第39回

第38回第40回

平成29年/2017年度 平成30年/2018年3月1日決定発表

選考委員　 伊集院静 68歳 大沢在昌 61歳 恩田陸 53歳 京極夏彦 54歳 重松清 54歳 選評総行数　 57 68 60 113 85 評 評 評 評 評 候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 佐藤究　『Ank: a mirroring ape』 40歳 評 ○ 43 □ 18 ○ 11 △ 26 ○ 18 伊吹有喜　『彼方の友へ』 49歳 評 ― 0 △ 8 ■ 14 ■ 14 ■ 14 小川哲　『ゲームの王国』 31歳 評 △ 7 ■ 17 △ 17 ○ 25 ○ 18 呉勝浩　『白い衝動』 36歳 評 △ 8 ◎ 10 △ 10 ■ 21 △ 15 澤田瞳子　『火定』 40歳 評 ― 0 ■ 11 ■ 8 ■ 17 ■ 10           年齢の説明   見方・注意点

伊集院静68歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

題テーマと文章　総行数57　（1行=19字） 候補 評価 行数 評言 佐藤究 40歳 全 ○ 43 「佐藤氏の文章力は、その簡潔さゆえの才能とも言えよう。」「私は本作の評価のひとつとして、小説のテーマが常に感じられた点に感心した。人類とは、私たちはいったい何者であるのかを一頭のチンパンジー、アンクを通して見つめ直したからである。面白ければ、それでいいというだけなら小説、文学とは言えない。テーマは文章に宿り、文章はテーマを語る。」 伊吹有喜 49歳 全 ― 0   小川哲 31歳 全 △ 7 「（引用者注：「白い衝動」と共に）惜しい状況で受賞を逃した。」「選考会で白熱した話しになり、私には読むことができなかった作品の本質が見え、各選考委員の眼に、学ぶことが多々あった。」 呉勝浩 36歳 全 △ 8 「（引用者注：「ゲームの王国」と共に）惜しい状況で受賞を逃した。」「小説として十分な出来栄えで、文学賞の選考会というものが、時として奇妙な流れや、他作品との並びの加減で、風に乗れないことがあり、それに関わった委員として容赦を願いたい。」 澤田瞳子 40歳 全 ― 0     「今回は全作レベルが高かった。」

他の選考委員 大沢在昌 恩田陸 京極夏彦 重松清

大沢在昌61歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

題伯仲の候補作　総行数68　（1行=19字） 候補 評価 行数 評言 佐藤究 40歳 全 □ 18 「私にとっては未完の大作に思える。ノンフィクション的な手法と無駄のない文章に、前半は一気に引き込まれるが、いざ何が起こったのかが明かされると、物語は勢いを失う。」「狂わない人間はもっといたであろうし、「警報」と人類の戦いを描いた第二部を読ませてもらいたいと思った。」「が、これが吉川英治文学新人賞にふさわしくないかといえば、決してそうではない。私も含め、授賞に反対する選考委員はひとりもいなかった。」 伊吹有喜 49歳 全 △ 8 「前半はまるで朝の連続ドラマのようなだと感じたが、明らかにそれを狙ったのだろう。物語は予定調和的に収束していくが、ここまで気持よく読ませてもらえるなら文句はない。」 小川哲 31歳 全 ■ 17 「上巻の、ポル・ポト時代の話が長すぎる。」「カードゲーム「人生」や「チャンドゥク」の発想はおもしろく、カンボジアではなく架空の国を舞台にすれば、もっと著者は遊べたのではないか。大虐殺があったとはいえ、登場人物が、まるで千人ぐらいしか人口のない村のような濃密さで結びついていることにも違和感をもった。」 呉勝浩 36歳 全 ◎ 10 「人物の配置がよく考えられており、端役に至るまで、それぞれのエゴイズムを描き分けたという点で、私は高く評価した。主人公の造形には賛否両論あるだろうが、彼女を含め、登場人物を投げださない作者の姿勢には心を打たれた。」 澤田瞳子 40歳 全 ■ 11 「過剰な説明が、本来ダイナミックである筈の、病と人間、死と生の対峙といったテーマをおおい隠してしまっている。感動的な物語を書こうという作者の力こぶが、むしろ感動を遠ざけている印象がある。」   「優れた候補作がそろっていた。すでに他の文学賞を受賞した作品もあったが、それが選考に影響を及ぼすということはなかった。」

