直木賞のすべて
第30回
吉川英治文学新人賞
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平成20年/2008年度
(平成21年/2009年3月4日決定発表)
選考委員  浅田次郎
男57歳
伊集院静
男59歳
大沢在昌
男52歳
高橋克彦
男61歳
宮部みゆき
女48歳
選評総行数  76 72 76 59 77
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
朝倉かすみ 『田村はまだか』
女48歳
9 15 12 18 15
柳広司 『ジョーカー・ゲーム』
男41歳
5 15 11 31 11
貴志祐介 『新世界より』
男50歳
40 13 18 9 9
道尾秀介 『カラスの親指』
男33歳
7 12 11 0 11
百田尚樹 『BOX!』
男53歳
7 9 11 0 4
和田竜 『忍びの国』
男39歳
8 9 9 0 14
         
年齢の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『小説現代』平成21年/2009年5月号
1行当たりの文字数:20字


選考委員
浅田次郎男57歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
想像力というもの 総行数76 (1行=20字)
候補 評価 行数 評言
朝倉かすみ
女48歳
9 「来るべき人間がなかなか来ないという、ある不安定な時間に想像力を働かせた小説で、この設定ひとつにしてもまことセンスがよい。」「欲を言えば、田村は永遠に到着しないほうがむしろ小説の形を全うできたと思うのだが、さてどうだろう。」
柳広司
男41歳
5 「昭和初期という難しい舞台に、想像の翼を思うまま拡げた。何よりもこの大胆さこそ受賞にふさわしいと信じての推輓である。」
貴志祐介
男50歳
40 「作者の想像力と博物的な知識、加うるに平易で読みごこちのよい文章力は卓抜している。しかしどうしても推しきれなかった理由は、物理的な重心が戦闘シーンに置かれている点であった。」「むしろ作者がその稀有な資質を踏まえて力点を置くべきであったのは、この新世界における科学であり、歴史であり、社会学であったはずである。」「そのうえでの掉尾を飾る一行、「想像力こそが、すべてを変える」ということになろうか。この真言を得た限り、作者は受賞こそ逸しても敗れたわけではない。」
道尾秀介
男33歳
7 「その鮮かな手法には毎度仰天させられるのだが、本作に限れば主人公の抱える苦悩がやや表層的で、ために人情話としての帰結に感動が求めきれなかった。」
百田尚樹
男53歳
7 「読者をリングサイドに立たせる迫真感があった。登場人物のオリジナリティーを、それぞれの私生活を描いて際立たせる工夫を加えれば、読者は声援を送るばかりではなく自からリングの上に立つ。」
和田竜
男39歳
8 「いつの時代にもひとつだけ定められている大衆文学作家の指定席を、今まさに占めつつある人だと感じた。ただし史料や考証がかえって枷になって、作者本来の自由な想像力を制約しているように思えた。」
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他の選考委員
伊集院静
大沢在昌
高橋克彦
宮部みゆき
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選考委員
伊集院静男59歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
才気と静謐 総行数72 (1行=20字)
候補 評価 行数 評言
朝倉かすみ
女48歳
15 「候補作の中で一番安堵して読むことができた。どこにでもあるようなちいさな存在である人の集まりに、誰でもが経験し、大切にしてきた記憶があり、その時間に奇妙なかがやきがある。それが人間、群像であるということを作者は心得ている。いや信じているのではなかろうか。」
柳広司
男41歳
15 「過半数の選考委員から支持を受け、委員の評も氏の才気に感心されていた。」「才気に関しては私も同意見だが、歴史の事実と違う箇所がいくつかあり、そのことが私に違和感を持たせた。」「それに私にはスパイというものが理解できないので他選考委員の眼力に従うことにした。」
貴志祐介
男50歳
13 「戦闘シーンが少し長過ぎるように思えたがユーモアも処々にあり、終章で、主人公の早季が見つめる希望も伝わった。手応えを感じて推したが、最終投票の末、受賞にはいたらなかった。残念だ。以前の候補作より腕も上がり作家として充分な才能と力量がある。」
道尾秀介
男33歳
12 「冒頭から物語に引き込まれた。」「ところが中盤から仕掛けの方に物語の主軸が置かれ、前半部に漂っていた、こんなことをしてしか生きて行けない人間たちの表情が見えなくなった。そのあたりが惜しまれた。」
百田尚樹
男53歳
9 「これまで出版されたボクシングの小説の中で、私が知る限り一番の傑作に思えた。」「これほど面白ければ文学性を問う必要はさらさらない。」「鉱脈に出逢えば大化けする作家だ。」
