第12回

第11回第13回

昭和15年/1940年下半期 昭和16年/1941年1月28日決定発表／『文藝春秋』昭和16年/1941年3月号経緯掲載

選考委員　 吉川英治 48歳 白井喬二 51歳 大佛次郎 43歳 小島政二郎 46歳 宇野浩二 49歳 佐佐木茂索 46歳 菊池寛 52歳 三上於菟吉 49歳 久米正雄 49歳 選評総行数　 144 57 19 76 61 17       評 評 評 評 評 評 選評なし 選評なし 選評なし 候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 村上元三　「上総風土記」他 54枚 30歳 評 ○ 21 ◎ 16 ○ 19 ○ 39 ◎ 19 ○ 5             岩下俊作　「辰次と由松」 48枚 34歳 評 ● 27 ● 5 ― 0 ● 4 ● 5 ― 0             玉川一郎　「人情サキソフォン」 47枚 35歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ● 5 ― 0             神崎武雄　「ノート・ブック」 43枚 34歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ● 5 ― 0 ― 0             長谷川幸延　「法善寺横町」 37枚 36歳 評 ● 14 ● 6 ― 0 △ 13 ● 4 ○ 7             伊地知進　「廟行鎮再び」 32枚 36歳 評 ◎ 47 ○ 11 ― 0 ○ 8 □ 9 ◎ 8             古澤元　「紀文抄」 79枚 33歳 評 ● 20 □ 13 ― 0 ・ 2 □ 18 ― 0                               年齢/枚数の説明   見方・注意点

吉川英治48歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

総行数144　（1行=15字） 候補 評価 行数 評言 村上元三 30歳 全 ○ 21 「才気といっては四名のうち村上元三氏に及ぶものはない。意識してそう書くのではなく素質にあるものであろう。」 岩下俊作 34歳 全 ● 27 「前の富島松五郎伝（引用者中略）のほうが確に良い。」 玉川一郎 35歳 全 ― 0   神崎武雄 34歳 全 ― 0   長谷川幸延 36歳 全 ● 14 「読後に何か忘れものでもおいて来たような気がするのは、余りに作家自身までが横丁に身を入れすぎて、何等かの示唆なり目標なりをこの作が持たずにしまった呆ッけなさから来るものらしく思われる。」 伊地知進 36歳 全 ◎ 47 「文学であろうとなかろうと、超然たるほどの何かをもっている。一言でいえば作りものでない力といえるかも知れない。」 古澤元 33歳 全 ● 20 「部屋住のひとが窓から閑にまかせて世間のあらを見て批評しているようで世間の実態なり生々しさがない。」

他の選考委員 白井喬二 大佛次郎 小島政二郎 宇野浩二 佐佐木茂索

白井喬二51歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

総行数57　（1行=15字） 候補 評価 行数 評言 村上元三 30歳 全 ◎ 16 「努力型であるが中々角度の広い人だ。」「作も作だが、村上氏の作家経歴が物を言って今回の栄冠を頂くことになったと云えよう。」 岩下俊作 34歳 全 ● 5 「この前の「富島松五郎伝」に遠く及ばず」 玉川一郎 35歳 全 ― 0   神崎武雄 34歳 全 ― 0   長谷川幸延 36歳 全 ● 6 「軽妙さのみが閊え物のように心に留っただけだった。」 伊地知進 36歳 全 ○ 11 「何事も弁訴しないという軍人精神で一篇を意義づけている。」「充分に入選の力量を備えた人だ。」 古澤元 33歳 全 □ 13 「この作は巧いには巧いが、表現が古典的といっても好いくらい類型で創造の領域への踏込みが一歩足らない」	他の選考委員 吉川英治 大佛次郎 小島政二郎 宇野浩二 佐佐木茂索

大佛次郎43歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

総行数19　（1行=15字） 候補 評価 行数 評言 村上元三 30歳 全 ○ 19 「淡々と忌味なく書いていながら、書くだけのものを充分に書いている手腕は推賞に値する。」 岩下俊作 34歳 全 ― 0   玉川一郎 35歳 全 ― 0   神崎武雄 34歳 全 ― 0   長谷川幸延 36歳 全 ― 0   伊地知進 36歳 全 ― 0   古澤元 33歳 全 ― 0	他の選考委員 吉川英治 白井喬二 小島政二郎 宇野浩二 佐佐木茂索

小島政二郎46歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

総行数76　（1行=15字） 候補 評価 行数 評言 村上元三 30歳 全 ○ 39 「旨くなったものだと思う。」「冬の裸木のように葉と云う葉を揮い落して、インデスペンサブルなものだけを携げて人間性に迫ろうとした意欲は壮とすべきだろう。」 岩下俊作 34歳 全 ● 4 「コンポジションを誤っている。」 玉川一郎 35歳 全 ― 0   神崎武雄 34歳 全 ● 5 「イージーゴーイングである。」 長谷川幸延 36歳 全 △ 13 「この種類の作品は書き易いと思う。それに、この世界では秋田実氏がもっと旨くて、深みのある、もっとペーソスのある作品を書いている。」 伊地知進 36歳 全 ○ 8 「作者が全身で書いている充実さが、熱い血潮となって字面に盛り上っているハートフェルトなところが私を打った。」 古澤元 33歳 全 ・ 2	他の選考委員 吉川英治 白井喬二 大佛次郎 宇野浩二 佐佐木茂索

