直木賞のすべて

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Last Update●[R6]2024/7/31

塩田武士 Shiota Takeshi

生没年月日	昭和54年/1979年～
経歴	兵庫県尼崎市生まれ。関西学院大学社会学部卒。神戸新聞社記者のとき、平成22年/2010年に「盤上のアルファ」で小説現代長編新人賞を受賞してデビュー。
受賞歴・候補歴	第5回小説現代長編新人賞（平成22年/2010年）「盤上のアルファ」第23回将棋ペンクラブ大賞［文芸部門］（平成23年/2011年）『盤上のアルファ』第7回山田風太郎賞（平成28年/2016年）『罪の声』 \|候補\| 第38回吉川英治文学新人賞（平成28年/2016年度）『罪の声』 \|第3位\| 第14回2017年本屋大賞（平成29年/2017年）『罪の声』 \|第6位\| 第15回2018年本屋大賞（平成30年/2018年）『騙し絵の牙』第40回吉川英治文学新人賞（平成30年/2018年度）『歪んだ波紋』第9回渡辺淳一文学賞（令和5年/2023年度）『存在のすべてを』 \|第3位\| 第21回2024年本屋大賞（令和6年/2024年）『存在のすべてを』
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『罪(つみ)の声(こえ)』（平成28年/2016年8月・講談社刊）

書誌

令和1年/2019年5月・講談社／講談社文庫『罪の声』

吉川英治文学新人賞 第38回候補

選評の概要

この回の全概要　見方・注意点

候補者　塩田武士　37歳
選考委員		評価	行数	評言
伊集院静	67歳	◎	10	「テーマはこれまで何人かの作家が挑んだ事件に敢えて挑んだ点も好感が持てた。私はこの作品を推したが、他の選考委員の賛同を得られなかった。文学賞の選考会には不思議な流れがあり、残念であったが、この作品はすでに十分な評価を受けているので、あらたな作品にむかって精進されることを望んでいる。」
大沢在昌	60歳	■	29	「世評の高い作品で、期待して読んだのだが、違和感が残った。」「借りた設定が克明であるだけに、作者の手柄と“事実”の線引きが難しい。もちろんそれこそが意図だといわれれば、その通りなのだろうが、ならば借りるという手法による負の側面も覚悟しなければならない。」「私が疑問を感じたのは二点、俊也が見つけたカセットテープのことを最初に母親に訊かなかったこと。そして彼の祖父が四十五歳のサラリーマンであったにもかかわらず、内ゲバで殺害されたと疑われるほど過激派集団と親しくなっていたという設定だ。」
恩田陸	52歳	△	15	「いちばん迷った」「なぜか私はこの作品、「ノンフィクションで読みたかったな」と思ってしまったのだった。「あの声の子供たちのその後」を描くのに、小説という手段しかなかったのは分かるのだけれど、「子供たちのその後」の小説部分と、「事実に沿った事件の再構成と真相」の部分が微妙に乖離してしまっている。」
京極夏彦	53歳	△	24	「フィクションとしての巧みさが優れていたが故に、“借り物”としてのノンフィクションとの接合部分に若干の無理が生じている感がある。今回、惜しくも受賞を逃したのは、虚実が融合するのではなく、拮抗してしまったからかもしれない。」
高橋克彦	69歳	―	0
選評出典：『小説現代』平成29年/2017年5月号

『歪(ゆが)んだ波紋(はもん)』（平成30年/2018年8月・講談社刊）

書誌

令和3年/2021年11月・講談社／講談社文庫『歪んだ波紋』

吉川英治文学新人賞 第40回受賞

選評の概要

この回の全概要　見方・注意点

候補者　塩田武士　39歳
選考委員		評価	行数	評言
伊集院静	69歳	○	9	「安定した文章と抒情のある描写力が、今回の候補作中で抜きん出ていた。」「テーマ、題材が相変らずという意見があったが、私には着実に小説の力量を高めている氏の精進が読みとれた。私は氏の人間を描く時の真摯な目に敬意を抱いている。」
大沢在昌	62歳	△	7	「現代的なテーマながら、実に手がたく、ある意味古臭い手法で書かれていて、その愚直ともいえる作者の姿勢に好感をもった。」「一方で作者には「新聞記者」を卒業してもらいたいという願いをもった。記者を主人公にすえる限り、その導入部には既視感がつきまとう。」
恩田陸	54歳	□	13	「前々回の候補作品『罪の声』ではまだ小説になりきれていなかったが、今回はそれぞれの短編の完成度も高く、小説として面白く読んだ。」「問題なのは、「元新聞記者の書いた社会派小説」と言われて予想する小説のイメージから一歩も抜け出していないことだろう。そのせいで、扱っている題材が最先端な割にはやけに古めかしい印象を受けてしまうし、そのイメージ内でまとめようとするあまり、全体的にこぢんまりとしてしまった感は否めない。」「（引用者注：「ハロー・ワールド」との）二作受賞はベストだと思う。」
京極夏彦	55歳	□	15	「モチーフは作者の自家薬籠中の素材ばかりであり、描写や設定にも説得力があり、筆致も安定している。但し、小説の造り方自体はオーソドックスなものであり、決して新しくはない（新しくなければいけないということは全くないのだが）。例えば虚実のバランスなども極めて教科書的であるだろう。」「連作として通読した際に立ち上がる主題は、今の時代・社会をしっかりと見据えた、シビアなものである。」
重松清	55歳	△	9	「オワコンである新聞を舞台に、「君たちは（フェイクニュースとマスゴミの時代に）どう生きるか」という、ある意味では青臭い問いかけを、まっすぐに、みごとなストーリーテリングで投げてくる。」「じつは塩田武士さんのまなざしの先にあるのは、現実にはいない「小説を書いた本田靖春」なのではあるまいか。」
選評出典：『小説現代特別編集2019年5月号　吉川賞特集』

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