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平成27年/2015年上半期
(平成27年/2015年7月16日決定発表/『オール讀物』平成27年/2015年9月号選評掲載)
選考委員  林真理子
女61歳
伊集院静
男65歳
高村薫
女62歳
東野圭吾
男57歳
北方謙三
男67歳
桐野夏生
女63歳
宮城谷昌光
男70歳
浅田次郎
男63歳
宮部みゆき
女54歳
選評総行数  97 107 102 156 102 99 98 99 129
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
東山彰良 『流』
734
男46歳
26 38 18 30 18 17 20 28 29
門井慶喜 『東京帝大叡古教授』
756
男43歳
0 10 12 22 12 11 5 19 14
澤田瞳子 『若冲』
589
女37歳
13 16 14 27 13 21 29 13 35
西川美和 『永い言い訳』
509
女41歳
13 12 13 28 14 16 5 10 18
馳星周 『アンタッチャブル』
1072
男50歳
17 15 12 25 25 15 4 10 17
柚木麻子 『ナイルパーチの女子会』
624
女33歳
28 17 14 24 15 19 40 19 16
                 
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』平成27年/2015年9月号
1行当たりの文字数:12字


選考委員
林真理子女61歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
圧倒的な「流」の魅力 総行数97 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
東山彰良
男46歳
26 「スケールがありながら、文章がとてもいきとどいている。少年時代の方のユーモアあるホラ話がたまらない。これほどエンターテイメント“どまん中”の小説は久しぶりで、本当に楽しませてもらった。」「選考委員満場一致の受賞となった。」
門井慶喜
男43歳
0  
澤田瞳子
女37歳
13 「どうも小説の世界にのめり込めない。若冲があまりにも普通の人過ぎる。」「最後まで主人公に魅力や共感を持てなかったのである。」
西川美和
女41歳
13 「映像出身の作家によく見られる、会話の過剰さやボキボキとした感じもなかった。しかしこの砂糖菓子のような味わいが、(引用者注:受賞作の)「流」の強烈さの前ではまたたくまに溶けてしまった。」
馳星周
男50歳
17 「意図がよくわからない。」「途中で“もしや”と思わせてやはり裏切る。これを“どんでん返し”とは到底思えなかった。馳さんほどの作家だ。何か凄い仕掛けがあるのではと、何度も考えたがわからなかった。」
柚木麻子
女33歳
28 「文章や、構成力に格段の進歩があり、以前は感じた“幼なさ”が完璧に消えている。」「「エリート狙い」の派遣社員の描き方が、どうにもステレオタイプだ。」「主人公の女性に女友だちがいないというのも不自然。」「リアリティがないというのは、ミもフタもない感想であるが、無理やりつくり上げた物語という思いは最後まで拭えなかった。」
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他の選考委員
伊集院静
高村薫
東野圭吾
北方謙三
桐野夏生
宮城谷昌光
浅田次郎
宮部みゆき
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選考委員
伊集院静男65歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
天性の語り部 総行数107 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
東山彰良
男46歳
38 「嘗て物語は語り部のものだった。その巧みな語り口によって伝承され生き続けた。『流』の声は熱く、豊かな声質であった。或る時は叫び、或る時は囁き、或る時は沈黙さえしていても常に耳の底に作者の声がしていた。」「日本人にとって歴史上も大きな関りがある国の物語に文学が明確に見えた点も嬉しかった。」
門井慶喜
男43歳
10 「文節、文章の繋ぎ方、物語の進行がユニークで新しい試みに期待して読んだが、この章だけは、この人物だけは描きたかったという作者の胆が私には見えなかった。」
澤田瞳子
女37歳
16 「亡妻への想いが若冲の創造力の源なら、その想いの根底にあったものを描いて欲しかった。妻の弟の弁蔵が贋作絵師に至る歳月、描写ももう少し納得させてもらいたい。」
西川美和
女41歳
12 「作者が用意した設定に登場人物の感情が追いついていないもどかしさを感じた。人間の業、性が設定を追い越すような、或る種の“こわれ、くずれ”のようなものが必要なのではなかろうか。」
馳星周
男50歳
15 「これまでの氏の作品とは“悪”の様相を大胆に変容させた意欲作だった。ユーモアさえ感じた。」「氏の実績と実力は受賞にかなうと思ったが、受賞作(引用者注:『流』)のインパクトに押し切られた。」
柚木麻子
女33歳
