろうと考えていた私にとって、真山さんの挑戦は驚きであった。」「が、これだけの大作を読者に読ませるには、文章があまりにも荒っぽいと思う。」
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他の選考委員
渡辺淳一
宮部みゆき
阿刀田高
浅田次郎
宮城谷昌光
桐野夏生
北方謙三
伊集院静
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選考委員
浅田次郎男60歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
時宜 総行数82 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
葉室麟
男60歳
18 「これまでの作品で瑕瑾と指摘されてきた点をおよそ克服していた。その誠実と謙虚は後進の範とするべきところと考えて強く推した。また、四季のうつろいを丹念に描くことで、定められた命を感情表現に頼らずに写し取った技は秀逸であった。」
伊東潤
男51歳
13 「その豊富かつ稀少な知識には頭が下がるのだが、一方ではこれを普遍的な読物とするためには、相当の表現力が必要であろうと思った。」
歌野晶午
男50歳
10 「いかんせん一視点のまま運ぶには無理があり、もう少し工夫をすればすばらしい傑作になったであろうという憾みが残った。」
恩田陸
女47歳
15 「神の啓示としか思われぬアイデアに、熟慮する間もなく吹き飛ばされた結果の作品、とでも言おうか。人間だから仕方がないといえばそれまでだが、この作家は明らかに預言者の資質を備えている。だから試され続けるのである。」
桜木紫乃
女46歳
11 「ストーリーテリングの才を遺憾なく発揮した作品である。」「惜しむらくは、回想部分のダイナミズムに較べて、フレーム・ストーリーがやや貧弱に思えた。絵に釣り合わぬ額縁ならば、ないほうがよい。」
真山仁
男49歳
11 「時宜を得て興味の尽きぬ作品であった。ただし、文学はけっしてジャーナリズムの一部ではないから、時宜を裁量に加えることはできぬ。せめて社会的事象よりも登場人物の人間性に力点を置いて書いたなら、また違った評価もあったであろう。」
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渡辺淳一
宮部みゆき
阿刀田高
林真理子
宮城谷昌光
桐野夏生
北方謙三
伊集院静
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選考委員
宮城谷昌光男66歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
おどろき 総行数121 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
葉室麟
男60歳
29 「小説としては、風致にすぐれ、ずいぶん目くばりがよく、瑕瑾も減ったが、惜しいことに、おどろきがない。」「良く書けている、というのは、創作へのほめことばにならないときが多い。氏は、「人を愛する」という点において、デモーニッシュな面をもっており、それが作品のバランスをくずしたことがあるので、自制し、自粛したのかもしれないが、行儀のよさは魅力にはならない。むずかしいところである。」
伊東潤
男51歳
24 「――そろそろ関東に目をむけた歴史小説家があらわれてもよい。と、おもっていた私は、かれの努力を認める意味でも、この作品を推してみたい気になった。」「が、残念ながら、完成度が低い。それでも、歴史に材をとって、小説として立ち上げることがいかに大変であるかを知っているつもりの私は、伊東氏に励声を送りたい。」
歌野晶午
男50歳
9 「発展の可能性を感じた。つじつまあわせは無用である。不条理が残ったままのほうが、小説的奥ゆきが生ずるときがある。」
恩田陸
女47歳
20 「氏の過去の候補作品よりずいぶん読みやすい。しかしミステリーの合理にあてはめて読まれると、高評価は得られまいとおもった。氏が文学的気概をもって、幻想小説をいちだんと高みにおしあげると、日本の文学のジャンルに豊かさが増すにちがいない。私はつねに氏の作品に同情をもちながら、推輓者になれないでいる。」
桜木紫乃
女46歳
