第27回

第26回第28回

平成17年/2005年度 平成18年/2006年3月6日決定発表

選考委員　 浅田次郎 54歳 伊集院静 56歳 大沢在昌 49歳 高橋克彦 58歳 宮部みゆき 45歳 選評総行数　 32 34 74 27 35 評 評 評 評 評 候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 今野敏　『隠蔽捜査』 50歳 評 □ 13 □ 8 ◎ 15 ◎ 20 ◎ 27 荒山徹　『柳生薔薇剣』 (45歳) 評 ● 2 ■ 5 ■ 13 ― 0 ― 0 井上荒野　『誰よりも美しい妻』 45歳 評 ■ 3 ■ 4 ● 8 ― 0 ○ 8 辻村深月　『凍りのくじら』 26歳 評 ● 2 ○ 6 △ 12 △ 7 ― 0 中島京子　『イトウの恋』 41歳 評 ○ 5 ◎ 12 ● 9 ― 0 ― 0 三羽省吾　『厭世フレーバー』 (38歳) 評 ◎ 8 ― 0 ■ 9 ― 0 ― 0           年齢の説明   見方・注意点

浅田次郎54歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

題一本勝ち　総行数32　（1行=20字） 候補 評価 行数 評言 今野敏 50歳 全 □ 13 「完成度の高さもさることながら、官僚システムや法律などの説明をすんなりとストーリーに溶けこませている技術はさすがである。また、「エリートの矜持」というすこぶる厄介な描写を、（引用者中略）二点の思想にことごとく具体化させて、主人公の人格を確立した技も秀逸であった。」 荒山徹 (45歳) 全 ● 2 「無数の対立構造に必然性を見出しえず、」 井上荒野 45歳 全 ■ 3 「文学の早瀬に取り残された、反動的な小説と読んだ。」 辻村深月 26歳 全 ● 2 「短篇の素材を引き延ばしてしまった感があり、」 中島京子 41歳 全 ○ 5 「未完成ながら美しい小説である。近ごろ稀に見る審美眼の持ち主と信じて、これも推した。謙譲と不遜の均衡を損うことなく、他者の持ちえぬ宝物を磨き上げてもらいたい。」 三羽省吾 (38歳) 全 ◎ 8 「私が一番に推した作品」「すばらしくシャープな感覚を秘め、巧まざる才能が随所に溢れ出ており、寛容の精神と徹底的な性善説に拠ったこのコメディーこそ、新人賞にふさわしいと思った。」   「いずれもハイレベルの作品であったことは言を俟たない。」

他の選考委員 伊集院静 大沢在昌 高橋克彦 宮部みゆき

伊集院静56歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

題“新たなる出発を”　総行数34　（1行=20字） 候補 評価 行数 評言 今野敏 50歳 全 □ 8 「候補作の中でもっとも安定感があった。小説として安定があることは作家の筆力と経験がなすものだ。受賞に適う作品として推した。」 荒山徹 (45歳) 全 ■ 5 「対立する勢力、繋がる男女が満遍なく配され手練れの作品だった。ただその分小説の焦点が不明確に思えた。」 井上荒野 45歳 全 ■ 4 「男女の情愛が清冽な文章で描かれていた。私には男も女も今ひとつもの足りなかった。新鮮なものがないのか。」 辻村深月 26歳 全 ○ 6 「（引用者注：中島京子の他に）もう一人推した」「この作品には新しい小説世界を予感させるものがある。ドラえもんに詳しくない私にも物語はよく理解できた。これは辻村さんの才能と新しい力の出現だ。」 中島京子 41歳 全 ◎ 12 「今回、私が推した中島京子さんの『イトウの恋』は一番の才気を感じた。才能がある上に、小説の筋が良い。小説の筋の良さとは作家、作品としての構えの良さである。」「選考会で主要資料に関しての活かし方に疑問の意見が出た。それでもなお力量ありと推したが票が及ばなかった。」 三羽省吾 (38歳) 全 ― 0

