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第154回
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平成27年/2015年下半期
(平成28年/2016年1月19日決定発表/『オール讀物』平成28年/2016年3月号選評掲載)
選考委員  林真理子
女61歳
北方謙三
男68歳
浅田次郎
男64歳
宮部みゆき
女55歳
伊集院静
男65歳
高村薫
女62歳
桐野夏生
女64歳
宮城谷昌光
男70歳
東野圭吾
男57歳
選評総行数  89 102 86 145 111 102 100 105 145
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
青山文平 『つまをめとらば』
415
男67歳
22 15 16 14 27 24 30 13 18
梶よう子 『ヨイ豊』
659
女54歳
11 14 13 26 20 17 16 38 23
深緑野分 『戦場のコックたち』
849
女32歳
21 18 15 43 35 18 30 38 29
宮下奈都 『羊と鋼の森』
399
女49歳
8 22 10 32 25 17 15 23 23
柚月裕子 『孤狼の血』
731
女47歳
14 19 10 30 4 16 9 23 22
                 
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』平成28年/2016年3月号
1行当たりの文字数:12字


選考委員
林真理子女61歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
青山さんのうまさ 総行数89 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
青山文平
男67歳
22 「この方の文章のうまさというのは感嘆に価する。」「そして女たちの魅力的なことといったらどうだろう。したたかで、ちゃっかりしていて愛らしい。今まで男たちが描いてきた「江戸の女」を鮮やかに裏切っているのだ。」
梶よう子
女54歳
11 「読んだ時、「明治維新をSNS文化、浮世絵を本とすれば、今の出版不況そのものではないか」と感じた。」「目のつけどころもいいし、手練れであるがいささか迫力がなかった。」
深緑野分
女32歳
21 「「どうしてアメリカ軍の兵士の物語を書かなければならないのか」」「現代の日本人がいくら勉強してそれを書いたとしても、根底にあるものはやはり借りものであり、本当のことを描ききっていないと思う」「最後のトリックもいささかちゃちである。」
宮下奈都
女49歳
8 「私には物足りなかった。主人公の内への向かい方、登場人物のキャラクターが、少女コミックに思えてくる。音楽を寓話にまで高めるには、いろいろなものが足りない。」
柚月裕子
女47歳
14 「やはりこの疑問は残る。「どうしてこれほど古いやくざの物語を描くのか」」「また中年刑事と新人刑事との、これほどの濃厚な関係が一ヶ月でつくれるものなのかという思いもある。」
  「「今回の選考会は、どうしてあれほど時間がかかったのか。それほど揉めたのか」と多くの方から質問されたがそんなことはない。青山文平さんの受賞は、最初の投票でほぼ決まっていたようなものであるが、それとは別に他の作品をめぐって熱い議論が交されたのである。」
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他の選考委員
北方謙三
浅田次郎
宮部みゆき
伊集院静
高村薫
桐野夏生
宮城谷昌光
東野圭吾
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選考委員
北方謙三男68歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
短篇のよさ 総行数102 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
青山文平
男67歳
15 「いくらかペダンチックなものを感じさせるが、短篇として切り口が鮮やかで、描かれた心情には無理がない。のびやかである。女の描き方などいささかこわいが、しかし響いてくるものはある。小説はこれでいいのだ、という気がした。(引用者注:「羊と鋼の森」と共に)これも推そう、と私は思った。」
梶よう子
女54歳
14 「努力家と天才の対比など、絵を通して書けなかったのか。三代目の後を継ぐ継がないという、あれかこれかが、読んでいてうるさかった。創造者の激しさ、狂気は、描写するには難しいところがあるが、それでも正面からぶつかって貰いたかった。」
深緑野分
女32歳
18 「謎解きふうのものが入ってくるところは首を傾げたが、コックを扱ったのは秀抜なセンスを感じさせる。ただ、なにかが足りない。戦争を描く必然性というと堅苦しくなるが、読みながら、私は常にそれを感じ続けた。」
宮下奈都
女49歳