宇野浩二49歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

総行数61　（1行=15字） 候補 評価 行数 評言 村上元三 30歳 全 ◎ 19 「描写も簡潔であり、そのために窮屈なところもあるが、筋の運び方に割りに無理がないし、終りの方が幾らか呆気ないけれど、全体から見て、面白い。」 岩下俊作 34歳 全 ● 5 「この前の『富島松五郎伝』より遥かに面白くないから、よくない。」 玉川一郎 35歳 全 ● 5 「これでは、余りに甘すぎるから、話にならない。」 神崎武雄 34歳 全 ― 0   長谷川幸延 36歳 全 ● 4 「達者に書かれてあるけれど、これだけでは、面白そうで、面白くない。」 伊地知進 36歳 全 □ 9 「手紙の形を借りて書いてあるのが感心できないが、なかなか面白い。」「しかし、この作品を一つ読んだだけでは、私は推奨できないのである。」 古澤元 33歳 全 □ 18 「今度の直木賞候補作品の中で、最も面白かった。」「終りの方に――仮名世説ヨリ――とあるので、大田南畝の『仮名世説』の中から得た題材であるというので、私も「それもそうか、」と思って、推奨されなかった。」

他の選考委員 吉川英治 白井喬二 大佛次郎 小島政二郎 佐佐木茂索

佐佐木茂索46歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

総行数17　（1行=15字） 候補 評価 行数 評言 村上元三 30歳 全 ○ 5 「候補作（引用者中略）中では「廟行鎮再び」「上総風土記」「法善寺横町」を採る。」 岩下俊作 34歳 全 ― 0   玉川一郎 35歳 全 ― 0   神崎武雄 34歳 全 ― 0   長谷川幸延 36歳 全 ○ 7 「実に達者で、此の種の作品なら、此の作者は次ぎ次ぎに書きそうである。」 伊地知進 36歳 全 ◎ 8 「最も高く評価する。」「しかし此作者のものは他に何も知らないので、この一つを以て直ちに直木賞だと主張する強さを私は持ち得なかった。」 古澤元 33歳 全 ― 0	他の選考委員 吉川英治 白井喬二 大佛次郎 小島政二郎 宇野浩二

村上元三30歳×各選考委員　 「上総風土記」他 短篇 54枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 吉川英治 48歳 全 ○ 21 「才気といっては四名のうち村上元三氏に及ぶものはない。意識してそう書くのではなく素質にあるものであろう。」 白井喬二 51歳 全 ◎ 16 「努力型であるが中々角度の広い人だ。」「作も作だが、村上氏の作家経歴が物を言って今回の栄冠を頂くことになったと云えよう。」 大佛次郎 43歳 全 ○ 19 「淡々と忌味なく書いていながら、書くだけのものを充分に書いている手腕は推賞に値する。」 小島政二郎 46歳 全 ○ 39 「旨くなったものだと思う。」「冬の裸木のように葉と云う葉を揮い落して、インデスペンサブルなものだけを携げて人間性に迫ろうとした意欲は壮とすべきだろう。」 宇野浩二 49歳 全 ◎ 19 「描写も簡潔であり、そのために窮屈なところもあるが、筋の運び方に割りに無理がないし、終りの方が幾らか呆気ないけれど、全体から見て、面白い。」 佐佐木茂索 46歳 全 ○ 5 「候補作（引用者中略）中では「廟行鎮再び」「上総風土記」「法善寺横町」を採る。」

他の候補作 岩下俊作 「辰次と由松」 玉川一郎 「人情サキソフォン」 神崎武雄 「ノート・ブック」 長谷川幸延 「法善寺横町」 伊地知進 「廟行鎮再び」 古澤元 「紀文抄」

岩下俊作34歳×各選考委員　 「辰次と由松」 短篇 48枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 吉川英治 48歳 全 ● 27 「前の富島松五郎伝（引用者中略）のほうが確に良い。」 白井喬二 51歳 全 ● 5 「この前の「富島松五郎伝」に遠く及ばず」 大佛次郎 43歳 全 ― 0   小島政二郎 46歳 全 ● 4 「コンポジションを誤っている。」 宇野浩二 49歳 全 ● 5 「この前の『富島松五郎伝』より遥かに面白くないから、よくない。」 佐佐木茂索 46歳 全 ― 0	他の候補作 村上元三 「上総風土記」他 玉川一郎 「人情サキソフォン」 神崎武雄 「ノート・ブック」 長谷川幸延 「法善寺横町」 伊地知進 「廟行鎮再び」 古澤元 「紀文抄」

