直木賞 第1回から第149回までの歴史
内容
直木賞はほんとうに知られているか
――まえがきにかえて
――まえがきにかえて
第一章 純文芸との因縁
一九三五年~一九四四年
一九三五年~一九四四年
第1回(昭和10年/1935年上期)
~第20回(昭和19年/1944年下期)
~第20回(昭和19年/1944年下期)
第二章 通俗性への反発
一九四五年~一九五八年
一九四五年~一九五八年
第21回(戦後・昭和24年/1949年上期)
~第39回(昭和33年/1958年上期)
~第39回(昭和33年/1958年上期)
第三章 同人誌への期待
一九五八年~一九六五年
一九五八年~一九六五年
第40回(昭和33年/1958年下期)
~第54回(昭和40年/1965年下期)
~第54回(昭和40年/1965年下期)
第四章 中間小説の繁栄
一九六六年~一九七七年
一九六六年~一九七七年
第55回(昭和41年/1966年上期)
~第78回(昭和52年/1977年下期)
~第78回(昭和52年/1977年下期)
第五章 マスコミの狂乱
一九七八年~一九八八年
一九七八年~一九八八年
第79回(昭和53年/1978年上期)
~第100回(昭和63年/1988年下期)
~第100回(昭和63年/1988年下期)
第六章 ミステリーの隆盛
一九八九年~一九九九年
一九八九年~一九九九年
第101回(平成1年/1989年上期)
~第121回(平成11年/1999年上期)
~第121回(平成11年/1999年上期)
第七章 出版不況の風圧
一九九九年~二〇一三年
一九九九年~二〇一三年
第122回(平成11年/1999年下期)
~第149回(平成25年/2013年上期)
~第149回(平成25年/2013年上期)
『芥川賞物語』を出す、などという、直木賞専門サイトの管理人らしからぬ愚行をやらかして、まもなく1年……。結局この世は芥川賞に関する本ばかりで(ってことはないか……)、なぜ直木賞を中心的に取り上げた本が出ないのだ!(←これはほんとう) と、哀しみをこらえつつ悄然と生きてまいりましたが、ようやくいま一冊、当サイトから直木賞モノの本が誕生する運びとなりました。
基本フォーマットは、前著『芥川賞物語』とだいたい同じ。約80年前、第1回(昭和10年/1935年上期)の創設ごろから筆を起こし、1回ずつの選考経緯を追いながら、受賞者、候補者、選考委員、そして周囲にいる関係者、なーんにも関係ない人たち、などなどの動向を積み重ねていき、直木賞そのものの、何だか可哀想でかわいい姿を書いたものになります。
ええ、フォーマットは同じなんですけど、もちろん、直木賞と芥川賞は全然ちがいます。なにしろあっちは(純)文壇の人たちにさんざん愛され、弄ばれてきた歴史があります。対してこちらは、いっつもオマケ扱い。芥川賞史を手がけたものは、『芥川賞物語』より以前にもいくつかありましたが、ご存じのとおり、直木賞は、こんな基本的な通史ですら、これまでまったくと言っていいほど書かれたことがありません。いかにも多くの人から注目されているようでいて、ほとんど真剣に語られてこなかった、じつに哀しい存在なのです(……涙)。
……つうか、「全然ちがう」のは、著者本人の思い入れの深さだ、って説もあります。そのせいで、ちょっといろいろ書きすぎまして、前著(285ページ)に比べて約200ページ増の491ページ、お値段もそれなりに上がって今度は2,400円+税になっちゃいました。
ただ、前著のときもそうだったんですが、「歴史をきっちりたどることが最も重要だ」という信念が私にはあります。「あったことを淡々と書いているだけ」などと言われて内心ムッとしながら、思いつきや好悪の感情、背景を軽んじた刺激的な批判のようなものは(それが文学賞の魅力と知りつつも)今回も脇におきました。結局は直木賞も芥川賞も同じさ、などとシレッと言いたがる浅い文学賞観しか持ち合わせていない人には、たぶん、面白くない内容だと思います。いまの直木賞のことだけが重要で、昔のハナシなんて知ったって意味がない、と悟っている方にとっても、正直、退屈な本かもしれません。
まあまあ、そこはせっかく「直木賞」って名前だけはご存じなのですから、自分で買わずとも図書館にでもリクエストしてもらって、最近の回だけでもパラ見してもらえるのなら、正直なところ嬉しいです。あと、ついでに「まえがき」とか「あとがき」も読んで、げっ、こんなキモい奴がいるのか、世の中広いもんだな、とでも思ってもらえればと……。
基本フォーマットは、前著『芥川賞物語』とだいたい同じ。約80年前、第1回(昭和10年/1935年上期)の創設ごろから筆を起こし、1回ずつの選考経緯を追いながら、受賞者、候補者、選考委員、そして周囲にいる関係者、なーんにも関係ない人たち、などなどの動向を積み重ねていき、直木賞そのものの、何だか可哀想でかわいい姿を書いたものになります。
ええ、フォーマットは同じなんですけど、もちろん、直木賞と芥川賞は全然ちがいます。なにしろあっちは(純)文壇の人たちにさんざん愛され、弄ばれてきた歴史があります。対してこちらは、いっつもオマケ扱い。芥川賞史を手がけたものは、『芥川賞物語』より以前にもいくつかありましたが、ご存じのとおり、直木賞は、こんな基本的な通史ですら、これまでまったくと言っていいほど書かれたことがありません。いかにも多くの人から注目されているようでいて、ほとんど真剣に語られてこなかった、じつに哀しい存在なのです(……涙)。
