第11回

第10回第12回

平成1年/1989年度 平成2年/1990年3月6日決定発表

選考委員　 井上ひさし 55歳 尾崎秀樹 61歳 佐野洋 61歳 野坂昭如 59歳 半村良 56歳 選評総行数　 44 23 24 25 25 評 評 評 評 評 候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 小杉健治　『土俵を走る殺意』 42歳 評 ◎ 14 ◎ 10 ◎ 24 ◎ 17 ◎ 18 安西水丸　『70パーセントの青空』 47歳 評 △ 3 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 井沢元彦　『義経はここにいる』 36歳 評 △ 5 ■ 4 ― 0 ― 0 ― 0 伊集院静　『三年坂』 40歳 評 △ 9 △ 4 ― 0 ○ 16 ○ 8 海老沢泰久　『孤立無援の名誉』 40歳 評 △ 8 △ 4 ― 0 ― 0 △ 4 原田宗典　『スメル男』 30歳 評 △ 5 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 東野圭吾　『鳥人計画』 32歳 評 △ 5 ■ 4 ― 0 ― 0 ― 0           年齢の説明   見方・注意点

井上ひさし55歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

題選評　総行数44　（1行=20字） 候補 評価 行数 評言 小杉健治 42歳 全 ◎ 14 「文章は荒削りで、構成にも穴が見受けられるが、人物の造形力は群を抜いている。たとえば主人公の母親やライバル、登場の機会をさほど多くは与えられていないが、その印象は強烈である。」「作者は推理小説を書こうとしながら、現実と格闘しているうちに、どんなジャンルにも属さない普通の叙事詩を完成してしまった。」 安西水丸 47歳 全 △ 3 「「香色の月」「消炭色の空」「練色の淡い光」と、（引用者中略）画家ならではの比喩が豊富であった。」 井沢元彦 36歳 全 △ 5 「動く密室と義経伝説の集大成とでたのしませてくれた」「知と力（つまり筆の）を兼備した力作である。」 伊集院静 40歳 全 △ 9 「主人公と同じ屈託を抱く多くの読者をあたたかくはげます。文章の素姓のよさ、たしかな描写力。次作を期待させずにはおかない書き手の一人だ。」 海老沢泰久 40歳 全 △ 8 「〈大人とは少年の心を失った存在。人間としてさらに成長するにはふたたび少年の心を取り戻さねば……〉という主題の短篇を多く集めているが、この主題を、抑えのきいた上等の文章で展開する表題作は、まぎれもなく傑作だった。」 原田宗典 30歳 全 △ 5 「〈二十一世紀の新しい時代をつくるはずの天才少年が、くだらないこの二十世紀のために人柱になってしまう〉という主題は痛切だった。」 東野圭吾 32歳 全 △ 5 「犯人が探偵を探す裏返しの趣向」「知と力（つまり筆の）を兼備した力作である。」

他の選考委員 尾崎秀樹 佐野洋 野坂昭如 半村良

尾崎秀樹61歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

題エンターテインメントのひろがり　総行数23　（1行=20字） 候補 評価 行数 評言 小杉健治 42歳 全 ◎ 10 「印象にのこった。」「一応ミステリー仕立てではあるが、それをこえた作品でもあった。」 安西水丸 47歳 全 ― 0   井沢元彦 36歳 全 ■ 4 「力のこもった歴史推理だったが、『義経幻殺録』を読んだ眼には、もう一つ工夫がほしかった。」 伊集院静 40歳 全 △ 4 「短篇集は、長篇と同じ土俵で論じられると損をする。」「それぞれの持味を生かした好短篇をふくむものだった。」 海老沢泰久 40歳 全 △ 4 「短篇集は、長篇と同じ土俵で論じられると損をする。」「それぞれの持味を生かした好短篇をふくむものだった。」 原田宗典 30歳 全 ― 0   東野圭吾 32歳 全 ■ 4 「勾留中の犯人が密告者を推理するといったアイデアにひかれたが、視点にぶれがあって残念だった。」   「七篇の候補作は、現代のエンターテインメントのひろがりを反映して、それぞれに興味深かった」

他の選考委員 井上ひさし 佐野洋 野坂昭如 半村良

佐野洋61歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

題選考余談　総行数24　（1行=20字） 候補 評価 行数 評言 小杉健治 42歳 全 ◎ 24 「今回は、一通り候補作を読んだ段階で『土俵を走る殺意』を推すつもりになっていた。題材、ストーリーの展開、全体の構成、さらに作者の問題意識の的確さ、」「だが、もう一度読み返すと、いくつかの欠点が目につき始めた。」「選考委員会では、この点を指摘する人もいるだろう……。私は、だから、それに備えた弁護論を用意して、会に臨んだのだった。」「ところが、一回目の投票で、この作品は満票を獲得してしまい、用意した弁護論は不要になった。」 安西水丸 47歳 全 ― 0   井沢元彦 36歳 全 ― 0   伊集院静 40歳 全 ― 0   海老沢泰久 40歳 全 ― 0   原田宗典 30歳 全 ― 0   東野圭吾 32歳 全 ― 0	他の選考委員 井上ひさし 尾崎秀樹 野坂昭如 半村良

