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平成14年/2002年度
(平成15年/2003年5月15日決定発表/『小説新潮』平成15年/2003年7月号選評掲載)
選考委員  長部日出雄
男68歳
北原亞以子
女65歳
久世光彦
男68歳
花村萬月
男48歳
山田詠美
女44歳
最終投票
選評総行数  227 167 107 139 145  
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
京極夏彦 『覘き小平次』
男40歳
70 39 26 22 24    
古処誠二 『ルール』
男33歳
17 36 17 23 22    
荻原浩 『コールドゲーム』
男46歳
23 13 6 28 24    
佐藤多佳子 『黄色い目の魚』
女40歳
46 16 19 22 28    
横山秀夫 『第三の時効』
男46歳
45 24 22 26 29    
宇江佐真理 『あやめ横丁の人々』
女53歳
32 55 25 25 16    
           
年齢の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『小説新潮』平成15年/2003年7月号
1行当たりの文字数:19字


選考委員
長部日出雄男68歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数227 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
京極夏彦
男40歳
70 4.5点「哲学的な主題を扱いつつ、ちゃんと描写しているので、グロテスクで悲しいユーモアが滲み出てきますし、文章はわが国伝統の語りものの韻律を帯びていて、読んでいくと、口跡のいい役者の朗誦を聞いているような快感に陶然としてきます。」
古処誠二
男33歳
17 3.5点「私はこの作品に関しては一般的な読者になれない理由があります。実は、私の兄がルソン島で戦死しておりまして、私自身、この山岳地帯を三度、歩き廻ったことがあるんです。」「一九七〇年生まれの作者が戦場の実態を、実際にその場に足を運んで詳しく調べた私のような人間にも、さほどの違和感なく読ませたということはなかなかの筆力だと思いまして、三・五点です。」
荻原浩
男46歳
23 3.5点「私は「タクシードライバー」を思い出しました。」「この作品の問題は文体にあると思いました。」「この文体はリズミカルではありますけれど、情報を伝えるのに適した文章、あるいは読物の文章で、案外個性に乏しい感じがするんですね。」
佐藤多佳子
女40歳
46 5点「テッセイを合わせ鏡にして木島の母親の性格や、あとで出てくるおじいちゃんの考え方、生き方も浮かび上がってきます。」「「存在しない死者の存在感」が作品に奥行きを与えています。」「展開される絵画論も、実に本格的で的確で気持ちがいい。」「前途に希望を持たせる作品だと感じました。」
横山秀夫
男46歳
45 4.5点「文章は、確かにまだ情報を伝えるというレベルかもしれません。が、それにしても贅肉を一切削いで無駄がなく、簡単に読みとばせない文章です。」「この作者の今の社会に対する強烈な批判精神は本物です。」「社会派として非常に大きな成果をあげる可能性を秘めていますね。」
宇江佐真理
女53歳
32 4.5点「主人公・慎之介の性格が全く類型から外れているんですね。(引用者中略)しかし、どことなく魅力があって、みんな一肌脱ぎたい気分になる。」「はじめは不自然に思えたり、違和感を覚えたりしたことが、後になると全て伏線として起き上がってくる、実によく考えられた設定で、全体の最後の一行に私は特に感銘を受けました。」
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他の選考委員
北原亞以子
久世光彦
花村萬月
山田詠美
最終投票
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選考委員
北原亞以子女65歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数167 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
京極夏彦
男40歳
39 4.5点「もちろん文章も素晴らしいし、私なんかが及びもつかない教養の高さに圧倒されました。」「非常にいい意味で遊んでらっしゃいますね。」「尋常ならざる手腕だと思いました。」「終りの方で文章を短く改行するところが気になりました。」
古処誠二
男33歳
36 4点「実は私も、実父や伯父が戦死しておりまして、知らせを信じられない母や伯母が戦友の話を聞いてまわりました。その話と重ね合わせて読むと、大変迫力がありました。が、多少なりとも戦争を知っている者が読むと、ちょっと違和感を覚えるところもいくつかありました。」
荻原浩
男46歳
