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平成25年/2013年上半期
(平成25年/2013年7月17日決定発表/『オール讀物』平成25年/2013年9月号選評掲載)
選考委員  阿刀田高
男78歳
伊集院静
男63歳
林真理子
女59歳
浅田次郎
男61歳
宮部みゆき
女52歳
宮城谷昌光
男68歳
渡辺淳一
男79歳
桐野夏生
女61歳
北方謙三
男65歳
選評総行数  98 82 96 100 158 98 52 111 103
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
桜木紫乃 『ホテルローヤル』
268
女48歳
47 49 43 25 14 49 14 19 28
伊東潤 『巨鯨の海』
645
男53歳
10 0 18 10 15 9 7 16 18
恩田陸 『夜の底は柔らかな幻』
1350
女48歳
7 0 10 14 24 7 0 11 9
原田マハ 『ジヴェルニーの食卓』
387
女51歳
12 0 11 15 19 12 8 14 9
湊かなえ 『望郷』
415
女40歳
6 0 10 14 19 15 0 16 10
宮内悠介 『ヨハネスブルグの天使たち』
394
男34歳
16 33 7 12 86 10 7 23 25
                 
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』平成25年/2013年9月号
1行当たりの文字数:12字


選考委員
阿刀田高男78歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
庶民へのオマージュ 総行数98 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
桜木紫乃
女48歳
47 「ゆっくり読んでみれば登場人物たちは必死に今日よりましな明日を願っている。そこにはけっしてネガティブではないサムシングがある。暗いだけの作品ではない。」「そして、この文章力。過不足なく描いて、ところどころに目を見張る鮮かな表現がある。」「廃墟となったホテルから始まって最後はそのホテルのスタートを書くのもおもしろい趣向だが、ストーリーが微妙にからんでいるようなところもあって楽しい。」
伊東潤
男53歳
10 「鯨取りの実態と風俗は示唆に富んで楽しめるが、登場人物の設定やビヘイビアが私には月並に思えた。重厚で、よい作品にちがいないが、さらに新しい視点を求めるのは望蜀の嘆なのだろうか。」
恩田陸
女48歳
7 「いわゆる恩田ワールド。土俗的なファンタジーを好むかどうかの判断であり、私は筆力を感じながらも与することができなかった。」
原田マハ
女51歳
12 「ヨーロッパの画壇と画家をテーマにしてソフィスティケートされた筆致が快い。」「私の好みではあったが、他の委員のマイナス評についても首肯すべきところがあった。」
湊かなえ
女40歳
6 「犯罪やいじめなど、いまわしい事件に関わる登場人物の設定が……心理や現実性が入念さを欠き、感動を抱くことができなかった。」
宮内悠介
男34歳
16 「とても読みづらい。」「私は読みにくさゆえに直木賞にふさわしくないと考えたが、選考会でこの作品を高く評価する声を聞き、――小説としては不足があるが、志は尊いな――と判断が少し変わった。」
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他の選考委員
伊集院静
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選考委員
伊集院静男63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
雲間から見事な光 総行数82 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
桜木紫乃
女48歳
49 「桜木紫乃さんの作品を初めて読んだのは十一、二年前の某小説誌の新人応募の中の一篇だった。」「新人賞は取れたが、問題は作品に通底する“暗さ”だった。」「桜木作品の鉛色の街は彼女の原風景のように思えて果して雲を突き破って光を手に入れられるのだろうかと思った。」「今回『ホテルローヤル』と題した映画で言えば“グランドホテル形式”の洒落た作品を一読し、私は思わず唸りそうになった。これが苦悩の創作の時間が与える“きらめき”かと思い、頭が下がった。」
伊東潤
男53歳
0  
恩田陸
女48歳
0  
原田マハ
女51歳
0  
湊かなえ
女40歳
0  
宮内悠介
男34歳
33 「小説の可能性という点で(引用者中略)推した。」「テーマへの挑戦がまず大前提にあり、民族衝突、人種差別、テロリズム、格差社会といったテーマと日本人、日本という国家がどう関っているのかを近未来という設定で挑んだ点を私は評価した。」「全体は行きつ戻りつ手探りの感はあるが、私たちが安易に目指している社会が壊れるという予兆は描けていると思った。」
