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第9回
山本周五郎賞
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平成7年/1995年度
(平成8年/1996年5月20日決定発表/『小説新潮』平成8年/1996年7月号選評掲載)
選考委員  阿刀田高
男61歳
井上ひさし
男61歳
逢坂剛
男52歳
長部日出雄
男61歳
山田太一
男61歳
最終投票
選評総行数  156 260 223 225 196  
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
天童荒太 『家族狩り』
男36歳
32 99 61 52 41    
佐江衆一 『江戸職人綺譚』
男62歳
42 69 45 29 55    
京極夏彦 『鉄鼠の檻』
男33歳
41 59 98 84 43    
志水辰夫 『あした蜉蝣の旅』
男59歳
37 28 42 33 54    
           
年齢の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『小説新潮』平成8年/1996年7月号
1行当たりの文字数:19字


選考委員
阿刀田高男61歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数156 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
天童荒太
男36歳
32 4.5点「いろんな人がみな、自分の狂気だとか自分のわがままを最後まで貫く。だから、どんどん、どんどんテンションが高くなっていく。しかもそれをちゃんと構成する力は、ほんとうに感心いたしました。」「若い才能を買うということで。」
佐江衆一
男62歳
42 4点「一冊にまとまると、やや作品のばらつきが目立ちまして、そこが、ちょっと減点になるのかなと思いました。」「この連作集の場合、どうも四人強力なバッターがいないんじゃないのか。」「江戸の文化を支えた職人たちの生活が、非常にきめ細かく書かれていて、その点はとても面白く感嘆して読んだんですが。」
京極夏彦
男33歳
41 3点「ミステリーとしてもエンターテインメントとしても、欠けるものが多いんじゃないでしょうか。」「知識の裏付けは非常にあるんですが、これがほんとうに昭和二十八年なのか?」「いろいろな面で「知識が広いなあ」と感心する反面、まだ自家薬籠中の物となっていないような気がする。これは大きな欠点だと思います。」「文章は相当問題ありだと思いますがね。」
志水辰夫
男59歳
37 4.25点「美しい文章。ある種の淡い人生感覚、まさに蜉蝣のような人生模様を書いていく。志水さんの世界は滞りなく書かれているんですが、いささか冗長でくり返しが多い。」「私は、昂子という人がわからない。それほど素敵な人にはどうしても思えないんです。」「諸手を上げて、すごいっていうふうにちょっと言えない気がいたしました。」「好みの問題だけど、カタルシスがないよね。」
  「今回は、若手二人とベテラン二人で、若手のほうは、それなりに評価ができたんですが、ベテランのほうは判断が難しくて。」
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他の選考委員
井上ひさし
逢坂剛
長部日出雄
山田太一
最終投票
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選考委員
井上ひさし男61歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数260 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
天童荒太
男36歳
99 4.75点「作者は日本の社会状況を観察して、ひとつの壮大な仮説を立て、それを丸ごと書き切ろうとしている。この作家的野心、これは買うべきだと思いました。」「おしまいに行って、せっかく広く撒いた網がちょっと狭くはなりますけど、とにかくすべてを最後へひきしぼって行く力もある。」「気にいったのは、冬島綾女という女性、研司くんのお母さん。(引用者中略)この作者はそういう普通のところもちゃんと書けるんですよ。」
佐江衆一
男62歳
69 4.5点「とりわけ感心したのは「対の鉋」という、大工職人の話で、これは飛んでもない傑作ですね。」「つまり、なんにも起こらない。(引用者中略)それなのに、いつの間にか一篇の恋物語ができている。唸りました。」「中には、同じ作者のものとは思えないような低調な作品もある。」
京極夏彦
男33歳