22 「主人公がはじめて調律というものを見て、引きこまれていくところから、私は予期していない世界に入りこんだ。調律という行為も、表現だと思えたのだ。」「静かな中に緊迫感が漂い、行間からさまざまなものが溢れ出してくる。」「これは推したい、と私は思った。」
柚月裕子
女47歳
19 「ハードボイルドふうであるが、行間から立ちあがってくるものを、私は感じとることができなかった。章の最初につけられた日誌、最後の年表のようなものなど、細かいところまできちんとしなければならないという、作者の真面目さが感じられたが、理屈を突き抜けた迫力を獲得できなかったのも、そのためかと私は考えた。」
  「候補作が届くと、ちょっとだけ読む順番を考える。」「順番がなにかを左右することはないが、これを推すというものに、できるだけ早く出会いたい、という気分はたえずある。」
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他の選考委員
林真理子
浅田次郎
宮部みゆき
伊集院静
高村薫
桐野夏生
宮城谷昌光
東野圭吾
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選考委員
浅田次郎男64歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
新鮮 総行数86 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
青山文平
男67歳
16 「(引用者注:各短篇が)どうにも長編の冒頭部か一部分の抜粋のように思えてならなかった。しかしながら、作品集として全体を俯瞰してみればやはりたたずまいがよく、相対的評価から受賞に異を唱えるところではない。」
梶よう子
女54歳
13 「小説というより、「明治の錦絵」とか「その後の歌川派」などという題名の新書を読んだような気がした。つまり、小説的に脚色し拡大すべき部分を簡潔にすませて、歴史的な記述に偏倚してしまったのである。」
深緑野分
女32歳
15 「第二次大戦下の欧州戦線を舞台とした全くの虚構を、これほどまで読みやすく、かつ面白く描き切るというのはまさに非凡の才である。」「ただし、この種の小説には必要不可欠な、戦争観や哲学性には不足しているとも思え、あえて強く推す根拠を見出せなかった。」
宮下奈都
女49歳
10 「私には古典的な成長小説、もしくは自然主義風の日常小説というほかに、さしたる感懐はなかった。」
柚月裕子
女47歳
10 「よく言えばオーソドックスな、悪く言うならオリジナリティを欠く作品である。この「よくも悪しくも当たり前」という按配は、一定数の読者を獲得するうえですこぶる有効なのだが、作者はまさかそれをめざす段階ではない。」
  「候補の回数が重なれば、過去の作品との比較という煩わしい基準が生じてしまうが、今回は候補作の絶対的価値をめぐって、十分な議論を尽くせたと思う。そうした意味では、直木賞の本義に則った選考会でもあった。」「多くの作品が終章に「後日譚」を書いていた。」「そもそもこの手法はハッピーエンドを達成するための映像脚本の方法であって、よほどの目論見でもない限り、小説の結末には適さない。」
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他の選考委員
林真理子
北方謙三
宮部みゆき
伊集院静
高村薫
桐野夏生
宮城谷昌光
東野圭吾
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選考委員
宮部みゆき女55歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
巧まざるユーモア 総行数145 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
青山文平
男67歳
14 「ハイレベルの短編集で、私はとりわけ巻頭の「ひともうらやむ」と表題作が好きです。題材を問わず、優れた小説には、必ずどこかしらに巧まざるユーモアがある。今回の選考で、あらためて実感しました。」
梶よう子
女54歳
26 「○は私一人でしたから、受賞には届かずとも、もっと熱弁をふるえばよかった。」「私は浮世絵が苦手です。(引用者中略)でも、この作品は面白かった。入り乱れる絵師や役者たちの人名に苦労することもありませんでした。作者の水先案内が的確だったからです。」
深緑野分
女32歳
43 「ノルマンディ上陸作戦を振り出しにヨーロッパ戦線をゆく連合軍の若い料理兵の物語に遠慮を感じてしまったのは、何のことはない、私自身が〈太平洋戦争と青春〉をどのように書くかという問いに、作家としてまったく回答を用意していなかった、その問いに向き合う覚悟もなかったから、ただそれだけです。」「ただ私はミステリー作家ですので、この作品の核である〈戦場下の日常の謎ミステリー〉部分がいささか弱い――残念ながら、作者が意図したであろうほどには物語を豊かにしていないという点で、支持することができませんでした。」
宮下奈都
女49歳
32 「当初、外村が調律師として生きている作中の時代がいつなのかわからないことに引っかかり、」「これは現実性や具体性より普遍性を重んじる芥川賞向きの作品ではないかと思いました。が、選考会で(引用者中略)このナイーブな抽象性はファンタジー小説のものなのだと気がついて、引っかかりが消えたのです。」
