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平成15年/2003年度
(平成16年/2004年5月18日決定発表/『小説新潮』平成16年/2004年7月号選評掲載)
選考委員  浅田次郎
男52歳
北村薫
男54歳
小池真理子
女51歳
重松清
男41歳
篠田節子
女48歳
選評総行数  191 170 178 219 200
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
熊谷達也 『邂逅の森』
男46歳
48 28 47 40 55
乙一 『ZOO』
男25歳
29 36 48 43 31
横山秀夫 『クライマーズ・ハイ』
男47歳
26 39 32 51 28
古処誠二 『接近』
男34歳
30 32 19 43 55
梨木香歩 『家守綺譚』
女(45歳)
48 35 40 42 27
         
年齢の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『小説新潮』平成16年/2004年7月号
1行当たりの文字数:19字


選考委員
浅田次郎男52歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
選者の冥加 総行数191 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
熊谷達也
男46歳
48 「とりわけ感心した」「自然対人間という壮大なテーマを一貫して追求する作者が、これでもかとばかりに提示した力作である。」「自然描写における「静」と、人間や獣を描く「動」の描写が実に巧みである。」「かくて心身一体の物語世界が出現する。」
乙一
男25歳
29 「実はこの種の小説は長い文学史を繙いてみればさほど珍しいものではなく、いつの時代にもどこの国にも、たいてい一人はいたように思う。」「彼ら先人に共通している点は、「面白い話」の背骨である哲学ないし美学の存在である。私にはそのあたりの骨量が、この作品にはどれも不足しているように思えた。」「正直のところ正体不明の小説」
横山秀夫
男47歳
26 「もったいないの一言である。」「作者の小説はどれもそうだが、読者を魅きつけて余りある情熱を持っており、それが読みどころでもある。だが少くとも本作品においては、熱量の配分が適当ではないと感じた。」
古処誠二
男34歳
30 「戦争を知らぬ世代が戦争を描くこと自体、相当に勇気が要る。」「あえて描ききろうとする作者の真摯さには握手を求めたい。」「強く推すことのできなかった理由は、ミステリーの手法に呪縛されている点と、さほど難解なストーリーではないのに、余分な知的処理によってかえって話を不明瞭にしてしまった点である。」
梨木香歩
女(45歳)
48 「とりわけ感心した」「あえて同日の三島由紀夫賞に回さず、山本賞の候補に上げた振興会の炯眼にまず敬意を表する。」「歳時記の草花を媒介として現ならざるものをいちいち招来せしめるというアイデアは非凡である。」「作者の資質が詩人ではなく小説家であるという確証を欲しいと考えた。」「受賞作との間に得点の差がありすぎた。」
  「高水準は賞の重みゆえ当然としても、五者五様のすこぶる面白い小説を堪能することができた。」
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他の選考委員
北村薫
小池真理子
重松清
篠田節子
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選考委員
北村薫男54歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
確かな存在感 総行数170 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
熊谷達也
男46歳
28 「梅蔵、小太郎といった脇役が登場する辺りからは、完全に小説を読む喜びに浸った。八章に入ったところの一文に行き当たり、「これを推したい」という思いが、「推すべきだ」という確信に変わった。(引用者中略)普通の一代記であれば、重要な展開部分になるであろうところに、大鉈が振るわれている。作者が、自分の書くべきことを十二分に了解しているからである。」
乙一
男25歳
36 「これはもう「SEVEN ROOMS」につきる。異空間を作っての、独自のルールに基づく物語は漫画『カイジ』などを思わせた。」「問題は作品集としての『ZOO』が選考の対象であることだ。(引用者中略)当然のことながら、収録作全てが熱くはない、という温度差も生まれる。その点で、強く推しにくくなってしまった。」
横山秀夫
男47歳
39 「物語の矢の向かう先はどこなのか。(引用者中略)作品の、そして作者の放った矢の先は《大きい命と小さい命》の問題に刺さったわけだ。(引用者中略)だが、その物語の流れが要求している肝腎要の部分が弱い。ここに至って、折角の長編が、座りの悪い台座に載っているのを見せられたようになる。」
古処誠二
男34歳