59 3.5点「明らかに諧謔味を狙っているにもかかわらず、この作者は笑いに関しては志が低いです。」「作者のすごい腕力、すごい構想力を認めます。五点満点で六点さしあげてもいい。しかし、それを読者に提示する方法に躓きがある。」「読んでていらいらした体験は、やはり消しがたいのです。」
志水辰夫
男59歳
28 4点「全篇に志水節が鳴り響いています。」「ところが、それらは表現の問題でありまして、今度は内容にふれると、志水さんにしては珍しく展開がのろのろしているんじゃないかと思いました。(引用者中略)話がはっきりしない。」「主人公、つまり読者にとっての情報仲介者に、志水さんのものによく出てくる積極的な、人生に対する賭けがないので、この小説は前へ進む力が弱いんですね。」
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他の選考委員
阿刀田高
逢坂剛
長部日出雄
山田太一
最終投票
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選考委員
逢坂剛男52歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数223 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
天童荒太
男36歳
61 4点「サイコ・ホラーのテーマとして家庭内暴力を取り上げたあざとさみたいなものが、拭いきれないところがありました。それと、かなり残酷描写がこういう小説にとって、はたして必要不可欠だったろうか。」「ただ、こういう気の滅入る話を、これでもかこれでもかと書いていく馬力、その筆力を私は認めたいと思います。」「でも、この動機はどんなものでしょうか。それから、この動機を最初からもっと正面に据えて書くべきだったんじゃないか、と思うんですけど。」
佐江衆一
男62歳
45 4.5点「この短篇小説のストレートなところを、私はむしろプラスに受け取りました。」「佐江さんはもともと純文学の人で、そういう方が、エンターテインメントの分野に参入してこられたことについて、私は諸手を上げて歓迎したいと思っています。」「短篇一本につぎ込む労力は、すごいものがあると思いますね。」
京極夏彦
男33歳
98 3.5点「すごい小説の登場で驚いてます。」「これはコンピューター世代の小説だなという感じがしました。情報だけでほとんど人間が出てこない。」「小説として読んだ時に、禅の講釈が、小説的な感興をすごく削ぐと思うんです。」「ただ、この小説は若い人の間で、よく売れているということからして、よくわからんと言っちゃうと、ちょっと忸怩たるものもありますけれども。」
志水辰夫
男59歳
42 4点「もともと「裂けて海峡」とか、「飢えて狼」は、志水さんの本領ではなくて、むしろこういう一種の恋愛小説というか、中年ないし初老の男の人生の哀感を出す、そういう小説を本当は書きたかったんじゃないか。」「私も主人公の女性に対するスタンスが、納得のできない点が多かったです。」「十二、三年たっているのに、主人公が必ずしも成長してなくて、ビルドゥングスロマンになりきってないところが惜しまれます。」
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他の選考委員
阿刀田高
井上ひさし
長部日出雄
山田太一
最終投票
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選考委員
長部日出雄男61歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数225 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
天童荒太
男36歳
52 4点「最初にいいと思ったところは、きわめて残虐な犯行という点で共通しながら、直接的には関係がないように見える事件が結びつけられていく過程に、意外性と説得力があった。」「映画のサイコ・スリラー、ホラー、スプラッターなど多彩な技法を取り入れながら、なおかつちゃんと自分の世界になっていると思うんですね。」「欠点はサービス過剰、やたら見せすぎ、それから台詞で語りすぎる。」
佐江衆一
男62歳
29 3.5点「たいへん丹念に調べてあって、ほんとうに律儀な職人のように実直で丁寧な仕事だし、一本一本が十分、長篇になるほどの興味深い材料で、とても勉強になったんです。」「大ベテランに失礼だとは思いますけど、これをもっと長い枚数で読みたかった、惜しいなという気持ちをこめて三・五点とさせていただきます。」
京極夏彦
男33歳
84 5点「全体に、とても人を食ったユーモアがあって、これは後から聞いた話である、というふうな独自の語り口と文体、つまり自分のスタイルというものを持っている。これはまず大物の証拠だと思います。」「疑似科学、それから科学と宗教の野合に対する批判は痛烈です。」「この人の教養と思考力と構想力は桁はずれだと思いました。」