6 「小説というより物語である。なぜ、と問いかける発条が不足している。」
真山仁
男49歳
6 「腰高で、技をかけそこなうと、逆に読者に寄り切られる恐れがある。」
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他の選考委員
渡辺淳一
宮部みゆき
阿刀田高
林真理子
浅田次郎
桐野夏生
北方謙三
伊集院静
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選考委員
桐野夏生女60歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数107 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
葉室麟
男60歳
27 「秋谷が死を賜る理由が、高潔な人柄に似合わない出だしに強く惹かれた。だが、物語は次第にお家騒動的な、既視感に満ちた話に転換していく。」「秋谷をもっと魅力的にするには、監視役として遣わされた庄三郎の圧を高め、板挟みとなった懊悩をもっと描くべきだったと思う。」「読み手は死を避けて貰いたいと願っている。ために、秋谷の悟りが逆にリアリティを感じさせない。」
伊東潤
男51歳
14 「調略、謀略、裏切り。現代とは違う価値観に身を置き、必死に先を読もうとする男たちの顔が窺えて楽しめた。ただし、タイトルも含めて、全体に生硬で説明的ではある。変わる状況と背景を、いかに読者に知らしめるか、悩んだ結果かもしれない。」
歌野晶午
男50歳
14 「手錬れの作品だと感じる。気になったのは、主人公の平田が饒舌であることだ。」「主人公の人間像が掴めないうちに一気に破綻がやってくるので、タメがないというか、その短絡が、逆に意外ではなくなってしまう。」
恩田陸
女47歳
20 「出発点が曖昧でぼやけたまま進んでいくので、途中から様々な事象が出来し、とりとめのない夢のような様相を帯びてくる。この魅力あるテーマを作者自身がどれだけ深く考えたか、という問題かもしれない。」
桜木紫乃
女46歳
20 「リーダビリティも高いし、巧いのだけれど、女主人公の心が伝わってこない。特に、娘がいなくなった後の反応がもどかしい。」「子を奪われた母親の狂的な焦りや怒りが前面に出てこないのは、作者の女主人公に対する距離の遠さにある。あまり恣意的にストーリーを動かそうとしない方がいいのではないか。」
真山仁
男49歳
12 「震災前にほとんど書かれていたため、大震災三年後、という設定に書き直したと聞いている。しかし、現実の原発事故は深刻で簡単に収まりそうもない。そのため、リアリティが殺がれてしまった。」
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他の選考委員
渡辺淳一
宮部みゆき
阿刀田高
林真理子
浅田次郎
宮城谷昌光
北方謙三
伊集院静
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選考委員
北方謙三男64歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
順当な受賞 総行数136 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
葉室麟
男60歳
19 「順当な受賞である。この作家の作品は、無駄のなさと端正さが、いつも強く印象に残ってきた。今回は、ある境地というものを感じさせる作品であった。」「境地というものは、進化するものだろう。賞の呪縛が解けたいま、この作家がどういう変容を遂げるかは、見ものである。」
伊東潤
男51歳
8 「冒頭の二篇に惹かれた。歴史上の有名人が登場してくると、とたんに色褪せるのは、今後の課題であろう。」
歌野晶午
男50歳
7 「最後の末永のメールの意味づけによって評価は分れるのだろうが、私は才気が走りすぎたような気がして、読後、馴染めないものを抱えこんだ。」
恩田陸
女47歳
40 「イメージが次々に立ちあがってきて、それは野放図とも言えるほどであった。小説はイメージの芸術であると、私はある部分では信じていて、まさしく小説にぶつかっているという手応はあった。」「イメージの実験がここでなされたのではないか、とさえ私は感じた。ある意味、狭隘かもしれない私の直木賞観からははずれ、候補にすべきではなかったというのが正直な感想だが、刺激的な作品であった。」
