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平成3年/1991年度
(平成4年/1992年5月14日決定発表/『小説新潮』平成4年/1992年7月号選評掲載)
選考委員  阿刀田高
男57歳
井上ひさし
男57歳
逢坂剛
男48歳
長部日出雄
男57歳
山田太一
男57歳
最終投票
選評総行数  155 184 140 210 135  
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
船戸与一 『砂のクロニクル』
男48歳
51 67 47 71 52    
高村薫 『神の火』
女39歳
32 22 23 37 17    
伊集院静 『海峡』
男42歳
33 39 37 55 29    
中村隆資 『地蔵記』
男40歳
40 46 32 44 37    
           
年齢の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『小説新潮』平成4年/1992年7月号
1行当たりの文字数:30字


選考委員
阿刀田高男57歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数155 (1行=30字)
候補 評価 行数 評言
船戸与一
男48歳
51 3点「物語性において、この作品は劣っているんじゃないかという気がするわけです。親しくしていた人間が実はスパイであって、それを殺さねばならないとか、非常に似たようなパターンの繰り返しで話が進んでいっているだけではないか。」「本当によく殺す小説で、そうしてその殺しの描写も実に丹念ですけれども、これだけ殺されると、これはいやだなという感じがします。」
高村薫
女39歳
32 2.5点「ぽんと入ってくれればいいものを、どのことについても、まず前置きみたいなものがありまして、なかなか核心に入らない趣味があって、それがスパイ小説みたいな、もともと非常に分かりにくい要素を持っているものを、一層読みにくくしているように私は思いました。」「「砂のクロニクル」と一緒にあるということで、この人は損をしているかもしれない。大きな意味で似ている小説ですからね。」
伊集院静
男42歳
33 3.5点「とにかく全編を通じて言えることは、その技法のうまさで、まずこれだけうまければ、ある水準に達した作品と言っていいのではないかという、私はむしろプラスのほうに考えました。」「ただ、こういう小説というのは、小説家の手だれと言われるプロならば、まず書ける小説であるということも確かで、そういう意味では、新鮮味というものはあまりない。」
中村隆資
男40歳
40 3点「結局はこの人の文体をどう評価するかという問題に、この作品はかかってくるんじゃないかと思います。小説のつくりは、非常に雑だと思います。」「まあ、平均的な点数の作品だなというふうに思いました。」「読み終わった時にカタルシスがないですね。」
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他の選考委員
井上ひさし
逢坂剛
長部日出雄
山田太一
最終投票
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選考委員
井上ひさし男57歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数184 (1行=30字)
候補 評価 行数 評言
船戸与一
男48歳
67 4点「セックスと殺しが、たくさん出てきますが、パターンが似通っているので、だんだん鼻についてきます。」「これだけの枚数を使って、これだけ調べて、これだけ筆力を使って書いているのに、この血で血を洗う革命や宗教の問題を二十一世紀に向けて超えていく視点が虚無的なんですね。」「ただ、力感みなぎるすごい作品だと思います。」
高村薫
女39歳
22 3点「四作中一番素晴らしいすべり出しだと思いますが、やがてすべてがはっきりしなくなってくるんです。」「作者には韜晦が、文学的で小説的であるという錯覚があるように見受けられました。」「普通のなりわいを淡々と書いたら、とてもいい小説を書く作家じゃないかという気がしました。」
伊集院静
男42歳
39 4.5点「カッコいいこと言っていても、自分たち大人のつくっている世界は矛盾だらけです。それぞれ苦い思いがあるはずでしょう。それが物語に反映してこない。」「この小説は、みごとに出来た歌舞伎です。(引用者中略)この作者はこれまでのいろんなエンターテインメントのいいところを全部集めて、それを自分のものにしてゆるやかに展開しながら、読者をいい気持ちにさせる。」