  「直木賞は或る程度の実績を持つ新しい作家を対象にしているが、小説の可能性を一気に高めてくれ、つまらぬ既成概念を打ち破ってくれる人ならまったくの無名の作家でもかまわぬと思う。それほど現代社会は新しい小説を待ち望んでいるのだ。何か新しい、ときめくものが作品から強く伝わる。それが新しい作品、作家だ。」
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阿刀田高
林真理子
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宮部みゆき
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選考委員
林真理子女59歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
桜木さんの魅力 総行数96 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
桜木紫乃
女48歳
43 「「ラブレス」をさらに上まわる作品である。廃屋となったラブホテルを、逆まわしにして人間模様を描いているのであるが、それぞれの登場人物のいじましさ、せつなさ、滑稽さというのは何ともいえない。」「この小説を読んでいると、人間を描くのに古い、新しいはない、根源を描けばいいというあたり前のことに気づくのである。しかしひとつ苦言を呈すると、冒頭の短篇が他と比べると格段にレベルが低い。」
伊東潤
男53歳
18 「力わざで描いた作品だ。」「鯨たちは逃げ、挑み、懇願し、絶望して息絶えていくのであるが、それをめぐる人間の人生も緻密に書かれている。今回賞は逃したが、伊東さんの実力はゆるぎないものだと確信を持った。」
恩田陸
女48歳
10 「いつもなら恩田さんの作品には「どこかに連れていかれる」不安とときめきがあったが、この作品は読んでいるうちに次第についていけなくなってしまった。」
原田マハ
女51歳
11 「期待して読んだのであるが、前作の不思議な魅力が感じられなかった。もともとお詳しい方であるが、この作品は資料を駆使した「世界有名画家物語」の趣がある。原田さんがお書きになるなら、もっと別のものがあるだろう。」
湊かなえ
女40歳
10 「着想も面白く、売れっ子作家ならではのテンポのよさがある。しかしやや文章が幼いという印象を持った。」
宮内悠介
男34歳
7 「二度読み直したが、やはりよくわからなかった。イメージは素晴らしいが、よくこなれていない印象を持った。」
  「今回は桜木紫乃さんや伊東潤さんの二作を推そうと選考会にのぞんだ。」
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選考委員
浅田次郎男61歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「苦労小説」あれこれ 総行数100 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
桜木紫乃
女48歳
25 「誰もが反撥せずに身近に感ずる不幸の諸相を、上手に表現していた。むろん、按配がよすぎて食い足りない感じのなきにしもあらずだが、小説家としての次なるステージに立てば、まったく趣きの異なる作品を書くにちがいない。」
伊東潤
男53歳
10 「近年の水準に照らせば十分に足りる作品であった。ことに、一作ごとにありありと上達が感じられ、なおかつ本作のテーマは秀逸である。しかし、大勢の登場人物の個性という点で、受賞作(引用者注:「ホテルローヤル」)には一歩及ばなかった。」
恩田陸
女48歳
14 「冒頭からしばらくの間は、どんなに面白い話になるのだろうとときめいたが、その期待が達成できなかったのは選考委員というより、一読者としてまことに残念であった。」
原田マハ
女51歳
15 「さまざまの手法を駆使して飽きさせぬが、実はそうした造りこみにさほどの効果があるとは思えず、むしろ真正面から書いたほうがよかったのではなかろうか。」
湊かなえ
女40歳
14 「作者自身が創造を楽しみ、物語を紡ぎ出すことの歓びが、私には感じ取れなかった。もしや作者には内なる原罪主義のようなものがあって、うきうきと小説が書けぬのではなかろうか。この天性の文章には、明るい物語が似合うと思うのだが。」
宮内悠介
男34歳
12 「よほど用心しいしい読んだつもりだが、理解不能というのが本音である。もしや新世代の作品を読む力がないのか、と怖くもなったが、やはり世代にかかわらず普遍的な理解度を持たぬ作品を評価することはできなかった。」
  「客観的な不幸を主観的な苦労に変換しなければ小説にはならない。この按配が難しい。」「今回の候補作は奇しくも、六作中五作までがいわば「苦労小説の連作短篇」という、基本的な結構を共有しており、そのあたりの比較のしやすさが明暗を分けてしまったように思える。」
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他の選考委員
阿刀田高
伊集院静
林真理子
宮部みゆき
宮城谷昌光
渡辺淳一
桐野夏生
北方謙三
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選考委員
宮部みゆき女52歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