和田竜
男39歳
9 「主人公の無門が安芸から連れてきた女、お国との関係、交わす会話に魅力があった。」「文章も読み易く、これまでの時代小説の型にとらわれていないことも斬新だった。」「なのにどうして受賞にいたらなかったのか、私にもよくわからない。」
  「小説は才能も少し必要なのだろうが、それ以上に日々の姿勢が作家を確実に成長させる。」
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他の選考委員
浅田次郎
大沢在昌
高橋克彦
宮部みゆき
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選考委員
大沢在昌男52歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
高レベルの候補作 総行数76 (1行=20字)
候補 評価 行数 評言
朝倉かすみ
女48歳
12 「実は作者は周到な仕掛けを、そのありがち(原文傍点)の中に潜ませている。また、この作品に単純な感動や癒しはなく、むしろ心の内側のヒダを爪でひっかいてくるような感触があり、それが不快ではない。作者独特の才能といえるだろう。」
柳広司
男41歳
11 「私の評価は辛かった。短篇にはつきもののはしょり(原文傍点)、それは物語の成立には不可欠だが克明に説明しては流れを阻害する、必要情報の伝達法が、作品によってはひどく雑だったからだ。」
貴志祐介
男50歳
18 「上巻のおもしろさはすばらしく、候補作であることを忘れ、私は読む興奮にひたった。」「これだけの世界(原文傍点)を紙上に出現させた作者の想像力と剛腕は受賞に価する、と私は思った。過半数の賛同を得られなかった理由を強いてあげるなら、下巻に入ってからの物語のふらつき、だろうか。作者が着地点に迷ったかのように見える。」
道尾秀介
男33歳
11 「一読後、私はうーんと考えこんでしまった。テツさん――即ち作者――が仕掛けたこの一大詐欺を是ととるか非ととるかで、読後の印象はまるで異なるだろう。是ととる人は、心を癒される物語と読む。残念ながら私はその側ではなく、むしろ脱力感を誘われてしまった。」
百田尚樹
男53歳
11 「うまい。読後、唸った。「感動」にふさわしい材料をきっちり集め、要所を外すことなく料理している。だがどこかに既視感がある。」「作者はプロの料理人である。しかしこの作品においていうなら、化学調味料をあまりに使いすぎた感があった。」
和田竜
男39歳
9 「スピーディでそのおもしろさは無類だが、登場人物への感情移入をどこか拒むところがあり、それは作者の意図からくるものではない。なぜだろうと理由を考え、この作品がよくできた映画のノベライズのようなだからだと思いいたった。」
  「本年度の候補作は例年にも増して優れた作品がそろっていた。結果、かつてない長時間の議論を重ね、二作受賞となった。」
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他の選考委員
浅田次郎
伊集院静
高橋克彦
宮部みゆき
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選考委員
高橋克彦男61歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
選評 総行数59 (1行=20字)
候補 評価 行数 評言
朝倉かすみ
女48歳
18 「(引用者注:『ジョーカー・ゲーム』と)同時受賞となったのは、たぶんすべての選考委員に私とおなじ気持ちがあったからではないかと思う。(引用者中略・注:短編は)おなじまな板にのせられれば豊饒な長編に見劣りしてしまうのも確かで、今回の結果はそういう思いの表われではなかろうか。」
柳広司
男41歳
31 「一話目を読み、心底仰天してしまった。」「市川雷蔵の主演した『陸軍中野学校』のシリーズはこれまでに何度繰り返し見たか分からないくらい好きで、イメージが定着している。それを著者はわずか五十枚前後の短編一つで見事に覆した。」「戦争の真実とか、人の心を奪う残酷さを書きたくてはじめられた作品ではない。国と国とが頭脳のすべてを注ぎ込む謀略ゲームの展開がすべてで、その選手に主人公たちが選ばれたということだ。なんと明瞭で爽快な読後感。」
貴志祐介
男50歳
9 「圧倒的なイメージの積み重ねで驚きに襲われた。」「読了してしばらくは興奮が止まなかった。」「が、この超大作に堂々比肩して輝きを放つ連作短編集(引用者注:『ジョーカー・ゲーム』)の存在。その凄さに私は重きを置いた。きりりとした短編の切れ味をもっと多くに知らしめたいという思いもあった。」
道尾秀介
男33歳
0  
百田尚樹
男53歳
0  
和田竜
男39歳
0  
  「今年の候補作、本当に水準が高かったと思う。(引用者中略)選考の役割を忘れて読み耽ったものも何作かある。十年近く関わっているのだが、こんなことははじめてで、嬉しい悲鳴というより、残り二作となったとき不安さえ覚えた。絞り切れないのでは、という危惧だ。」
