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平成2年/1990年度
(平成3年/1991年5月16日決定発表/『小説新潮』平成3年/1991年7月号選評掲載)
選考委員  井上ひさし
男56歳
田辺聖子
女63歳
野坂昭如
男60歳
藤沢周平
男63歳
山口瞳
男64歳
最終投票
選評総行数  185 156 182 170 173  
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
稲見一良 『ダック・コール』
男60歳
28 18 26 44 37    
小池真理子 『無伴奏』
女38歳
40 22 38 31 18    
宮城谷昌光 『天空の舟』
男46歳
44 53 56 39 30    
安部龍太郎 『血の日本史』
男35歳
33 21 19 20 19    
中島らも 『今夜、すべてのバーで』
男39歳
32 39 38 38 56    
           
年齢の説明   見方・注意点

このページの選評出典:『小説新潮』平成3年/1991年7月号
1行当たりの文字数:30字


選考委員
井上ひさし男56歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数185 (1行=30字)
候補 評価 行数 評言
稲見一良
男60歳
28 5点「この稲見さんという人は、少年の心を持った作家ですね。」「(引用者注:第五話の「波の枕」は)大した仕掛けですね。「デコイとブンタ」では、最後にデコイが空を飛んじゃう、これもまたすごいです。」
小池真理子
女38歳
40 3点「むやみに前ぶりが多いんですね。」「どうも、最初の読者に対する働きかけと、物語の方向が違うんじゃないか。これはすごい話だぞと、のっけからうるさく言わないほうがよかったのではないかと思います。」「高校卒業前後の女子高生の娘心の描写はじつに巧みです。だけど、それが物語の部分にはめこまれてみると、何かもの足りない。」
宮城谷昌光
男46歳
44 4点「僕が一番気に入ったのは、資料どころか、文字さえまだない時代に取組まれたことです。文字のない時代を文字にしていくところに、一種、逆説的な面白さ、痛快さが感じられます。」「ただ、今回読み返してみて、はたしてこんなに長く書く必要があったかなという思いもあります。」「この人は、ひとつ、世界をつくった。自分のためにつくったんでしょうね、きっと。」
安部龍太郎
男35歳
33 3点「最初に、びっくりし、感心した点を申し上げますと、日本史全般にわたって、うんと調べて、ここはこういうふうにして、ここはこういうふうにしてと、全部カバーしようとした作家的野心ですね。内容はどうあれ、この野心は僕も学ぶべきだと思って感服しました。」「とにかく、圧倒的なエネルギーですが、僕は読者として、この日本史のつかまえ方にはついていけません。」
中島らも
男39歳
32 4.5点「飲まなきゃいいがなあとか、飲んでもいいんじゃないかとか、読者のほうが主人公になって、主人公よりもはらはらする。これを自然に仕掛けているところなど、大変な才能だと思いました。」「主治医の赤河先生は、赤ひげみたいだし、みんなパターンなんですけど、その先へ行っている。」
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他の選考委員
田辺聖子
野坂昭如
藤沢周平
山口瞳
最終投票
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選考委員
田辺聖子女63歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数156 (1行=30字)
候補 評価 行数 評言
稲見一良
男60歳
18 4.5点「みんなとっても面白く読みました。」「この方は、もうすでに自分の文学的世界を構築していらっしゃる方ですね。」「それぞれ、味わいの違う作品を、こんなに書き分けて、しかも、稲見さんなりの雰囲気を保ちつつ、その小説世界をつくっていらっしゃるところ、ただものではないなと思いました。」
小池真理子
女38歳
22 3点「小池さんの作品としては、一番よかったんではないかな。青春のノスタルジアというか、一九七〇年代の雰囲気がよく出ていて、主人公も書けていると思いました。」「すこしお話づくりに凝りすぎて、設定に無理があるんじゃないかという気がしました。」
宮城谷昌光
男46歳