柚月裕子
女47歳
30 「新進気鋭の実力派の映像作家が、もしも今『仁義なき戦い』をリメイクしようと思い立ったら、あの傑作から何を引き、何を足すべきかを悩むはずです。」「舞台を昭和六十三年(ざっと二十八年前)に据えるのは、「何も足さず何も引かない」選択をしたことだと、私は思います。それはそれで敬意を覚える思い切りですが、結果的に『孤狼の血』は何となくアナクロで、既視感の多い作品になってしまいました。」
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他の選考委員
林真理子
北方謙三
浅田次郎
伊集院静
高村薫
桐野夏生
宮城谷昌光
東野圭吾
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選考委員
伊集院静男65歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
みずみずしい文章と戦争観 総行数111 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
青山文平
男67歳
27 「文章も安定感があるし、短篇集として上出来である。」「たしかに各短篇にはそれぞれ個性があり、一言で言うと、上手い、のである。」「上手い、名手などという評価は、小説の本質とはまったく違う場所での言葉で、むしろ邪魔になる。あらためて読んでみると、そのことがやはり気になった。」
梶よう子
女54歳
20 「丹念な筆致で、物語の中に読者を誘い込む力量はたいしたものだった。同一人物にふたつ、みっつの名前があらわれたり、物語の後半、一気に進む力がまぎれた。」「才気を語るなら、才気と無縁の者を含めての人間の振幅を見せねば、綺麗事の小説になってしまう。」
深緑野分
女32歳
35 「(引用者注:「羊と鋼の森」と共に)私が推した作品」「選考委員から、日本人の若い作家が、なぜ第二次大戦のアメリカ兵士を描いたのかと日本人の戦争観に話がおよんだ。若い人に限らず人の戦争観の論議は、私にはナンセンスに思えた。よく見た戦争映画を下に書き上げたのではという評もあったが、これからの若い作家が映像を見て感動し、それが作品の想起になるのは自然なことで、映像を見ての感情が、作品の軸になった方が斬新なものを生むのではないか。」
宮下奈都
女49歳
25 「(引用者注:「戦場のコックたち」と共に)私が推した作品」「私は常日頃から、みずみずしい文章の作品を書きたいと思っているが、なかなかそういう文章は書けない。宮下さんの小説には、そのみずみずしさが失せることがなかった。」「他選考委員から作品の世界がやや小振りだという評が出たが、そんなことはない。こんなに悠久を感じる作品はない。」
柚月裕子
女47歳
4 「意欲作であるが、もう少し人間の機微を捉えなくてはと思った。」
  「今回は候補に上がった作品は、作家の名前を含めて、初めて読むものが多かった。そのせいか、どの作品にもみずみずしさを感じた。」
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他の選考委員
林真理子
北方謙三
浅田次郎
宮部みゆき
高村薫
桐野夏生
宮城谷昌光
東野圭吾
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選考委員
高村薫女62歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数102 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
青山文平
男67歳
24 「よくも悪くも時代小説の定型に沿っている安定感はある。」「本作には男性の造形や女性の会話文、不用意な片仮名の使用など、意が尽くされていない箇所が散見され、評者は積極的には推さなかった。」
梶よう子
女54歳
17 「維新前夜の幕末を舞台にしながら、そこに生きた江戸庶民の悲愴や虚無がまったく伝わってこない。作者が人間と時代を有機的につながったものとして捉えていないため、浮世絵と絵師たちの盛衰の物語も江戸の人情話に留まっている。」
深緑野分
女32歳
18 「多くの映画や記録映像のある第二次大戦のヨーロッパ戦線の、しかもアメリカ軍の兵士たちを、日本人が日本語で描くことの是非以前に、戦場にも兵士たちにも身体性を感じられない。端的に、コックを描きながら料理の匂いがないのである。」
宮下奈都
女49歳
17 「ピアノの音が作者の身体のなかで鳴っているのが感じられるような種々の表現は、どれも静謐でうつくしいが、そこから広がってゆかない。作者はピアノの音に耳をすますことはできるが、残念ながら人間に見入るということができていない。」
柚月裕子
女47歳
16 「豊富な取材にもかかわらず、やくざと刑事の関係にはもう一段の奥深さがあることに思いが至っていないのは、書き手が身体で対象を捉えていないためだろう。」
