第2回

第1回第3回

昭和55年/1980年度 昭和56年/1981年3月16日決定発表

選考委員　 井上ひさし 46歳 尾崎秀樹 52歳 佐野洋 52歳 野坂昭如 50歳 半村良 47歳 選評総行数　 27 29 28 31 32 評 評 評 評 評 候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 栗本薫　『絃の聖域』 28歳 評 ○ 12 ◎ 19 □ 14 ◎ 8 □ 17 南原幹雄　『闇と影の百年戦争』 42歳 評 □ 11 ◎ 12 ― 0 □ 6 ◎ 15 赤江瀑　『アンダルシア幻花祭』 47歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ● 7 ― 0 赤川次郎　『三毛猫ホームズの怪談』 33歳 評 ― 0 ― 0 ● 8 ― 0 ― 0 泡坂妻夫　『花嫁のさけび』 47歳 評 △ 4 ○ 8 ■ 7 ● 6 ― 0 高杉良　『大逆転！』 42歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ● 4 ― 0 山田正紀　『ツングース特命隊』 31歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ● 4 ― 0           年齢の説明   見方・注意点

井上ひさし46歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

題選評　総行数27　（1行=20字） 候補 評価 行数 評言 栗本薫 28歳 全 ○ 12 「最後まで平板だった。厚く塗れば塗るほどすべてが空回りする。だが、最後の最後に至って、にわかに惹きつけられた。作者の才能が、探偵と真犯人との形而上的対決に、一気に集結する。」「もじりの器用さにおいても決して凡手ではないが、しかし書きたいとおもうことを必死に書いた個所が光を放つ。」 南原幹雄 42歳 全 □ 11 「作者の勉強ぶりには舌をまく。」「そのことには敬意は惜しまないが、小説技術には不満を抱いた。」「ただ、これらは作者の小説への情熱とおのが職業への創意工夫で、ほとんどあらためられるときがくるにちがいない、それもごく近い時期に。」「きっと「化けて」いただきたい。」 赤江瀑 47歳 全 ― 0   赤川次郎 33歳 全 ― 0   泡坂妻夫 47歳 全 △ 4 「極端な人工性に好意をもった。これは大逆転の連続する『レベッカ』だが、惜しくも、前半ではとくに、ヒロインの心理の描写が放擲されすぎた。」 高杉良 42歳 全 ― 0   山田正紀 31歳 全 ― 0

他の選考委員 尾崎秀樹 佐野洋 野坂昭如 半村良

尾崎秀樹52歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

題新人らしい意欲　総行数29　（1行=20字） 候補 評価 行数 評言 栗本薫 28歳 全 ◎ 19 「私は最終的に（引用者中略・注：「花嫁のさけび」「絃の聖域」「闇と影の百年戦争」の）三篇の中から選びたいと考えた。」「栗本薫はその才筆と可能性に期待することになる。」「横溝正史の味を意識的にとり入れたところにひとつのポイントが感じられた。」 南原幹雄 42歳 全 ◎ 12 「私は最終的に（引用者中略・注：「花嫁のさけび」「絃の聖域」「闇と影の百年戦争」の）三篇の中から選びたいと考えた。」「伝奇性にも富んでおり、その新人らしい意欲を評価したいと思った。」 赤江瀑 47歳 全 ― 0   赤川次郎 33歳 全 ― 0   泡坂妻夫 47歳 全 ○ 8 「私は最終的に（引用者中略・注：「花嫁のさけび」「絃の聖域」「闇と影の百年戦争」の）三篇の中から選びたいと考えた。」「泡坂の場合はつくられた魅力とひたむきさを買いたかった」 高杉良 42歳 全 ― 0   山田正紀 31歳 全 ― 0     「吉川英治文学新人賞の選考の基準には、エンターテインメントとしてのおもしろさと、新人らしい意欲をおきたいと考えてきた。」