53 4点「(引用者注:直木賞の)選考会で、私はうんと褒めたんですが、今日は一応、四点としておきます。」「ずいぶん長い大きな歴史を、これだけうまく料理してさばけるというのは、並の力量の人ではないと思うんですね。」「ただ、こういう新しき酒は、新しき革袋に入れてほしかった。というのは、文章が司馬(遼太郎)さんそっくりなんです。」
安部龍太郎
男35歳
21 3.5点「読み進めているうち、タイトルが「血の日本史」というだけあって、やたらと血みどろになって、しまいのころにはうんざりしてしまった。すごく重たいんですね。」「文章は読みやすいんですが、これは小説とはいえないな、というのもありますね。」「これは才能の浪費という気もしないではありません。」
中島らも
男39歳
39 5点「いやあこれは、痛快な作品、痛快な才能だと思った。本当に現代的な才能ですね。文章のセンスがとっても垢抜けてるし、それぞれの登場人物も、実によく出来ています。」「夢のお話というのは、小説に使うとあまり成功しないんですけど、この小説では、アメフラシの気持ちの悪い夢が、とってもよく効いていました。」「文章センスからいうと、やっぱり中島さんは新しいですよ。切り口がとっても新鮮。」
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他の選考委員
井上ひさし
野坂昭如
藤沢周平
山口瞳
最終投票
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選考委員
野坂昭如男60歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数182 (1行=30字)
候補 評価 行数 評言
稲見一良
男60歳
26 4点「僕は、密猟とは密輸ってものが好きなんです(笑)。」「しかし、この方も、やはり文章が当たり前です。獣と戦うとか、日本人が外国へ行って、何かやるとかって時には、文章は当然変わってくると思う。」「この方が受賞なさることについては、特に反対はないです。」「僕は、必ずしもまとまっているとは思わない。安易にすぎるという気がします。」
小池真理子
女38歳
38 0点「この作品をお選びになった新潮文芸振興会の責任じゃないかと思う。なんだか、無理して入れてきた感じがあって、小池さんに気の毒な感じがする。」「誰の目にも、この作品は、小池さんの他の作品と比べれば、あまりよくないということは見えてますよ。」「一九七〇年代について言うんならば、こっちもよく知っている。それを、こう簡単にあしらわれては困ると、そんなふうに思いました。」「小池さんの小説とか雑文とか、僕はよく読んでいるんだけども、こんなふうに無理にこしらえた小説になって、文章も駄目になってきましたね。」
宮城谷昌光
男46歳
56 0点「寄席の色物といった印象、小手先きの芸。それはそれでもちろんいいけど、それにしちゃもったいぶっている、味が薄い。」「山口さんご指摘の居丈高な文字。しようがないからこっちも辞書を引いてみたけども、なんのためにこんな字を書かなきゃならないのか。」「この作品は、普通に書いたって、全然かまわないと思います。言葉フェティシズムも作家の個性のうちでしょうけど。」
安部龍太郎
男35歳
19 0点「この作品集に限っていうと、小説家としての才能は認められないね。」「この人は、なんにも面白く書いていない。ただ、書いてるだけなんだ。」「なんのことはない、『週刊新潮』の「黒い報告書」、あれの時代版じゃないですか(笑)。」
中島らも
男39歳
38 5点「これはもう、当たり前で五なんですね。」「言うことは何もない。」「山本賞に一番ふさわしいと思う。」「井上さん、ほんとにあなたは口うるさいね。(引用者中略)あなたが黙って、中島らもは五、それだけいっときゃよかったんだよ(笑)。」「(引用者注:稲見一良への授賞は)手堅いには違いないけど、中島のほうが先がある。」「こういう賞を上げれば、彼、ほんとに伸びていくよ。」
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他の選考委員
井上ひさし
田辺聖子
藤沢周平
山口瞳
最終投票
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選考委員
藤沢周平男63歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数170 (1行=30字)
候補 評価 行数 評言
稲見一良
男60歳
