<img src="../images/title_senpyo.gif" alt="芥川賞選評の概要" width="276" height="297">

選評なし

候補作

評価

行数

評価

行数

評価

行数

評価

行数

評価

行数

評価

行数

評価

行数

評価

行数

評価

行数

評価

行数

評価

行数

評価

行数

芝木好子　「青果の市」

87枚

27歳

◎

○

■

○

□

○

△

―

水原吉郎　「火渦」等

71枚

33歳

■

△

○

■

△

□

○

―

野川隆　「狗宝」

39枚

40歳

■

・

△

・

■

△

―

牧屋善三　『世間知らず』

301枚

34歳

―

●

―

青山光二　「海辺の人」

84枚

28歳

―

■

―

△

―

木山捷平　「卵」

23枚

37歳

―

●

―

仲町貞子　「二つの蜜柑」

12枚

47歳

―

●

―

佐藤虎男　「風雪」

110枚

(34歳)

―

●

―

秋山正香　「蕗の葉」

―

38歳

―

●

―

△

―

中井正晃　『裸身の道』

334枚

39歳

―

●

―

佐藤民宝　『軍鶏』

344枚

29歳

―

●

―

那須辰造　「次郎兵衛物語」

89枚

37歳

―

●

―

森田素夫　「秘曲」

47枚

30歳

―

■

―

井上健次　「邂逅」

79枚

33歳

―

■

―

西川満　「元宵記」

42枚

33歳

―

●

―

船山馨　「北国物語」

282枚

27歳

―

■

―

筒井敏雄　「開化一族」

200枚

36歳

―

■

―

■

―

藤口透吉　「駅逓物語」

98枚

32歳

―

●

―

田村さえ　「峠の家」

―

(28歳)

―

●

―

吉井三郎　「悪戯者」

91枚

(32歳)

―

■

―

欠席

年齢/枚数の説明

見方・注意点

このページの選評出典：『芥川賞全集　第三巻』昭和57年/1982年4月・文藝春秋刊　再録（初出：『文藝春秋』昭和17年/1942年3月号）
1行当たりの文字数：26字

このページの「話の屑籠」出典：昭和35年/1960年4月・文藝春秋新社刊『菊池寛文學全集　第七巻』（初出：『文藝春秋』昭和17年/1942年3月号）

選考委員

久米正雄

50歳×各候補作　

総行数27　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
芝木好子	27歳	全	◎	19	「相当に感心した。しっかりした筆で、しかも素直に描いてあり、小説になっている。現在の時局に照らして見て、若干の危険性を感じはしたが、是は、決して一個の、世相批判ではない。」「賢明なる文化政策を執る人々は、恐らく此の作品を、充分許さるべき民の声として、真面目に聴いて呉れるだろう。――そう考えつつ、私は敢て是を推賞する。」
水原吉郎	33歳	全	■	4	「描写は完璧とも云えるが、少し素材臭を感ぜさせ過ぎ、小説と云うよりは、記録と云いたいような所に難がある。人間と火渦との渾融が足りないのだ。」
野川隆	40歳	全	■	4	「正銘の満洲物で、一応面白いが何か足りない。葛西善蔵の小説「馬糞石」を思い比べて、小説と云うものには、何かもっと人間的交渉が、体臭となって立昇るのが、本筋のようだと思った。是では随筆のようだ。」
牧屋善三	34歳	全	―	0
青山光二	28歳	全	―	0
木山捷平	37歳	全	―	0
仲町貞子	47歳	全	―	0
佐藤虎男	(34歳)	全	―	0
秋山正香	38歳	全	―	0
中井正晃	39歳	全	―	0
佐藤民宝	29歳	全	―	0
那須辰造	37歳	全	―	0
森田素夫	30歳	全	―	0
井上健次	33歳	全	―	0
西川満	33歳	全	―	0
船山馨	27歳	全	―	0
筒井敏雄	36歳	全	―	0
藤口透吉	32歳	全	―	0
田村さえ	(28歳)	全	―	0
吉井三郎	(32歳)	全	―	0