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他の選考委員
浅田次郎
伊集院静
大沢在昌
宮部みゆき
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選考委員
宮部みゆき女48歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
まさしく激戦 総行数77 (1行=20字)
候補 評価 行数 評言
朝倉かすみ
女48歳
15 「自分だったらどう書くかという議論にまで発展し、それだけ内圧の高い作品だったということです。」「実は私は『新世界より』を推したかったので、「田村を待たない(原文傍点)人物のベクトルが、どこか一ヵ所でいいから欲しかった」という嫁いじめみたいな発言をしたのですが、これは苦しいやりくり(原文傍点)でした。」「小説でないと書けないものを書いた素敵な小説です。」
柳広司
男41歳
11 「エスピオナージュに擬態したパズラーで、そこにエンタテイメントがあると発見したことがまず金星。〈魔王〉の結城中佐をあえて後方に退かせ、固有の属性に乏しい一話ごとの主人公たちを彼の手駒として動かすことで、スパイの本質である〈顔のない男たち〉を描いてみせたのが二つ目の金星でした。」
貴志祐介
男50歳
9 「三作(引用者注:受賞作を)出せない仕組みが恨めしいです。」「結末に至って〈人間と非・人間を分かつものは何か〉というテーマが見えてきて、読後しばらく興奮が冷めませんでした。」
道尾秀介
男33歳
11 「第一四〇回の直木賞に続き、この企みに満ちた面白い小説を二度落選させるのは、忍びないことでした。」「道尾さんは、〈読者を驚かせて楽しませる〉ことと、物語の整合性にこだわりつつも、ご自分の作風の幅を拡げてゆくという、難しくてやりがいのあるステージに来ているのだと思います。」
百田尚樹
男53歳
4 「偉大なる先行作『一瞬の風になれ』の壁が厚く、高かったとしか申せません。」
和田竜
男39歳
14 「人物の造形が(脚本的で)浅いという指摘はわかりますけれど、それがいけないとは思いません。和田さんは、従来どうしても敷居が高かった歴史小説へと読者を誘う、新しい道を発見して均しているところです。その先は未舗装なので、外からは荒っぽく見えるのかもしれない。でも私は、この道がずうっと出来あがってゆくのを、今後もわくわくして見ています。」
  「二作受賞が上限とわかっていても、家で一人で考えている時点では、マルを二作にしぼれませんでした。フタを開けてみれば、最初の投票で同点が三作、しかも評価の散らばり具合まで同じでしたので、覚悟はしていたものの、これは大変だとあらためて冷汗が出ました。」
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他の選考委員
浅田次郎
伊集院静
大沢在昌
高橋克彦
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受賞者・作品
朝倉かすみ女48歳×各選考委員 
『田村はまだか』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
浅田次郎
男57歳
9 「来るべき人間がなかなか来ないという、ある不安定な時間に想像力を働かせた小説で、この設定ひとつにしてもまことセンスがよい。」「欲を言えば、田村は永遠に到着しないほうがむしろ小説の形を全うできたと思うのだが、さてどうだろう。」
伊集院静
男59歳
15 「候補作の中で一番安堵して読むことができた。どこにでもあるようなちいさな存在である人の集まりに、誰でもが経験し、大切にしてきた記憶があり、その時間に奇妙なかがやきがある。それが人間、群像であるということを作者は心得ている。いや信じているのではなかろうか。」
大沢在昌
男52歳
12 「実は作者は周到な仕掛けを、そのありがち(原文傍点)の中に潜ませている。また、この作品に単純な感動や癒しはなく、むしろ心の内側のヒダを爪でひっかいてくるような感触があり、それが不快ではない。作者独特の才能といえるだろう。」
高橋克彦
男61歳
18 「(引用者注:『ジョーカー・ゲーム』と)同時受賞となったのは、たぶんすべての選考委員に私とおなじ気持ちがあったからではないかと思う。(引用者中略・注:短編は)おなじまな板にのせられれば豊饒な長編に見劣りしてしまうのも確かで、今回の結果はそういう思いの表われではなかろうか。」
宮部みゆき
女48歳
15 「自分だったらどう書くかという議論にまで発展し、それだけ内圧の高い作品だったということです。」「実は私は『新世界より』を推したかったので、「田村を待たない(原文傍点)人物のベクトルが、どこか一ヵ所でいいから欲しかった」という嫁いじめみたいな発言をしたのですが、これは苦しいやりくり(原文傍点)でした。」「小説でないと書けないものを書いた素敵な小説です。」
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他の候補作
柳広司
『ジョーカー・ゲーム』
貴志祐介
『新世界より』
道尾秀介
『カラスの親指』