  「候補作のうち四作を新進の女性作家の作品が占めた上に、その世界もやくざの抗争から戦争までと多彩で、小説が書き手の身体感覚と乖離したところで書かれる時代になったことを、あらためて痛感させられた。とまれ「女流」はもはや死語である。」
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他の選考委員
林真理子
北方謙三
浅田次郎
宮部みゆき
伊集院静
桐野夏生
宮城谷昌光
東野圭吾
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選考委員
桐野夏生女64歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数100 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
青山文平
男67歳
30 「達者な書き手であることは確かなのだが、つるりと喉越しのよいゼリーを食べた後のように、読後もまだ物欲しい気持ちが残る。」「気になったのは、どの短編もパターンが似通っていることだ。男二人に、女が一人現れて魔性ぶりを発揮する、というストーリーが多い。女の側の視点が欠落しているために、男たちの魅力が褪せる。」
梶よう子
女54歳
16 「力作だと思うが、盛り上がりに欠ける。台詞で状況説明をしたり、ストーリー運びに都合のよい人物を登場させるのも、平板さの一因であろう。」「当時の出版状況など、興味深いディテールがあるだけに惜しまれる。」
深緑野分
女32歳
30 「私は本作品を推した。」「主人公の小さな世界から始まって、次第に戦争の中に突き進み、その恐ろしくグロテスクな面を浮き彫りにしていく構成もよい。」「第二次大戦のアメリカ兵に材を取っているが、どの時代のどんな人物を題材にしようが、文学は自由だ。問題は描かれるテーマにあって、この自由さを失っては小説は消滅する。」「敢えて苦言を呈すれば、ストーリー中のミステリー風味には、興を殺がれた。」
宮下奈都
女49歳
15 「特に欠点もなく、美しい作品だと感心したが、主人公の外村に、実年齢に相応しい格闘が見られない点が気になった。真面目で聞き分けがよく、青春の葛藤や暗さが微塵も感じられない。」「「ふたご」の逸話も、もう少し読みたかった。」
柚月裕子
女47歳
9 「地の文章はうまい。しかし、台詞で状況説明をしているのが安易に思えた。」「登場人物も既視感があって、新鮮味が感じられなかった。」
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他の選考委員
林真理子
北方謙三
浅田次郎
宮部みゆき
伊集院静
高村薫
宮城谷昌光
東野圭吾
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選考委員
宮城谷昌光男70歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
構成力 総行数105 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
青山文平
男67歳
13 「落ち着きのある筆致で書かれてはいるが、内容はそれほど静かなものではない。読み手の意表を衝く機知がそなえられている。藤沢周平作品より基本的に明るいのは、知と情のちがいであろう。この人は、芸術的であるというより哲学的である、と私はおもっている。」
梶よう子
女54歳
38 「(引用者注:「戦場のコックたち」と共に)いえることは、構成力の弱さである。この構成力は細部の表現に微妙につながっていて、そこがおろそかになっているがゆえに、大きく展開できなかったといえる。」「こざかしいことをいうようであるが、(引用者中略)知っていることではなく、知らないことを書いてもらいたい。」
深緑野分
女32歳
38 「(引用者注:「ヨイ豊」と共に)いえることは、構成力の弱さである。この構成力は細部の表現に微妙につながっていて、そこがおろそかになっているがゆえに、大きく展開できなかったといえる。」「こざかしいことをいうようであるが、(引用者中略)知っていることではなく、知らないことを書いてもらいたい。」
宮下奈都
女49歳
23 「行儀のよい作品、というのが私の印象ではあるが、その行儀のよさが作品の弱さとみまちがえされないか、という懸念があった。この作者は豊富な知識をあえて顕現しないように心をくばっていたようであり、また猥雑なイメージを排除するために、非現実の音を創るピアノをわかりやすい森の形象に帰すことをくりかえしてゆく。そのいさぎよさにも好感をもった。」
柚月裕子
女47歳
23 「テーマがあいまいで、全体をまわしてゆく軸がぶれている。」「重要人物の死は、物語を切断すると同時に、質のちがう継続を生じさせる。音楽でいう転調である。そのあたりの意識も作者には稀薄であったようで、浸潤性のとぼしい作品となった。」
  「今回の候補作品の作者は、ひとりを除いて、すべて女性である。これは風潮というだけではかたづけられない問題であり、書く側だけではなく読む側に変動が生じていることを予告しているようにおもわれる。」
