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平成17年/2005年度
(平成18年/2006年5月18日決定発表/『小説新潮』平成18年/2006年7月号選評掲載)
選考委員  浅田次郎
男54歳
北村薫
男56歳
小池真理子
女53歳
重松清
男43歳
篠田節子
女50歳
選評総行数  201 191 221 216 221
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
宇月原晴明 『安徳天皇漂海記』
男42歳
40 161 40 51 33
橘玲 『永遠の旅行者』
男47歳
29 5 41 35 34
阿川佐和子 『スープ・オペラ』
女52歳
32 7 38 40 31
福井晴敏 『Op.ローズダスト』
男37歳
46 12 52 43 44
伊坂幸太郎 『終末のフール』
男34歳
26 6 38 48 57
         
年齢の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『小説新潮』平成18年/2006年7月号
1行当たりの文字数:19字


選考委員
浅田次郎男54歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
夏のお買物 総行数201 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
宇月原晴明
男42歳
40 「一読して、作中に溢れる文学的教養が作品を成すための付け焼き刃ではないことがわかった。衒いを感じぬからである。」「だがいかんせん、私にはわかりづらい小説だった。」「かくも耽美的な小説であるからこそ、ファンタジーの域にとどまらぬ普遍の美を、もっとわかりやすく提示してほしいと思った。」
橘玲
男47歳
29 「正直のところ、読み始めてたちまち鼻白んだ。」「何だかガイドブックみたいだなと思いながら上巻のなかばまで。」「これをいわゆる時事教養小説として読めば、実に面白くかつためになるのである。」「文章はことのほか読みやすく、清潔感がある。」「ただし、いかにもサスペンス・ドラマのように手早くまとめ上げたストーリーはいただけない。」
阿川佐和子
女52歳
32 「どこがすぐれているというわけではないのだが、すこぶる着心地がよかった。」「読み進むうちにその淡々たるストーリーが平安な快感に変わった。」「目鼻立ちや性格の具体的説明をせずに、ふとした動作で人物像を鮮かに確定させるという技術には卓越したものがあり、また平文中にスルリとエピソードを織りこむ時制転換などは、熟練の高等技術と言える。」
福井晴敏
男37歳
46 「何の因果か、私はこの作家の手になる小説を、好むと好まざるとにかかわらずすべて読まねばならぬ運命を背負っている。」「なぜこんなに長いのだ。」「この作品は特殊な嗜好の持ち主、もしくは単身赴任者、受刑者、後方部隊の自衛官といった読者にしか、十全に堪能することはできまいと思うのである。」「そのほかの点については、凡俗が書こうとしても書けぬ力作であるのだから、とやかくは論ずるまい。」
伊坂幸太郎
男34歳
26 「読みやすく、わかりやすく、親近感があり、物も考えさせてくれる。」「しかし、多年の甲羅を経た消費者の目から見ると、ひとことで言って「食い足らん」のである。」「各自の人生観や世界観を持つ読者の多くは、本質の空洞を感ずるであろう。」「やはりこの作品は作者の資質に不適合であったと言わざるを得ない。」
  「選考会の席上で、各候補作にすべて△を付した委員がいらしたが、これは見識であると感心した。本来、文学賞は絶対的な作品評価に拠るべきであり、相対的優劣を競うものではないのだから、正しくはその通りであろうと思う。」
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他の選考委員
北村薫
小池真理子
重松清
篠田節子
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選考委員
北村薫男56歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
『安徳天皇漂海記』を推す 総行数191 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
宇月原晴明
男42歳