他の選考委員

選考委員

小島政二郎

48歳×各候補作　

総行数28　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
芝木好子	27歳	全	◎	15	「感心した。私はこれに一票を投じた。女主人公八重の性格と生活とが、実に鮮かに描き出されている。私のように商ン人の家に生まれたものには、彼女の喜びも悲しみもひしと身に迫った。」「ただ八重の助手となって働いている弟と末次との描写はまずい。まずい原因もよく分っているし、同じ時代に作者として苦しく生きている私は満腔の同情を持っているのだが。」
水原吉郎	33歳	全	△	10	「「火渦」は（引用者中略）筆力雄勁で情景目にある如く、感心したが、一ケ所火柱の立つところが精確でない嫌いがあり、気になった。それに後半、主人公が心がうつろになって震災地を彷徨する描写が、むずかしいところだが、遠くに突っ放され過ぎて、読むものに心が通って来ない憾みがある。「腕」は、なお一段劣る。」
野川隆	40歳	全	・	2
牧屋善三	34歳	全	―	0
青山光二	28歳	全	―	0
木山捷平	37歳	全	―	0
仲町貞子	47歳	全	―	0
佐藤虎男	(34歳)	全	―	0
秋山正香	38歳	全	―	0
中井正晃	39歳	全	―	0
佐藤民宝	29歳	全	―	0
那須辰造	37歳	全	―	0
森田素夫	30歳	全	―	0
井上健次	33歳	全	―	0
西川満	33歳	全	―	0
船山馨	27歳	全	―	0
筒井敏雄	36歳	全	―	0
藤口透吉	32歳	全	―	0
田村さえ	(28歳)	全	―	0
吉井三郎	(32歳)	全	―	0
					「予選委員会の席上、今度は余り目星しい作品がないとの報告だったが、読んで見ると、数こそ少いが、流石にきびしい予選を通過しただけあって、皆相当面白かった。」

他の選考委員

選考委員

川端康成

42歳×各候補作　

総行数25　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
芝木好子	27歳	全	○	12	「（引用者注：「火渦」と）いずれを選ぶべきか、私ははっきりせず、と云うよりも、出来るならば、両方に授賞してほしかった。」「主人公の娘のけなげで必死な生き方が作品の呼吸となって、非常な好意を持たずにいられない。強く張っている。表現も確かである。結末近くから甚だ薄手になるのも、或いはやむをえないことだったろうか。」
水原吉郎	33歳	全	○	13	「（引用者注：「青果の市」と）いずれを選ぶべきか、私ははっきりせず、と云うよりも、出来るならば、両方に授賞してほしかった。」「「腕」、「ジュリエット」以来、私の注目している新進作家である。賞の選ということで改まって臨むと、作品の重量感、材料の豊富、異例など、要するに物々しい構えに、自然と押され勝ちで、作者生来の才質が二の次となる傾きもある。そういう考えからも私は水原氏の特異な才能を珍重したかった。」
野川隆	40歳	全	△	4	「面白い短篇であった。満人の農民の面影がうかがえる。将来が期待出来るだろう。」
牧屋善三	34歳	全	―	0
青山光二	28歳	全	―	0
木山捷平	37歳	全	―	0
仲町貞子	47歳	全	―	0
佐藤虎男	(34歳)	全	―	0
秋山正香	38歳	全	―	0
中井正晃	39歳	全	―	0
佐藤民宝	29歳	全	―	0
那須辰造	37歳	全	―	0
森田素夫	30歳	全	―	0
井上健次	33歳	全	―	0
西川満	33歳	全	―	0
船山馨	27歳	全	―	0
筒井敏雄	36歳	全	―	0
藤口透吉	32歳	全	―	0
田村さえ	(28歳)	全	―	0
吉井三郎	(32歳)	全	―	0
					「予選会では、（引用者中略）わずか三篇しか選び出すことが出来なかった。」「諸方からの推薦には、全く問題にしようがなく、推薦の真意の解せぬ作品も、かなりあった。いい作品を逸せぬためには、推薦の多いに越すことはないのだが、多少の責任を推薦者は持ってほしいものである。」

