第37回

第36回第38回

平成27年/2015年度 平成28年/2016年3月3日決定発表

選考委員　 伊集院静 66歳 大沢在昌 59歳 恩田陸 51歳 京極夏彦 52歳 高橋克彦 68歳 選評総行数　 62 61 60 96 76 評 評 評 評 評 候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 薬丸岳　『Ａではない君と』 46歳 評 ○ 28 ○ 17 ○ 17 ○ 94 ○ 64 須賀しのぶ　『革命前夜』 43歳 評 △ 11 ○ 7 ■ 8 ― 0 □ 54 中脇初枝　『世界の果てのこどもたち』 42歳 評 ■ 8 ■ 7 ■ 13 ― 0 □ 65 本城雅人　『トリダシ』 50歳 評 □ 11 ■ 13 ■ 4 ― 0 ― 0 湊かなえ　『リバース』 43歳 評 ● 3 ● 9 ● 8 ― 0 ― 0 柚月裕子　『孤狼の血』 47歳 評 ● 5 ● 7 □ 10 ― 0 ― 0           年齢の説明   見方・注意点

伊集院静66歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

題真摯な作品　総行数62　（1行=19字） 候補 評価 行数 評言 薬丸岳 46歳 全 ○ 28 「薬丸岳氏にとって現代社会の犯罪における加害者と被害者、その両者の家族が持たざるを得ない葛藤と苦悩、近年は未成年者による犯罪においての両者の在り方が作者のテーマとなっている。」「今回の作品を読んで、思わず唸った。薬丸岳という小説家の力量と才能に頭が下がった。特に第三章からの少年と父の在り方が素晴らしい。」 須賀しのぶ 43歳 全 △ 11 「受賞に推すと言う選考委員もいたが、薬丸氏の作品との比較になると、分が悪かったと言うしかない。選考というものが持つ、独特な流れに乗れなかったのは残念だった。」 中脇初枝 42歳 全 ■ 8 「私にはそのテーマの大きさが作品全体のリアリティーを稀薄にさせたように思えた。どこが作品のクライマックスか見えなかった。」 本城雅人 50歳 全 □ 11 「私は薬丸氏の次に（引用者中略）推した。」「鳥飼という名物記者より私は女性記者の細谷に魅力を感じた。欲を言えば登場人物がいかにもどこかに居そうな印象があり、もっと自由に筆を振るっていいのではと思った。」 湊かなえ 43歳 全 ● 3 「多くの読者を持つ力量のある作家なので期待して読んだが、この作品を候補作にしたことに疑問を抱いた。」 柚月裕子 47歳 全 ● 5 「私にはどこかで見たような構成に思われ、人物の描写が荒削りに感じた。」

他の選考委員 大沢在昌 恩田陸 京極夏彦 高橋克彦

大沢在昌59歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

題果実　総行数61　（1行=19字） 候補 評価 行数 評言 薬丸岳 46歳 全 ○ 17 「デビュー以来ずっとといってよいほど、薬丸さんは少年犯罪というテーマにこだわっていたが、物語とかみあわないもどかしさがつきまとっていた。」「それがみごとに払拭されたのが本作だ。」「ことに連載終了後加筆された第三章がすばらしい。著者の、よい作品を作りあげようという苦悩と、主人公の苦悩があいまって、名状しがたい感動を私は味わった。」 須賀しのぶ 43歳 全 ○ 7 「受賞作（引用者注：「Ａではない君と」）と並んで私は評価した。音楽をこれほど伝えられる文章を私は知らない。天才肌の登場人物の描写もみごとである。」 中脇初枝 42歳 全 ■ 7 「史実の重さ、戦争の残酷さ、人の世の不条理が読むほどに伝わってくるが、果たしてそれは、この物語（原文傍点）がもつ力なのだろうか。」「また、作者の筆が感情に流されすぎている印象があった。」 本城雅人 50歳 全 ■ 13 「不運だった。ここで比べられるには、あまりに小粒な物語群なのだ。主人公の魅力をどう見せるか、もっと考えていただきたい。」 湊かなえ 43歳 全 ● 9 「素材の小ささが最後まで気になった。」「主人公たちのもとに届く、「人殺しだ」という告発文にも首を傾げざるをえない。的はずれと思う人間もいるのではないか。」 柚月裕子 47歳 全 ● 7 「一読、困ってしまった」「登場人物全員、刑事もやくざも小料理屋の女将も、誰ひとり意外な言動がない。すべて役柄でしかないのだ。」「これはまだ、上手にできた「悪徳刑事」という塗り絵でしかない。」   「今回はふだんより多い六作の候補作が並び、レベルも高かった。」