他の選考委員 井上ひさし 佐野洋 野坂昭如 半村良

佐野洋52歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

題推理小説三篇について　総行数28　（1行=20字） 候補 評価 行数 評言 栗本薫 28歳 全 □ 14 「この賞が推理小説のみを対象にするものであったなら、私は、賞を贈ることに絶対反対という立場をとったであろう。」「将来性という面では、栗本氏に疑問を挟む余地はないし、他の委員の強力な推挙もあったので賛成にまわった。しかし、私は、栗本氏がなんでも器用にこなしてしまうことに不安を持っている。」 南原幹雄 42歳 全 ― 0   赤江瀑 47歳 全 ― 0   赤川次郎 33歳 全 ● 8 「推理小説としてのあらが目立ち過ぎる。そして、それは設定自身に無理があるため、と思われてならない。赤川氏も当然それに気づいておられるだろうが……。」 泡坂妻夫 47歳 全 ■ 7 「作者が一つの難題に挑戦した、という意味でその意欲は評価したい。しかし、読み終って、アンフェアーだという感じは拭い去ることができず、結局は失敗作だったのではないか。」 高杉良 42歳 全 ― 0   山田正紀 31歳 全 ― 0     「候補作七篇中推理小説が三篇あった。（引用者中略）三篇とも強力に推す気にはなれなかった。」

他の選考委員 井上ひさし 尾崎秀樹 野坂昭如 半村良

野坂昭如50歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

題選評　総行数31　（1行=20字） 候補 評価 行数 評言 栗本薫 28歳 全 ◎ 8 「すでにしてケレンが芸になっている。」「邦楽の世界のかもし出す、化性というか業といえばいいか、糸のみちびく妖かしの世界に、作者は、本気でのめりこんでいる、その迫力がこの作品の花、総浚えの楽屋の描写、商売人のしゃべりっぷり、まことに上手。」 南原幹雄 42歳 全 □ 6 「結末がいかにも間に合わせ、せめて一人の興味ある人物を創り出していればと、注文は多いけれども、時代小説払底の折しも、この腰のすえ方を買う。」 赤江瀑 47歳 全 ● 7 「作者は袋小路に入りこんでいる、絢爛豪奢とは似て非なる空疎退化の美文まがい、もってまわったいいまわし、いわくありげなこしらえ、麻雀劇画ではないか。」 赤川次郎 33歳 全 ― 0   泡坂妻夫 47歳 全 ● 6 「いかにトリック重視といっても、いくらかは人間らしいふるまい、会話がなけりゃ、小説にもお話にも無理。」「ぼくは泡坂氏の愛読者だが、この作品はいただけぬ。」 高杉良 42歳 全 ● 4 「ちっとも逆転していない、水の低きにつく如く、事態は元の鞘に戻ったとしか読みとれないのは、こっちの知識不足だろうか、人物が類型に流れている。」 山田正紀 31歳 全 ● 4 「出だし順調、中ほど快調、後半に至って乱調ならいいのだが、落丁といった感じ、のめりこませてくれなきゃＳＦほどつまらぬ小説もない。」

他の選考委員 井上ひさし 尾崎秀樹 佐野洋 半村良

半村良47歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

題選評　総行数32　（1行=20字） 候補 評価 行数 評言 栗本薫 28歳 全 □ 17 「もちろん面白い小説で受賞に異議はないのだが、選考会の席で私ははじめ少し反対した。」「ちょっと姿勢に不自然なところを感じたからだ。なつかしい探偵小説時代の雰囲気を再現させてやろうというサービス精神は判るのだが、栗本さんの才気とそれがからみ合ってうわついた感じが出てしまっている。」 南原幹雄 42歳 全 ◎ 15 「まず材料がいい。」「欲を言えばこの三倍くらいの長さに仕立ててれば、波瀾万丈の時代小説で、しかも経済小説の分野にまたがる新しいひろがりが確実にひらけたことだろう。いずれにせよ、面白い小説だった。」 赤江瀑 47歳 全 ― 0   赤川次郎 33歳 全 ― 0   泡坂妻夫 47歳 全 ― 0   高杉良 42歳 全 ― 0   山田正紀 31歳 全 ― 0	他の選考委員 井上ひさし 尾崎秀樹 佐野洋 野坂昭如

