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第155回
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平成28年/2016年上半期
(平成28年/2016年7月19日決定発表/『オール讀物』平成28年/2016年9月号選評掲載)
選考委員  北方謙三
男68歳
宮部みゆき
女55歳
浅田次郎
男64歳
東野圭吾
男58歳
宮城谷昌光
男71歳
高村薫
女63歳
伊集院静
男66歳
桐野夏生
女64歳
林真理子
女62歳
選評総行数  101 136 102 144 102 102 114 106 98
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
荻原浩 『海の見える理髪店』
379
男60歳
13 17 23 17 24 12 50 20 22
伊東潤 『天下人の茶』
455
男56歳
22 12 20 20 26 15 5 19 8
門井慶喜 『家康、江戸を建てる』
678
男44歳
15 47 13 35 14 17 16 20 10
原田マハ 『暗幕のゲルニカ』
719
女54歳
17 20 17 25 20 19 10 15 9
湊かなえ 『ポイズンドーター・ホーリーマザー』
398
女43歳
14 29 14 23 13 17 6 9 25
米澤穂信 『真実の10メートル手前』
513
男38歳
12 11 14 23 9 15 6 23 14
                 
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』平成28年/2016年9月号
1行当たりの文字数:12字


選考委員
北方謙三男68歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
短篇の快感 総行数101 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
荻原浩
男60歳
13 「オーソドックスな短篇集と言っていい。しっかりと鮮やかな切り口を覗きこめば、人々の営みの底に、闇のようなものが見えてきたりする。肩肘の張った描写でないところが、この作者らしいとも感じた。」
伊東潤
男56歳
22 「難しい題材に挑んで、必ずしも成功はしなかった、というふうに感じた。」「この作品では、茶道をきわめようとしながら、俗なものにしか行き着かず、もの狂いの果てに業に陥ちるというような姿に、生身の迫力があったと私は思った。」
門井慶喜
男44歳
15 「工事に携る技術者たちの姿が、秀抜であった。」「家康ではなく、彼らが江戸を建てれば、小説として緩みのないものに仕上がっただろう、と感じた。」「とても惜しい。迷ったが、いまひとつ、推そうという力が出なかった。」
原田マハ
女54歳
17 「戦前部分の視点にドラを持ってきたので、女の情念が夾雑物になり、ピカソの姿が読者から遠ざかるというところがあると感じた。戦後の部分では、9・11のテロと『ゲルニカ』を結びつける必然性がどれほどあったのか、と思う。私は、『ゲルニカ』がただ反戦の象徴だとは思わない。」
湊かなえ
女43歳
14 「全体に人物造形が細かい割りには、平板で過剰であるという印象を持った。たとえばこれを役者が演じるとしたら、情念が滲み出し、表情が刻々と動き、平板さは消えるのではないか、と考えてしまった。」
米澤穂信
男38歳
12 「謎が設定され、やがて女性記者が登場して、読者にも登場人物にも読みきれない動きの中で、謎が解明される鮮やかさがあり、私などにはそれはカタルシスとなった。」「どこか小説とは遠いという印象も拭いきれなかった。」
  「候補作六本のうち、五本が短篇集であった。短篇集の出版があまり多くないという情況の中で、これはちょっと特筆してもいいことだった。」
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他の選考委員
宮部みゆき
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桐野夏生
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選考委員
宮部みゆき女55歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
新しい試み 総行数136 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
荻原浩
男60歳
17 「個人的には、こういう上手に泣かせる短編集ではなく、荻原浩本来の持ち味であるアイデアがぴりっと利いた物語性豊かな作品で受賞してほしかったという想いもあるのですが、」「「成人式」は、(引用者中略)深いテーマを軽妙に、しかしあくまでも真摯に描くという荻原さんらしい短編だと思いました。」
伊東潤
男56歳
12 「伊東潤さんが利休と秀吉を描いた! というだけでもう美味しい小説になるはずなので、もっと踏み込んで煮詰めてほしかったなあと思いました。」
門井慶喜
男44歳
