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第93回
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昭和60年/1985年上半期
(昭和60年/1985年7月18日決定発表/『オール讀物』昭和60年/1985年10月号選評掲載)
選考委員  池波正太郎
男62歳
山口瞳
男58歳
村上元三
男75歳
井上ひさし
男50歳
水上勉
男66歳
五木寛之
男52歳
黒岩重吾
男61歳
渡辺淳一
男51歳
選評総行数  47 55 51 80 56 63 60 52
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
山口洋子 「演歌の虫」等
225
女48歳
26 29 10 20 24 10 31 14
林真理子 「胡桃の家」
72
女31歳
0 0 3 12 15 3 6 24
泡坂妻夫 『ゆきなだれ』
429
男52歳
0 0 5 16 0 15 0 0
森詠 『雨はいつまで降り続く』
826
男43歳
0 0 9 9 0 8 0 0
杉本章子 「名主の裔」
199
女32歳
8 0 7 8 0 8 5 0
太田治子 『心映えの記』
393
女37歳
0 0 3 6 6 9 7 12
宮脇俊三 『殺意の風景』
390
男58歳
4 26 12 13 7 13 15 7
               
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』昭和60年/1985年10月号
1行当たりの文字数:14字


選考委員
池波正太郎男62歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
期待 総行数47 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
山口洋子
女48歳
26 「〔演歌の虫〕を推した。」「もう一つの候補作〔老梅〕は作為が目立ちすぎた」「ともかくも私は、山口さんが何度か賞を逸しながらも、ひたむきに作家活動をつづけ、水準に達した小説を発表してきた姿勢を高く評価した。」
林真理子
女31歳
0  
泡坂妻夫
男52歳
0  
森詠
男43歳
0  
杉本章子
女32歳
8 「前の候補作〔写楽まぼろし〕にくらべると、時代小説がイタについてきた。それだけでも進歩したのだから、今度は〔人間〕を、迫力をもって描き出すことだ。平板な人間像はおもしろくも何ともない。」
太田治子
女37歳
0  
宮脇俊三
男58歳
4 「深く心にとどめておいて、つぎの作品を読みたいとおもう。」
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他の選考委員
山口瞳
村上元三
井上ひさし
水上勉
五木寛之
黒岩重吾
渡辺淳一
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選考委員
山口瞳男58歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
「老梅」の強さ 総行数55 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
山口洋子
女48歳
29 「「女の運命は、爪の色まで変える」といった鋭い観察も随所にあって「老梅」は純度と完成度の高い風俗小説である。この小説には強さ(原文傍点)がある。」「現在の酒場の経営者で有名作詞家とくれば色目で見られるかもしれないが、洋子さんは意外にも純情な人ではないかという気がする。こういう人は伸びると見た。」「また、私は「演歌の虫」を評価しない。」
林真理子
女31歳
0  
泡坂妻夫
男52歳
0  
森詠
男43歳
0  
杉本章子
女32歳
0  
太田治子
女37歳
0  
宮脇俊三
男58歳
26 「こんなに欲ばった読者サービスの濃厚な小説を初めて読んだが、それがイヤミにならずに成功しているのだから驚かざるをえない。」「この短篇集は名作として長く私の記憶に残るにちがいない。格調の高さと奥の深さに脱帽!」
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他の選考委員
池波正太郎
村上元三
井上ひさし
水上勉
五木寛之
黒岩重吾
渡辺淳一
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選考委員
村上元三男75歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
望ましい形 総行数51 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
山口洋子
女48歳
10 「もう安心の出来るところまで来た。「老梅」は、これまでのこの人の作品になかったきらりと光るものが出ている。「演歌の虫」は、手慣れた筆致で、らくに読める。」
林真理子
女31歳
3 「この作品が候補になったのは不運であった。挫けずに精進してほしい。」