13 3.5点「廣吉という子の存在が、かつて彼をいじめた子たちの中でどんどん膨らんでいくというのが非常に面白かったんですけれども、最後がどうしてもヒッチコックの「サイコ」と重なってしまうんです。」「小説としてちょっと辛いかなという感じがいたしました。」
佐藤多佳子
女40歳
16 4点「四点のほとんどを、(引用者中略)テッセイという人物にあげたいと思います。この人物は非常によく書けていると思いました。」「時々ふっと、変に生な言葉が入ってくるんです。こなれていないというか――。」「時々、作者が無理して書いてるな、と感じさせる言葉がありませんか。」
横山秀夫
男46歳
24 4.5点「もう、「面白い」の一言に尽きると思います。」「「モノクロームの反転」の謎解きなんかは疑問に思うところもあるんですけれど、刑事三人のそれぞれの性格が描かれ、その三人の解決の仕方が変わっていく面白さもあり、非常によくできたエンターテインメントだと思いました。」「私はひたすら面白い小説があっていいと思うんです。」
宇江佐真理
女53歳
55 3.5点「宇江佐さんらしく、力のこもったいい小説だと思いました。」「ことによると、主人公と折り合いがつかないまま書き出してしまったのではないかと思うんです。」「確かに面白い言葉をたくさん使ってらしたんですが、気になったのが、「おっこちきる」という言葉。(引用者中略)使い方を間違えたら、せっかくの面白い言葉も面白くなくなってしまう。」
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他の選考委員
長部日出雄
久世光彦
花村萬月
山田詠美
最終投票
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選考委員
久世光彦男68歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数107 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
京極夏彦
男40歳
26 4.5点「小平次とお塚の夫婦がすごくいいですね。異形であってなおかつ非常に平明な夫婦であるというバランスや夫婦の情愛みたいなものが、こういう仕掛けの中でこそよく出たなという感じがしました。」「全体として何か黒い雲がブワーッと走ってるような、その様子に僕は好意を持ちました。」「目で見て美しく、耳で聞いて快いというのは、今回この作品だけですよ。」
古処誠二
男33歳
17 3点「若い人たちの好むテレビゲームみたいに感じられて、違和感が最後まで残りました。また、この作家の視点は時によって妙に冷静だったり、妙に人間的だったりして一貫していないし、作家のパッションがどこに向いているのかも捉えにくかった。」「風景や臭いが伝わってこないですよね。」
荻原浩
男46歳
6 2点「僕はまったく食いつけませんでした。そもそも苦手なタイプの小説だし、じゃあ、会話がビビッドかといわれると特にそうも思わないしで、何か拾おうと思ったけれども非常に拾いにくくて二・〇です。」
佐藤多佳子
女40歳
19 3点「僕はこの数年よくある、児童文学や少女小説出身の三十、四十代女性作家が描く少年少女ものはもう、おなかいっぱいなんです。」「どうも同じように見えてしまう。」「ちょっと小説上で都合が悪くなったり、壁にぶつかったりすると児童文学の手法へ逃げ込んでしまうんですね。」「一枚の絵を文章で説明するのはすごく難しいですよね。結局、僕にはどういう絵なのかが伝わってこなかったんです。」
横山秀夫
男46歳
22 2.5点「僕のところに来る、そして自分の手元にいくつもあるテレビドラマの企画書を連想しました。」「「半落ち」もそうでしたが、僕は無理やり唐突なドンデン返しを用意するのは小説としてどうかと思いますね。文章の面でも、文芸作品とは言えないと思います。」「不用意に常套句を使う癖があるね。」
宇江佐真理
女53歳
25 3.5点「宇江佐さんという人は上手くなったなというふうに思いました。」「一番のマイナスは、主人公の慎之介という人が見えてこないことですね。」「最後の、伊呂波が火事にあった話。あれは余計だったと思います。それ以外にも蛇足が多く、点数は三・五です。」
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他の選考委員
長部日出雄
北原亞以子
花村萬月
山田詠美
最終投票
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選考委員
花村萬月男48歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数139 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
京極夏彦
男40歳
22 5点「読み始めてすぐに感服しました。」「活字の並んだ様子もすごくきれいなんだよね。」「途中、見開きに使われている、あの幕の模様も、最初、ドキンとしました。こういう仕掛けは鬱陶しい時もあるんですけど、これはうまくいってますね。」
