第77回

第76回第78回

昭和52年/1977年上半期 昭和52年/1977年7月14日決定発表／『オール讀物』昭和52年/1977年10月号選評掲載

選考委員　 水上勉 58歳 今日出海 73歳 松本清張 67歳 司馬遼太郎 53歳 源氏鶏太 65歳 村上元三 67歳 石坂洋次郎 77歳 柴田錬三郎 60歳 川口松太郎 77歳 選評総行数　 63 45 56 66 55 52 47 55 38 評 評 評 評 評 評 評 評 評 候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 谷恒生　『喜望峰』 615枚 31歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ● 5 ● 9 ― 0 △ 8 □ 10 青山光二　「竹生島心中」 230枚 64歳 評 □ 13 ○ 16 ● 5 ― 0 ◎ 10 ● 6 ● 4 △ 3 □ 10 井口恵之　「つゆ」 72枚 48歳 評 ◎ 26 □ 18 ○ 12 ― 0 ● 7 △ 4 △ 4 ● 6 △ 10 色川武大　『怪しい来客簿』 508枚 48歳 評 ◎ 39 ― 0 ○ 18 ― 0 ○ 21 ● 8 ― 0 □ 7 △ 10 西村寿行　「魔笛が聴こえる」 479枚 46歳 評 ― 0 ― 0 ● 12 ― 0 ■ 4 ■ 4 ― 0 △ 9 □ 10 松代達生　「飛べない天使」 191枚 43歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ● 4 ● 3 ◎ 23 ― 0 ― 0 平田敬　『喝采の谷』 413枚 46歳 評 ― 0 ― 0 ― 0 ― 0 ● 4 ■ 7 ― 0 ― 0 ― 0 楢山芙二夫　『マンハッタンのバラード』 489枚 29歳 評 ― 0 ― 0 ● 6 ― 0 ● 5 ― 0 ― 0 △ 10 ― 0                 欠席 書面回答 年齢/枚数の説明   見方・注意点

水上勉58歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題描写と視線の妙　総行数63　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 谷恒生 31歳 全 ― 0   青山光二 64歳 全 □ 13 「少し前半がながすぎた。後半にきて面白くなる。誠実な筆致はわかるが、そこまでつよくひきずってゆく力がよわい。」 井口恵之 48歳 全 ◎ 26 「簡潔な文体のなかに、よく今日の庶民の哀歓がにじみ、古いようでも新しいところが見えるのに感心していた。」「ところどころ光る描写、器用にたたきこむ手腕は、充分にこの世界なら、いくらも書ける力を感じさせた。」 色川武大 48歳 全 ◎ 39 「身辺の何でもないことを書いても、視線の妙が光る。「墓」などまことにいい。授賞してもいい作品だと思うが、これも反対者が多く、票数で敗けた。」「この文集も、二どと書けない作者にとって大切なことが刻まれていた。」 西村寿行 46歳 全 ― 0   松代達生 43歳 全 ― 0   平田敬 46歳 全 ― 0   楢山芙二夫 29歳 全 ― 0

他の選考委員 今日出海 松本清張 司馬遼太郎 源氏鶏太 村上元三 石坂洋次郎 柴田錬三郎 川口松太郎

今日出海73歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題惜しい作品　総行数45　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 谷恒生 31歳 全 ― 0   青山光二 64歳 全 ○ 16 「作家修業の長い青山光二氏の作品などは今回の候補作品では秀れていた。また作家としての腕もあり、その生活や人生観の特異性ではやはり魅力のある作家であり、作品だと思う。」 井口恵之 48歳 全 □ 18 「捨て難い作品である。」「独自性はあり、私なども引かれる作品であったことは否めない。」 色川武大 48歳 全 ― 0   西村寿行 46歳 全 ― 0   松代達生 43歳 全 ― 0   平田敬 46歳 全 ― 0   楢山芙二夫 29歳 全 ― 0     「候補作品に優秀作がなかったとは必ずしも言えぬ。粒は揃っていたが、出来ばえがどれにも一長一短という微妙な相異があり、甲論乙駁を続けた揚句、授賞作なしという結果になったのである。」	他の選考委員 水上勉 松本清張 司馬遼太郎 源氏鶏太 村上元三 石坂洋次郎 柴田錬三郎 川口松太郎