野坂昭如59歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

題選評　総行数25　（1行=20字） 候補 評価 行数 評言 小杉健治 42歳 全 ◎ 17 「登場人物がすべて生き生きとして魅力的なのだ。上手に細部をうつして、土地の雰囲気を読む者に伝え、人情噺しの色どりもあって、即ち、本賞にもっともふさわしい。」「長篇なら『土俵を走る殺意』（引用者中略）と、今回はあっさりと決めた。」 安西水丸 47歳 全 ― 0   井沢元彦 36歳 全 ― 0   伊集院静 40歳 全 ○ 16 「短篇なら伊集院静『三年坂』と、今回はあっさりと決めた。」「おさめられた作品は、いずれも見事な仕上りで、すでにして作者は、自分の世界を完成させている、」「選考会の席上、短篇を対象の賞がどうしてないのかと、話題になった由縁、伊集院さんもって瞑すべし。」 海老沢泰久 40歳 全 ― 0   原田宗典 30歳 全 ― 0   東野圭吾 32歳 全 ― 0	他の選考委員 井上ひさし 尾崎秀樹 佐野洋 半村良

半村良56歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

題選評　総行数25　（1行=20字） 候補 評価 行数 評言 小杉健治 42歳 全 ◎ 18 「『土俵を走る殺意』一本買いのつもりで臨んだ。」「作者は書き進めるうち、背景となる時代相や、登場人物たちの人生に巻きこまれ、当初の枠組みをはみだして、予期していたよりずっと大きな小説を書かされてしまったようだ。」「これは書き手としてとてもしあわせなことで、読みながら私は小杉健治氏に嫉妬を感じた。」 安西水丸 47歳 全 ― 0   井沢元彦 36歳 全 ― 0   伊集院静 40歳 全 ○ 8 「二つの短編集（引用者注：「三年坂」と「孤立無援の名誉」）のどちらかが、最終段階へ残ってくることも考えていた。」「好きな作品で、できればこれも受賞して欲しかったが、一発満票の長編があったので、同時受賞は沙汰やみになった。」 海老沢泰久 40歳 全 △ 4 「二つの短編集（引用者注：「三年坂」と「孤立無援の名誉」）のどちらかが、最終段階へ残ってくることも考えていた。」 原田宗典 30歳 全 ― 0   東野圭吾 32歳 全 ― 0

他の選考委員 井上ひさし 尾崎秀樹 佐野洋 野坂昭如

小杉健治42歳×各選考委員　 『土俵を走る殺意』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上ひさし 55歳 全 ◎ 14 「文章は荒削りで、構成にも穴が見受けられるが、人物の造形力は群を抜いている。たとえば主人公の母親やライバル、登場の機会をさほど多くは与えられていないが、その印象は強烈である。」「作者は推理小説を書こうとしながら、現実と格闘しているうちに、どんなジャンルにも属さない普通の叙事詩を完成してしまった。」 尾崎秀樹 61歳 全 ◎ 10 「印象にのこった。」「一応ミステリー仕立てではあるが、それをこえた作品でもあった。」 佐野洋 61歳 全 ◎ 24 「今回は、一通り候補作を読んだ段階で『土俵を走る殺意』を推すつもりになっていた。題材、ストーリーの展開、全体の構成、さらに作者の問題意識の的確さ、」「だが、もう一度読み返すと、いくつかの欠点が目につき始めた。」「選考委員会では、この点を指摘する人もいるだろう……。私は、だから、それに備えた弁護論を用意して、会に臨んだのだった。」「ところが、一回目の投票で、この作品は満票を獲得してしまい、用意した弁護論は不要になった。」 野坂昭如 59歳 全 ◎ 17 「登場人物がすべて生き生きとして魅力的なのだ。上手に細部をうつして、土地の雰囲気を読む者に伝え、人情噺しの色どりもあって、即ち、本賞にもっともふさわしい。」「長篇なら『土俵を走る殺意』（引用者中略）と、今回はあっさりと決めた。」 半村良 56歳 全 ◎ 18 「『土俵を走る殺意』一本買いのつもりで臨んだ。」「作者は書き進めるうち、背景となる時代相や、登場人物たちの人生に巻きこまれ、当初の枠組みをはみだして、予期していたよりずっと大きな小説を書かされてしまったようだ。」「これは書き手としてとてもしあわせなことで、読みながら私は小杉健治氏に嫉妬を感じた。」

他の候補作 安西水丸 『70パーセントの青空』 井沢元彦 『義経はここにいる』 伊集院静 『三年坂』 海老沢泰久 『孤立無援の名誉』 原田宗典 『スメル男』 東野圭吾 『鳥人計画』

安西水丸47歳×各選考委員　 『70パーセントの青空』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上ひさし 55歳 全 △ 3 「「香色の月」「消炭色の空」「練色の淡い光」と、（引用者中略）画家ならではの比喩が豊富であった。」 尾崎秀樹 61歳 全 ― 0   佐野洋 61歳 全 ― 0   野坂昭如 59歳 全 ― 0   半村良 56歳 全 ― 0	他の候補作 小杉健治 『土俵を走る殺意』 井沢元彦 『義経はここにいる』 伊集院静 『三年坂』 海老沢泰久 『孤立無援の名誉』 原田宗典 『スメル男』 東野圭吾 『鳥人計画』