志水辰夫
男59歳
33 3.5点「どうも最初の暗号の歌に対する解答とか謎解きがなされない。で、途中からこれは、主人公の俵谷慎介と日下部昂子の恋愛小説になっているんだろうというふうに思ったんですね。」「作者はどうもこれはミステリーを書くつもりじゃなかったんでしょう。私は、行き先を間違えたらしくて、この小説とはすれ違ったようです。」
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他の選考委員
阿刀田高
井上ひさし
逢坂剛
山田太一
最終投票
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選考委員
山田太一男61歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数196 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
天童荒太
男36歳
41 3.5点「たいへんな力作ですけれど、生身の家族には踏みこまず、ホラーに都合のいい材料として家族を利用しているという印象を受けました。」「現実っぽいんだけれども、実は家族についての俗論の輪郭を濃くした現実ではない世界が展開されている。」「文章も少し安易な気がしました。」「大野の狂気に託した作者のメッセージも、子供の親への恨みなども他者というものへの買いかぶりがあって、共感できません。」
佐江衆一
男62歳
55 3.5点「職人についての薀蓄に支えられていて、その薀蓄自体はそれぞれ面白く読ませていただきました。しかし、人情噺が少しストレートすぎないでしょうか。」「今の時代にも需要がないとは思いませんけれども、少し、こういうレースの中では、素直すぎるのではないかという思いがいたしました。」「話振りはたいへんお上手ですし、ひねりにひねった上でのさらりとした物語なのかなとも思うのですが、もう少しコクが欲しい。」
京極夏彦
男33歳
43 4点「はじめ、かなり意識的に横溝正史的なおどろおどろしさを出しながら、それが全部現実の次元で説明できることだというふうにどんどん説明して横溝的世界をひきはなしていくあたり、なかなか挑戦的だし、読ませると思いました。」「この小説の欠点は、魅力のある人物がいないことだと思いました。」
志水辰夫
男59歳
54 4.5点「どこかで踏み込みたくない、そのために、小説全体が先へ進まない、ぐらぐら、ぐらぐらしているという感じがある。」「昂子をめぐって三人の男が名乗りを上げて、血で血を洗う闘争があるのかと思うと、ない。ないほうがリアリティがありますね。争って女を手に入れる話よりずっといい。」「そこに僕は、この四作の中でいちばん現代を感じました。」「いま物語を語る困難を、結構正直に引受けているということに共感して、面白く読みました。」
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他の選考委員
阿刀田高
井上ひさし
逢坂剛
長部日出雄
最終投票
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選考委員
最終投票×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
天童荒太
男36歳
    ○3票
佐江衆一
男62歳
    ○1票
京極夏彦
男33歳
     
志水辰夫
男59歳
    ○1票
          - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
阿刀田高
井上ひさし
逢坂剛
長部日出雄
山田太一
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受賞者・作品
天童荒太男36歳×各選考委員 
『家族狩り』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男61歳
32 4.5点「いろんな人がみな、自分の狂気だとか自分のわがままを最後まで貫く。だから、どんどん、どんどんテンションが高くなっていく。しかもそれをちゃんと構成する力は、ほんとうに感心いたしました。」「若い才能を買うということで。」
井上ひさし
男61歳
99 4.75点「作者は日本の社会状況を観察して、ひとつの壮大な仮説を立て、それを丸ごと書き切ろうとしている。この作家的野心、これは買うべきだと思いました。」「おしまいに行って、せっかく広く撒いた網がちょっと狭くはなりますけど、とにかくすべてを最後へひきしぼって行く力もある。」「気にいったのは、冬島綾女という女性、研司くんのお母さん。(引用者中略)この作者はそういう普通のところもちゃんと書けるんですよ。」
逢坂剛
男52歳
