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平成8年/1996年度
(平成9年/1997年5月14日決定発表/『小説新潮』平成9年/1997年7月号選評掲載)
選考委員  阿刀田高
男62歳
井上ひさし
男62歳
逢坂剛
男53歳
長部日出雄
男62歳
山田太一
男62歳
選評総行数  158 208 140 200 148
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
真保裕一 『奪取』
男35歳
28 69 31 62 34
篠田節子 『ゴサインタン』
女41歳
35 49 42 94 48
安部龍太郎 『関ケ原連判状』
男41歳
32 29 21 27 19
江國香織 『落下する夕方』
女33歳
15 23 32 15 26
玉岡かおる 『をんな紋―まろびだす川』
女40歳
31 34 13 30 21
         
年齢の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『小説新潮』平成9年/1997年7月号
1行当たりの文字数:19字


選考委員
阿刀田高男62歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数158 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
真保裕一
男35歳
28 4点「ヤクザはぜんぜんヤクザらしくない、偽札造りにそこまで情念を燃やす内なる必然性というのは何かというと、彼はただ偽札を造りたかったということしかないわけです。」「今まで真保さんが書いてきた作品は、もう少し実質的な問題をちゃんと見据えていたような気がする。だから、この作品はあまり、よい出来ではないという感じが否めません。」
篠田節子
女41歳
35 4.5点「非常に大きなモチーフを据えて書かれていて、その志を評価したいなという気がいたしました。」「この人が使っていらっしゃる超自然というものは、この小説になじまないと思うんです。(引用者中略)ただ、バーンと手を叩いたら金庫が開いちゃうのは、僕はやっぱりいかんと思う。」
安部龍太郎
男41歳
32 3点「読みにくかったですね。特に前半、これだけのことを書くのに、前座からこんなにいろんな人を登場させ、事件をいろいろ出さなくてもいいんじゃないか。」「連判状はどうなったのか。キャスティングボートになるすごいものが出るぞ、出るぞと言っておきながら、結局きちっと出てきてくれない。」
江國香織
女33歳
15 3.5点「我流の用語だけれども、一種のめくばせ小説なんですね。めくばせして、わかるわ、ウン、わかるわって、大切なことは語らずに、(引用者中略)だから、めくばせを感じない人には、どうしようもない世界だなと思うんです。」「ただ、感情の探り方とか、撫で方、それを表す会話は、本当に巧みな書き手だとおもいますし、そこは魅力的でした。」
玉岡かおる
女40歳
31 3.5点「私はこの作家を、もうすでにしてプロフェッショナルを感じさせる端倪すべからざる腕力を持った作家だと、トータルとしては思います。」「いずれにせよ長い小説の部分でしかない。だからなんか古い話だなという気がするわけですよ。」
  「受賞作は一作なんですよね。」「機械的に投票でやれば、(引用者注:「奪取」と「ゴサインタン」は)三対二になるでしょうが、それでいいかというと、ちょっと違うんですね。」
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他の選考委員
井上ひさし
逢坂剛
長部日出雄
山田太一
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選考委員
井上ひさし男62歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数208 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
真保裕一
男35歳
69 5点「候補作中、無我夢中で読みふけった作品はこれだけでした。」「うまい仕掛けだったと思うのは、先行するチーム、それも失敗したチームを用意して、現チームと対比させたことですね。」「最後に、自分の書いた世界全体をぶっ壊してしまおうという気構えに感心しました。」「一万円札に対する徹底的な抵抗小説、いわば上出来のレジスタンス小説として面白く読みました。」
篠田節子
女41歳
49 4点「これは五分の四のところまでたいへんな傑作だと思います。」「なぜ大自然に行くとそこに神がいるのか。この考えはもう破産したと思うので、そこが引っかかったのです。」「最後の五分の一の話の運びが段取りになってしまった。(引用者中略)文章の密度は粗くなる、作者の気概も弱くなる。」
安部龍太郎
男41歳
29 3.5点「この作家の着眼のおもしろさ、そして骨太な構想力に、いつも敬服しています。ただし、前半は入口が見つからないでいらいらしますね。意欲的すぎて、小説自体はちっとも飛翔しない。」「それから時折、理解しにくい悪文が現れます。」