松本清張67歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題井口氏に期待する　総行数56　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 谷恒生 31歳 全 ― 0   青山光二 64歳 全 ● 5 「これ（引用者注：「つゆ」）にくらべるとおなじ心中ものでも（引用者中略）やはり旧時代のものという感じをまぬがれ得なかった。」 井口恵之 48歳 全 ○ 12 「場末の小さな印刷所の状態がよくかけているし、情死の原因も借金に苦しむ男に女が同情するという乾いたもので現代風俗が出ている。」「ただ、これ一作だけで直木賞とするにはためらう。」 色川武大 48歳 全 ○ 18 「義務的に読ませられるという感じでなしにたのしく読んだ」「達意の文章で、身辺雑記ふうでありながら脚色も入って面白い読みものになっている。だが、あまりに断片挿話の寄せあつめ式で、連作とみるには一貫性がない。」 西村寿行 46歳 全 ● 12 「前候補作よりも見劣りがする。」「プロットの無理と、パターンのマンネリ化と、文章の粗雑さと、騒々しさだけが伝わる。」「多忙という理由は、読者にむけては理由にならないのである。」 松代達生 43歳 全 ― 0   平田敬 46歳 全 ― 0   楢山芙二夫 29歳 全 ● 6 「同じ世界をつづけて書くにしても、そのたびに新鮮なおどろきを与えるものでなければなるまい。」

他の選考委員 水上勉 今日出海 司馬遼太郎 源氏鶏太 村上元三 石坂洋次郎 柴田錬三郎 川口松太郎

司馬遼太郎53歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題「偏私」と「公平」　総行数66　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 谷恒生 31歳 全 ― 0   青山光二 64歳 全 ― 0   井口恵之 48歳 全 ― 0   色川武大 48歳 全 ― 0   西村寿行 46歳 全 ― 0   松代達生 43歳 全 ― 0   平田敬 46歳 全 ― 0   楢山芙二夫 29歳 全 ― 0     「私はこの賞を頂いたから、恩返しのつもりで選考委員の一人をつとめてきたが、どうも自分の性格からみて、こういう仕事に適合しているとは思えない。」「自分が推さなかった作品を他の委員がつよく推した場合、そういうこともあるのかと驚いてしまい、これは今後何年も残るな、とその瞬間から思い、気持が暗くなってしまう。」「このたびは、私は最初から受賞作がないと思っていたから、個々の選評は勝手ながら省かせて頂く。」	他の選考委員 水上勉 今日出海 松本清張 源氏鶏太 村上元三 石坂洋次郎 柴田錬三郎 川口松太郎

源氏鶏太65歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題青山氏と色川氏　総行数55　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 谷恒生 31歳 全 ● 5 「どの人物も類型的であることが物足りなかった。映画的な面白さに満ちていたが、それがマイナスと感じられた。」 青山光二 64歳 全 ◎ 10 「ひたむきに書き上げた労作であり、日露戦争の頃の時代色をよく描いていて青山氏の小説づくりのたしかさが出ていた。」 井口恵之 48歳 全 ● 7 「私は、二度読み返したが、授賞の水準にはやや遠いとしか思えなかった。」 色川武大 48歳 全 ○ 21 「いささか玉石混淆の感がないでもなかったが、薄気味悪かったり、ユーモラスであったり、かと思うと大真面目であったり、その才能を十分に感じさせた。」「ただここで作者は過去のすべてを吐き出してしまっていて、今後はどうなるかとの危惧が授賞を見送られた原因の一つになっていた。」 西村寿行 46歳 全 ■ 4 「その集団の狂気の描き方は見事であったが、それだけで終っていた。」 松代達生 43歳 全 ● 4 「小説というよりも作文に終っていて、せっかくの材料が活かし切れなかった。」 平田敬 46歳 全 ● 4 「この材料では長過ぎた。ホテルでの情事も不用でなかったろうか。」 楢山芙二夫 29歳 全 ● 5 「麻薬を扱ってアメリカの現代風俗を新鮮に描いているようだが、その実感は何か貧しかった。」

