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昭和60年/1985年下半期
(昭和61年/1986年1月16日決定発表/『オール讀物』昭和61年/1986年4月号選評掲載)
選考委員  山口瞳
男59歳
池波正太郎
男62歳
村上元三
男75歳
藤沢周平
男58歳
井上ひさし
男51歳
黒岩重吾
男61歳
五木寛之
男53歳
陳舜臣
男61歳
渡辺淳一
男52歳
選評総行数  60 43 51 61 70 57 69 60 57
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
森田誠吾 『魚河岸ものがたり』
520
男60歳
11 11 6 16 17 15 16 10 12
林真理子 「最終便に間に合えば」等
176
女31歳
21 14 10 20 12 19 15 13 17
山崎光夫 「サイレント・サウスポー」
102
男38歳
0 0 8 0 9 12 0 0 8
篠田達明 『常夜燈』
509
男48歳
0 0 4 0 5 0 0 0 8
志水辰夫 『背いて故郷』
717
男49歳
0 0 9 3 11 0 0 0 8
落合恵子 『A列車で行こう』
415
女41歳
21 13 9 20 12 11 0 16 9
島田荘司 『夏、19歳の肖像』
356
男37歳
15 0 5 3 10 0 0 11 6
                 
年齢/枚数の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』昭和61年/1986年4月号
1行当たりの文字数:14字


選考委員
山口瞳男59歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
事件を捌く大人の目 総行数60 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
森田誠吾
男60歳
11 「こんな巧い人がまだ残っていたのかと驚き、かつ、嬉しくなった。直木賞に要求されていた大人の目を再認識させられた。」「この作者は、まだまだ幾つかの抽出しを持っているはずで、化ける可能性大いにあり、と見た。」
林真理子
女31歳
21 「『最終便に間に合えば』のほうを買うが、憧れの都会的なるもの、もしくは男性に失望するという同じパターン(『京都まで』に顕著)で書いているのが気になる。男と女の卑しさとイヤラシサを描くのが実に上手だが、そのぶん後味が悪い。にもかかわらず林さんが受賞したのは、力でもって選考委員を捩じ伏せたのであり、それは、うんと自慢していいことだと思う。」
山崎光夫
男38歳
0  
篠田達明
男48歳
0  
志水辰夫
男49歳
0  
落合恵子
女41歳
21 「全体を貫く一本の糸のようなものがほしかった。そうでないと、気の利いたセリフが浮いてしまう。」「後半のほうがいい。惜しかった。落合さんは格段に腕をあげた。」
島田荘司
男37歳
15 「何よりも軽快で乾いた文章がいい。」「今回は自らの律儀さに転んだ。熱海のボスの別荘に殴りこみをかける(それが読者サービス)のは不必要で、それなくしても青春小説として読めた。」
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他の選考委員
池波正太郎
村上元三
藤沢周平
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黒岩重吾
五木寛之
陳舜臣
渡辺淳一
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選考委員
池波正太郎男62歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
大山鳴動……。 総行数43 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
森田誠吾
男60歳
11 「落合さんと、森田誠吾〔魚河岸ものがたり〕を受賞作として推した」「前半、歯が浮くようなところがあったけれども第四章の〔波除神社〕と第五章の〔海幸橋〕がよくできていて、登場人物も変化に富み、読後の後味もよかった。」
林真理子
女31歳