44 4.5点「広い意味での連作でしょうけれども、なかなかうまく出来た構成だと思いました。」「第四話の「ホイッパー・ウィル」、これは西部劇のガンマンの世界なんですが、われわれが書く剣客小説にも似ていましてね、面白かったです。」「この短篇集には、一所懸命に構成を、また文章を考えている気配があります。」「稲見さんにも上げたいんですよ。もう六十でしょう、稲見さんは。」
小池真理子
女38歳
31 3点「のびのびと、気持ちよく書いているな、とは思ったんですが、なんというのかな、話の展開が遅いんですね。」「それから、この小説の重要なテーマになっている主人公の罪悪感ですが、(引用者中略)自分が話さなかったから、エマは祐之介の子供を堕さず、祐之介に殺されてしまったという主人公の思い込みは、正しいのかどうか。このへん、小説として未熟ではないかと感じました。」
宮城谷昌光
男46歳
39 4点「この小説は、私、たいへん骨組みの大きい、しっかりした構築物と感じるんです。だけど、全体を通して、よく書かれてはいるけれど、人物とか風景とかが、立体的に浮かんでこないんですね。」「小説というよりは、詩のごときもの、あるいは歴史読物のごときもの、そういう印象が強いんです。」「ただ、(引用者中略)先は、かなり大きな作家になるんじゃないか、そういう予感がしますんでね……。」
安部龍太郎
男35歳
20 4点「そうか、歴史的な事件を題材にして、小説を書いたんだなと、やっと納得したんです。」「しかしとにかく、このスタイルで四十三篇も書いたというのは、なかなかの力業だと思いました。」「ではこれを推せるかというと、積極的に推すには何か中心を欠いている。」
中島らも
男39歳
38 4.5点「らもさんという人、私は初めて読んだんですが、実に新鮮な才能だと思いますね。」「難点をいえば、いささか理屈くさいんですね。」「生の資料を、無造作に小説の中に投げ込んでいいものかどうか、私にはその疑問がありましてね。」
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他の選考委員
井上ひさし
田辺聖子
野坂昭如
山口瞳
最終投票
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選考委員
山口瞳男64歳×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数173 (1行=30字)
候補 評価 行数 評言
稲見一良
男60歳
37 5点「私の好きなタイプの作家です。とても凝り性でね。」「小説のつくり方が丁寧で、守備範囲も広い。なんでも書ける人ではないでしょうか。」「今、楽しい小説の書ける人は甚だ少ないと思うんですが、この人は、童話も書けるんじゃないか。」「鳥の描写、うまいねえ、この人。」「(引用者注:中島らもと比べたとき)短篇の完成度でいうと、稲見さんだと思いますよね。」
小池真理子
女38歳
18 2点「主人公の罪悪感が、どうもピンとこない、」「渉と祐之介を、主人公はさかんに素敵だ素敵だと言います。けれど、私にはちっとも素敵に見えない。わがままで、頭の悪い青年としか読み取れないんですね。」「文章で言うとね、「抜けるような青空」という、高校生の作文のような表現が随所にあるんですよ。あれはとてもひっかかる。」
宮城谷昌光
男46歳
30 3.5点「この作品は、田辺さんと井上さんにお任せしたい。私にはお手上げなんです。評価点をつけることも実際は憚られる。」「一言だけいうと、日本語としてこなれていない言葉の問題です。造語するのはいいんですが、それを評価するかとなると、私はやっぱりいやですね。」「この人には、なんとなく、何かあるんじゃないか、もしかしたら、大化けに化けるんじゃないか、そういった可能性を感じさせるところはあります。」「この人、何が言いたいんだかもよくわからないね。」
安部龍太郎
男35歳
19 2.5点「小説というより、これは読物だと思うんです。読物とするなら、もうちょっとアクの強さとか、おどろおどろしさとか、驚きみたいなものがあってしかるべきだと思います。」
中島らも
男39歳
56 4点「今回の五篇の中で、断然読みやすいのはこの人ですね。これは天性のものです。疑いもなく才能がありますね、この作家は。」「これ、小説といえるかどうか、私は疑問に思います。特に最後が、論文になってしまって、小説としての首尾結構を失っていると思います。」「中島さんというのは、ちょっと危なっかしい才能でもあるね。」
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他の選考委員
井上ひさし
田辺聖子
野坂昭如
