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第8回
山本周五郎賞
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平成6年/1994年度
(平成7年/1995年5月16日決定発表/『小説新潮』平成7年/1995年7月号選評掲載)
選考委員  阿刀田高
男60歳
井上ひさし
男60歳
逢坂剛
男51歳
長部日出雄
男60歳
山田太一
男60歳
選評総行数  208 214 239 206 154
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
帚木蓬生 『閉鎖病棟』
男48歳
62 62 55 67 47
篠田節子 『聖域』
女39歳
54 35 32 40 25
高橋直樹 『闇の松明』
男35歳
26 46 38 20 28
藤田宜永 『鋼鉄の騎士』
男45歳
36 27 64 37 44
重松清 『見張り塔から ずっと』
男32歳
34 44 47 42 35
         
年齢の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『小説新潮』平成7年/1995年7月号
1行当たりの文字数:19字


選考委員
阿刀田高男60歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数208 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
帚木蓬生
男48歳
62 4点「私があまりよく知らない精神病院のありようを専門家の立場から説得力をもって提示してくれて、そして最後に、涙が出てくるくらい感動的な場面をちゃんと持ってきてくれています。」「私には、山本周五郎賞は、もう少し花も実もある絵空事というか、ストーリー性のある作品を選んだほうがいいのではという思いがあるんです。」「「閉鎖病棟」が素晴らしい作品であるということにはまったく異存ありません。」
篠田節子
女39歳
54 3点「非常に書きにくい、論理的には説明しにくい領域を、それなりの説得力のある形で小説にまとめているというところは、評価してよいと思います。」「この作品は、少し作者のご都合で話を運んでいき過ぎているという感じがします。」「もう少し丁寧に書いといてくれないと、最後のだましのところが納得できるものにならないと思います。」
高橋直樹
男35歳
26 3.5点「こういうことがあったかもしれないという間隙を縫って、そこにちゃんと一つのストーリーをつくり上げていく手腕は、期待を持てる時代小説の書き手だと思います。」「短篇集なので、他の候補作と比べると、イマジネーションの大きさといったところで損をしていますね。」
藤田宜永
男45歳
36 4点「とにかく大変な力業ですが、欠点を挙げようと思ったらたくさんある小説だと思います。」「この人は嘘をここまでつき切るという能力を、これからさらにこの上に積み重ねていってくれるだろうという気がするし、エンターテインメントでありながら、一つの思想も作品に垣間見えています。」「もうひとつチャーミングでない点が惜しいですね。」
重松清
男32歳
34 4点「この小説は怖いですよ。これだけ怖い小説というのは、なかなか簡単に書けない。」「しかし、これは今回、一貫して言っている事ですが、やはり懐が狭い。この方法論では出来ないのかもしれないが、もう少し大きい作品をつくるということを心がけると、この人はもっともっと可能性があるんじゃないかという気がします。」
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他の選考委員
井上ひさし
逢坂剛
長部日出雄
山田太一
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選考委員
井上ひさし男60歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数214 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
帚木蓬生
男48歳
62 5点「素晴らしい作品でした。」「「よかった」としか言いようがない。」「自分が受けた歓びや嬉しさを、いろいろな人に分けて上げたいという気にさせる一冊です。文章も的確かつ計算が立っていて、しかも、とても自然です。これは作家が一生に一度ぶつかるかどうかという作品じゃないでしょうか。」「ある意味ではこの作者は大ケレンの持主ですよ。」