桜木紫乃
女46歳
48 「物語はともかく、イメージが理不尽に走り続けるということはない。つまり、見慣れた日常性の中にあるのだ。そこに不意に、非日常のイメージが立ちあがるので、ありきたりの論評に危険を感じてしまう。」「夾雑物も多い小説だが、私は痛みに似た感覚に襲われ続けていた。日常性と非日常性が意図的に遣い分けられているのか、という問いは無意味で、これは資質であろう。」
真山仁
男49歳
7 「こういうふうに大きく拡がった話にありがちな、尻すぼみ感が残念であった。」
  「六本の候補作の中で、二本(引用者注:『夢違』と『ラブレス』)がいつまでも私の心に残り、ぞくりとする皮膚感覚と、微妙な不協和音を伝えてきて、最後まで評価に迷った。」
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他の選考委員
渡辺淳一
宮部みゆき
阿刀田高
林真理子
浅田次郎
宮城谷昌光
桐野夏生
伊集院静
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選考委員
伊集院静男61歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
修練の技 総行数102 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
葉室麟
男60歳
37 「冒頭の数頁にこの物語に不可欠な人物、時代背景、風土、臨場といったものがすべて出揃っている。それが何の気負いもなく語られている。若い作家ではこうはいかない。」「葉室氏の作品を読んでいると静かな水のほとりに立っているような錯覚にとらわれる時がある。その水面に、遠い昔の日本人が立ち動いている。かすかな気配とともに風音がし、やがてさざなみたつように物語が立ち上がってくる。修練を積んだ作家の技と言ってよかろう。」
伊東潤
男51歳
7 「文章が読み易く、物語に豊かさもあり、この作家の才気を感じた。」
歌野晶午
男50歳
7 「私はこの作家の作品を初めて読んだが、小説のセンスがいい。スジ(原文傍点)の良い作家である。」
恩田陸
女47歳
17 「フロイト以来、近代人にとって“夢”というものは正体があいまいで、その実体はまったくわかっていない。これに小説で挑んだのが恩田さんらしい。」「作品の後半に入って、謎探しになっているようで最初の命題が私にはあやふやになってしまったと感じた。」「恩田さんにしては未消化の作品に思えた。」
桜木紫乃
女46歳
22 「小説を読んでいるというより情話をせつせつと聞かされている快楽のようなものがあった。」「読んでいて作中人物の生涯を描きながらも作家の祈りのようなものにふれていた気がした。」
真山仁
男49歳
4 「小説のテーマを見据えねば物語を支える柱がないように思えた。」
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他の選考委員
渡辺淳一
宮部みゆき
阿刀田高
林真理子
浅田次郎
宮城谷昌光
桐野夏生
北方謙三
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受賞者・作品
葉室麟男60歳×各選考委員 
『蜩ノ記』
長篇 572
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
渡辺淳一
男78歳
19 「なによりも優れているところは、デッサン力がたしかで、安心して読めるところである。」「著者はこれまで、何回か賞を逸してきたようだが、今回はたしかな筆致で作品の奥行きを増し、受賞に値する作品となっている。」
宮部みゆき
女51歳
48 「深い教養がなくては書けない作品」「私は、武士という〈統べる者〉と農民という〈耕す者〉との対比・対立は、そのまま現代社会の〈情報・サービス業〉と〈製造業〉との対比、または〈政治〉と〈生活〉の対比に読み替えることができるとも思いました。踏み込んで読み過ぎているかもしれませんが、そういう読みを誘われるほど重層的な作品だったということです。」
阿刀田高
男77歳