32 「整った構成が、はたして作品にとって良かったか悪かったか、疑問である。」「弥一にとって「帝国軍人」が「アメリカ軍人」であったのは、存在の根底を揺るがされることだが、「サカノ」にとって、それは揺るがぬ自明のことだ。」「最後の場面も、構成上の首尾を一貫させたという意味はあるが、弥一の主観が「サカノ」の胸に食い入ったとは、思えない。」
梨木香歩
女(45歳)
35 「それ(引用者注:「邂逅の森」)に次ぐ作として――というより、全く傾向が違う、比較を絶した一冊として『家守綺譚』を選んだ。」「問題は、その世界が魅力的かどうか、である。わたしにとっては、間違いなく、そうであった。短編集というよりは、巻かれた長い、懐かしい絵巻を開きつつ、文章化したものと思えた。」
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他の選考委員
浅田次郎
小池真理子
重松清
篠田節子
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選考委員
小池真理子女51歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
透明感と力強さ 総行数178 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
熊谷達也
男46歳
47 「高く評価した。」「人間模様もまことに丹念に精緻に描かれており、作者によって一人一人、命を吹きこまれた彼ら彼女らが織りなす物語に、心底、引きこまれた。」「中でも女たちの描写が絶品である。」「圧巻のラストシーンを読み終えて、小説とは本来、こういうものだったのだ、という思いを新たにした。」
乙一
男25歳
48 「高く評価した。」「未だ何ものにも穢されていない、際立って透明な才能を覗き見ることができた。」「饒舌なシニシズムを目指そうとするあまりに、文章が粗削りになっている部分も確かにある。」「私はむしろ、この作者が内側に密かに抱きしめているに違いない抒情にこそ、強く惹かれた。」
横山秀夫
男47歳
32 「私には、主人公が生きている記者生活の現場と、息子の問題を抱えている家庭、安西という男と山に登ること……その三つがうまくつながってこなかった。」「作者が現代の毒、人間関係の刺の数々を描こうとした、その意気込みは充分、伝わってはくるものの、結局、この作品から私は、言い古された人生訓の匂いしか嗅ぎ取ることができなかった。」
古処誠二
男34歳
19 「時折、挿入されるモノローグふうの数行も含め、私にとっては全体が小説ではなく、長大な散文詩のような印象しか残らない作品であった。」「テーマはむろんのこと、一つ一つのモチーフも、読み手を惹きつけてやまないのに、せっかく読者が物語に溺れ、感情移入しかけると、作者はふっと横を向いてしまって、こちらは置いてけぼりを食らってしまう」
梨木香歩
女(45歳)
40 「どれほど唸らせてくれるのだろう、というわくわくした思いは、途中から失望感に変わってしまった。」「怪異が起こったり、異形のものが登場したりしてきても、それらは日常の、春風のごとき、のどかな風景の中に紛れこんでしまっている。」「文章にも湿感が希薄で、幻想的な興奮も、耽美の果てを思わせるものも、何も感じることができずに、私にはただひとえに退屈だった。」
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他の選考委員
浅田次郎
北村薫
重松清
篠田節子
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選考委員
重松清男41歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
「次作に期待」をクリシェではなく…… 総行数219 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
熊谷達也
男46歳
40 「ただただ圧倒され、夢中で読みふけりました、という一言が、この骨太な作品と作家には最もふさわしい賛辞だろう。」「本作には東北という「風土」をかたちづくる要素すべてがしっかりと描かれていた。」「マタギの世界についての記述も、ただ理屈で説明するだけではない、作者自身の血となり肉となっている知識だという持ち重りがする。」
乙一
男25歳
43 「いや、じつに面白い。個々の作品はもとより、一編を読み終えて次の作品へと進むときの「次はなにが出てくる?」というわくわくした思い――バラエティの魅力を堪能させてもらった。」「優れた作品の一方で、これはまだ磨く余地がありませんか、と申し上げたい作品も散見する。」「「次作に期待する」とは選評の常套句だが、それをクリシェではなく精一杯の心を込めて、氏に捧げたいと思う。」
横山秀夫
男47歳
51 「とても残念な作品だった。」「人間味あふれるまなざしは、残念ながら「仕事」の外の世界へは必ずしも存分には注がれなかったのではないか。」「「仕事」と拮抗しうる、いや、拮抗しなければならないはずの「家族」「友情」の物語が、言葉の密度も含めて弱い気がするのだ。」
古処誠二
男34歳
43 「どうしても一点気になるところがあった。」「それは言語の衝突、葛藤についての問題である。」「物語の縦糸だけでなく、ピジンやクレオールとも通底する言語の混成という横糸も強く紡いでほしかった。」