古処誠二
男33歳
23 3点「カニバリズム(食人)は文学の大きなテーマだと思って期待して読んだんですが、正直、期待外れでした。」「臭いの描写が全然ない。」「捕虜のスミスと鳴神の思考形態が全く同じなのも奇妙です。」「小説の核は日本人論だと思いますが、どこか表層的なシミュレーションで終っている気がしました。」
荻原浩
男46歳
28 3点「気になったのは、比喩や言い回しを吟味してないことですね。」「これは推理小説一般に言えることですが、真犯人が出てくる箇所になると隠蔽しようという意識が働くのか、文章が微妙に変わるので逆にわかってしまうんですよね。」「才能はあると思うよ。」
佐藤多佳子
女40歳
22 4.5点「今回の選考作品の中でいちばん最初に手にとって、とても面白く読み始め、あ、こんな人がいたのかと驚きました。」「ところが、先へ行くにしたがってどうもやりすぎで、(引用者中略)なによりも許せなかったのはイラストレーターのおじさんの描き方で、せっかく絵画の世界をうまく文章で表してきたいい作品が、この人物でぶち壊しでした。」
横山秀夫
男46歳
26 3点「この作品はとても安定していると思いましたが、新鮮さには欠けました。随所に出てくるトラウマも、書くんならきっちり書いてほしい。」「どの話も結論に合わせて人物を動かすので、なにか、小咄を聞いてるような感覚でした。」「とはいえ、この安定感は小説家としてなかなかのものだと思います。」「言い方は悪いけど、消費される小説だなと思った。」
宇江佐真理
女53歳
25 3点「ずいぶんアバウトな小説だなと思いました。」「俺が最もいやだったのは、時代小説にクエスチョンマークなどの英語由来の記号を使ってることです。(引用者中略)あきらかな疑問形にまで用いてあると、文章に無頓着なのかなと思ってしまいます。」「ストーリーも都合のいいところが多く、抜け道の地下道が急に出てきたりして、「ええー?」と思いました。」
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他の選考委員
長部日出雄
北原亞以子
久世光彦
山田詠美
最終投票
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選考委員
山田詠美女44歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数145 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
京極夏彦
男40歳
24 4.5点「この人の文章のリズムってすごくクセになる。」「この人はかっちりと自分の世界を作って、きちんと活字で構築する独特の世界を持っているのでそこを評価したいと思います。」「各章の最後の一行が、すごくうまい。見得切って章が終わって、気がつくと次章に入ってる。」「日本語の技巧を自覚を持って駆使してる小説が賞をとるのはいいことだよね。」
古処誠二
男33歳
22 2点「焦点が定まってないというか、何を書きたいのかがはっきりしてないと思います。」「若いのにこういう小説が書けて素晴らしい、というのは、もうやめたらどうでしょう。」「やっぱり、大岡昇平を読んだ人間にはつらいですよ。リアリティのみならず文章もね。」「白人がこんなにすんなり日本兵と一緒に行動するのは変だよ。」
荻原浩
男46歳
24 2.5点「私はこの小説、面白かったんです。ただし、それは前半だけで、問題は後半。ミステリーやホラーって、最後は追いかけっこになるのが多いけど、この小説もそれで全部解決するという定型を使ってるので、面白くなくなっちゃいましたね。」「ただ、「えっ」と思うような面白いフレーズ、(引用者中略)けっこうありましたね。」
佐藤多佳子
女40歳
28 1.5点「子どもの視線からものを書くということと、子どもが作文を書くということは全く違うことで、そこが区別されていない気がする。」「これだったら、吉田秋生の「ラヴァーズ・キス」の方がぐっと来るというか、漫画の方が良いと思わせてしまうのがくやしい。」「前半と後半で、全然違うよね。」
横山秀夫
男46歳
29 3点「(引用者注:「あやめ横丁の人々」と)すごく似てると思うんですよ。とても面白いんですけど、昼下がりにサスペンスドラマと時代劇の再放送を続けて見たような感じ。」「エンターテインメントとしてはいいかもしれないけれど、山本賞という、文芸作品を評価する場所ではどうなのかなと思いました。」「この人は勧善懲悪を引っくり返そうとドラマティックにするより、もっと抑えて書いた方がいいと思う。」
宇江佐真理
女53歳
16 3点「うちの父がいつも昼に見てるテレビ東京の時代劇という感じ。つい見てしまうんですけれど、最後は「ああ、よかった、よかった」で終わるという。」「慎之介自身にも魅力を感じませんでした。最後までずっと読み通せるぐらい面白いんですが、あまり印象に残らない。」
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他の選考委員
長部日出雄
北原亞以子
久世光彦