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他の選考委員
林真理子
北方謙三
浅田次郎
宮部みゆき
伊集院静
高村薫
桐野夏生
東野圭吾
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選考委員
東野圭吾男57歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
苦悩の予感 総行数145 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
青山文平
男67歳
18 「どちらかというと消去法の形で、『つまをめとらば』に○をつけることになった。」「私は、大衆小説というのは、この先どうなるのかと読者の興味を刺激し続けねばならないものだと考えているが、今回の候補作の中で、最もそれを感じられたのが本作だった。六本の短編すべてに工夫が凝らされていた。良い仕事だと思う。」
梶よう子
女54歳
23 「今回の私の△」「丹念に書かれた作品だと思う。だが、いかんせん山場、見せ場が少なすぎるのではないか。」「主人公が何に向かって歩いており、何と戦い、どのように苦悶しているのか、今ひとつ伝わってこなかった。とはいえ、江戸から東京に移り変わる時代の中で、最後の浮世絵師がどう生きたのか、という点には興味深いものがあった。」
深緑野分
女32歳
29 「日本人の若い女性がこれを書いたのはすごいことだと思う。たぶん才能豊かな人なのだろう。だがそれを考慮に入れるべきではないというのが私の意見だ。もし作者名が伏せられ、翻訳物だと聞かされて読んでいたなら、「あまり出来のよくないミステリだな」と思ったのではないだろうか。仮にこの作品が英訳されたとして、自信を持って欧米人に奨められるかと自問し、それはないと思った。」
宮下奈都
女49歳
23 「純文学の要素がいかに優れていようとも、それを評価するのは本賞の本来の役割ではないと私は考える。まずは大衆文学の要素が他の候補作を凌駕しているかどうかを判定すべきではないか。その点において『羊と鋼の森』は、私には合格点に達しているようには思えなかった。調律師の仕事内容や環境について書かれているが、その上に読者を楽しませようとするドラマが構築されていない。」
柚月裕子
女47歳
22 「ヤクザよりも狡猾で暴力的な刑事、というのはマル暴刑事のイメージそのもの。もう少し意外性のある個性を加味してほしかった。ストーリーにも、やや無理が目立つ。死体の処分で、船があるのに海に捨てずに無人島に埋めるという行為は、愚かすぎないか。警察の不祥事をまとめたノートが存在するというのも安易。」
  「今回は悩んだ。つくづく、文学賞の選考は難しいと痛感した。」「選考会中、熱くなって何度か傲慢な言葉を口にした。他の委員には、この場を借りてお詫びしたい。特に桐野さん、ごめんなさい。」
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他の選考委員
林真理子
北方謙三
浅田次郎
宮部みゆき
伊集院静
高村薫
桐野夏生
宮城谷昌光
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受賞者・作品
青山文平男67歳×各選考委員 
『つまをめとらば』
短篇集6篇 415
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
林真理子
女61歳
22 「この方の文章のうまさというのは感嘆に価する。」「そして女たちの魅力的なことといったらどうだろう。したたかで、ちゃっかりしていて愛らしい。今まで男たちが描いてきた「江戸の女」を鮮やかに裏切っているのだ。」
北方謙三
男68歳
15 「いくらかペダンチックなものを感じさせるが、短篇として切り口が鮮やかで、描かれた心情には無理がない。のびやかである。女の描き方などいささかこわいが、しかし響いてくるものはある。小説はこれでいいのだ、という気がした。(引用者注:「羊と鋼の森」と共に)これも推そう、と私は思った。」
浅田次郎
男64歳
16 「(引用者注:各短篇が)どうにも長編の冒頭部か一部分の抜粋のように思えてならなかった。しかしながら、作品集として全体を俯瞰してみればやはりたたずまいがよく、相対的評価から受賞に異を唱えるところではない。」
宮部みゆき
女55歳
14 「ハイレベルの短編集で、私はとりわけ巻頭の「ひともうらやむ」と表題作が好きです。題材を問わず、優れた小説には、必ずどこかしらに巧まざるユーモアがある。今回の選考で、あらためて実感しました。」
伊集院静
男65歳
27 「文章も安定感があるし、短篇集として上出来である。」「たしかに各短篇にはそれぞれ個性があり、一言で言うと、上手い、のである。」「上手い、名手などという評価は、小説の本質とはまったく違う場所での言葉で、むしろ邪魔になる。あらためて読んでみると、そのことがやはり気になった。」
高村薫
女62歳
24 「よくも悪くも時代小説の定型に沿っている安定感はある。」「本作には男性の造形や女性の会話文、不用意な片仮名の使用など、意が尽くされていない箇所が散見され、評者は積極的には推さなかった。」
桐野夏生