47 「とても勉強になり、読後は満腹の気分でした。なのに、私はこの作品を推さなかった。小説としては薄味な印象を覚え、こういう素材は歴史読みものに仕立てた方がいいのではないかと思ったからです。」
原田マハ
女54歳
20 「ピカソは偉大な画家ですが、一人の男性としては、付き合う女性たちを使い捨てにする嫌な奴ですね。そんな男が、民衆の自由を奪う独裁に怒って筆を取り、見る者の魂を揺さぶる絵を描く。その皮肉、矛盾を容赦なくあぶり出すには、原田さんはピカソを深く愛し過ぎちゃっているのかなと感じました。」
湊かなえ
女43歳
29 「私は湊さんの作品で、(引用者中略)登場人物に共感して、「わかるわかる」と呻ることの方が多い。今回の『ポイズンドーター・ホーリーマザー』もそうでした。ただ、「わかる」にプラスするサムシングがなかったことが残念。」
米澤穂信
男38歳
11 「この一冊だけで(引用者注:太刀洗)万智を知ってもらうのは難しかった。このあたりが文学賞の辛いところです。」
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桐野夏生
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選考委員
浅田次郎男64歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
心に残る物語 総行数102 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
荻原浩
男60歳
23 「(引用者注:授賞に)同意したのは、いくつかの物語が心に残ったからである。」「氏の作品は概して、奇抜な発想にもかかわらず静謐に進行する。しかしテーマが据わっているので、心に残るのである。おそらくそうした地味で堅実な手法に、ご年齢が追いついてきたのだと思う。」
伊東潤
男56歳
20 「たゆまぬ勤勉さと剛直な執筆姿勢には敬服する。しかしいつも推し切れぬ理由は、歴史に対する情熱が、文学に対するそれを凌駕している、と思えるからである。」
門井慶喜
男44歳
13 「(引用者注:「天下人の茶」と共に)歴史文学とは、歴史を著す文学の謂ではなく、文学表現の舞台を歴史に求めるのだという私観に則れば、どうしても推し切れぬ。」
原田マハ
女54歳
17 「もったいない小説であった。」「どうして主人公がテロリストに誘拐され、活劇に堕してしまったのだろう。主題を貫くのであれば、ここにはヒトラーの意に反して降伏したコルティッツの勇気や、パリ解放という芸術の勝利を書かねばならなかったはずである。」
湊かなえ
女43歳
14 「母と娘の相克をテーマに据えた連作集と読んだ。その点はとても文学的で、なおかつ普遍的でもあるのだが、短篇連作とするには、当然起こりうる暗鬱さを読者に負担させない工夫が必要だったのではなかろうか。」
米澤穂信
男38歳
14 「連作の中には、明らかに前作を読んでいなければ理解できない作品もあったから、公平であったとは言い難い。」「ミステリーの形を作るために、常識や社会性を無視しているきらいはある。」
  「今回の候補作は、まこと華やかな顔ぶれであった。しかし読み了えてみれば豈図らんや、強く推せる作品がなかった。」「受賞に至らなかった五作品は、いずれもわずかな変化で傑作となりえた。」
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北方謙三
宮部みゆき
東野圭吾
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高村薫
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選考委員
東野圭吾男58歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
少し無念 総行数144 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
荻原浩
男60歳
17 「ゲルニカ(引用者注:「暗幕のゲルニカ」)とどっちを△にするかで迷った」「プロ作家の仕事として、何の問題もない。」「△にしなかったのは、『家康、江戸を建てる』と接戦に持ち込みたい、という戦略上の理由からだ。最終的に○をつけたのはいうまでもない。」
伊東潤
男56歳
20 「読んでいて核が感じられなかった。」「なぜかと考え、やはり連作だからではないかと思った。これほどの大きなテーマを扱うのならば、『利休形』を軸にした長編にすべきではなかったか。」「またところどころ、重要な場面がダイジェストになってしまうのももったいないと感じた。」
門井慶喜
男44歳
35 「私が推したのは、『家康、江戸を建てる』だった。」「河川工事、貨幣政策、水道事業といった大事業の成された様子が、大胆な筆致で描かれており、スケールの大きさとスピード感に圧倒された。」「もし難点を挙げるなら、これは小説と呼べるのかという点だなと思い、選考会に臨んだ。そしてやっぱり、その点が指摘された。いいじゃん小説じゃなくたってと抵抗したが、いやそれはまずいでしょ、家康を描いてないし、という感じで賛同を得られなかった。」
原田マハ
女54歳
