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第7回
山本周五郎賞
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平成5年/1993年度
(平成6年/1994年5月12日決定発表/『小説新潮』平成6年/1994年7月号選評掲載)
選考委員  阿刀田高
男59歳
井上ひさし
男59歳
逢坂剛
男50歳
長部日出雄
男59歳
山田太一
男59歳
選評総行数  228 236 211 215 208
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
久世光彦 『一九三四年冬―乱歩』
男59歳
74 59 58 39 32
坂東眞砂子 『狗神』
女36歳
53 47 46 62 56
海老沢泰久 『帰郷』
男44歳
48 59 58 48 55
安部龍太郎 『彷徨える帝』
男38歳
48 69 49 66 62
         
年齢の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『小説新潮』平成6年/1994年7月号
1行当たりの文字数:19字


選考委員
阿刀田高男59歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数228 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
久世光彦
男59歳
74 4.5点「「梔子姫」という乱歩の作品を久世さんが書いてしまい、しかも乱歩より乱歩的と言っていいくらいな作品に仕上がっている。それを書き遂せたということは非常に新しい試みです。」「一番の不満は、(引用者中略)「梔子姫」はどうなったんだということです。「梔子姫」が乱歩の作品として、後世に残らなかった理由がどこにも書いてない。」「私は他との比較ということでなくても、この作品を読んだ時に、ああ、この一年の成果として評価するにたる作品だと、そういうふうに素直に思えましたね。」
坂東眞砂子
女36歳
53 4点「職業作家としてホラーを書いていく時、あまり厳密なことを考えていくと、作品が書けなくなってしまう。この小説ぐらいの程のよさだと、どんどん書けていくだろう」「非常にうまい人ですが、多少稚拙な面もあります。細かい点なのですが、たとえば、人間のプレゼンテーションの仕方があまりうまくない。」「推理作家協会の理事長としては、言いにくいことなんですが、ホラーを離れた味わいみたいなものも欲しかったなという気がしますね。」
海老沢泰久
男44歳
48 4点「連作短篇というのは、ひとつひとつの短篇が優れているのと同時に、読み終わった時に、そこから何か新しいものが出てこなければ意味がないと思うんです。」「一篇一篇は優れているのですが、短篇集として評価すると、どうしても薄味ですね。」「海老沢さんの本当によい作品が俎上に載らなかったということは、一番の不運かもしれないですね、本当にお気の毒です。」
安部龍太郎
男38歳
48 4点「力技の小説で、史料的にも厚いし、充分にレベルに達している小説です。」「ただ、敢えて言えば、小説としての魅力に乏しい。小説を読む楽しみに引き込まれていかない。」「天皇というのは日本の歴史にとって大変大きな意味を持つ存在だったと思うのですが、作者なりの史観というものが、出てこないんです。」
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他の選考委員
井上ひさし
逢坂剛
長部日出雄
山田太一
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選考委員
井上ひさし男59歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数236 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
久世光彦
男59歳
59 5点「僕はこの文章力にはまったく感心しました。(引用者中略)実際に書いてはいないけれど、文章の後ろから、昭和ひと桁の雰囲気がふわっと浮き上がってくる。」「乱歩になってみたり、乱歩をからかってみたり、調べたことを書いたり、きっと楽しい仕事だったと思います。その楽しさがこっちに伝わってきますし、本当にいい小説です。」「色々と細かいミスや疑問点はあるんですが、でもそういう疑問も全部、なんかへんな構造があって呑み込まれてしまうんです。」
坂東眞砂子
女36歳
47 4点「計算がきちっとできていて、読んでゆくにつれ少しずつ面白くなっていきます。文章が非常に頑丈で、いい形容もたくさんある。」「最後がきっちり終わってないんですね。」「プロローグとエピローグという枠はいらなかったんじゃないかという気もしますね。」