江國香織
女33歳
23 3点「とにかくこの小説には、社会や世の中の動きがぜんぜん出てこないから、すごい。これも今風なのかもしれません。」「ここに登場する若者たちは、清潔だけれども、そろって愚鈍です。ここまで愚鈍では、関係など成立しない。なんだか唖然として三点です。巧者な小説ですが、とてもだるい。」
玉岡かおる
女40歳
34 3点「いかにも居そうな人物を小説の黄金律に忠実に配置していますから、安定感があって、手堅い作品ですね。」「プロローグが、読者を誤解させているように思います。」「それから、最後の山場が、小説でなくなった。うわあーっといろんなことを書いているうちにわけがわからなくなって混乱している。」
  「いいものが二作あったら二作でもよいかが焦点ですね。」
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他の選考委員
阿刀田高
逢坂剛
長部日出雄
山田太一
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選考委員
逢坂剛男53歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数140 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
真保裕一
男35歳
31 4.5点「いかにもコンピューター世代の小説だなと感じましたが、そのせいなのか、人物造形がわりと淡泊ですよね。」「読者の興味は、偽札の造り方そのものよりも、むしろ印刷会社に忍び込んで、スキャナーなんかを使っている時に、誰かが見回りに来てばれちゃうんじゃないかとハラハラ、ドキドキするというほうに向かうだろうと思うんです。」
篠田節子
女41歳
42 4.5点「主たるテーマではないんですけれども、自然破壊に対する批判とか、農村の共同体への憧れなどという視点が見られて、これはただのエンターテインメントではない、という感じがしました。」「ただ、読んでいて楽しい、という感じがあまりしないのが欠点と言えば欠点」
安部龍太郎
男41歳
21 4点「この作品は良くも悪くも、面白いけれど後に残らないという、東映のチャンバラ映画なんですね。」「チャンバラ映画的部分と、史実としての古今伝授の部分とが、乖離している。そのために小説としてのバランスが崩れて、リアリティを欠く結果になったと思います。」
江國香織
女33歳
32 3.5点「これが、三十歳前後の人の作品だとすると、もう少し年相応の小説であってほしい、という感じがしました。感性とスタイルがあれば、とりあえず小説は書けるという、ひとつの例じゃないかとおもいました。」「華子があまり魅力的じゃないんですよね。(引用者中略)私だったら惚れないし、私と同世代の男たちも、惚れないと思う。」
玉岡かおる
女40歳
13 4点「私はたぶんこの小説は大河小説の第一部ではないか、と思うんです。」「関西弁の会話は非常に精彩があり、躍動感もあって感心しました。こんなに会話のうまい人は、めったにいないだろうとさえ思いました。」
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他の選考委員
阿刀田高
井上ひさし
長部日出雄
山田太一
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選考委員
長部日出雄男62歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数200 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
真保裕一
男35歳
62 4.5点「私が、この作品でいちばん感心したのは構成です。」「意表をつく面白い変なじじいが出てくる。このじいさんが出てきてから、僕は完全にこの小説にのりました。」「この小説はたしかに千四百枚必要で、なおかつ、非常にスピーディなテンポのある文体で一気に読ませたという点を評価したい。」
篠田節子
女41歳
94 5点「女から見て、この男(引用者注:主人公輝和)がいかに魅力がないかということが実にうまく書かれていますね。」「ネパールへ行ってから、あのまるで魅力のない、異文化について何ひとつ知らなかった男が、人生と世界の真実に目覚めて変わっていく。」
安部龍太郎
男41歳
27 4点「古今伝授というのは、歴史的な事実で、そういう文化的なものが一国の合戦の大勢を決したというのはとても面白い話ですね。」「もっと古今伝授の話自体のもっている面白さにしぼってほしかったと思います。ただ、この作者の文章とか描写力は、一作ごとに進歩しているんで、もうひとつ上の段階まで化けてほしいという、その期待度をこめて四点とさせていただきます。」
江國香織
女33歳