玉川一郎35歳×各選考委員　 「人情サキソフォン」 短篇 47枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 吉川英治 48歳 全 ― 0   白井喬二 51歳 全 ― 0   大佛次郎 43歳 全 ― 0   小島政二郎 46歳 全 ― 0   宇野浩二 49歳 全 ● 5 「これでは、余りに甘すぎるから、話にならない。」 佐佐木茂索 46歳 全 ― 0	他の候補作 村上元三 「上総風土記」他 岩下俊作 「辰次と由松」 神崎武雄 「ノート・ブック」 長谷川幸延 「法善寺横町」 伊地知進 「廟行鎮再び」 古澤元 「紀文抄」

神崎武雄34歳×各選考委員　 「ノート・ブック」 短篇 43枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 吉川英治 48歳 全 ― 0   白井喬二 51歳 全 ― 0   大佛次郎 43歳 全 ― 0   小島政二郎 46歳 全 ● 5 「イージーゴーイングである。」 宇野浩二 49歳 全 ― 0   佐佐木茂索 46歳 全 ― 0	他の候補作 村上元三 「上総風土記」他 岩下俊作 「辰次と由松」 玉川一郎 「人情サキソフォン」 長谷川幸延 「法善寺横町」 伊地知進 「廟行鎮再び」 古澤元 「紀文抄」

長谷川幸延36歳×各選考委員　 「法善寺横町」 短篇 37枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 吉川英治 48歳 全 ● 14 「読後に何か忘れものでもおいて来たような気がするのは、余りに作家自身までが横丁に身を入れすぎて、何等かの示唆なり目標なりをこの作が持たずにしまった呆ッけなさから来るものらしく思われる。」 白井喬二 51歳 全 ● 6 「軽妙さのみが閊え物のように心に留っただけだった。」 大佛次郎 43歳 全 ― 0   小島政二郎 46歳 全 △ 13 「この種類の作品は書き易いと思う。それに、この世界では秋田実氏がもっと旨くて、深みのある、もっとペーソスのある作品を書いている。」 宇野浩二 49歳 全 ● 4 「達者に書かれてあるけれど、これだけでは、面白そうで、面白くない。」 佐佐木茂索 46歳 全 ○ 7 「実に達者で、此の種の作品なら、此の作者は次ぎ次ぎに書きそうである。」	他の候補作 村上元三 「上総風土記」他 岩下俊作 「辰次と由松」 玉川一郎 「人情サキソフォン」 神崎武雄 「ノート・ブック」 伊地知進 「廟行鎮再び」 古澤元 「紀文抄」

伊地知進36歳×各選考委員　 「廟行鎮再び」 短篇 32枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 吉川英治 48歳 全 ◎ 47 「文学であろうとなかろうと、超然たるほどの何かをもっている。一言でいえば作りものでない力といえるかも知れない。」 白井喬二 51歳 全 ○ 11 「何事も弁訴しないという軍人精神で一篇を意義づけている。」「充分に入選の力量を備えた人だ。」 大佛次郎 43歳 全 ― 0   小島政二郎 46歳 全 ○ 8 「作者が全身で書いている充実さが、熱い血潮となって字面に盛り上っているハートフェルトなところが私を打った。」 宇野浩二 49歳 全 □ 9 「手紙の形を借りて書いてあるのが感心できないが、なかなか面白い。」「しかし、この作品を一つ読んだだけでは、私は推奨できないのである。」 佐佐木茂索 46歳 全 ◎ 8 「最も高く評価する。」「しかし此作者のものは他に何も知らないので、この一つを以て直ちに直木賞だと主張する強さを私は持ち得なかった。」

他の候補作 村上元三 「上総風土記」他 岩下俊作 「辰次と由松」 玉川一郎 「人情サキソフォン」 神崎武雄 「ノート・ブック」 長谷川幸延 「法善寺横町」 古澤元 「紀文抄」

古澤元33歳×各選考委員　 「紀文抄」 短篇 79枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 吉川英治 48歳 全 ● 20 「部屋住のひとが窓から閑にまかせて世間のあらを見て批評しているようで世間の実態なり生々しさがない。」 白井喬二 51歳 全 □ 13 「この作は巧いには巧いが、表現が古典的といっても好いくらい類型で創造の領域への踏込みが一歩足らない」 大佛次郎 43歳 全 ― 0   小島政二郎 46歳 全 ・ 2   宇野浩二 49歳 全 □ 18 「今度の直木賞候補作品の中で、最も面白かった。」「終りの方に――仮名世説ヨリ――とあるので、大田南畝の『仮名世説』の中から得た題材であるというので、私も「それもそうか、」と思って、推奨されなかった。」 佐佐木茂索 46歳 全 ― 0	他の候補作 村上元三 「上総風土記」他 岩下俊作 「辰次と由松」 玉川一郎 「人情サキソフォン」 神崎武雄 「ノート・ブック」 長谷川幸延 「法善寺横町」 伊地知進 「廟行鎮再び」