他の選考委員 浅田次郎 大沢在昌 高橋克彦 宮部みゆき

大沢在昌49歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

題長年の努力の結実　総行数74　（1行=20字） 候補 評価 行数 評言 今野敏 50歳 全 ◎ 15 「全編に、作者のキャリアを感じさせる安定感があって、読者は安心して身をゆだねられる。」「主人公の変人ぶりがかもすカタルシスに、私は「ノーブレス・オブリージュ」という言葉を思い浮かべていた。」「受賞にふさわしい快作である。」 荒山徹 (45歳) 全 ■ 13 「手だれのチャンバラ小説である。」「どうしても納得できない点がふたつあった。まずは「うね」の心理だ。」「もうひとつは、徳川家、柳生家の確執と内情を書きこむリアリティと妖術師の存在があいいれない点だ。不意に、ルールのちがう物語世界に投げこまれたような違和感を覚えた。」 井上荒野 45歳 全 ● 8 「この作者の企みを、私は今回も読み解くことができなかった。泥々とした人間関係をさらりと書けてしまうのは、資質なのか、それともあえて避けているのか、その見極めがつかないのだ。」 辻村深月 26歳 全 △ 12 「才能のある人だ。」「だが私は推すことができなかった。理由はたったひとつだ。」「現実と向きあうことの大切さを、非現実の存在によって諭されている。これは物語としての土台が根本から崩れてはいないだろうか。」 中島京子 41歳 全 ● 9 「明治時代の手記の部分に比べ、現代部分が乱暴だった。少年マンガの原作はそれほどたやすいものではなく、中学生のファンが原作者の名を知っているというのも無理がある。」 三羽省吾 (38歳) 全 ■ 9 「才気溢れる作品である。スピード感が心地よい。しかし多視点を用いたぶん、崩壊直前の「家族」をつなぎとめているのが何であるのかが見えにくくなった。結果、「ただのいい人たち」の物語を読まされた印象となった。」

他の選考委員 浅田次郎 伊集院静 高橋克彦 宮部みゆき

高橋克彦58歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

題堂々たる作品　総行数27　（1行=20字） 候補 評価 行数 評言 今野敏 50歳 全 ◎ 20 「群を抜いていた。」「読み終えたあと、拍手をしたくなった。見事に主人公の大義が貫かれ、揺るぎがない。痛みと緊張が持続している。今野さんを新人と見做してよいものかという議論もあったが、候補作品に上げられてきた以上、それは選考委員の判断する問題ではない。なんの迷いもなく私は推した。」 荒山徹 (45歳) 全 ― 0   井上荒野 45歳 全 ― 0   辻村深月 26歳 全 △ 7 「惜しかった」「父親の幽霊であるのを読者に悟られまいとして必死なのだが、やはりそれが不自然な場面を無理に作らなければならない羽目となる。そこを上手に乗り越えていれば傑作となっただろう。が、このセンスと文才があればきっと大成できる。」 中島京子 41歳 全 ― 0   三羽省吾 (38歳) 全 ― 0	他の選考委員 浅田次郎 伊集院静 大沢在昌 宮部みゆき

宮部みゆき45歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

題新しい視点　総行数35　（1行=20字） 候補 評価 行数 評言 今野敏 50歳 全 ◎ 27 「多くの美点がありますが、そのなかでも特に二つの点で、私は強く支持しました。」「ひとつは、「国家政治の一部としての警察」という、新鮮な視点から、世間を騒がす連続殺人事件を描いたことです。しかもその際に、（引用者中略）一官僚としての主人公サイドに焦点を絞りました。」「もうひとつは、主人公竜崎のユニークなキャラクターです。」「文句なしの満場一致で決まった受賞作でした。」 荒山徹 (45歳) 全 ― 0   井上荒野 45歳 全 ○ 8 「個人的には、二作受賞を望んでいながら、（引用者中略）押し切れなかったことが口惜しいです。昨年の候補作『だりや荘』のときから、井上荒野さんの作品には瞠目・敬服しておりました。」「他の選考委員諸氏を動かすことのできなかった私の論の脆弱さを情けなく思います。」 辻村深月 26歳 全 ― 0   中島京子 41歳 全 ― 0   三羽省吾 (38歳) 全 ― 0