29 「人物の設定、ストーリーの展開など、しなやかに綴られて、説得力がある。腕ききの船頭の操る舟に乗るときみたいに、読者はゆったりと身を委ねて小説を読む楽しさに没頭することができる。」「あえて望蜀の思いを述べれば、入念に創られているが、――やや地味かなあ――血湧き肉躍るような喜びのないのが残念。」
林真理子
女57歳
10 「己の美意識を貫いた武士の姿を熟練の筆で描いている。しかし主人公たちがあまりに清廉過ぎるのが、私にはやや物足りなかった。お家騒動の原因が、側室の出自というのも肩すかしをくった気分である。」
浅田次郎
男60歳
18 「これまでの作品で瑕瑾と指摘されてきた点をおよそ克服していた。その誠実と謙虚は後進の範とするべきところと考えて強く推した。また、四季のうつろいを丹念に描くことで、定められた命を感情表現に頼らずに写し取った技は秀逸であった。」
宮城谷昌光
男66歳
29 「小説としては、風致にすぐれ、ずいぶん目くばりがよく、瑕瑾も減ったが、惜しいことに、おどろきがない。」「良く書けている、というのは、創作へのほめことばにならないときが多い。氏は、「人を愛する」という点において、デモーニッシュな面をもっており、それが作品のバランスをくずしたことがあるので、自制し、自粛したのかもしれないが、行儀のよさは魅力にはならない。むずかしいところである。」
桐野夏生
女60歳
27 「秋谷が死を賜る理由が、高潔な人柄に似合わない出だしに強く惹かれた。だが、物語は次第にお家騒動的な、既視感に満ちた話に転換していく。」「秋谷をもっと魅力的にするには、監視役として遣わされた庄三郎の圧を高め、板挟みとなった懊悩をもっと描くべきだったと思う。」「読み手は死を避けて貰いたいと願っている。ために、秋谷の悟りが逆にリアリティを感じさせない。」
北方謙三
男64歳
19 「順当な受賞である。この作家の作品は、無駄のなさと端正さが、いつも強く印象に残ってきた。今回は、ある境地というものを感じさせる作品であった。」「境地というものは、進化するものだろう。賞の呪縛が解けたいま、この作家がどういう変容を遂げるかは、見ものである。」
伊集院静
男61歳
37 「冒頭の数頁にこの物語に不可欠な人物、時代背景、風土、臨場といったものがすべて出揃っている。それが何の気負いもなく語られている。若い作家ではこうはいかない。」「葉室氏の作品を読んでいると静かな水のほとりに立っているような錯覚にとらわれる時がある。その水面に、遠い昔の日本人が立ち動いている。かすかな気配とともに風音がし、やがてさざなみたつように物語が立ち上がってくる。修練を積んだ作家の技と言ってよかろう。」
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他の候補作
伊東潤
『城を噛ませた男』
歌野晶午
『春から夏、やがて冬』
恩田陸
『夢違』
桜木紫乃
『ラブレス』
真山仁
『コラプティオ』
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候補者・作品
伊東潤男51歳×各選考委員 
『城を噛ませた男』
短篇集5篇 518
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
渡辺淳一
男78歳
8 「大名ではない、中、小城主を主人公にしたところが面白く、ひきつけられる。」「しかし、いずれも思い付きの域をこえず、人間の内面に入っていないところがもの足りなかった。」
宮部みゆき
女51歳
25 「久々に登場した直球投手」「今の段階ではまだちょっと一本調子。球が揃ってきてしまうと、パターンが見えます。特に短編集では見破られ易い。」
阿刀田高
男77歳
9 「時代小説を書く確かな力量を感じた。物見の秘伝や鯨捕りの実際など、興味深い記述もあった。」
林真理子
女57歳
21 「短篇集であるのに、各篇のレベルがまばらなのも気にかかった。特に表題作となると、登場人物が整理されておらずわかりづらい。しかし、権力者の間で綱渡りしている人々のキャラクターは大層面白かった。」「が、女性が主人公となると、急に精彩を欠くのは残念であった。」
浅田次郎
男60歳
13 「その豊富かつ稀少な知識には頭が下がるのだが、一方ではこれを普遍的な読物とするためには、相当の表現力が必要であろうと思った。」
宮城谷昌光
男66歳