梨木香歩
女(45歳)
42 「近代と前近代のあわいを、対立の構図ではなくむしろ融和と交歓によって描き出す歳時記として、とても面白く読ませてもらった。だが一方で多少のとりとめのなさを抱いてしまったのも率直な感想で、再読の際は、一見幸福な場面の連なりに見える本作の奥に、そのふわっとした魅力を裏打ちする翳りを見出すための読書となった。」「『邂逅の森』と本作との二作受賞に票を投じた。」
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他の選考委員
浅田次郎
北村薫
小池真理子
篠田節子
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選考委員
篠田節子女48歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
作品世界の大きさ 総行数200 (1行=19字)
候補 評価 行数 評言
熊谷達也
男46歳
55 「作品世界の大きさ、卓越したストーリーテリング、汗の匂いや体温の伝わってきそうな実在感と存在感を湛えた人物像。」「中盤、舞台が山から鉱山に移ったとたんに物語は一気に加速していく。」「ラスト近く、こちらに向かい笑ったように見えた熊の描写、自分を襲う熊に抱いた主人公の畏敬の念。」「書き出せばきりがない。いくつもの不満を補ってあまりある、圧倒的な魅力を備えた作品だった。」
乙一
男25歳
31 「ポップで幾何学的な雰囲気と展開の軽さで大いに楽しませてくれた。」「正当に評価できるのは、ゲームと映像によって育まれた文化に強い親和性を持った人々(個人差があるので世代とは言わない)だろう。そうした意味で、私はいい読み手ではない。」「着想の面白さが少年漫画的な叙情、ないしは凡庸なサスペンスに帰結してしまうことに強い不満を覚えた。」
横山秀夫
男47歳
28 「自分の愚かさを自覚しない主人公の視点で物語が展開していく。そのあたりは極めて小説的で、視点も題材の選択もたいへんに面白い。」「ただし登場人物の印象がどれもハイテンションだが平板。」「山や家族の問題などが、物語の本筋と並立したことも、この小説をややわかりにくくしている。」
古処誠二
男34歳
55 「この作品を批評するにあたって、過去の戦争文学の持つ切迫感と比較するのは誤りだ。」「愛憎と信頼、裏切りのドラマだ。」「沖縄戦という、体験者によって書き尽くされた題材を、この一点で切り取り、中編作品に仕上げた才気にも敬服した。」「戦争の本質と踏み躙られていく人々の悲しみと苦悩を描き出した佳品だと思う。」
梨木香歩
女(45歳)
27 「上品で美しいミニアチュール集だ。」「上質な少女漫画のロマンティシズム、童話の優しさ。欠点の見あたらない作品だ。」「減点法でいくなら、この作品を一番に推した。反面、格別の魅力も感じられないのは、こちらの感性によるものだろうか。」「この作品に幻想小説的な耽美の毒など期待しない。しかし妖しさはあってもよかった。」
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他の選考委員
浅田次郎
北村薫
小池真理子
重松清
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受賞者・作品
熊谷達也男46歳×各選考委員 
『邂逅の森』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
浅田次郎
男52歳
48 「とりわけ感心した」「自然対人間という壮大なテーマを一貫して追求する作者が、これでもかとばかりに提示した力作である。」「自然描写における「静」と、人間や獣を描く「動」の描写が実に巧みである。」「かくて心身一体の物語世界が出現する。」
北村薫
男54歳
28 「梅蔵、小太郎といった脇役が登場する辺りからは、完全に小説を読む喜びに浸った。八章に入ったところの一文に行き当たり、「これを推したい」という思いが、「推すべきだ」という確信に変わった。(引用者中略)普通の一代記であれば、重要な展開部分になるであろうところに、大鉈が振るわれている。作者が、自分の書くべきことを十二分に了解しているからである。」
小池真理子
女51歳
47 「高く評価した。」「人間模様もまことに丹念に精緻に描かれており、作者によって一人一人、命を吹きこまれた彼ら彼女らが織りなす物語に、心底、引きこまれた。」「中でも女たちの描写が絶品である。」「圧巻のラストシーンを読み終えて、小説とは本来、こういうものだったのだ、という思いを新たにした。」
重松清
男41歳
40 「ただただ圧倒され、夢中で読みふけりました、という一言が、この骨太な作品と作家には最もふさわしい賛辞だろう。」「本作には東北という「風土」をかたちづくる要素すべてがしっかりと描かれていた。」「マタギの世界についての記述も、ただ理屈で説明するだけではない、作者自身の血となり肉となっている知識だという持ち重りがする。」
篠田節子
女48歳
