第14回

第13回第15回

平成4年/1992年度 平成5年/1993年3月5日決定発表

選考委員　 井上ひさし 58歳 尾崎秀樹 64歳 佐野洋 64歳 野坂昭如 62歳 半村良 59歳 選評総行数　 36 29 30 31 33 評 評 評 評 評 候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 帚木蓬生　『三たびの海峡』 46歳 評 ◎ 36 ◎ 7 ◎ 15 △ 18 ◎ 12 北村薫　『六の宮の姫君』 43歳 評 ― 0 △ 6 ― 0 ● 2 ■ 6 黒川博行　『封印』 44歳 評 ― 0 △ 5 ○ 10 △ 5 ― 0 佐藤雅美　『影帳』 52歳 評 ― 0 ■ 4 ― 0 ● 3 ― 0 高村薫　『わが手に拳銃を』 40歳 評 ― 0 △ 7 ● 5 ○ 4 ■ 7 中村隆資　『天下を呑んだ男』 41歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ■ 4 ■ 6           年齢の説明   見方・注意点

井上ひさし58歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

題選評　総行数36　（1行=20字） 候補 評価 行数 評言 帚木蓬生 46歳 全 ◎ 36 「巨きな主題の設定と多岐にわたる素材の踏査に作者の時間と情熱が惜し気もなく注ぎ込まれており、そのことにまず敬意を抱いた。」「作者の手柄の一つは、昭和十年代の末と現代、この二つの「物語時間」を重ね合わせたことにある。」「登場人物たちも痩せていない。とりわけ主人公を命がけで想う千鶴という日本女性の奥行きの深い愛は烈しく、かつ魅力的だ。」 北村薫 43歳 全 ― 0   黒川博行 44歳 全 ― 0   佐藤雅美 52歳 全 ― 0   高村薫 40歳 全 ― 0   中村隆資 41歳 全 ― 0	他の選考委員 尾崎秀樹 佐野洋 野坂昭如 半村良

尾崎秀樹64歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

題それぞれに期待して　総行数29　（1行=20字） 候補 評価 行数 評言 帚木蓬生 46歳 全 ◎ 7 「歴史のなかに刻印された日本と朝鮮の間のきびしい現実を、目をそらすことなく見つめ直し、現代にその傷痕をどう生かすべきかという立場から語った作品であり、（引用者中略）その意図を高く買いたい。」 北村薫 43歳 全 △ 6 「芥川龍之介のさりげない一言に疑問を感じた主人公が、（引用者中略）多くの資料を調べ謎に迫ってゆくといった、いわば事件なしの謎とき小説で、それなりにおもしろく読めた。」 黒川博行 44歳 全 △ 5 「リアリティもあり、興味もそそられたが、結末が弱いのが残念だった。」 佐藤雅美 52歳 全 ■ 4 「捕物帳の世界に経済的な側面から光をあてたユニークな作品だが、捕物名人の個性が弱く、市井物の味がとぼしいのが惜しまれた。」 高村薫 40歳 全 △ 7 「銃に関する情報を詳細に描き、迫力あるサスペンスにまとまっていた。」 中村隆資 41歳 全 ― 0

他の選考委員 井上ひさし 佐野洋 野坂昭如 半村良

佐野洋64歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

題選考委員の幸福　総行数30　（1行=20字） 候補 評価 行数 評言 帚木蓬生 46歳 全 ◎ 15 「この作品では、サスペンスあるいは推理的要素を、最初から除外している。それが成功の大きな原因だと思われる。」「一番書きたかったことを、力を出し切って書いた作品と言えるだろう。書き終えたときの作者の充実感を想像すると、羨ましくさえなる。」 北村薫 43歳 全 ― 0   黒川博行 44歳 全 ○ 10 「（引用者注：受賞作以外の）他の五編のうちでは、黒川博行氏『封印』に感心した。従来の黒川作品と、全く違った雰囲気を持っており、作風の拡がりが感じられた。」「主人公が特別な正義漢でもないし、妙に粋がった態度を見せないことに好感を持った。二作に賞を贈るという案を考えて選考委員会に臨んだが、他の委員の賛成が得られなかった。」 佐藤雅美 52歳 全 ― 0   高村薫 40歳 全 ● 5 「氏の作品としては失敗作なのではないか。従来の作品と違った作法を、意識的に取ったのかもしれないが、それがマイナスに働いたように思われる。」 中村隆資 41歳 全 ― 0