24 「――そろそろ関東に目をむけた歴史小説家があらわれてもよい。と、おもっていた私は、かれの努力を認める意味でも、この作品を推してみたい気になった。」「が、残念ながら、完成度が低い。それでも、歴史に材をとって、小説として立ち上げることがいかに大変であるかを知っているつもりの私は、伊東氏に励声を送りたい。」
桐野夏生
女60歳
14 「調略、謀略、裏切り。現代とは違う価値観に身を置き、必死に先を読もうとする男たちの顔が窺えて楽しめた。ただし、タイトルも含めて、全体に生硬で説明的ではある。変わる状況と背景を、いかに読者に知らしめるか、悩んだ結果かもしれない。」
北方謙三
男64歳
8 「冒頭の二篇に惹かれた。歴史上の有名人が登場してくると、とたんに色褪せるのは、今後の課題であろう。」
伊集院静
男61歳
7 「文章が読み易く、物語に豊かさもあり、この作家の才気を感じた。」
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他の候補作
葉室麟
『蜩ノ記』
歌野晶午
『春から夏、やがて冬』
恩田陸
『夢違』
桜木紫乃
『ラブレス』
真山仁
『コラプティオ』
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候補者・作品
歌野晶午男50歳×各選考委員 
『春から夏、やがて冬』
長篇 458
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
渡辺淳一
男78歳
6 「小説がつくられすぎていて、遊び過ぎである。」
宮部みゆき
女51歳
16 「本当に惜しい作品でした。主人公の平田とますみのあいだに、事件の解決(真相)など存在しない方がよかったと、私は思います。ただ、それぞれに苦しみや生き辛さを抱えた二人が寄り添って生きてゆく、あるいはどこかで袂を分かつ、その有り様を淡々と描く小説であってよかった。」
阿刀田高
男77歳
13 「滑り出しが好調で、たちまち作品の世界に引き込まれてしまったが、次第に主人公のパーソナリティに納得のできないものを感じて、さらに、――これは謎を含む推理小説であったのか――思案が錯綜してしまった。」
林真理子
女57歳
15 「作者はここで主人公たちについて、二つのミスを犯しているような気がする。男は女の嘘を見破れないほど愚かではない。女はこれほど大きな嘘をつくほど賢くない。登場人物のキャラクターを、最後まで積み上げ完成させていくのは作者の責任だ。それをラストで手放してしなったのではないだろうか。」
浅田次郎
男60歳
10 「いかんせん一視点のまま運ぶには無理があり、もう少し工夫をすればすばらしい傑作になったであろうという憾みが残った。」
宮城谷昌光
男66歳
9 「発展の可能性を感じた。つじつまあわせは無用である。不条理が残ったままのほうが、小説的奥ゆきが生ずるときがある。」
桐野夏生
女60歳
14 「手錬れの作品だと感じる。気になったのは、主人公の平田が饒舌であることだ。」「主人公の人間像が掴めないうちに一気に破綻がやってくるので、タメがないというか、その短絡が、逆に意外ではなくなってしまう。」
北方謙三
男64歳
7 「最後の末永のメールの意味づけによって評価は分れるのだろうが、私は才気が走りすぎたような気がして、読後、馴染めないものを抱えこんだ。」
伊集院静
男61歳
7 「私はこの作家の作品を初めて読んだが、小説のセンスがいい。スジ(原文傍点)の良い作家である。」
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他の候補作
葉室麟
『蜩ノ記』
伊東潤
『城を噛ませた男』
恩田陸
『夢違』
桜木紫乃
『ラブレス』
真山仁
『コラプティオ』
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候補者・作品
恩田陸女47歳×各選考委員 
『夢違』
長篇 902
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
渡辺淳一
男78歳
4 「何度か読み返したが、夢の中に入っていけず、独善的にすぎる。」
宮部みゆき
女51歳