他の選考委員 伊集院静 恩田陸 京極夏彦 重松清

恩田陸53歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

総行数60　（1行=19字） 候補 評価 行数 評言 佐藤究 40歳 全 ○ 11 「肝心の暴動シーンがやや退屈なのではあるが、そこに至るまでのワクワク感が素晴らしい。この著者ならではの小説の色気がもう確立されていて、これからも「何かやってくれそう」と思わせてくれるところを評価した。」 伊吹有喜 49歳 全 ■ 14 「とても爽やかで心地のよい作品である。」「なのに、なぜか後に何も残らない。小説を読んだという手応えがない。」「ないものねだりなのかもしれないけれど、もっと訴えてくる、作者の顔が見えるようなものが欲しい。」 小川哲 31歳 全 △ 17 「上巻をたいへん面白く、興奮しつつ読んだ。おお、これはピカレスク・ロマンになるのだなとわくわくしつつ下巻に行ったら、いちばん読みたかったところがあっさり飛ばされており、しかも後半かなり書き急いでいる感があって残念。」 呉勝浩 36歳 全 △ 10 「この難しいテーマにきちんと正面から向き合い、人間のグレーゾーンを描いているところに感心した。」「ただ、この作品も『彼方の友へ』と同じく、作者の顔、息遣いがあまり感じられない。個性という言葉を使うのは好きではないが、この人ならではという個性がまだ見えていないように感じたので、強くは推さなかった。」 澤田瞳子 40歳 全 ■ 8 「たいへんパワフルな小説であるが、とにかく説明しすぎる。」「とても力のある作者だと思うが、読者の読むリズムをもう少し考えてほしい。タイトルも今ひとつ腑に落ちなかった。」

他の選考委員 伊集院静 大沢在昌 京極夏彦 重松清

京極夏彦54歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

総行数113　（1行=19字） 候補 評価 行数 評言 佐藤究 40歳 全 △ 26 「時系列を分断しシーンを並べ替えることで物語を編集するというスタイルは、新しいものでこそないのだが、テクニカルなセンスが強く要求される作業ではある。しかし作者はそれを難なくこなしている。惜しむらくは、ＡＩから類人猿研究、そしてミラーリングとその意味の解明へと続く知的興奮の積み重ねが、クライマックスを前に収束してしまうということだろうか。」 伊吹有喜 49歳 全 ■ 14 「登場人物の祖型となる人物についての知識を持った読者には、やや踏み込みが足りないように読めてしまう。伏線らしきエピソードの回収も一部放棄されている。もちろん、そこは「捨てられた」部分なのだと思う。少女小説には必要のないものだからである。しかし、ならばこそ各部冒頭などに配された現代パートの扱いには違和感を覚えた。」 小川哲 31歳 全 ○ 25 「個人的には高く評価している。」「上下巻にする必要はないだとか、下巻は要らないという意見は的外れだろう。これは上下巻に分けることによって初めて成立する試みだろうし、この形で描かれなければならない小説でもあったはずである。」「作中の奇想を現実のアナロジーと取るなら、記憶と小説を掏り替えるという企みは小説自体を外部からＳＦたらしめている。」 呉勝浩 36歳 全 ■ 21 「極めて今日的かつデリケートなテーマに正面から向き合った作品ではあるし、社会批判となる部分も含めて破綻なく纏められた良作ではあるだろう。但しそうした在り方と、鏤められたミステリ的な企みが無理なく添い遂げているかというと、やや疑問が残る。」「ミステリとして読み進めた場合、反社会的人格の登場人物やその内面描写が単なるガジェットとして「使い捨て」られているようにも読めてしまう。」 澤田瞳子 40歳 全 ■ 17 「時代考証上の齟齬などを指摘する向きもあるようだが、そうした瑕瑾は殆どない。」「残念なのは、正確な情報を物語化するために用意されたプロットが物語そのものに貢献していないという点ではなかろうか。」   「小説は何を書いてもいいものであるが、文で記される以上、何もかも書けるものでもない。当然のように、同じ事象を扱っても作家に依って、あるいは作品に依って拾うところと捨てるところは違ってくるだろう。何を選ぶかも重要だが、どこを捨てるかも作品の性質を左右することになる。」