花村萬月
最終投票
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選考委員
最終投票×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
京極夏彦
男40歳
     
古処誠二
男33歳
     
荻原浩
男46歳
     
佐藤多佳子
女40歳
     
横山秀夫
男46歳
     
宇江佐真理
女53歳
     
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他の選考委員
長部日出雄
北原亞以子
久世光彦
花村萬月
山田詠美
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受賞者・作品
京極夏彦男40歳×各選考委員 
『覘き小平次』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
長部日出雄
男68歳
70 4.5点「哲学的な主題を扱いつつ、ちゃんと描写しているので、グロテスクで悲しいユーモアが滲み出てきますし、文章はわが国伝統の語りものの韻律を帯びていて、読んでいくと、口跡のいい役者の朗誦を聞いているような快感に陶然としてきます。」
北原亞以子
女65歳
39 4.5点「もちろん文章も素晴らしいし、私なんかが及びもつかない教養の高さに圧倒されました。」「非常にいい意味で遊んでらっしゃいますね。」「尋常ならざる手腕だと思いました。」「終りの方で文章を短く改行するところが気になりました。」
久世光彦
男68歳
26 4.5点「小平次とお塚の夫婦がすごくいいですね。異形であってなおかつ非常に平明な夫婦であるというバランスや夫婦の情愛みたいなものが、こういう仕掛けの中でこそよく出たなという感じがしました。」「全体として何か黒い雲がブワーッと走ってるような、その様子に僕は好意を持ちました。」「目で見て美しく、耳で聞いて快いというのは、今回この作品だけですよ。」
花村萬月
男48歳
22 5点「読み始めてすぐに感服しました。」「活字の並んだ様子もすごくきれいなんだよね。」「途中、見開きに使われている、あの幕の模様も、最初、ドキンとしました。こういう仕掛けは鬱陶しい時もあるんですけど、これはうまくいってますね。」
山田詠美
女44歳
24 4.5点「この人の文章のリズムってすごくクセになる。」「この人はかっちりと自分の世界を作って、きちんと活字で構築する独特の世界を持っているのでそこを評価したいと思います。」「各章の最後の一行が、すごくうまい。見得切って章が終わって、気がつくと次章に入ってる。」「日本語の技巧を自覚を持って駆使してる小説が賞をとるのはいいことだよね。」
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他の候補作
古処誠二
『ルール』
荻原浩
『コールドゲーム』
佐藤多佳子
『黄色い目の魚』
横山秀夫
『第三の時効』
宇江佐真理
『あやめ横丁の人々』
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候補者・作品
古処誠二男33歳×各選考委員 
『ルール』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
長部日出雄
男68歳
17 3.5点「私はこの作品に関しては一般的な読者になれない理由があります。実は、私の兄がルソン島で戦死しておりまして、私自身、この山岳地帯を三度、歩き廻ったことがあるんです。」「一九七〇年生まれの作者が戦場の実態を、実際にその場に足を運んで詳しく調べた私のような人間にも、さほどの違和感なく読ませたということはなかなかの筆力だと思いまして、三・五点です。」
北原亞以子
女65歳
36 4点「実は私も、実父や伯父が戦死しておりまして、知らせを信じられない母や伯母が戦友の話を聞いてまわりました。その話と重ね合わせて読むと、大変迫力がありました。が、多少なりとも戦争を知っている者が読むと、ちょっと違和感を覚えるところもいくつかありました。」
久世光彦
男68歳
17 3点「若い人たちの好むテレビゲームみたいに感じられて、違和感が最後まで残りました。また、この作家の視点は時によって妙に冷静だったり、妙に人間的だったりして一貫していないし、作家のパッションがどこに向いているのかも捉えにくかった。」「風景や臭いが伝わってこないですよね。」
花村萬月
男48歳
23 3点「カニバリズム(食人)は文学の大きなテーマだと思って期待して読んだんですが、正直、期待外れでした。」「臭いの描写が全然ない。」「捕虜のスミスと鳴神の思考形態が全く同じなのも奇妙です。」「小説の核は日本人論だと思いますが、どこか表層的なシミュレーションで終っている気がしました。」
山田詠美
女44歳
22 2点「焦点が定まってないというか、何を書きたいのかがはっきりしてないと思います。」「若いのにこういう小説が書けて素晴らしい、というのは、もうやめたらどうでしょう。」「やっぱり、大岡昇平を読んだ人間にはつらいですよ。リアリティのみならず文章もね。」「白人がこんなにすんなり日本兵と一緒に行動するのは変だよ。」