61 4点「サイコ・ホラーのテーマとして家庭内暴力を取り上げたあざとさみたいなものが、拭いきれないところがありました。それと、かなり残酷描写がこういう小説にとって、はたして必要不可欠だったろうか。」「ただ、こういう気の滅入る話を、これでもかこれでもかと書いていく馬力、その筆力を私は認めたいと思います。」「でも、この動機はどんなものでしょうか。それから、この動機を最初からもっと正面に据えて書くべきだったんじゃないか、と思うんですけど。」
長部日出雄
男61歳
52 4点「最初にいいと思ったところは、きわめて残虐な犯行という点で共通しながら、直接的には関係がないように見える事件が結びつけられていく過程に、意外性と説得力があった。」「映画のサイコ・スリラー、ホラー、スプラッターなど多彩な技法を取り入れながら、なおかつちゃんと自分の世界になっていると思うんですね。」「欠点はサービス過剰、やたら見せすぎ、それから台詞で語りすぎる。」
山田太一
男61歳
41 3.5点「たいへんな力作ですけれど、生身の家族には踏みこまず、ホラーに都合のいい材料として家族を利用しているという印象を受けました。」「現実っぽいんだけれども、実は家族についての俗論の輪郭を濃くした現実ではない世界が展開されている。」「文章も少し安易な気がしました。」「大野の狂気に託した作者のメッセージも、子供の親への恨みなども他者というものへの買いかぶりがあって、共感できません。」
最終投票     ○3票
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他の候補作
佐江衆一
『江戸職人綺譚』
京極夏彦
『鉄鼠の檻』
志水辰夫
『あした蜉蝣の旅』
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候補者・作品
佐江衆一男62歳×各選考委員 
『江戸職人綺譚』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男61歳
42 4点「一冊にまとまると、やや作品のばらつきが目立ちまして、そこが、ちょっと減点になるのかなと思いました。」「この連作集の場合、どうも四人強力なバッターがいないんじゃないのか。」「江戸の文化を支えた職人たちの生活が、非常にきめ細かく書かれていて、その点はとても面白く感嘆して読んだんですが。」
井上ひさし
男61歳
69 4.5点「とりわけ感心したのは「対の鉋」という、大工職人の話で、これは飛んでもない傑作ですね。」「つまり、なんにも起こらない。(引用者中略)それなのに、いつの間にか一篇の恋物語ができている。唸りました。」「中には、同じ作者のものとは思えないような低調な作品もある。」
逢坂剛
男52歳
45 4.5点「この短篇小説のストレートなところを、私はむしろプラスに受け取りました。」「佐江さんはもともと純文学の人で、そういう方が、エンターテインメントの分野に参入してこられたことについて、私は諸手を上げて歓迎したいと思っています。」「短篇一本につぎ込む労力は、すごいものがあると思いますね。」
長部日出雄
男61歳
29 3.5点「たいへん丹念に調べてあって、ほんとうに律儀な職人のように実直で丁寧な仕事だし、一本一本が十分、長篇になるほどの興味深い材料で、とても勉強になったんです。」「大ベテランに失礼だとは思いますけど、これをもっと長い枚数で読みたかった、惜しいなという気持ちをこめて三・五点とさせていただきます。」
山田太一
男61歳
55 3.5点「職人についての薀蓄に支えられていて、その薀蓄自体はそれぞれ面白く読ませていただきました。しかし、人情噺が少しストレートすぎないでしょうか。」「今の時代にも需要がないとは思いませんけれども、少し、こういうレースの中では、素直すぎるのではないかという思いがいたしました。」「話振りはたいへんお上手ですし、ひねりにひねった上でのさらりとした物語なのかなとも思うのですが、もう少しコクが欲しい。」
最終投票     ○1票
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他の候補作
天童荒太
『家族狩り』
京極夏彦
『鉄鼠の檻』
志水辰夫
『あした蜉蝣の旅』
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候補者・作品
京極夏彦男33歳×各選考委員 
『鉄鼠の檻』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男61歳
41 3点「ミステリーとしてもエンターテインメントとしても、欠けるものが多いんじゃないでしょうか。」「知識の裏付けは非常にあるんですが、これがほんとうに昭和二十八年なのか?」「いろいろな面で「知識が広いなあ」と感心する反面、まだ自家薬籠中の物となっていないような気がする。これは大きな欠点だと思います。」「文章は相当問題ありだと思いますがね。」