女64歳
30 「達者な書き手であることは確かなのだが、つるりと喉越しのよいゼリーを食べた後のように、読後もまだ物欲しい気持ちが残る。」「気になったのは、どの短編もパターンが似通っていることだ。男二人に、女が一人現れて魔性ぶりを発揮する、というストーリーが多い。女の側の視点が欠落しているために、男たちの魅力が褪せる。」
宮城谷昌光
男70歳
13 「落ち着きのある筆致で書かれてはいるが、内容はそれほど静かなものではない。読み手の意表を衝く機知がそなえられている。藤沢周平作品より基本的に明るいのは、知と情のちがいであろう。この人は、芸術的であるというより哲学的である、と私はおもっている。」
東野圭吾
男57歳
18 「どちらかというと消去法の形で、『つまをめとらば』に○をつけることになった。」「私は、大衆小説というのは、この先どうなるのかと読者の興味を刺激し続けねばならないものだと考えているが、今回の候補作の中で、最もそれを感じられたのが本作だった。六本の短編すべてに工夫が凝らされていた。良い仕事だと思う。」
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他の候補作
梶よう子
『ヨイ豊』
深緑野分
『戦場のコックたち』
宮下奈都
『羊と鋼の森』
柚月裕子
『孤狼の血』
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候補者・作品
梶よう子女54歳×各選考委員 
『ヨイ豊』
長篇 659
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
林真理子
女61歳
11 「読んだ時、「明治維新をSNS文化、浮世絵を本とすれば、今の出版不況そのものではないか」と感じた。」「目のつけどころもいいし、手練れであるがいささか迫力がなかった。」
北方謙三
男68歳
14 「努力家と天才の対比など、絵を通して書けなかったのか。三代目の後を継ぐ継がないという、あれかこれかが、読んでいてうるさかった。創造者の激しさ、狂気は、描写するには難しいところがあるが、それでも正面からぶつかって貰いたかった。」
浅田次郎
男64歳
13 「小説というより、「明治の錦絵」とか「その後の歌川派」などという題名の新書を読んだような気がした。つまり、小説的に脚色し拡大すべき部分を簡潔にすませて、歴史的な記述に偏倚してしまったのである。」
宮部みゆき
女55歳
26 「○は私一人でしたから、受賞には届かずとも、もっと熱弁をふるえばよかった。」「私は浮世絵が苦手です。(引用者中略)でも、この作品は面白かった。入り乱れる絵師や役者たちの人名に苦労することもありませんでした。作者の水先案内が的確だったからです。」
伊集院静
男65歳
20 「丹念な筆致で、物語の中に読者を誘い込む力量はたいしたものだった。同一人物にふたつ、みっつの名前があらわれたり、物語の後半、一気に進む力がまぎれた。」「才気を語るなら、才気と無縁の者を含めての人間の振幅を見せねば、綺麗事の小説になってしまう。」
高村薫
女62歳
17 「維新前夜の幕末を舞台にしながら、そこに生きた江戸庶民の悲愴や虚無がまったく伝わってこない。作者が人間と時代を有機的につながったものとして捉えていないため、浮世絵と絵師たちの盛衰の物語も江戸の人情話に留まっている。」
桐野夏生
女64歳
16 「力作だと思うが、盛り上がりに欠ける。台詞で状況説明をしたり、ストーリー運びに都合のよい人物を登場させるのも、平板さの一因であろう。」「当時の出版状況など、興味深いディテールがあるだけに惜しまれる。」
宮城谷昌光
男70歳
38 「(引用者注:「戦場のコックたち」と共に)いえることは、構成力の弱さである。この構成力は細部の表現に微妙につながっていて、そこがおろそかになっているがゆえに、大きく展開できなかったといえる。」「こざかしいことをいうようであるが、(引用者中略)知っていることではなく、知らないことを書いてもらいたい。」
東野圭吾
男57歳
23 「今回の私の△」「丹念に書かれた作品だと思う。だが、いかんせん山場、見せ場が少なすぎるのではないか。」「主人公が何に向かって歩いており、何と戦い、どのように苦悶しているのか、今ひとつ伝わってこなかった。とはいえ、江戸から東京に移り変わる時代の中で、最後の浮世絵師がどう生きたのか、という点には興味深いものがあった。」
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他の候補作
青山文平
『つまをめとらば』
深緑野分
『戦場のコックたち』
宮下奈都
『羊と鋼の森』
柚月裕子
『孤狼の血』
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候補者・作品
深緑野分女32歳×各選考委員 
『戦場のコックたち』
長篇 849
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
林真理子
女61歳
21 「「どうしてアメリカ軍の兵士の物語を書かなければならないのか」」「現代の日本人がいくら勉強してそれを書いたとしても、根底にあるものはやはり借りものであり、本当のことを描ききっていないと思う」「最後のトリックもいささかちゃちである。」