人間らしさ 総行数158 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
桜木紫乃
女48歳
14 「救済されるべき社会の構造的欠陥としての〈貧困〉ではなく、数値化することもできないけれど、かつては多くの日本人が実感し、けっして忌避してばかりはいなかった生活苦というもの。『ホテルローヤル』は、それを描いて余すところのない秀作でした。」
伊東潤
男53歳
15 「正直、これまでの(引用者注:伊東潤の)作品が好きだった私にはかなり勝手が違ったのですが、自然の力に呑まれてゆく人間の無力さが前面に出てくるエピソードでは、いつもの伊東節が唸っていて嬉しくなりました。」
恩田陸
女48歳
24 「現実世界の制約を離れ、SF的・ファンタジー的な趣向の作品を作りあげるとき、本筋に入る前の段取りくさい世界設定や、人物のリアリティを出すため(だけ)に必要なディテール描写(引用者中略)この〈お約束〉に挑んだ野心作でした。そして残念ながら今回は、お約束には相応の理由があるということを証明する結果になってしまったようです。」
原田マハ
女51歳
19 「(引用者注:「望郷」とともに)敢えて高速サーブを打たず、スピードを抑えたセカンドサーブできちっとポイントをとったという点で、共通するものを感じました。でも私は、やっぱりお二人には、受け手である私たち読者がベースラインから一歩も動けず、惚れ惚れと見送るしかないようなファーストサーブでエースをとっていただきたいと思います。」
湊かなえ
女40歳
19 「(引用者注:「ジヴェルニーの食卓」とともに)敢えて高速サーブを打たず、スピードを抑えたセカンドサーブできちっとポイントをとったという点で、共通するものを感じました。でも私は、やっぱりお二人には、受け手である私たち読者がベースラインから一歩も動けず、惚れ惚れと見送るしかないようなファーストサーブでエースをとっていただきたいと思います。」
宮内悠介
男34歳
86 「DX9は、楽器として流通させるために〈歌う〉機能を持たされ、少女の外見をし、甘ったるい声で舌っ足らずにしゃべる量産型のロボットです。」「人間が神に問いかけるように、DX9が人間に、「かほどの試練を与えるならば、なぜ我らを創り賜うたか」と問いかけてきても、何の不思議もありません。」「その問いへの答えを、私は見出せませんでした。この作品は、答えを求めて読むものではない。「我々は何者で、どこへ行こうとしているのか」を考えるためにあるのです。直木賞にこういう受賞作があってもいい――むしろあるべきだと思いましたので、強く支持しました。」
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他の選考委員
阿刀田高
伊集院静
林真理子
浅田次郎
宮城谷昌光
渡辺淳一
桐野夏生
北方謙三
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選考委員
宮城谷昌光男68歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
文章力 総行数98 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
桜木紫乃
女48歳
49 「文章の技法面だけでいえば、他の候補作品は桜木氏のそれにとても及ばない。ゆえに、桜木氏の作品が最上で、受賞作品としてよい、とおもわぬでもなかった。が、小説とはやっかいなもので、文章がすべてではない。桜木氏はすぐれた料理人のようなもので、どこにでもある材料で旨い料理をつくりあげてしまう。」「他の候補作品は素材が厳選されて(引用者中略)他の作品に流用や応用の効かないものである。じつは小説とはそうあるべきで、(引用者中略)そうでなければ、独特さがない、ということになる。」
伊東潤
男53歳
9 「(引用者注:「望郷」とともに)自分のなかで評価が浮沈した。」「伊東氏の作品の独特さは、かつても認め、今回も認めている。さらに、その取材力には脱帽する。」
恩田陸
女48歳
7 「(引用者注:「ヨハネスブルグの天使たち」とともに)ひとりよがりの印象がつよい。」
原田マハ
女51歳
12 「この作品には否定がない、」「小説は巨大な否定の上にある、というのが私の考えかたなので、肯定の連続を小説とは認めがたい。あえていえば、これは「話」であって、小説ではない。むろん私の管見を笑いとばしてくれてもかまわない。」
湊かなえ
女40歳
15 「(引用者注:「巨鯨の海」とともに)自分のなかで評価が浮沈した。」「湊氏の作品にある短絡は、いかにも作品世界を狭隘にしている。他の作品を凌駕するほどの迫力ももっていない。しかしこの人には倫理的な温かみのある信念があり、それにゆらぎがなければ、やがて多くの人の心を打つ規模の大きな作品が書けるのではないか。」
宮内悠介
男34歳
10 「(引用者注:「夜の底は柔らかな幻」とともに)ひとりよがりの印象がつよい。」「可視と不可視をもっと峻烈に描きわける必要があると感じた。」
  「小説の基本が文章にある、という考えは、昔も今も私のなかでは変わらない。」
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他の選考委員
阿刀田高
伊集院静
林真理子