他の選考委員 水上勉 今日出海 松本清張 司馬遼太郎 村上元三 石坂洋次郎 柴田錬三郎 川口松太郎

村上元三67歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題気が重い　総行数52　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 谷恒生 31歳 全 ● 9 「主人公の稲村という一等航海士の行動は無責任で、ヒロイズムとは縁が遠い。南ア問題に引っかかって、日本船の乗組員全部が死んでしまい、女ひとり助かるというのも、どうも安っぽくて、後味もよくない。」 青山光二 64歳 全 ● 6 「衛戌病院の部分が長すぎる。古い作家歴を持っている人なのに、この作者は、読みやすい文章を書くということを忘れてしまったのだろうか。」 井口恵之 48歳 全 △ 4 「小品として筆力は買うが、次の作品を読ませてもらってからでいいと思う。」 色川武大 48歳 全 ● 8 「随筆集だと思うし銓衡に入る前、候補から外すべきだと言ったが、これを買う委員も多く、そのまま候補になった。あとで読み返しても、わたしはこれを小説とは思えなかった。」 西村寿行 46歳 全 ■ 4 「極彩色の劇画を見るような感じで、それなりに面白いが、エピローグでがっかりした。」 松代達生 43歳 全 ● 3 「作者の甘えには、どうしてもついて行けない。」 平田敬 46歳 全 ■ 7 「シロニーが谷を渡るのに成功する、とわかっていながら、ここまで読ませる筆力は認めたい。ただ、いかにも無駄を書きすぎる。」 楢山芙二夫 29歳 全 ― 0     「こんどは、候補になった八篇の中に、これはと思う作品がなかった。」

他の選考委員 水上勉 今日出海 松本清張 司馬遼太郎 源氏鶏太 石坂洋次郎 柴田錬三郎 川口松太郎

石坂洋次郎77歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題次回を待つ　総行数47　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 谷恒生 31歳 全 ― 0   青山光二 64歳 全 ● 4 「私はこの作品とかぎらず、心中物が好きでないので、推さなかった。」 井口恵之 48歳 全 △ 4 「心中と言えば、やはり同じ出来事を扱った「つゆ」も、話題にはのぼったが、審査をパス出来なかった。」 色川武大 48歳 全 ― 0   西村寿行 46歳 全 ― 0   松代達生 43歳 全 ◎ 23 「抜群に面白いと思ったが、会議の席上では下位の作品だということにされた。」「考え直してみると、私がこの作品にひきつけられたのは、まじめな勤人である夫は元・高校教師、堅実な主婦であるその妻はかつての教え子、健全な兄息子、不具者の二男、などという人物構成だったことによるもののようだ。」「私は大学を出てから、十三、四年間、東北地方の中等学校で教師を勤めていた。だから、理屈なしに「飛べない天使」にひきつけられたのであろう。」 平田敬 46歳 全 ― 0   楢山芙二夫 29歳 全 ― 0

