直木賞のすべて

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Last Update●[R6]2024/10/04

早見和真 Hayami Kazumasa

生没年月日	昭和52年/1977年～
経歴	神奈川県生まれ。大学在学中よりライターとして働き、平成20年/2008年に作家デビュー。
受賞歴・候補歴	第68回日本推理作家協会賞［長編及び連作短編集部門］（平成27年/2015年）『イノセント・デイズ』 \|候補\| 第28回山本周五郎賞（平成26年/2014年度）『イノセント・デイズ』ＪＲＡ賞馬事文化賞（令和1年/2019年度）『ザ・ロイヤルファミリー』 \|第9位\| 第17回2020年本屋大賞（令和2年/2020年）『店長がバカすぎて』第33回山本周五郎賞（令和1年/2019年度）『ザ・ロイヤルファミリー』 \|候補\| 第13回山田風太郎賞（令和4年/2022年）『八月の母』 \|候補\| 第15回山田風太郎賞（令和6年/2024年）『アルプス席の母』
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『イノセント・デイズ』（平成26年/2014年8月・新潮社刊）

書誌

初出『小説新潮』平成25年/2013年4月号～平成26年/2014年4月号

平成29年/2017年3月・新潮社／新潮文庫『イノセント・デイズ』

山本周五郎賞 第28回候補

選評の概要

この回の全概要　見方・注意点

候補者　早見和真　37歳
選考委員		評価	行数	評言
石田衣良	55歳	△	43	「無実の女性が死刑になるのが最大の衝撃だから、そこに向かって都合のいい悲劇を積みあげていく構造だ。」「筆力は十分だしすごく力がこもった勝負作だよ。読者の心を掴む力はあるんじゃないかな。」「実はぼくも△をつけて選考会に臨んだ。でも中絶に関する意見の古さ、クラスのいじめと性虐待の描きかたのアンバランスさはさすがに気になったかな。」
角田光代	48歳	■	30	「序盤から読み手を小説世界に引きずり込む力を持っている。（引用者中略）けれども読み進むにつれて現実味が薄れていくように感じた。」「そうしてやっぱりラストに納得がいかないのである。いや、この小説はこの小説で完結しているので、ラストに異を唱えるのは間違っているとわかるのだが、死を望み、このようにすんなりと受け入れるほどの強いものが、幸乃にあるようには私には思えなかった。」
佐々木譲	65歳	●	64	「思い切り好意的に解釈すれば、テーマは薄幸の女性に降りかかった不条理そのものであり、作者は主人公の深すぎる悲惨を描きたかったということなのかもしれない。しかし、だとしたら、作品のトーンの軽薄さと、そのテーマに対する作者の考察の浅さが気になる。」「臆測だが、たぶん作者は現実の刑事事件裁判を知らない。とくに関心もなく、資質にも合わない無理な題材を（モデルになった事件を読者はすぐに想起できるが）選んでしまったのではないか。本作が最初に議論の対象からはずれたのは当然だった。」
白石一文	56歳	■	13	「重い球を投げる投手のような筆力の持ち主だ。今作はテーマもまた重いものだっただけに、その筆が逆に活かしきれなかったような印象がある。」「もっと楽しんで小説を書いて欲しいと思いながら読んだ。この人の場合、楽しんで楽しんで、楽しみ切れないほどに楽しんで一作を書き上げたとき、自分でもびっくりするようなものが生まれる気がする。」
唯川恵	60歳	■	52	「最初の違和感は、幸乃がストーカーになった時だった。幸乃がどうしてそこまで男に執着するのか、理由はあったが、私は納得できなかった。」「幸乃と関わった周りの人間が、彼女の人生を浮かび上がらせてゆく、という手法は、新鮮味はなくとも、説得力があった。だからこそ逆に、幸乃自身に語らせる必要はなかったようにも感じた。」
選評出典：『小説新潮』平成27年/2015年7月号

『ザ・ロイヤルファミリー』（令和1年/2019年10月・新潮社刊）

書誌

令和4年/2022年12月・新潮社／新潮文庫『ザ・ロイヤルファミリー』

山本周五郎賞 第33回受賞

選評の概要

この回の全概要　見方・注意点

候補者　早見和真　43歳
選考委員		評価	行数	評言
伊坂幸太郎	49歳	○	45	「エンターテインメントとしての新しさはあまりなく、むしろ昔の冒険小説を読んだ時と変わらない読み応えではあるのですが、にもかかわらず、古臭さを感じさせない魅力があり、圧倒されました。」「読者が嫌悪感を抱くような悪人がいないばかりか、出てくる人間の大半が心地良い人たちで、しかも勧善懲悪的なエンジンをほとんど使うことなく、最後まで興味を引き付け、はらはらさせるというのは、かなり難しいことをやっていると感じました。」
江國香織	56歳	◎	42	「丁寧な取材の上に成り立った、まっすぐな小説。競馬をめぐるディテイルに凝った、力作だった。」「馬たちの魅力については、未読の人とは語り合えない。そして、そこにこそこの小説のよさがあるのだ。読まなければ出会えないものに出会えるヨロコビ。」「地味で地道な小説である。イマドキな要素が全然ない。そこに私は惹かれた。ニーズがどうあれ迎合せずに、書きたいものを黙々と書いているのは恰好いいと思う。」
荻原浩	64歳	□	41	「熱い小説だ。レースの描写は４D映像の迫力で、馬券みたいにページの端を握ってしまう。」「小説のエンディング、物語の閉じ方については、選考会でも俎上にのり、その後の記者会見でも質問がとんだぐらいだから賛否があるのだろうが、僕はアリだと思う。」「ただし、馬たちの躍動に比べると、人間があまり生き生きしていないように感じた。」「一推しには至らず、半馬身差ぐらいで二位の評価でした。満場一致を「ほぼ満場一致」にしてしまったのは、僕のせいです。すみません。」
今野敏	64歳	◎	41	「とにかくすばらしい小説。競馬にまったく興味がなく、知識がない私でも夢中になってしまう。」「悪人がまったく出てこない。普通なら小説にならない。だが、馬に焦点を当てることで、人々のドラマを作り出し、感動的な作品を作り上げた。この手腕には恐れ入った。」「二度読んだのだが、二度目のほうが感動が大きかったのは、この作品だけだった。レースの結果を知っていながら、（引用者中略）成績表によるラストは、二度目も大いに感動したのだ。」
三浦しをん	43歳	◎	48	「推した。競馬界の仕組みや内幕を知ることができて楽しいし、馬とレースに懸ける人々の思いが伝わってきて胸が熱くなった。」「なにかを「継承」するとはどういうことなのか、血がつながっていれば、あるいは寝食をともにすれば、「家族」になれるのかについて、深く考えさせられた。登場するひとと馬が全員生き生きとした魅力と個性にあふれ、家族（血族）の呪縛と自分の意志や能力との狭間でもがき、だれかの思いを胸にひた走っている。なんと尊くうつくしい姿だろう。」
選評出典：『小説新潮』令和2年/2020年11月号

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