藤沢周平
最終投票
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選考委員
最終投票×各候補作  年齢の説明
見方・注意点
総行数 (1行=30字)
候補 評価 行数 評言
稲見一良
男60歳
    ○3票
小池真理子
女38歳
     
宮城谷昌光
男46歳
     
安部龍太郎
男35歳
     
中島らも
男39歳
    ○2票
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他の選考委員
井上ひさし
田辺聖子
野坂昭如
藤沢周平
山口瞳
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受賞者・作品
稲見一良男60歳×各選考委員 
『ダック・コール』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし
男56歳
28 5点「この稲見さんという人は、少年の心を持った作家ですね。」「(引用者注:第五話の「波の枕」は)大した仕掛けですね。「デコイとブンタ」では、最後にデコイが空を飛んじゃう、これもまたすごいです。」
田辺聖子
女63歳
18 4.5点「みんなとっても面白く読みました。」「この方は、もうすでに自分の文学的世界を構築していらっしゃる方ですね。」「それぞれ、味わいの違う作品を、こんなに書き分けて、しかも、稲見さんなりの雰囲気を保ちつつ、その小説世界をつくっていらっしゃるところ、ただものではないなと思いました。」
野坂昭如
男60歳
26 4点「僕は、密猟とは密輸ってものが好きなんです(笑)。」「しかし、この方も、やはり文章が当たり前です。獣と戦うとか、日本人が外国へ行って、何かやるとかって時には、文章は当然変わってくると思う。」「この方が受賞なさることについては、特に反対はないです。」「僕は、必ずしもまとまっているとは思わない。安易にすぎるという気がします。」
藤沢周平
男63歳
44 4.5点「広い意味での連作でしょうけれども、なかなかうまく出来た構成だと思いました。」「第四話の「ホイッパー・ウィル」、これは西部劇のガンマンの世界なんですが、われわれが書く剣客小説にも似ていましてね、面白かったです。」「この短篇集には、一所懸命に構成を、また文章を考えている気配があります。」「稲見さんにも上げたいんですよ。もう六十でしょう、稲見さんは。」
山口瞳
男64歳
37 5点「私の好きなタイプの作家です。とても凝り性でね。」「小説のつくり方が丁寧で、守備範囲も広い。なんでも書ける人ではないでしょうか。」「今、楽しい小説の書ける人は甚だ少ないと思うんですが、この人は、童話も書けるんじゃないか。」「鳥の描写、うまいねえ、この人。」「(引用者注:中島らもと比べたとき)短篇の完成度でいうと、稲見さんだと思いますよね。」
最終投票     ○3票
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他の候補作
小池真理子
『無伴奏』
宮城谷昌光
『天空の舟』
安部龍太郎
『血の日本史』
中島らも
『今夜、すべてのバーで』
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候補者・作品
小池真理子女38歳×各選考委員 
『無伴奏』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし
男56歳
40 3点「むやみに前ぶりが多いんですね。」「どうも、最初の読者に対する働きかけと、物語の方向が違うんじゃないか。これはすごい話だぞと、のっけからうるさく言わないほうがよかったのではないかと思います。」「高校卒業前後の女子高生の娘心の描写はじつに巧みです。だけど、それが物語の部分にはめこまれてみると、何かもの足りない。」
田辺聖子
女63歳
22 3点「小池さんの作品としては、一番よかったんではないかな。青春のノスタルジアというか、一九七〇年代の雰囲気がよく出ていて、主人公も書けていると思いました。」「すこしお話づくりに凝りすぎて、設定に無理があるんじゃないかという気がしました。」
野坂昭如
男60歳
38 0点「この作品をお選びになった新潮文芸振興会の責任じゃないかと思う。なんだか、無理して入れてきた感じがあって、小池さんに気の毒な感じがする。」「誰の目にも、この作品は、小池さんの他の作品と比べれば、あまりよくないということは見えてますよ。」「一九七〇年代について言うんならば、こっちもよく知っている。それを、こう簡単にあしらわれては困ると、そんなふうに思いました。」「小池さんの小説とか雑文とか、僕はよく読んでいるんだけども、こんなふうに無理にこしらえた小説になって、文章も駄目になってきましたね。」