浅田次郎
宮部みゆき
渡辺淳一
桐野夏生
北方謙三
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選考委員
渡辺淳一男79歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
現代への切り込みを 総行数52 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
桜木紫乃
女48歳
14 「わたしは、この作品に投じた」「状況設定が巧みなうえに、そこでくり広げられる男女の姿が、それなりに存在感があり、読ませる。」「さらに文章が安定していて、大きく乱れず、安心して読むことができた。」
伊東潤
男53歳
7 「(引用者注:「ジヴェルニーの食卓」「ヨハネスブルグの天使たち」などとともに)それなりに目を引く作品」「一篇の小説としての安定感や説得力ではいささかもの足りないというのが、正直な実感であった。」
恩田陸
女48歳
0  
原田マハ
女51歳
8 「(引用者注:「巨鯨の海」「ヨハネスブルグの天使たち」などとともに)それなりに目を引く作品」「一篇の小説としての安定感や説得力ではいささかもの足りないというのが、正直な実感であった。」
湊かなえ
女40歳
0  
宮内悠介
男34歳
7 「(引用者注:「巨鯨の海」「ジヴェルニーの食卓」などとともに)それなりに目を引く作品」「一篇の小説としての安定感や説得力ではいささかもの足りないというのが、正直な実感であった。」
  「この頃は、作家自身の内面に秘めた、内なる問題に突っ込んだ作品が見られないのは、なぜなのだろうか。」「身近な親子関係から夫婦関係。そして男女の問題。さらに高齢者介護から孤独死の問題(引用者中略)これら、身近で、もっとも切実な問題に、真っ向から切り込んだ作品がなかったのは、いかにも残念で、もの足りなかった。」
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他の選考委員
阿刀田高
伊集院静
林真理子
浅田次郎
宮部みゆき
宮城谷昌光
桐野夏生
北方謙三
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選考委員
桐野夏生女61歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数111 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
桜木紫乃
女48歳
19 「安定した筆力と抜群の技術で、(引用者中略)ずば抜けていた。」「とりわけ、「シャッターチャンス」と「本日開店」が優れていると思った。若干気になったのは、うま過ぎること。よく滑って引っかかりがない。」
伊東潤
男53歳
16 「よく調べられているし、話の運びがうまい。ただ、「旅刃刺の仁吉」のような成長物語や、「恨み鯨」のような人情噺より、大背美流れに材を取った「弥惣平の鐘」が心を打つのは、作られた話ではないからだろうか。圧倒的な自然の力に負ける人間たちを描くことで、逆に鯨取りの仕事の厳しさや人間の恐怖、ひよわな姿が浮かび上がって切ない。」
恩田陸
女48歳
11 「いきなり異世界への扉が開いて、ざわざわするようなディテールで引っ張られそうな気配があった。しかし、「動力」不足で失速した感がある。面白いテーマに行き着きそうだっただけに残念だ。」
原田マハ
女51歳
14 「巨匠となった後の画家の「幸福」な小説として読んだ。しかしながら、あまりに「幸福」過ぎて、芸術家の魂が見えてこないことに苛立ちがある。」
湊かなえ
女40歳
16 「小さな島の話だ。その息苦しい空間で起きる様々な出来事はリアリティがある。」「が、どの短編も似たような印象になるのは、新しい「感情」を発見していないからではないだろうか。同じような話でも、人間の気持ちはそれぞれ異なる。そのあたりがもう少し書き分けられていると面白くなる。」
宮内悠介
男34歳
23 「面白い読書というのは、作者によって読者が試される経験でもあるのだ。この候補作は連作短編集と銘打ってはいるが、DX9というロボットを巡る長い旅の物語でもある。」「世界の移り変わりを「今」見ている者として、「今」この世に生きている者として、この作品は一番難しい仕事に挑戦している。」
  「テーマ性の強い連作短編集と読み比べれば、どうしても長編小説は不利になる。長編小説は、読み終わるまでテーマは明らかにならないし、そのための「動力」は短編とは違う種類のものだからである。」
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他の選考委員
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宮部みゆき
宮城谷昌光
渡辺淳一
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選考委員
北方謙三男65歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
闇が発する光 総行数103 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