篠田節子
女39歳
35 3点「途中まで、未完の傑作小説の作者を探すという謎に吸い寄せられてとても面白く読みました。」「ところが、作者を突き止めてから、力が落ちてくる。」「作者の篠田さんは、作中の作者水名川泉とは交渉しているが、水名川泉の書いた作品とは、ほとんど切り結んでいない。」
高橋直樹
男35歳
46 3点「文章は端正ですが、固有名詞がガチャガチャ並んでいるところは、まだ読者の容量を考えてない一方的な、暴力的な書き方ですね(笑)。」「この作品集は、流れ去った時間への慨嘆というか、過ぎ去った時間はもう帰らないという、時間の直線性をよく書いていますね。」「もっともっと書いて、読者とのルールのつくり方を勉強したら、いい作家になると思います。」
藤田宜永
男45歳
27 4点「この筆力、腕力、努力に対しては素直に脱帽します。」「しかし、これだけ厚いものを読んでくれている読者に対してはちょっと見返りが少ないんじゃないか。例えば、人間関係の感動です。どうだ、人間っていうのはすごいだろうという、そのへんの報われ方が少ない。」「せっかくつくった宇宙、つまり時間と空間がだんだん痩せ細って行っている印象がある。」
重松清
男32歳
44 3点「この小説に書かれているような世の中、なんだかいやだなということがほんの少し評価に影響したかもしれません。」「とても知的なんですが、人事百般に対してやや冷笑的になっている。それが少し鼻についてくるところがあります。」「表面的に、ではなく、深いところから読者を元気づけるような作品へも挑戦してくださったらと、思います。」「「陽だまりの猫」という短篇はいい作品ですね。前に進む力があります。」
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他の選考委員
阿刀田高
逢坂剛
長部日出雄
山田太一
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選考委員
逢坂剛男51歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数239 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
帚木蓬生
男48歳
55 5点「帚木さんは、いつも志の高い、弱者というか、ハンディを背負った人たちに対する、非常にあたたかい眼差しを持った小説を書く人です。」「精神を病んだために、世の中から差別的な見方をされている人たちに対して、あたたかい視点で書こうという姿勢が強く感じられて、私は感動しました。」「多少、構成にアンバランスな部分もありますが、文章がしっかりしているという意味では、候補作中随一でしょう。」「(引用者注:他の候補者と比べて)年季がちょっと違う。」
篠田節子
女39歳
32 4点「作中作の「聖域」(引用者中略)自体が、抜粋しか書かれてない。粗筋を読まされても、その作品がどれだけ傑作か、読者には伝わってこないわけです。(引用者中略)この欠点がどうしても、最後までつきまとってしまいました。」「イタコとかそういうテーマを扱って、一応ホラー的ではあるが、おどろおどろしさやばかばかしさがほとんどみられないし、ユーモア感覚が結構ある。」
高橋直樹
男35歳
38 4点「すでに書かれていながら、見逃されていた歴史の狭間に目を向けて、それをフィクション化していく腕はなかなかのものだと思います。」「表題作の「闇の松明」をとります。他の作品にもそれぞれ工夫はありますが、むしろ平均点を下げているような感じがあります。」「(引用者注:「闇の松明」では)主人公の造形がかなり面白く書けています。」
藤田宜永
男45歳
64 4点「それぞれの人を実に誠実に面倒を見ているので、時間がかかり過ぎて、話が真っ直ぐ行かずジグザグに進んでいる。」「ただ、ヨーロッパ現代史を背景にして、日本人が活躍する小説というのは、非常に数が少ないし、まだ未開拓の分野なんですね。そこに挑戦したというところを、私は高く評価したいと思います。」「私の最大の不満は、主人公がほとんど成長せずに小説が終わってしまう、というところです。」「せめて千八百枚ぐらいで、もうちょっと締まればなあ。」
重松清
男32歳
47 4点「選考のために読みましたが、読めば読むほど気分が落ち込んでくる小説ですね。」「エンターテインメントという読み方からすると、どうしても気分が乗らない。」「ただ、とても小説づくりのうまい人だと思います。」「候補作中では、帚木さんと並ぶくらいの文章のうまさだと思いました。」「心理の読みも非常にすぐれた作家です。」