15 4点「とてもうまい小説で、文章も軽快で明晰で読みやすいと思いました。」「なるほど、こうした感覚というのはたしかに今あるだろうなということを、僕みたいな読者にも感じさせてくれたんで、これはなかなかいい小説だというふうに読みました。」
玉岡かおる
女40歳
30 4点「この作品にはどうもどっかで見たか、何かで読んだことがあるような、デジャ・ビュというのを感じるんです。でも、これはプラス・マイナス双方あると思います。」「この作品は、大河小説としての形が整ったあと、その完成を待って評価されるべき性質のものではないでしょうか。」「僕はこの人の、かなりいろんなことを咀嚼できる力量と筆力に四・〇をつけました。」
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他の選考委員
阿刀田高
井上ひさし
逢坂剛
山田太一
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選考委員
山田太一男62歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数148 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
真保裕一
男35歳
34 5点「内面はもとより、いまの時代についての聞いたふうな解釈や意味あり気なところもまったくない。セックスについても、挨拶程度にしか触れないというかたちで、読んでいくうちに、ウーン、いまの若い人の小説だなあ、と快い興奮がありました。」
篠田節子
女41歳
48 4.5点「旧家の財産を、淑子という女の人が入ってくることで、どんどん失っていくあたりはほんとに面白かったですね。」「(引用者注:主人公の輝和が)ごく普通の感覚を保っていることが、読者を置き去りにしないための非常な力になっているのではないでしょうか。」「終り部分について(引用者中略)ステレオタイプじゃないか、と思いました。」
安部龍太郎
男41歳
19 4点「この小説の主人公は、形としてはやはり石堂多門というフィクションの人物だと思うんです。(引用者中略)その情熱の根拠がどうもはっきりしない。」「多門とか蒲生源兵衛といったフィクションの人物はあまり魅力がありません。そのために、重みを失っているのではないかなと思いました。」
江國香織
女33歳
26 4点「僕は散文詩みたいな世界だというふうに思いました。描かれているのは、現実ではなくて、ヴァーチャルな夢みたいなものですね。」「これだけの才能の人が、他者を呼びこまずに自分の頭の中だけで、趣味趣向、感覚の世界で完結してはもったいないんじゃないかと思いました。」
玉岡かおる
女40歳
21 3.5点「近代的な解釈をしたりしないで、出来るだけその時代の人たちの生きた事実に身を寄せて書こうという姿勢は、とても素晴らしいし、敬服もしました。」「ただ、そういう安定した世界の中に、なんだか頭をかきまわされるような、ちょっと不思議な文章があるんですね。」「よく書けていると思いますが、何度も読んだような世界なので、あまりわくわく読むというわけにいきませんでした。」
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他の選考委員
阿刀田高
井上ひさし
逢坂剛
長部日出雄
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受賞者・作品
真保裕一男35歳×各選考委員 
『奪取』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男62歳
28 4点「ヤクザはぜんぜんヤクザらしくない、偽札造りにそこまで情念を燃やす内なる必然性というのは何かというと、彼はただ偽札を造りたかったということしかないわけです。」「今まで真保さんが書いてきた作品は、もう少し実質的な問題をちゃんと見据えていたような気がする。だから、この作品はあまり、よい出来ではないという感じが否めません。」
井上ひさし
男62歳
69 5点「候補作中、無我夢中で読みふけった作品はこれだけでした。」「うまい仕掛けだったと思うのは、先行するチーム、それも失敗したチームを用意して、現チームと対比させたことですね。」「最後に、自分の書いた世界全体をぶっ壊してしまおうという気構えに感心しました。」「一万円札に対する徹底的な抵抗小説、いわば上出来のレジスタンス小説として面白く読みました。」
逢坂剛
男53歳
31 4.5点「いかにもコンピューター世代の小説だなと感じましたが、そのせいなのか、人物造形がわりと淡泊ですよね。」「読者の興味は、偽札の造り方そのものよりも、むしろ印刷会社に忍び込んで、スキャナーなんかを使っている時に、誰かが見回りに来てばれちゃうんじゃないかとハラハラ、ドキドキするというほうに向かうだろうと思うんです。」
長部日出雄
男62歳
62 4.5点「私が、この作品でいちばん感心したのは構成です。」「意表をつく面白い変なじじいが出てくる。このじいさんが出てきてから、僕は完全にこの小説にのりました。」「この小説はたしかに千四百枚必要で、なおかつ、非常にスピーディなテンポのある文体で一気に読ませたという点を評価したい。」