他の選考委員 水上勉 今日出海 松本清張 司馬遼太郎 源氏鶏太 村上元三 柴田錬三郎 川口松太郎

柴田錬三郎60歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題もっと面白さを　総行数55　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 谷恒生 31歳 全 △ 8 「アメリカ製二世のスパイ・アクション的題材（引用者中略）の方が、（引用者注：「つゆ」や「竹生島心中」よりも）面白かった。もとより、それぞれに、高い点数をつけた次第ではない。」 青山光二 64歳 全 △ 3 「（引用者注：「魔笛が聴こえる」「喜望峰」「マンハッタンのバラード」の方が）「竹生島心中」（青山光二）よりも、面白かった。」 井口恵之 48歳 全 ● 6 「私の読後感は、きわめてひくい点数しか、与えなかった。」 色川武大 48歳 全 □ 7 「私は、おそらく、この作家が、生涯に一冊しか書けないであろう「怪しい来客簿」（色川武大）が、もし受賞するならば、敢えて反対するつもりはない、という考えで選考会に臨んだ。」 西村寿行 46歳 全 △ 9 「おそろしく乱暴な、荒唐無稽なストーリイ（引用者中略）の方が、（引用者注：「つゆ」や「竹生島心中」よりも）面白かった。もとより、それぞれに、高い点数をつけた次第ではない。」 松代達生 43歳 全 ― 0   平田敬 46歳 全 ― 0   楢山芙二夫 29歳 全 △ 10 「ニューヨークの片隅でうごめく、淫売婦と麻薬とホモの黒人と浮浪の日本人青年のくりひろげる今日的風俗の方が、（引用者注：「つゆ」や「竹生島心中」よりも）面白かった。もとより、それぞれに、高い点数をつけた次第ではない。」   「「直木賞」を与えるべき小説は、あくまでも、面白いエンターテイメントでなければならない、という気持を、このたびの候補作を読んで、ますます、深くした。」「結果は、ナシであった。当然であった、という思いがのこっている。」

他の選考委員 水上勉 今日出海 松本清張 司馬遼太郎 源氏鶏太 村上元三 石坂洋次郎 川口松太郎

川口松太郎77歳×各候補作

年齢/枚数の説明 見方・注意点

題選評　総行数38　（1行=14字） 候補 評価 行数 評言 谷恒生 31歳 全 □ 10 「決定的作品がなくて困ったが、（引用者中略）一応推した。」「欠点がありすぎる。」 青山光二 64歳 全 □ 10 「決定的作品がなくて困ったが、（引用者中略）一応推した。」「小説としては「竹生島心中」が首尾一貫していたが、それもやや古さが目立つ。」 井口恵之 48歳 全 △ 10 「あまり重きを置かなかった二作（引用者注：「つゆ」と「怪しい来客簿」）が最後まで残ったと聞いて意外な気がした。」 色川武大 48歳 全 △ 10 「あまり重きを置かなかった二作（引用者注：「つゆ」と「怪しい来客簿」）が最後まで残ったと聞いて意外な気がした。」 西村寿行 46歳 全 □ 10 「決定的作品がなくて困ったが、（引用者中略）一応推した。」「欠点がありすぎる。」 松代達生 43歳 全 ― 0   平田敬 46歳 全 ― 0   楢山芙二夫 29歳 全 ― 0     「現実に私は委員中の最高年齢に達してしまった。年の哀れはもうどうしようもない。」「今や文壇最高の登龍門ともいえる直木賞の委員に長くとどまるべきではない、という気がして来たのだ。」

他の選考委員 水上勉 今日出海 松本清張 司馬遼太郎 源氏鶏太 村上元三 石坂洋次郎 柴田錬三郎

谷恒生31歳×各選考委員　 『喜望峰』 長篇 615枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 水上勉 58歳 全 ― 0   今日出海 73歳 全 ― 0   松本清張 67歳 全 ― 0   司馬遼太郎 53歳 全 ― 0   源氏鶏太 65歳 全 ● 5 「どの人物も類型的であることが物足りなかった。映画的な面白さに満ちていたが、それがマイナスと感じられた。」 村上元三 67歳 全 ● 9 「主人公の稲村という一等航海士の行動は無責任で、ヒロイズムとは縁が遠い。南ア問題に引っかかって、日本船の乗組員全部が死んでしまい、女ひとり助かるというのも、どうも安っぽくて、後味もよくない。」 石坂洋次郎 77歳 全 ― 0   柴田錬三郎 60歳 全 △ 8 「アメリカ製二世のスパイ・アクション的題材（引用者中略）の方が、（引用者注：「つゆ」や「竹生島心中」よりも）面白かった。もとより、それぞれに、高い点数をつけた次第ではない。」 川口松太郎 77歳 全 □ 10 「決定的作品がなくて困ったが、（引用者中略）一応推した。」「欠点がありすぎる。」