中村隆資
男40歳
46 3.5点「作者の過ちは、現代まで書いたことです。(引用者中略)その過程で、作者の世界把握の弱さが出てくる。」「この文体にしても、類語辞典を読んでいるようなもので、最初は面白いんですけど、だんだん、どうってことはないな、と思うようになる。」「しかし、村の歴史をたったひと晩の中へ集中しようとした、その力業的冒険は大したもんだと思い直しました。」
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他の選考委員
阿刀田高
逢坂剛
長部日出雄
山田太一
最終投票
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選考委員
逢坂剛男48歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数140 (1行=30字)
候補 評価 行数 評言
船戸与一
男48歳
47 5点「おそらく船戸さん以外には書けないだろうという感じがします。」「細部をつついて、欠点を探し出していくような小説ではない。全体がひとつの叙事詩になっていて、独特の世界観を映し出す、そういう迫力をもっている小説だと思います。」「「砂のクロニクル」が山本周五郎賞を求めているんじゃなくて、山本周五郎賞が「砂のクロニクル」を求めていると私は思います(笑)。」
高村薫
女39歳
23 4点「現実のスパイ戦でも、誰がどっちの味方だか分からない、ということがよくあります。したがってこの作品の場合、韜晦という見方も出来るかもしれませんが、なんだかよく分からないところが、また逆に持ち味になっている気がします。」「大阪という土地柄が産んだ人物の造形力が抜群で、作者の情念のようなものがすごく伝わってくる。」
伊集院静
男42歳
37 3点「とにかく非常にうまく書かれた小説だな、という第一印象があります。ただ、読んでいるうちに、うまいなというふうに思わされるのが、だんだん煩わしくなってくる。」「視点が、とくに理由もなく変わってしまう。(引用者中略)ちょっと違和感を感じました。」
中村隆資
男40歳
32 2.5点「私はこの小説を読んで、一度も笑えませんでした。ここに書かれているユーモアの質は、私のユーモア感覚から言うと、かなり低いものじゃないかと思います。」「パロディなのか真面目なのか、中途半端な印象を与えることと、それから擬古文調と現代風の文章が、ごちゃごちゃになっていて、それが計算されて混在しているのであればいいんですけれども、どうもそうではない。」
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他の選考委員
阿刀田高
井上ひさし
長部日出雄
山田太一
最終投票
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選考委員
長部日出雄男57歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数210 (1行=30字)
候補 評価 行数 評言
船戸与一
男48歳
71 4点「この千六百枚の長さをぐんぐん引っ張っていく筆力には驚きます。」「文章が非常にしきしまっていて切れ味がよく、リズムがあるんで、どんどん読めていくわけですね。」「志のスケールの大きさというのは大変なものだと思ったんですが、次から次に起こる惨憺たる死が、どれもみなハードボイルド的な定石にうまくはまり過ぎるという感じがするんですね。」
高村薫
女39歳
37 4点「科学的情報というのはものすごく膨大な量が入っているんですが、それに比べて、国際的な諜報戦略とか、政治情勢に関する情報の量というのはかなり少ないんですね。アンバランスなぐらいに少ない。そのため、いろいろ分からないところが出てくる。」「でも、思考実験としては、とても刺激的で、読みごたえもあったというふうに思うんです。」「特に僕は、自分がアル中的な酔っぱらいだもんですから、この日野草介みたいなアル中の酔っぱらいをよくここまで書けたと思うくらい感心しましたね。」
伊集院静
男42歳
55 5点「淡々として気負いのない文章で、そこに描かれている世界が、とても小説的な魅力に富んでいるというふうに感じられたんです。」「(引用者注:主人公の国籍の問題を)社会派的な重いテーマにしないで、暗示するぐらいにとどめたことが、小説としての奥行きを深くしていると思うんです。」「ぱっと思い当たるような類型というのが幾つもあるんですが、また、その類型からはみ出しているいいところもかなりあると思います。」
中村隆資