91 「物語のなかに多くの謎を仕掛け、解読のキーもたくさん埋め込み、しかし作者からは「これが真相です」というまとまった解答は示さない。」「誰が読んでもわかり易い文章と鮮やかなイメージで、誰もが平等に、この幻視的な物語の読み解きに参加し、楽しむことができるよう用意する。これは大変なチャレンジです。私はその勇気と努力に深い敬意を覚えました。」
阿刀田高
男77歳
23 「この作家のイマジネーションはつねに大きい。」「しかしストーリーを収束させるあたりでは、――これ、どういうことなのかな――破綻があるようにも感じられ、私は悩んでしまった。そういうことを問う作品ではないのかもしれない。受賞には届かなかったが、サムシングを感じさせる作品、と私は思った。」
林真理子
女57歳
15 「この作品はうまく着地しなかったような気がする。たらたらと冗長に夢の話ばかり続き、読者は次第に疲労感を持ってくるはずだ。これを最後まで乗り切るには、恩田ワールドをこよなく愛する忠実な読者であることが課せられるだろうが、私はとうとうその一員になることが出来なかった。」
浅田次郎
男60歳
15 「神の啓示としか思われぬアイデアに、熟慮する間もなく吹き飛ばされた結果の作品、とでも言おうか。人間だから仕方がないといえばそれまでだが、この作家は明らかに預言者の資質を備えている。だから試され続けるのである。」
宮城谷昌光
男66歳
20 「氏の過去の候補作品よりずいぶん読みやすい。しかしミステリーの合理にあてはめて読まれると、高評価は得られまいとおもった。氏が文学的気概をもって、幻想小説をいちだんと高みにおしあげると、日本の文学のジャンルに豊かさが増すにちがいない。私はつねに氏の作品に同情をもちながら、推輓者になれないでいる。」
桐野夏生
女60歳
20 「出発点が曖昧でぼやけたまま進んでいくので、途中から様々な事象が出来し、とりとめのない夢のような様相を帯びてくる。この魅力あるテーマを作者自身がどれだけ深く考えたか、という問題かもしれない。」
北方謙三
男64歳
40 「イメージが次々に立ちあがってきて、それは野放図とも言えるほどであった。小説はイメージの芸術であると、私はある部分では信じていて、まさしく小説にぶつかっているという手応はあった。」「イメージの実験がここでなされたのではないか、とさえ私は感じた。ある意味、狭隘かもしれない私の直木賞観からははずれ、候補にすべきではなかったというのが正直な感想だが、刺激的な作品であった。」
伊集院静
男61歳
17 「フロイト以来、近代人にとって“夢”というものは正体があいまいで、その実体はまったくわかっていない。これに小説で挑んだのが恩田さんらしい。」「作品の後半に入って、謎探しになっているようで最初の命題が私にはあやふやになってしまったと感じた。」「恩田さんにしては未消化の作品に思えた。」
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他の候補作
葉室麟
『蜩ノ記』
伊東潤
『城を噛ませた男』
歌野晶午
『春から夏、やがて冬』
桜木紫乃
『ラブレス』
真山仁
『コラプティオ』
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候補者・作品
桜木紫乃女46歳×各選考委員 
『ラブレス』
長篇 571
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
渡辺淳一
男78歳
20 「(引用者注:受賞作の「蜩ノ記」に)次いで注目した」「しかし、読者を対象とした小説なのだから、今少し焦点を絞り、軽重を考慮して書くべきだろう。」「百合江の北海道での過酷な生きざまなど、愛とか信頼などと無縁な視点で書きたかったとしても、取捨選択し、人間の一般的な思考や願望も含めて書けば、よりたしかで、深味のあるものになったろう。」
宮部みゆき
女51歳
23 「徹夜で読み、何度も笑い、泣きました。」「どうして受賞に届かなかったのか、振り返って考えてみると不思議で仕方ありません。」「全身全霊でぶつかってくるこの物語に惚れてしまい、駆け落ちしようと決めた刹那にふと我に返り、「出会ったばかりのこの人と、このまま突っ走ってしまっていいのかしら」と急に腰が引けてしまったのよ――と説明するしかないようで、まことに申し訳ありません。」
阿刀田高
男77歳
16 「片仮名のタイトルも私には違和感があったし、過去と現在が入りまじる部分も読みにくかった。が、力わざがすごい。」「チャーミングが作品ではあったが、いくつかの疵が災いして、一歩及ばなかった。」