14 「薄汚い男女の交情を描いてはいるが、読後、胸にこたえるものが何もなく、私は票を入れなかった。むろんのことに薄汚い男女を描くのはよい。よいが、それだけでは、文学賞をあたえる小説にはならない。プラス何かがなくてはならぬ。その何かが読者の胸を打たなくてはならぬ。」
山崎光夫
男38歳
0  
篠田達明
男48歳
0  
志水辰夫
男49歳
0  
落合恵子
女41歳
13 「多少の欠点はあるにしても、(引用者中略)あざとさ(原文傍点)がなく、これまでの彼女の候補作の中では、もっともよかったと、私はおもう。ジャズ・スポットを中心にした構成もよく、ことに〔第一夜〕の章がよかった。」「落合さんと、森田誠吾〔魚河岸ものがたり〕を受賞作として推した」
島田荘司
男37歳
0  
  「今回の候補作七篇のすべてがそうではないが「大山鳴動して鼠一匹」というような小説が多かった。」
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山口瞳
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選考委員
村上元三男75歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
自省も含めて 総行数51 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
森田誠吾
男60歳
6 「選ばれたことに、異議は唱えない。もう一作、読ませてもらってからでもいい、と思ったが、この器用さが本物になるのを期待する。」
林真理子
女31歳
10 「この作品(引用者注:「最終便に間に合えば」)の読後感の不快さは、「京都まで」のほうにはなかった。候補になること四回目なので、もう授賞してもいいだろう、という気持が選考する側にあった、と忘れないでもらいたいが、この作者は百も承知だろうと思う。」
山崎光夫
男38歳
8 「最後でがっかりさせられた。医学の面でこの作者は、もっといろいろの作品が書けるに違いない。」
篠田達明
男48歳
4 「文章に気をつけてほしい。せっかくの面白い題材なのに、作者は都合よく、手軽に扱いすぎた。」
志水辰夫
男49歳
9 「読み終るまでくたびれた。もっと簡略に、読みやすく書けなかったのだろうか。最後に背負い投げを食わされるのではないか、と思っていた通りだったし、主人公のわたしの存在感が薄い。」
落合恵子
女41歳
9 「この作品の面白さは認める。しかしせっかくいろんな人間を描き分けていながら、いかにも軽い。それがこの作者の持味なのだが、もっと深く人間を掘りさげたほうがいい。」
島田荘司
男37歳
5 「「漱石と倫敦ミイラ殺人事件」の作者が「夏、19歳の肖像」のような作品を書いた変身ぶりにはおどろいた。こんどは、どう変身するのだろうか。」
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山口瞳
池波正太郎
藤沢周平
井上ひさし
黒岩重吾
五木寛之
陳舜臣
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選考委員
藤沢周平男58歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
本物の凄み 総行数61 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
森田誠吾
男60歳
16 「築地市場とそこに住む人びとをよくみがかれた詩的な文体で描き出し、ことに第四章波除神社は、人間と人間の運を語って比類のない一篇になっていた。読み終って、作中の人物が出来すぎてはいないかといった疑問もうかぶけれども、この小説にはそうしたいくつかの弱点をさし引いてまだ残るうまさと魅力があった。」
林真理子
女31歳
20 「私は一応受賞圏内に入れながら積極的には推さなかった。理由はこの小説が、当世風の男女の世界を巧みに描いているものの、それだけで自閉している感じが不満だったからである。」「しかし林さんの小説はすでにプロの安定感をそなえていた。」「受賞を機会にひとまわり大きく成長することも期待出来、最終的には受賞に反対しなかった。」
山崎光夫
男38歳
0  
篠田達明
男48歳
0  
志水辰夫
男49歳
3 「力作だったが結末に難があった。」
落合恵子
女41歳