161 「自分の物差しを当てた時、最も突出した作」「今回は、わたしの前に、この物語が現れた。野球でいうなら、まさに守備範囲に球が飛んできたのだ。捕るのが義務と思った。」「好みの分野の、自分に近い作品が現れた時、人は最もきびしい評者となる。時には激しい憎悪さえ浴びせる。」「そういう思いを抱かされることが毫もなく、作中から《これを推せ》という声が聞こえた。」
橘玲
男47歳
5 「魅力的な部分を幾つも持ってはいたが、最終章で、あまりにも性急に、全てをまとめにかかってしまった。そのため無理が生じたことは否めない。」
阿川佐和子
女52歳
7 「ソープオペラを見事に裏ごしして、香り高い素敵なスープにした。読み手として、わくわくする場面がいくつもあった。」
福井晴敏
男37歳
12 「多くの名詞が登場する。それぞれが飾りではなく厚みを持って、物語を支えている。」「国家の不実に対する復讐、この国の状況という闇を撃つためには、国家の対応そのものを白日のもとに晒すことが必要なのだ。」
伊坂幸太郎
男34歳
6 「極限状況をまさに伊坂氏の個性によって描く。そこに、得難い値打ちがある。特に、前半の作品には、何度も《巧いなあ》と唸った。」
  「今回は、揉めに揉め《せめて、枠が三つあれば》と嘆くようになるか――と思いつつ、選考の席に臨んだ。それだけ、作者の力量に圧倒される作品が並んでいた。」
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他の選考委員
浅田次郎
小池真理子
重松清
篠田節子
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選考委員
小池真理子女53歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
作家の力 総行数221 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
宇月原晴明
男42歳
40 「その描写力は闊達で、並々ならぬ力が感じられ、美文調で綴られる文章も、作品の核となっている幻想性を活かすことに成功している。」「あらゆる色彩が横溢している。言葉に対して、これだけの細心の注意が払われていたことを私は高く評価した。」「しかし、全体として私にはこの作品は読みづらいものだった。」「よく読めば、大仰な表現だけが浮き上がっているだけのような気もした。」
橘玲
男47歳
41 「雑多なテーマをこれでもか、これでもか、と盛り込みすぎていた。」「どうもここのところ、比較的年齢の若い作家の中には、専門的に勉強し、研究したことをすべて、いっしょくたにした小説に盛り込んでしまおうとする傾向がある。」「知識として得たことをどのようにシャッフルし、選別し、作品化するか。作家の力が問われる。」
阿川佐和子
女52歳
38 「好感度の高い作品である。」「だが、私には残念ながら、作者が何を書こうとしたのか、掴みとることができなかった。善人ばかりが登場する、罪のない日常のスケッチ、という印象だけが強く残され、不満を覚えた。」「素直に正直に書く、というだけでは、そこにどれほど高等な技術が伴っていたとしても、小説的厚み、深みは望めない。」「とはいえ、作者には小説的な基礎体力が充分備わっている。」
福井晴敏
男37歳
52 「果たして、これだけの枚数を費やす必要があったのかどうか。」「作者の発信せんとしていた小説的メッセージも、過不足なく伝わってくる。」「だが、そうだとしても、余分なものを潔く削ぎ落としていこうとする、作者の冷徹な眼差しがおろそかになっている。」「すべてのシーン、すべての会話、すべての心理描写をここまで丹念に、緻密に、エンドレスに近い感覚で書き続けることに、私は違和感を覚えた。」
伊坂幸太郎
男34歳
38 「文章にも安定感があり、基礎力は充分なのだが、これまでの伊坂作品に比べ、小粒だという印象が否めなかった。人類滅亡、という特殊な筋立てに寄りかかりすぎるあまり、作り物めいた小細工が多く目につくような気がした。」「人生最大の不条理、前代未聞の悲劇、という設定そのものを作者自身、観客席で楽しんでしまっている。」
  「今回の山本周五郎賞候補作のいずれにも、私は積極的に強く推したいと思える作品を見つけることができなかった。」
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他の選考委員
浅田次郎
北村薫
重松清
篠田節子
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選考委員
