<img src="../images/title_senpyo.gif" alt="芥川賞選評の概要" width="276" height="297">

選評なし

候補作

評価

行数

評価

行数

評価

行数

評価

行数

評価

行数

評価

行数

評価

行数

石塚喜久三　「纏足の頃」

66枚

38歳

◎

□

○

△

○

小泉譲　「桑園地帯」

144枚

30歳

―

檀一雄　「吉野の花」

24枚

31歳

―

△

―

△

◎

△

劉寒吉　「翁」

58枚

36歳

△

―

■

□

△

譲原昌子　「故郷の岸」

146枚

31歳

―

相原とく子　「椎の実」

52枚

（不明）

―

○

―

辻勝三郎　「雁わたる」

55枚

27歳

―

□

―

欠席
書面回答

欠席
電文回答

年齢/枚数の説明

見方・注意点

このページの選評出典：『芥川賞全集　第三巻』昭和57年/1982年4月・文藝春秋刊　再録（初出：『文藝春秋』昭和18年/1943年9月号）
1行当たりの文字数：26字

選考委員

横光利一

45歳×各候補作　

総行数11　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
石塚喜久三	38歳	全	◎	6	「屈曲の多い劇的なテーマを、勁い韻文で引きぬいた情熱の烈しさが美しい。」「何より優れたところは、この大通俗味を帯びた手いっぱいの問題を、祈りの真心こめて一貫させた歌調の正しさにあるかと思う。」
小泉譲	30歳	全	―	0
檀一雄	31歳	全	―	0
劉寒吉	36歳	全	△	6	「考証に押し縮められた吐息が見えるが、難事な題材を破損少く耐え忍んで運んだ作者に敬意を表したい。この作者には一度小倉で会ったことがあるが、人物には種々な点で私は感服した。」
譲原昌子	31歳	全	―	0
相原とく子	（不明）	全	―	0
辻勝三郎	27歳	全	―	0

他の選考委員

選考委員

河上徹太郎

41歳×各候補作　

総行数15　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
石塚喜久三	38歳	全	◎	12	「之を推した気持には、そのごつごつした筆致の中に、此の平凡だが得難い素材に対し、ひたむきな意気込を感じたからである。」「お望みなら読者は此の作品を浪曼的と読んでも構わないのである。そこに作者の人柄のよさがある。」
小泉譲	30歳	全	―	0
檀一雄	31歳	全	△	2	「年功を経た、手堅い作品」
劉寒吉	36歳	全	△	2	「年功を経た、手堅い作品」
譲原昌子	31歳	全	―	0
相原とく子	（不明）	全	―	0
辻勝三郎	27歳	全	―	0
					「従来の芥川賞は、新人にしろ又苦節十年組にしろ、もうここいらで一人前になったとして、文壇での一人歩きを保証する意味があったと思う。そういう鑑識能力が必要なら、僕は委員の資格はない。」

他の選考委員

選考委員

川端康成

44歳×各候補作　

総行数12　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
石塚喜久三	38歳	全	□	12	「とにかく内地に紹介したい作品だと考えた。」「著しく未成品」「結局この作品を推す外なかったのは、今回の候補諸作の貧困のせいである。」「授賞については、例によって材料や問題が先ず目立つものの、この作者の誠実、高調の訥弁、そういう特色の一種の味わいも認めたことを言っておきたい。濫作をつつしんで、情熱を失わぬよう、切に作者に望んでおきたい。技量は従来の芥川賞の作家に未だ及ばぬのである。」
小泉譲	30歳	全	―	0
檀一雄	31歳	全	―	0
劉寒吉	36歳	全	―	0
譲原昌子	31歳	全	―	0
相原とく子	（不明）	全	―	0
辻勝三郎	27歳	全	―	0

他の選考委員

選考委員

瀧井孝作

49歳×各候補作　

総行数19　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
石塚喜久三	38歳	全	○	7	「すこし荒削の感じだが、筆に情熱と昂奮があった。詩のような甲高い調子も、作者の一杯な気持の自然に出たものだと思った。」「蒙古人と支那人との生活問題をハッキリ提出した一篇の主題もなかなか良いと思った。」
小泉譲	30歳	全	―	0
檀一雄	31歳	全	△	4	「むかし上田秋成、建部綾足、北村春海などの雅文小説に似通ったもので、美しい感じがあって、このような試みも面白いと思った。」
劉寒吉	36歳	全	■	4	「なかなか読みごたえがあった。創作としては稍垢ぬけしない風で惜しかった。」
譲原昌子	31歳	全	―	0
相原とく子	（不明）	全	○	5	「今回読んだ中で、ぼくは一番好きな短篇だと思った。芥川賞は茲三四回大陸の時局物の入選ばかりが続くので、こんどは内地向きの短篇も好いと思ったが、（引用者中略）すこし小粒にみえて当選はしなかった。」
辻勝三郎	27歳	全	―	0