20 「落合さんのこれまでの作品は、疑わずに風俗に乗って書くような性質の軽さで損をしていたように思う。」「後半に移るにしたがって物語に厚みが加わり、第四章の老境の野田の物狂い、第五章のララバイのママを描いたところで、落合さんの筆は人生の深いところにとどいたと思った。あえて森田さんとの二作受賞を主張した理由である。」
島田荘司
男37歳
3 「青春の恋愛感情をナイーブに描き出したものの、ミステリイ部分が粗雑」
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五木寛之
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選考委員
井上ひさし男51歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
上質な微苦笑 総行数70 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
森田誠吾
男60歳
17 「各所にいささか傷はあるものの、これは名作である。どんな端役にも人間の血が色濃く、あたたかく流れている。構成もすこぶる知的である。この構成法がひとつの作品を人情物語にも、諧謔小説にも、また推理小説にもした。これは稀有のことである。」
林真理子
女31歳
12 「じつに巧者である。けれどもどちらの作品でも、女主人公は世故くて薄汚い。」「ただし四期連続して強力な候補作を書きつづけるという力量は上々吉であって、これには素直に脱帽すべきだろう。」
山崎光夫
男38歳
9 「清新な雰囲気があるが、やはり話の展開に段取り主義のところがあり、次作を待ちたい。細部をゆるがせにしない作風で、文章もしっかりしているから、きっと近いうちに読者に佳作を恵んでくれるだろう。」
篠田達明
男48歳
5 「題材が貴重である。がしかし物語が予定調和的に進行しすぎて、読者は小説を読むよろこびをだいぶ殺がれる。」
志水辰夫
男49歳
11 「主人公はたえず立ち止って自己反省に耽る。そのたびに物語の方は放置される。読者としてはつきあいにくい主人公だ。」「今回はその過重な主観描写にすこし疲労をおぼえた。」
落合恵子
女41歳
12 「はじめて候補にのぼった時分とくらべて、失礼だが大変な腕の上げようだと舌を巻いた。もっとも技術が洗練されるにつれて登場人物たちが小綺麗に、まとまりよく仕上ってしまうという危険もないではない。しかし筆者はこの作品に九十点はさしあげたい。」
島田荘司
男37歳
10 「抒情あふれる回顧調の導入部に、恋が、そして謎がするりと入り込んでくるあたりのテンポはみごとである。後半の展開が安手のテレビドラマじみてくるのが惜しい。」
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山口瞳
池波正太郎
村上元三
藤沢周平
黒岩重吾
五木寛之
陳舜臣
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選考委員
黒岩重吾男61歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
林真理子氏への期待 総行数57 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
森田誠吾
男60歳
15 「ところどころヴィヴィッドな描写もあり好感を抱いたが、主人公秘密が明かされる部分で失望した。」「最後の簡単な説明だけでは、主人公の行動を理解することは不可能である。寧ろ魚河岸だけの物語にしたなら優れた作品になっていたような気がする。」
林真理子
女31歳
19 「林真理子氏を推すべく選考会に出席した。」「これまでの少女趣味を脱した氏のしたたかな存在感が息づいている。ことに後者(引用者注:「京都まで」)は、主人公の相手役になる男性の描き方がたくみだ。」「氏のどの作品にも、林真理子独特の新しい存在感が胡座をかいている」「そこに私はただならぬ作家の資質を感じるのだ。雑事を排し、作家道に邁進されたい。」
山崎光夫
男38歳
12 「達者さには舌を巻いた。この才能は貴重である。優秀点をつけたのは私だけだったが、他の選考委員が否定した視点もよく分る。達者過ぎて筆が走り過ぎている。」
篠田達明
男48歳
0  
志水辰夫
男49歳
0  
落合恵子
女41歳
11 「第二章以降はジャズが前面に出て来て人間の物語が稀薄になった。こうなるとジャズに興味のない読者は煩わしいだけである。氏の場合、人間の描写に作った部分が多い。余計なようだがもっと人間を凝視されたい。」