25 「今回の△」「ピカソとゲルニカ、こんなものを小説の題材に選べる資質が羨ましい。ダイナミックかつ、劇的な展開を大いに楽しめた。しかしピカソへの愛、ゲルニカへの熱い思いを、あまりに何度も繰り返し読まされるうち、飽きてきたのも事実だ。」「最大のマイナスはテロリストの登場。リアリティのなさを指摘されたら、弁護はできなかった。」
湊かなえ
女43歳
23 「一定の水準に達していると思うが、そのレベルで留まっている印象だ。」「ストーリーのために作られた人間が、やや単純化されすぎていると感じた。人間の心の闇とは、もっと深く複雑ではないだろうか。」
米澤穂信
男38歳
23 「人物の動き、とりわけ心の動きに不自然さが目立った。たとえば高校生が死に方を教師に相談するだろうか。遺体を発見した中学生、異国からの来訪者、消防団員、いずれもがヒロインの取材に「同行させてくれ」といいだすのも、ヒロインの慧眼を描きたい作者の都合としか思えなかった。」
  「候補作には実力者の作品が並んだ。いずれも良き読書体験となった。その点をまず作者たちに感謝したい。」
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他の選考委員
北方謙三
宮部みゆき
浅田次郎
宮城谷昌光
高村薫
伊集院静
桐野夏生
林真理子
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選考委員
宮城谷昌光男71歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
誠実さの下にあるもの 総行数102 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
荻原浩
男60歳
24 「私は氏のほかの候補作品よりもその作品(引用者注:『あの日にドライブ』)に愛着があるがゆえに、新しい目で氏の作品を正視できない弊習のなかにいるのかもしれない。今回の『海の見える理髪店』は、つくりものの気配が濃厚に残っているため、小説世界に素直にはいってゆけない。それでもこの短編集はテーマの流用などはなく、その誠実さには好感がもてる。」
伊東潤
男56歳
26 「(引用者注:「家康、江戸を建てる」「暗幕のゲルニカ」と共に)誠実さの下に断えざる努力がすけてみえる」「惜しいことに、小説的裏芸がない。あえていえば肯定形の器に、肯定形の文がたっぷり盛られているにすぎない。さらにわかりにくいことをいうことになるかもしれないが、人がおどろくのは、おどろいた人をみておどろくのである。」
門井慶喜
男44歳
14 「(引用者注:「天下人の茶」「暗幕のゲルニカ」と共に)誠実さの下に断えざる努力がすけてみえる」「伊東氏とはちがう才覚のつかいかたがあり、妙味はこちらのほうにある。それでも、もう一段上の格調がほしい。」
原田マハ
女54歳
20 「(引用者注:「天下人の茶」「家康、江戸を建てると共に)誠実さの下に断えざる努力がすけてみえる」「原田氏の関心は印象派以降の画家にむけられており、それに関する知識の横溢はすさまじいものではあるが、小説的成功に達していないと感じてしまうのは私だけであろうか。」
湊かなえ
女43歳
13 「自意識の極度の高ぶりが招く事件は、最後に客観が与えられて、急激に冷やされる。そういう書きかたは、氏の自家薬籠中のものになったようではあるが、氏の作品に発展を期待していた私にとっては、ものたりなかった。」
米澤穂信
男38歳
9 「私にはミステリーの新旧をいう資格はないので、別のことをいっておく。この作者には、言語における底力がある。」
  「秀抜な作品はなかったといわざるをえないが、この直木賞が新人賞の性格をもっている以上、究極の名作を求める作業をする必要はなく、みどころのある作者にスプリングボードを提供するだけでよい、という考えかたをしても、さしつかえあるまい。」
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他の選考委員
北方謙三
宮部みゆき
浅田次郎
東野圭吾
高村薫
伊集院静
桐野夏生
林真理子
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選考委員
高村薫女63歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数102 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
荻原浩
男60歳
12 「熟練の手で紡がれる物語はどれも少しあざとく、予定調和的ではあるが、私たちのさりげない日常は、こうして切り取られることによって初めて「人生」になるのだと気づかされる。これぞ小説の一つの典型ではあるだろう。」
伊東潤
男56歳
15 「有名すぎる千利休をあらためて小説仕立てにすることの難しさを教えている。」「利休と秀吉の関係について新しい仮説を立てる程度では、小説は資料や知識の披瀝の手段になってしまい、小説らしさから遠ざかってゆくのは必然である。」
門井慶喜
男44歳
17 「職人たちにはそれぞれ人生の物語もあるが、いずれも江戸時代のインフラや技術を楽しく紹介するための道具立ての域を出ない。老婆心ながら、小説は面白いアイデアとは別の次元で成立している何ものか、である。」
