第17回

第16回第18回

平成7年/1995年度 平成8年/1996年3月5日決定発表

選考委員　 井上ひさし 61歳 尾崎秀樹 67歳 佐野洋 67歳 野坂昭如 65歳 半村良 62歳 選評総行数　 36 29 28 30 29 評 評 評 評 評 候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 真保裕一　『ホワイトアウト』 34歳 評 ○ 6 △ 6 ■ 11 □ 15 △ 17 鈴木光司　『らせん』 38歳 評 ○ 8 ◎ 9 ○ 14 □ 14 △ 9 加納朋子　『掌の中の小鳥』 29歳 評 ■ 9 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 永倉万治　『黄金バット』 48歳 評 ■ 7 ■ 6 ― 0 ― 0 ― 0 中嶋博行　『違法弁護』 41歳 評 ■ 9 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 東野圭吾　『天空の蜂』 38歳 評 ■ 11 △ 8 △ 4 ― 0 ■ 16           年齢の説明   見方・注意点

井上ひさし61歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

題力作六編を読む　総行数36　（1行=20字） 候補 評価 行数 評言 真保裕一 34歳 全 ○ 6 「一介の発電所員がテロリストの集団との知恵比べや戦いを通して一個のヒーローに成長して行く。彼がヒーローに出来上がって行く過程そのものが小説に活気と生命力とを与えていて、この魅力がいくつもの弱点を消した。」 鈴木光司 38歳 全 ○ 8 「文章には力がある。そこにないものをそこに在らしめるという力。」「そして結尾の、世界崩壊感の中での主人公と息子の再会の甘美さ。これもまた作者の文章の力による読者への恵みの一つである。」 加納朋子 29歳 全 ■ 9 「推理短編を五作、積み上げて行くうちに一編の恋愛小説ができあがるという小説の外枠からのどんでん返しが光る。」「トリックはやや小粒であり、（引用者中略）他の四作の重量におされてしまった感がある。」 永倉万治 48歳 全 ■ 7 「青春が持つ熱い火照りがある。」「劇団主宰者との喧嘩まで行き着いておらず、（引用者中略）他の四作の重量におされてしまった感がある。」 中嶋博行 41歳 全 ■ 9 「骨組みがかっちりとしていて読みでがある。」「登場人物にまだ十分、血が通っていない。とくにヒロインに艶や照りを欠くと思う。」「会話に洒落っ気や諧謔味が乏しいのは残念である。」 東野圭吾 38歳 全 ■ 11 「骨組みがかっちりとしていて読みでがある。」「テーマに共感を持った。けれども登場人物がまだ作者に都合よく使われており、そのからくりが容易に読者に透けて見えている。」「会話に洒落っ気や諧謔味が乏しいのは残念である。」

他の選考委員 尾崎秀樹 佐野洋 野坂昭如 半村良

尾崎秀樹67歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

題新しい可能性　総行数29　（1行=20字） 候補 評価 行数 評言 真保裕一 34歳 全 △ 6 「厳寒期の雪山を舞台にくりひろげられるスリリングなドラマである。雪山の描写も迫力があった。」 鈴木光司 38歳 全 ◎ 9 「全候補作のうち、一番に熱気を感じ、一気に読みおえた作品である。」「迫真性に富んでいる。バイオホラーとよばれるこの分野での一収穫である。」 加納朋子 29歳 全 ― 0   永倉万治 48歳 全 ■ 6 「劇団東京キッドブラザーズに所属していた著者の自伝的青春記だ。その活気のようなものを伝えているが、小説としてはその光と影の両面を掘りこんでほしかった。」 中嶋博行 41歳 全 ― 0   東野圭吾 38歳 全 △ 8 「青春ミステリーを脱却した著者の力のある作品だったが、「ホワイトアウト」とたまたま素材が重なって損をした感じだ。」	他の選考委員 井上ひさし 佐野洋 野坂昭如 半村良

佐野洋67歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

題選考所感　総行数28　（1行=20字） 候補 評価 行数 評言 真保裕一 34歳 全 ■ 11 「乱歩賞以来の業績から言えば、受賞して当然とも言えるが、『ホワイトアウト』で受賞ということには、首をひねりたくなる。」「（引用者注：主人公の）超人ぶりに驚くばかりで、読んでいるだけで疲れてしまうが、それはこちらの年齢のせいだろう。」 鈴木光司 38歳 全 ○ 14 「『リング』が横溝正史賞の候補になったとき、森村誠一氏が強く推したが、私は反対した。（引用者中略）しかし、特異なイマジネーションには感心し、ＳＦあるいは恐怖小説として優れた作品であることは認めていた。今回、『らせん』を読み、そのイマジネーションが一層深まり、小説技術にも磨きがかけられたことを知った。」 加納朋子 29歳 全 ― 0   永倉万治 48歳 全 ― 0   中嶋博行 41歳 全 ― 0   東野圭吾 38歳 全 △ 4 「（引用者注：「ホワイトアウト」と）最後まで争った」「両者を比べた場合、『天空』の人物の方が実在感があり、その行動についても納得できた。」