島田荘司
男37歳
0  
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他の選考委員
山口瞳
池波正太郎
村上元三
藤沢周平
井上ひさし
五木寛之
陳舜臣
渡辺淳一
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選考委員
五木寛之男53歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
隠された凄さ 総行数69 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
森田誠吾
男60歳
16 「林真理子さんと、森田誠吾さんのお二人を推した。」「後味がいい、爽やかな作品だ、と。非常に好評だった。しかし、私はこの作家の物語づくりの鮮やかな才能に敬服しながら、一種異様な後味のわるさもおぼえている。」「その得体のしれない部分に惹かれて一票を投じたというのが本音かもしれない。」
林真理子
女31歳
15 「林真理子さんと、森田誠吾さんのお二人を推した。」「男性に愛されたいと願いつつ、男の敵になってしまう。」「私を含めて男たちはどこか無気味な脅威を林さんの資質にかぎとっているのだろう。」
山崎光夫
男38歳
0  
篠田達明
男48歳
0  
志水辰夫
男49歳
0  
落合恵子
女41歳
0  
島田荘司
男37歳
0  
  「私は候補作をその作家の隠された鉱脈の一部として読む。どんなに完成度の高い作品であっても、その人が今後それをしのぐ豊かな仕事を見せてくれそうだという予感がなければ推さない。」
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他の選考委員
山口瞳
池波正太郎
村上元三
藤沢周平
井上ひさし
黒岩重吾
陳舜臣
渡辺淳一
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選考委員
陳舜臣男61歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
親しみ深い小世界 総行数60 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
森田誠吾
男60歳
10 「庶民の生きる場の縮図が歪みなく描かれ、そのあまりにも歪みのなさに、かえって不安さえおぼえた。ともあれ、人間の息吹きがたしかめられる一つの小世界が、親しみぶかくうかびあがり、私としてはこれを受賞作とするのに異存はない。」
林真理子
女31歳
13 「登場する男に魅力がなく、読みながら、何の因果でこんなつまらない男の話につき合わねばならないのかと、腹立たしくなった。が、ひるがえって考えると、そんな読中感をおこさせるのも作家の手腕であろう。」
山崎光夫
男38歳
0  
篠田達明
男48歳
0  
志水辰夫
男49歳
0  
落合恵子
女41歳
16 「最も印象にのこった」「連作の冒頭に、どうしようもない状況が示され、はたして救いはないのかと問いかけてくる。つづいて、さまざまな角度からの切りこみで、救いの可能性が暗示される。」「私はそこに清冽な熱気をかんじた。風俗もみごとに描けているし、この作家が大成することはまちがいない。」
島田荘司
男37歳
11 「はじめから物語の展開がほぼ予想できたが、主人公の若さが最後まで魅力を失わなかった。」「設定がヒッチコックの「裏窓」に似ていることなどが減点法の好餌となったのは残念である。」
  「傾向として直木賞は完成度が重視され、減点法の選考が主流のようにおもえる。作品の構成が複雑になればなるほど不利となる。」
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他の選考委員
山口瞳
池波正太郎
村上元三
藤沢周平
井上ひさし
黒岩重吾
五木寛之
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選考委員
渡辺淳一男52歳×各候補作  年齢/枚数の説明
見方・注意点
新鮮な感性と柔軟な文章 総行数57 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