原田マハ
女54歳
19 「素材が十分に小説になっていない。」「ピカソの研究者である主人公が『ゲルニカ』を反戦平和のシンボルとしてのみ捉えているのは、近代絵画の見方として不十分すぎるだろう。小説とは、好きなものを好きなように描くための万能のキャンバスではない。」
湊かなえ
女43歳
17 「不特定多数に向かって主人公が自身の悪意や感情を吐露してみせるブログの世界、もしくは一人芝居の台詞に留まっているように感じられた。」「また、Aの独白からBの独白に移行することで白を黒にする手法の多用は、読者を白けさせるだけだろう。」
米澤穂信
男38歳
15 「どの短編も初めにトリックありき、謎解きありきで、市井の小さな事件が取り上げられているわりには、人物の動機や行動原理に真実味が感じられない。」
  「今回は、候補作を通して図らずも「小説とは」と考える選考会となった。その気になれば誰でも小説のようなものは書ける今日、小説の真髄が逆に問われているのだと思う。」
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他の選考委員
北方謙三
宮部みゆき
浅田次郎
東野圭吾
宮城谷昌光
伊集院静
桐野夏生
林真理子
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選考委員
伊集院静男66歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
おだやかで鋭利 総行数114 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
荻原浩
男60歳
50 「すべての候補作を読んで、作品の世界、文章が一番安定していた」「荻原さんのおだやかな語り口は才覚と言うより、途絶えることなく書き続けた作家だけが手にする鍛錬がなした技量だと思う。おだやかでいて鋭い。まさにプロの文体である。再投票で選考委員満票の受賞であった。」
伊東潤
男56歳
5 「登場人物の在り方が、どこかで見聞なり、読んだものに思えて小説が凡庸になっていた。」
門井慶喜
男44歳
16 「受賞作(引用者注:「海の見える理髪店」)と競った」「第一話から第三話までは一気に読まされた。」「ただ作品の後半に入って、物語をまとめたように思えた。前半の関東平野、江戸幕府を拓く男たちの湧き立つ熱が失せたのではないか。」
原田マハ
女54歳
10 「名画、巨匠を軸にしてここまで挑み続けている姿勢に感服させられる。今作はストーリーテリングに無理があったように思う。」
湊かなえ
女43歳
6 「彼女本来の力量が、私には見えなかった。彼女らしい候補作があるのではと思う。」
米澤穂信
男38歳
6 「シリーズの中の人物が登場したり、判然としない箇所があり、候補作としては不利になっていた。」
  「今回、あらためて文学賞の選考会の難しさを再認識した。」
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他の選考委員
北方謙三
宮部みゆき
浅田次郎
東野圭吾
宮城谷昌光
高村薫
桐野夏生
林真理子
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選考委員
桐野夏生女64歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数106 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
荻原浩
男60歳
20 「どの作品にも、確実なディテールに支えられた安定感がある。その安定感は、読書の喜びへと通じるものだ。」「ちなみに、私が好きな物語は、「いつか来た道」である。母と娘の齟齬は平行線のままだが、年月が経てば母は老いて、悲しみだけが残る。」
伊東潤
男56歳
19 「いかにしてオリジナリティを獲得していくのかが、作者の腕の見せどころであろう。大量の資料を繰って、人物を造型するのは面白い作業だと思うが、本作で成功しているとは言い難い。」「また、第一部と第二部とで逸話を挟む構成に無理があるのではないか。」
門井慶喜
男44歳
20 「「二十一世紀の用語で端的に言うと」などと、わかりやすく説明もしてくれるし、文章のリズムも心地よい。だが、人物描写などは一切なく、読み進むうちに、自分はいったい何を知りたくて読んでいるのかがわからなくなる。」
原田マハ
女54歳
15 「連載を一冊の本に纏める時は、重複などを直すものだが、残念ながら本作品には、記述の繰り返しが多く見られた。」「最大の難点は、絵画という芸術に対して繰り出す言葉が、あまりにも物足りなく感じられることだろうか。」
湊かなえ
女43歳
9 「トラックを同じペースでぐるぐる周回している気がする。どこかでスパートをかけてほしいと願いながら読んだが、残念ながら抜け出すことはできなかったようだ。」
米澤穂信
男38歳
23 「構成に凝っていたり、どきりとするようなグロテスクな芯があったりと、退屈はしない。しかし、無理に謎を作ろうとしているような息苦しさを感じる。」「太刀洗の一人称は表題作のみで、他の作品は第三者の視点となっている。その太刀洗に対する著者の距離感のばらつきが、太刀洗という人物を空虚にしている。」