重松清男43歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
「残念」だった四作 総行数216 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
宇月原晴明
男42歳
51 「唯一の○をつけて選考会に臨んだ」「本作は衒学趣味に終始するだけの一編ではない。」「眼前で繰り広げられる物語を読者にただただ素直にたどらせる力がここにはある。二人の少年皇帝に対する実朝やマルコの鎮魂の思いが、知的な仕掛けを忘れさせるほどの熱を持って物語を支えているためだろう。」
橘玲
男47歳
35 「相対的な評価では×をつけざるをえなかった本作を、じつを言うと、最も期待して読み始めたのだ。」「読み進めるにつれて、物語の重心はヒロインのまゆをめぐる謎解きとサスペンスに傾いていく。そこが残念でしかたないのだ。」「もっとも、本作に抱いた残念な思いは、「『永遠の旅行者』の物語」はまだ描かれていない、という次作以降への期待にもつながる。」
阿川佐和子
女52歳
40 「物語に身をゆだねる心地よさという点では、候補作中随一だったと思っている。」「もっとも、その愉しさや心地よさは後口がすっきりとしすぎて、本を閉じたあとの、いわば酔い覚めが意外にも早い。」「ルイは「翻弄されながらも観察する語り手」という、物語から一歩引いた役回りを自らに強いてしまった。」
福井晴敏
男37歳
43 「背景も仕掛けもメッセージもすべて物語の中に放り込んだ、紛うかたなき力作である。」「だが、「場景」を「情景」と置き換えて浮かび上がる登場人物それぞれの内面のドラマは、物語のボリュームに比してどうも分が悪いのではないか。」「内面のドラマの主題となっていた〈新しい言葉〉が、結局は〈幻想〉や〈不可知の理想〉でまとめられてしまったことが、僕にはとても残念だった。」
伊坂幸太郎
男34歳
48 「小惑星の衝突という仕掛けを物語の外側に置くことで、静謐な作品世界を獲得した。」「シンプルかつストレートな構造で、氏の美点の一つである叙情性を存分に堪能できた。」「表題作でもある巻頭の一編を読んだとき、過去/未来と現在との巧みな距離の取り方に驚嘆した。だが、残念ながら、その驚嘆は作品が重ねられるにつれて弱まってしまう。」
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他の選考委員
浅田次郎
北村薫
小池真理子
篠田節子
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選考委員
篠田節子女50歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
創造力と想像力 総行数221 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
宇月原晴明
男42歳
33 「極めて知的たくらみに満ちた傑作である。」「個々の要素を繋げ、壮大な物語を構築したイマジネーションの豊かさは見事と言うしかない。」「一見したところ作者の並はずれた文学的素養の上に生まれたコラージュのように見える。しかし「安徳天皇漂海記」は構成、設定、描写等々、すべてにおいて、高度に創造的な作品である。」
橘玲
男47歳
34 「多くの欠点と大きな魅力を合わせ持つ作品だった。多くの欠点を一口に言えば、小説技法の稚拙さである。」「テーマの大きさ、題材、物語の骨子、設定のユニークさは賞讃に値する。」「他の選考委員が全員×をつけても、私はこの作品には○印をつけるつもりでいた。最終章を読むまでは……。」「私は作者に問いたい。本当に、この結末を意図していたのですか、と。大罪を犯した天使ではいけませんか?」
阿川佐和子
女52歳
31 「作者の知性と品の良さを感じた。破綻はどこにもない。」「好感を持つか、物足りないと感じるかは、相性というよりは、読み手の根性の良し悪しによる。残念ながら私はあまり根性の良い方ではなかったようだ。」「登場人物すべてが、好人物であるのはかまわない。しかしそこで起こる事件には、もう少しほろ苦いところがあってもよかった。」
福井晴敏
男37歳
44 「優れた部分があるからこそ、欠点が目立ってしまうという点で極めて不運な力作でもある。」「この長大な物語には常に違和感がつきまとう。アクションの大きさに比して作品世界のスケールが小さい。」「テーマの根幹に関わる部分で理念が空回りしている。」「効率の悪さとリスクを背負って、こうした物語を書き続ける姿勢に、同業者として敬意を表し心からの声援を送りたいと思う。」