他の選考委員 伊集院静 恩田陸 京極夏彦 高橋克彦

恩田陸51歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

総行数60　（1行=19字） 候補 評価 行数 評言 薬丸岳 46歳 全 ○ 17 「そうか、「もし自分だったら」というのは小説の楽しみ方のひとつだったなあ、と『Ａではない君と』を読んでいる時に改めて確認した」「今の世の中、ひとつの問題を誠実に考え続けることはどんどん難しくなっている。そんな中で、ずっと同じテーマを追っていく、つきつめていくというのは勇気の要ることであるが、そういう手法も小説家のひとつのあり方だなあということも確認したのだ。」 須賀しのぶ 43歳 全 ■ 8 「「こんなふうにベルリンの壁は崩れました」ということは分かるのだが、そこに主人公が有機的に絡んで来ない。」 中脇初枝 42歳 全 ■ 13 「これは私の個人的なポリシーなのだが、他の賞ならともかく、吉川賞候補の作品としては、テーマはあくまで読んだ後で浮かびあがってくるものであって、読んでいる時はフリでもいいからエンターテインメントの顔をしていてほしいのだ。」「読み始めた時からテーマが先行しているところが気になって、積極的に推せなかった。」 本城雅人 50歳 全 ■ 4 「手堅く、エンターテインメントのお手本のような作品である。」「その先の個性ある展開を見せてほしい。」 湊かなえ 43歳 全 ● 8 「いちばん気になったのは、描きたい感情を地の文ではなく、登場人物に台詞で説明させてしまっているところだった。主人公が知りたいはずの、広沢という人物があまりくっきりと浮かび上がってこなかったのも残念だった。」 柚月裕子 47歳 全 □ 10 「肚の据わった堂々たる描きっぷりがたのもしく、ラストシーンにも興奮した。この作品も推したかったけれど、他の選考委員の意見もごもっともと思ったので、残念ながら受賞しないことに反対はしなかった。」

他の選考委員 伊集院静 大沢在昌 京極夏彦 高橋克彦

京極夏彦52歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

総行数96　（1行=19字） 候補 評価 行数 評言 薬丸岳 46歳 全 ○ 94 「著者はデビュー以来、「少年犯罪」「少年法」というデリケートかつ扱いにくいテーマに正面から取り組み続けている。」「この大きなテーマは、娯楽小説であるが故に、娯楽小説としての安易な結論を提示してしまうことを拒むものでもあるだろう。」「本作に於いて著者は「どうしたって結論など出せるものではないのだ」という結論をきちんと物語化することに成功している。」 須賀しのぶ 43歳 全 ― 0   中脇初枝 42歳 全 ― 0   本城雅人 50歳 全 ― 0   湊かなえ 43歳 全 ― 0   柚月裕子 47歳 全 ― 0     「個人的には、いずれの候補作も僅差であったことを述べておく。」	他の選考委員 伊集院静 大沢在昌 恩田陸 高橋克彦

高橋克彦68歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

題小説の新たな可能性　総行数76　（1行=19字） 候補 評価 行数 評言 薬丸岳 46歳 全 ○ 64 「（引用者注：「革命前夜」「世界の果てのこどもたち」と共に）作中に示される覚悟と勇気と我慢と研鑽に魂を揺さぶられる」「薬丸さんは自分を捨てて父親の苦悩に真正面から取り組んだ。（引用者中略）では書き手としての公平な見方はどうなるのか。それで客観性を保つことができるのか。（引用者中略）これこそが物書きの真の勇気と言うしかない。」 須賀しのぶ 43歳 全 □ 54 「（引用者注：「Ａではない君と」「世界の果てのこどもたち」と共に）作中に示される覚悟と勇気と我慢と研鑽に魂を揺さぶられる（引用者中略）未熟な私にはそれがそれぞれの著者の内面にある真実の叫びによるものと思えた。でなければこれほどに伝わらない。」 中脇初枝 42歳 全 □ 65 「（引用者注：「Ａではない君と」「革命前夜」と共に）作中に示される覚悟と勇気と我慢と研鑽に魂を揺さぶられる」「主人公たちはだれしも幼い少女なので著者はいっさい口をはさむことができない。どこまでも止まない地獄絵図を書き続けるしかない。」「書いている間の著者はどれほど苛立ちと不安を抱えていただろう。たった今の自分の思いをそのまま出せれば、と何度も思ったに違いない。」 本城雅人 50歳 全 ― 0   湊かなえ 43歳 全 ― 0   柚月裕子 47歳 全 ― 0