海老沢泰久
男44歳
59 4点「基本語彙を決め、辞書から取り出してきたような美辞麗句を避けて、普通の言葉で人生を書こうという方法論が、この短篇にはきっとあると思います。(引用者中略)これは目立たない実験で、誤解を受けやすい実験ですが、そこのところは買いたいと思います。」「「夏の終りの風」は、五点です。こういう短篇がもう一作あったら、問題なく五点をつけられるんですけど、他の作品になんとなく力がない。」
安部龍太郎
男38歳
69 4点「筆力があり、作家的腕力もある。色々な手を考え出し、立回りを、愛欲場面をおもしろいものにしています。」「しかし、(引用者中略)小説の面白さとなると話は別ですね。」「作者に新しい史観があれば、主人公たちもそれを嬉々として演じることができるんですが、史観が曖昧で、手腕だけが浮き上がって、小説的な、そういう感動はついになかった。」「とにかく、読むのにものすごい時間がかかります。読むほうの意識をぶつぶつ切ってしまう。」
  「(引用者注:得点結果が)例年と比べるとはっきりしていますね。」
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他の選考委員
阿刀田高
逢坂剛
長部日出雄
山田太一
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選考委員
逢坂剛男50歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数211 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
久世光彦
男59歳
58 4.5点「知的興奮を味わえる大人の小説ですね。」「文章力はすぐれているし、言語感覚も非常に鋭い。」「作中作の「梔子姫」は、浪漫派の作品らしくむしろ未完に終わらせた方がよかった。完結させたことで、逆に浪漫派としての結構が崩れたと思います。」「私の場合、「梔子姫」は「狗神」より怖かったですね。」
坂東眞砂子
女36歳
46 4点「期待を上回るほどの新しさはあまりなく、横溝正史さんが終戦直後に色々な形でやっていることと、さして違わないという気がしますね。」「文章は非常に女性らしい感性があっていいと思いますが、とくに際立ってうまいといえるかどうか……。」「すっと読めて、可もなく不可もなく、終わってしまったわけです。」「この人は、風景描写とか生活描写はうまいですね。」
海老沢泰久
男44歳
58 3点「ストーリーの展開も、行き当たりばったりなところがあって、いったい何を書きたいのかよくわからない。」「始まって終わるまでの間に、なんらかの成長がなくてはいけないと思うのですが、どの短篇も似たりよったりで、あまり変化がない。」「淡々と単調に書くことが小説だ、と考える作家志望の人にはいいお手本かもしれませんが、私の場合どうしてもこれ以上の点はつけられなかった、ということです。」
安部龍太郎
男38歳
49 4点「物語を引っ張っていく大きな力、まさにうねりというものが欠けていますね。そのために、小さな欠点が目についてしまう。」「また、人物の造形力が、もうひとつないのではないかとも思いました。範冬も宗十郎も、どうしても人物のイメージが湧いてこない。」「視点がばらばらに入ってくるので、なかなか感情移入できないという面も、出てくるんじゃないでしょうか。」「でもこの作者は、物語を語ろうという意欲がすごく感じられますね。」
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他の選考委員
阿刀田高
井上ひさし
長部日出雄
山田太一
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選考委員
長部日出雄男59歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数215 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
久世光彦
男59歳
39 4点「文章力、これを私は一番感心しました。」「山場が非常に視覚的に書かれていますね。この作者はやはり映像の専門家だなと思いました。」「驚きとか恐怖とかは、実際にあり得なくてもいかにもありそうな具体性とか実感から生まれるもので、超現実主義の超ではなく現実主義のほうがとても大事なんですね。文章でそれをやるには、何かもうひと工夫欲しかったような気がします。」
坂東眞砂子
女36歳
62 4.5点「ヒロインの坊之宮美希が、紙漉きをやっていますが、和紙を漉く手作業が、付け焼き刃ではない知識で書かれています。」「一度目は興趣に惹かれて一気に読んで、二度目に読んだ時に、筋の組み立てが実によく計算されているなと思いました。」
海老沢泰久