他の選考委員 井上ひさし 尾崎秀樹 野坂昭如 半村良

野坂昭如62歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

題選評　総行数31　（1行=20字） 候補 評価 行数 評言 帚木蓬生 46歳 全 △ 18 「断片的な、一種の資料、記録はこれまで多く活字とされて来たが、これほどの量、そして小説の形で発表されたのは、井上光晴氏の作品以外知らない。」「一読巻を措く能わなかったのが、候補作品中これ一作、」「中途半端な読後感、ぼくはあえて当選から外し、他の委員の方の御意見を拝聴、だが、帚木さんの栄光は十分に予想していた。」 北村薫 43歳 全 ● 2 「何も小説仕立てにしなくても良い。」 黒川博行 44歳 全 △ 5 「正統的なハードボイルド、にしては街が描ききれていないし、会話にもう少し洒落っけ、ユーモアが欲しい。この作品は、ほぼ全員一致の二位であった。」 佐藤雅美 52歳 全 ● 3 「道具立てに工夫はみえるが、捕物帳になっていない、江戸に関する参考文書風。」 高村薫 40歳 全 ○ 4 「すでに小説を十分心得ている。」「高村氏の筆にして冗長、筋立ても曖昧、どうしてもこれまでに上梓された傑作と比較されてしまう。」 中村隆資 41歳 全 ■ 4 「言葉遊びは楽しいが、いささか独りよがり、なにより小説とはべつもの、いっそ笑い話に徹すればよかった。」

他の選考委員 井上ひさし 尾崎秀樹 佐野洋 半村良

半村良59歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

題選評　総行数33　（1行=20字） 候補 評価 行数 評言 帚木蓬生 46歳 全 ◎ 12 「ほとんど全員一致。」「これをひっさげた新人が登場できる時代にいたったのだと言う感慨を持ったし、この作品とぶつかった他の候補作の不遇さも感じた。」「ひょっとするとまだまだ根が浅いと言う一種の批判が起こるかも知れないが、この作品は重要な橋頭堡になりそうだと思い、強く推す側にまわった。」 北村薫 43歳 全 ■ 6 「あいかわらず感心するばかりだったが、新事実の提出も少なく、鮮やかな筆さばきが印象に残るのみで、迫力に欠けるうらみがあった。しかしこう言うジャンルは貴重で、継続して書いて行って欲しい。」 黒川博行 44歳 全 ― 0   佐藤雅美 52歳 全 ― 0   高村薫 40歳 全 ■ 7 「これまでの作品からしておおいに期待して読んだのだが、どう言うわけか今回の作品は狙いが悪かったようで、同じ大阪を舞台とした黒川博行氏の『封印』に比較しても、分が悪かったようだ。大器であると見ているので、次の作品を待ちたい。」 中村隆資 41歳 全 ■ 6 「野心的な作品であることは認めるが、全体に長い短編と言う印象が強かった。いっそ本格的なものに正面から取り組まれたらどうだろう。」   「候補作いずれも水準が高く、読む楽しみを満喫した。」

他の選考委員 井上ひさし 尾崎秀樹 佐野洋 野坂昭如

帚木蓬生46歳×各選考委員　 『三たびの海峡』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上ひさし 58歳 全 ◎ 36 「巨きな主題の設定と多岐にわたる素材の踏査に作者の時間と情熱が惜し気もなく注ぎ込まれており、そのことにまず敬意を抱いた。」「作者の手柄の一つは、昭和十年代の末と現代、この二つの「物語時間」を重ね合わせたことにある。」「登場人物たちも痩せていない。とりわけ主人公を命がけで想う千鶴という日本女性の奥行きの深い愛は烈しく、かつ魅力的だ。」 尾崎秀樹 64歳 全 ◎ 7 「歴史のなかに刻印された日本と朝鮮の間のきびしい現実を、目をそらすことなく見つめ直し、現代にその傷痕をどう生かすべきかという立場から語った作品であり、（引用者中略）その意図を高く買いたい。」 佐野洋 64歳 全 ◎ 15 「この作品では、サスペンスあるいは推理的要素を、最初から除外している。それが成功の大きな原因だと思われる。」「一番書きたかったことを、力を出し切って書いた作品と言えるだろう。書き終えたときの作者の充実感を想像すると、羨ましくさえなる。」 野坂昭如 62歳 全 △ 18 「断片的な、一種の資料、記録はこれまで多く活字とされて来たが、これほどの量、そして小説の形で発表されたのは、井上光晴氏の作品以外知らない。」「一読巻を措く能わなかったのが、候補作品中これ一作、」「中途半端な読後感、ぼくはあえて当選から外し、他の委員の方の御意見を拝聴、だが、帚木さんの栄光は十分に予想していた。」 半村良 59歳 全 ◎ 12 「ほとんど全員一致。」「これをひっさげた新人が登場できる時代にいたったのだと言う感慨を持ったし、この作品とぶつかった他の候補作の不遇さも感じた。」「ひょっとするとまだまだ根が浅いと言う一種の批判が起こるかも知れないが、この作品は重要な橋頭堡になりそうだと思い、強く推す側にまわった。」