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他の候補作
京極夏彦
『覘き小平次』
荻原浩
『コールドゲーム』
佐藤多佳子
『黄色い目の魚』
横山秀夫
『第三の時効』
宇江佐真理
『あやめ横丁の人々』
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候補者・作品
荻原浩男46歳×各選考委員 
『コールドゲーム』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
長部日出雄
男68歳
23 3.5点「私は「タクシードライバー」を思い出しました。」「この作品の問題は文体にあると思いました。」「この文体はリズミカルではありますけれど、情報を伝えるのに適した文章、あるいは読物の文章で、案外個性に乏しい感じがするんですね。」
北原亞以子
女65歳
13 3.5点「廣吉という子の存在が、かつて彼をいじめた子たちの中でどんどん膨らんでいくというのが非常に面白かったんですけれども、最後がどうしてもヒッチコックの「サイコ」と重なってしまうんです。」「小説としてちょっと辛いかなという感じがいたしました。」
久世光彦
男68歳
6 2点「僕はまったく食いつけませんでした。そもそも苦手なタイプの小説だし、じゃあ、会話がビビッドかといわれると特にそうも思わないしで、何か拾おうと思ったけれども非常に拾いにくくて二・〇です。」
花村萬月
男48歳
28 3点「気になったのは、比喩や言い回しを吟味してないことですね。」「これは推理小説一般に言えることですが、真犯人が出てくる箇所になると隠蔽しようという意識が働くのか、文章が微妙に変わるので逆にわかってしまうんですよね。」「才能はあると思うよ。」
山田詠美
女44歳
24 2.5点「私はこの小説、面白かったんです。ただし、それは前半だけで、問題は後半。ミステリーやホラーって、最後は追いかけっこになるのが多いけど、この小説もそれで全部解決するという定型を使ってるので、面白くなくなっちゃいましたね。」「ただ、「えっ」と思うような面白いフレーズ、(引用者中略)けっこうありましたね。」
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他の候補作
京極夏彦
『覘き小平次』
古処誠二
『ルール』
佐藤多佳子
『黄色い目の魚』
横山秀夫
『第三の時効』
宇江佐真理
『あやめ横丁の人々』
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候補者・作品
佐藤多佳子女40歳×各選考委員 
『黄色い目の魚』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
長部日出雄
男68歳
46 5点「テッセイを合わせ鏡にして木島の母親の性格や、あとで出てくるおじいちゃんの考え方、生き方も浮かび上がってきます。」「「存在しない死者の存在感」が作品に奥行きを与えています。」「展開される絵画論も、実に本格的で的確で気持ちがいい。」「前途に希望を持たせる作品だと感じました。」
北原亞以子
女65歳
16 4点「四点のほとんどを、(引用者中略)テッセイという人物にあげたいと思います。この人物は非常によく書けていると思いました。」「時々ふっと、変に生な言葉が入ってくるんです。こなれていないというか――。」「時々、作者が無理して書いてるな、と感じさせる言葉がありませんか。」
久世光彦
男68歳
19 3点「僕はこの数年よくある、児童文学や少女小説出身の三十、四十代女性作家が描く少年少女ものはもう、おなかいっぱいなんです。」「どうも同じように見えてしまう。」「ちょっと小説上で都合が悪くなったり、壁にぶつかったりすると児童文学の手法へ逃げ込んでしまうんですね。」「一枚の絵を文章で説明するのはすごく難しいですよね。結局、僕にはどういう絵なのかが伝わってこなかったんです。」
花村萬月
男48歳
22 4.5点「今回の選考作品の中でいちばん最初に手にとって、とても面白く読み始め、あ、こんな人がいたのかと驚きました。」「ところが、先へ行くにしたがってどうもやりすぎで、(引用者中略)なによりも許せなかったのはイラストレーターのおじさんの描き方で、せっかく絵画の世界をうまく文章で表してきたいい作品が、この人物でぶち壊しでした。」
山田詠美
女44歳
28 1.5点「子どもの視線からものを書くということと、子どもが作文を書くということは全く違うことで、そこが区別されていない気がする。」「これだったら、吉田秋生の「ラヴァーズ・キス」の方がぐっと来るというか、漫画の方が良いと思わせてしまうのがくやしい。」「前半と後半で、全然違うよね。」
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他の候補作
京極夏彦
『覘き小平次』