17 「作品の導入部は作者の非凡な才能に引き込まれ興味深く読み進めた。ところが物語の中盤、栄利子が窮地に立たされたあたりから人物の個性が平板になり、新鮮なものが失せた。」
  「一度目の投票で選考委員の全員が支持するという作品があらわれた。どこからともなく吐息が零れた。これほどの支持とは、という各委員の感慨が零れたのだと思った。」
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他の選考委員
林真理子
高村薫
東野圭吾
北方謙三
桐野夏生
宮城谷昌光
浅田次郎
宮部みゆき
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選考委員
高村薫女62歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数102 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
東山彰良
男46歳
18 「中国語圏の身体感覚と台湾の鮮烈な生活風景が目に浮かぶようで、小説を読む幸福を久々に味わった。日中戦争に翻弄された歴史や、祖父が殺されるという家族の事件などがどれも陰惨すぎず、重すぎず、軽すぎない物語として機能しているのは、作者が主人公を十七歳の少年に設定したことから来ているが、これこそ小説家の直観的なバランス感覚である。」
門井慶喜
男43歳
12 「歴史の舞台の大きさに比べて、芝居の台本も役者も学芸会のようで、バランスが悪い。トリックもトリックの体をなしておらず、探偵役も魅力を欠く。」
澤田瞳子
女37歳
14 「そばにいた女性の眼は若冲の人生を捉えることはできても、肝心の画業自体に迫るには限界がある。」
西川美和
女41歳
13 「ここに描かれた小説家の「ぼく」をはじめ、登場人物たちはみな作者の美意識や気分のために造形された人工物の皮相さで、誰ひとり生身の肉体をもって人生を生きていない。」
馳星周
男50歳
12 「残念ながら公安と刑事警察、エリートと落ちこぼれ、組織と個人といった新味を欠く道具立てのまま、筋立てのみをコメディにした安易さが、ゲームの面白さを上回ってしまった。」
柚木麻子
女33歳
14 「極端なデフォルメのスイッチが、自身の心理状態と区別できないところで入るのだとしたら、この作者にバランス感覚を求めても詮ないが、この過激さ、エキセントリックさを強みにするのも手かもしれない。」
  「小説にはさまざまなバランスが働いている。地の文と会話文。起承転結の配分。表現の軽さと重さ。シリアスとユーモア。登場人物たちの出し入れ。」「小説における各種のバランス感覚は、作家が作家たる所以でもあると思う。」
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他の選考委員
林真理子
伊集院静
東野圭吾
北方謙三
桐野夏生
宮城谷昌光
浅田次郎
宮部みゆき
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選考委員
東野圭吾男57歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
いきなり満票 総行数156 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
東山彰良
男46歳
30 「二人の委員が、自分が選考に関わって以来の最高作だ、と絶賛した。」「たしかに素晴らしい読書体験だった。治安や秩序が不安定な土地を舞台にした青春小説は、ダイナミックで破天荒で爽快で、作中に登場するファイヤーバードに乗っているかのような疾走感があった。」
門井慶喜
男43歳
22 「天才教授が次々に謎を解く連作型のミステリかと思ったが、どうやらそうではないと判明したあたりから混乱した。何を楽しむ小説なのかわからなくなったのだ。期待したほどの名推理は披露されず、ミステリとしては矛盾や御都合主義が多い。」
澤田瞳子
女37歳
27 「今回、私の△」「読んでみると思いの外地味で、しかも主人公に華がないので驚いた。その点に難色を示した意見が多かったが、私は渋味を買った。」「妻の弟が復讐のために贋作師になったという設定も悪くない。ただ彼が絵の技術を習得していく様子が描かれていないので、その執念が今ひとつ伝わってこない。」
西川美和
女41歳
28 「私は、世間の評価が高いのに自分が読んでもその良さがさっぱりわからない時、「この作品はたぶん純文学だ。自分に純文学的素養がないから理解できないのだ」と思うことにしている。」「なぜ愛してもいなかった妻の死に主人公がこれほど縛られるのか、全く理解できない。大抵の男は、自分に都合のいいことしか覚えておらず、かつて妻をどんなふうに傷つけたかとかを振り返ることもなく、したがって言い訳をする発想もないのではないか。」
馳星周
男50歳
25 「いい意味でも悪い意味でもプロの仕事。」「すいすい読めて、適度な意外性が用意されたラストへと至る。問題は、「適度」ではだめだったということだ。」「著者は賞を狙ったわけではなく、週刊誌連載という仕事として本作を執筆した。まず何よりも大衆文芸の良き商品に仕上げることを優先した姿勢は、プロとして当然ともいえる。」
柚木麻子
女33歳