桜木紫乃
女48歳
28 「オーソドックスな作品である。それは古さに繋がると言えば言えるが、すぐれた小説は、古ささえも新しいというのが、私の持論である。」「微妙だが確かにあると感じられる闇が発する光を、ほのかなイメージとして描きあげた力量を、私は評価する。」「私が最も力を入れて推した一作であるが、受賞の力量は、すでに前作で充分に示していたとも思う。」
伊東潤
男53歳
18 「作者がひと皮剥けたな、と感じさせる作品だった。対象にむかった時の、腰の据え方が実にどっしりとしている。」「私は特に、人間の力ではどうにもならない、海の描写が秀逸であると思った。潮流や風、雨や波の描写は、眼に見えるような迫力がある。私は積極的に推したが、わずかに届かず、次作を期待するということになった。三回目の候補だが、一作一作力をつけ、あと一歩というところまで来ていると思う。」
恩田陸
女48歳
9 「細部の吸引力は持っているものの、全体としては冗漫な作品になっている。現実と非現実、日常と非日常の、識閾の危うい妖しさに私は魅かれていたが、今回はそれが姿を消していて残念だった。」
原田マハ
女51歳
9 「創造者にいやでも伴う、狂気の描写に欠ける。ありふれた伝記小説を読んでいて、不意にその色彩が変化して、思いがけない新鮮さに打たれるという、小説的迫力は、最後までなかった。」
湊かなえ
女40歳
10 「深層があまり感じられない作品だった。計算された小説の面白さはあるが、それだけという感じも拭えない。」「計算外に飛び出したところで、人は生きるというのは、間違いなくあると思うのだが。」
宮内悠介
男34歳
25 「読者の対象を自ら狭くしている、という印象があった。」「ただ精読していると、そこここに鮮やかな情景が立ちあがり、的確な文章でそれを描き出していると感じた。」「結論を言えば、私はこれをハードボイルドふうの小説として読み、その点では受賞に同意してもいいという気持になった。この文章で本格ハードボイルドを読みたいというのは、註文というわけでなく、読後に私が抱いた願望である。」
  「五本が短篇連作で、一本が長篇だった。短篇の醍醐味を、存分に愉しめる選考となった。」
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他の選考委員
阿刀田高
伊集院静
林真理子
浅田次郎
宮部みゆき
宮城谷昌光
渡辺淳一
桐野夏生
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受賞者・作品
桜木紫乃女48歳×各選考委員 
『ホテルローヤル』
連作7篇 268
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男78歳
47 「ゆっくり読んでみれば登場人物たちは必死に今日よりましな明日を願っている。そこにはけっしてネガティブではないサムシングがある。暗いだけの作品ではない。」「そして、この文章力。過不足なく描いて、ところどころに目を見張る鮮かな表現がある。」「廃墟となったホテルから始まって最後はそのホテルのスタートを書くのもおもしろい趣向だが、ストーリーが微妙にからんでいるようなところもあって楽しい。」
伊集院静
男63歳
49 「桜木紫乃さんの作品を初めて読んだのは十一、二年前の某小説誌の新人応募の中の一篇だった。」「新人賞は取れたが、問題は作品に通底する“暗さ”だった。」「桜木作品の鉛色の街は彼女の原風景のように思えて果して雲を突き破って光を手に入れられるのだろうかと思った。」「今回『ホテルローヤル』と題した映画で言えば“グランドホテル形式”の洒落た作品を一読し、私は思わず唸りそうになった。これが苦悩の創作の時間が与える“きらめき”かと思い、頭が下がった。」
林真理子
女59歳
43 「「ラブレス」をさらに上まわる作品である。廃屋となったラブホテルを、逆まわしにして人間模様を描いているのであるが、それぞれの登場人物のいじましさ、せつなさ、滑稽さというのは何ともいえない。」「この小説を読んでいると、人間を描くのに古い、新しいはない、根源を描けばいいというあたり前のことに気づくのである。しかしひとつ苦言を呈すると、冒頭の短篇が他と比べると格段にレベルが低い。」
浅田次郎
男61歳
25 「誰もが反撥せずに身近に感ずる不幸の諸相を、上手に表現していた。むろん、按配がよすぎて食い足りない感じのなきにしもあらずだが、小説家としての次なるステージに立てば、まったく趣きの異なる作品を書くにちがいない。」
宮部みゆき
女52歳
14 「救済されるべき社会の構造的欠陥としての〈貧困〉ではなく、数値化することもできないけれど、かつては多くの日本人が実感し、けっして忌避してばかりはいなかった生活苦というもの。『ホテルローヤル』は、それを描いて余すところのない秀作でした。」
宮城谷昌光
男68歳
49 「文章の技法面だけでいえば、他の候補作品は桜木氏のそれにとても及ばない。ゆえに、桜木氏の作品が最上で、受賞作品としてよい、とおもわぬでもなかった。が、小説とはやっかいなもので、文章がすべてではない。桜木氏はすぐれた料理人のようなもので、どこにでもある材料で旨い料理をつくりあげてしまう。」「他の候補作品は素材が厳選されて(引用者中略)他の作品に流用や応用の効かないものである。じつは小説とはそうあるべきで、(引用者中略)そうでなければ、独特さがない、ということになる。」