他の選考委員

選考委員

宇野浩二

50歳×各候補作　

総行数70　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
芝木好子	27歳	全	■	23	「一ばん評判がよかったけれど、その中には、前にやはり候補になった、「双流」という小説を考慮にいれて、推す人もあった。私もその一人であるが、この小説は、仮りに題材が面白いとしても、妙に堅実で、常識的なところがある。」「うまいところはあるとしても、さして新らし味もないので、賞に価しない、と思った。」「決定しようという会の時に、この小説を賞にきめてもよいが、この小説の主題が、この重大な時に、差し支えがある、という事が問題になって、（引用者中略）結局、終りの方を作者の諒解を得て、直してもらって、発表しよう、という事になった。」
水原吉郎	33歳	全	■	10	「「火渦」は、書き方に内田百間風なところがあるが、百間よりは、地味で、写生文めいたところもあって、やはり、面白い。しかし、小説としては、何か欠けている上に、本筋ではない。それに、終りの方がよくない。しかし、銓衡委員の中にはこの作品を可なり買う人が多かったが、私はどうしても賛成できない。」
野川隆	40歳	全	・	1
牧屋善三	34歳	全	●	5	「これまで書いて来た小説のなかで、出来のわるいものである。」
青山光二	28歳	全	■	5	「妙に面白いところがあるが、その妙に面白いところが欠点である、というような、妙な小説である。」
木山捷平	37歳	全	●	4	「これまで書いて来た小説のなかで、出来のわるいものである。」
仲町貞子	47歳	全	●	3	「話にならず、」
佐藤虎男	(34歳)	全	●	4	「これまで書いて来た小説のなかで、出来のわるいものである。」
秋山正香	38歳	全	●	5	「これまで書いて来た小説のなかで、出来のわるいものである。」
中井正晃	39歳	全	●	6	「題も妙であり、この世でないこの世の痛々しい人間の生活を題材にしながら、作者が、くどくどと書き過ぎている上に、面白おかしく述べ過ぎたので、せっかくの材料を台なしにして、独り合点の小説になってしまった。」
佐藤民宝	29歳	全	●	2	「粗末であり、」
那須辰造	37歳	全	●	4	「これまで書いて来た小説のなかで、出来のわるいものである。」
森田素夫	30歳	全	■	6	「妙な小説で、（引用者中略）浪曼風なところが多分にあって、たよりないようなところに面白味があるとしても、いかにも果かない作品である。」
井上健次	33歳	全	■	2	「面白いところはあるが、物足りない。」
西川満	33歳	全	●	5	「これまで書いて来た小説のなかで、出来のわるいものである。」
船山馨	27歳	全	■	5	「目のつけどころは幾らか面白いが、それをつまらなく書き、その書き方に楽をしているので、失敗している。」
筒井敏雄	36歳	全	■	4	「力作ではあるが、後半はあまり落ちるので、力（腕）のない小説」
藤口透吉	32歳	全	●	4	「これまで書いて来た小説のなかで、出来のわるいものである。」
田村さえ	(28歳)	全	●	4	「小説らしく作ってあるが、幼稚」
吉井三郎	(32歳)	全	■	5	「ちょっと達者に書いてあるが、妙に、筋をこしらえ、ひねってあるのが、却ってよくない。しかし、ちょっと面白い。」
					「中には、どうして、こういう作品を推薦したのであろう、と、推薦した人の観照眼（その他）が疑われるものさえ少くなかった。」

他の選考委員

選考委員

佐藤春夫

49歳×各候補作　

総行数18　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
芝木好子	27歳	全	○	18	「さばさばとこだわりのないそれでいて描写力もコクも可なりそなわった筆致は品位も悪くなく好もしい作風で作者の才能とともに人柄の好さを思わせて好意のもてる作品である。」「折角風格ともいうべきものが具わりながらそれが稍通俗という難もありそうだし、それよりも問題は現代の世相に即したこの素材の取扱いの困難の上にあろう。」「しかし作者の人柄がこの点をも救っているかと思う。」
水原吉郎	33歳	全	■	2	「新らしい美を多少具えているにしても稍畸形で小粒にすぎる」
野川隆	40歳	全	■	2	「新らしい美を多少具えているにしても稍畸形で小粒にすぎる」
牧屋善三	34歳	全	―	0
青山光二	28歳	全	―	0
木山捷平	37歳	全	―	0
仲町貞子	47歳	全	―	0
佐藤虎男	(34歳)	全	―	0
秋山正香	38歳	全	―	0
中井正晃	39歳	全	―	0
佐藤民宝	29歳	全	―	0
那須辰造	37歳	全	―	0
森田素夫	30歳	全	―	0
井上健次	33歳	全	―	0
西川満	33歳	全	―	0
船山馨	27歳	全	―	0
筒井敏雄	36歳	全	―	0
藤口透吉	32歳	全	―	0
田村さえ	(28歳)	全	―	0
吉井三郎	(32歳)	全	―	0