栗本薫28歳×各選考委員　 『絃の聖域』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上ひさし 46歳 全 ○ 12 「最後まで平板だった。厚く塗れば塗るほどすべてが空回りする。だが、最後の最後に至って、にわかに惹きつけられた。作者の才能が、探偵と真犯人との形而上的対決に、一気に集結する。」「もじりの器用さにおいても決して凡手ではないが、しかし書きたいとおもうことを必死に書いた個所が光を放つ。」 尾崎秀樹 52歳 全 ◎ 19 「私は最終的に（引用者中略・注：「花嫁のさけび」「絃の聖域」「闇と影の百年戦争」の）三篇の中から選びたいと考えた。」「栗本薫はその才筆と可能性に期待することになる。」「横溝正史の味を意識的にとり入れたところにひとつのポイントが感じられた。」 佐野洋 52歳 全 □ 14 「この賞が推理小説のみを対象にするものであったなら、私は、賞を贈ることに絶対反対という立場をとったであろう。」「将来性という面では、栗本氏に疑問を挟む余地はないし、他の委員の強力な推挙もあったので賛成にまわった。しかし、私は、栗本氏がなんでも器用にこなしてしまうことに不安を持っている。」 野坂昭如 50歳 全 ◎ 8 「すでにしてケレンが芸になっている。」「邦楽の世界のかもし出す、化性というか業といえばいいか、糸のみちびく妖かしの世界に、作者は、本気でのめりこんでいる、その迫力がこの作品の花、総浚えの楽屋の描写、商売人のしゃべりっぷり、まことに上手。」 半村良 47歳 全 □ 17 「もちろん面白い小説で受賞に異議はないのだが、選考会の席で私ははじめ少し反対した。」「ちょっと姿勢に不自然なところを感じたからだ。なつかしい探偵小説時代の雰囲気を再現させてやろうというサービス精神は判るのだが、栗本さんの才気とそれがからみ合ってうわついた感じが出てしまっている。」

他の候補作 南原幹雄 『闇と影の百年戦争』 赤江瀑 『アンダルシア幻花祭』 赤川次郎 『三毛猫ホームズの怪談』 泡坂妻夫 『花嫁のさけび』 高杉良 『大逆転！』 山田正紀 『ツングース特命隊』

南原幹雄42歳×各選考委員　 『闇と影の百年戦争』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上ひさし 46歳 全 □ 11 「作者の勉強ぶりには舌をまく。」「そのことには敬意は惜しまないが、小説技術には不満を抱いた。」「ただ、これらは作者の小説への情熱とおのが職業への創意工夫で、ほとんどあらためられるときがくるにちがいない、それもごく近い時期に。」「きっと「化けて」いただきたい。」 尾崎秀樹 52歳 全 ◎ 12 「私は最終的に（引用者中略・注：「花嫁のさけび」「絃の聖域」「闇と影の百年戦争」の）三篇の中から選びたいと考えた。」「伝奇性にも富んでおり、その新人らしい意欲を評価したいと思った。」 佐野洋 52歳 全 ― 0   野坂昭如 50歳 全 □ 6 「結末がいかにも間に合わせ、せめて一人の興味ある人物を創り出していればと、注文は多いけれども、時代小説払底の折しも、この腰のすえ方を買う。」 半村良 47歳 全 ◎ 15 「まず材料がいい。」「欲を言えばこの三倍くらいの長さに仕立ててれば、波瀾万丈の時代小説で、しかも経済小説の分野にまたがる新しいひろがりが確実にひらけたことだろう。いずれにせよ、面白い小説だった。」

他の候補作 栗本薫 『絃の聖域』 赤江瀑 『アンダルシア幻花祭』 赤川次郎 『三毛猫ホームズの怪談』 泡坂妻夫 『花嫁のさけび』 高杉良 『大逆転！』 山田正紀 『ツングース特命隊』