他の選考委員 伊集院静 大沢在昌 恩田陸 重松清

重松清54歳×各候補作

年齢の説明 見方・注意点

総行数85　（1行=19字） 候補 評価 行数 評言 佐藤究 40歳 全 ○ 18 「圧倒された。いや、スピード感を称揚するには、心地よく翻弄されたと言い換えたほうがいいだろうか。」「そのみごとな筆力に、霊長類からゲノム、鏡像認識といった最新の研究の果実が加わって、興奮とともに読書の時間が過ぎていった。」 伊吹有喜 49歳 全 ■ 14 「作品の光の明るさは影の暗さで担保されてほしいと願うタイプの評者にとっては、読後に若干の物足りなさが残ってしまった。」「また、いくつかの謎が解かれずじまいなのは、もったいないのでは。」 小川哲 31歳 全 ○ 18 「候補作中で最も作家の勇気を感じた」「ＳＦにもゲームにも疎い評者は、おそらく本作の良い読み手にはなりえないはずだが、それでもなお、「正しいゲーム」をめぐる主題、記憶と人生の主題には強く惹きつけられた。」 呉勝浩 36歳 全 △ 15 「作中にある〈誰かとわかり合うということは、こんなにも難しいことなのか〉の一言は、頁を繰りつつ漏らした評者自身のつぶやきでもある。作家はその難しさから逃げなかった。」「難しさを引き受けたうえで光を見せ、しかも苦みと重みもきちんと残して閉じられる掉尾の数行の余韻は、選評を記すいまもまだ胸に残っている。」 澤田瞳子 40歳 全 ■ 10 「評者にとって縁遠い天平の奈良の都を舞台にしていながら、ぐいぐいと読ませてくれた。それは作品をかたちづくる器がじつにアクチュアルだったからだろう。」「残念ながら、その魅力的な器に盛られた料理、すなわち個々の人物のドラマが薄味に過ぎただろうか。」   「吉川英治文学新人賞とは、現役最前線のピチピチした鮮度を持つ作家たちの力作が競い合う場だと認識している。ならば、安定した手堅さ以上に、果敢な（蛮勇をも怖れぬ）挑戦、いわば作家の勇気に対して、より大きな拍手を贈りたい。」

他の選考委員 伊集院静 大沢在昌 恩田陸 京極夏彦

佐藤究40歳×各選考委員　 『Ank: a mirroring ape』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 伊集院静 68歳 全 ○ 43 「佐藤氏の文章力は、その簡潔さゆえの才能とも言えよう。」「私は本作の評価のひとつとして、小説のテーマが常に感じられた点に感心した。人類とは、私たちはいったい何者であるのかを一頭のチンパンジー、アンクを通して見つめ直したからである。面白ければ、それでいいというだけなら小説、文学とは言えない。テーマは文章に宿り、文章はテーマを語る。」 大沢在昌 61歳 全 □ 18 「私にとっては未完の大作に思える。ノンフィクション的な手法と無駄のない文章に、前半は一気に引き込まれるが、いざ何が起こったのかが明かされると、物語は勢いを失う。」「狂わない人間はもっといたであろうし、「警報」と人類の戦いを描いた第二部を読ませてもらいたいと思った。」「が、これが吉川英治文学新人賞にふさわしくないかといえば、決してそうではない。私も含め、授賞に反対する選考委員はひとりもいなかった。」 恩田陸 53歳 全 ○ 11 「肝心の暴動シーンがやや退屈なのではあるが、そこに至るまでのワクワク感が素晴らしい。この著者ならではの小説の色気がもう確立されていて、これからも「何かやってくれそう」と思わせてくれるところを評価した。」 京極夏彦 54歳 全 △ 26 「時系列を分断しシーンを並べ替えることで物語を編集するというスタイルは、新しいものでこそないのだが、テクニカルなセンスが強く要求される作業ではある。しかし作者はそれを難なくこなしている。惜しむらくは、ＡＩから類人猿研究、そしてミラーリングとその意味の解明へと続く知的興奮の積み重ねが、クライマックスを前に収束してしまうということだろうか。」 重松清 54歳 全 ○ 18 「圧倒された。いや、スピード感を称揚するには、心地よく翻弄されたと言い換えたほうがいいだろうか。」「そのみごとな筆力に、霊長類からゲノム、鏡像認識といった最新の研究の果実が加わって、興奮とともに読書の時間が過ぎていった。」