伊坂幸太郎
男34歳
57 「起きる事態をシミュレートして、三千枚の大作を書くのは他の作家にまかせるとして、伊坂氏の持ち味は、「にもかかわらず」の人のくった軽やかなムードと、シュールな設定だろう。」「叙情性がくせ者だ。だからこそ多くの読者を獲得したのかもしれないし、本来の持ち味とロジカルな面白みを半減させてしまったのかもしれない。」「本来、アイロニーに満ちた寓話となるところなのだが、「普通の小説」を指向したせいか、ただの「いい話」になっているのがなんとも残念だった。」
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他の選考委員
浅田次郎
北村薫
小池真理子
重松清
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受賞者・作品
宇月原晴明男42歳×各選考委員 
『安徳天皇漂海記』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
浅田次郎
男54歳
40 「一読して、作中に溢れる文学的教養が作品を成すための付け焼き刃ではないことがわかった。衒いを感じぬからである。」「だがいかんせん、私にはわかりづらい小説だった。」「かくも耽美的な小説であるからこそ、ファンタジーの域にとどまらぬ普遍の美を、もっとわかりやすく提示してほしいと思った。」
北村薫
男56歳
161 「自分の物差しを当てた時、最も突出した作」「今回は、わたしの前に、この物語が現れた。野球でいうなら、まさに守備範囲に球が飛んできたのだ。捕るのが義務と思った。」「好みの分野の、自分に近い作品が現れた時、人は最もきびしい評者となる。時には激しい憎悪さえ浴びせる。」「そういう思いを抱かされることが毫もなく、作中から《これを推せ》という声が聞こえた。」
小池真理子
女53歳
40 「その描写力は闊達で、並々ならぬ力が感じられ、美文調で綴られる文章も、作品の核となっている幻想性を活かすことに成功している。」「あらゆる色彩が横溢している。言葉に対して、これだけの細心の注意が払われていたことを私は高く評価した。」「しかし、全体として私にはこの作品は読みづらいものだった。」「よく読めば、大仰な表現だけが浮き上がっているだけのような気もした。」
重松清
男43歳
51 「唯一の○をつけて選考会に臨んだ」「本作は衒学趣味に終始するだけの一編ではない。」「眼前で繰り広げられる物語を読者にただただ素直にたどらせる力がここにはある。二人の少年皇帝に対する実朝やマルコの鎮魂の思いが、知的な仕掛けを忘れさせるほどの熱を持って物語を支えているためだろう。」
篠田節子
女50歳
33 「極めて知的たくらみに満ちた傑作である。」「個々の要素を繋げ、壮大な物語を構築したイマジネーションの豊かさは見事と言うしかない。」「一見したところ作者の並はずれた文学的素養の上に生まれたコラージュのように見える。しかし「安徳天皇漂海記」は構成、設定、描写等々、すべてにおいて、高度に創造的な作品である。」
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他の候補作
橘玲
『永遠の旅行者』
阿川佐和子
『スープ・オペラ』
福井晴敏
『Op.ローズダスト』
伊坂幸太郎
『終末のフール』
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候補者・作品
橘玲男47歳×各選考委員 
『永遠の旅行者』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
浅田次郎
男54歳
29 「正直のところ、読み始めてたちまち鼻白んだ。」「何だかガイドブックみたいだなと思いながら上巻のなかばまで。」「これをいわゆる時事教養小説として読めば、実に面白くかつためになるのである。」「文章はことのほか読みやすく、清潔感がある。」「ただし、いかにもサスペンス・ドラマのように手早くまとめ上げたストーリーはいただけない。」
北村薫
男56歳
5 「魅力的な部分を幾つも持ってはいたが、最終章で、あまりにも性急に、全てをまとめにかかってしまった。そのため無理が生じたことは否めない。」
小池真理子
女53歳