泡坂妻夫
男52歳
5 「八篇は、どれも手がこんでいてうまい。しかし、蓋をあけてみると、わたし一人が買っていた形になった。」
森詠
男43歳
9 「読み終ったあと何も残らないし、いくつも矛盾が感じられた。日本人の作家がこういう種類の作品を書くのは難しい、という批評がいくらあっても、この作者は書き続けて行くべきだろう。そのうちに作者自身、手ごたえのある作品が出てくると思う。」
杉本章子
女32歳
7 「資料に凭りかかりすぎている。もっと資料を突きほぐして、自分の解釈を働かせるべきであった。しかし、女流で時代小説を書くのは貴重な存在なのだから、この人の将来には大いに期待をしている。」
太田治子
女37歳
3 「直木賞の作品ではないし、作者も不本意だったろう。」
宮脇俊三
男58歳
12 「これまでの直木賞候補作品に類を見ない、気の利いた構成のうまい短篇がそろっていた。殺人シーンなど描かないで、ぞくっとおそろしさを感じさせる作品もあった。これを山口氏にあわせて直木賞に推したが、僅かな差で破れて残念だった。」
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他の選考委員
池波正太郎
山口瞳
井上ひさし
水上勉
五木寛之
黒岩重吾
渡辺淳一
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選考委員
井上ひさし男50歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
小説づくりの巧みさ 総行数80 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
山口洋子
女48歳
20 「「老梅」は完璧すぎて作者の仕掛けたことが逆にかえってあらわになってしまった。「演歌の虫」は捨身の力作で欠点も多いかわりに、美点もまた多い。」「この賞の性格として「作家賞」というものが許されるのであれば、山口洋子さんがその筆頭であるだろうと思った。」
林真理子
女31歳
12 「〈女はみんなかわいそう〉という本主題への展開が充分ではなかった。胡桃の油で磨き抜かれた柱という小道具の使い方も巧みであるとは云いかねる。だが、作者の素顔が、今回はひそやかに作品のかげに隠れていたのは、生意気をいうようだが、作者の進歩である。」
泡坂妻夫
男52歳
16 「この型になったら絶対に強いという自信が作者にあるのかもしれない。ただ、この型に持ち込もうとするために、人間が道具扱いされがちになるという瑕も見えた。」
森詠
男43歳
9 「構えの大きな活劇である。これだけでも好感を抱いた。」「ただ物語を収拾する技術に難がある。第一人称代名詞「わたし」が呆れるほど多発されるのも瑕である。」
杉本章子
女32歳
8 「この硬さは近頃、珍重すべき資質でそれなりの魅力があったが、主人公の影の分身といってもよい仮名垣魯文の造型に瑕がある。魯文はこれほど平板な人間ではあるまい。」
太田治子
女37歳
6 「作品の評価とは別に、なぜこれが直木賞の候補作なのだろうかという疑問をもった。これはなにか別の賞に向いているのではあるまいか。」
宮脇俊三
男58歳
13 「犯罪と風景とを一枚のタブローにしてしまおうという果敢な実験集である。」「ささやかな犯罪を扱ったものが見事な出来栄えを示しているのに、大がかりなものはほとんど失敗している」「「豪雪地帯の巻」の結末の二行など、終生忘れないだろうと思うぐらい見事な切れ味なのだが。」
  「今回はこれはと思う作品がなかった。」
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他の選考委員
池波正太郎
山口瞳
村上元三
水上勉
五木寛之
黒岩重吾
渡辺淳一
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選考委員
水上勉男66歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
感想 総行数56 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
山口洋子
女48歳
24 「全候補作中いちばんすぐれていた。」「先の達者すぎた軽みは消え、見るものは見、捨てるものは捨てた眼の確かさがあった。私は「老梅」の方をとった。「演歌」もいいが、男主人公をのっけからもう位置づけてしまっているところが気になった。」「二作授賞にもちろん反対はない。」
林真理子
女31歳
15 「最初の候補作にはこの人ならではの眼があって、誰もが書けぬ娘が立っていた。「胡桃の家」の話づくりはいい。が、登場人物がみな古風なのが気になる。」「柱を撫でるぐらいでは、あの枚数を貫く何かが弱いのである。」
泡坂妻夫
男52歳
0  
森詠
男43歳
0  
杉本章子
女32歳
0  
太田治子
女37歳
6 「同じようなこと(引用者注:べつの文学賞になっていいもの)が、太田治子さん「心映えの記」にも云えた。直木賞の場にもちこまれて不幸な犠えになりかねない。」
宮脇俊三
男58歳