山田太一
男62歳
34 5点「内面はもとより、いまの時代についての聞いたふうな解釈や意味あり気なところもまったくない。セックスについても、挨拶程度にしか触れないというかたちで、読んでいくうちに、ウーン、いまの若い人の小説だなあ、と快い興奮がありました。」
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他の候補作
篠田節子
『ゴサインタン』
安部龍太郎
『関ケ原連判状』
江國香織
『落下する夕方』
玉岡かおる
『をんな紋―まろびだす川』
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受賞者・作品
篠田節子女41歳×各選考委員 
『ゴサインタン』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男62歳
35 4.5点「非常に大きなモチーフを据えて書かれていて、その志を評価したいなという気がいたしました。」「この人が使っていらっしゃる超自然というものは、この小説になじまないと思うんです。(引用者中略)ただ、バーンと手を叩いたら金庫が開いちゃうのは、僕はやっぱりいかんと思う。」
井上ひさし
男62歳
49 4点「これは五分の四のところまでたいへんな傑作だと思います。」「なぜ大自然に行くとそこに神がいるのか。この考えはもう破産したと思うので、そこが引っかかったのです。」「最後の五分の一の話の運びが段取りになってしまった。(引用者中略)文章の密度は粗くなる、作者の気概も弱くなる。」
逢坂剛
男53歳
42 4.5点「主たるテーマではないんですけれども、自然破壊に対する批判とか、農村の共同体への憧れなどという視点が見られて、これはただのエンターテインメントではない、という感じがしました。」「ただ、読んでいて楽しい、という感じがあまりしないのが欠点と言えば欠点」
長部日出雄
男62歳
94 5点「女から見て、この男(引用者注:主人公輝和)がいかに魅力がないかということが実にうまく書かれていますね。」「ネパールへ行ってから、あのまるで魅力のない、異文化について何ひとつ知らなかった男が、人生と世界の真実に目覚めて変わっていく。」
山田太一
男62歳
48 4.5点「旧家の財産を、淑子という女の人が入ってくることで、どんどん失っていくあたりはほんとに面白かったですね。」「(引用者注:主人公の輝和が)ごく普通の感覚を保っていることが、読者を置き去りにしないための非常な力になっているのではないでしょうか。」「終り部分について(引用者中略)ステレオタイプじゃないか、と思いました。」
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他の候補作
真保裕一
『奪取』
安部龍太郎
『関ケ原連判状』
江國香織
『落下する夕方』
玉岡かおる
『をんな紋―まろびだす川』
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候補者・作品
安部龍太郎男41歳×各選考委員 
『関ケ原連判状』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男62歳
32 3点「読みにくかったですね。特に前半、これだけのことを書くのに、前座からこんなにいろんな人を登場させ、事件をいろいろ出さなくてもいいんじゃないか。」「連判状はどうなったのか。キャスティングボートになるすごいものが出るぞ、出るぞと言っておきながら、結局きちっと出てきてくれない。」
井上ひさし
男62歳
29 3.5点「この作家の着眼のおもしろさ、そして骨太な構想力に、いつも敬服しています。ただし、前半は入口が見つからないでいらいらしますね。意欲的すぎて、小説自体はちっとも飛翔しない。」「それから時折、理解しにくい悪文が現れます。」
逢坂剛
男53歳
21 4点「この作品は良くも悪くも、面白いけれど後に残らないという、東映のチャンバラ映画なんですね。」「チャンバラ映画的部分と、史実としての古今伝授の部分とが、乖離している。そのために小説としてのバランスが崩れて、リアリティを欠く結果になったと思います。」
長部日出雄
男62歳
27 4点「古今伝授というのは、歴史的な事実で、そういう文化的なものが一国の合戦の大勢を決したというのはとても面白い話ですね。」「もっと古今伝授の話自体のもっている面白さにしぼってほしかったと思います。ただ、この作者の文章とか描写力は、一作ごとに進歩しているんで、もうひとつ上の段階まで化けてほしいという、その期待度をこめて四点とさせていただきます。」
山田太一
男62歳
19 4点「この小説の主人公は、形としてはやはり石堂多門というフィクションの人物だと思うんです。(引用者中略)その情熱の根拠がどうもはっきりしない。」「多門とか蒲生源兵衛といったフィクションの人物はあまり魅力がありません。そのために、重みを失っているのではないかなと思いました。」