男40歳
44 4.5点「僕は、この文体に非常な魅力を感じまして、四・五という点数をつけました。」「文章が韻律をおびて、節がついている。」「人間の観察に深みがあって、青っぽくない。しかも真の貴族とは何かなんていう、すこぶる高度な文学的な主題も追求している。」「僕は「地蔵記」のほうは、あんまり買えなくて、「流離譚」のほうがいいなと思ったんですが。」
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他の選考委員
阿刀田高
井上ひさし
逢坂剛
山田太一
最終投票
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選考委員
山田太一男57歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数135 (1行=30字)
候補 評価 行数 評言
船戸与一
男48歳
52 4.5点「大変な筆力で、ものすごく調べてあって、とても私には書けない作品だと思います。」「サミルがドキドキするほどよく書けているようには、日本人二人は書けていない。」「もう一人のハジの駒井克人の行動についての説明も、「じぶん自身ですらなぜそんなことをしたのかわかってない場合もずいぶんあるのだ」というふうに行動の内面を突き放されてしまう。」「私は最高点のつもりで四・五点をつけました。」「現実世界へ焦点を当て過ぎて読むのは、この作品のポイントをずらすことになってしまわないでしょうか。」
高村薫
女39歳
17 3.5点「前半(引用者中略)物語の気取りに古風を感じました。後半の爆破計画が分刻みで進行するあたりになると、飾りがなく、物語の造形力の強さを感じました。ただ、原発が危ないことを示すのに、こんなにダイナマイトでぼかぼかやる必要があるんだろうか。」
伊集院静
男42歳
29 3点「かつての美意識を対象化した上で書いてもらいたいところを、少し安心して、書いていらっしゃる。」「こういう人物でもう一度感動させるためには、もっと今の時代に意識的であって欲しい、と感じました。」「きまりものの需要がいまだあることは事実でしょうが、新進気鋭の作家としては少し緊張がないような気がいたしました。」
中村隆資
男40歳
37 4点「結構、都合よくしつらえてしまっている。ユーモアも野暮くさいですし、複雑性もあまりない。」「人物造型の意欲については、他の三作よりも、この作品のほうが、文章も含めて、少し高級なんじゃないかという気がいたしました。」「結局、一作選ぶということになれば入れないというふうに思いました。」
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他の選考委員
阿刀田高
井上ひさし
逢坂剛
長部日出雄
最終投票
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選考委員
最終投票×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数 (1行=30字)
候補 評価 行数 評言
船戸与一
男48歳
     
高村薫
女39歳
     
伊集院静
男42歳
    ○2票
中村隆資
男40歳
    ○3票
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他の選考委員
阿刀田高
井上ひさし
逢坂剛
長部日出雄
山田太一
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受賞者・作品
船戸与一男48歳×各選考委員 
『砂のクロニクル』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男57歳
51 3点「物語性において、この作品は劣っているんじゃないかという気がするわけです。親しくしていた人間が実はスパイであって、それを殺さねばならないとか、非常に似たようなパターンの繰り返しで話が進んでいっているだけではないか。」「本当によく殺す小説で、そうしてその殺しの描写も実に丹念ですけれども、これだけ殺されると、これはいやだなという感じがします。」
井上ひさし
男57歳
67 4点「セックスと殺しが、たくさん出てきますが、パターンが似通っているので、だんだん鼻についてきます。」「これだけの枚数を使って、これだけ調べて、これだけ筆力を使って書いているのに、この血で血を洗う革命や宗教の問題を二十一世紀に向けて超えていく視点が虚無的なんですね。」「ただ、力感みなぎるすごい作品だと思います。」
逢坂剛
男48歳