森田誠吾
男60歳
12 「的確な文章で魚河岸の人々を描き、安定している。」「だが舞台廻し役の吾妻健作の実態がわかるあたりから、リアリティに欠け、感傷に流れすぎている。これを「爽やか」とみる人が多かったが、わたしにはいささか「甘い」と映った。」
林真理子
女31歳
17 「「最終便に間に合えば」は、ラストがやや曖昧に流れ、「京都まで」は逆に最後で焦点を絞りすぎた。」「いずれにせよ、この作者は新鮮な感性と柔軟な文章をもち、人物を見る目も行届いている。四回連続候補になり、いずれも八十点以上の作品を書けるのは、相当力のある証拠である。」
山崎光夫
男38歳
8 「ストーリーを追うに急で、人物の描写がおろそかすぎる。」
篠田達明
男48歳
8 「ストーリーを追うに急で、人物の描写がおろそかすぎる。」
志水辰夫
男49歳
8 「ストーリーを追うに急で、人物の描写がおろそかすぎる。」
落合恵子
女41歳
9 「前回より説得力を増したが、なお人物に気取りがみえ、いま一つ存在感が薄い。」
島田荘司
男37歳
6 「前作と見違えるように、青春のある熱気のようなものが迫ってきて心を惹かれた。だが小説としての完成度においては一段劣る。」
  「強い作品が二本と、弱い作品が二本拮抗するとき、往々にして二作受賞ということが生じるようだが、今回はその後者の例というべきかもしれない。」
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他の選考委員
山口瞳
池波正太郎
村上元三
藤沢周平
井上ひさし
黒岩重吾
五木寛之
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受賞者・作品
森田誠吾男60歳×各選考委員 
『魚河岸ものがたり』
長篇 520
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男59歳
11 「こんな巧い人がまだ残っていたのかと驚き、かつ、嬉しくなった。直木賞に要求されていた大人の目を再認識させられた。」「この作者は、まだまだ幾つかの抽出しを持っているはずで、化ける可能性大いにあり、と見た。」
池波正太郎
男62歳
11 「落合さんと、森田誠吾〔魚河岸ものがたり〕を受賞作として推した」「前半、歯が浮くようなところがあったけれども第四章の〔波除神社〕と第五章の〔海幸橋〕がよくできていて、登場人物も変化に富み、読後の後味もよかった。」
村上元三
男75歳
6 「選ばれたことに、異議は唱えない。もう一作、読ませてもらってからでもいい、と思ったが、この器用さが本物になるのを期待する。」
藤沢周平
男58歳
16 「築地市場とそこに住む人びとをよくみがかれた詩的な文体で描き出し、ことに第四章波除神社は、人間と人間の運を語って比類のない一篇になっていた。読み終って、作中の人物が出来すぎてはいないかといった疑問もうかぶけれども、この小説にはそうしたいくつかの弱点をさし引いてまだ残るうまさと魅力があった。」
井上ひさし
男51歳
17 「各所にいささか傷はあるものの、これは名作である。どんな端役にも人間の血が色濃く、あたたかく流れている。構成もすこぶる知的である。この構成法がひとつの作品を人情物語にも、諧謔小説にも、また推理小説にもした。これは稀有のことである。」
黒岩重吾
男61歳
15 「ところどころヴィヴィッドな描写もあり好感を抱いたが、主人公秘密が明かされる部分で失望した。」「最後の簡単な説明だけでは、主人公の行動を理解することは不可能である。寧ろ魚河岸だけの物語にしたなら優れた作品になっていたような気がする。」
五木寛之
男53歳
16 「林真理子さんと、森田誠吾さんのお二人を推した。」「後味がいい、爽やかな作品だ、と。非常に好評だった。しかし、私はこの作家の物語づくりの鮮やかな才能に敬服しながら、一種異様な後味のわるさもおぼえている。」「その得体のしれない部分に惹かれて一票を投じたというのが本音かもしれない。」
陳舜臣
男61歳
10 「庶民の生きる場の縮図が歪みなく描かれ、そのあまりにも歪みのなさに、かえって不安さえおぼえた。ともあれ、人間の息吹きがたしかめられる一つの小世界が、親しみぶかくうかびあがり、私としてはこれを受賞作とするのに異存はない。」
渡辺淳一
男52歳
12 「的確な文章で魚河岸の人々を描き、安定している。」「だが舞台廻し役の吾妻健作の実態がわかるあたりから、リアリティに欠け、感傷に流れすぎている。これを「爽やか」とみる人が多かったが、わたしにはいささか「甘い」と映った。」