24 「主人公の設定に無理を感じた。高校生の時に人間関係の瓦解を経験しているにもかかわらず、三十歳で海外との取引を任せてもらえるキャリアウーマンにまでなれたのは、その間に様々な知恵や自分なりのルールを身に着けたからではないのか。」「それを崩壊させるほどの何かが生じたとするには、翔子という女性との出会いは弱すぎる。」
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他の選考委員
林真理子
伊集院静
高村薫
北方謙三
桐野夏生
宮城谷昌光
浅田次郎
宮部みゆき
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選考委員
北方謙三男67歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
これを超えられるか 総行数102 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
東山彰良
男46歳
18 「近年では突出した青春小説として仕上がっていた。」「暑さが、食物の匂いが、ドブの臭さが、街の埃っぽさが、行間から立ちのぼってくる。混沌であるが、そこから青春の情念を真珠のひと粒のようにつまみ出した。この若い才能が次に問われるのは、これを超えてみろ、超えられるか、ということである。」
門井慶喜
男43歳
12 「ミステリーとして読むと欠陥が多すぎ、小説として読むと、その結構は粗すぎる。踏ん張りどころを間違った、という気がしないでもない。」
澤田瞳子
女37歳
13 「相当引きこまれながら私は読んだ。」「ただ、表現者を表現するのは、実に難しいとも感じた。創造する人間の姿は、言葉では表現しきれないのではないのか、ということまで思った。」
西川美和
女41歳
14 「いくらか不足しているものが、根底にあるのではないだろうか。小説の魂である。(引用者中略)小説で表現するしかなかった、という必然性とでも言うのだろうか。繊細な言葉と、豊かな感性をお持ちである。惜しいと思った。」
馳星周
男50歳
25 「作者の新境地であると私は感じた。」「一見、野放図な内容に、小説としてのリアリティを持たせるという、技法としては難しいものに挑戦し、それは成功していると感じた。自分が作りあげたものから離れるという意欲を含め、私は丸をつけて選考会に臨んだ。孤立無援であったが、新しい試みであることを考えると、それもいっそ清々しい。」
柚木麻子
女33歳
15 「いくらか過剰すぎるのではないかと、私は感じた。」「これは、負の情念の小説である。それはそれでいいのだろうが、読み手にまで負を背負わせるところが、過剰というのである。そして、人の造形や変貌が、類型と感じられた。」
  「強力な候補作が、いくつか並んだ。久しぶりであり、スリリングであった。選考を離れて、いい思いをした、という気分もある。」
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他の選考委員
林真理子
伊集院静
高村薫
東野圭吾
桐野夏生
宮城谷昌光
浅田次郎
宮部みゆき
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選考委員
桐野夏生女63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数99 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
東山彰良
男46歳
17 「文句なく面白かった。」「台湾の外省人と本省人の抑圧と解放をテーマにした、暗い物語でもあるのだが、回顧として書かれていること、そして豊かな細部とユーモアが、陰惨になりがちな話を渇いた笑いへと変えている。」
門井慶喜
男43歳
11 「のんびり、とぼけたテンポで進んでゆくので、ついつい読んでしまう。後出しじゃんけん風に、驚くべきことが、後から後から明らかになる。」「このトーンがたまらないという読者もいるのだろう。」
澤田瞳子
女37歳
21 「無理に話を作ろうとして、それがあまりうまくいっていない。一番問題に感じたのは、若冲に魅力がないことだろう。」「また、姉を自殺させられたことを恨んだ男が、君圭という贋作者になるという設定も安易に感じられる。」
西川美和
女41歳
16 「著者は、魂のちっちゃい男を描くのが異様にうまい。」「今回は魂が大きくなってしまったようだ。物語の構成も物足りなかったが、最大の物足りなさは、長く続いてうねる感情が描かれていないことだ。」
馳星周
男50歳
15 「著者にしては、珍しく軽いトーンで書かれている。これはこれで面白かったのだが、事故の相手の娘との関係など、目眩ましかと思うほどに軽妙過ぎて、何とも掴みづらい。椿も宮澤も、人物造型にいまひとつ魅力が感じられなかった。」
柚木麻子
女33歳
19 「ジャンクフード好き、だらけた日常を送る人気主婦ブロガー、という設定がリアルだ。」「が、対する主人公、商事会社の女子社員の造型が納得できない。ストーカーと間違われて空回りし、やがて心が折れてゆくあたりに無理がある。」「しかし、文章はうまいし、比喩にはキレがある。」
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他の選考委員
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東野圭吾
