いったい何者なのかを深掘りする一冊です。
- 刊行に当たって
- 三上於菟吉先輩のこと……北村 薫
- 講演録
- 三上於菟吉と長谷川時雨―たぐい稀なる夫婦の物語―……尾形明子
- 論考
- 三上於菟吉の人と文学……槍田良枝
- 「百万両秘聞」から小説家三上於菟吉誕生の背景を探る……新井義昭
- 於菟吉以前の事 付 春日部市内の三上於菟吉関係地メモ……実松幸男
- 於菟吉と粕壁中学校……大川明弘
- 粕壁中学時代の文学的萌芽……福島隆男
- 翻訳時代から大衆文学作家へ……盛 厚三
- 悪を撃つ自由―青年三上於菟吉の侠気……荒川佳洋
- 代表作「雪之丞変化」誕生と、その後……潤 幸造
- 直木賞に刻まれた大衆文芸観……川口則弘
- 作品再録
- 随筆 原稿贋札説
- 小説 雪之丞後日
- 三上於菟吉年譜
三上於菟吉って何者でしょうか。うちのサイトにも作家ページがあります。だけどワタクシもよく知りません。
直木三十五と仲がよく、直木賞の選考委員になったけど、健康を害してすぐに離脱してしまった大衆作家。……といった感じで、直木賞史のうえでは、かなり影の薄い印象でした。
三上が生まれた埼玉県春日部市に「三上於菟吉顕彰会」という団体があることを知ったのが3年ぐらいまえのことです。ワタクシは春日部とは無縁の人間ですが、直木賞に関わる人物なら誰であっても興味があります。それで、いそいそ出かけていって会員に加えてもらったところ、令和3年/2021年2月に三上が生誕130周年を迎える、記念に顕彰碑を建てる計画もある、ならばこれを機に記念誌をつくってはどうだろう……という流れになりました。
編集委員となったのが盛厚三さんと荒川佳洋さん。ともに春日部市に住む、筋の通った文学研究者です。しがない直木賞オタクが気軽に話せるような方たちじゃないんですが、そこはウマいこと取り入って、二人の先輩の下でお手伝いするうちに、記念誌の完成に立ち会うことができました。誌名は『三上於菟吉再発見 生誕130周年記念誌』。荒川さんの命名です。
内容の骨格は、三上が生まれる前から亡くなるまでの歩みを通観する、というものです。何より表紙デザイン、論考、講演のテープ起こし&まとめ、再録作の打ち込み、年譜……と、これだけのものを短期間で仕上げた盛さんの獅子奮迅の活躍ぶりには驚きと敬意しかありません。他に北村薫さん、尾形明子さん、槍田良枝さんにもご協力いただけて、三上於菟吉の業績が一望できる充実の一冊になっています。
頒価は1冊1,000円ですけど、基本的には非売の品なので、関係各所と図書館にしか配られません。ただ、多少残った分が顕彰会で保管されているので、もしも興味のある方は、顕彰会までご連絡いただくかワタクシまでご相談ください。