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他の候補作
真保裕一
『奪取』
篠田節子
『ゴサインタン』
江國香織
『落下する夕方』
玉岡かおる
『をんな紋―まろびだす川』
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候補者・作品
江國香織女33歳×各選考委員 
『落下する夕方』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男62歳
15 3.5点「我流の用語だけれども、一種のめくばせ小説なんですね。めくばせして、わかるわ、ウン、わかるわって、大切なことは語らずに、(引用者中略)だから、めくばせを感じない人には、どうしようもない世界だなと思うんです。」「ただ、感情の探り方とか、撫で方、それを表す会話は、本当に巧みな書き手だとおもいますし、そこは魅力的でした。」
井上ひさし
男62歳
23 3点「とにかくこの小説には、社会や世の中の動きがぜんぜん出てこないから、すごい。これも今風なのかもしれません。」「ここに登場する若者たちは、清潔だけれども、そろって愚鈍です。ここまで愚鈍では、関係など成立しない。なんだか唖然として三点です。巧者な小説ですが、とてもだるい。」
逢坂剛
男53歳
32 3.5点「これが、三十歳前後の人の作品だとすると、もう少し年相応の小説であってほしい、という感じがしました。感性とスタイルがあれば、とりあえず小説は書けるという、ひとつの例じゃないかとおもいました。」「華子があまり魅力的じゃないんですよね。(引用者中略)私だったら惚れないし、私と同世代の男たちも、惚れないと思う。」
長部日出雄
男62歳
15 4点「とてもうまい小説で、文章も軽快で明晰で読みやすいと思いました。」「なるほど、こうした感覚というのはたしかに今あるだろうなということを、僕みたいな読者にも感じさせてくれたんで、これはなかなかいい小説だというふうに読みました。」
山田太一
男62歳
26 4点「僕は散文詩みたいな世界だというふうに思いました。描かれているのは、現実ではなくて、ヴァーチャルな夢みたいなものですね。」「これだけの才能の人が、他者を呼びこまずに自分の頭の中だけで、趣味趣向、感覚の世界で完結してはもったいないんじゃないかと思いました。」
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他の候補作
真保裕一
『奪取』
篠田節子
『ゴサインタン』
安部龍太郎
『関ケ原連判状』
玉岡かおる
『をんな紋―まろびだす川』
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候補者・作品
玉岡かおる女40歳×各選考委員 
『をんな紋―まろびだす川』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
阿刀田高
男62歳
31 3.5点「私はこの作家を、もうすでにしてプロフェッショナルを感じさせる端倪すべからざる腕力を持った作家だと、トータルとしては思います。」「いずれにせよ長い小説の部分でしかない。だからなんか古い話だなという気がするわけですよ。」
井上ひさし
男62歳
34 3点「いかにも居そうな人物を小説の黄金律に忠実に配置していますから、安定感があって、手堅い作品ですね。」「プロローグが、読者を誤解させているように思います。」「それから、最後の山場が、小説でなくなった。うわあーっといろんなことを書いているうちにわけがわからなくなって混乱している。」
逢坂剛
男53歳
13 4点「私はたぶんこの小説は大河小説の第一部ではないか、と思うんです。」「関西弁の会話は非常に精彩があり、躍動感もあって感心しました。こんなに会話のうまい人は、めったにいないだろうとさえ思いました。」
長部日出雄
男62歳
30 4点「この作品にはどうもどっかで見たか、何かで読んだことがあるような、デジャ・ビュというのを感じるんです。でも、これはプラス・マイナス双方あると思います。」「この作品は、大河小説としての形が整ったあと、その完成を待って評価されるべき性質のものではないでしょうか。」「僕はこの人の、かなりいろんなことを咀嚼できる力量と筆力に四・〇をつけました。」
山田太一
男62歳
21 3.5点「近代的な解釈をしたりしないで、出来るだけその時代の人たちの生きた事実に身を寄せて書こうという姿勢は、とても素晴らしいし、敬服もしました。」「ただ、そういう安定した世界の中に、なんだか頭をかきまわされるような、ちょっと不思議な文章があるんですね。」「よく書けていると思いますが、何度も読んだような世界なので、あまりわくわく読むというわけにいきませんでした。」
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他の候補作
真保裕一
『奪取』
篠田節子
『ゴサインタン』
安部龍太郎
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