渡辺淳一
男79歳
14 「わたしは、この作品に投じた」「状況設定が巧みなうえに、そこでくり広げられる男女の姿が、それなりに存在感があり、読ませる。」「さらに文章が安定していて、大きく乱れず、安心して読むことができた。」
桐野夏生
女61歳
19 「安定した筆力と抜群の技術で、(引用者中略)ずば抜けていた。」「とりわけ、「シャッターチャンス」と「本日開店」が優れていると思った。若干気になったのは、うま過ぎること。よく滑って引っかかりがない。」
北方謙三
男65歳
28 「オーソドックスな作品である。それは古さに繋がると言えば言えるが、すぐれた小説は、古ささえも新しいというのが、私の持論である。」「微妙だが確かにあると感じられる闇が発する光を、ほのかなイメージとして描きあげた力量を、私は評価する。」「私が最も力を入れて推した一作であるが、受賞の力量は、すでに前作で充分に示していたとも思う。」
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他の候補作
伊東潤
『巨鯨の海』
恩田陸
『夜の底は柔らかな幻』
原田マハ
『ジヴェルニーの食卓』
湊かなえ
『望郷』
宮内悠介
『ヨハネスブルグの天使たち』
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候補者・作品
伊東潤男53歳×各選考委員 
『巨鯨の海』
連作6篇 645
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男78歳
10 「鯨取りの実態と風俗は示唆に富んで楽しめるが、登場人物の設定やビヘイビアが私には月並に思えた。重厚で、よい作品にちがいないが、さらに新しい視点を求めるのは望蜀の嘆なのだろうか。」
伊集院静
男63歳
0  
林真理子
女59歳
18 「力わざで描いた作品だ。」「鯨たちは逃げ、挑み、懇願し、絶望して息絶えていくのであるが、それをめぐる人間の人生も緻密に書かれている。今回賞は逃したが、伊東さんの実力はゆるぎないものだと確信を持った。」
浅田次郎
男61歳
10 「近年の水準に照らせば十分に足りる作品であった。ことに、一作ごとにありありと上達が感じられ、なおかつ本作のテーマは秀逸である。しかし、大勢の登場人物の個性という点で、受賞作(引用者注:「ホテルローヤル」)には一歩及ばなかった。」
宮部みゆき
女52歳
15 「正直、これまでの(引用者注:伊東潤の)作品が好きだった私にはかなり勝手が違ったのですが、自然の力に呑まれてゆく人間の無力さが前面に出てくるエピソードでは、いつもの伊東節が唸っていて嬉しくなりました。」
宮城谷昌光
男68歳
9 「(引用者注:「望郷」とともに)自分のなかで評価が浮沈した。」「伊東氏の作品の独特さは、かつても認め、今回も認めている。さらに、その取材力には脱帽する。」
渡辺淳一
男79歳
7 「(引用者注:「ジヴェルニーの食卓」「ヨハネスブルグの天使たち」などとともに)それなりに目を引く作品」「一篇の小説としての安定感や説得力ではいささかもの足りないというのが、正直な実感であった。」
桐野夏生
女61歳
16 「よく調べられているし、話の運びがうまい。ただ、「旅刃刺の仁吉」のような成長物語や、「恨み鯨」のような人情噺より、大背美流れに材を取った「弥惣平の鐘」が心を打つのは、作られた話ではないからだろうか。圧倒的な自然の力に負ける人間たちを描くことで、逆に鯨取りの仕事の厳しさや人間の恐怖、ひよわな姿が浮かび上がって切ない。」
北方謙三
男65歳
18 「作者がひと皮剥けたな、と感じさせる作品だった。対象にむかった時の、腰の据え方が実にどっしりとしている。」「私は特に、人間の力ではどうにもならない、海の描写が秀逸であると思った。潮流や風、雨や波の描写は、眼に見えるような迫力がある。私は積極的に推したが、わずかに届かず、次作を期待するということになった。三回目の候補だが、一作一作力をつけ、あと一歩というところまで来ていると思う。」
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他の候補作
桜木紫乃
『ホテルローヤル』
恩田陸
『夜の底は柔らかな幻』
原田マハ
『ジヴェルニーの食卓』
湊かなえ
『望郷』
宮内悠介
『ヨハネスブルグの天使たち』
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候補者・作品
恩田陸女48歳×各選考委員 
『夜の底は柔らかな幻』
長篇 1350
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男78歳
7 「いわゆる恩田ワールド。土俗的なファンタジーを好むかどうかの判断であり、私は筆力を感じながらも与することができなかった。」
伊集院静
男63歳
0  
林真理子
女59歳
10 「いつもなら恩田さんの作品には「どこかに連れていかれる」不安とときめきがあったが、この作品は読んでいるうちに次第についていけなくなってしまった。」
浅田次郎
男61歳
14 「冒頭からしばらくの間は、どんなに面白い話になるのだろうとときめいたが、その期待が達成できなかったのは選考委員というより、一読者としてまことに残念であった。」