北方謙三
宮城谷昌光
浅田次郎
宮部みゆき
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選考委員
宮城谷昌光男70歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
新しい風 総行数98 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
東山彰良
男46歳
20 「ことばを慎重に選ぶのではなく、手あたりしだいに集めて詰めてゆけばなんとかなるというずぶとさがみえて、めずらしかった。しかしながら、台湾という小国がもっている不断の不安が通奏低音的にながれていて、その上での事象のあやうさが、おのずと読み手にしみてくる。私は新しい風を感じた。」
門井慶喜
男43歳
5 「(引用者注:「永い言い訳」「アンタッチャブル」と共に)言及するゆとりをもてなくなった。ご宥赦願いたい。」
澤田瞳子
女37歳
29 「この作家は上達したというしかない。節度のある比喩を用いていることにも感心した。」「この作品を読んで、いやな感じをうける人はほとんどいないであろう。そこに作者の風致をみたとおもうのだが、称めすぎであろうか。」
西川美和
女41歳
5 「(引用者注:「東京帝大叡古教授」「アンタッチャブル」と共に)言及するゆとりをもてなくなった。ご宥赦願いたい。」
馳星周
男50歳
4 「(引用者注:「東京帝大叡古教授」「永い言い訳」と共に)言及するゆとりをもてなくなった。ご宥赦願いたい。」
柚木麻子
女33歳
40 「作中の要人は、他者にみえるが、本質においてすべて同形である。同形であると断定すると語弊があるのであれば、相似形である。相似形であるものは、反発しやすいという原理めいたものがあるが、この小説はその原理通りに内的な力が衝突し、乖離する。要するに、小説内のエネルギーが外の読み手を撼かさない。そもそも小説の構造に欠陥があるからである。」
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他の選考委員
林真理子
伊集院静
高村薫
東野圭吾
北方謙三
桐野夏生
浅田次郎
宮部みゆき
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選考委員
浅田次郎男63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
冷静な躍動 総行数99 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
東山彰良
男46歳
28 「(引用者注:候補作のなかで)抜きん出ていた。文章に勢いがあり、作者も書くことを楽しんでいるとみえて、まるで本がはね回るような躍動感が漲っていた。」「これだけディテールを積み上げると、メインストーリーが脅かされるものだが、筆が滑るかと思う間にきちんと本題に戻るのは、冷静に長篇の全体像を捉えているからなのだろう。」
門井慶喜
男43歳
19 「いささか穿った読み方をしたかもしれない。この作品はウンベルト・エーコへのオマージュに擬態した、重光葵への献辞と読んだのである。」「もしこの読み方がいくらかでも正しいのなら、作者はミステリーの様式にこだわらず、正面から歴史小説を書くべきであろうと思う。」
澤田瞳子
女37歳
13 「そもそも若冲という素材を用いたこと自体が、すでにひとつの才能であると言える。しかし学術的な教養に小説の結構が負けている。」「物語に必須の美醜と聖俗の選択を、作者はさほど意識していないように思えた。」
西川美和
女41歳
10 「(引用者注:「流」と共に)一票を投じた。」「垢抜けているのである。既成の文学に縛られず、いわば小説のメソッドに忠実でない自由奔放な作風が痛快であった。」
馳星周
男50歳
10 「作者の新生面を開く快作であったが、随所に映像的なリアリティがまさってしまって、小説として堪能することができなかった。」
柚木麻子
女33歳
19 「悲しいことに、私はブログなるものを知らない。したがって本作は、「ブログという擬似社会の中で正常な人間関係を見失い、変形していく人々」などというものすごく保守的なテーマを仮設して、一種のホラー小説のように読むほかはなかった。ただし、人間的には相当に単純な登場人物たちの内面や環境を、あえて繁雑に書いている点については、やはり賛同はできなかった。」
  「すこぶる高水準の候補作が並んだ」
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他の選考委員
林真理子
伊集院静
高村薫
東野圭吾
北方謙三
桐野夏生
宮城谷昌光
宮部みゆき
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選考委員
宮部みゆき女54歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
新しい光 総行数129 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
東山彰良
男46歳