藤沢周平
男63歳
31 3点「のびのびと、気持ちよく書いているな、とは思ったんですが、なんというのかな、話の展開が遅いんですね。」「それから、この小説の重要なテーマになっている主人公の罪悪感ですが、(引用者中略)自分が話さなかったから、エマは祐之介の子供を堕さず、祐之介に殺されてしまったという主人公の思い込みは、正しいのかどうか。このへん、小説として未熟ではないかと感じました。」
山口瞳
男64歳
18 2点「主人公の罪悪感が、どうもピンとこない、」「渉と祐之介を、主人公はさかんに素敵だ素敵だと言います。けれど、私にはちっとも素敵に見えない。わがままで、頭の悪い青年としか読み取れないんですね。」「文章で言うとね、「抜けるような青空」という、高校生の作文のような表現が随所にあるんですよ。あれはとてもひっかかる。」
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他の候補作
稲見一良
『ダック・コール』
宮城谷昌光
『天空の舟』
安部龍太郎
『血の日本史』
中島らも
『今夜、すべてのバーで』
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候補者・作品
宮城谷昌光男46歳×各選考委員 
『天空の舟』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし
男56歳
44 4点「僕が一番気に入ったのは、資料どころか、文字さえまだない時代に取組まれたことです。文字のない時代を文字にしていくところに、一種、逆説的な面白さ、痛快さが感じられます。」「ただ、今回読み返してみて、はたしてこんなに長く書く必要があったかなという思いもあります。」「この人は、ひとつ、世界をつくった。自分のためにつくったんでしょうね、きっと。」
田辺聖子
女63歳
53 4点「(引用者注:直木賞の)選考会で、私はうんと褒めたんですが、今日は一応、四点としておきます。」「ずいぶん長い大きな歴史を、これだけうまく料理してさばけるというのは、並の力量の人ではないと思うんですね。」「ただ、こういう新しき酒は、新しき革袋に入れてほしかった。というのは、文章が司馬(遼太郎)さんそっくりなんです。」
野坂昭如
男60歳
56 0点「寄席の色物といった印象、小手先きの芸。それはそれでもちろんいいけど、それにしちゃもったいぶっている、味が薄い。」「山口さんご指摘の居丈高な文字。しようがないからこっちも辞書を引いてみたけども、なんのためにこんな字を書かなきゃならないのか。」「この作品は、普通に書いたって、全然かまわないと思います。言葉フェティシズムも作家の個性のうちでしょうけど。」
藤沢周平
男63歳
39 4点「この小説は、私、たいへん骨組みの大きい、しっかりした構築物と感じるんです。だけど、全体を通して、よく書かれてはいるけれど、人物とか風景とかが、立体的に浮かんでこないんですね。」「小説というよりは、詩のごときもの、あるいは歴史読物のごときもの、そういう印象が強いんです。」「ただ、(引用者中略)先は、かなり大きな作家になるんじゃないか、そういう予感がしますんでね……。」
山口瞳
男64歳
30 3.5点「この作品は、田辺さんと井上さんにお任せしたい。私にはお手上げなんです。評価点をつけることも実際は憚られる。」「一言だけいうと、日本語としてこなれていない言葉の問題です。造語するのはいいんですが、それを評価するかとなると、私はやっぱりいやですね。」「この人には、なんとなく、何かあるんじゃないか、もしかしたら、大化けに化けるんじゃないか、そういった可能性を感じさせるところはあります。」「この人、何が言いたいんだかもよくわからないね。」
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他の候補作
稲見一良
『ダック・コール』
小池真理子
『無伴奏』
安部龍太郎
『血の日本史』
中島らも
『今夜、すべてのバーで』
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候補者・作品
安部龍太郎男35歳×各選考委員 
『血の日本史』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし
男56歳