47 5点「おそらく船戸さん以外には書けないだろうという感じがします。」「細部をつついて、欠点を探し出していくような小説ではない。全体がひとつの叙事詩になっていて、独特の世界観を映し出す、そういう迫力をもっている小説だと思います。」「「砂のクロニクル」が山本周五郎賞を求めているんじゃなくて、山本周五郎賞が「砂のクロニクル」を求めていると私は思います(笑)。」
長部日出雄
男57歳
71 4点「この千六百枚の長さをぐんぐん引っ張っていく筆力には驚きます。」「文章が非常にしきしまっていて切れ味がよく、リズムがあるんで、どんどん読めていくわけですね。」「志のスケールの大きさというのは大変なものだと思ったんですが、次から次に起こる惨憺たる死が、どれもみなハードボイルド的な定石にうまくはまり過ぎるという感じがするんですね。」
山田太一
男57歳
52 4.5点「大変な筆力で、ものすごく調べてあって、とても私には書けない作品だと思います。」「サミルがドキドキするほどよく書けているようには、日本人二人は書けていない。」「もう一人のハジの駒井克人の行動についての説明も、「じぶん自身ですらなぜそんなことをしたのかわかってない場合もずいぶんあるのだ」というふうに行動の内面を突き放されてしまう。」「私は最高点のつもりで四・五点をつけました。」「現実世界へ焦点を当て過ぎて読むのは、この作品のポイントをずらすことになってしまわないでしょうか。」
最終投票      
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他の候補作
高村薫
『神の火』
伊集院静
『海峡』
中村隆資
『地蔵記』
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候補者・作品
高村薫女39歳×各選考委員 
『神の火』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男57歳
32 2.5点「ぽんと入ってくれればいいものを、どのことについても、まず前置きみたいなものがありまして、なかなか核心に入らない趣味があって、それがスパイ小説みたいな、もともと非常に分かりにくい要素を持っているものを、一層読みにくくしているように私は思いました。」「「砂のクロニクル」と一緒にあるということで、この人は損をしているかもしれない。大きな意味で似ている小説ですからね。」
井上ひさし
男57歳
22 3点「四作中一番素晴らしいすべり出しだと思いますが、やがてすべてがはっきりしなくなってくるんです。」「作者には韜晦が、文学的で小説的であるという錯覚があるように見受けられました。」「普通のなりわいを淡々と書いたら、とてもいい小説を書く作家じゃないかという気がしました。」
逢坂剛
男48歳
23 4点「現実のスパイ戦でも、誰がどっちの味方だか分からない、ということがよくあります。したがってこの作品の場合、韜晦という見方も出来るかもしれませんが、なんだかよく分からないところが、また逆に持ち味になっている気がします。」「大阪という土地柄が産んだ人物の造形力が抜群で、作者の情念のようなものがすごく伝わってくる。」
長部日出雄
男57歳
37 4点「科学的情報というのはものすごく膨大な量が入っているんですが、それに比べて、国際的な諜報戦略とか、政治情勢に関する情報の量というのはかなり少ないんですね。アンバランスなぐらいに少ない。そのため、いろいろ分からないところが出てくる。」「でも、思考実験としては、とても刺激的で、読みごたえもあったというふうに思うんです。」「特に僕は、自分がアル中的な酔っぱらいだもんですから、この日野草介みたいなアル中の酔っぱらいをよくここまで書けたと思うくらい感心しましたね。」
山田太一
男57歳
17 3.5点「前半(引用者中略)物語の気取りに古風を感じました。後半の爆破計画が分刻みで進行するあたりになると、飾りがなく、物語の造形力の強さを感じました。ただ、原発が危ないことを示すのに、こんなにダイナマイトでぼかぼかやる必要があるんだろうか。」
最終投票      
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
船戸与一
『砂のクロニクル』
伊集院静
『海峡』
中村隆資
『地蔵記』
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候補者・作品
伊集院静男42歳×各選考委員 
『海峡』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男57歳