29 「活き活きとした表現力、力強い文章、骨太のストーリーテリング、〈人生・青春・家族の滑稽と悲惨〉を把握して全編に漂うユーモア、全てにおいて飛び抜けた傑作。」「「しかし血を流さずに、いったいなにを証明できるだろう?」これは、前作『ブラックライダー』にも通底するテーマであり、作家・東山彰良の核でもあるのでしょう。」
門井慶喜
男43歳
14 「誰でもすぐピンとくる有名人ではない重光葵を、もっと活かす手はなかったでしょうか。彼が自らの素性を明かす最終盤のひとくだりは、そこだけで涙を誘うほど感動的です。」
澤田瞳子
女37歳
35 「完成度の点では『流』に並ぶ秀作でした。」「若冲の絵を観てあれこれ感じることは万人に可能で、現に私もその一人として、あの愉快な野菜の釈迦涅槃図や、色彩豊かな可愛い小鳥たちを鑑賞すると、これを描いた絵師は、この小説のなかの罪悪感に苦しみ贋作者の脅威に怯える絵師よりも、もう少し幸せな人だったのではないか――と感じてしまいました。」
西川美和
女41歳
18 「第一四一回の候補作『きのうの神さま』を落選させてしまったことで、大きな借金があると感じてきました。今回それを返済したかった。が、届きませんでした。」「〈死という不可逆の喪失からの回復〉というテーマは、現実の人生にとって大切なものですが、創作物のなかでは、昨今いささかインフレ気味にいっぱい書かれている気がします。」
馳星周
男50歳
17 「ラストで「しょせん、日本の公安はこんなもんなのよ。身内の人事のことしか考えてないのよ」という身も蓋もない真相にたどりついて笑っちゃう。そのブラックな批評性を高く買うか、でもやっぱりもうちょっとでっかい真相があった方がよかったよなあと残念がるかで、評価が分かれた作品でした。」
柚木麻子
女33歳
16 「筆力と情熱には感嘆しましたが、作者が真摯であるあまりに、ストーリーが進むうちにどんどんテーマの方が前面に出てきて、物語性が後退していってしまい、物語としてのリアリティも消えてしまいました。」
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他の選考委員
林真理子
伊集院静
高村薫
東野圭吾
北方謙三
桐野夏生
宮城谷昌光
浅田次郎
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受賞者・作品
東山彰良男46歳×各選考委員 
『流』
長篇 734
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
林真理子
女61歳
26 「スケールがありながら、文章がとてもいきとどいている。少年時代の方のユーモアあるホラ話がたまらない。これほどエンターテイメント“どまん中”の小説は久しぶりで、本当に楽しませてもらった。」「選考委員満場一致の受賞となった。」
伊集院静
男65歳
38 「嘗て物語は語り部のものだった。その巧みな語り口によって伝承され生き続けた。『流』の声は熱く、豊かな声質であった。或る時は叫び、或る時は囁き、或る時は沈黙さえしていても常に耳の底に作者の声がしていた。」「日本人にとって歴史上も大きな関りがある国の物語に文学が明確に見えた点も嬉しかった。」
高村薫
女62歳
18 「中国語圏の身体感覚と台湾の鮮烈な生活風景が目に浮かぶようで、小説を読む幸福を久々に味わった。日中戦争に翻弄された歴史や、祖父が殺されるという家族の事件などがどれも陰惨すぎず、重すぎず、軽すぎない物語として機能しているのは、作者が主人公を十七歳の少年に設定したことから来ているが、これこそ小説家の直観的なバランス感覚である。」
東野圭吾
男57歳
30 「二人の委員が、自分が選考に関わって以来の最高作だ、と絶賛した。」「たしかに素晴らしい読書体験だった。治安や秩序が不安定な土地を舞台にした青春小説は、ダイナミックで破天荒で爽快で、作中に登場するファイヤーバードに乗っているかのような疾走感があった。」
北方謙三
男67歳
18 「近年では突出した青春小説として仕上がっていた。」「暑さが、食物の匂いが、ドブの臭さが、街の埃っぽさが、行間から立ちのぼってくる。混沌であるが、そこから青春の情念を真珠のひと粒のようにつまみ出した。この若い才能が次に問われるのは、これを超えてみろ、超えられるか、ということである。」
桐野夏生
女63歳
17 「文句なく面白かった。」「台湾の外省人と本省人の抑圧と解放をテーマにした、暗い物語でもあるのだが、回顧として書かれていること、そして豊かな細部とユーモアが、陰惨になりがちな話を渇いた笑いへと変えている。」
宮城谷昌光
男70歳
20 「ことばを慎重に選ぶのではなく、手あたりしだいに集めて詰めてゆけばなんとかなるというずぶとさがみえて、めずらしかった。しかしながら、台湾という小国がもっている不断の不安が通奏低音的にながれていて、その上での事象のあやうさが、おのずと読み手にしみてくる。私は新しい風を感じた。」
浅田次郎
男63歳
28 「(引用者注:候補作のなかで)抜きん出ていた。文章に勢いがあり、作者も書くことを楽しんでいるとみえて、まるで本がはね回るような躍動感が漲っていた。」「これだけディテールを積み上げると、メインストーリーが脅かされるものだが、筆が滑るかと思う間にきちんと本題に戻るのは、冷静に長篇の全体像を捉えているからなのだろう。」
宮部みゆき
女54歳