男44歳
48 4点「一番好きなのが「夏の終りの風」です。(引用者中略)ちょうど人生の上り坂と下り坂が交錯する時間と場所がいい雰囲気で書けていて、この町を舞台にもっと連作の短篇を書いてほしかった。」「少なくとも、この中の二作か三作は、賞をとらなかったとしても、僕の記憶にずっと残るという気がします。」
安部龍太郎
男38歳
66 4.5点「この小説は歴史小説と伝奇ロマンを融合させるという大変興味深い試みをしていて、しかもその試みを実現できるに足る、かなり包容力の大きい文体、柔軟で力強い文体というのをつくり出していると思います。」「うねりがないというか、もう少し、物語の山と谷の差を大きくして、めりはりをつけてもらいたかったですね。」「僕は、色々、欠点があってもなおかつ、最終的には「彷徨える帝」を支持したいと思って来たんですよ。」「この人は一作ごとに飛躍する幅が大きいんです。」
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他の選考委員
阿刀田高
井上ひさし
逢坂剛
山田太一
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選考委員
山田太一男59歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数208 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
久世光彦
男59歳
32 5点「この作品は、文章でしか書けない世界を、遂に書き通したという快感がありました。」「よくできたいい作品ですし、力作でもあると思います。」「強いてマイナス点を言えば、作中作の「梔子姫」(引用者中略)は久世さんが書いたわけですよね。それにしては、ちょっと自分で褒めすぎてないか(笑)。他の部分の洗練に比べて少し野暮なんじゃないかという気がしました。」
坂東眞砂子
女36歳
56 4点「この小説はコンストラクションがとてもしっかりしていて気持ちがよかった。」「美点だし、新しいと思ったのは、美希という主人公は、高知の土俗的な土地を一度も離れたことがないのですが、それにもかかわらず、土俗的な臭いがあまりしません。」「このような終り方をするなら、現実と縁を切る、物語の枠がもう一つ必要なのではないかと思いました。」「怖いとか恐怖小説だとかというような点で期待され、その期待に応えようとあまりなさらないほうがいいと思いますね。」
海老沢泰久
男44歳
55 3.5点「スタイルをつくろうという意欲はよく分かりますが、方向に少し無理はないでしょうか?」「女がきれいだとかいうことも、ほとんど文章上の証明なしで語られてしまう。スタイルに、もっと意識的になって、主人公に対しても大人の目がもっとないと、気持ちよく酔えないというように思いました。」
安部龍太郎
男38歳
62 4点「長い作品をよく考えて書き通されたなあ、と敬意を抱きました。ただかなり読みにくく、時間がかかりましたね。それは、宗十郎と範冬の両方に等分に目が行っているという相対主義で、情熱が高まりにくいせいなのかな、と思いました。」「帝の位置が非常に曖昧で、どこに力を入れて読んだらいいのかがつかみにくく、興奮が来ない。」
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他の選考委員
阿刀田高
井上ひさし
逢坂剛
長部日出雄
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受賞者・作品
久世光彦男59歳×各選考委員 
『一九三四年冬―乱歩』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男59歳
74 4.5点「「梔子姫」という乱歩の作品を久世さんが書いてしまい、しかも乱歩より乱歩的と言っていいくらいな作品に仕上がっている。それを書き遂せたということは非常に新しい試みです。」「一番の不満は、(引用者中略)「梔子姫」はどうなったんだということです。「梔子姫」が乱歩の作品として、後世に残らなかった理由がどこにも書いてない。」「私は他との比較ということでなくても、この作品を読んだ時に、ああ、この一年の成果として評価するにたる作品だと、そういうふうに素直に思えましたね。」
井上ひさし
男59歳
59 5点「僕はこの文章力にはまったく感心しました。(引用者中略)実際に書いてはいないけれど、文章の後ろから、昭和ひと桁の雰囲気がふわっと浮き上がってくる。」「乱歩になってみたり、乱歩をからかってみたり、調べたことを書いたり、きっと楽しい仕事だったと思います。その楽しさがこっちに伝わってきますし、本当にいい小説です。」「色々と細かいミスや疑問点はあるんですが、でもそういう疑問も全部、なんかへんな構造があって呑み込まれてしまうんです。」