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他の候補作
林真理子
「最終便に間に合えば」等
山崎光夫
「サイレント・サウスポー」
篠田達明
『常夜燈』
志水辰夫
『背いて故郷』
落合恵子
『A列車で行こう』
島田荘司
『夏、19歳の肖像』
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受賞者・作品
林真理子女31歳×各選考委員 
「最終便に間に合えば」等
短篇集(一部)2篇 176
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男59歳
21 「『最終便に間に合えば』のほうを買うが、憧れの都会的なるもの、もしくは男性に失望するという同じパターン(『京都まで』に顕著)で書いているのが気になる。男と女の卑しさとイヤラシサを描くのが実に上手だが、そのぶん後味が悪い。にもかかわらず林さんが受賞したのは、力でもって選考委員を捩じ伏せたのであり、それは、うんと自慢していいことだと思う。」
池波正太郎
男62歳
14 「薄汚い男女の交情を描いてはいるが、読後、胸にこたえるものが何もなく、私は票を入れなかった。むろんのことに薄汚い男女を描くのはよい。よいが、それだけでは、文学賞をあたえる小説にはならない。プラス何かがなくてはならぬ。その何かが読者の胸を打たなくてはならぬ。」
村上元三
男75歳
10 「この作品(引用者注:「最終便に間に合えば」)の読後感の不快さは、「京都まで」のほうにはなかった。候補になること四回目なので、もう授賞してもいいだろう、という気持が選考する側にあった、と忘れないでもらいたいが、この作者は百も承知だろうと思う。」
藤沢周平
男58歳
20 「私は一応受賞圏内に入れながら積極的には推さなかった。理由はこの小説が、当世風の男女の世界を巧みに描いているものの、それだけで自閉している感じが不満だったからである。」「しかし林さんの小説はすでにプロの安定感をそなえていた。」「受賞を機会にひとまわり大きく成長することも期待出来、最終的には受賞に反対しなかった。」
井上ひさし
男51歳
12 「じつに巧者である。けれどもどちらの作品でも、女主人公は世故くて薄汚い。」「ただし四期連続して強力な候補作を書きつづけるという力量は上々吉であって、これには素直に脱帽すべきだろう。」
黒岩重吾
男61歳
19 「林真理子氏を推すべく選考会に出席した。」「これまでの少女趣味を脱した氏のしたたかな存在感が息づいている。ことに後者(引用者注:「京都まで」)は、主人公の相手役になる男性の描き方がたくみだ。」「氏のどの作品にも、林真理子独特の新しい存在感が胡座をかいている」「そこに私はただならぬ作家の資質を感じるのだ。雑事を排し、作家道に邁進されたい。」
五木寛之
男53歳
15 「林真理子さんと、森田誠吾さんのお二人を推した。」「男性に愛されたいと願いつつ、男の敵になってしまう。」「私を含めて男たちはどこか無気味な脅威を林さんの資質にかぎとっているのだろう。」
陳舜臣
男61歳
13 「登場する男に魅力がなく、読みながら、何の因果でこんなつまらない男の話につき合わねばならないのかと、腹立たしくなった。が、ひるがえって考えると、そんな読中感をおこさせるのも作家の手腕であろう。」
渡辺淳一
男52歳
17 「「最終便に間に合えば」は、ラストがやや曖昧に流れ、「京都まで」は逆に最後で焦点を絞りすぎた。」「いずれにせよ、この作者は新鮮な感性と柔軟な文章をもち、人物を見る目も行届いている。四回連続候補になり、いずれも八十点以上の作品を書けるのは、相当力のある証拠である。」
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他の候補作
森田誠吾
『魚河岸ものがたり』
山崎光夫
「サイレント・サウスポー」
篠田達明
『常夜燈』
志水辰夫
『背いて故郷』
落合恵子
『A列車で行こう』
島田荘司
『夏、19歳の肖像』
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候補者・作品
山崎光夫男38歳×各選考委員 
「サイレント・サウスポー」
短篇 102
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男59歳