他の候補作 青山光二 「竹生島心中」 井口恵之 「つゆ」 色川武大 『怪しい来客簿』 西村寿行 「魔笛が聴こえる」 松代達生 「飛べない天使」 平田敬 『喝采の谷』 楢山芙二夫 『マンハッタンのバラード』

青山光二64歳×各選考委員　 「竹生島心中」 中篇 230枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 水上勉 58歳 全 □ 13 「少し前半がながすぎた。後半にきて面白くなる。誠実な筆致はわかるが、そこまでつよくひきずってゆく力がよわい。」 今日出海 73歳 全 ○ 16 「作家修業の長い青山光二氏の作品などは今回の候補作品では秀れていた。また作家としての腕もあり、その生活や人生観の特異性ではやはり魅力のある作家であり、作品だと思う。」 松本清張 67歳 全 ● 5 「これ（引用者注：「つゆ」）にくらべるとおなじ心中ものでも（引用者中略）やはり旧時代のものという感じをまぬがれ得なかった。」 司馬遼太郎 53歳 全 ― 0   源氏鶏太 65歳 全 ◎ 10 「ひたむきに書き上げた労作であり、日露戦争の頃の時代色をよく描いていて青山氏の小説づくりのたしかさが出ていた。」 村上元三 67歳 全 ● 6 「衛戌病院の部分が長すぎる。古い作家歴を持っている人なのに、この作者は、読みやすい文章を書くということを忘れてしまったのだろうか。」 石坂洋次郎 77歳 全 ● 4 「私はこの作品とかぎらず、心中物が好きでないので、推さなかった。」 柴田錬三郎 60歳 全 △ 3 「（引用者注：「魔笛が聴こえる」「喜望峰」「マンハッタンのバラード」の方が）「竹生島心中」（青山光二）よりも、面白かった。」 川口松太郎 77歳 全 □ 10 「決定的作品がなくて困ったが、（引用者中略）一応推した。」「小説としては「竹生島心中」が首尾一貫していたが、それもやや古さが目立つ。」

他の候補作 谷恒生 『喜望峰』 井口恵之 「つゆ」 色川武大 『怪しい来客簿』 西村寿行 「魔笛が聴こえる」 松代達生 「飛べない天使」 平田敬 『喝采の谷』 楢山芙二夫 『マンハッタンのバラード』

井口恵之48歳×各選考委員　 「つゆ」 短篇 72枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 水上勉 58歳 全 ◎ 26 「簡潔な文体のなかに、よく今日の庶民の哀歓がにじみ、古いようでも新しいところが見えるのに感心していた。」「ところどころ光る描写、器用にたたきこむ手腕は、充分にこの世界なら、いくらも書ける力を感じさせた。」 今日出海 73歳 全 □ 18 「捨て難い作品である。」「独自性はあり、私なども引かれる作品であったことは否めない。」 松本清張 67歳 全 ○ 12 「場末の小さな印刷所の状態がよくかけているし、情死の原因も借金に苦しむ男に女が同情するという乾いたもので現代風俗が出ている。」「ただ、これ一作だけで直木賞とするにはためらう。」 司馬遼太郎 53歳 全 ― 0   源氏鶏太 65歳 全 ● 7 「私は、二度読み返したが、授賞の水準にはやや遠いとしか思えなかった。」 村上元三 67歳 全 △ 4 「小品として筆力は買うが、次の作品を読ませてもらってからでいいと思う。」 石坂洋次郎 77歳 全 △ 4 「心中と言えば、やはり同じ出来事を扱った「つゆ」も、話題にはのぼったが、審査をパス出来なかった。」 柴田錬三郎 60歳 全 ● 6 「私の読後感は、きわめてひくい点数しか、与えなかった。」 川口松太郎 77歳 全 △ 10 「あまり重きを置かなかった二作（引用者注：「つゆ」と「怪しい来客簿」）が最後まで残ったと聞いて意外な気がした。」