55 「作品世界の大きさ、卓越したストーリーテリング、汗の匂いや体温の伝わってきそうな実在感と存在感を湛えた人物像。」「中盤、舞台が山から鉱山に移ったとたんに物語は一気に加速していく。」「ラスト近く、こちらに向かい笑ったように見えた熊の描写、自分を襲う熊に抱いた主人公の畏敬の念。」「書き出せばきりがない。いくつもの不満を補ってあまりある、圧倒的な魅力を備えた作品だった。」
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他の候補作
乙一
『ZOO』
横山秀夫
『クライマーズ・ハイ』
古処誠二
『接近』
梨木香歩
『家守綺譚』
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候補者・作品
乙一男25歳×各選考委員 
『ZOO』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
浅田次郎
男52歳
29 「実はこの種の小説は長い文学史を繙いてみればさほど珍しいものではなく、いつの時代にもどこの国にも、たいてい一人はいたように思う。」「彼ら先人に共通している点は、「面白い話」の背骨である哲学ないし美学の存在である。私にはそのあたりの骨量が、この作品にはどれも不足しているように思えた。」「正直のところ正体不明の小説」
北村薫
男54歳
36 「これはもう「SEVEN ROOMS」につきる。異空間を作っての、独自のルールに基づく物語は漫画『カイジ』などを思わせた。」「問題は作品集としての『ZOO』が選考の対象であることだ。(引用者中略)当然のことながら、収録作全てが熱くはない、という温度差も生まれる。その点で、強く推しにくくなってしまった。」
小池真理子
女51歳
48 「高く評価した。」「未だ何ものにも穢されていない、際立って透明な才能を覗き見ることができた。」「饒舌なシニシズムを目指そうとするあまりに、文章が粗削りになっている部分も確かにある。」「私はむしろ、この作者が内側に密かに抱きしめているに違いない抒情にこそ、強く惹かれた。」
重松清
男41歳
43 「いや、じつに面白い。個々の作品はもとより、一編を読み終えて次の作品へと進むときの「次はなにが出てくる?」というわくわくした思い――バラエティの魅力を堪能させてもらった。」「優れた作品の一方で、これはまだ磨く余地がありませんか、と申し上げたい作品も散見する。」「「次作に期待する」とは選評の常套句だが、それをクリシェではなく精一杯の心を込めて、氏に捧げたいと思う。」
篠田節子
女48歳
31 「ポップで幾何学的な雰囲気と展開の軽さで大いに楽しませてくれた。」「正当に評価できるのは、ゲームと映像によって育まれた文化に強い親和性を持った人々(個人差があるので世代とは言わない)だろう。そうした意味で、私はいい読み手ではない。」「着想の面白さが少年漫画的な叙情、ないしは凡庸なサスペンスに帰結してしまうことに強い不満を覚えた。」
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他の候補作
熊谷達也
『邂逅の森』
横山秀夫
『クライマーズ・ハイ』
古処誠二
『接近』
梨木香歩
『家守綺譚』
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候補者・作品
横山秀夫男47歳×各選考委員 
『クライマーズ・ハイ』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
浅田次郎
男52歳
26 「もったいないの一言である。」「作者の小説はどれもそうだが、読者を魅きつけて余りある情熱を持っており、それが読みどころでもある。だが少くとも本作品においては、熱量の配分が適当ではないと感じた。」
北村薫
男54歳
39 「物語の矢の向かう先はどこなのか。(引用者中略)作品の、そして作者の放った矢の先は《大きい命と小さい命》の問題に刺さったわけだ。(引用者中略)だが、その物語の流れが要求している肝腎要の部分が弱い。ここに至って、折角の長編が、座りの悪い台座に載っているのを見せられたようになる。」
小池真理子
女51歳
32 「私には、主人公が生きている記者生活の現場と、息子の問題を抱えている家庭、安西という男と山に登ること……その三つがうまくつながってこなかった。」「作者が現代の毒、人間関係の刺の数々を描こうとした、その意気込みは充分、伝わってはくるものの、結局、この作品から私は、言い古された人生訓の匂いしか嗅ぎ取ることができなかった。」
重松清
男41歳
51 「とても残念な作品だった。」「人間味あふれるまなざしは、残念ながら「仕事」の外の世界へは必ずしも存分には注がれなかったのではないか。」「「仕事」と拮抗しうる、いや、拮抗しなければならないはずの「家族」「友情」の物語が、言葉の密度も含めて弱い気がするのだ。」
篠田節子
女48歳
28 「自分の愚かさを自覚しない主人公の視点で物語が展開していく。そのあたりは極めて小説的で、視点も題材の選択もたいへんに面白い。」「ただし登場人物の印象がどれもハイテンションだが平板。」「山や家族の問題などが、物語の本筋と並立したことも、この小説をややわかりにくくしている。」
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他の候補作