他の選考委員 浅田次郎 伊集院静 大沢在昌 高橋克彦

今野敏50歳×各選考委員　 『隠蔽捜査』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 浅田次郎 54歳 全 □ 13 「完成度の高さもさることながら、官僚システムや法律などの説明をすんなりとストーリーに溶けこませている技術はさすがである。また、「エリートの矜持」というすこぶる厄介な描写を、（引用者中略）二点の思想にことごとく具体化させて、主人公の人格を確立した技も秀逸であった。」 伊集院静 56歳 全 □ 8 「候補作の中でもっとも安定感があった。小説として安定があることは作家の筆力と経験がなすものだ。受賞に適う作品として推した。」 大沢在昌 49歳 全 ◎ 15 「全編に、作者のキャリアを感じさせる安定感があって、読者は安心して身をゆだねられる。」「主人公の変人ぶりがかもすカタルシスに、私は「ノーブレス・オブリージュ」という言葉を思い浮かべていた。」「受賞にふさわしい快作である。」 高橋克彦 58歳 全 ◎ 20 「群を抜いていた。」「読み終えたあと、拍手をしたくなった。見事に主人公の大義が貫かれ、揺るぎがない。痛みと緊張が持続している。今野さんを新人と見做してよいものかという議論もあったが、候補作品に上げられてきた以上、それは選考委員の判断する問題ではない。なんの迷いもなく私は推した。」 宮部みゆき 45歳 全 ◎ 27 「多くの美点がありますが、そのなかでも特に二つの点で、私は強く支持しました。」「ひとつは、「国家政治の一部としての警察」という、新鮮な視点から、世間を騒がす連続殺人事件を描いたことです。しかもその際に、（引用者中略）一官僚としての主人公サイドに焦点を絞りました。」「もうひとつは、主人公竜崎のユニークなキャラクターです。」「文句なしの満場一致で決まった受賞作でした。」

他の候補作 荒山徹 『柳生薔薇剣』 井上荒野 『誰よりも美しい妻』 辻村深月 『凍りのくじら』 中島京子 『イトウの恋』 三羽省吾 『厭世フレーバー』

荒山徹(45歳)×各選考委員　 『柳生薔薇剣』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 浅田次郎 54歳 全 ● 2 「無数の対立構造に必然性を見出しえず、」 伊集院静 56歳 全 ■ 5 「対立する勢力、繋がる男女が満遍なく配され手練れの作品だった。ただその分小説の焦点が不明確に思えた。」 大沢在昌 49歳 全 ■ 13 「手だれのチャンバラ小説である。」「どうしても納得できない点がふたつあった。まずは「うね」の心理だ。」「もうひとつは、徳川家、柳生家の確執と内情を書きこむリアリティと妖術師の存在があいいれない点だ。不意に、ルールのちがう物語世界に投げこまれたような違和感を覚えた。」 高橋克彦 58歳 全 ― 0   宮部みゆき 45歳 全 ― 0	他の候補作 今野敏 『隠蔽捜査』 井上荒野 『誰よりも美しい妻』 辻村深月 『凍りのくじら』 中島京子 『イトウの恋』 三羽省吾 『厭世フレーバー』

井上荒野45歳×各選考委員　 『誰よりも美しい妻』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 浅田次郎 54歳 全 ■ 3 「文学の早瀬に取り残された、反動的な小説と読んだ。」 伊集院静 56歳 全 ■ 4 「男女の情愛が清冽な文章で描かれていた。私には男も女も今ひとつもの足りなかった。新鮮なものがないのか。」 大沢在昌 49歳 全 ● 8 「この作者の企みを、私は今回も読み解くことができなかった。泥々とした人間関係をさらりと書けてしまうのは、資質なのか、それともあえて避けているのか、その見極めがつかないのだ。」 高橋克彦 58歳 全 ― 0   宮部みゆき 45歳 全 ○ 8 「個人的には、二作受賞を望んでいながら、（引用者中略）押し切れなかったことが口惜しいです。昨年の候補作『だりや荘』のときから、井上荒野さんの作品には瞠目・敬服しておりました。」「他の選考委員諸氏を動かすことのできなかった私の論の脆弱さを情けなく思います。」	他の候補作 今野敏 『隠蔽捜査』 荒山徹 『柳生薔薇剣』 辻村深月 『凍りのくじら』 中島京子 『イトウの恋』 三羽省吾 『厭世フレーバー』