0  
池波正太郎
男62歳
0  
村上元三
男75歳
8 「最後でがっかりさせられた。医学の面でこの作者は、もっといろいろの作品が書けるに違いない。」
藤沢周平
男58歳
0  
井上ひさし
男51歳
9 「清新な雰囲気があるが、やはり話の展開に段取り主義のところがあり、次作を待ちたい。細部をゆるがせにしない作風で、文章もしっかりしているから、きっと近いうちに読者に佳作を恵んでくれるだろう。」
黒岩重吾
男61歳
12 「達者さには舌を巻いた。この才能は貴重である。優秀点をつけたのは私だけだったが、他の選考委員が否定した視点もよく分る。達者過ぎて筆が走り過ぎている。」
五木寛之
男53歳
0  
陳舜臣
男61歳
0  
渡辺淳一
男52歳
8 「ストーリーを追うに急で、人物の描写がおろそかすぎる。」
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他の候補作
森田誠吾
『魚河岸ものがたり』
林真理子
「最終便に間に合えば」等
篠田達明
『常夜燈』
志水辰夫
『背いて故郷』
落合恵子
『A列車で行こう』
島田荘司
『夏、19歳の肖像』
  ページの先頭へ

候補者・作品
篠田達明男48歳×各選考委員 
『常夜燈』
長篇 509
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男59歳
0  
池波正太郎
男62歳
0  
村上元三
男75歳
4 「文章に気をつけてほしい。せっかくの面白い題材なのに、作者は都合よく、手軽に扱いすぎた。」
藤沢周平
男58歳
0  
井上ひさし
男51歳
5 「題材が貴重である。がしかし物語が予定調和的に進行しすぎて、読者は小説を読むよろこびをだいぶ殺がれる。」
黒岩重吾
男61歳
0  
五木寛之
男53歳
0  
陳舜臣
男61歳
0  
渡辺淳一
男52歳
8 「ストーリーを追うに急で、人物の描写がおろそかすぎる。」
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他の候補作
森田誠吾
『魚河岸ものがたり』
林真理子
「最終便に間に合えば」等
山崎光夫
「サイレント・サウスポー」
志水辰夫
『背いて故郷』
落合恵子
『A列車で行こう』
島田荘司
『夏、19歳の肖像』
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候補者・作品
志水辰夫男49歳×各選考委員 
『背いて故郷』
長篇 717
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男59歳
0  
池波正太郎
男62歳
0  
村上元三
男75歳
9 「読み終るまでくたびれた。もっと簡略に、読みやすく書けなかったのだろうか。最後に背負い投げを食わされるのではないか、と思っていた通りだったし、主人公のわたしの存在感が薄い。」
藤沢周平
男58歳
3 「力作だったが結末に難があった。」
井上ひさし
男51歳
11 「主人公はたえず立ち止って自己反省に耽る。そのたびに物語の方は放置される。読者としてはつきあいにくい主人公だ。」「今回はその過重な主観描写にすこし疲労をおぼえた。」
黒岩重吾
男61歳
0  
五木寛之
男53歳
0  
陳舜臣
男61歳
0  
渡辺淳一
男52歳
8 「ストーリーを追うに急で、人物の描写がおろそかすぎる。」
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他の候補作
森田誠吾
『魚河岸ものがたり』
林真理子
「最終便に間に合えば」等
山崎光夫
「サイレント・サウスポー」
篠田達明
『常夜燈』
落合恵子
『A列車で行こう』
島田荘司
『夏、19歳の肖像』
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候補者・作品
落合恵子女41歳×各選考委員 
『A列車で行こう』
連作長篇 415
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男59歳
21 「全体を貫く一本の糸のようなものがほしかった。そうでないと、気の利いたセリフが浮いてしまう。」「後半のほうがいい。惜しかった。落合さんは格段に腕をあげた。」
池波正太郎
男62歳