33 3点「最初に、びっくりし、感心した点を申し上げますと、日本史全般にわたって、うんと調べて、ここはこういうふうにして、ここはこういうふうにしてと、全部カバーしようとした作家的野心ですね。内容はどうあれ、この野心は僕も学ぶべきだと思って感服しました。」「とにかく、圧倒的なエネルギーですが、僕は読者として、この日本史のつかまえ方にはついていけません。」
田辺聖子
女63歳
21 3.5点「読み進めているうち、タイトルが「血の日本史」というだけあって、やたらと血みどろになって、しまいのころにはうんざりしてしまった。すごく重たいんですね。」「文章は読みやすいんですが、これは小説とはいえないな、というのもありますね。」「これは才能の浪費という気もしないではありません。」
野坂昭如
男60歳
19 0点「この作品集に限っていうと、小説家としての才能は認められないね。」「この人は、なんにも面白く書いていない。ただ、書いてるだけなんだ。」「なんのことはない、『週刊新潮』の「黒い報告書」、あれの時代版じゃないですか(笑)。」
藤沢周平
男63歳
20 4点「そうか、歴史的な事件を題材にして、小説を書いたんだなと、やっと納得したんです。」「しかしとにかく、このスタイルで四十三篇も書いたというのは、なかなかの力業だと思いました。」「ではこれを推せるかというと、積極的に推すには何か中心を欠いている。」
山口瞳
男64歳
19 2.5点「小説というより、これは読物だと思うんです。読物とするなら、もうちょっとアクの強さとか、おどろおどろしさとか、驚きみたいなものがあってしかるべきだと思います。」
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他の候補作
稲見一良
『ダック・コール』
小池真理子
『無伴奏』
宮城谷昌光
『天空の舟』
中島らも
『今夜、すべてのバーで』
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候補者・作品
中島らも男39歳×各選考委員 
『今夜、すべてのバーで』
年齢の説明
見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし
男56歳
32 4.5点「飲まなきゃいいがなあとか、飲んでもいいんじゃないかとか、読者のほうが主人公になって、主人公よりもはらはらする。これを自然に仕掛けているところなど、大変な才能だと思いました。」「主治医の赤河先生は、赤ひげみたいだし、みんなパターンなんですけど、その先へ行っている。」
田辺聖子
女63歳
39 5点「いやあこれは、痛快な作品、痛快な才能だと思った。本当に現代的な才能ですね。文章のセンスがとっても垢抜けてるし、それぞれの登場人物も、実によく出来ています。」「夢のお話というのは、小説に使うとあまり成功しないんですけど、この小説では、アメフラシの気持ちの悪い夢が、とってもよく効いていました。」「文章センスからいうと、やっぱり中島さんは新しいですよ。切り口がとっても新鮮。」
野坂昭如
男60歳
38 5点「これはもう、当たり前で五なんですね。」「言うことは何もない。」「山本賞に一番ふさわしいと思う。」「井上さん、ほんとにあなたは口うるさいね。(引用者中略)あなたが黙って、中島らもは五、それだけいっときゃよかったんだよ(笑)。」「(引用者注:稲見一良への授賞は)手堅いには違いないけど、中島のほうが先がある。」「こういう賞を上げれば、彼、ほんとに伸びていくよ。」
藤沢周平
男63歳
38 4.5点「らもさんという人、私は初めて読んだんですが、実に新鮮な才能だと思いますね。」「難点をいえば、いささか理屈くさいんですね。」「生の資料を、無造作に小説の中に投げ込んでいいものかどうか、私にはその疑問がありましてね。」
山口瞳
男64歳
56 4点「今回の五篇の中で、断然読みやすいのはこの人ですね。これは天性のものです。疑いもなく才能がありますね、この作家は。」「これ、小説といえるかどうか、私は疑問に思います。特に最後が、論文になってしまって、小説としての首尾結構を失っていると思います。」「中島さんというのは、ちょっと危なっかしい才能でもあるね。」
最終投票     ○2票
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他の候補作
稲見一良
『ダック・コール』
小池真理子
『無伴奏』
宮城谷昌光
『天空の舟』
安部龍太郎
『血の日本史』
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