辻村深月26歳×各選考委員　 『凍りのくじら』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 浅田次郎 54歳 全 ● 2 「短篇の素材を引き延ばしてしまった感があり、」 伊集院静 56歳 全 ○ 6 「（引用者注：中島京子の他に）もう一人推した」「この作品には新しい小説世界を予感させるものがある。ドラえもんに詳しくない私にも物語はよく理解できた。これは辻村さんの才能と新しい力の出現だ。」 大沢在昌 49歳 全 △ 12 「才能のある人だ。」「だが私は推すことができなかった。理由はたったひとつだ。」「現実と向きあうことの大切さを、非現実の存在によって諭されている。これは物語としての土台が根本から崩れてはいないだろうか。」 高橋克彦 58歳 全 △ 7 「惜しかった」「父親の幽霊であるのを読者に悟られまいとして必死なのだが、やはりそれが不自然な場面を無理に作らなければならない羽目となる。そこを上手に乗り越えていれば傑作となっただろう。が、このセンスと文才があればきっと大成できる。」 宮部みゆき 45歳 全 ― 0

他の候補作 今野敏 『隠蔽捜査』 荒山徹 『柳生薔薇剣』 井上荒野 『誰よりも美しい妻』 中島京子 『イトウの恋』 三羽省吾 『厭世フレーバー』

中島京子41歳×各選考委員　 『イトウの恋』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 浅田次郎 54歳 全 ○ 5 「未完成ながら美しい小説である。近ごろ稀に見る審美眼の持ち主と信じて、これも推した。謙譲と不遜の均衡を損うことなく、他者の持ちえぬ宝物を磨き上げてもらいたい。」 伊集院静 56歳 全 ◎ 12 「今回、私が推した中島京子さんの『イトウの恋』は一番の才気を感じた。才能がある上に、小説の筋が良い。小説の筋の良さとは作家、作品としての構えの良さである。」「選考会で主要資料に関しての活かし方に疑問の意見が出た。それでもなお力量ありと推したが票が及ばなかった。」 大沢在昌 49歳 全 ● 9 「明治時代の手記の部分に比べ、現代部分が乱暴だった。少年マンガの原作はそれほどたやすいものではなく、中学生のファンが原作者の名を知っているというのも無理がある。」 高橋克彦 58歳 全 ― 0   宮部みゆき 45歳 全 ― 0	他の候補作 今野敏 『隠蔽捜査』 荒山徹 『柳生薔薇剣』 井上荒野 『誰よりも美しい妻』 辻村深月 『凍りのくじら』 三羽省吾 『厭世フレーバー』

三羽省吾(38歳)×各選考委員　 『厭世フレーバー』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 浅田次郎 54歳 全 ◎ 8 「私が一番に推した作品」「すばらしくシャープな感覚を秘め、巧まざる才能が随所に溢れ出ており、寛容の精神と徹底的な性善説に拠ったこのコメディーこそ、新人賞にふさわしいと思った。」 伊集院静 56歳 全 ― 0   大沢在昌 49歳 全 ■ 9 「才気溢れる作品である。スピード感が心地よい。しかし多視点を用いたぶん、崩壊直前の「家族」をつなぎとめているのが何であるのかが見えにくくなった。結果、「ただのいい人たち」の物語を読まされた印象となった。」 高橋克彦 58歳 全 ― 0   宮部みゆき 45歳 全 ― 0	他の候補作 今野敏 『隠蔽捜査』 荒山徹 『柳生薔薇剣』 井上荒野 『誰よりも美しい妻』 辻村深月 『凍りのくじら』 中島京子 『イトウの恋』