13 「多少の欠点はあるにしても、(引用者中略)あざとさ(原文傍点)がなく、これまでの彼女の候補作の中では、もっともよかったと、私はおもう。ジャズ・スポットを中心にした構成もよく、ことに〔第一夜〕の章がよかった。」「落合さんと、森田誠吾〔魚河岸ものがたり〕を受賞作として推した」
村上元三
男75歳
9 「この作品の面白さは認める。しかしせっかくいろんな人間を描き分けていながら、いかにも軽い。それがこの作者の持味なのだが、もっと深く人間を掘りさげたほうがいい。」
藤沢周平
男58歳
20 「落合さんのこれまでの作品は、疑わずに風俗に乗って書くような性質の軽さで損をしていたように思う。」「後半に移るにしたがって物語に厚みが加わり、第四章の老境の野田の物狂い、第五章のララバイのママを描いたところで、落合さんの筆は人生の深いところにとどいたと思った。あえて森田さんとの二作受賞を主張した理由である。」
井上ひさし
男51歳
12 「はじめて候補にのぼった時分とくらべて、失礼だが大変な腕の上げようだと舌を巻いた。もっとも技術が洗練されるにつれて登場人物たちが小綺麗に、まとまりよく仕上ってしまうという危険もないではない。しかし筆者はこの作品に九十点はさしあげたい。」
黒岩重吾
男61歳
11 「第二章以降はジャズが前面に出て来て人間の物語が稀薄になった。こうなるとジャズに興味のない読者は煩わしいだけである。氏の場合、人間の描写に作った部分が多い。余計なようだがもっと人間を凝視されたい。」
五木寛之
男53歳
0  
陳舜臣
男61歳
16 「最も印象にのこった」「連作の冒頭に、どうしようもない状況が示され、はたして救いはないのかと問いかけてくる。つづいて、さまざまな角度からの切りこみで、救いの可能性が暗示される。」「私はそこに清冽な熱気をかんじた。風俗もみごとに描けているし、この作家が大成することはまちがいない。」
渡辺淳一
男52歳
9 「前回より説得力を増したが、なお人物に気取りがみえ、いま一つ存在感が薄い。」
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他の候補作
森田誠吾
『魚河岸ものがたり』
林真理子
「最終便に間に合えば」等
山崎光夫
「サイレント・サウスポー」
篠田達明
『常夜燈』
志水辰夫
『背いて故郷』
島田荘司
『夏、19歳の肖像』
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候補者・作品
島田荘司男37歳×各選考委員 
『夏、19歳の肖像』
長篇 356
年齢/枚数の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
山口瞳
男59歳
15 「何よりも軽快で乾いた文章がいい。」「今回は自らの律儀さに転んだ。熱海のボスの別荘に殴りこみをかける(それが読者サービス)のは不必要で、それなくしても青春小説として読めた。」
池波正太郎
男62歳
0  
村上元三
男75歳
5 「「漱石と倫敦ミイラ殺人事件」の作者が「夏、19歳の肖像」のような作品を書いた変身ぶりにはおどろいた。こんどは、どう変身するのだろうか。」
藤沢周平
男58歳
3 「青春の恋愛感情をナイーブに描き出したものの、ミステリイ部分が粗雑」
井上ひさし
男51歳
10 「抒情あふれる回顧調の導入部に、恋が、そして謎がするりと入り込んでくるあたりのテンポはみごとである。後半の展開が安手のテレビドラマじみてくるのが惜しい。」
黒岩重吾
男61歳
0  
五木寛之
男53歳
0  
陳舜臣
男61歳
11 「はじめから物語の展開がほぼ予想できたが、主人公の若さが最後まで魅力を失わなかった。」「設定がヒッチコックの「裏窓」に似ていることなどが減点法の好餌となったのは残念である。」
渡辺淳一
男52歳
6 「前作と見違えるように、青春のある熱気のようなものが迫ってきて心を惹かれた。だが小説としての完成度においては一段劣る。」
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他の候補作
森田誠吾
『魚河岸ものがたり』
林真理子
「最終便に間に合えば」等
山崎光夫
「サイレント・サウスポー」
篠田達明
『常夜燈』
志水辰夫
『背いて故郷』
落合恵子
『A列車で行こう』
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