古処誠二
『ルール』
荻原浩
『コールドゲーム』
横山秀夫
『第三の時効』
宇江佐真理
『あやめ横丁の人々』
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候補者・作品
横山秀夫男46歳×各選考委員 
『第三の時効』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
長部日出雄
男68歳
45 4.5点「文章は、確かにまだ情報を伝えるというレベルかもしれません。が、それにしても贅肉を一切削いで無駄がなく、簡単に読みとばせない文章です。」「この作者の今の社会に対する強烈な批判精神は本物です。」「社会派として非常に大きな成果をあげる可能性を秘めていますね。」
北原亞以子
女65歳
24 4.5点「もう、「面白い」の一言に尽きると思います。」「「モノクロームの反転」の謎解きなんかは疑問に思うところもあるんですけれど、刑事三人のそれぞれの性格が描かれ、その三人の解決の仕方が変わっていく面白さもあり、非常によくできたエンターテインメントだと思いました。」「私はひたすら面白い小説があっていいと思うんです。」
久世光彦
男68歳
22 2.5点「僕のところに来る、そして自分の手元にいくつもあるテレビドラマの企画書を連想しました。」「「半落ち」もそうでしたが、僕は無理やり唐突なドンデン返しを用意するのは小説としてどうかと思いますね。文章の面でも、文芸作品とは言えないと思います。」「不用意に常套句を使う癖があるね。」
花村萬月
男48歳
26 3点「この作品はとても安定していると思いましたが、新鮮さには欠けました。随所に出てくるトラウマも、書くんならきっちり書いてほしい。」「どの話も結論に合わせて人物を動かすので、なにか、小咄を聞いてるような感覚でした。」「とはいえ、この安定感は小説家としてなかなかのものだと思います。」「言い方は悪いけど、消費される小説だなと思った。」
山田詠美
女44歳
29 3点「(引用者注:「あやめ横丁の人々」と)すごく似てると思うんですよ。とても面白いんですけど、昼下がりにサスペンスドラマと時代劇の再放送を続けて見たような感じ。」「エンターテインメントとしてはいいかもしれないけれど、山本賞という、文芸作品を評価する場所ではどうなのかなと思いました。」「この人は勧善懲悪を引っくり返そうとドラマティックにするより、もっと抑えて書いた方がいいと思う。」
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他の候補作
京極夏彦
『覘き小平次』
古処誠二
『ルール』
荻原浩
『コールドゲーム』
佐藤多佳子
『黄色い目の魚』
宇江佐真理
『あやめ横丁の人々』
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候補者・作品
宇江佐真理女53歳×各選考委員 
『あやめ横丁の人々』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
長部日出雄
男68歳
32 4.5点「主人公・慎之介の性格が全く類型から外れているんですね。(引用者中略)しかし、どことなく魅力があって、みんな一肌脱ぎたい気分になる。」「はじめは不自然に思えたり、違和感を覚えたりしたことが、後になると全て伏線として起き上がってくる、実によく考えられた設定で、全体の最後の一行に私は特に感銘を受けました。」
北原亞以子
女65歳
55 3.5点「宇江佐さんらしく、力のこもったいい小説だと思いました。」「ことによると、主人公と折り合いがつかないまま書き出してしまったのではないかと思うんです。」「確かに面白い言葉をたくさん使ってらしたんですが、気になったのが、「おっこちきる」という言葉。(引用者中略)使い方を間違えたら、せっかくの面白い言葉も面白くなくなってしまう。」
久世光彦
男68歳
25 3.5点「宇江佐さんという人は上手くなったなというふうに思いました。」「一番のマイナスは、主人公の慎之介という人が見えてこないことですね。」「最後の、伊呂波が火事にあった話。あれは余計だったと思います。それ以外にも蛇足が多く、点数は三・五です。」
花村萬月
男48歳
25 3点「ずいぶんアバウトな小説だなと思いました。」「俺が最もいやだったのは、時代小説にクエスチョンマークなどの英語由来の記号を使ってることです。(引用者中略)あきらかな疑問形にまで用いてあると、文章に無頓着なのかなと思ってしまいます。」「ストーリーも都合のいいところが多く、抜け道の地下道が急に出てきたりして、「ええー?」と思いました。」
山田詠美
女44歳
16 3点「うちの父がいつも昼に見てるテレビ東京の時代劇という感じ。つい見てしまうんですけれど、最後は「ああ、よかった、よかった」で終わるという。」「慎之介自身にも魅力を感じませんでした。最後までずっと読み通せるぐらい面白いんですが、あまり印象に残らない。」
最終投票      
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