7 「不思議な世界で、魅かれた。だが、さてこれが授賞となると、小説らしい小説を求めている立場がくずれてくる。べつの文学賞になっていいものだろう。」
  「命がけの金看板をひっさげての登場を夢見る私には、どれも小技の磨きに思えて遠い不満がぬぐえなかった。」
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他の選考委員
池波正太郎
山口瞳
村上元三
井上ひさし
五木寛之
黒岩重吾
渡辺淳一
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選考委員
五木寛之男52歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
新受賞者の多作に期待 総行数63 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
山口洋子
女48歳
10 「最後に決をとる際に、私は山口洋子さん、林真理子さん、二氏の受賞を提案した。」「これからの山口さんの仕事に期待したい。私個人としては、力の限り多作されんことを望んでいる。」
林真理子
女31歳
3 「最後に決をとる際に、私は山口洋子さん、林真理子さん、二氏の受賞を提案した。」
泡坂妻夫
男52歳
15 「標題になっている「ゆきなだれ」よりも、「鳴神」に不思議な魅力を感じた。」「ただ私たちの小説風土では、このような技巧を凝らした熟した美の世界は、とかく軽んじられやすいという不幸があるようだ。」
森詠
男43歳
8 「私はこういう小説が候補になったということを高く評価したい。野暮な小説が貴重に感じられる時代なればこそだ。この作家の筆力には、大成を予感させるものがある。」
杉本章子
女32歳
8 「姿勢の正しい小説である。」「登場人物の言動にもう少し「情」が感じられれば、と欲の深い感想をもった。水準には達している作品だと思う。」
太田治子
女37歳
9 「小説として読んでも、かなりいい作品だと思う。」「エッセイを直木賞の候補に推すのは不適当との声もあったが、私はあくまで小説として読んで感心した。」
宮脇俊三
男58歳
13 「民俗学的な興味もおぼえる松之山温泉を舞台にした短篇がことに好評だったが、私は高千穂峡の話に惹かれた。ロアルド・ダールを思わせる作風を維持して多作することの難しさを判った上で、次に書かれる作品を大いに期待したい。」
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他の選考委員
池波正太郎
山口瞳
村上元三
井上ひさし
水上勉
黒岩重吾
渡辺淳一
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選考委員
黒岩重吾男61歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
授賞作について 総行数60 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
山口洋子
女48歳
31 「選考会が近づくにつれて「老梅」の香りが馥郁と匂い始め、念のために東京のホテルで今一度読み、男女のしがらみが放つ味のある香りに完全に酩酊してしまった。」「男女の愛憎を描きながら気品を感じさせてくれる作品など滅多にない。」「優れた授賞作として推した。」「「演歌の虫」の読後感は稀薄だ。主人公が浮かび上がって来ない。」
林真理子
女31歳
6 「殆ど欠点のない、いわば優等生的な作品である。私が感動を受けなかったのは、実家をテーマとした作品に存在する家神を感じなかったせいだ。」
泡坂妻夫
男52歳
0  
森詠
男43歳
0  
杉本章子
女32歳
5 「何故人間が描けないのか、と歯軋りした。氏が人間に開眼した時、氏の才能は大きく花を開くであろう。」
太田治子
女37歳
7 「深く暗い樹林の木洩れ日にも似た氏の感性には強く惹かれるが、この作品は小説ではなく矢張り「記」である。」
宮脇俊三
男58歳
15 「色々な読み方が出来る優れた掌篇小説集である。自然の恐怖を描きながら緊張感を持たせるためには、その地の霊が呼び寄せたような登場人物が必要だ。氏は収録された十八話のうち、半分近く、それに成功している。大変な才能といわねばならない。」
  「今回は前回に較べると読み応えのある作品が揃っていた。」
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他の選考委員
池波正太郎
山口瞳
村上元三
井上ひさし
水上勉
五木寛之
渡辺淳一
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選考委員
渡辺淳一男51歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
選評 総行数52 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
山口洋子
女48歳
14 「ところどころ力でねじ伏せる荒さが気になるが、いずれも手慣れた材料を手堅くまとめている。もともと実力はあり、埋蔵量も豊かな人だけに、受賞を機に、さらに飛躍されるに違いない。」