……つうか、「全然ちがう」のは、著者本人の思い入れの深さだ、って説もあります。そのせいで、ちょっといろいろ書きすぎまして、前著(285ページ)に比べて約200ページ増の491ページ、お値段もそれなりに上がって今度は2,400円+税になっちゃいました。
ただ、前著のときもそうだったんですが、「歴史をきっちりたどることが最も重要だ」という信念が私にはあります。「あったことを淡々と書いているだけ」などと言われて内心ムッとしながら、思いつきや好悪の感情、背景を軽んじた刺激的な批判のようなものは(それが文学賞の魅力と知りつつも)今回も脇におきました。結局は直木賞も芥川賞も同じさ、などとシレッと言いたがる浅い文学賞観しか持ち合わせていない人には、たぶん、面白くない内容だと思います。いまの直木賞のことだけが重要で、昔のハナシなんて知ったって意味がない、と悟っている方にとっても、正直、退屈な本かもしれません。
まあまあ、そこはせっかく「直木賞」って名前だけはご存じなのですから、自分で買わずとも図書館にでもリクエストしてもらって、最近の回だけでもパラ見してもらえるのなら、正直なところ嬉しいです。あと、ついでに「まえがき」とか「あとがき」も読んで、げっ、こんなキモい奴がいるのか、世の中広いもんだな、とでも思ってもらえればと……。
[H25]2013/12/20
献本でお送りした方々から「目次の中見出しを見るだけでも、この本の性格がよくわかる」といった感想をいただいたので、それもそうだと思い、追記として各章の中見出しも紹介しておきます。
第一章 純文芸との因縁
一九三五年~一九四四年
一九三五年~一九四四年
- 菊池寛の号令で、対象もよくわからないままに走り出す。
- 適当な候補者が見つからず、〈純文芸〉の畑に手を広げる。
- 選考委員の出席率があまりに低くて、小島政二郎、怒る。
- 芥川賞委員を巻き込んでの活性化を模索。
- 戦争の影を落とした作品を採るか、あくまで文芸路線を堅持するか。
- 辞退した山本周五郎と、戦後に創作の筆を折った受賞者たち。
第二章 通俗性への反発
一九四五年~一九五八年
一九四五年~一九五八年
- 文藝春秋社から離れて、新たな一歩を歩み出す。
- 気乗りしない純文芸作家と、「直木賞の圧巻」と言われた大衆作家。
- 実績重視に飽き足らなくなり、新風を求める声が沸き起こる。
- 直木賞は文学であれ、という茨の道。
- 〈石原慎太郎フィーバー〉のおかげで、直木賞にもマスコミの目が向けられる。
- 才女の時代を素通りして、選考会、混迷深まる。
第三章 同人誌への期待
一九五八年~一九六五年
一九五八年~一九六五年
- 経済成長によって、推理小説・時代小説、その他商業小説にぎわう。
- 読者受けと文学賞を受ける資格について、言及される。
- 大衆文芸らしくない受賞作、続々と生まれる。
- 梶山季之、瀬戸内晴美、小松左京……職業作家を次々と落とす。
- 新風を求めるあまりに、職業作家たちの反感を増幅させる。
第四章 中間小説の繁栄
一九六六年~一九七七年
一九六六年~一九七七年
- 中間小説の雄、五木寛之の華やかなる登場。
- 新人向けでも、既成作家向けでも、どちらでもいい曖昧さ。
- 選考委員たちの直木賞観、なかなか噛み合わず。
- 中間小説誌の翳りと、ノベルズの繁栄。
- 半村良のSFでの落選と、非SFでの受賞。
- 現実性の小説を採るか、空想性の小説を採るか。
- 直木賞界隈に爆弾を落とした問題作中の問題作『大いなる助走』。
第五章 マスコミの狂乱
一九七八年~一九八八年
一九七八年~一九八八年
- 一度の候補で見極められず、あげ損ねばかりを繰り返す。
- 有名人・青島幸男の受賞作が、百万部を超える。
- あまりの実績重視の選考についていけず、城山三郎、辞表を提出する。
- 冒険小説にも好意的な吉川英治文学新人賞の出現。
- 作品よりも断然に人物に注目が集まる受賞光景。
- バランスをとる、と言いながらの二作授賞が頻発。
第六章 ミステリーの隆盛
一九八九年~一九九九年
一九八九年~一九九九年
- 山本周五郎賞が創設され、直木賞より信頼できると言われる。
- 四十代、五十代の男性作家たちへの授賞がつづく。
- ミステリーと時代小説、二大人気ジャンルに立ちはだかる壁が、わずかに崩れる。
- 候補作の並びが「このミステリーがすごい!」風だと言われる。
- 珍しく、長く売れる受賞作『鉄道員』を選び出す。
- 直木賞から落とされつづける人気作家、のバトンタッチ。
第七章 出版不況の風圧
一九九九年~二〇一三年
一九九九年~二〇一三年
- 売れそうもない作品を、放っておけない性格。
- 主催者の対応に権威の奢りを感じ、横山秀夫、決別を宣言する。
- 本を売ることを前面に打ち出した本屋大賞の出現。
- 売れ筋商品をバッタバッタと落としつづける。
- 軽快さよりも、力感、重量感が好んで評価される。
- 文芸びいきの直木賞の空気を、『下町ロケット』が蹴り飛ばす。
- そこそこ売れる、という直木賞の標準的な姿。