29 「活き活きとした表現力、力強い文章、骨太のストーリーテリング、〈人生・青春・家族の滑稽と悲惨〉を把握して全編に漂うユーモア、全てにおいて飛び抜けた傑作。」「「しかし血を流さずに、いったいなにを証明できるだろう?」これは、前作『ブラックライダー』にも通底するテーマであり、作家・東山彰良の核でもあるのでしょう。」
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他の候補作
門井慶喜
『東京帝大叡古教授』
澤田瞳子
『若冲』
西川美和
『永い言い訳』
馳星周
『アンタッチャブル』
柚木麻子
『ナイルパーチの女子会』
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候補者・作品
門井慶喜男43歳×各選考委員 
『東京帝大叡古教授』
連作7篇 756
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
林真理子
女61歳
0  
伊集院静
男65歳
10 「文節、文章の繋ぎ方、物語の進行がユニークで新しい試みに期待して読んだが、この章だけは、この人物だけは描きたかったという作者の胆が私には見えなかった。」
高村薫
女62歳
12 「歴史の舞台の大きさに比べて、芝居の台本も役者も学芸会のようで、バランスが悪い。トリックもトリックの体をなしておらず、探偵役も魅力を欠く。」
東野圭吾
男57歳
22 「天才教授が次々に謎を解く連作型のミステリかと思ったが、どうやらそうではないと判明したあたりから混乱した。何を楽しむ小説なのかわからなくなったのだ。期待したほどの名推理は披露されず、ミステリとしては矛盾や御都合主義が多い。」
北方謙三
男67歳
12 「ミステリーとして読むと欠陥が多すぎ、小説として読むと、その結構は粗すぎる。踏ん張りどころを間違った、という気がしないでもない。」
桐野夏生
女63歳
11 「のんびり、とぼけたテンポで進んでゆくので、ついつい読んでしまう。後出しじゃんけん風に、驚くべきことが、後から後から明らかになる。」「このトーンがたまらないという読者もいるのだろう。」
宮城谷昌光
男70歳
5 「(引用者注:「永い言い訳」「アンタッチャブル」と共に)言及するゆとりをもてなくなった。ご宥赦願いたい。」
浅田次郎
男63歳
19 「いささか穿った読み方をしたかもしれない。この作品はウンベルト・エーコへのオマージュに擬態した、重光葵への献辞と読んだのである。」「もしこの読み方がいくらかでも正しいのなら、作者はミステリーの様式にこだわらず、正面から歴史小説を書くべきであろうと思う。」
宮部みゆき
女54歳
14 「誰でもすぐピンとくる有名人ではない重光葵を、もっと活かす手はなかったでしょうか。彼が自らの素性を明かす最終盤のひとくだりは、そこだけで涙を誘うほど感動的です。」
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他の候補作
東山彰良
『流』
澤田瞳子
『若冲』
西川美和
『永い言い訳』
馳星周
『アンタッチャブル』
柚木麻子
『ナイルパーチの女子会』
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候補者・作品
澤田瞳子女37歳×各選考委員 
『若冲』
連作8篇 589
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
林真理子
女61歳
13 「どうも小説の世界にのめり込めない。若冲があまりにも普通の人過ぎる。」「最後まで主人公に魅力や共感を持てなかったのである。」
伊集院静
男65歳
16 「亡妻への想いが若冲の創造力の源なら、その想いの根底にあったものを描いて欲しかった。妻の弟の弁蔵が贋作絵師に至る歳月、描写ももう少し納得させてもらいたい。」
高村薫
女62歳
14 「そばにいた女性の眼は若冲の人生を捉えることはできても、肝心の画業自体に迫るには限界がある。」
東野圭吾
男57歳
27 「今回、私の△」「読んでみると思いの外地味で、しかも主人公に華がないので驚いた。その点に難色を示した意見が多かったが、私は渋味を買った。」「妻の弟が復讐のために贋作師になったという設定も悪くない。ただ彼が絵の技術を習得していく様子が描かれていないので、その執念が今ひとつ伝わってこない。」
北方謙三
男67歳
13 「相当引きこまれながら私は読んだ。」「ただ、表現者を表現するのは、実に難しいとも感じた。創造する人間の姿は、言葉では表現しきれないのではないのか、ということまで思った。」
桐野夏生
女63歳
21 「無理に話を作ろうとして、それがあまりうまくいっていない。一番問題に感じたのは、若冲に魅力がないことだろう。」「また、姉を自殺させられたことを恨んだ男が、君圭という贋作者になるという設定も安易に感じられる。」
宮城谷昌光
男70歳
29 「この作家は上達したというしかない。節度のある比喩を用いていることにも感心した。」「この作品を読んで、いやな感じをうける人はほとんどいないであろう。そこに作者の風致をみたとおもうのだが、称めすぎであろうか。」
浅田次郎
男63歳
13 「そもそも若冲という素材を用いたこと自体が、すでにひとつの才能であると言える。しかし学術的な教養に小説の結構が負けている。」「物語に必須の美醜と聖俗の選択を、作者はさほど意識していないように思えた。」
宮部みゆき