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他の選考委員
阿刀田高
井上ひさし
長部日出雄
山田太一
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選考委員
長部日出雄男60歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数206 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
帚木蓬生
男48歳
67 5点「文章、語り口ともに、第一級で、人物の彫りもみな深く、伏線が二段構え、三段構えになっています。」「甘さとかヒューマニズムというのは、実はとても難しい問題で、ここをすれすれに通り抜けると、今の小説にあまりないような感動に到達できる。この作品は、それを成し遂げていると思います。」「この人は、甘いというのは実は本当に小説を書く上では厳しい道なんだということを計算して書いていると思いますね。」「読み終わった時に山本周五郎の現代的再来と思ったんですよ。」
篠田節子
女39歳
40 3点「大変に力のある書き手だと思いました。」「この人は非常に近代的な感覚の持主だと思います。土着的なものとかどろどろしたものを書くには、あまり向いている感じがしない。」「この作品はずっと引き込まれて読んでいった読者が納得する説得性というものを、最後には結局持ち得なかったんじゃないかと思います。」
高橋直樹
男35歳
20 3点「私は「尼子悲話」というのが一番面白かったんです」「全体に大変手堅い、堅実な書き方ですが、一家をなすには、やはりこの堅実な書き方を、もう一つ突き抜けた魅力とか個性が欲しい。」
藤田宜永
男45歳
37 3.5点「レースの話だけにしぼってもよかったんじゃないでしょうか。」「途中で、ついていくのに苦労する気がしたのは、あまりに何もかも欲張って要素を入れ過ぎて、焦点をしぼり切れなかったところがあったからだと思うんです。」
重松清
男32歳
42 3.5点「この人の作風は、あまり細かく書き込まず簡略化した筆致なので、とても読みやすいし、よくわかります。ただ、「カラス」のようにこれが成功すればいいのですが、うまくいかない場合は、図式的な感じがしてくるんです。「扉を開けて」、「陽だまりの猫」と続けて読んでいくと、それぞれにテーマが違って、狙いも違うんですが、同工異曲だと感じてしまう。」
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他の選考委員
阿刀田高
井上ひさし
逢坂剛
山田太一
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選考委員
山田太一男60歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数154 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
帚木蓬生
男48歳
47 4.5点「地味な病院の話をなんとかエンターテインメントにしよう、という意気込みがみなぎっていて、全部読み終わって、ふりかえると、慰安を求めて本をひらいた読者にこういう世界をさし出す作家の緊張をいたましいくらい感じました。」「少し、患者たちに甘くないだろうかという印象を持ちました。」「少し、弱者の善にウェイトを置き過ぎていないだろうか。」
篠田節子
女39歳
25 4点「編集者の実藤が、「聖域」という作品以外の現代の日本の作家の作品はみんなだめだというのは、気持ちは分かるけど、病的で強引な感じがするんです。」「力作で凄いところもある作品で、しかし「傑作」にまつわる小説の困難に後半打ち負かされてしまったような印象を受けました。」
高橋直樹
男35歳
28 3.5点「近代の目で武士をとらえるというところから抜け出して、武士がいわばその時代の美意識で死ぬとか、歴史や状況のただの受身の犠牲者ではないという味わいは、この作者の持味なのかなと思って楽しんで読みました。しかし、それが少し勇み足になっているようにも感じました。」「物語や人物をとらえるスタイルがもうひとつ決まらないもどかしさが減点の理由です。」
藤田宜永
男45歳
44 4.5点「非常に長い作品なのに、大勢の人物全部の面倒をきちっと、最後まで見ていて、これはやはりたいした事だと思いました。」「レースと革命は同じだというか、プロセスの部分での情念は同じだという作者の思いには、かなり説得力があり、ひきこまれました。」「ただ、これだけの大作なのに、読み終わっても主人公が、癖とか身振りに人とちがう魅力を持つ人物として浮かんできませんでした。」