他の選考委員

選考委員

瀧井孝作

47歳×各候補作　

総行数35　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
芝木好子	27歳	全	□	7	「読後すこし淋しい感じの残る点物足らぬ感じがした。これは銓衡会の席上で、いろいろ問題になり、結局作者に、結末の所を描足してもらえば宜いと云うことで、授賞と定った。」「（引用者注：過去の作の）「双流」よりもムキで純粋な感じで、好いと思った。」
水原吉郎	33歳	全	△	6	「今回「火渦」と「腕」と二つ合せてぼくは候補に宜かろうと思った。大火災の惨状の克明なまざまざした描写などから、東京が爆撃にあうもしもの場合なども思いやられた。」
野川隆	40歳	全	△	5	「在満の作家らしいが、これは満洲の農夫の姿を写して、相当に雰囲気を出しているらしかった。」「これだけ描けるのは腕はすぐれていると思った。」
牧屋善三	34歳	全	―	0
青山光二	28歳	全	△	5	「人妻の家出の場面を描いた作で、この題材には腹を立てながら読んだ。実に愚かな葛藤を描いてあるが、一面人間の真実が描いてあると思った。」「この人には何か熱と力があるらしいと思った。」
木山捷平	37歳	全	―	0
仲町貞子	47歳	全	―	0
佐藤虎男	(34歳)	全	―	0
秋山正香	38歳	全	△	3	「永井荷風氏の作品に似てそれの稍薄手にしたような感じで、淡いがうまい面白味があると思った。」
中井正晃	39歳	全	―	0
佐藤民宝	29歳	全	―	0
那須辰造	37歳	全	―	0
森田素夫	30歳	全	―	0
井上健次	33歳	全	―	0
西川満	33歳	全	―	0
船山馨	27歳	全	―	0
筒井敏雄	36歳	全	■	4	「力のこもった作品だが、作者の眼は各々の人物に公平でないようで、溺れた所もあって、キッパリしていないと思った。」
藤口透吉	32歳	全	―	0
田村さえ	(28歳)	全	―	0
吉井三郎	(32歳)	全	―	0
					「今回は、これは好いと直ぐに云える位の、そんなにすぐれた作品はなかった。」

他の選考委員

選考委員

佐佐木茂索

47歳×各候補作　

総行数14　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
芝木好子	27歳	全	○	9	「曾て「双流」を書いた此の作者は、「青果の市」で確実な成長を示している。言い過ぎてよいものなら、更に次の成長を約束しているとも言える。」「甲斐甲斐しい女主人公を描いた前半には格別云うべき事もない。二人の青年の理窟めいた会話のあたりには肉附けの乏しさを感じさせる。」
水原吉郎	33歳	全	□	4	「捨て難い。」「悲惨事を描いて、しかも時に甚だ美しい。本来は美しさをこそ描くべき作者ででもあろうか。」
野川隆	40歳	全	―	0
牧屋善三	34歳	全	―	0
青山光二	28歳	全	―	0
木山捷平	37歳	全	―	0
仲町貞子	47歳	全	―	0
佐藤虎男	(34歳)	全	―	0
秋山正香	38歳	全	―	0
中井正晃	39歳	全	―	0
佐藤民宝	29歳	全	―	0
那須辰造	37歳	全	―	0
森田素夫	30歳	全	―	0
井上健次	33歳	全	―	0
西川満	33歳	全	―	0
船山馨	27歳	全	―	0
筒井敏雄	36歳	全	―	0
藤口透吉	32歳	全	―	0
田村さえ	(28歳)	全	―	0
吉井三郎	(32歳)	全	―	0

他の選考委員

選考委員

室生犀星

52歳×各候補作　

総行数25　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
芝木好子	27歳	全	△	4	「前半の正確な主格に於て、澄んだものすらあった。すくなくとも久米君のいう小説になっているところのものであり随筆的な水原君の作品とは、こういう意味でだんぜんちがうのかも知れない。」
水原吉郎	33歳	全	○	17	「「火渦」「腕」は震災に材を得たもので一読先ず打つところがあった。」「私はたった川端君一人の賛成を得ただけで、この作品をすいせんした。」「水原君の作品の溷濁をいといながら、それに平凡な一読者として捲きこまれたという実際問題については、先ず当然私にあるべき筈の批判すら少時は持ちえなかったとしたら、委員として少々ぼんくらであると云わざるをえない。」
野川隆	40歳	全	―	0
牧屋善三	34歳	全	―	0
青山光二	28歳	全	―	0
木山捷平	37歳	全	―	0
仲町貞子	47歳	全	―	0
佐藤虎男	(34歳)	全	―	0
秋山正香	38歳	全	―	0
中井正晃	39歳	全	―	0
佐藤民宝	29歳	全	―	0
那須辰造	37歳	全	―	0
森田素夫	30歳	全	―	0
井上健次	33歳	全	―	0
西川満	33歳	全	―	0
船山馨	27歳	全	―	0
筒井敏雄	36歳	全	―	0
藤口透吉	32歳	全	―	0
田村さえ	(28歳)	全	―	0
吉井三郎	(32歳)	全	―	0
					「私は私のすいせんするところの作品がいつも落ちてゆく姿を見るのも、私の不見識と否とにかかわらず、それがやっと私に与えられた役目であることもそろそろと遅蒔きながら感じることができるようになったのである。」