他の候補作 伊吹有喜 『彼方の友へ』 小川哲 『ゲームの王国』 呉勝浩 『白い衝動』 澤田瞳子 『火定』

伊吹有喜49歳×各選考委員　 『彼方の友へ』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 伊集院静 68歳 全 ― 0   大沢在昌 61歳 全 △ 8 「前半はまるで朝の連続ドラマのようなだと感じたが、明らかにそれを狙ったのだろう。物語は予定調和的に収束していくが、ここまで気持よく読ませてもらえるなら文句はない。」 恩田陸 53歳 全 ■ 14 「とても爽やかで心地のよい作品である。」「なのに、なぜか後に何も残らない。小説を読んだという手応えがない。」「ないものねだりなのかもしれないけれど、もっと訴えてくる、作者の顔が見えるようなものが欲しい。」 京極夏彦 54歳 全 ■ 14 「登場人物の祖型となる人物についての知識を持った読者には、やや踏み込みが足りないように読めてしまう。伏線らしきエピソードの回収も一部放棄されている。もちろん、そこは「捨てられた」部分なのだと思う。少女小説には必要のないものだからである。しかし、ならばこそ各部冒頭などに配された現代パートの扱いには違和感を覚えた。」 重松清 54歳 全 ■ 14 「作品の光の明るさは影の暗さで担保されてほしいと願うタイプの評者にとっては、読後に若干の物足りなさが残ってしまった。」「また、いくつかの謎が解かれずじまいなのは、もったいないのでは。」

他の候補作 佐藤究 『Ank: a mirroring ape』 小川哲 『ゲームの王国』 呉勝浩 『白い衝動』 澤田瞳子 『火定』

小川哲31歳×各選考委員　 『ゲームの王国』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 伊集院静 68歳 全 △ 7 「（引用者注：「白い衝動」と共に）惜しい状況で受賞を逃した。」「選考会で白熱した話しになり、私には読むことができなかった作品の本質が見え、各選考委員の眼に、学ぶことが多々あった。」 大沢在昌 61歳 全 ■ 17 「上巻の、ポル・ポト時代の話が長すぎる。」「カードゲーム「人生」や「チャンドゥク」の発想はおもしろく、カンボジアではなく架空の国を舞台にすれば、もっと著者は遊べたのではないか。大虐殺があったとはいえ、登場人物が、まるで千人ぐらいしか人口のない村のような濃密さで結びついていることにも違和感をもった。」 恩田陸 53歳 全 △ 17 「上巻をたいへん面白く、興奮しつつ読んだ。おお、これはピカレスク・ロマンになるのだなとわくわくしつつ下巻に行ったら、いちばん読みたかったところがあっさり飛ばされており、しかも後半かなり書き急いでいる感があって残念。」 京極夏彦 54歳 全 ○ 25 「個人的には高く評価している。」「上下巻にする必要はないだとか、下巻は要らないという意見は的外れだろう。これは上下巻に分けることによって初めて成立する試みだろうし、この形で描かれなければならない小説でもあったはずである。」「作中の奇想を現実のアナロジーと取るなら、記憶と小説を掏り替えるという企みは小説自体を外部からＳＦたらしめている。」 重松清 54歳 全 ○ 18 「候補作中で最も作家の勇気を感じた」「ＳＦにもゲームにも疎い評者は、おそらく本作の良い読み手にはなりえないはずだが、それでもなお、「正しいゲーム」をめぐる主題、記憶と人生の主題には強く惹きつけられた。」