林真理子
女57歳
22 「ふつう女性の一代小説というと、あら筋だけ追うようなものが多く、すぐに飽きてしまう。しかし桜木さんの小説は読めば読むほど深みにはまった。物語の蠱惑を味わわせてくれるのは、リアリティもさることながら、一にも二にも文章だとつくづく思った次第である。」
浅田次郎
男60歳
11 「ストーリーテリングの才を遺憾なく発揮した作品である。」「惜しむらくは、回想部分のダイナミズムに較べて、フレーム・ストーリーがやや貧弱に思えた。絵に釣り合わぬ額縁ならば、ないほうがよい。」
宮城谷昌光
男66歳
6 「小説というより物語である。なぜ、と問いかける発条が不足している。」
桐野夏生
女60歳
20 「リーダビリティも高いし、巧いのだけれど、女主人公の心が伝わってこない。特に、娘がいなくなった後の反応がもどかしい。」「子を奪われた母親の狂的な焦りや怒りが前面に出てこないのは、作者の女主人公に対する距離の遠さにある。あまり恣意的にストーリーを動かそうとしない方がいいのではないか。」
北方謙三
男64歳
48 「物語はともかく、イメージが理不尽に走り続けるということはない。つまり、見慣れた日常性の中にあるのだ。そこに不意に、非日常のイメージが立ちあがるので、ありきたりの論評に危険を感じてしまう。」「夾雑物も多い小説だが、私は痛みに似た感覚に襲われ続けていた。日常性と非日常性が意図的に遣い分けられているのか、という問いは無意味で、これは資質であろう。」
伊集院静
男61歳
22 「小説を読んでいるというより情話をせつせつと聞かされている快楽のようなものがあった。」「読んでいて作中人物の生涯を描きながらも作家の祈りのようなものにふれていた気がした。」
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他の候補作
葉室麟
『蜩ノ記』
伊東潤
『城を噛ませた男』
歌野晶午
『春から夏、やがて冬』
恩田陸
『夢違』
真山仁
『コラプティオ』
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候補者・作品
真山仁男49歳×各選考委員 
『コラプティオ』
長篇 975
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
渡辺淳一
男78歳
5 「こういう小説があってもかまわないが、新聞や雑誌の記事に近く、人物がありきたりである。」
宮部みゆき
女51歳
0  
阿刀田高
男77歳
10 「三・一一以後の日本の政界とその周辺を描いて(さらにアフリカにも筆を延ばして)まことにダイナミック。しかし人物の描写・設定に不足があったのではないか。」
林真理子
女57歳
15 「今回の大震災が小説になるには、あと十年の歳月が必要だろうと考えていた私にとって、真山さんの挑戦は驚きであった。」「が、これだけの大作を読者に読ませるには、文章があまりにも荒っぽいと思う。」
浅田次郎
男60歳
11 「時宜を得て興味の尽きぬ作品であった。ただし、文学はけっしてジャーナリズムの一部ではないから、時宜を裁量に加えることはできぬ。せめて社会的事象よりも登場人物の人間性に力点を置いて書いたなら、また違った評価もあったであろう。」
宮城谷昌光
男66歳
6 「腰高で、技をかけそこなうと、逆に読者に寄り切られる恐れがある。」
桐野夏生
女60歳
12 「震災前にほとんど書かれていたため、大震災三年後、という設定に書き直したと聞いている。しかし、現実の原発事故は深刻で簡単に収まりそうもない。そのため、リアリティが殺がれてしまった。」
北方謙三
男64歳
7 「こういうふうに大きく拡がった話にありがちな、尻すぼみ感が残念であった。」
伊集院静
男61歳
4 「小説のテーマを見据えねば物語を支える柱がないように思えた。」
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他の候補作
葉室麟
『蜩ノ記』
伊東潤
『城を噛ませた男』
歌野晶午
『春から夏、やがて冬』
恩田陸
『夢違』
桜木紫乃
『ラブレス』
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