他の選考委員

選考委員

菊池寛

53歳×各候補作　

題（話の屑籠より）　

候補			評価	行数	評言
芝木好子	27歳	全	―
水原吉郎	33歳	全	―
野川隆	40歳	全	―
牧屋善三	34歳	全	―
青山光二	28歳	全	―
木山捷平	37歳	全	―
仲町貞子	47歳	全	―
佐藤虎男	(34歳)	全	―
秋山正香	38歳	全	―
中井正晃	39歳	全	―
佐藤民宝	29歳	全	―
那須辰造	37歳	全	―
森田素夫	30歳	全	―
井上健次	33歳	全	―
西川満	33歳	全	―
船山馨	27歳	全	―
筒井敏雄	36歳	全	―
藤口透吉	32歳	全	―
田村さえ	(28歳)	全	―
吉井三郎	(32歳)	全	―
					「別に意見がない。」

他の選考委員

受賞者・作品

芝木好子

27歳×各選考委員　

「青果の市」

短篇 87枚

選考委員			評価	行数	評言
久米正雄	50歳	全	◎	19	「相当に感心した。しっかりした筆で、しかも素直に描いてあり、小説になっている。現在の時局に照らして見て、若干の危険性を感じはしたが、是は、決して一個の、世相批判ではない。」「賢明なる文化政策を執る人々は、恐らく此の作品を、充分許さるべき民の声として、真面目に聴いて呉れるだろう。――そう考えつつ、私は敢て是を推賞する。」
小島政二郎	48歳	全	◎	15	「感心した。私はこれに一票を投じた。女主人公八重の性格と生活とが、実に鮮かに描き出されている。私のように商ン人の家に生まれたものには、彼女の喜びも悲しみもひしと身に迫った。」「ただ八重の助手となって働いている弟と末次との描写はまずい。まずい原因もよく分っているし、同じ時代に作者として苦しく生きている私は満腔の同情を持っているのだが。」
川端康成	42歳	全	○	12	「（引用者注：「火渦」と）いずれを選ぶべきか、私ははっきりせず、と云うよりも、出来るならば、両方に授賞してほしかった。」「主人公の娘のけなげで必死な生き方が作品の呼吸となって、非常な好意を持たずにいられない。強く張っている。表現も確かである。結末近くから甚だ薄手になるのも、或いはやむをえないことだったろうか。」
宇野浩二	50歳	全	■	23	「一ばん評判がよかったけれど、その中には、前にやはり候補になった、「双流」という小説を考慮にいれて、推す人もあった。私もその一人であるが、この小説は、仮りに題材が面白いとしても、妙に堅実で、常識的なところがある。」「うまいところはあるとしても、さして新らし味もないので、賞に価しない、と思った。」「決定しようという会の時に、この小説を賞にきめてもよいが、この小説の主題が、この重大な時に、差し支えがある、という事が問題になって、（引用者中略）結局、終りの方を作者の諒解を得て、直してもらって、発表しよう、という事になった。」
佐藤春夫	49歳	全	○	18	「さばさばとこだわりのないそれでいて描写力もコクも可なりそなわった筆致は品位も悪くなく好もしい作風で作者の才能とともに人柄の好さを思わせて好意のもてる作品である。」「折角風格ともいうべきものが具わりながらそれが稍通俗という難もありそうだし、それよりも問題は現代の世相に即したこの素材の取扱いの困難の上にあろう。」「しかし作者の人柄がこの点をも救っているかと思う。」
瀧井孝作	47歳	全	□	7	「読後すこし淋しい感じの残る点物足らぬ感じがした。これは銓衡会の席上で、いろいろ問題になり、結局作者に、結末の所を描足してもらえば宜いと云うことで、授賞と定った。」「（引用者注：過去の作の）「双流」よりもムキで純粋な感じで、好いと思った。」
佐佐木茂索	47歳	全	○	9	「曾て「双流」を書いた此の作者は、「青果の市」で確実な成長を示している。言い過ぎてよいものなら、更に次の成長を約束しているとも言える。」「甲斐甲斐しい女主人公を描いた前半には格別云うべき事もない。二人の青年の理窟めいた会話のあたりには肉附けの乏しさを感じさせる。」
室生犀星	52歳	全	△	4	「前半の正確な主格に於て、澄んだものすらあった。すくなくとも久米君のいう小説になっているところのものであり随筆的な水原君の作品とは、こういう意味でだんぜんちがうのかも知れない。」
菊池寛	53歳	全	―