他の候補作 佐藤究 『Ank: a mirroring ape』 伊吹有喜 『彼方の友へ』 呉勝浩 『白い衝動』 澤田瞳子 『火定』

呉勝浩36歳×各選考委員　 『白い衝動』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 伊集院静 68歳 全 △ 8 「（引用者注：「ゲームの王国」と共に）惜しい状況で受賞を逃した。」「小説として十分な出来栄えで、文学賞の選考会というものが、時として奇妙な流れや、他作品との並びの加減で、風に乗れないことがあり、それに関わった委員として容赦を願いたい。」 大沢在昌 61歳 全 ◎ 10 「人物の配置がよく考えられており、端役に至るまで、それぞれのエゴイズムを描き分けたという点で、私は高く評価した。主人公の造形には賛否両論あるだろうが、彼女を含め、登場人物を投げださない作者の姿勢には心を打たれた。」 恩田陸 53歳 全 △ 10 「この難しいテーマにきちんと正面から向き合い、人間のグレーゾーンを描いているところに感心した。」「ただ、この作品も『彼方の友へ』と同じく、作者の顔、息遣いがあまり感じられない。個性という言葉を使うのは好きではないが、この人ならではという個性がまだ見えていないように感じたので、強くは推さなかった。」 京極夏彦 54歳 全 ■ 21 「極めて今日的かつデリケートなテーマに正面から向き合った作品ではあるし、社会批判となる部分も含めて破綻なく纏められた良作ではあるだろう。但しそうした在り方と、鏤められたミステリ的な企みが無理なく添い遂げているかというと、やや疑問が残る。」「ミステリとして読み進めた場合、反社会的人格の登場人物やその内面描写が単なるガジェットとして「使い捨て」られているようにも読めてしまう。」 重松清 54歳 全 △ 15 「作中にある〈誰かとわかり合うということは、こんなにも難しいことなのか〉の一言は、頁を繰りつつ漏らした評者自身のつぶやきでもある。作家はその難しさから逃げなかった。」「難しさを引き受けたうえで光を見せ、しかも苦みと重みもきちんと残して閉じられる掉尾の数行の余韻は、選評を記すいまもまだ胸に残っている。」

他の候補作 佐藤究 『Ank: a mirroring ape』 伊吹有喜 『彼方の友へ』 小川哲 『ゲームの王国』 澤田瞳子 『火定』

澤田瞳子40歳×各選考委員　 『火定』

年齢の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 伊集院静 68歳 全 ― 0   大沢在昌 61歳 全 ■ 11 「過剰な説明が、本来ダイナミックである筈の、病と人間、死と生の対峙といったテーマをおおい隠してしまっている。感動的な物語を書こうという作者の力こぶが、むしろ感動を遠ざけている印象がある。」 恩田陸 53歳 全 ■ 8 「たいへんパワフルな小説であるが、とにかく説明しすぎる。」「とても力のある作者だと思うが、読者の読むリズムをもう少し考えてほしい。タイトルも今ひとつ腑に落ちなかった。」 京極夏彦 54歳 全 ■ 17 「時代考証上の齟齬などを指摘する向きもあるようだが、そうした瑕瑾は殆どない。」「残念なのは、正確な情報を物語化するために用意されたプロットが物語そのものに貢献していないという点ではなかろうか。」 重松清 54歳 全 ■ 10 「評者にとって縁遠い天平の奈良の都を舞台にしていながら、ぐいぐいと読ませてくれた。それは作品をかたちづくる器がじつにアクチュアルだったからだろう。」「残念ながら、その魅力的な器に盛られた料理、すなわち個々の人物のドラマが薄味に過ぎただろうか。」

他の候補作 佐藤究 『Ank: a mirroring ape』 伊吹有喜 『彼方の友へ』 小川哲 『ゲームの王国』 呉勝浩 『白い衝動』