他の選考委員 伊集院静 大沢在昌 恩田陸 京極夏彦

薬丸岳46歳×各選考委員　 『Ａではない君と』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 伊集院静 66歳 全 ○ 28 「薬丸岳氏にとって現代社会の犯罪における加害者と被害者、その両者の家族が持たざるを得ない葛藤と苦悩、近年は未成年者による犯罪においての両者の在り方が作者のテーマとなっている。」「今回の作品を読んで、思わず唸った。薬丸岳という小説家の力量と才能に頭が下がった。特に第三章からの少年と父の在り方が素晴らしい。」 大沢在昌 59歳 全 ○ 17 「デビュー以来ずっとといってよいほど、薬丸さんは少年犯罪というテーマにこだわっていたが、物語とかみあわないもどかしさがつきまとっていた。」「それがみごとに払拭されたのが本作だ。」「ことに連載終了後加筆された第三章がすばらしい。著者の、よい作品を作りあげようという苦悩と、主人公の苦悩があいまって、名状しがたい感動を私は味わった。」 恩田陸 51歳 全 ○ 17 「そうか、「もし自分だったら」というのは小説の楽しみ方のひとつだったなあ、と『Ａではない君と』を読んでいる時に改めて確認した」「今の世の中、ひとつの問題を誠実に考え続けることはどんどん難しくなっている。そんな中で、ずっと同じテーマを追っていく、つきつめていくというのは勇気の要ることであるが、そういう手法も小説家のひとつのあり方だなあということも確認したのだ。」 京極夏彦 52歳 全 ○ 94 「著者はデビュー以来、「少年犯罪」「少年法」というデリケートかつ扱いにくいテーマに正面から取り組み続けている。」「この大きなテーマは、娯楽小説であるが故に、娯楽小説としての安易な結論を提示してしまうことを拒むものでもあるだろう。」「本作に於いて著者は「どうしたって結論など出せるものではないのだ」という結論をきちんと物語化することに成功している。」 高橋克彦 68歳 全 ○ 64 「（引用者注：「革命前夜」「世界の果てのこどもたち」と共に）作中に示される覚悟と勇気と我慢と研鑽に魂を揺さぶられる」「薬丸さんは自分を捨てて父親の苦悩に真正面から取り組んだ。（引用者中略）では書き手としての公平な見方はどうなるのか。それで客観性を保つことができるのか。（引用者中略）これこそが物書きの真の勇気と言うしかない。」

他の候補作 須賀しのぶ 『革命前夜』 中脇初枝 『世界の果てのこどもたち』 本城雅人 『トリダシ』 湊かなえ 『リバース』 柚月裕子 『孤狼の血』

須賀しのぶ43歳×各選考委員　 『革命前夜』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 伊集院静 66歳 全 △ 11 「受賞に推すと言う選考委員もいたが、薬丸氏の作品との比較になると、分が悪かったと言うしかない。選考というものが持つ、独特な流れに乗れなかったのは残念だった。」 大沢在昌 59歳 全 ○ 7 「受賞作（引用者注：「Ａではない君と」）と並んで私は評価した。音楽をこれほど伝えられる文章を私は知らない。天才肌の登場人物の描写もみごとである。」 恩田陸 51歳 全 ■ 8 「「こんなふうにベルリンの壁は崩れました」ということは分かるのだが、そこに主人公が有機的に絡んで来ない。」 京極夏彦 52歳 全 ― 0   高橋克彦 68歳 全 □ 54 「（引用者注：「Ａではない君と」「世界の果てのこどもたち」と共に）作中に示される覚悟と勇気と我慢と研鑽に魂を揺さぶられる（引用者中略）未熟な私にはそれがそれぞれの著者の内面にある真実の叫びによるものと思えた。でなければこれほどに伝わらない。」