他の候補作

候補者・作品

水原吉郎

33歳×各選考委員　

「火渦」等

短篇2篇 71枚

選考委員			評価	行数	評言
久米正雄	50歳	全	■	4	「描写は完璧とも云えるが、少し素材臭を感ぜさせ過ぎ、小説と云うよりは、記録と云いたいような所に難がある。人間と火渦との渾融が足りないのだ。」
小島政二郎	48歳	全	△	10	「「火渦」は（引用者中略）筆力雄勁で情景目にある如く、感心したが、一ケ所火柱の立つところが精確でない嫌いがあり、気になった。それに後半、主人公が心がうつろになって震災地を彷徨する描写が、むずかしいところだが、遠くに突っ放され過ぎて、読むものに心が通って来ない憾みがある。「腕」は、なお一段劣る。」
川端康成	42歳	全	○	13	「（引用者注：「青果の市」と）いずれを選ぶべきか、私ははっきりせず、と云うよりも、出来るならば、両方に授賞してほしかった。」「「腕」、「ジュリエット」以来、私の注目している新進作家である。賞の選ということで改まって臨むと、作品の重量感、材料の豊富、異例など、要するに物々しい構えに、自然と押され勝ちで、作者生来の才質が二の次となる傾きもある。そういう考えからも私は水原氏の特異な才能を珍重したかった。」
宇野浩二	50歳	全	■	10	「「火渦」は、書き方に内田百間風なところがあるが、百間よりは、地味で、写生文めいたところもあって、やはり、面白い。しかし、小説としては、何か欠けている上に、本筋ではない。それに、終りの方がよくない。しかし、銓衡委員の中にはこの作品を可なり買う人が多かったが、私はどうしても賛成できない。」
佐藤春夫	49歳	全	■	2	「新らしい美を多少具えているにしても稍畸形で小粒にすぎる」
瀧井孝作	47歳	全	△	6	「今回「火渦」と「腕」と二つ合せてぼくは候補に宜かろうと思った。大火災の惨状の克明なまざまざした描写などから、東京が爆撃にあうもしもの場合なども思いやられた。」
佐佐木茂索	47歳	全	□	4	「捨て難い。」「悲惨事を描いて、しかも時に甚だ美しい。本来は美しさをこそ描くべき作者ででもあろうか。」
室生犀星	52歳	全	○	17	「「火渦」「腕」は震災に材を得たもので一読先ず打つところがあった。」「私はたった川端君一人の賛成を得ただけで、この作品をすいせんした。」「水原君の作品の溷濁をいといながら、それに平凡な一読者として捲きこまれたという実際問題については、先ず当然私にあるべき筈の批判すら少時は持ちえなかったとしたら、委員として少々ぼんくらであると云わざるをえない。」
菊池寛	53歳	全	―

他の候補作

候補者・作品

野川隆

40歳×各選考委員　

「狗宝」

短篇 39枚

選考委員			評価	行数	評言
久米正雄	50歳	全	■	4	「正銘の満洲物で、一応面白いが何か足りない。葛西善蔵の小説「馬糞石」を思い比べて、小説と云うものには、何かもっと人間的交渉が、体臭となって立昇るのが、本筋のようだと思った。是では随筆のようだ。」
小島政二郎	48歳	全	・	2
川端康成	42歳	全	△	4	「面白い短篇であった。満人の農民の面影がうかがえる。将来が期待出来るだろう。」
宇野浩二	50歳	全	・	1
佐藤春夫	49歳	全	■	2	「新らしい美を多少具えているにしても稍畸形で小粒にすぎる」
瀧井孝作	47歳	全	△	5	「在満の作家らしいが、これは満洲の農夫の姿を写して、相当に雰囲気を出しているらしかった。」「これだけ描けるのは腕はすぐれていると思った。」
佐佐木茂索	47歳	全	―	0
室生犀星	52歳	全	―	0
菊池寛	53歳	全	―

他の候補作

候補者・作品

牧屋善三

34歳×各選考委員　

『世間知らず』

長篇 301枚

選考委員			評価	行数	評言
久米正雄	50歳	全	―	0
小島政二郎	48歳	全	―	0
川端康成	42歳	全	―	0
宇野浩二	50歳	全	●	5	「これまで書いて来た小説のなかで、出来のわるいものである。」
佐藤春夫	49歳	全	―	0
瀧井孝作	47歳	全	―	0
佐佐木茂索	47歳	全	―	0
室生犀星	52歳	全	―	0
菊池寛	53歳	全	―

他の候補作

候補者・作品

青山光二

28歳×各選考委員　

「海辺の人」

短篇 84枚

選考委員			評価	行数	評言
久米正雄	50歳	全	―	0
小島政二郎	48歳	全	―	0
川端康成	42歳	全	―	0
宇野浩二	50歳	全	■	5	「妙に面白いところがあるが、その妙に面白いところが欠点である、というような、妙な小説である。」
佐藤春夫	49歳	全	―	0
瀧井孝作	47歳	全	△	5	「人妻の家出の場面を描いた作で、この題材には腹を立てながら読んだ。実に愚かな葛藤を描いてあるが、一面人間の真実が描いてあると思った。」「この人には何か熱と力があるらしいと思った。」
佐佐木茂索	47歳	全	―	0
室生犀星	52歳	全	―	0
菊池寛	53歳	全	―