他の選考委員

選考委員

片岡鐵兵

49歳×各候補作　

総行数14　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
石塚喜久三	38歳	全	△	6	「芸術作品としての表現が熟していない。実話雑誌的な文体で感動を型にはめた点が気になり、私としては推しかねたが、しかしこの授賞が在蒙疆の諸氏の文学活動を世に紹介する機縁ともなれば、それはそれで非常にうれしいことだと、今は思い返している。」
小泉譲	30歳	全	―	0
檀一雄	31歳	全	◎	7	「一読何の奇もないようなれども、日本的象徴主義の効果には、凡手の企てて及ばざる実がある。」「一種の「世観」とも云える哀れさは、新古今の頃から吉野朝へかけて流れた情調伝統を、昭和の形式に相当生かせているという見解から、私はこの作を第一に推した。」
劉寒吉	36歳	全	□	2	「衆議によっては宜しかろうというのが私の意見であった。」
譲原昌子	31歳	全	―	0
相原とく子	（不明）	全	―	0
辻勝三郎	27歳	全	□	2	「衆議によっては宜しかろうというのが私の意見であった。」

他の選考委員

選考委員

佐藤春夫

51歳×各候補作　

総行数17　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
石塚喜久三	38歳	全	○	12	「三篇（引用者注：「翁」「吉野の春」「纏足の頃」）を最後まで残し、さてこのうちどの一篇を？　と選び迷うて気むずかしくなって困った。」「まずまず一通にはまとまってはいるが筆がいかにも辿々しく作家と見るには心細い。」「文字の底にひそむ作家の熱意と人としての心情（ルビ：ゲミュート）の深さから出たかと近ごろ見なれない味に心をひかれて、この一番腕のあぶなっかしい作者に授賞する気になった。」
小泉譲	30歳	全	―	0
檀一雄	31歳	全	△	8	「三篇（引用者注：「翁」「吉野の春」「纏足の頃」）を最後まで残し、さてこのうちどの一篇を？　と選び迷うて気むずかしくなって困った。」「日本文学の精神と手法を以てしたものとして興味を持ち同情をしたが折角の精神が文字の毛細管へしみとおらぬ感で手法もにぶい。結局一つの試作である。」
劉寒吉	36歳	全	△	7	「三篇（引用者注：「翁」「吉野の春」「纏足の頃」）を最後まで残し、さてこのうちどの一篇を？　と選び迷うて気むずかしくなって困った。」「好もしいテーマをよく捉えているが最後がいい外はちと冗漫である。材料まけという惜しい作品。」
譲原昌子	31歳	全	―	0
相原とく子	（不明）	全	―	0
辻勝三郎	27歳	全	―	0

他の選考委員

受賞者・作品

石塚喜久三

38歳×各選考委員　

「纏足の頃」

短篇 66枚

選考委員			評価	行数	評言
横光利一	45歳	全	◎	6	「屈曲の多い劇的なテーマを、勁い韻文で引きぬいた情熱の烈しさが美しい。」「何より優れたところは、この大通俗味を帯びた手いっぱいの問題を、祈りの真心こめて一貫させた歌調の正しさにあるかと思う。」
河上徹太郎	41歳	全	◎	12	「之を推した気持には、そのごつごつした筆致の中に、此の平凡だが得難い素材に対し、ひたむきな意気込を感じたからである。」「お望みなら読者は此の作品を浪曼的と読んでも構わないのである。そこに作者の人柄のよさがある。」
川端康成	44歳	全	□	12	「とにかく内地に紹介したい作品だと考えた。」「著しく未成品」「結局この作品を推す外なかったのは、今回の候補諸作の貧困のせいである。」「授賞については、例によって材料や問題が先ず目立つものの、この作者の誠実、高調の訥弁、そういう特色の一種の味わいも認めたことを言っておきたい。濫作をつつしんで、情熱を失わぬよう、切に作者に望んでおきたい。技量は従来の芥川賞の作家に未だ及ばぬのである。」
瀧井孝作	49歳	全	○	7	「すこし荒削の感じだが、筆に情熱と昂奮があった。詩のような甲高い調子も、作者の一杯な気持の自然に出たものだと思った。」「蒙古人と支那人との生活問題をハッキリ提出した一篇の主題もなかなか良いと思った。」
片岡鐵兵	49歳	全	△	6	「芸術作品としての表現が熟していない。実話雑誌的な文体で感動を型にはめた点が気になり、私としては推しかねたが、しかしこの授賞が在蒙疆の諸氏の文学活動を世に紹介する機縁ともなれば、それはそれで非常にうれしいことだと、今は思い返している。」
佐藤春夫	51歳	全	○	12	「三篇（引用者注：「翁」「吉野の春」「纏足の頃」）を最後まで残し、さてこのうちどの一篇を？　と選び迷うて気むずかしくなって困った。」「まずまず一通にはまとまってはいるが筆がいかにも辿々しく作家と見るには心細い。」「文字の底にひそむ作家の熱意と人としての心情（ルビ：ゲミュート）の深さから出たかと近ごろ見なれない味に心をひかれて、この一番腕のあぶなっかしい作者に授賞する気になった。」