百田尚樹
『BOX!』
和田竜
『忍びの国』
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受賞者・作品
柳広司男41歳×各選考委員 
『ジョーカー・ゲーム』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
浅田次郎
男57歳
5 「昭和初期という難しい舞台に、想像の翼を思うまま拡げた。何よりもこの大胆さこそ受賞にふさわしいと信じての推輓である。」
伊集院静
男59歳
15 「過半数の選考委員から支持を受け、委員の評も氏の才気に感心されていた。」「才気に関しては私も同意見だが、歴史の事実と違う箇所がいくつかあり、そのことが私に違和感を持たせた。」「それに私にはスパイというものが理解できないので他選考委員の眼力に従うことにした。」
大沢在昌
男52歳
11 「私の評価は辛かった。短篇にはつきもののはしょり(原文傍点)、それは物語の成立には不可欠だが克明に説明しては流れを阻害する、必要情報の伝達法が、作品によってはひどく雑だったからだ。」
高橋克彦
男61歳
31 「一話目を読み、心底仰天してしまった。」「市川雷蔵の主演した『陸軍中野学校』のシリーズはこれまでに何度繰り返し見たか分からないくらい好きで、イメージが定着している。それを著者はわずか五十枚前後の短編一つで見事に覆した。」「戦争の真実とか、人の心を奪う残酷さを書きたくてはじめられた作品ではない。国と国とが頭脳のすべてを注ぎ込む謀略ゲームの展開がすべてで、その選手に主人公たちが選ばれたということだ。なんと明瞭で爽快な読後感。」
宮部みゆき
女48歳
11 「エスピオナージュに擬態したパズラーで、そこにエンタテイメントがあると発見したことがまず金星。〈魔王〉の結城中佐をあえて後方に退かせ、固有の属性に乏しい一話ごとの主人公たちを彼の手駒として動かすことで、スパイの本質である〈顔のない男たち〉を描いてみせたのが二つ目の金星でした。」
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他の候補作
朝倉かすみ
『田村はまだか』
貴志祐介
『新世界より』
道尾秀介
『カラスの親指』
百田尚樹
『BOX!』
和田竜
『忍びの国』
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候補者・作品
貴志祐介男50歳×各選考委員 
『新世界より』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
浅田次郎
男57歳
40 「作者の想像力と博物的な知識、加うるに平易で読みごこちのよい文章力は卓抜している。しかしどうしても推しきれなかった理由は、物理的な重心が戦闘シーンに置かれている点であった。」「むしろ作者がその稀有な資質を踏まえて力点を置くべきであったのは、この新世界における科学であり、歴史であり、社会学であったはずである。」「そのうえでの掉尾を飾る一行、「想像力こそが、すべてを変える」ということになろうか。この真言を得た限り、作者は受賞こそ逸しても敗れたわけではない。」
伊集院静
男59歳
13 「戦闘シーンが少し長過ぎるように思えたがユーモアも処々にあり、終章で、主人公の早季が見つめる希望も伝わった。手応えを感じて推したが、最終投票の末、受賞にはいたらなかった。残念だ。以前の候補作より腕も上がり作家として充分な才能と力量がある。」
大沢在昌
男52歳
18 「上巻のおもしろさはすばらしく、候補作であることを忘れ、私は読む興奮にひたった。」「これだけの世界(原文傍点)を紙上に出現させた作者の想像力と剛腕は受賞に価する、と私は思った。過半数の賛同を得られなかった理由を強いてあげるなら、下巻に入ってからの物語のふらつき、だろうか。作者が着地点に迷ったかのように見える。」
高橋克彦
男61歳
9 「圧倒的なイメージの積み重ねで驚きに襲われた。」「読了してしばらくは興奮が止まなかった。」「が、この超大作に堂々比肩して輝きを放つ連作短編集(引用者注:『ジョーカー・ゲーム』)の存在。その凄さに私は重きを置いた。きりりとした短編の切れ味をもっと多くに知らしめたいという思いもあった。」
宮部みゆき
女48歳
9 「三作(引用者注:受賞作を)出せない仕組みが恨めしいです。」「結末に至って〈人間と非・人間を分かつものは何か〉というテーマが見えてきて、読後しばらく興奮が冷めませんでした。」
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他の候補作
朝倉かすみ
『田村はまだか』
柳広司
『ジョーカー・ゲーム』
道尾秀介
『カラスの親指』
百田尚樹
『BOX!』
和田竜
『忍びの国』
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候補者・作品
道尾秀介男33歳×各選考委員 
『カラスの親指』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
浅田次郎
男57歳