他の選考委員 井上ひさし 尾崎秀樹 野坂昭如 半村良

野坂昭如65歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

題選評　総行数30　（1行=20字） 候補 評価 行数 評言 真保裕一 34歳 全 □ 15 「他の舞台で、こんなタフな主人公を登場させれば、ちょっと鼻白んだろうけど、冬の雪山、巨大なダムという大仕掛けの中では、かえって人間味を添え、滑らかに運び、」「そもそも強烈なキャラクターが不在の時代、むしろ、御都合主義という月並みで片付けてしまえる役割りをふられていた方が、人間は活き活きするのだろう。」 鈴木光司 38歳 全 □ 14 「「らせん」における遺伝子など、べつだんめあたらしくもないが、発想がとび抜けている。」「そもそも強烈なキャラクターが不在の時代、むしろ、御都合主義という月並みで片付けてしまえる役割りをふられていた方が、人間は活き活きするのだろう。」 加納朋子 29歳 全 ― 0   永倉万治 48歳 全 ― 0   中嶋博行 41歳 全 ― 0   東野圭吾 38歳 全 ― 0     「今回の候補作には、すべてにその、あるいは作者自身、ただ書きたいように書いたのかもしれないが、一種の熱気を感じた。」

他の選考委員 井上ひさし 尾崎秀樹 佐野洋 半村良

半村良62歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

題選評　総行数29　（1行=20字） 候補 評価 行数 評言 真保裕一 34歳 全 △ 17 「もうこうしたジャンルの作品があらわれてもいいころだという予感を抱かせていたから、抵抗なく嚥みくだせた。」「（引用者注：「天空の蜂」との）両者をめぐる議論は一進一退、互角で取り組んでいたが、（引用者中略）最後に「ホワイトアウト」に軍配があがった」 鈴木光司 38歳 全 △ 9 「「らせん」の受賞は私にとって画期的なことだった。」「この分野の作品がこの賞を受けたことが、ＳＦもとうとうここまで理解されたかという感慨をわかせてくれた。ＳＦももう大丈夫だ。胸を張って書きまくってください。」 加納朋子 29歳 全 ― 0   永倉万治 48歳 全 ― 0   中嶋博行 41歳 全 ― 0   東野圭吾 38歳 全 ■ 16 「原子力発電問題は時宜に適していると思った」「（引用者注：「ホワイトアウト」との）両者をめぐる議論は一進一退、互角で取り組んでいたが、（引用者中略）最後に「ホワイトアウト」に軍配があがったのは、「天空の蜂」が巻頭から危機感の底割れを起こしていたせいだと思う。犯人側のヒューマニズムが弱さにつながってしまったのだ。」

他の選考委員 井上ひさし 尾崎秀樹 佐野洋 野坂昭如

真保裕一34歳×各選考委員　 『ホワイトアウト』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上ひさし 61歳 全 ○ 6 「一介の発電所員がテロリストの集団との知恵比べや戦いを通して一個のヒーローに成長して行く。彼がヒーローに出来上がって行く過程そのものが小説に活気と生命力とを与えていて、この魅力がいくつもの弱点を消した。」 尾崎秀樹 67歳 全 △ 6 「厳寒期の雪山を舞台にくりひろげられるスリリングなドラマである。雪山の描写も迫力があった。」 佐野洋 67歳 全 ■ 11 「乱歩賞以来の業績から言えば、受賞して当然とも言えるが、『ホワイトアウト』で受賞ということには、首をひねりたくなる。」「（引用者注：主人公の）超人ぶりに驚くばかりで、読んでいるだけで疲れてしまうが、それはこちらの年齢のせいだろう。」 野坂昭如 65歳 全 □ 15 「他の舞台で、こんなタフな主人公を登場させれば、ちょっと鼻白んだろうけど、冬の雪山、巨大なダムという大仕掛けの中では、かえって人間味を添え、滑らかに運び、」「そもそも強烈なキャラクターが不在の時代、むしろ、御都合主義という月並みで片付けてしまえる役割りをふられていた方が、人間は活き活きするのだろう。」 半村良 62歳 全 △ 17 「もうこうしたジャンルの作品があらわれてもいいころだという予感を抱かせていたから、抵抗なく嚥みくだせた。」「（引用者注：「天空の蜂」との）両者をめぐる議論は一進一退、互角で取り組んでいたが、（引用者中略）最後に「ホワイトアウト」に軍配があがった」