他の候補作

候補者・作品

木山捷平

37歳×各選考委員　

「卵」

短篇 23枚

選考委員			評価	行数	評言
久米正雄	50歳	全	―	0
小島政二郎	48歳	全	―	0
川端康成	42歳	全	―	0
宇野浩二	50歳	全	●	4	「これまで書いて来た小説のなかで、出来のわるいものである。」
佐藤春夫	49歳	全	―	0
瀧井孝作	47歳	全	―	0
佐佐木茂索	47歳	全	―	0
室生犀星	52歳	全	―	0
菊池寛	53歳	全	―

他の候補作

候補者・作品

仲町貞子

47歳×各選考委員　

「二つの蜜柑」

短篇 12枚

選考委員			評価	行数	評言
久米正雄	50歳	全	―	0
小島政二郎	48歳	全	―	0
川端康成	42歳	全	―	0
宇野浩二	50歳	全	●	3	「話にならず、」
佐藤春夫	49歳	全	―	0
瀧井孝作	47歳	全	―	0
佐佐木茂索	47歳	全	―	0
室生犀星	52歳	全	―	0
菊池寛	53歳	全	―

他の候補作

候補者・作品

佐藤虎男

(34歳)×各選考委員　

「風雪」

短篇 110枚

選考委員			評価	行数	評言
久米正雄	50歳	全	―	0
小島政二郎	48歳	全	―	0
川端康成	42歳	全	―	0
宇野浩二	50歳	全	●	4	「これまで書いて来た小説のなかで、出来のわるいものである。」
佐藤春夫	49歳	全	―	0
瀧井孝作	47歳	全	―	0
佐佐木茂索	47歳	全	―	0
室生犀星	52歳	全	―	0
菊池寛	53歳	全	―

他の候補作

候補者・作品

秋山正香

38歳×各選考委員　

「蕗の葉」

不明 ―

選考委員			評価	行数	評言
久米正雄	50歳	全	―	0
小島政二郎	48歳	全	―	0
川端康成	42歳	全	―	0
宇野浩二	50歳	全	●	5	「これまで書いて来た小説のなかで、出来のわるいものである。」
佐藤春夫	49歳	全	―	0
瀧井孝作	47歳	全	△	3	「永井荷風氏の作品に似てそれの稍薄手にしたような感じで、淡いがうまい面白味があると思った。」
佐佐木茂索	47歳	全	―	0
室生犀星	52歳	全	―	0
菊池寛	53歳	全	―

他の候補作

候補者・作品

中井正晃

39歳×各選考委員　

『裸身の道』

短篇集3篇 334枚

選考委員			評価	行数	評言
久米正雄	50歳	全	―	0
小島政二郎	48歳	全	―	0
川端康成	42歳	全	―	0
宇野浩二	50歳	全	●	6	「題も妙であり、この世でないこの世の痛々しい人間の生活を題材にしながら、作者が、くどくどと書き過ぎている上に、面白おかしく述べ過ぎたので、せっかくの材料を台なしにして、独り合点の小説になってしまった。」
佐藤春夫	49歳	全	―	0
瀧井孝作	47歳	全	―	0
佐佐木茂索	47歳	全	―	0
室生犀星	52歳	全	―	0
菊池寛	53歳	全	―

他の候補作

候補者・作品

佐藤民宝

29歳×各選考委員　

『軍鶏』

短篇集9篇 344枚

選考委員			評価	行数	評言
久米正雄	50歳	全	―	0
小島政二郎	48歳	全	―	0
川端康成	42歳	全	―	0
宇野浩二	50歳	全	●	2	「粗末であり、」
佐藤春夫	49歳	全	―	0
瀧井孝作	47歳	全	―	0
佐佐木茂索	47歳	全	―	0
室生犀星	52歳	全	―	0
菊池寛	53歳	全	―

他の候補作

候補者・作品

那須辰造

37歳×各選考委員　

「次郎兵衛物語」

短篇 89枚

選考委員			評価	行数	評言
久米正雄	50歳	全	―	0
小島政二郎	48歳	全	―	0
川端康成	42歳	全	―	0
宇野浩二	50歳	全	●	4	「これまで書いて来た小説のなかで、出来のわるいものである。」
佐藤春夫	49歳	全	―	0
瀧井孝作	47歳	全	―	0
佐佐木茂索	47歳	全	―	0
室生犀星	52歳	全	―	0
菊池寛	53歳	全	―