重松清
男32歳
35 4.5点「(引用者注:「陽だまりの猫」は)とてもよく出来てると思いました。「分身」という手法自体は平凡かもしれませんが、その書き分けがとてもうまく行っています。」「「陽だまりの猫」だけだったら、五・〇でもいいというくらい入れ込んでいるんです。」
  「今回は非常に水準が高くて、正直言うとちょっと途方に暮れたんです。ですから、僕は、どれが賞を取っても不思議はないと思いました。」
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他の選考委員
阿刀田高
井上ひさし
逢坂剛
長部日出雄
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受賞者・作品
帚木蓬生男48歳×各選考委員 
『閉鎖病棟』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男60歳
62 4点「私があまりよく知らない精神病院のありようを専門家の立場から説得力をもって提示してくれて、そして最後に、涙が出てくるくらい感動的な場面をちゃんと持ってきてくれています。」「私には、山本周五郎賞は、もう少し花も実もある絵空事というか、ストーリー性のある作品を選んだほうがいいのではという思いがあるんです。」「「閉鎖病棟」が素晴らしい作品であるということにはまったく異存ありません。」
井上ひさし
男60歳
62 5点「素晴らしい作品でした。」「「よかった」としか言いようがない。」「自分が受けた歓びや嬉しさを、いろいろな人に分けて上げたいという気にさせる一冊です。文章も的確かつ計算が立っていて、しかも、とても自然です。これは作家が一生に一度ぶつかるかどうかという作品じゃないでしょうか。」「ある意味ではこの作者は大ケレンの持主ですよ。」
逢坂剛
男51歳
55 5点「帚木さんは、いつも志の高い、弱者というか、ハンディを背負った人たちに対する、非常にあたたかい眼差しを持った小説を書く人です。」「精神を病んだために、世の中から差別的な見方をされている人たちに対して、あたたかい視点で書こうという姿勢が強く感じられて、私は感動しました。」「多少、構成にアンバランスな部分もありますが、文章がしっかりしているという意味では、候補作中随一でしょう。」「(引用者注:他の候補者と比べて)年季がちょっと違う。」
長部日出雄
男60歳
67 5点「文章、語り口ともに、第一級で、人物の彫りもみな深く、伏線が二段構え、三段構えになっています。」「甘さとかヒューマニズムというのは、実はとても難しい問題で、ここをすれすれに通り抜けると、今の小説にあまりないような感動に到達できる。この作品は、それを成し遂げていると思います。」「この人は、甘いというのは実は本当に小説を書く上では厳しい道なんだということを計算して書いていると思いますね。」「読み終わった時に山本周五郎の現代的再来と思ったんですよ。」
山田太一
男60歳
47 4.5点「地味な病院の話をなんとかエンターテインメントにしよう、という意気込みがみなぎっていて、全部読み終わって、ふりかえると、慰安を求めて本をひらいた読者にこういう世界をさし出す作家の緊張をいたましいくらい感じました。」「少し、患者たちに甘くないだろうかという印象を持ちました。」「少し、弱者の善にウェイトを置き過ぎていないだろうか。」
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他の候補作
篠田節子
『聖域』
高橋直樹
『闇の松明』
藤田宜永
『鋼鉄の騎士』
重松清
『見張り塔から ずっと』
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候補者・作品
篠田節子女39歳×各選考委員 
『聖域』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男60歳
54 3点「非常に書きにくい、論理的には説明しにくい領域を、それなりの説得力のある形で小説にまとめているというところは、評価してよいと思います。」「この作品は、少し作者のご都合で話を運んでいき過ぎているという感じがします。」「もう少し丁寧に書いといてくれないと、最後のだましのところが納得できるものにならないと思います。」
井上ひさし
男60歳
35 3点「途中まで、未完の傑作小説の作者を探すという謎に吸い寄せられてとても面白く読みました。」「ところが、作者を突き止めてから、力が落ちてくる。」「作者の篠田さんは、作中の作者水名川泉とは交渉しているが、水名川泉の書いた作品とは、ほとんど切り結んでいない。」