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他の選考委員
北方謙三
宮部みゆき
浅田次郎
東野圭吾
宮城谷昌光
高村薫
伊集院静
林真理子
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選考委員
林真理子女62歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
一流の人たちの… 総行数98 (1行=12字)
候補 評価 行数 評言
荻原浩
男60歳
22 「さすがベテランらしく、文章力、構成力、すべてがいきとどいている。しかし私としては、いささかもの足りない思いがあった。」「「荻原さんなら、このレベルのものはいくらでも書けるだろう」」
伊東潤
男56歳
8 「利休はじめ登場人物が喋べり過ぎである。ここまで喋べると彼らの底深い大きさが見えてこなくなってしまう。」
門井慶喜
男44歳
10 「いちばん評価した」「明るくあっけらかんとした筆致が笑わせる。資料集めの苦労の跡を見せない。これは素晴らしい才能である。」
原田マハ
女54歳
9 「非常に魅力ある世界を描いているが、あまりこちらに伝わってこない。壮大なテーマに文章が追いついていかないような気がする。」
湊かなえ
女43歳
25 「後味の悪い小説というのは必ずしも悪いものではないが、心理の流れが納得出来ないものでは困る。」「まず思うことがストーリーの瑕瑾で文学の本質からはずれるものばかりだったのは残念である。」
米澤穂信
男38歳
14 「シリーズものということもあるが、物足りなさが残った。」「また水害で救助された夫婦を描いた短篇については、おそらく多くの読者が、「冷蔵庫を借りるのがそれほどの罪か」と鼻白むような気がする。」
  「今回の候補作は、「一流の人が書いた二流の作品」という趣であった。」
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他の選考委員
北方謙三
宮部みゆき
浅田次郎
東野圭吾
宮城谷昌光
高村薫
伊集院静
桐野夏生
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受賞者・作品
荻原浩男60歳×各選考委員 
『海の見える理髪店』
短篇集6篇 379
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
北方謙三
男68歳
13 「オーソドックスな短篇集と言っていい。しっかりと鮮やかな切り口を覗きこめば、人々の営みの底に、闇のようなものが見えてきたりする。肩肘の張った描写でないところが、この作者らしいとも感じた。」
宮部みゆき
女55歳
17 「個人的には、こういう上手に泣かせる短編集ではなく、荻原浩本来の持ち味であるアイデアがぴりっと利いた物語性豊かな作品で受賞してほしかったという想いもあるのですが、」「「成人式」は、(引用者中略)深いテーマを軽妙に、しかしあくまでも真摯に描くという荻原さんらしい短編だと思いました。」
浅田次郎
男64歳
23 「(引用者注:授賞に)同意したのは、いくつかの物語が心に残ったからである。」「氏の作品は概して、奇抜な発想にもかかわらず静謐に進行する。しかしテーマが据わっているので、心に残るのである。おそらくそうした地味で堅実な手法に、ご年齢が追いついてきたのだと思う。」
東野圭吾
男58歳
17 「ゲルニカ(引用者注:「暗幕のゲルニカ」)とどっちを△にするかで迷った」「プロ作家の仕事として、何の問題もない。」「△にしなかったのは、『家康、江戸を建てる』と接戦に持ち込みたい、という戦略上の理由からだ。最終的に○をつけたのはいうまでもない。」
宮城谷昌光
男71歳
24 「私は氏のほかの候補作品よりもその作品(引用者注:『あの日にドライブ』)に愛着があるがゆえに、新しい目で氏の作品を正視できない弊習のなかにいるのかもしれない。今回の『海の見える理髪店』は、つくりものの気配が濃厚に残っているため、小説世界に素直にはいってゆけない。それでもこの短編集はテーマの流用などはなく、その誠実さには好感がもてる。」
高村薫
女63歳
12 「熟練の手で紡がれる物語はどれも少しあざとく、予定調和的ではあるが、私たちのさりげない日常は、こうして切り取られることによって初めて「人生」になるのだと気づかされる。これぞ小説の一つの典型ではあるだろう。」
伊集院静
男66歳
50 「すべての候補作を読んで、作品の世界、文章が一番安定していた」「荻原さんのおだやかな語り口は才覚と言うより、途絶えることなく書き続けた作家だけが手にする鍛錬がなした技量だと思う。おだやかでいて鋭い。まさにプロの文体である。再投票で選考委員満票の受賞であった。」
桐野夏生
女64歳
20 「どの作品にも、確実なディテールに支えられた安定感がある。その安定感は、読書の喜びへと通じるものだ。」「ちなみに、私が好きな物語は、「いつか来た道」である。母と娘の齟齬は平行線のままだが、年月が経てば母は老いて、悲しみだけが残る。」
林真理子
女62歳