熊谷達也
『邂逅の森』
乙一
『ZOO』
古処誠二
『接近』
梨木香歩
『家守綺譚』
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候補者・作品
古処誠二男34歳×各選考委員 
『接近』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
浅田次郎
男52歳
30 「戦争を知らぬ世代が戦争を描くこと自体、相当に勇気が要る。」「あえて描ききろうとする作者の真摯さには握手を求めたい。」「強く推すことのできなかった理由は、ミステリーの手法に呪縛されている点と、さほど難解なストーリーではないのに、余分な知的処理によってかえって話を不明瞭にしてしまった点である。」
北村薫
男54歳
32 「整った構成が、はたして作品にとって良かったか悪かったか、疑問である。」「弥一にとって「帝国軍人」が「アメリカ軍人」であったのは、存在の根底を揺るがされることだが、「サカノ」にとって、それは揺るがぬ自明のことだ。」「最後の場面も、構成上の首尾を一貫させたという意味はあるが、弥一の主観が「サカノ」の胸に食い入ったとは、思えない。」
小池真理子
女51歳
19 「時折、挿入されるモノローグふうの数行も含め、私にとっては全体が小説ではなく、長大な散文詩のような印象しか残らない作品であった。」「テーマはむろんのこと、一つ一つのモチーフも、読み手を惹きつけてやまないのに、せっかく読者が物語に溺れ、感情移入しかけると、作者はふっと横を向いてしまって、こちらは置いてけぼりを食らってしまう」
重松清
男41歳
43 「どうしても一点気になるところがあった。」「それは言語の衝突、葛藤についての問題である。」「物語の縦糸だけでなく、ピジンやクレオールとも通底する言語の混成という横糸も強く紡いでほしかった。」
篠田節子
女48歳
55 「この作品を批評するにあたって、過去の戦争文学の持つ切迫感と比較するのは誤りだ。」「愛憎と信頼、裏切りのドラマだ。」「沖縄戦という、体験者によって書き尽くされた題材を、この一点で切り取り、中編作品に仕上げた才気にも敬服した。」「戦争の本質と踏み躙られていく人々の悲しみと苦悩を描き出した佳品だと思う。」
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他の候補作
熊谷達也
『邂逅の森』
乙一
『ZOO』
横山秀夫
『クライマーズ・ハイ』
梨木香歩
『家守綺譚』
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候補者・作品
梨木香歩女(45歳)×各選考委員 
『家守綺譚』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
浅田次郎
男52歳
48 「とりわけ感心した」「あえて同日の三島由紀夫賞に回さず、山本賞の候補に上げた振興会の炯眼にまず敬意を表する。」「歳時記の草花を媒介として現ならざるものをいちいち招来せしめるというアイデアは非凡である。」「作者の資質が詩人ではなく小説家であるという確証を欲しいと考えた。」「受賞作との間に得点の差がありすぎた。」
北村薫
男54歳
35 「それ(引用者注:「邂逅の森」)に次ぐ作として――というより、全く傾向が違う、比較を絶した一冊として『家守綺譚』を選んだ。」「問題は、その世界が魅力的かどうか、である。わたしにとっては、間違いなく、そうであった。短編集というよりは、巻かれた長い、懐かしい絵巻を開きつつ、文章化したものと思えた。」
小池真理子
女51歳
40 「どれほど唸らせてくれるのだろう、というわくわくした思いは、途中から失望感に変わってしまった。」「怪異が起こったり、異形のものが登場したりしてきても、それらは日常の、春風のごとき、のどかな風景の中に紛れこんでしまっている。」「文章にも湿感が希薄で、幻想的な興奮も、耽美の果てを思わせるものも、何も感じることができずに、私にはただひとえに退屈だった。」
重松清
男41歳
42 「近代と前近代のあわいを、対立の構図ではなくむしろ融和と交歓によって描き出す歳時記として、とても面白く読ませてもらった。だが一方で多少のとりとめのなさを抱いてしまったのも率直な感想で、再読の際は、一見幸福な場面の連なりに見える本作の奥に、そのふわっとした魅力を裏打ちする翳りを見出すための読書となった。」「『邂逅の森』と本作との二作受賞に票を投じた。」
篠田節子
女48歳
27 「上品で美しいミニアチュール集だ。」「上質な少女漫画のロマンティシズム、童話の優しさ。欠点の見あたらない作品だ。」「減点法でいくなら、この作品を一番に推した。反面、格別の魅力も感じられないのは、こちらの感性によるものだろうか。」「この作品に幻想小説的な耽美の毒など期待しない。しかし妖しさはあってもよかった。」
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他の候補作
熊谷達也
『邂逅の森』
乙一
『ZOO』
横山秀夫
『クライマーズ・ハイ』
古処誠二
『接近』
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