他の候補作 鈴木光司 『らせん』 加納朋子 『掌の中の小鳥』 永倉万治 『黄金バット』 中嶋博行 『違法弁護』 東野圭吾 『天空の蜂』

鈴木光司38歳×各選考委員　 『らせん』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上ひさし 61歳 全 ○ 8 「文章には力がある。そこにないものをそこに在らしめるという力。」「そして結尾の、世界崩壊感の中での主人公と息子の再会の甘美さ。これもまた作者の文章の力による読者への恵みの一つである。」 尾崎秀樹 67歳 全 ◎ 9 「全候補作のうち、一番に熱気を感じ、一気に読みおえた作品である。」「迫真性に富んでいる。バイオホラーとよばれるこの分野での一収穫である。」 佐野洋 67歳 全 ○ 14 「『リング』が横溝正史賞の候補になったとき、森村誠一氏が強く推したが、私は反対した。（引用者中略）しかし、特異なイマジネーションには感心し、ＳＦあるいは恐怖小説として優れた作品であることは認めていた。今回、『らせん』を読み、そのイマジネーションが一層深まり、小説技術にも磨きがかけられたことを知った。」 野坂昭如 65歳 全 □ 14 「「らせん」における遺伝子など、べつだんめあたらしくもないが、発想がとび抜けている。」「そもそも強烈なキャラクターが不在の時代、むしろ、御都合主義という月並みで片付けてしまえる役割りをふられていた方が、人間は活き活きするのだろう。」 半村良 62歳 全 △ 9 「「らせん」の受賞は私にとって画期的なことだった。」「この分野の作品がこの賞を受けたことが、ＳＦもとうとうここまで理解されたかという感慨をわかせてくれた。ＳＦももう大丈夫だ。胸を張って書きまくってください。」

他の候補作 真保裕一 『ホワイトアウト』 加納朋子 『掌の中の小鳥』 永倉万治 『黄金バット』 中嶋博行 『違法弁護』 東野圭吾 『天空の蜂』

加納朋子29歳×各選考委員　 『掌の中の小鳥』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上ひさし 61歳 全 ■ 9 「推理短編を五作、積み上げて行くうちに一編の恋愛小説ができあがるという小説の外枠からのどんでん返しが光る。」「トリックはやや小粒であり、（引用者中略）他の四作の重量におされてしまった感がある。」 尾崎秀樹 67歳 全 ― 0   佐野洋 67歳 全 ― 0   野坂昭如 65歳 全 ― 0   半村良 62歳 全 ― 0	他の候補作 真保裕一 『ホワイトアウト』 鈴木光司 『らせん』 永倉万治 『黄金バット』 中嶋博行 『違法弁護』 東野圭吾 『天空の蜂』

永倉万治48歳×各選考委員　 『黄金バット』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上ひさし 61歳 全 ■ 7 「青春が持つ熱い火照りがある。」「劇団主宰者との喧嘩まで行き着いておらず、（引用者中略）他の四作の重量におされてしまった感がある。」 尾崎秀樹 67歳 全 ■ 6 「劇団東京キッドブラザーズに所属していた著者の自伝的青春記だ。その活気のようなものを伝えているが、小説としてはその光と影の両面を掘りこんでほしかった。」 佐野洋 67歳 全 ― 0   野坂昭如 65歳 全 ― 0   半村良 62歳 全 ― 0	他の候補作 真保裕一 『ホワイトアウト』 鈴木光司 『らせん』 加納朋子 『掌の中の小鳥』 中嶋博行 『違法弁護』 東野圭吾 『天空の蜂』

中嶋博行41歳×各選考委員　 『違法弁護』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上ひさし 61歳 全 ■ 9 「骨組みがかっちりとしていて読みでがある。」「登場人物にまだ十分、血が通っていない。とくにヒロインに艶や照りを欠くと思う。」「会話に洒落っ気や諧謔味が乏しいのは残念である。」 尾崎秀樹 67歳 全 ― 0   佐野洋 67歳 全 ― 0   野坂昭如 65歳 全 ― 0   半村良 62歳 全 ― 0	他の候補作 真保裕一 『ホワイトアウト』 鈴木光司 『らせん』 加納朋子 『掌の中の小鳥』 永倉万治 『黄金バット』 東野圭吾 『天空の蜂』

東野圭吾38歳×各選考委員　 『天空の蜂』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上ひさし 61歳 全 ■ 11 「骨組みがかっちりとしていて読みでがある。」「テーマに共感を持った。けれども登場人物がまだ作者に都合よく使われており、そのからくりが容易に読者に透けて見えている。」「会話に洒落っ気や諧謔味が乏しいのは残念である。」 尾崎秀樹 67歳 全 △ 8 「青春ミステリーを脱却した著者の力のある作品だったが、「ホワイトアウト」とたまたま素材が重なって損をした感じだ。」 佐野洋 67歳 全 △ 4 「（引用者注：「ホワイトアウト」と）最後まで争った」「両者を比べた場合、『天空』の人物の方が実在感があり、その行動についても納得できた。」 野坂昭如 65歳 全 ― 0   半村良 62歳 全 ■ 16 「原子力発電問題は時宜に適していると思った」「（引用者注：「ホワイトアウト」との）両者をめぐる議論は一進一退、互角で取り組んでいたが、（引用者中略）最後に「ホワイトアウト」に軍配があがったのは、「天空の蜂」が巻頭から危機感の底割れを起こしていたせいだと思う。犯人側のヒューマニズムが弱さにつながってしまったのだ。」

他の候補作 真保裕一 『ホワイトアウト』 鈴木光司 『らせん』 加納朋子 『掌の中の小鳥』 永倉万治 『黄金バット』 中嶋博行 『違法弁護』