宮部みゆき
女52歳
24 「現実世界の制約を離れ、SF的・ファンタジー的な趣向の作品を作りあげるとき、本筋に入る前の段取りくさい世界設定や、人物のリアリティを出すため(だけ)に必要なディテール描写(引用者中略)この〈お約束〉に挑んだ野心作でした。そして残念ながら今回は、お約束には相応の理由があるということを証明する結果になってしまったようです。」
宮城谷昌光
男68歳
7 「(引用者注:「ヨハネスブルグの天使たち」とともに)ひとりよがりの印象がつよい。」
渡辺淳一
男79歳
0  
桐野夏生
女61歳
11 「いきなり異世界への扉が開いて、ざわざわするようなディテールで引っ張られそうな気配があった。しかし、「動力」不足で失速した感がある。面白いテーマに行き着きそうだっただけに残念だ。」
北方謙三
男65歳
9 「細部の吸引力は持っているものの、全体としては冗漫な作品になっている。現実と非現実、日常と非日常の、識閾の危うい妖しさに私は魅かれていたが、今回はそれが姿を消していて残念だった。」
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他の候補作
桜木紫乃
『ホテルローヤル』
伊東潤
『巨鯨の海』
原田マハ
『ジヴェルニーの食卓』
湊かなえ
『望郷』
宮内悠介
『ヨハネスブルグの天使たち』
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候補者・作品
原田マハ女51歳×各選考委員 
『ジヴェルニーの食卓』
短篇集4篇 387
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男78歳
12 「ヨーロッパの画壇と画家をテーマにしてソフィスティケートされた筆致が快い。」「私の好みではあったが、他の委員のマイナス評についても首肯すべきところがあった。」
伊集院静
男63歳
0  
林真理子
女59歳
11 「期待して読んだのであるが、前作の不思議な魅力が感じられなかった。もともとお詳しい方であるが、この作品は資料を駆使した「世界有名画家物語」の趣がある。原田さんがお書きになるなら、もっと別のものがあるだろう。」
浅田次郎
男61歳
15 「さまざまの手法を駆使して飽きさせぬが、実はそうした造りこみにさほどの効果があるとは思えず、むしろ真正面から書いたほうがよかったのではなかろうか。」
宮部みゆき
女52歳
19 「(引用者注:「望郷」とともに)敢えて高速サーブを打たず、スピードを抑えたセカンドサーブできちっとポイントをとったという点で、共通するものを感じました。でも私は、やっぱりお二人には、受け手である私たち読者がベースラインから一歩も動けず、惚れ惚れと見送るしかないようなファーストサーブでエースをとっていただきたいと思います。」
宮城谷昌光
男68歳
12 「この作品には否定がない、」「小説は巨大な否定の上にある、というのが私の考えかたなので、肯定の連続を小説とは認めがたい。あえていえば、これは「話」であって、小説ではない。むろん私の管見を笑いとばしてくれてもかまわない。」
渡辺淳一
男79歳
8 「(引用者注:「巨鯨の海」「ヨハネスブルグの天使たち」などとともに)それなりに目を引く作品」「一篇の小説としての安定感や説得力ではいささかもの足りないというのが、正直な実感であった。」
桐野夏生
女61歳
14 「巨匠となった後の画家の「幸福」な小説として読んだ。しかしながら、あまりに「幸福」過ぎて、芸術家の魂が見えてこないことに苛立ちがある。」
北方謙三
男65歳
9 「創造者にいやでも伴う、狂気の描写に欠ける。ありふれた伝記小説を読んでいて、不意にその色彩が変化して、思いがけない新鮮さに打たれるという、小説的迫力は、最後までなかった。」
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他の候補作
桜木紫乃
『ホテルローヤル』
伊東潤
『巨鯨の海』
恩田陸
『夜の底は柔らかな幻』
湊かなえ
『望郷』
宮内悠介
『ヨハネスブルグの天使たち』
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候補者・作品
湊かなえ女40歳×各選考委員 
『望郷』
連作6篇 415
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男78歳
6 「犯罪やいじめなど、いまわしい事件に関わる登場人物の設定が……心理や現実性が入念さを欠き、感動を抱くことができなかった。」
伊集院静
男63歳
0  
林真理子
女59歳
10 「着想も面白く、売れっ子作家ならではのテンポのよさがある。しかしやや文章が幼いという印象を持った。」
浅田次郎
男61歳
14 「作者自身が創造を楽しみ、物語を紡ぎ出すことの歓びが、私には感じ取れなかった。もしや作者には内なる原罪主義のようなものがあって、うきうきと小説が書けぬのではなかろうか。この天性の文章には、明るい物語が似合うと思うのだが。」
宮部みゆき
女52歳