逢坂剛
男51歳
32 4点「作中作の「聖域」(引用者中略)自体が、抜粋しか書かれてない。粗筋を読まされても、その作品がどれだけ傑作か、読者には伝わってこないわけです。(引用者中略)この欠点がどうしても、最後までつきまとってしまいました。」「イタコとかそういうテーマを扱って、一応ホラー的ではあるが、おどろおどろしさやばかばかしさがほとんどみられないし、ユーモア感覚が結構ある。」
長部日出雄
男60歳
40 3点「大変に力のある書き手だと思いました。」「この人は非常に近代的な感覚の持主だと思います。土着的なものとかどろどろしたものを書くには、あまり向いている感じがしない。」「この作品はずっと引き込まれて読んでいった読者が納得する説得性というものを、最後には結局持ち得なかったんじゃないかと思います。」
山田太一
男60歳
25 4点「編集者の実藤が、「聖域」という作品以外の現代の日本の作家の作品はみんなだめだというのは、気持ちは分かるけど、病的で強引な感じがするんです。」「力作で凄いところもある作品で、しかし「傑作」にまつわる小説の困難に後半打ち負かされてしまったような印象を受けました。」
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他の候補作
帚木蓬生
『閉鎖病棟』
高橋直樹
『闇の松明』
藤田宜永
『鋼鉄の騎士』
重松清
『見張り塔から ずっと』
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候補者・作品
高橋直樹男35歳×各選考委員 
『闇の松明』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男60歳
26 3.5点「こういうことがあったかもしれないという間隙を縫って、そこにちゃんと一つのストーリーをつくり上げていく手腕は、期待を持てる時代小説の書き手だと思います。」「短篇集なので、他の候補作と比べると、イマジネーションの大きさといったところで損をしていますね。」
井上ひさし
男60歳
46 3点「文章は端正ですが、固有名詞がガチャガチャ並んでいるところは、まだ読者の容量を考えてない一方的な、暴力的な書き方ですね(笑)。」「この作品集は、流れ去った時間への慨嘆というか、過ぎ去った時間はもう帰らないという、時間の直線性をよく書いていますね。」「もっともっと書いて、読者とのルールのつくり方を勉強したら、いい作家になると思います。」
逢坂剛
男51歳
38 4点「すでに書かれていながら、見逃されていた歴史の狭間に目を向けて、それをフィクション化していく腕はなかなかのものだと思います。」「表題作の「闇の松明」をとります。他の作品にもそれぞれ工夫はありますが、むしろ平均点を下げているような感じがあります。」「(引用者注:「闇の松明」では)主人公の造形がかなり面白く書けています。」
長部日出雄
男60歳
20 3点「私は「尼子悲話」というのが一番面白かったんです」「全体に大変手堅い、堅実な書き方ですが、一家をなすには、やはりこの堅実な書き方を、もう一つ突き抜けた魅力とか個性が欲しい。」
山田太一
男60歳
28 3.5点「近代の目で武士をとらえるというところから抜け出して、武士がいわばその時代の美意識で死ぬとか、歴史や状況のただの受身の犠牲者ではないという味わいは、この作者の持味なのかなと思って楽しんで読みました。しかし、それが少し勇み足になっているようにも感じました。」「物語や人物をとらえるスタイルがもうひとつ決まらないもどかしさが減点の理由です。」
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他の候補作
帚木蓬生
『閉鎖病棟』
篠田節子
『聖域』
藤田宜永
『鋼鉄の騎士』
重松清
『見張り塔から ずっと』
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候補者・作品
藤田宜永男45歳×各選考委員 
『鋼鉄の騎士』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男60歳
36 4点「とにかく大変な力業ですが、欠点を挙げようと思ったらたくさんある小説だと思います。」「この人は嘘をここまでつき切るという能力を、これからさらにこの上に積み重ねていってくれるだろうという気がするし、エンターテインメントでありながら、一つの思想も作品に垣間見えています。」「もうひとつチャーミングでない点が惜しいですね。」
井上ひさし