22 「さすがベテランらしく、文章力、構成力、すべてがいきとどいている。しかし私としては、いささかもの足りない思いがあった。」「「荻原さんなら、このレベルのものはいくらでも書けるだろう」」
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他の候補作
伊東潤
『天下人の茶』
門井慶喜
『家康、江戸を建てる』
原田マハ
『暗幕のゲルニカ』
湊かなえ
『ポイズンドーター・ホーリーマザー』
米澤穂信
『真実の10メートル手前』
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候補者・作品
伊東潤男56歳×各選考委員 
『天下人の茶』
連作長篇 455
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
北方謙三
男68歳
22 「難しい題材に挑んで、必ずしも成功はしなかった、というふうに感じた。」「この作品では、茶道をきわめようとしながら、俗なものにしか行き着かず、もの狂いの果てに業に陥ちるというような姿に、生身の迫力があったと私は思った。」
宮部みゆき
女55歳
12 「伊東潤さんが利休と秀吉を描いた! というだけでもう美味しい小説になるはずなので、もっと踏み込んで煮詰めてほしかったなあと思いました。」
浅田次郎
男64歳
20 「たゆまぬ勤勉さと剛直な執筆姿勢には敬服する。しかしいつも推し切れぬ理由は、歴史に対する情熱が、文学に対するそれを凌駕している、と思えるからである。」
東野圭吾
男58歳
20 「読んでいて核が感じられなかった。」「なぜかと考え、やはり連作だからではないかと思った。これほどの大きなテーマを扱うのならば、『利休形』を軸にした長編にすべきではなかったか。」「またところどころ、重要な場面がダイジェストになってしまうのももったいないと感じた。」
宮城谷昌光
男71歳
26 「(引用者注:「家康、江戸を建てる」「暗幕のゲルニカ」と共に)誠実さの下に断えざる努力がすけてみえる」「惜しいことに、小説的裏芸がない。あえていえば肯定形の器に、肯定形の文がたっぷり盛られているにすぎない。さらにわかりにくいことをいうことになるかもしれないが、人がおどろくのは、おどろいた人をみておどろくのである。」
高村薫
女63歳
15 「有名すぎる千利休をあらためて小説仕立てにすることの難しさを教えている。」「利休と秀吉の関係について新しい仮説を立てる程度では、小説は資料や知識の披瀝の手段になってしまい、小説らしさから遠ざかってゆくのは必然である。」
伊集院静
男66歳
5 「登場人物の在り方が、どこかで見聞なり、読んだものに思えて小説が凡庸になっていた。」
桐野夏生
女64歳
19 「いかにしてオリジナリティを獲得していくのかが、作者の腕の見せどころであろう。大量の資料を繰って、人物を造型するのは面白い作業だと思うが、本作で成功しているとは言い難い。」「また、第一部と第二部とで逸話を挟む構成に無理があるのではないか。」
林真理子
女62歳
8 「利休はじめ登場人物が喋べり過ぎである。ここまで喋べると彼らの底深い大きさが見えてこなくなってしまう。」
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他の候補作
荻原浩
『海の見える理髪店』
門井慶喜
『家康、江戸を建てる』
原田マハ
『暗幕のゲルニカ』
湊かなえ
『ポイズンドーター・ホーリーマザー』
米澤穂信
『真実の10メートル手前』
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候補者・作品
門井慶喜男44歳×各選考委員 
『家康、江戸を建てる』
連作5篇 678
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
北方謙三
男68歳
15 「工事に携る技術者たちの姿が、秀抜であった。」「家康ではなく、彼らが江戸を建てれば、小説として緩みのないものに仕上がっただろう、と感じた。」「とても惜しい。迷ったが、いまひとつ、推そうという力が出なかった。」
宮部みゆき
女55歳
47 「とても勉強になり、読後は満腹の気分でした。なのに、私はこの作品を推さなかった。小説としては薄味な印象を覚え、こういう素材は歴史読みものに仕立てた方がいいのではないかと思ったからです。」
浅田次郎
男64歳
13 「(引用者注:「天下人の茶」と共に)歴史文学とは、歴史を著す文学の謂ではなく、文学表現の舞台を歴史に求めるのだという私観に則れば、どうしても推し切れぬ。」
東野圭吾
男58歳
35 「私が推したのは、『家康、江戸を建てる』だった。」「河川工事、貨幣政策、水道事業といった大事業の成された様子が、大胆な筆致で描かれており、スケールの大きさとスピード感に圧倒された。」「もし難点を挙げるなら、これは小説と呼べるのかという点だなと思い、選考会に臨んだ。そしてやっぱり、その点が指摘された。いいじゃん小説じゃなくたってと抵抗したが、いやそれはまずいでしょ、家康を描いてないし、という感じで賛同を得られなかった。」
宮城谷昌光
男71歳
14 「(引用者注:「天下人の茶」「暗幕のゲルニカ」と共に)誠実さの下に断えざる努力がすけてみえる」「伊東氏とはちがう才覚のつかいかたがあり、妙味はこちらのほうにある。それでも、もう一段上の格調がほしい。」