33 3.5点「とにかく全編を通じて言えることは、その技法のうまさで、まずこれだけうまければ、ある水準に達した作品と言っていいのではないかという、私はむしろプラスのほうに考えました。」「ただ、こういう小説というのは、小説家の手だれと言われるプロならば、まず書ける小説であるということも確かで、そういう意味では、新鮮味というものはあまりない。」
井上ひさし
男57歳
39 4.5点「カッコいいこと言っていても、自分たち大人のつくっている世界は矛盾だらけです。それぞれ苦い思いがあるはずでしょう。それが物語に反映してこない。」「この小説は、みごとに出来た歌舞伎です。(引用者中略)この作者はこれまでのいろんなエンターテインメントのいいところを全部集めて、それを自分のものにしてゆるやかに展開しながら、読者をいい気持ちにさせる。」
逢坂剛
男48歳
37 3点「とにかく非常にうまく書かれた小説だな、という第一印象があります。ただ、読んでいるうちに、うまいなというふうに思わされるのが、だんだん煩わしくなってくる。」「視点が、とくに理由もなく変わってしまう。(引用者中略)ちょっと違和感を感じました。」
長部日出雄
男57歳
55 5点「淡々として気負いのない文章で、そこに描かれている世界が、とても小説的な魅力に富んでいるというふうに感じられたんです。」「(引用者注:主人公の国籍の問題を)社会派的な重いテーマにしないで、暗示するぐらいにとどめたことが、小説としての奥行きを深くしていると思うんです。」「ぱっと思い当たるような類型というのが幾つもあるんですが、また、その類型からはみ出しているいいところもかなりあると思います。」
山田太一
男57歳
29 3点「かつての美意識を対象化した上で書いてもらいたいところを、少し安心して、書いていらっしゃる。」「こういう人物でもう一度感動させるためには、もっと今の時代に意識的であって欲しい、と感じました。」「きまりものの需要がいまだあることは事実でしょうが、新進気鋭の作家としては少し緊張がないような気がいたしました。」
最終投票     ○2票
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他の候補作
船戸与一
『砂のクロニクル』
高村薫
『神の火』
中村隆資
『地蔵記』
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候補者・作品
中村隆資男40歳×各選考委員 
『地蔵記』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男57歳
40 3点「結局はこの人の文体をどう評価するかという問題に、この作品はかかってくるんじゃないかと思います。小説のつくりは、非常に雑だと思います。」「まあ、平均的な点数の作品だなというふうに思いました。」「読み終わった時にカタルシスがないですね。」
井上ひさし
男57歳
46 3.5点「作者の過ちは、現代まで書いたことです。(引用者中略)その過程で、作者の世界把握の弱さが出てくる。」「この文体にしても、類語辞典を読んでいるようなもので、最初は面白いんですけど、だんだん、どうってことはないな、と思うようになる。」「しかし、村の歴史をたったひと晩の中へ集中しようとした、その力業的冒険は大したもんだと思い直しました。」
逢坂剛
男48歳
32 2.5点「私はこの小説を読んで、一度も笑えませんでした。ここに書かれているユーモアの質は、私のユーモア感覚から言うと、かなり低いものじゃないかと思います。」「パロディなのか真面目なのか、中途半端な印象を与えることと、それから擬古文調と現代風の文章が、ごちゃごちゃになっていて、それが計算されて混在しているのであればいいんですけれども、どうもそうではない。」
長部日出雄
男57歳
44 4.5点「僕は、この文体に非常な魅力を感じまして、四・五という点数をつけました。」「文章が韻律をおびて、節がついている。」「人間の観察に深みがあって、青っぽくない。しかも真の貴族とは何かなんていう、すこぶる高度な文学的な主題も追求している。」「僕は「地蔵記」のほうは、あんまり買えなくて、「流離譚」のほうがいいなと思ったんですが。」
山田太一
男57歳
37 4点「結構、都合よくしつらえてしまっている。ユーモアも野暮くさいですし、複雑性もあまりない。」「人物造型の意欲については、他の三作よりも、この作品のほうが、文章も含めて、少し高級なんじゃないかという気がいたしました。」「結局、一作選ぶということになれば入れないというふうに思いました。」
最終投票     ○3票
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