女54歳
35 「完成度の点では『流』に並ぶ秀作でした。」「若冲の絵を観てあれこれ感じることは万人に可能で、現に私もその一人として、あの愉快な野菜の釈迦涅槃図や、色彩豊かな可愛い小鳥たちを鑑賞すると、これを描いた絵師は、この小説のなかの罪悪感に苦しみ贋作者の脅威に怯える絵師よりも、もう少し幸せな人だったのではないか――と感じてしまいました。」
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他の候補作
東山彰良
『流』
門井慶喜
『東京帝大叡古教授』
西川美和
『永い言い訳』
馳星周
『アンタッチャブル』
柚木麻子
『ナイルパーチの女子会』
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候補者・作品
西川美和女41歳×各選考委員 
『永い言い訳』
長篇 509
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
林真理子
女61歳
13 「映像出身の作家によく見られる、会話の過剰さやボキボキとした感じもなかった。しかしこの砂糖菓子のような味わいが、(引用者注:受賞作の)「流」の強烈さの前ではまたたくまに溶けてしまった。」
伊集院静
男65歳
12 「作者が用意した設定に登場人物の感情が追いついていないもどかしさを感じた。人間の業、性が設定を追い越すような、或る種の“こわれ、くずれ”のようなものが必要なのではなかろうか。」
高村薫
女62歳
13 「ここに描かれた小説家の「ぼく」をはじめ、登場人物たちはみな作者の美意識や気分のために造形された人工物の皮相さで、誰ひとり生身の肉体をもって人生を生きていない。」
東野圭吾
男57歳
28 「私は、世間の評価が高いのに自分が読んでもその良さがさっぱりわからない時、「この作品はたぶん純文学だ。自分に純文学的素養がないから理解できないのだ」と思うことにしている。」「なぜ愛してもいなかった妻の死に主人公がこれほど縛られるのか、全く理解できない。大抵の男は、自分に都合のいいことしか覚えておらず、かつて妻をどんなふうに傷つけたかとかを振り返ることもなく、したがって言い訳をする発想もないのではないか。」
北方謙三
男67歳
14 「いくらか不足しているものが、根底にあるのではないだろうか。小説の魂である。(引用者中略)小説で表現するしかなかった、という必然性とでも言うのだろうか。繊細な言葉と、豊かな感性をお持ちである。惜しいと思った。」
桐野夏生
女63歳
16 「著者は、魂のちっちゃい男を描くのが異様にうまい。」「今回は魂が大きくなってしまったようだ。物語の構成も物足りなかったが、最大の物足りなさは、長く続いてうねる感情が描かれていないことだ。」
宮城谷昌光
男70歳
5 「(引用者注:「東京帝大叡古教授」「アンタッチャブル」と共に)言及するゆとりをもてなくなった。ご宥赦願いたい。」
浅田次郎
男63歳
10 「(引用者注:「流」と共に)一票を投じた。」「垢抜けているのである。既成の文学に縛られず、いわば小説のメソッドに忠実でない自由奔放な作風が痛快であった。」
宮部みゆき
女54歳
18 「第一四一回の候補作『きのうの神さま』を落選させてしまったことで、大きな借金があると感じてきました。今回それを返済したかった。が、届きませんでした。」「〈死という不可逆の喪失からの回復〉というテーマは、現実の人生にとって大切なものですが、創作物のなかでは、昨今いささかインフレ気味にいっぱい書かれている気がします。」
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他の候補作
東山彰良
『流』
門井慶喜
『東京帝大叡古教授』
澤田瞳子
『若冲』
馳星周
『アンタッチャブル』
柚木麻子
『ナイルパーチの女子会』
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候補者・作品
馳星周男50歳×各選考委員 
『アンタッチャブル』
長篇 1072
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
林真理子
女61歳
17 「意図がよくわからない。」「途中で“もしや”と思わせてやはり裏切る。これを“どんでん返し”とは到底思えなかった。馳さんほどの作家だ。何か凄い仕掛けがあるのではと、何度も考えたがわからなかった。」
伊集院静
男65歳
15 「これまでの氏の作品とは“悪”の様相を大胆に変容させた意欲作だった。ユーモアさえ感じた。」「氏の実績と実力は受賞にかなうと思ったが、受賞作(引用者注:『流』)のインパクトに押し切られた。」
高村薫
女62歳
12 「残念ながら公安と刑事警察、エリートと落ちこぼれ、組織と個人といった新味を欠く道具立てのまま、筋立てのみをコメディにした安易さが、ゲームの面白さを上回ってしまった。」
東野圭吾
男57歳
25 「いい意味でも悪い意味でもプロの仕事。」「すいすい読めて、適度な意外性が用意されたラストへと至る。問題は、「適度」ではだめだったということだ。」「著者は賞を狙ったわけではなく、週刊誌連載という仕事として本作を執筆した。まず何よりも大衆文芸の良き商品に仕上げることを優先した姿勢は、プロとして当然ともいえる。」
北方謙三
男67歳