高村薫
女63歳
17 「職人たちにはそれぞれ人生の物語もあるが、いずれも江戸時代のインフラや技術を楽しく紹介するための道具立ての域を出ない。老婆心ながら、小説は面白いアイデアとは別の次元で成立している何ものか、である。」
伊集院静
男66歳
16 「受賞作(引用者注:「海の見える理髪店」)と競った」「第一話から第三話までは一気に読まされた。」「ただ作品の後半に入って、物語をまとめたように思えた。前半の関東平野、江戸幕府を拓く男たちの湧き立つ熱が失せたのではないか。」
桐野夏生
女64歳
20 「「二十一世紀の用語で端的に言うと」などと、わかりやすく説明もしてくれるし、文章のリズムも心地よい。だが、人物描写などは一切なく、読み進むうちに、自分はいったい何を知りたくて読んでいるのかがわからなくなる。」
林真理子
女62歳
10 「いちばん評価した」「明るくあっけらかんとした筆致が笑わせる。資料集めの苦労の跡を見せない。これは素晴らしい才能である。」
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他の候補作
荻原浩
『海の見える理髪店』
伊東潤
『天下人の茶』
原田マハ
『暗幕のゲルニカ』
湊かなえ
『ポイズンドーター・ホーリーマザー』
米澤穂信
『真実の10メートル手前』
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候補者・作品
原田マハ女54歳×各選考委員 
『暗幕のゲルニカ』
長篇 719
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
北方謙三
男68歳
17 「戦前部分の視点にドラを持ってきたので、女の情念が夾雑物になり、ピカソの姿が読者から遠ざかるというところがあると感じた。戦後の部分では、9・11のテロと『ゲルニカ』を結びつける必然性がどれほどあったのか、と思う。私は、『ゲルニカ』がただ反戦の象徴だとは思わない。」
宮部みゆき
女55歳
20 「ピカソは偉大な画家ですが、一人の男性としては、付き合う女性たちを使い捨てにする嫌な奴ですね。そんな男が、民衆の自由を奪う独裁に怒って筆を取り、見る者の魂を揺さぶる絵を描く。その皮肉、矛盾を容赦なくあぶり出すには、原田さんはピカソを深く愛し過ぎちゃっているのかなと感じました。」
浅田次郎
男64歳
17 「もったいない小説であった。」「どうして主人公がテロリストに誘拐され、活劇に堕してしまったのだろう。主題を貫くのであれば、ここにはヒトラーの意に反して降伏したコルティッツの勇気や、パリ解放という芸術の勝利を書かねばならなかったはずである。」
東野圭吾
男58歳
25 「今回の△」「ピカソとゲルニカ、こんなものを小説の題材に選べる資質が羨ましい。ダイナミックかつ、劇的な展開を大いに楽しめた。しかしピカソへの愛、ゲルニカへの熱い思いを、あまりに何度も繰り返し読まされるうち、飽きてきたのも事実だ。」「最大のマイナスはテロリストの登場。リアリティのなさを指摘されたら、弁護はできなかった。」
宮城谷昌光
男71歳
20 「(引用者注:「天下人の茶」「家康、江戸を建てると共に)誠実さの下に断えざる努力がすけてみえる」「原田氏の関心は印象派以降の画家にむけられており、それに関する知識の横溢はすさまじいものではあるが、小説的成功に達していないと感じてしまうのは私だけであろうか。」
高村薫
女63歳
19 「素材が十分に小説になっていない。」「ピカソの研究者である主人公が『ゲルニカ』を反戦平和のシンボルとしてのみ捉えているのは、近代絵画の見方として不十分すぎるだろう。小説とは、好きなものを好きなように描くための万能のキャンバスではない。」
伊集院静
男66歳
10 「名画、巨匠を軸にしてここまで挑み続けている姿勢に感服させられる。今作はストーリーテリングに無理があったように思う。」
桐野夏生
女64歳
15 「連載を一冊の本に纏める時は、重複などを直すものだが、残念ながら本作品には、記述の繰り返しが多く見られた。」「最大の難点は、絵画という芸術に対して繰り出す言葉が、あまりにも物足りなく感じられることだろうか。」
林真理子
女62歳
9 「非常に魅力ある世界を描いているが、あまりこちらに伝わってこない。壮大なテーマに文章が追いついていかないような気がする。」
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他の候補作
荻原浩
『海の見える理髪店』
伊東潤
『天下人の茶』
門井慶喜
『家康、江戸を建てる』
湊かなえ
『ポイズンドーター・ホーリーマザー』
米澤穂信
『真実の10メートル手前』
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候補者・作品
湊かなえ女43歳×各選考委員 
『ポイズンドーター・ホーリーマザー』
短篇集6篇 398
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
北方謙三
男68歳
14 「全体に人物造形が細かい割りには、平板で過剰であるという印象を持った。たとえばこれを役者が演じるとしたら、情念が滲み出し、表情が刻々と動き、平板さは消えるのではないか、と考えてしまった。」