井上ひさし
男61歳
59 3.5点「明らかに諧謔味を狙っているにもかかわらず、この作者は笑いに関しては志が低いです。」「作者のすごい腕力、すごい構想力を認めます。五点満点で六点さしあげてもいい。しかし、それを読者に提示する方法に躓きがある。」「読んでていらいらした体験は、やはり消しがたいのです。」
逢坂剛
男52歳
98 3.5点「すごい小説の登場で驚いてます。」「これはコンピューター世代の小説だなという感じがしました。情報だけでほとんど人間が出てこない。」「小説として読んだ時に、禅の講釈が、小説的な感興をすごく削ぐと思うんです。」「ただ、この小説は若い人の間で、よく売れているということからして、よくわからんと言っちゃうと、ちょっと忸怩たるものもありますけれども。」
長部日出雄
男61歳
84 5点「全体に、とても人を食ったユーモアがあって、これは後から聞いた話である、というふうな独自の語り口と文体、つまり自分のスタイルというものを持っている。これはまず大物の証拠だと思います。」「疑似科学、それから科学と宗教の野合に対する批判は痛烈です。」「この人の教養と思考力と構想力は桁はずれだと思いました。」
山田太一
男61歳
43 4点「はじめ、かなり意識的に横溝正史的なおどろおどろしさを出しながら、それが全部現実の次元で説明できることだというふうにどんどん説明して横溝的世界をひきはなしていくあたり、なかなか挑戦的だし、読ませると思いました。」「この小説の欠点は、魅力のある人物がいないことだと思いました。」
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他の候補作
天童荒太
『家族狩り』
佐江衆一
『江戸職人綺譚』
志水辰夫
『あした蜉蝣の旅』
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候補者・作品
志水辰夫男59歳×各選考委員 
『あした蜉蝣の旅』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男61歳
37 4.25点「美しい文章。ある種の淡い人生感覚、まさに蜉蝣のような人生模様を書いていく。志水さんの世界は滞りなく書かれているんですが、いささか冗長でくり返しが多い。」「私は、昂子という人がわからない。それほど素敵な人にはどうしても思えないんです。」「諸手を上げて、すごいっていうふうにちょっと言えない気がいたしました。」「好みの問題だけど、カタルシスがないよね。」
井上ひさし
男61歳
28 4点「全篇に志水節が鳴り響いています。」「ところが、それらは表現の問題でありまして、今度は内容にふれると、志水さんにしては珍しく展開がのろのろしているんじゃないかと思いました。(引用者中略)話がはっきりしない。」「主人公、つまり読者にとっての情報仲介者に、志水さんのものによく出てくる積極的な、人生に対する賭けがないので、この小説は前へ進む力が弱いんですね。」
逢坂剛
男52歳
42 4点「もともと「裂けて海峡」とか、「飢えて狼」は、志水さんの本領ではなくて、むしろこういう一種の恋愛小説というか、中年ないし初老の男の人生の哀感を出す、そういう小説を本当は書きたかったんじゃないか。」「私も主人公の女性に対するスタンスが、納得のできない点が多かったです。」「十二、三年たっているのに、主人公が必ずしも成長してなくて、ビルドゥングスロマンになりきってないところが惜しまれます。」
長部日出雄
男61歳
33 3.5点「どうも最初の暗号の歌に対する解答とか謎解きがなされない。で、途中からこれは、主人公の俵谷慎介と日下部昂子の恋愛小説になっているんだろうというふうに思ったんですね。」「作者はどうもこれはミステリーを書くつもりじゃなかったんでしょう。私は、行き先を間違えたらしくて、この小説とはすれ違ったようです。」
山田太一
男61歳
54 4.5点「どこかで踏み込みたくない、そのために、小説全体が先へ進まない、ぐらぐら、ぐらぐらしているという感じがある。」「昂子をめぐって三人の男が名乗りを上げて、血で血を洗う闘争があるのかと思うと、ない。ないほうがリアリティがありますね。争って女を手に入れる話よりずっといい。」「そこに僕は、この四作の中でいちばん現代を感じました。」「いま物語を語る困難を、結構正直に引受けているということに共感して、面白く読みました。」
最終投票     ○1票
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『家族狩り』
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『江戸職人綺譚』
京極夏彦
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