41 「雑多なテーマをこれでもか、これでもか、と盛り込みすぎていた。」「どうもここのところ、比較的年齢の若い作家の中には、専門的に勉強し、研究したことをすべて、いっしょくたにした小説に盛り込んでしまおうとする傾向がある。」「知識として得たことをどのようにシャッフルし、選別し、作品化するか。作家の力が問われる。」
重松清
男43歳
35 「相対的な評価では×をつけざるをえなかった本作を、じつを言うと、最も期待して読み始めたのだ。」「読み進めるにつれて、物語の重心はヒロインのまゆをめぐる謎解きとサスペンスに傾いていく。そこが残念でしかたないのだ。」「もっとも、本作に抱いた残念な思いは、「『永遠の旅行者』の物語」はまだ描かれていない、という次作以降への期待にもつながる。」
篠田節子
女50歳
34 「多くの欠点と大きな魅力を合わせ持つ作品だった。多くの欠点を一口に言えば、小説技法の稚拙さである。」「テーマの大きさ、題材、物語の骨子、設定のユニークさは賞讃に値する。」「他の選考委員が全員×をつけても、私はこの作品には○印をつけるつもりでいた。最終章を読むまでは……。」「私は作者に問いたい。本当に、この結末を意図していたのですか、と。大罪を犯した天使ではいけませんか?」
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他の候補作
宇月原晴明
『安徳天皇漂海記』
阿川佐和子
『スープ・オペラ』
福井晴敏
『Op.ローズダスト』
伊坂幸太郎
『終末のフール』
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候補者・作品
阿川佐和子女52歳×各選考委員 
『スープ・オペラ』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
浅田次郎
男54歳
32 「どこがすぐれているというわけではないのだが、すこぶる着心地がよかった。」「読み進むうちにその淡々たるストーリーが平安な快感に変わった。」「目鼻立ちや性格の具体的説明をせずに、ふとした動作で人物像を鮮かに確定させるという技術には卓越したものがあり、また平文中にスルリとエピソードを織りこむ時制転換などは、熟練の高等技術と言える。」
北村薫
男56歳
7 「ソープオペラを見事に裏ごしして、香り高い素敵なスープにした。読み手として、わくわくする場面がいくつもあった。」
小池真理子
女53歳
38 「好感度の高い作品である。」「だが、私には残念ながら、作者が何を書こうとしたのか、掴みとることができなかった。善人ばかりが登場する、罪のない日常のスケッチ、という印象だけが強く残され、不満を覚えた。」「素直に正直に書く、というだけでは、そこにどれほど高等な技術が伴っていたとしても、小説的厚み、深みは望めない。」「とはいえ、作者には小説的な基礎体力が充分備わっている。」
重松清
男43歳
40 「物語に身をゆだねる心地よさという点では、候補作中随一だったと思っている。」「もっとも、その愉しさや心地よさは後口がすっきりとしすぎて、本を閉じたあとの、いわば酔い覚めが意外にも早い。」「ルイは「翻弄されながらも観察する語り手」という、物語から一歩引いた役回りを自らに強いてしまった。」
篠田節子
女50歳
31 「作者の知性と品の良さを感じた。破綻はどこにもない。」「好感を持つか、物足りないと感じるかは、相性というよりは、読み手の根性の良し悪しによる。残念ながら私はあまり根性の良い方ではなかったようだ。」「登場人物すべてが、好人物であるのはかまわない。しかしそこで起こる事件には、もう少しほろ苦いところがあってもよかった。」
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他の候補作
宇月原晴明
『安徳天皇漂海記』
橘玲
『永遠の旅行者』
福井晴敏
『Op.ローズダスト』
伊坂幸太郎
『終末のフール』
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候補者・作品
福井晴敏男37歳×各選考委員 
『Op.ローズダスト』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
浅田次郎
男54歳
46 「何の因果か、私はこの作家の手になる小説を、好むと好まざるとにかかわらずすべて読まねばならぬ運命を背負っている。」「なぜこんなに長いのだ。」「この作品は特殊な嗜好の持ち主、もしくは単身赴任者、受刑者、後方部隊の自衛官といった読者にしか、十全に堪能することはできまいと思うのである。」「そのほかの点については、凡俗が書こうとしても書けぬ力作であるのだから、とやかくは論ずるまい。」