宮部みゆき
女55歳
29 「私は湊さんの作品で、(引用者中略)登場人物に共感して、「わかるわかる」と呻ることの方が多い。今回の『ポイズンドーター・ホーリーマザー』もそうでした。ただ、「わかる」にプラスするサムシングがなかったことが残念。」
浅田次郎
男64歳
14 「母と娘の相克をテーマに据えた連作集と読んだ。その点はとても文学的で、なおかつ普遍的でもあるのだが、短篇連作とするには、当然起こりうる暗鬱さを読者に負担させない工夫が必要だったのではなかろうか。」
東野圭吾
男58歳
23 「一定の水準に達していると思うが、そのレベルで留まっている印象だ。」「ストーリーのために作られた人間が、やや単純化されすぎていると感じた。人間の心の闇とは、もっと深く複雑ではないだろうか。」
宮城谷昌光
男71歳
13 「自意識の極度の高ぶりが招く事件は、最後に客観が与えられて、急激に冷やされる。そういう書きかたは、氏の自家薬籠中のものになったようではあるが、氏の作品に発展を期待していた私にとっては、ものたりなかった。」
高村薫
女63歳
17 「不特定多数に向かって主人公が自身の悪意や感情を吐露してみせるブログの世界、もしくは一人芝居の台詞に留まっているように感じられた。」「また、Aの独白からBの独白に移行することで白を黒にする手法の多用は、読者を白けさせるだけだろう。」
伊集院静
男66歳
6 「彼女本来の力量が、私には見えなかった。彼女らしい候補作があるのではと思う。」
桐野夏生
女64歳
9 「トラックを同じペースでぐるぐる周回している気がする。どこかでスパートをかけてほしいと願いながら読んだが、残念ながら抜け出すことはできなかったようだ。」
林真理子
女62歳
25 「後味の悪い小説というのは必ずしも悪いものではないが、心理の流れが納得出来ないものでは困る。」「まず思うことがストーリーの瑕瑾で文学の本質からはずれるものばかりだったのは残念である。」
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他の候補作
荻原浩
『海の見える理髪店』
伊東潤
『天下人の茶』
門井慶喜
『家康、江戸を建てる』
原田マハ
『暗幕のゲルニカ』
米澤穂信
『真実の10メートル手前』
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候補者・作品
米澤穂信男38歳×各選考委員 
『真実の10メートル手前』
短篇集6篇 513
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
北方謙三
男68歳
12 「謎が設定され、やがて女性記者が登場して、読者にも登場人物にも読みきれない動きの中で、謎が解明される鮮やかさがあり、私などにはそれはカタルシスとなった。」「どこか小説とは遠いという印象も拭いきれなかった。」
宮部みゆき
女55歳
11 「この一冊だけで(引用者注:太刀洗)万智を知ってもらうのは難しかった。このあたりが文学賞の辛いところです。」
浅田次郎
男64歳
14 「連作の中には、明らかに前作を読んでいなければ理解できない作品もあったから、公平であったとは言い難い。」「ミステリーの形を作るために、常識や社会性を無視しているきらいはある。」
東野圭吾
男58歳
23 「人物の動き、とりわけ心の動きに不自然さが目立った。たとえば高校生が死に方を教師に相談するだろうか。遺体を発見した中学生、異国からの来訪者、消防団員、いずれもがヒロインの取材に「同行させてくれ」といいだすのも、ヒロインの慧眼を描きたい作者の都合としか思えなかった。」
宮城谷昌光
男71歳
9 「私にはミステリーの新旧をいう資格はないので、別のことをいっておく。この作者には、言語における底力がある。」
高村薫
女63歳
15 「どの短編も初めにトリックありき、謎解きありきで、市井の小さな事件が取り上げられているわりには、人物の動機や行動原理に真実味が感じられない。」
伊集院静
男66歳
6 「シリーズの中の人物が登場したり、判然としない箇所があり、候補作としては不利になっていた。」
桐野夏生
女64歳
23 「構成に凝っていたり、どきりとするようなグロテスクな芯があったりと、退屈はしない。しかし、無理に謎を作ろうとしているような息苦しさを感じる。」「太刀洗の一人称は表題作のみで、他の作品は第三者の視点となっている。その太刀洗に対する著者の距離感のばらつきが、太刀洗という人物を空虚にしている。」
林真理子
女62歳
14 「シリーズものということもあるが、物足りなさが残った。」「また水害で救助された夫婦を描いた短篇については、おそらく多くの読者が、「冷蔵庫を借りるのがそれほどの罪か」と鼻白むような気がする。」
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他の候補作
荻原浩
『海の見える理髪店』
伊東潤
『天下人の茶』
門井慶喜
『家康、江戸を建てる』
原田マハ
『暗幕のゲルニカ』
湊かなえ
『ポイズンドーター・ホーリーマザー』
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