他の候補作 谷恒生 『喜望峰』 青山光二 「竹生島心中」 色川武大 『怪しい来客簿』 西村寿行 「魔笛が聴こえる」 松代達生 「飛べない天使」 平田敬 『喝采の谷』 楢山芙二夫 『マンハッタンのバラード』

色川武大48歳×各選考委員　 『怪しい来客簿』 連作17篇 508枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 水上勉 58歳 全 ◎ 39 「身辺の何でもないことを書いても、視線の妙が光る。「墓」などまことにいい。授賞してもいい作品だと思うが、これも反対者が多く、票数で敗けた。」「この文集も、二どと書けない作者にとって大切なことが刻まれていた。」 今日出海 73歳 全 ― 0   松本清張 67歳 全 ○ 18 「義務的に読ませられるという感じでなしにたのしく読んだ」「達意の文章で、身辺雑記ふうでありながら脚色も入って面白い読みものになっている。だが、あまりに断片挿話の寄せあつめ式で、連作とみるには一貫性がない。」 司馬遼太郎 53歳 全 ― 0   源氏鶏太 65歳 全 ○ 21 「いささか玉石混淆の感がないでもなかったが、薄気味悪かったり、ユーモラスであったり、かと思うと大真面目であったり、その才能を十分に感じさせた。」「ただここで作者は過去のすべてを吐き出してしまっていて、今後はどうなるかとの危惧が授賞を見送られた原因の一つになっていた。」 村上元三 67歳 全 ● 8 「随筆集だと思うし銓衡に入る前、候補から外すべきだと言ったが、これを買う委員も多く、そのまま候補になった。あとで読み返しても、わたしはこれを小説とは思えなかった。」 石坂洋次郎 77歳 全 ― 0   柴田錬三郎 60歳 全 □ 7 「私は、おそらく、この作家が、生涯に一冊しか書けないであろう「怪しい来客簿」（色川武大）が、もし受賞するならば、敢えて反対するつもりはない、という考えで選考会に臨んだ。」 川口松太郎 77歳 全 △ 10 「あまり重きを置かなかった二作（引用者注：「つゆ」と「怪しい来客簿」）が最後まで残ったと聞いて意外な気がした。」

他の候補作 谷恒生 『喜望峰』 青山光二 「竹生島心中」 井口恵之 「つゆ」 西村寿行 「魔笛が聴こえる」 松代達生 「飛べない天使」 平田敬 『喝采の谷』 楢山芙二夫 『マンハッタンのバラード』

西村寿行46歳×各選考委員　 「魔笛が聴こえる」 長篇 479枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 水上勉 58歳 全 ― 0   今日出海 73歳 全 ― 0   松本清張 67歳 全 ● 12 「前候補作よりも見劣りがする。」「プロットの無理と、パターンのマンネリ化と、文章の粗雑さと、騒々しさだけが伝わる。」「多忙という理由は、読者にむけては理由にならないのである。」 司馬遼太郎 53歳 全 ― 0   源氏鶏太 65歳 全 ■ 4 「その集団の狂気の描き方は見事であったが、それだけで終っていた。」 村上元三 67歳 全 ■ 4 「極彩色の劇画を見るような感じで、それなりに面白いが、エピローグでがっかりした。」 石坂洋次郎 77歳 全 ― 0   柴田錬三郎 60歳 全 △ 9 「おそろしく乱暴な、荒唐無稽なストーリイ（引用者中略）の方が、（引用者注：「つゆ」や「竹生島心中」よりも）面白かった。もとより、それぞれに、高い点数をつけた次第ではない。」 川口松太郎 77歳 全 □ 10 「決定的作品がなくて困ったが、（引用者中略）一応推した。」「欠点がありすぎる。」

他の候補作 谷恒生 『喜望峰』 青山光二 「竹生島心中」 井口恵之 「つゆ」 色川武大 『怪しい来客簿』 松代達生 「飛べない天使」 平田敬 『喝采の谷』 楢山芙二夫 『マンハッタンのバラード』