林真理子
女31歳
24 「家に根ざす女という難しいテーマに挑み、それなりに描かれているが、地味になった分だけ、前作のヴィヴィッドさが失われてしまった。」「氏はこれで連続三回候補になり、その都度、この人の才能をかっているのだが、今回もまた見送られてしまった。」
泡坂妻夫
男52歳
0  
森詠
男43歳
0  
杉本章子
女32歳
0  
太田治子
女37歳
12 「母のことを書いていながら、感傷に流れず、気持のいい仕上りになっている。だが全体としてはエッセイで、直木賞の候補作として論じられるのは、少し酷かもしれない。」
宮脇俊三
男58歳
7 「洒落た短篇集で、とくに第一話なぞ凄味があるが、途中、作意が見えすぎてくると興醒めする。いずれにせよ、これ一作では、というのが偽らぬ実感である。」
  「今回は残念ながら、強く惹かれる作品はなかった。」「受賞作なしか、この二人(引用者注:山口洋子と林真理子)のいずれが受賞でもかまわない、という気持で出かけた。」
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他の選考委員
池波正太郎
山口瞳
村上元三
井上ひさし
水上勉
五木寛之
黒岩重吾
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受賞者・作品
山口洋子女48歳×各選考委員 
「演歌の虫」等
短篇集(一部)2篇 225
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池波正太郎
男62歳
26 「〔演歌の虫〕を推した。」「もう一つの候補作〔老梅〕は作為が目立ちすぎた」「ともかくも私は、山口さんが何度か賞を逸しながらも、ひたむきに作家活動をつづけ、水準に達した小説を発表してきた姿勢を高く評価した。」
山口瞳
男58歳
29 「「女の運命は、爪の色まで変える」といった鋭い観察も随所にあって「老梅」は純度と完成度の高い風俗小説である。この小説には強さ(原文傍点)がある。」「現在の酒場の経営者で有名作詞家とくれば色目で見られるかもしれないが、洋子さんは意外にも純情な人ではないかという気がする。こういう人は伸びると見た。」「また、私は「演歌の虫」を評価しない。」
村上元三
男75歳
10 「もう安心の出来るところまで来た。「老梅」は、これまでのこの人の作品になかったきらりと光るものが出ている。「演歌の虫」は、手慣れた筆致で、らくに読める。」
井上ひさし
男50歳
20 「「老梅」は完璧すぎて作者の仕掛けたことが逆にかえってあらわになってしまった。「演歌の虫」は捨身の力作で欠点も多いかわりに、美点もまた多い。」「この賞の性格として「作家賞」というものが許されるのであれば、山口洋子さんがその筆頭であるだろうと思った。」
水上勉
男66歳
24 「全候補作中いちばんすぐれていた。」「先の達者すぎた軽みは消え、見るものは見、捨てるものは捨てた眼の確かさがあった。私は「老梅」の方をとった。「演歌」もいいが、男主人公をのっけからもう位置づけてしまっているところが気になった。」「二作授賞にもちろん反対はない。」
五木寛之
男52歳
10 「最後に決をとる際に、私は山口洋子さん、林真理子さん、二氏の受賞を提案した。」「これからの山口さんの仕事に期待したい。私個人としては、力の限り多作されんことを望んでいる。」
黒岩重吾
男61歳
31 「選考会が近づくにつれて「老梅」の香りが馥郁と匂い始め、念のために東京のホテルで今一度読み、男女のしがらみが放つ味のある香りに完全に酩酊してしまった。」「男女の愛憎を描きながら気品を感じさせてくれる作品など滅多にない。」「優れた授賞作として推した。」「「演歌の虫」の読後感は稀薄だ。主人公が浮かび上がって来ない。」
渡辺淳一
男51歳
14 「ところどころ力でねじ伏せる荒さが気になるが、いずれも手慣れた材料を手堅くまとめている。もともと実力はあり、埋蔵量も豊かな人だけに、受賞を機に、さらに飛躍されるに違いない。」
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他の候補作
林真理子
「胡桃の家」
泡坂妻夫
『ゆきなだれ』
森詠
『雨はいつまで降り続く』
杉本章子
「名主の裔」
太田治子
『心映えの記』
宮脇俊三
『殺意の風景』
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候補者・作品
林真理子女31歳×各選考委員 
「胡桃の家」
短篇 72
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池波正太郎
男62歳
0  
山口瞳
男58歳
0  
村上元三
男75歳
3 「この作品が候補になったのは不運であった。挫けずに精進してほしい。」
井上ひさし
男50歳
12 「〈女はみんなかわいそう〉という本主題への展開が充分ではなかった。胡桃の油で磨き抜かれた柱という小道具の使い方も巧みであるとは云いかねる。だが、作者の素顔が、今回はひそやかに作品のかげに隠れていたのは、生意気をいうようだが、作者の進歩である。」
水上勉
男66歳