25 「作者の新境地であると私は感じた。」「一見、野放図な内容に、小説としてのリアリティを持たせるという、技法としては難しいものに挑戦し、それは成功していると感じた。自分が作りあげたものから離れるという意欲を含め、私は丸をつけて選考会に臨んだ。孤立無援であったが、新しい試みであることを考えると、それもいっそ清々しい。」
桐野夏生
女63歳
15 「著者にしては、珍しく軽いトーンで書かれている。これはこれで面白かったのだが、事故の相手の娘との関係など、目眩ましかと思うほどに軽妙過ぎて、何とも掴みづらい。椿も宮澤も、人物造型にいまひとつ魅力が感じられなかった。」
宮城谷昌光
男70歳
4 「(引用者注:「東京帝大叡古教授」「永い言い訳」と共に)言及するゆとりをもてなくなった。ご宥赦願いたい。」
浅田次郎
男63歳
10 「作者の新生面を開く快作であったが、随所に映像的なリアリティがまさってしまって、小説として堪能することができなかった。」
宮部みゆき
女54歳
17 「ラストで「しょせん、日本の公安はこんなもんなのよ。身内の人事のことしか考えてないのよ」という身も蓋もない真相にたどりついて笑っちゃう。そのブラックな批評性を高く買うか、でもやっぱりもうちょっとでっかい真相があった方がよかったよなあと残念がるかで、評価が分かれた作品でした。」
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他の候補作
東山彰良
『流』
門井慶喜
『東京帝大叡古教授』
澤田瞳子
『若冲』
西川美和
『永い言い訳』
柚木麻子
『ナイルパーチの女子会』
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候補者・作品
柚木麻子女33歳×各選考委員 
『ナイルパーチの女子会』
長篇 624
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
林真理子
女61歳
28 「文章や、構成力に格段の進歩があり、以前は感じた“幼なさ”が完璧に消えている。」「「エリート狙い」の派遣社員の描き方が、どうにもステレオタイプだ。」「主人公の女性に女友だちがいないというのも不自然。」「リアリティがないというのは、ミもフタもない感想であるが、無理やりつくり上げた物語という思いは最後まで拭えなかった。」
伊集院静
男65歳
17 「作品の導入部は作者の非凡な才能に引き込まれ興味深く読み進めた。ところが物語の中盤、栄利子が窮地に立たされたあたりから人物の個性が平板になり、新鮮なものが失せた。」
高村薫
女62歳
14 「極端なデフォルメのスイッチが、自身の心理状態と区別できないところで入るのだとしたら、この作者にバランス感覚を求めても詮ないが、この過激さ、エキセントリックさを強みにするのも手かもしれない。」
東野圭吾
男57歳
24 「主人公の設定に無理を感じた。高校生の時に人間関係の瓦解を経験しているにもかかわらず、三十歳で海外との取引を任せてもらえるキャリアウーマンにまでなれたのは、その間に様々な知恵や自分なりのルールを身に着けたからではないのか。」「それを崩壊させるほどの何かが生じたとするには、翔子という女性との出会いは弱すぎる。」
北方謙三
男67歳
15 「いくらか過剰すぎるのではないかと、私は感じた。」「これは、負の情念の小説である。それはそれでいいのだろうが、読み手にまで負を背負わせるところが、過剰というのである。そして、人の造形や変貌が、類型と感じられた。」
桐野夏生
女63歳
19 「ジャンクフード好き、だらけた日常を送る人気主婦ブロガー、という設定がリアルだ。」「が、対する主人公、商事会社の女子社員の造型が納得できない。ストーカーと間違われて空回りし、やがて心が折れてゆくあたりに無理がある。」「しかし、文章はうまいし、比喩にはキレがある。」
宮城谷昌光
男70歳
40 「作中の要人は、他者にみえるが、本質においてすべて同形である。同形であると断定すると語弊があるのであれば、相似形である。相似形であるものは、反発しやすいという原理めいたものがあるが、この小説はその原理通りに内的な力が衝突し、乖離する。要するに、小説内のエネルギーが外の読み手を撼かさない。そもそも小説の構造に欠陥があるからである。」
浅田次郎
男63歳
19 「悲しいことに、私はブログなるものを知らない。したがって本作は、「ブログという擬似社会の中で正常な人間関係を見失い、変形していく人々」などというものすごく保守的なテーマを仮設して、一種のホラー小説のように読むほかはなかった。ただし、人間的には相当に単純な登場人物たちの内面や環境を、あえて繁雑に書いている点については、やはり賛同はできなかった。」
宮部みゆき
女54歳
16 「筆力と情熱には感嘆しましたが、作者が真摯であるあまりに、ストーリーが進むうちにどんどんテーマの方が前面に出てきて、物語性が後退していってしまい、物語としてのリアリティも消えてしまいました。」
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他の候補作
東山彰良
『流』
門井慶喜
『東京帝大叡古教授』
澤田瞳子
『若冲』
西川美和
『永い言い訳』
馳星周
『アンタッチャブル』
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