北方謙三
男68歳
18 「謎解きふうのものが入ってくるところは首を傾げたが、コックを扱ったのは秀抜なセンスを感じさせる。ただ、なにかが足りない。戦争を描く必然性というと堅苦しくなるが、読みながら、私は常にそれを感じ続けた。」
浅田次郎
男64歳
15 「第二次大戦下の欧州戦線を舞台とした全くの虚構を、これほどまで読みやすく、かつ面白く描き切るというのはまさに非凡の才である。」「ただし、この種の小説には必要不可欠な、戦争観や哲学性には不足しているとも思え、あえて強く推す根拠を見出せなかった。」
宮部みゆき
女55歳
43 「ノルマンディ上陸作戦を振り出しにヨーロッパ戦線をゆく連合軍の若い料理兵の物語に遠慮を感じてしまったのは、何のことはない、私自身が〈太平洋戦争と青春〉をどのように書くかという問いに、作家としてまったく回答を用意していなかった、その問いに向き合う覚悟もなかったから、ただそれだけです。」「ただ私はミステリー作家ですので、この作品の核である〈戦場下の日常の謎ミステリー〉部分がいささか弱い――残念ながら、作者が意図したであろうほどには物語を豊かにしていないという点で、支持することができませんでした。」
伊集院静
男65歳
35 「(引用者注:「羊と鋼の森」と共に)私が推した作品」「選考委員から、日本人の若い作家が、なぜ第二次大戦のアメリカ兵士を描いたのかと日本人の戦争観に話がおよんだ。若い人に限らず人の戦争観の論議は、私にはナンセンスに思えた。よく見た戦争映画を下に書き上げたのではという評もあったが、これからの若い作家が映像を見て感動し、それが作品の想起になるのは自然なことで、映像を見ての感情が、作品の軸になった方が斬新なものを生むのではないか。」
高村薫
女62歳
18 「多くの映画や記録映像のある第二次大戦のヨーロッパ戦線の、しかもアメリカ軍の兵士たちを、日本人が日本語で描くことの是非以前に、戦場にも兵士たちにも身体性を感じられない。端的に、コックを描きながら料理の匂いがないのである。」
桐野夏生
女64歳
30 「私は本作品を推した。」「主人公の小さな世界から始まって、次第に戦争の中に突き進み、その恐ろしくグロテスクな面を浮き彫りにしていく構成もよい。」「第二次大戦のアメリカ兵に材を取っているが、どの時代のどんな人物を題材にしようが、文学は自由だ。問題は描かれるテーマにあって、この自由さを失っては小説は消滅する。」「敢えて苦言を呈すれば、ストーリー中のミステリー風味には、興を殺がれた。」
宮城谷昌光
男70歳
38 「(引用者注:「ヨイ豊」と共に)いえることは、構成力の弱さである。この構成力は細部の表現に微妙につながっていて、そこがおろそかになっているがゆえに、大きく展開できなかったといえる。」「こざかしいことをいうようであるが、(引用者中略)知っていることではなく、知らないことを書いてもらいたい。」
東野圭吾
男57歳
29 「日本人の若い女性がこれを書いたのはすごいことだと思う。たぶん才能豊かな人なのだろう。だがそれを考慮に入れるべきではないというのが私の意見だ。もし作者名が伏せられ、翻訳物だと聞かされて読んでいたなら、「あまり出来のよくないミステリだな」と思ったのではないだろうか。仮にこの作品が英訳されたとして、自信を持って欧米人に奨められるかと自問し、それはないと思った。」
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他の候補作
青山文平
『つまをめとらば』
梶よう子
『ヨイ豊』
宮下奈都
『羊と鋼の森』
柚月裕子
『孤狼の血』
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候補者・作品
宮下奈都女49歳×各選考委員 
『羊と鋼の森』
長篇 399
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
林真理子
女61歳
8 「私には物足りなかった。主人公の内への向かい方、登場人物のキャラクターが、少女コミックに思えてくる。音楽を寓話にまで高めるには、いろいろなものが足りない。」
北方謙三
男68歳
22 「主人公がはじめて調律というものを見て、引きこまれていくところから、私は予期していない世界に入りこんだ。調律という行為も、表現だと思えたのだ。」「静かな中に緊迫感が漂い、行間からさまざまなものが溢れ出してくる。」「これは推したい、と私は思った。」
浅田次郎
男64歳
10 「私には古典的な成長小説、もしくは自然主義風の日常小説というほかに、さしたる感懐はなかった。」
宮部みゆき
女55歳
32 「当初、外村が調律師として生きている作中の時代がいつなのかわからないことに引っかかり、」「これは現実性や具体性より普遍性を重んじる芥川賞向きの作品ではないかと思いました。が、選考会で(引用者中略)このナイーブな抽象性はファンタジー小説のものなのだと気がついて、引っかかりが消えたのです。」
伊集院静
男65歳