他の候補作 薬丸岳 『Ａではない君と』 中脇初枝 『世界の果てのこどもたち』 本城雅人 『トリダシ』 湊かなえ 『リバース』 柚月裕子 『孤狼の血』

中脇初枝42歳×各選考委員　 『世界の果てのこどもたち』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 伊集院静 66歳 全 ■ 8 「私にはそのテーマの大きさが作品全体のリアリティーを稀薄にさせたように思えた。どこが作品のクライマックスか見えなかった。」 大沢在昌 59歳 全 ■ 7 「史実の重さ、戦争の残酷さ、人の世の不条理が読むほどに伝わってくるが、果たしてそれは、この物語（原文傍点）がもつ力なのだろうか。」「また、作者の筆が感情に流されすぎている印象があった。」 恩田陸 51歳 全 ■ 13 「これは私の個人的なポリシーなのだが、他の賞ならともかく、吉川賞候補の作品としては、テーマはあくまで読んだ後で浮かびあがってくるものであって、読んでいる時はフリでもいいからエンターテインメントの顔をしていてほしいのだ。」「読み始めた時からテーマが先行しているところが気になって、積極的に推せなかった。」 京極夏彦 52歳 全 ― 0   高橋克彦 68歳 全 □ 65 「（引用者注：「Ａではない君と」「革命前夜」と共に）作中に示される覚悟と勇気と我慢と研鑽に魂を揺さぶられる」「主人公たちはだれしも幼い少女なので著者はいっさい口をはさむことができない。どこまでも止まない地獄絵図を書き続けるしかない。」「書いている間の著者はどれほど苛立ちと不安を抱えていただろう。たった今の自分の思いをそのまま出せれば、と何度も思ったに違いない。」

他の候補作 薬丸岳 『Ａではない君と』 須賀しのぶ 『革命前夜』 本城雅人 『トリダシ』 湊かなえ 『リバース』 柚月裕子 『孤狼の血』

本城雅人50歳×各選考委員　 『トリダシ』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 伊集院静 66歳 全 □ 11 「私は薬丸氏の次に（引用者中略）推した。」「鳥飼という名物記者より私は女性記者の細谷に魅力を感じた。欲を言えば登場人物がいかにもどこかに居そうな印象があり、もっと自由に筆を振るっていいのではと思った。」 大沢在昌 59歳 全 ■ 13 「不運だった。ここで比べられるには、あまりに小粒な物語群なのだ。主人公の魅力をどう見せるか、もっと考えていただきたい。」 恩田陸 51歳 全 ■ 4 「手堅く、エンターテインメントのお手本のような作品である。」「その先の個性ある展開を見せてほしい。」 京極夏彦 52歳 全 ― 0   高橋克彦 68歳 全 ― 0	他の候補作 薬丸岳 『Ａではない君と』 須賀しのぶ 『革命前夜』 中脇初枝 『世界の果てのこどもたち』 湊かなえ 『リバース』 柚月裕子 『孤狼の血』

湊かなえ43歳×各選考委員　 『リバース』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 伊集院静 66歳 全 ● 3 「多くの読者を持つ力量のある作家なので期待して読んだが、この作品を候補作にしたことに疑問を抱いた。」 大沢在昌 59歳 全 ● 9 「素材の小ささが最後まで気になった。」「主人公たちのもとに届く、「人殺しだ」という告発文にも首を傾げざるをえない。的はずれと思う人間もいるのではないか。」 恩田陸 51歳 全 ● 8 「いちばん気になったのは、描きたい感情を地の文ではなく、登場人物に台詞で説明させてしまっているところだった。主人公が知りたいはずの、広沢という人物があまりくっきりと浮かび上がってこなかったのも残念だった。」 京極夏彦 52歳 全 ― 0   高橋克彦 68歳 全 ― 0	他の候補作 薬丸岳 『Ａではない君と』 須賀しのぶ 『革命前夜』 中脇初枝 『世界の果てのこどもたち』 本城雅人 『トリダシ』 柚月裕子 『孤狼の血』

柚月裕子47歳×各選考委員　 『孤狼の血』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 伊集院静 66歳 全 ● 5 「私にはどこかで見たような構成に思われ、人物の描写が荒削りに感じた。」 大沢在昌 59歳 全 ● 7 「一読、困ってしまった」「登場人物全員、刑事もやくざも小料理屋の女将も、誰ひとり意外な言動がない。すべて役柄でしかないのだ。」「これはまだ、上手にできた「悪徳刑事」という塗り絵でしかない。」 恩田陸 51歳 全 □ 10 「肚の据わった堂々たる描きっぷりがたのもしく、ラストシーンにも興奮した。この作品も推したかったけれど、他の選考委員の意見もごもっともと思ったので、残念ながら受賞しないことに反対はしなかった。」 京極夏彦 52歳 全 ― 0   高橋克彦 68歳 全 ― 0	他の候補作 薬丸岳 『Ａではない君と』 須賀しのぶ 『革命前夜』 中脇初枝 『世界の果てのこどもたち』 本城雅人 『トリダシ』 湊かなえ 『リバース』