赤江瀑47歳×各選考委員　 『アンダルシア幻花祭』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上ひさし 46歳 全 ― 0   尾崎秀樹 52歳 全 ― 0   佐野洋 52歳 全 ― 0   野坂昭如 50歳 全 ● 7 「作者は袋小路に入りこんでいる、絢爛豪奢とは似て非なる空疎退化の美文まがい、もってまわったいいまわし、いわくありげなこしらえ、麻雀劇画ではないか。」 半村良 47歳 全 ― 0	他の候補作 栗本薫 『絃の聖域』 南原幹雄 『闇と影の百年戦争』 赤川次郎 『三毛猫ホームズの怪談』 泡坂妻夫 『花嫁のさけび』 高杉良 『大逆転！』 山田正紀 『ツングース特命隊』

赤川次郎33歳×各選考委員　 『三毛猫ホームズの怪談』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上ひさし 46歳 全 ― 0   尾崎秀樹 52歳 全 ― 0   佐野洋 52歳 全 ● 8 「推理小説としてのあらが目立ち過ぎる。そして、それは設定自身に無理があるため、と思われてならない。赤川氏も当然それに気づいておられるだろうが……。」 野坂昭如 50歳 全 ― 0   半村良 47歳 全 ― 0	他の候補作 栗本薫 『絃の聖域』 南原幹雄 『闇と影の百年戦争』 赤江瀑 『アンダルシア幻花祭』 泡坂妻夫 『花嫁のさけび』 高杉良 『大逆転！』 山田正紀 『ツングース特命隊』

泡坂妻夫47歳×各選考委員　 『花嫁のさけび』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上ひさし 46歳 全 △ 4 「極端な人工性に好意をもった。これは大逆転の連続する『レベッカ』だが、惜しくも、前半ではとくに、ヒロインの心理の描写が放擲されすぎた。」 尾崎秀樹 52歳 全 ○ 8 「私は最終的に（引用者中略・注：「花嫁のさけび」「絃の聖域」「闇と影の百年戦争」の）三篇の中から選びたいと考えた。」「泡坂の場合はつくられた魅力とひたむきさを買いたかった」 佐野洋 52歳 全 ■ 7 「作者が一つの難題に挑戦した、という意味でその意欲は評価したい。しかし、読み終って、アンフェアーだという感じは拭い去ることができず、結局は失敗作だったのではないか。」 野坂昭如 50歳 全 ● 6 「いかにトリック重視といっても、いくらかは人間らしいふるまい、会話がなけりゃ、小説にもお話にも無理。」「ぼくは泡坂氏の愛読者だが、この作品はいただけぬ。」 半村良 47歳 全 ― 0

他の候補作 栗本薫 『絃の聖域』 南原幹雄 『闇と影の百年戦争』 赤江瀑 『アンダルシア幻花祭』 赤川次郎 『三毛猫ホームズの怪談』 高杉良 『大逆転！』 山田正紀 『ツングース特命隊』

高杉良42歳×各選考委員　 『大逆転！』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上ひさし 46歳 全 ― 0   尾崎秀樹 52歳 全 ― 0   佐野洋 52歳 全 ― 0   野坂昭如 50歳 全 ● 4 「ちっとも逆転していない、水の低きにつく如く、事態は元の鞘に戻ったとしか読みとれないのは、こっちの知識不足だろうか、人物が類型に流れている。」 半村良 47歳 全 ― 0	他の候補作 栗本薫 『絃の聖域』 南原幹雄 『闇と影の百年戦争』 赤江瀑 『アンダルシア幻花祭』 赤川次郎 『三毛猫ホームズの怪談』 泡坂妻夫 『花嫁のさけび』 山田正紀 『ツングース特命隊』

山田正紀31歳×各選考委員　 『ツングース特命隊』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 井上ひさし 46歳 全 ― 0   尾崎秀樹 52歳 全 ― 0   佐野洋 52歳 全 ― 0   野坂昭如 50歳 全 ● 4 「出だし順調、中ほど快調、後半に至って乱調ならいいのだが、落丁といった感じ、のめりこませてくれなきゃＳＦほどつまらぬ小説もない。」 半村良 47歳 全 ― 0	他の候補作 栗本薫 『絃の聖域』 南原幹雄 『闇と影の百年戦争』 赤江瀑 『アンダルシア幻花祭』 赤川次郎 『三毛猫ホームズの怪談』 泡坂妻夫 『花嫁のさけび』 高杉良 『大逆転！』