25 「(引用者注:「戦場のコックたち」と共に)私が推した作品」「私は常日頃から、みずみずしい文章の作品を書きたいと思っているが、なかなかそういう文章は書けない。宮下さんの小説には、そのみずみずしさが失せることがなかった。」「他選考委員から作品の世界がやや小振りだという評が出たが、そんなことはない。こんなに悠久を感じる作品はない。」
高村薫
女62歳
17 「ピアノの音が作者の身体のなかで鳴っているのが感じられるような種々の表現は、どれも静謐でうつくしいが、そこから広がってゆかない。作者はピアノの音に耳をすますことはできるが、残念ながら人間に見入るということができていない。」
桐野夏生
女64歳
15 「特に欠点もなく、美しい作品だと感心したが、主人公の外村に、実年齢に相応しい格闘が見られない点が気になった。真面目で聞き分けがよく、青春の葛藤や暗さが微塵も感じられない。」「「ふたご」の逸話も、もう少し読みたかった。」
宮城谷昌光
男70歳
23 「行儀のよい作品、というのが私の印象ではあるが、その行儀のよさが作品の弱さとみまちがえされないか、という懸念があった。この作者は豊富な知識をあえて顕現しないように心をくばっていたようであり、また猥雑なイメージを排除するために、非現実の音を創るピアノをわかりやすい森の形象に帰すことをくりかえしてゆく。そのいさぎよさにも好感をもった。」
東野圭吾
男57歳
23 「純文学の要素がいかに優れていようとも、それを評価するのは本賞の本来の役割ではないと私は考える。まずは大衆文学の要素が他の候補作を凌駕しているかどうかを判定すべきではないか。その点において『羊と鋼の森』は、私には合格点に達しているようには思えなかった。調律師の仕事内容や環境について書かれているが、その上に読者を楽しませようとするドラマが構築されていない。」
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他の候補作
青山文平
『つまをめとらば』
梶よう子
『ヨイ豊』
深緑野分
『戦場のコックたち』
柚月裕子
『孤狼の血』
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候補者・作品
柚月裕子女47歳×各選考委員 
『孤狼の血』
長篇 731
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
林真理子
女61歳
14 「やはりこの疑問は残る。「どうしてこれほど古いやくざの物語を描くのか」」「また中年刑事と新人刑事との、これほどの濃厚な関係が一ヶ月でつくれるものなのかという思いもある。」
北方謙三
男68歳
19 「ハードボイルドふうであるが、行間から立ちあがってくるものを、私は感じとることができなかった。章の最初につけられた日誌、最後の年表のようなものなど、細かいところまできちんとしなければならないという、作者の真面目さが感じられたが、理屈を突き抜けた迫力を獲得できなかったのも、そのためかと私は考えた。」
浅田次郎
男64歳
10 「よく言えばオーソドックスな、悪く言うならオリジナリティを欠く作品である。この「よくも悪しくも当たり前」という按配は、一定数の読者を獲得するうえですこぶる有効なのだが、作者はまさかそれをめざす段階ではない。」
宮部みゆき
女55歳
30 「新進気鋭の実力派の映像作家が、もしも今『仁義なき戦い』をリメイクしようと思い立ったら、あの傑作から何を引き、何を足すべきかを悩むはずです。」「舞台を昭和六十三年(ざっと二十八年前)に据えるのは、「何も足さず何も引かない」選択をしたことだと、私は思います。それはそれで敬意を覚える思い切りですが、結果的に『孤狼の血』は何となくアナクロで、既視感の多い作品になってしまいました。」
伊集院静
男65歳
4 「意欲作であるが、もう少し人間の機微を捉えなくてはと思った。」
高村薫
女62歳
16 「豊富な取材にもかかわらず、やくざと刑事の関係にはもう一段の奥深さがあることに思いが至っていないのは、書き手が身体で対象を捉えていないためだろう。」
桐野夏生
女64歳
9 「地の文章はうまい。しかし、台詞で状況説明をしているのが安易に思えた。」「登場人物も既視感があって、新鮮味が感じられなかった。」
宮城谷昌光
男70歳
23 「テーマがあいまいで、全体をまわしてゆく軸がぶれている。」「重要人物の死は、物語を切断すると同時に、質のちがう継続を生じさせる。音楽でいう転調である。そのあたりの意識も作者には稀薄であったようで、浸潤性のとぼしい作品となった。」
東野圭吾
男57歳
22 「ヤクザよりも狡猾で暴力的な刑事、というのはマル暴刑事のイメージそのもの。もう少し意外性のある個性を加味してほしかった。ストーリーにも、やや無理が目立つ。死体の処分で、船があるのに海に捨てずに無人島に埋めるという行為は、愚かすぎないか。警察の不祥事をまとめたノートが存在するというのも安易。」
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他の候補作
青山文平
『つまをめとらば』
梶よう子
『ヨイ豊』
深緑野分
『戦場のコックたち』
宮下奈都
『羊と鋼の森』
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