男60歳
27 4点「この筆力、腕力、努力に対しては素直に脱帽します。」「しかし、これだけ厚いものを読んでくれている読者に対してはちょっと見返りが少ないんじゃないか。例えば、人間関係の感動です。どうだ、人間っていうのはすごいだろうという、そのへんの報われ方が少ない。」「せっかくつくった宇宙、つまり時間と空間がだんだん痩せ細って行っている印象がある。」
逢坂剛
男51歳
64 4点「それぞれの人を実に誠実に面倒を見ているので、時間がかかり過ぎて、話が真っ直ぐ行かずジグザグに進んでいる。」「ただ、ヨーロッパ現代史を背景にして、日本人が活躍する小説というのは、非常に数が少ないし、まだ未開拓の分野なんですね。そこに挑戦したというところを、私は高く評価したいと思います。」「私の最大の不満は、主人公がほとんど成長せずに小説が終わってしまう、というところです。」「せめて千八百枚ぐらいで、もうちょっと締まればなあ。」
長部日出雄
男60歳
37 3.5点「レースの話だけにしぼってもよかったんじゃないでしょうか。」「途中で、ついていくのに苦労する気がしたのは、あまりに何もかも欲張って要素を入れ過ぎて、焦点をしぼり切れなかったところがあったからだと思うんです。」
山田太一
男60歳
44 4.5点「非常に長い作品なのに、大勢の人物全部の面倒をきちっと、最後まで見ていて、これはやはりたいした事だと思いました。」「レースと革命は同じだというか、プロセスの部分での情念は同じだという作者の思いには、かなり説得力があり、ひきこまれました。」「ただ、これだけの大作なのに、読み終わっても主人公が、癖とか身振りに人とちがう魅力を持つ人物として浮かんできませんでした。」
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他の候補作
帚木蓬生
『閉鎖病棟』
篠田節子
『聖域』
高橋直樹
『闇の松明』
重松清
『見張り塔から ずっと』
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候補者・作品
重松清男32歳×各選考委員 
『見張り塔から ずっと』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男60歳
34 4点「この小説は怖いですよ。これだけ怖い小説というのは、なかなか簡単に書けない。」「しかし、これは今回、一貫して言っている事ですが、やはり懐が狭い。この方法論では出来ないのかもしれないが、もう少し大きい作品をつくるということを心がけると、この人はもっともっと可能性があるんじゃないかという気がします。」
井上ひさし
男60歳
44 3点「この小説に書かれているような世の中、なんだかいやだなということがほんの少し評価に影響したかもしれません。」「とても知的なんですが、人事百般に対してやや冷笑的になっている。それが少し鼻についてくるところがあります。」「表面的に、ではなく、深いところから読者を元気づけるような作品へも挑戦してくださったらと、思います。」「「陽だまりの猫」という短篇はいい作品ですね。前に進む力があります。」
逢坂剛
男51歳
47 4点「選考のために読みましたが、読めば読むほど気分が落ち込んでくる小説ですね。」「エンターテインメントという読み方からすると、どうしても気分が乗らない。」「ただ、とても小説づくりのうまい人だと思います。」「候補作中では、帚木さんと並ぶくらいの文章のうまさだと思いました。」「心理の読みも非常にすぐれた作家です。」
長部日出雄
男60歳
42 3.5点「この人の作風は、あまり細かく書き込まず簡略化した筆致なので、とても読みやすいし、よくわかります。ただ、「カラス」のようにこれが成功すればいいのですが、うまくいかない場合は、図式的な感じがしてくるんです。「扉を開けて」、「陽だまりの猫」と続けて読んでいくと、それぞれにテーマが違って、狙いも違うんですが、同工異曲だと感じてしまう。」
山田太一
男60歳
35 4.5点「(引用者注:「陽だまりの猫」は)とてもよく出来てると思いました。「分身」という手法自体は平凡かもしれませんが、その書き分けがとてもうまく行っています。」「「陽だまりの猫」だけだったら、五・〇でもいいというくらい入れ込んでいるんです。」
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他の候補作
帚木蓬生
『閉鎖病棟』
篠田節子
『聖域』
高橋直樹
『闇の松明』
藤田宜永
『鋼鉄の騎士』
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