逢坂剛
男50歳
58 4.5点「知的興奮を味わえる大人の小説ですね。」「文章力はすぐれているし、言語感覚も非常に鋭い。」「作中作の「梔子姫」は、浪漫派の作品らしくむしろ未完に終わらせた方がよかった。完結させたことで、逆に浪漫派としての結構が崩れたと思います。」「私の場合、「梔子姫」は「狗神」より怖かったですね。」
長部日出雄
男59歳
39 4点「文章力、これを私は一番感心しました。」「山場が非常に視覚的に書かれていますね。この作者はやはり映像の専門家だなと思いました。」「驚きとか恐怖とかは、実際にあり得なくてもいかにもありそうな具体性とか実感から生まれるもので、超現実主義の超ではなく現実主義のほうがとても大事なんですね。文章でそれをやるには、何かもうひと工夫欲しかったような気がします。」
山田太一
男59歳
32 5点「この作品は、文章でしか書けない世界を、遂に書き通したという快感がありました。」「よくできたいい作品ですし、力作でもあると思います。」「強いてマイナス点を言えば、作中作の「梔子姫」(引用者中略)は久世さんが書いたわけですよね。それにしては、ちょっと自分で褒めすぎてないか(笑)。他の部分の洗練に比べて少し野暮なんじゃないかという気がしました。」
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他の候補作
坂東眞砂子
『狗神』
海老沢泰久
『帰郷』
安部龍太郎
『彷徨える帝』
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候補者・作品
坂東眞砂子女36歳×各選考委員 
『狗神』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男59歳
53 4点「職業作家としてホラーを書いていく時、あまり厳密なことを考えていくと、作品が書けなくなってしまう。この小説ぐらいの程のよさだと、どんどん書けていくだろう」「非常にうまい人ですが、多少稚拙な面もあります。細かい点なのですが、たとえば、人間のプレゼンテーションの仕方があまりうまくない。」「推理作家協会の理事長としては、言いにくいことなんですが、ホラーを離れた味わいみたいなものも欲しかったなという気がしますね。」
井上ひさし
男59歳
47 4点「計算がきちっとできていて、読んでゆくにつれ少しずつ面白くなっていきます。文章が非常に頑丈で、いい形容もたくさんある。」「最後がきっちり終わってないんですね。」「プロローグとエピローグという枠はいらなかったんじゃないかという気もしますね。」
逢坂剛
男50歳
46 4点「期待を上回るほどの新しさはあまりなく、横溝正史さんが終戦直後に色々な形でやっていることと、さして違わないという気がしますね。」「文章は非常に女性らしい感性があっていいと思いますが、とくに際立ってうまいといえるかどうか……。」「すっと読めて、可もなく不可もなく、終わってしまったわけです。」「この人は、風景描写とか生活描写はうまいですね。」
長部日出雄
男59歳
62 4.5点「ヒロインの坊之宮美希が、紙漉きをやっていますが、和紙を漉く手作業が、付け焼き刃ではない知識で書かれています。」「一度目は興趣に惹かれて一気に読んで、二度目に読んだ時に、筋の組み立てが実によく計算されているなと思いました。」
山田太一
男59歳
56 4点「この小説はコンストラクションがとてもしっかりしていて気持ちがよかった。」「美点だし、新しいと思ったのは、美希という主人公は、高知の土俗的な土地を一度も離れたことがないのですが、それにもかかわらず、土俗的な臭いがあまりしません。」「このような終り方をするなら、現実と縁を切る、物語の枠がもう一つ必要なのではないかと思いました。」「怖いとか恐怖小説だとかというような点で期待され、その期待に応えようとあまりなさらないほうがいいと思いますね。」
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他の候補作
久世光彦
『一九三四年冬―乱歩』
海老沢泰久
『帰郷』
安部龍太郎
『彷徨える帝』
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候補者・作品
海老沢泰久男44歳×各選考委員 
『帰郷』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男59歳
48 4点「連作短篇というのは、ひとつひとつの短篇が優れているのと同時に、読み終わった時に、そこから何か新しいものが出てこなければ意味がないと思うんです。」「一篇一篇は優れているのですが、短篇集として評価すると、どうしても薄味ですね。」「海老沢さんの本当によい作品が俎上に載らなかったということは、一番の不運かもしれないですね、本当にお気の毒です。」
井上ひさし
男59歳