他の候補作

候補者・作品

森田素夫

30歳×各選考委員　

「秘曲」

短篇 47枚

選考委員			評価	行数	評言
久米正雄	50歳	全	―	0
小島政二郎	48歳	全	―	0
川端康成	42歳	全	―	0
宇野浩二	50歳	全	■	6	「妙な小説で、（引用者中略）浪曼風なところが多分にあって、たよりないようなところに面白味があるとしても、いかにも果かない作品である。」
佐藤春夫	49歳	全	―	0
瀧井孝作	47歳	全	―	0
佐佐木茂索	47歳	全	―	0
室生犀星	52歳	全	―	0
菊池寛	53歳	全	―

他の候補作

候補者・作品

井上健次

33歳×各選考委員　

「邂逅」

短篇 79枚

選考委員			評価	行数	評言
久米正雄	50歳	全	―	0
小島政二郎	48歳	全	―	0
川端康成	42歳	全	―	0
宇野浩二	50歳	全	■	2	「面白いところはあるが、物足りない。」
佐藤春夫	49歳	全	―	0
瀧井孝作	47歳	全	―	0
佐佐木茂索	47歳	全	―	0
室生犀星	52歳	全	―	0
菊池寛	53歳	全	―

他の候補作

候補者・作品

西川満

33歳×各選考委員　

「元宵記」

短篇 42枚

選考委員			評価	行数	評言
久米正雄	50歳	全	―	0
小島政二郎	48歳	全	―	0
川端康成	42歳	全	―	0
宇野浩二	50歳	全	●	5	「これまで書いて来た小説のなかで、出来のわるいものである。」
佐藤春夫	49歳	全	―	0
瀧井孝作	47歳	全	―	0
佐佐木茂索	47歳	全	―	0
室生犀星	52歳	全	―	0
菊池寛	53歳	全	―

他の候補作

候補者・作品

船山馨

27歳×各選考委員　

「北国物語」

中篇 282枚

選考委員			評価	行数	評言
久米正雄	50歳	全	―	0
小島政二郎	48歳	全	―	0
川端康成	42歳	全	―	0
宇野浩二	50歳	全	■	5	「目のつけどころは幾らか面白いが、それをつまらなく書き、その書き方に楽をしているので、失敗している。」
佐藤春夫	49歳	全	―	0
瀧井孝作	47歳	全	―	0
佐佐木茂索	47歳	全	―	0
室生犀星	52歳	全	―	0
菊池寛	53歳	全	―

他の候補作

候補者・作品

筒井敏雄

36歳×各選考委員　

「開化一族」

中篇 200枚

選考委員			評価	行数	評言
久米正雄	50歳	全	―	0
小島政二郎	48歳	全	―	0
川端康成	42歳	全	―	0
宇野浩二	50歳	全	■	4	「力作ではあるが、後半はあまり落ちるので、力（腕）のない小説」
佐藤春夫	49歳	全	―	0
瀧井孝作	47歳	全	■	4	「力のこもった作品だが、作者の眼は各々の人物に公平でないようで、溺れた所もあって、キッパリしていないと思った。」
佐佐木茂索	47歳	全	―	0
室生犀星	52歳	全	―	0
菊池寛	53歳	全	―

他の候補作

候補者・作品

藤口透吉

32歳×各選考委員　

「駅逓物語」

短篇 98枚

選考委員			評価	行数	評言
久米正雄	50歳	全	―	0
小島政二郎	48歳	全	―	0
川端康成	42歳	全	―	0
宇野浩二	50歳	全	●	4	「これまで書いて来た小説のなかで、出来のわるいものである。」
佐藤春夫	49歳	全	―	0
瀧井孝作	47歳	全	―	0
佐佐木茂索	47歳	全	―	0
室生犀星	52歳	全	―	0
菊池寛	53歳	全	―

他の候補作

候補者・作品

田村さえ

(28歳)×各選考委員　

「峠の家」

不明 ―

選考委員			評価	行数	評言
久米正雄	50歳	全	―	0
小島政二郎	48歳	全	―	0
川端康成	42歳	全	―	0
宇野浩二	50歳	全	●	4	「小説らしく作ってあるが、幼稚」
佐藤春夫	49歳	全	―	0
瀧井孝作	47歳	全	―	0
佐佐木茂索	47歳	全	―	0
室生犀星	52歳	全	―	0
菊池寛	53歳	全	―

他の候補作

候補者・作品

吉井三郎

(32歳)×各選考委員　

「悪戯者」

短篇 91枚