15 「最初の候補作にはこの人ならではの眼があって、誰もが書けぬ娘が立っていた。「胡桃の家」の話づくりはいい。が、登場人物がみな古風なのが気になる。」「柱を撫でるぐらいでは、あの枚数を貫く何かが弱いのである。」
五木寛之
男52歳
3 「最後に決をとる際に、私は山口洋子さん、林真理子さん、二氏の受賞を提案した。」
黒岩重吾
男61歳
6 「殆ど欠点のない、いわば優等生的な作品である。私が感動を受けなかったのは、実家をテーマとした作品に存在する家神を感じなかったせいだ。」
渡辺淳一
男51歳
24 「家に根ざす女という難しいテーマに挑み、それなりに描かれているが、地味になった分だけ、前作のヴィヴィッドさが失われてしまった。」「氏はこれで連続三回候補になり、その都度、この人の才能をかっているのだが、今回もまた見送られてしまった。」
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他の候補作
山口洋子
「演歌の虫」等
泡坂妻夫
『ゆきなだれ』
森詠
『雨はいつまで降り続く』
杉本章子
「名主の裔」
太田治子
『心映えの記』
宮脇俊三
『殺意の風景』
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候補者・作品
泡坂妻夫男52歳×各選考委員 
『ゆきなだれ』
短篇集8篇 429
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池波正太郎
男62歳
0  
山口瞳
男58歳
0  
村上元三
男75歳
5 「八篇は、どれも手がこんでいてうまい。しかし、蓋をあけてみると、わたし一人が買っていた形になった。」
井上ひさし
男50歳
16 「この型になったら絶対に強いという自信が作者にあるのかもしれない。ただ、この型に持ち込もうとするために、人間が道具扱いされがちになるという瑕も見えた。」
水上勉
男66歳
0  
五木寛之
男52歳
15 「標題になっている「ゆきなだれ」よりも、「鳴神」に不思議な魅力を感じた。」「ただ私たちの小説風土では、このような技巧を凝らした熟した美の世界は、とかく軽んじられやすいという不幸があるようだ。」
黒岩重吾
男61歳
0  
渡辺淳一
男51歳
0  
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他の候補作
山口洋子
「演歌の虫」等
林真理子
「胡桃の家」
森詠
『雨はいつまで降り続く』
杉本章子
「名主の裔」
太田治子
『心映えの記』
宮脇俊三
『殺意の風景』
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候補者・作品
森詠男43歳×各選考委員 
『雨はいつまで降り続く』
長篇 826
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池波正太郎
男62歳
0  
山口瞳
男58歳
0  
村上元三
男75歳
9 「読み終ったあと何も残らないし、いくつも矛盾が感じられた。日本人の作家がこういう種類の作品を書くのは難しい、という批評がいくらあっても、この作者は書き続けて行くべきだろう。そのうちに作者自身、手ごたえのある作品が出てくると思う。」
井上ひさし
男50歳
9 「構えの大きな活劇である。これだけでも好感を抱いた。」「ただ物語を収拾する技術に難がある。第一人称代名詞「わたし」が呆れるほど多発されるのも瑕である。」
水上勉
男66歳
0  
五木寛之
男52歳
8 「私はこういう小説が候補になったということを高く評価したい。野暮な小説が貴重に感じられる時代なればこそだ。この作家の筆力には、大成を予感させるものがある。」
黒岩重吾
男61歳
0  
渡辺淳一
男51歳
0  
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他の候補作
山口洋子
「演歌の虫」等
林真理子
「胡桃の家」
泡坂妻夫
『ゆきなだれ』
杉本章子
「名主の裔」
太田治子
『心映えの記』
宮脇俊三
『殺意の風景』
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候補者・作品
杉本章子女32歳×各選考委員 
「名主の裔」
中篇 199
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池波正太郎
男62歳
8 「前の候補作〔写楽まぼろし〕にくらべると、時代小説がイタについてきた。それだけでも進歩したのだから、今度は〔人間〕を、迫力をもって描き出すことだ。平板な人間像はおもしろくも何ともない。」
山口瞳
男58歳
0  
村上元三
男75歳
7 「資料に凭りかかりすぎている。もっと資料を突きほぐして、自分の解釈を働かせるべきであった。しかし、女流で時代小説を書くのは貴重な存在なのだから、この人の将来には大いに期待をしている。」
井上ひさし
男50歳
8 「この硬さは近頃、珍重すべき資質でそれなりの魅力があったが、主人公の影の分身といってもよい仮名垣魯文の造型に瑕がある。魯文はこれほど平板な人間ではあるまい。」
水上勉
男66歳
