直木賞のすべて

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Last Update●[R6]2024/1/27

武田綾乃 Takeda Ayano

生没年月日	平成4年/1992年～
経歴	京都府生まれ、同志社大学文学部美学芸術学科卒。平成24年/2012年、大学在学中に応募した日本ラブストーリー大賞で「今日、きみと息をする」が最終候補作に残り、平成25年/2013年同作でデビュー。
受賞歴・候補歴	\|候補\| 第8回日本ラブストーリー大賞（平成24年/2012年）「今日、きみと息をする」 \|候補\| 第40回吉川英治文学新人賞（平成30年/2018年度）『その日、朱音は空を飛んだ』 \|候補\| 第37回織田作之助賞（令和2年/2020年）『愛されなくても別に』第42回吉川英治文学新人賞（令和2年/2020年度）『愛されなくても別に』
サブサイトリンク	文学賞の世界▼全6件

『その日(ひ)、朱音(あかね)は空(そら)を飛(と)んだ』（平成30年/2018年11月・幻冬舎刊）

書誌

令和3年/2021年4月・幻冬舎／幻冬舎文庫『その日、朱音は空を飛んだ』

吉川英治文学新人賞 第40回候補

選評の概要

この回の全概要　見方・注意点

候補者　武田綾乃　(27歳)
選考委員		評価	行数	評言
伊集院静	69歳	■	12	「私が特に感心したのは、この作家が持つ独自の目、視点であった。弁当箱の中身を描写する一文などは大変なセンスである。ただ私が危惧したのは、これで小説が成立するのか、という点だった。」「この完結では、若い人の自殺の肯定としか受け取られないものがあるように思えた。」
大沢在昌	62歳	●	5	「こういう高校生活は確かにあるのだろうと思いながらも、作者の意図が私には伝わらなかった。『籔の中』を狙ったのでは、とも思ったが、それにしては“真相”にインパクトがない。」
恩田陸	54歳	■	11	「共感できる人物が一人も出てこないけれど、不穏な企みを感じてそれなりに面白く読んだ。」「早々に「これは伏線だな」「後で出てくるな」と読めてしまうので、本来ならばラストにガツンと来るはずの衝撃が弱く、それこそ読後感が「だから何？」という感じになってしまった。」
京極夏彦	55歳	△	17	「ひとつの“事件”に関わる複数の人物を視点に据えた短編の集積として構成されている。」「ラストの一行を衝撃と取るか、リアリティの放棄と取るかは、意見の分れるところだろう。エンターテインメントとしては申し分ない仕上がりなのだが、イントロダクションも含め、手法・構造の徹底が成されていたならば、さらに大きな作品になっていたという可能性を感じる。」
重松清	55歳	■	13	「間違いなく、いまを生きる少女たちの（すべてとは言わないけれども）リアルを捉えている。」「ただし、小説として、いささか無理スジを抱えているのではないか。とりわけ校舎の屋上から「空を飛んだ」朱音が、刹那にこんなことを見て、あんなことまで思ったというのは、さすがに無理がありませんか？」
選評出典：『小説現代特別編集2019年5月号　吉川賞特集』

『愛(あい)されなくても別(べつ)に』（令和2年/2020年8月・講談社刊）

書誌

令和5年/2023年7月・講談社／講談社文庫『愛されなくても別に』

吉川英治文学新人賞 第42回受賞

選評の概要

この回の全概要　見方・注意点

候補者　武田綾乃　(29歳)
選考委員		評価	行数	評言
伊集院静	71歳	△	18	「一行目から作者の才気で読者を摑んでしまうユニークな文体と物語の展開だった。このやり方で作品を進めて行くと、いずれどこかで息切れをしてしまうのが新人であるが、それがないのはランナーで言うと、走行フォームに気負いや無理、無駄がないように仕立て上げられる才能を持ち合わせているからであろう。」
大沢在昌	64歳	△	17	「不健全をつき抜けた爽々しさのようなものがあった。ここまでいけば、文句をつけようがないところまで作者は腹をくくっている。」「「私」と江永の二人は共依存を武器に世間と渡り合う。が、この共依存はいずれ壊れる。そのときの阿鼻叫喚を予感させる義務は作者にないのだろうか。」「いや、ないのだろう。小説はどんなに不健全であってもかまわないのだから。」
恩田陸	56歳	□	16	「前々回候補になった時よりも著しい成長を感じたし、なにより自分がやりたいことが分かっていて、キラキラした表現がそこここに見られて面白く読んだ。」「長編のおはなしとしてはプロットがやや弱いかな、と感じたものの、非常に先が楽しみだと思った。」
京極夏彦	57歳	○	16	「光に相当するレイヤーはほぼ排除されている。通常、こうした手法で紡がれる作品は後味の悪いものになることが多いのだけれど、本作は清々しささえ感じさせる書き振りに仕上がっている。“解決などない”ことを前提として塗り重ねられて行く闇の先に、読者が勝手に光明を幻視してしまうというテクニックは、巧緻なものといえるのではないだろうか。生半な技量でできることではないだろう。」
重松清	57歳	◎	14	「自己肯定感が最低ラインにあり、それでいてまわりを見下す主人公の造型に、たまらなく「いま」を感じた。毒親をめぐる挿話を重ねて「家族辞める」の覚悟と決意を描きつつ、しかしそこに解決は求めていない。むしろ放り出す。」「そのきっぱりとした潔さに作者自身の覚悟と決意を強く感じて、○をつけて選考会に臨んだ」
選評出典：『小説現代』令和3年/2021年5・6月合併号

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