井沢元彦36歳×各選考委員　 『義経はここにいる』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上ひさし 55歳 全 △ 5 「動く密室と義経伝説の集大成とでたのしませてくれた」「知と力（つまり筆の）を兼備した力作である。」 尾崎秀樹 61歳 全 ■ 4 「力のこもった歴史推理だったが、『義経幻殺録』を読んだ眼には、もう一つ工夫がほしかった。」 佐野洋 61歳 全 ― 0   野坂昭如 59歳 全 ― 0   半村良 56歳 全 ― 0	他の候補作 小杉健治 『土俵を走る殺意』 安西水丸 『70パーセントの青空』 伊集院静 『三年坂』 海老沢泰久 『孤立無援の名誉』 原田宗典 『スメル男』 東野圭吾 『鳥人計画』

伊集院静40歳×各選考委員　 『三年坂』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上ひさし 55歳 全 △ 9 「主人公と同じ屈託を抱く多くの読者をあたたかくはげます。文章の素姓のよさ、たしかな描写力。次作を期待させずにはおかない書き手の一人だ。」 尾崎秀樹 61歳 全 △ 4 「短篇集は、長篇と同じ土俵で論じられると損をする。」「それぞれの持味を生かした好短篇をふくむものだった。」 佐野洋 61歳 全 ― 0   野坂昭如 59歳 全 ○ 16 「短篇なら伊集院静『三年坂』と、今回はあっさりと決めた。」「おさめられた作品は、いずれも見事な仕上りで、すでにして作者は、自分の世界を完成させている、」「選考会の席上、短篇を対象の賞がどうしてないのかと、話題になった由縁、伊集院さんもって瞑すべし。」 半村良 56歳 全 ○ 8 「二つの短編集（引用者注：「三年坂」と「孤立無援の名誉」）のどちらかが、最終段階へ残ってくることも考えていた。」「好きな作品で、できればこれも受賞して欲しかったが、一発満票の長編があったので、同時受賞は沙汰やみになった。」

他の候補作 小杉健治 『土俵を走る殺意』 安西水丸 『70パーセントの青空』 井沢元彦 『義経はここにいる』 海老沢泰久 『孤立無援の名誉』 原田宗典 『スメル男』 東野圭吾 『鳥人計画』

海老沢泰久40歳×各選考委員　 『孤立無援の名誉』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上ひさし 55歳 全 △ 8 「〈大人とは少年の心を失った存在。人間としてさらに成長するにはふたたび少年の心を取り戻さねば……〉という主題の短篇を多く集めているが、この主題を、抑えのきいた上等の文章で展開する表題作は、まぎれもなく傑作だった。」 尾崎秀樹 61歳 全 △ 4 「短篇集は、長篇と同じ土俵で論じられると損をする。」「それぞれの持味を生かした好短篇をふくむものだった。」 佐野洋 61歳 全 ― 0   野坂昭如 59歳 全 ― 0   半村良 56歳 全 △ 4 「二つの短編集（引用者注：「三年坂」と「孤立無援の名誉」）のどちらかが、最終段階へ残ってくることも考えていた。」	他の候補作 小杉健治 『土俵を走る殺意』 安西水丸 『70パーセントの青空』 井沢元彦 『義経はここにいる』 伊集院静 『三年坂』 原田宗典 『スメル男』 東野圭吾 『鳥人計画』

原田宗典30歳×各選考委員　 『スメル男』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上ひさし 55歳 全 △ 5 「〈二十一世紀の新しい時代をつくるはずの天才少年が、くだらないこの二十世紀のために人柱になってしまう〉という主題は痛切だった。」 尾崎秀樹 61歳 全 ― 0   佐野洋 61歳 全 ― 0   野坂昭如 59歳 全 ― 0   半村良 56歳 全 ― 0	他の候補作 小杉健治 『土俵を走る殺意』 安西水丸 『70パーセントの青空』 井沢元彦 『義経はここにいる』 伊集院静 『三年坂』 海老沢泰久 『孤立無援の名誉』 東野圭吾 『鳥人計画』

東野圭吾32歳×各選考委員　 『鳥人計画』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上ひさし 55歳 全 △ 5 「犯人が探偵を探す裏返しの趣向」「知と力（つまり筆の）を兼備した力作である。」 尾崎秀樹 61歳 全 ■ 4 「勾留中の犯人が密告者を推理するといったアイデアにひかれたが、視点にぶれがあって残念だった。」 佐野洋 61歳 全 ― 0   野坂昭如 59歳 全 ― 0   半村良 56歳 全 ― 0	他の候補作 小杉健治 『土俵を走る殺意』 安西水丸 『70パーセントの青空』 井沢元彦 『義経はここにいる』 伊集院静 『三年坂』 海老沢泰久 『孤立無援の名誉』 原田宗典 『スメル男』