他の候補作

候補者・作品

小泉譲

30歳×各選考委員　

「桑園地帯」

短篇 144枚

選考委員			評価	行数	評言
横光利一	45歳	全	―	0
河上徹太郎	41歳	全	―	0
川端康成	44歳	全	―	0
瀧井孝作	49歳	全	―	0
片岡鐵兵	49歳	全	―	0
佐藤春夫	51歳	全	―	0

他の候補作

候補者・作品

檀一雄

31歳×各選考委員　

「吉野の花」

短篇 24枚

選考委員			評価	行数	評言
横光利一	45歳	全	―	0
河上徹太郎	41歳	全	△	2	「年功を経た、手堅い作品」
川端康成	44歳	全	―	0
瀧井孝作	49歳	全	△	4	「むかし上田秋成、建部綾足、北村春海などの雅文小説に似通ったもので、美しい感じがあって、このような試みも面白いと思った。」
片岡鐵兵	49歳	全	◎	7	「一読何の奇もないようなれども、日本的象徴主義の効果には、凡手の企てて及ばざる実がある。」「一種の「世観」とも云える哀れさは、新古今の頃から吉野朝へかけて流れた情調伝統を、昭和の形式に相当生かせているという見解から、私はこの作を第一に推した。」
佐藤春夫	51歳	全	△	8	「三篇（引用者注：「翁」「吉野の春」「纏足の頃」）を最後まで残し、さてこのうちどの一篇を？　と選び迷うて気むずかしくなって困った。」「日本文学の精神と手法を以てしたものとして興味を持ち同情をしたが折角の精神が文字の毛細管へしみとおらぬ感で手法もにぶい。結局一つの試作である。」

他の候補作

候補者・作品

劉寒吉

36歳×各選考委員　

「翁」

短篇 58枚

選考委員			評価	行数	評言
横光利一	45歳	全	△	6	「考証に押し縮められた吐息が見えるが、難事な題材を破損少く耐え忍んで運んだ作者に敬意を表したい。この作者には一度小倉で会ったことがあるが、人物には種々な点で私は感服した。」
河上徹太郎	41歳	全	△	2	「年功を経た、手堅い作品」
川端康成	44歳	全	―	0
瀧井孝作	49歳	全	■	4	「なかなか読みごたえがあった。創作としては稍垢ぬけしない風で惜しかった。」
片岡鐵兵	49歳	全	□	2	「衆議によっては宜しかろうというのが私の意見であった。」
佐藤春夫	51歳	全	△	7	「三篇（引用者注：「翁」「吉野の春」「纏足の頃」）を最後まで残し、さてこのうちどの一篇を？　と選び迷うて気むずかしくなって困った。」「好もしいテーマをよく捉えているが最後がいい外はちと冗漫である。材料まけという惜しい作品。」

他の候補作

候補者・作品

譲原昌子

31歳×各選考委員　

「故郷の岸」

短篇 146枚

選考委員			評価	行数	評言
横光利一	45歳	全	―	0
河上徹太郎	41歳	全	―	0
川端康成	44歳	全	―	0
瀧井孝作	49歳	全	―	0
片岡鐵兵	49歳	全	―	0
佐藤春夫	51歳	全	―	0

他の候補作

候補者・作品

相原とく子

（不明）×各選考委員　

「椎の実」

短篇 52枚

選考委員			評価	行数	評言
横光利一	45歳	全	―	0
河上徹太郎	41歳	全	―	0
川端康成	44歳	全	―	0
瀧井孝作	49歳	全	○	5	「今回読んだ中で、ぼくは一番好きな短篇だと思った。芥川賞は茲三四回大陸の時局物の入選ばかりが続くので、こんどは内地向きの短篇も好いと思ったが、（引用者中略）すこし小粒にみえて当選はしなかった。」
片岡鐵兵	49歳	全	―	0
佐藤春夫	51歳	全	―	0

他の候補作

候補者・作品

辻勝三郎

27歳×各選考委員　

「雁わたる」

短篇 55枚