7 「その鮮かな手法には毎度仰天させられるのだが、本作に限れば主人公の抱える苦悩がやや表層的で、ために人情話としての帰結に感動が求めきれなかった。」
伊集院静
男59歳
12 「冒頭から物語に引き込まれた。」「ところが中盤から仕掛けの方に物語の主軸が置かれ、前半部に漂っていた、こんなことをしてしか生きて行けない人間たちの表情が見えなくなった。そのあたりが惜しまれた。」
大沢在昌
男52歳
11 「一読後、私はうーんと考えこんでしまった。テツさん――即ち作者――が仕掛けたこの一大詐欺を是ととるか非ととるかで、読後の印象はまるで異なるだろう。是ととる人は、心を癒される物語と読む。残念ながら私はその側ではなく、むしろ脱力感を誘われてしまった。」
高橋克彦
男61歳
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宮部みゆき
女48歳
11 「第一四〇回の直木賞に続き、この企みに満ちた面白い小説を二度落選させるのは、忍びないことでした。」「道尾さんは、〈読者を驚かせて楽しませる〉ことと、物語の整合性にこだわりつつも、ご自分の作風の幅を拡げてゆくという、難しくてやりがいのあるステージに来ているのだと思います。」
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他の候補作
朝倉かすみ
『田村はまだか』
柳広司
『ジョーカー・ゲーム』
貴志祐介
『新世界より』
百田尚樹
『BOX!』
和田竜
『忍びの国』
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候補者・作品
百田尚樹男53歳×各選考委員 
『BOX!』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
浅田次郎
男57歳
7 「読者をリングサイドに立たせる迫真感があった。登場人物のオリジナリティーを、それぞれの私生活を描いて際立たせる工夫を加えれば、読者は声援を送るばかりではなく自からリングの上に立つ。」
伊集院静
男59歳
9 「これまで出版されたボクシングの小説の中で、私が知る限り一番の傑作に思えた。」「これほど面白ければ文学性を問う必要はさらさらない。」「鉱脈に出逢えば大化けする作家だ。」
大沢在昌
男52歳
11 「うまい。読後、唸った。「感動」にふさわしい材料をきっちり集め、要所を外すことなく料理している。だがどこかに既視感がある。」「作者はプロの料理人である。しかしこの作品においていうなら、化学調味料をあまりに使いすぎた感があった。」
高橋克彦
男61歳
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宮部みゆき
女48歳
4 「偉大なる先行作『一瞬の風になれ』の壁が厚く、高かったとしか申せません。」
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他の候補作
朝倉かすみ
『田村はまだか』
柳広司
『ジョーカー・ゲーム』
貴志祐介
『新世界より』
道尾秀介
『カラスの親指』
和田竜
『忍びの国』
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候補者・作品
和田竜男39歳×各選考委員 
『忍びの国』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
浅田次郎
男57歳
8 「いつの時代にもひとつだけ定められている大衆文学作家の指定席を、今まさに占めつつある人だと感じた。ただし史料や考証がかえって枷になって、作者本来の自由な想像力を制約しているように思えた。」
伊集院静
男59歳
9 「主人公の無門が安芸から連れてきた女、お国との関係、交わす会話に魅力があった。」「文章も読み易く、これまでの時代小説の型にとらわれていないことも斬新だった。」「なのにどうして受賞にいたらなかったのか、私にもよくわからない。」
大沢在昌
男52歳
9 「スピーディでそのおもしろさは無類だが、登場人物への感情移入をどこか拒むところがあり、それは作者の意図からくるものではない。なぜだろうと理由を考え、この作品がよくできた映画のノベライズのようなだからだと思いいたった。」
高橋克彦
男61歳
0  
宮部みゆき
女48歳
14 「人物の造形が(脚本的で)浅いという指摘はわかりますけれど、それがいけないとは思いません。和田さんは、従来どうしても敷居が高かった歴史小説へと読者を誘う、新しい道を発見して均しているところです。その先は未舗装なので、外からは荒っぽく見えるのかもしれない。でも私は、この道がずうっと出来あがってゆくのを、今後もわくわくして見ています。」
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他の候補作
朝倉かすみ
『田村はまだか』
柳広司
『ジョーカー・ゲーム』
貴志祐介
『新世界より』
道尾秀介
『カラスの親指』
百田尚樹
『BOX!』
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