松代達生43歳×各選考委員　 「飛べない天使」 中篇 191枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 水上勉 58歳 全 ― 0   今日出海 73歳 全 ― 0   松本清張 67歳 全 ― 0   司馬遼太郎 53歳 全 ― 0   源氏鶏太 65歳 全 ● 4 「小説というよりも作文に終っていて、せっかくの材料が活かし切れなかった。」 村上元三 67歳 全 ● 3 「作者の甘えには、どうしてもついて行けない。」 石坂洋次郎 77歳 全 ◎ 23 「抜群に面白いと思ったが、会議の席上では下位の作品だということにされた。」「考え直してみると、私がこの作品にひきつけられたのは、まじめな勤人である夫は元・高校教師、堅実な主婦であるその妻はかつての教え子、健全な兄息子、不具者の二男、などという人物構成だったことによるもののようだ。」「私は大学を出てから、十三、四年間、東北地方の中等学校で教師を勤めていた。だから、理屈なしに「飛べない天使」にひきつけられたのであろう。」 柴田錬三郎 60歳 全 ― 0   川口松太郎 77歳 全 ― 0

他の候補作 谷恒生 『喜望峰』 青山光二 「竹生島心中」 井口恵之 「つゆ」 色川武大 『怪しい来客簿』 西村寿行 「魔笛が聴こえる」 平田敬 『喝采の谷』 楢山芙二夫 『マンハッタンのバラード』

平田敬46歳×各選考委員　 『喝采の谷』 長篇 413枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 水上勉 58歳 全 ― 0   今日出海 73歳 全 ― 0   松本清張 67歳 全 ― 0   司馬遼太郎 53歳 全 ― 0   源氏鶏太 65歳 全 ● 4 「この材料では長過ぎた。ホテルでの情事も不用でなかったろうか。」 村上元三 67歳 全 ■ 7 「シロニーが谷を渡るのに成功する、とわかっていながら、ここまで読ませる筆力は認めたい。ただ、いかにも無駄を書きすぎる。」 石坂洋次郎 77歳 全 ― 0   柴田錬三郎 60歳 全 ― 0   川口松太郎 77歳 全 ― 0	他の候補作 谷恒生 『喜望峰』 青山光二 「竹生島心中」 井口恵之 「つゆ」 色川武大 『怪しい来客簿』 西村寿行 「魔笛が聴こえる」 松代達生 「飛べない天使」 楢山芙二夫 『マンハッタンのバラード』

楢山芙二夫29歳×各選考委員　 『マンハッタンのバラード』 短篇集4篇 489枚

年齢/枚数の説明 見方・注意点

選考委員 評価 行数 評言 水上勉 58歳 全 ― 0   今日出海 73歳 全 ― 0   松本清張 67歳 全 ● 6 「同じ世界をつづけて書くにしても、そのたびに新鮮なおどろきを与えるものでなければなるまい。」 司馬遼太郎 53歳 全 ― 0   源氏鶏太 65歳 全 ● 5 「麻薬を扱ってアメリカの現代風俗を新鮮に描いているようだが、その実感は何か貧しかった。」 村上元三 67歳 全 ― 0   石坂洋次郎 77歳 全 ― 0   柴田錬三郎 60歳 全 △ 10 「ニューヨークの片隅でうごめく、淫売婦と麻薬とホモの黒人と浮浪の日本人青年のくりひろげる今日的風俗の方が、（引用者注：「つゆ」や「竹生島心中」よりも）面白かった。もとより、それぞれに、高い点数をつけた次第ではない。」 川口松太郎 77歳 全 ― 0	他の候補作 谷恒生 『喜望峰』 青山光二 「竹生島心中」 井口恵之 「つゆ」 色川武大 『怪しい来客簿』 西村寿行 「魔笛が聴こえる」 松代達生 「飛べない天使」 平田敬 『喝采の谷』