他の候補作 北村薫 『六の宮の姫君』 黒川博行 『封印』 佐藤雅美 『影帳』 高村薫 『わが手に拳銃を』 中村隆資 『天下を呑んだ男』

北村薫43歳×各選考委員　 『六の宮の姫君』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上ひさし 58歳 全 ― 0   尾崎秀樹 64歳 全 △ 6 「芥川龍之介のさりげない一言に疑問を感じた主人公が、（引用者中略）多くの資料を調べ謎に迫ってゆくといった、いわば事件なしの謎とき小説で、それなりにおもしろく読めた。」 佐野洋 64歳 全 ― 0   野坂昭如 62歳 全 ● 2 「何も小説仕立てにしなくても良い。」 半村良 59歳 全 ■ 6 「あいかわらず感心するばかりだったが、新事実の提出も少なく、鮮やかな筆さばきが印象に残るのみで、迫力に欠けるうらみがあった。しかしこう言うジャンルは貴重で、継続して書いて行って欲しい。」	他の候補作 帚木蓬生 『三たびの海峡』 黒川博行 『封印』 佐藤雅美 『影帳』 高村薫 『わが手に拳銃を』 中村隆資 『天下を呑んだ男』

黒川博行44歳×各選考委員　 『封印』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上ひさし 58歳 全 ― 0   尾崎秀樹 64歳 全 △ 5 「リアリティもあり、興味もそそられたが、結末が弱いのが残念だった。」 佐野洋 64歳 全 ○ 10 「（引用者注：受賞作以外の）他の五編のうちでは、黒川博行氏『封印』に感心した。従来の黒川作品と、全く違った雰囲気を持っており、作風の拡がりが感じられた。」「主人公が特別な正義漢でもないし、妙に粋がった態度を見せないことに好感を持った。二作に賞を贈るという案を考えて選考委員会に臨んだが、他の委員の賛成が得られなかった。」 野坂昭如 62歳 全 △ 5 「正統的なハードボイルド、にしては街が描ききれていないし、会話にもう少し洒落っけ、ユーモアが欲しい。この作品は、ほぼ全員一致の二位であった。」 半村良 59歳 全 ― 0	他の候補作 帚木蓬生 『三たびの海峡』 北村薫 『六の宮の姫君』 佐藤雅美 『影帳』 高村薫 『わが手に拳銃を』 中村隆資 『天下を呑んだ男』

佐藤雅美52歳×各選考委員　 『影帳』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上ひさし 58歳 全 ― 0   尾崎秀樹 64歳 全 ■ 4 「捕物帳の世界に経済的な側面から光をあてたユニークな作品だが、捕物名人の個性が弱く、市井物の味がとぼしいのが惜しまれた。」 佐野洋 64歳 全 ― 0   野坂昭如 62歳 全 ● 3 「道具立てに工夫はみえるが、捕物帳になっていない、江戸に関する参考文書風。」 半村良 59歳 全 ― 0	他の候補作 帚木蓬生 『三たびの海峡』 北村薫 『六の宮の姫君』 黒川博行 『封印』 高村薫 『わが手に拳銃を』 中村隆資 『天下を呑んだ男』

高村薫40歳×各選考委員　 『わが手に拳銃を』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上ひさし 58歳 全 ― 0   尾崎秀樹 64歳 全 △ 7 「銃に関する情報を詳細に描き、迫力あるサスペンスにまとまっていた。」 佐野洋 64歳 全 ● 5 「氏の作品としては失敗作なのではないか。従来の作品と違った作法を、意識的に取ったのかもしれないが、それがマイナスに働いたように思われる。」 野坂昭如 62歳 全 ○ 4 「すでに小説を十分心得ている。」「高村氏の筆にして冗長、筋立ても曖昧、どうしてもこれまでに上梓された傑作と比較されてしまう。」 半村良 59歳 全 ■ 7 「これまでの作品からしておおいに期待して読んだのだが、どう言うわけか今回の作品は狙いが悪かったようで、同じ大阪を舞台とした黒川博行氏の『封印』に比較しても、分が悪かったようだ。大器であると見ているので、次の作品を待ちたい。」	他の候補作 帚木蓬生 『三たびの海峡』 北村薫 『六の宮の姫君』 黒川博行 『封印』 佐藤雅美 『影帳』 中村隆資 『天下を呑んだ男』

中村隆資41歳×各選考委員　 『天下を呑んだ男』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上ひさし 58歳 全 ― 0   尾崎秀樹 64歳 全 ― 0   佐野洋 64歳 全 ― 0   野坂昭如 62歳 全 ■ 4 「言葉遊びは楽しいが、いささか独りよがり、なにより小説とはべつもの、いっそ笑い話に徹すればよかった。」 半村良 59歳 全 ■ 6 「野心的な作品であることは認めるが、全体に長い短編と言う印象が強かった。いっそ本格的なものに正面から取り組まれたらどうだろう。」	他の候補作 帚木蓬生 『三たびの海峡』 北村薫 『六の宮の姫君』 黒川博行 『封印』 佐藤雅美 『影帳』 高村薫 『わが手に拳銃を』