0  
五木寛之
男52歳
8 「姿勢の正しい小説である。」「登場人物の言動にもう少し「情」が感じられれば、と欲の深い感想をもった。水準には達している作品だと思う。」
黒岩重吾
男61歳
5 「何故人間が描けないのか、と歯軋りした。氏が人間に開眼した時、氏の才能は大きく花を開くであろう。」
渡辺淳一
男51歳
0  
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他の候補作
山口洋子
「演歌の虫」等
林真理子
「胡桃の家」
泡坂妻夫
『ゆきなだれ』
森詠
『雨はいつまで降り続く』
太田治子
『心映えの記』
宮脇俊三
『殺意の風景』
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候補者・作品
太田治子女37歳×各選考委員 
『心映えの記』
長篇 393
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池波正太郎
男62歳
0  
山口瞳
男58歳
0  
村上元三
男75歳
3 「直木賞の作品ではないし、作者も不本意だったろう。」
井上ひさし
男50歳
6 「作品の評価とは別に、なぜこれが直木賞の候補作なのだろうかという疑問をもった。これはなにか別の賞に向いているのではあるまいか。」
水上勉
男66歳
6 「同じようなこと(引用者注:べつの文学賞になっていいもの)が、太田治子さん「心映えの記」にも云えた。直木賞の場にもちこまれて不幸な犠えになりかねない。」
五木寛之
男52歳
9 「小説として読んでも、かなりいい作品だと思う。」「エッセイを直木賞の候補に推すのは不適当との声もあったが、私はあくまで小説として読んで感心した。」
黒岩重吾
男61歳
7 「深く暗い樹林の木洩れ日にも似た氏の感性には強く惹かれるが、この作品は小説ではなく矢張り「記」である。」
渡辺淳一
男51歳
12 「母のことを書いていながら、感傷に流れず、気持のいい仕上りになっている。だが全体としてはエッセイで、直木賞の候補作として論じられるのは、少し酷かもしれない。」
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他の候補作
山口洋子
「演歌の虫」等
林真理子
「胡桃の家」
泡坂妻夫
『ゆきなだれ』
森詠
『雨はいつまで降り続く』
杉本章子
「名主の裔」
宮脇俊三
『殺意の風景』
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候補者・作品
宮脇俊三男58歳×各選考委員 
『殺意の風景』
連作18篇 390
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池波正太郎
男62歳
4 「深く心にとどめておいて、つぎの作品を読みたいとおもう。」
山口瞳
男58歳
26 「こんなに欲ばった読者サービスの濃厚な小説を初めて読んだが、それがイヤミにならずに成功しているのだから驚かざるをえない。」「この短篇集は名作として長く私の記憶に残るにちがいない。格調の高さと奥の深さに脱帽!」
村上元三
男75歳
12 「これまでの直木賞候補作品に類を見ない、気の利いた構成のうまい短篇がそろっていた。殺人シーンなど描かないで、ぞくっとおそろしさを感じさせる作品もあった。これを山口氏にあわせて直木賞に推したが、僅かな差で破れて残念だった。」
井上ひさし
男50歳
13 「犯罪と風景とを一枚のタブローにしてしまおうという果敢な実験集である。」「ささやかな犯罪を扱ったものが見事な出来栄えを示しているのに、大がかりなものはほとんど失敗している」「「豪雪地帯の巻」の結末の二行など、終生忘れないだろうと思うぐらい見事な切れ味なのだが。」
水上勉
男66歳
7 「不思議な世界で、魅かれた。だが、さてこれが授賞となると、小説らしい小説を求めている立場がくずれてくる。べつの文学賞になっていいものだろう。」
五木寛之
男52歳
13 「民俗学的な興味もおぼえる松之山温泉を舞台にした短篇がことに好評だったが、私は高千穂峡の話に惹かれた。ロアルド・ダールを思わせる作風を維持して多作することの難しさを判った上で、次に書かれる作品を大いに期待したい。」
黒岩重吾
男61歳
15 「色々な読み方が出来る優れた掌篇小説集である。自然の恐怖を描きながら緊張感を持たせるためには、その地の霊が呼び寄せたような登場人物が必要だ。氏は収録された十八話のうち、半分近く、それに成功している。大変な才能といわねばならない。」
渡辺淳一
男51歳
7 「洒落た短篇集で、とくに第一話なぞ凄味があるが、途中、作意が見えすぎてくると興醒めする。いずれにせよ、これ一作では、というのが偽らぬ実感である。」
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他の候補作
山口洋子
「演歌の虫」等
林真理子
「胡桃の家」
泡坂妻夫
『ゆきなだれ』
森詠
『雨はいつまで降り続く』
杉本章子
「名主の裔」
太田治子
『心映えの記』
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