59 4点「基本語彙を決め、辞書から取り出してきたような美辞麗句を避けて、普通の言葉で人生を書こうという方法論が、この短篇にはきっとあると思います。(引用者中略)これは目立たない実験で、誤解を受けやすい実験ですが、そこのところは買いたいと思います。」「「夏の終りの風」は、五点です。こういう短篇がもう一作あったら、問題なく五点をつけられるんですけど、他の作品になんとなく力がない。」
逢坂剛
男50歳
58 3点「ストーリーの展開も、行き当たりばったりなところがあって、いったい何を書きたいのかよくわからない。」「始まって終わるまでの間に、なんらかの成長がなくてはいけないと思うのですが、どの短篇も似たりよったりで、あまり変化がない。」「淡々と単調に書くことが小説だ、と考える作家志望の人にはいいお手本かもしれませんが、私の場合どうしてもこれ以上の点はつけられなかった、ということです。」
長部日出雄
男59歳
48 4点「一番好きなのが「夏の終りの風」です。(引用者中略)ちょうど人生の上り坂と下り坂が交錯する時間と場所がいい雰囲気で書けていて、この町を舞台にもっと連作の短篇を書いてほしかった。」「少なくとも、この中の二作か三作は、賞をとらなかったとしても、僕の記憶にずっと残るという気がします。」
山田太一
男59歳
55 3.5点「スタイルをつくろうという意欲はよく分かりますが、方向に少し無理はないでしょうか?」「女がきれいだとかいうことも、ほとんど文章上の証明なしで語られてしまう。スタイルに、もっと意識的になって、主人公に対しても大人の目がもっとないと、気持ちよく酔えないというように思いました。」
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他の候補作
久世光彦
『一九三四年冬―乱歩』
坂東眞砂子
『狗神』
安部龍太郎
『彷徨える帝』
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候補者・作品
安部龍太郎男38歳×各選考委員 
『彷徨える帝』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男59歳
48 4点「力技の小説で、史料的にも厚いし、充分にレベルに達している小説です。」「ただ、敢えて言えば、小説としての魅力に乏しい。小説を読む楽しみに引き込まれていかない。」「天皇というのは日本の歴史にとって大変大きな意味を持つ存在だったと思うのですが、作者なりの史観というものが、出てこないんです。」
井上ひさし
男59歳
69 4点「筆力があり、作家的腕力もある。色々な手を考え出し、立回りを、愛欲場面をおもしろいものにしています。」「しかし、(引用者中略)小説の面白さとなると話は別ですね。」「作者に新しい史観があれば、主人公たちもそれを嬉々として演じることができるんですが、史観が曖昧で、手腕だけが浮き上がって、小説的な、そういう感動はついになかった。」「とにかく、読むのにものすごい時間がかかります。読むほうの意識をぶつぶつ切ってしまう。」
逢坂剛
男50歳
49 4点「物語を引っ張っていく大きな力、まさにうねりというものが欠けていますね。そのために、小さな欠点が目についてしまう。」「また、人物の造形力が、もうひとつないのではないかとも思いました。範冬も宗十郎も、どうしても人物のイメージが湧いてこない。」「視点がばらばらに入ってくるので、なかなか感情移入できないという面も、出てくるんじゃないでしょうか。」「でもこの作者は、物語を語ろうという意欲がすごく感じられますね。」
長部日出雄
男59歳
66 4.5点「この小説は歴史小説と伝奇ロマンを融合させるという大変興味深い試みをしていて、しかもその試みを実現できるに足る、かなり包容力の大きい文体、柔軟で力強い文体というのをつくり出していると思います。」「うねりがないというか、もう少し、物語の山と谷の差を大きくして、めりはりをつけてもらいたかったですね。」「僕は、色々、欠点があってもなおかつ、最終的には「彷徨える帝」を支持したいと思って来たんですよ。」「この人は一作ごとに飛躍する幅が大きいんです。」
山田太一
男59歳
62 4点「長い作品をよく考えて書き通されたなあ、と敬意を抱きました。ただかなり読みにくく、時間がかかりましたね。それは、宗十郎と範冬の両方に等分に目が行っているという相対主義で、情熱が高まりにくいせいなのかな、と思いました。」「帝の位置が非常に曖昧で、どこに力を入れて読んだらいいのかがつかみにくく、興奮が来ない。」
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他の候補作
久世光彦
『一九三四年冬―乱歩』
坂東眞砂子
『狗神』
海老沢泰久
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