19 「(引用者注:「ジヴェルニーの食卓」とともに)敢えて高速サーブを打たず、スピードを抑えたセカンドサーブできちっとポイントをとったという点で、共通するものを感じました。でも私は、やっぱりお二人には、受け手である私たち読者がベースラインから一歩も動けず、惚れ惚れと見送るしかないようなファーストサーブでエースをとっていただきたいと思います。」
宮城谷昌光
男68歳
15 「(引用者注:「巨鯨の海」とともに)自分のなかで評価が浮沈した。」「湊氏の作品にある短絡は、いかにも作品世界を狭隘にしている。他の作品を凌駕するほどの迫力ももっていない。しかしこの人には倫理的な温かみのある信念があり、それにゆらぎがなければ、やがて多くの人の心を打つ規模の大きな作品が書けるのではないか。」
渡辺淳一
男79歳
0  
桐野夏生
女61歳
16 「小さな島の話だ。その息苦しい空間で起きる様々な出来事はリアリティがある。」「が、どの短編も似たような印象になるのは、新しい「感情」を発見していないからではないだろうか。同じような話でも、人間の気持ちはそれぞれ異なる。そのあたりがもう少し書き分けられていると面白くなる。」
北方謙三
男65歳
10 「深層があまり感じられない作品だった。計算された小説の面白さはあるが、それだけという感じも拭えない。」「計算外に飛び出したところで、人は生きるというのは、間違いなくあると思うのだが。」
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他の候補作
桜木紫乃
『ホテルローヤル』
伊東潤
『巨鯨の海』
恩田陸
『夜の底は柔らかな幻』
原田マハ
『ジヴェルニーの食卓』
宮内悠介
『ヨハネスブルグの天使たち』
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候補者・作品
宮内悠介男34歳×各選考委員 
『ヨハネスブルグの天使たち』
連作5篇 394
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男78歳
16 「とても読みづらい。」「私は読みにくさゆえに直木賞にふさわしくないと考えたが、選考会でこの作品を高く評価する声を聞き、――小説としては不足があるが、志は尊いな――と判断が少し変わった。」
伊集院静
男63歳
33 「小説の可能性という点で(引用者中略)推した。」「テーマへの挑戦がまず大前提にあり、民族衝突、人種差別、テロリズム、格差社会といったテーマと日本人、日本という国家がどう関っているのかを近未来という設定で挑んだ点を私は評価した。」「全体は行きつ戻りつ手探りの感はあるが、私たちが安易に目指している社会が壊れるという予兆は描けていると思った。」
林真理子
女59歳
7 「二度読み直したが、やはりよくわからなかった。イメージは素晴らしいが、よくこなれていない印象を持った。」
浅田次郎
男61歳
12 「よほど用心しいしい読んだつもりだが、理解不能というのが本音である。もしや新世代の作品を読む力がないのか、と怖くもなったが、やはり世代にかかわらず普遍的な理解度を持たぬ作品を評価することはできなかった。」
宮部みゆき
女52歳
86 「DX9は、楽器として流通させるために〈歌う〉機能を持たされ、少女の外見をし、甘ったるい声で舌っ足らずにしゃべる量産型のロボットです。」「人間が神に問いかけるように、DX9が人間に、「かほどの試練を与えるならば、なぜ我らを創り賜うたか」と問いかけてきても、何の不思議もありません。」「その問いへの答えを、私は見出せませんでした。この作品は、答えを求めて読むものではない。「我々は何者で、どこへ行こうとしているのか」を考えるためにあるのです。直木賞にこういう受賞作があってもいい――むしろあるべきだと思いましたので、強く支持しました。」
宮城谷昌光
男68歳
10 「(引用者注:「夜の底は柔らかな幻」とともに)ひとりよがりの印象がつよい。」「可視と不可視をもっと峻烈に描きわける必要があると感じた。」
渡辺淳一
男79歳
7 「(引用者注:「巨鯨の海」「ジヴェルニーの食卓」などとともに)それなりに目を引く作品」「一篇の小説としての安定感や説得力ではいささかもの足りないというのが、正直な実感であった。」
桐野夏生
女61歳
23 「面白い読書というのは、作者によって読者が試される経験でもあるのだ。この候補作は連作短編集と銘打ってはいるが、DX9というロボットを巡る長い旅の物語でもある。」「世界の移り変わりを「今」見ている者として、「今」この世に生きている者として、この作品は一番難しい仕事に挑戦している。」
北方謙三
男65歳
25 「読者の対象を自ら狭くしている、という印象があった。」「ただ精読していると、そこここに鮮やかな情景が立ちあがり、的確な文章でそれを描き出していると感じた。」「結論を言えば、私はこれをハードボイルドふうの小説として読み、その点では受賞に同意してもいいという気持になった。この文章で本格ハードボイルドを読みたいというのは、註文というわけでなく、読後に私が抱いた願望である。」
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他の候補作
桜木紫乃
『ホテルローヤル』
伊東潤
『巨鯨の海』
恩田陸
『夜の底は柔らかな幻』
原田マハ
『ジヴェルニーの食卓』
湊かなえ
『望郷』
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