北村薫
男56歳
12 「多くの名詞が登場する。それぞれが飾りではなく厚みを持って、物語を支えている。」「国家の不実に対する復讐、この国の状況という闇を撃つためには、国家の対応そのものを白日のもとに晒すことが必要なのだ。」
小池真理子
女53歳
52 「果たして、これだけの枚数を費やす必要があったのかどうか。」「作者の発信せんとしていた小説的メッセージも、過不足なく伝わってくる。」「だが、そうだとしても、余分なものを潔く削ぎ落としていこうとする、作者の冷徹な眼差しがおろそかになっている。」「すべてのシーン、すべての会話、すべての心理描写をここまで丹念に、緻密に、エンドレスに近い感覚で書き続けることに、私は違和感を覚えた。」
重松清
男43歳
43 「背景も仕掛けもメッセージもすべて物語の中に放り込んだ、紛うかたなき力作である。」「だが、「場景」を「情景」と置き換えて浮かび上がる登場人物それぞれの内面のドラマは、物語のボリュームに比してどうも分が悪いのではないか。」「内面のドラマの主題となっていた〈新しい言葉〉が、結局は〈幻想〉や〈不可知の理想〉でまとめられてしまったことが、僕にはとても残念だった。」
篠田節子
女50歳
44 「優れた部分があるからこそ、欠点が目立ってしまうという点で極めて不運な力作でもある。」「この長大な物語には常に違和感がつきまとう。アクションの大きさに比して作品世界のスケールが小さい。」「テーマの根幹に関わる部分で理念が空回りしている。」「効率の悪さとリスクを背負って、こうした物語を書き続ける姿勢に、同業者として敬意を表し心からの声援を送りたいと思う。」
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他の候補作
宇月原晴明
『安徳天皇漂海記』
橘玲
『永遠の旅行者』
阿川佐和子
『スープ・オペラ』
伊坂幸太郎
『終末のフール』
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候補者・作品
伊坂幸太郎男34歳×各選考委員 
『終末のフール』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
浅田次郎
男54歳
26 「読みやすく、わかりやすく、親近感があり、物も考えさせてくれる。」「しかし、多年の甲羅を経た消費者の目から見ると、ひとことで言って「食い足らん」のである。」「各自の人生観や世界観を持つ読者の多くは、本質の空洞を感ずるであろう。」「やはりこの作品は作者の資質に不適合であったと言わざるを得ない。」
北村薫
男56歳
6 「極限状況をまさに伊坂氏の個性によって描く。そこに、得難い値打ちがある。特に、前半の作品には、何度も《巧いなあ》と唸った。」
小池真理子
女53歳
38 「文章にも安定感があり、基礎力は充分なのだが、これまでの伊坂作品に比べ、小粒だという印象が否めなかった。人類滅亡、という特殊な筋立てに寄りかかりすぎるあまり、作り物めいた小細工が多く目につくような気がした。」「人生最大の不条理、前代未聞の悲劇、という設定そのものを作者自身、観客席で楽しんでしまっている。」
重松清
男43歳
48 「小惑星の衝突という仕掛けを物語の外側に置くことで、静謐な作品世界を獲得した。」「シンプルかつストレートな構造で、氏の美点の一つである叙情性を存分に堪能できた。」「表題作でもある巻頭の一編を読んだとき、過去/未来と現在との巧みな距離の取り方に驚嘆した。だが、残念ながら、その驚嘆は作品が重ねられるにつれて弱まってしまう。」
篠田節子
女50歳
57 「起きる事態をシミュレートして、三千枚の大作を書くのは他の作家にまかせるとして、伊坂氏の持ち味は、「にもかかわらず」の人のくった軽やかなムードと、シュールな設定だろう。」「叙情性がくせ者だ。だからこそ多くの読者を獲得したのかもしれないし、本来の持ち味とロジカルな面白みを半減させてしまったのかもしれない。」「本来、アイロニーに満ちた寓話となるところなのだが、「普通の小説」を指向したせいか、ただの「いい話」になっているのがなんとも残念だった。」
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他の候補作
宇月原晴明
『安徳天皇漂海記』
橘玲
『永遠の旅行者』
阿川佐和子
『スープ・オペラ』
福井晴敏
『Op.ローズダスト』
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