<img src="../images/title_senpyo.gif" alt="芥川賞選評の概要" width="276" height="297">

候補作

評価

行数

評価

行数

評価

行数

評価

行数

評価

行数

評価

行数

評価

行数

村上龍　「限りなく透明に近いブルー」

221枚

24歳

○

◎

△

■

△

岩橋邦枝　「冬空」

103枚

41歳

―

■

―

寺久保友哉　「棄小舟」

119枚

39歳

△

―

△

小檜山博　「出刃」

72枚

39歳

―

梅原稜子　「蔓の実」

99枚

33歳

―

△

―

△

―

光岡明　「いづくの蟹」

122枚

43歳

■

―

△

○

△

森泰三　「結婚」

141枚

(54歳)

―

○

―

年齢/枚数の説明

見方・注意点

このページの選評出典：『芥川賞全集　第十一巻』昭和57年/1982年12月・文藝春秋刊　再録（初出：『文藝春秋』昭和51年/1976年9月号）
1行当たりの文字数：26字

選考委員

吉行淳之介

52歳×各候補作　

題注目に値する資質　総行数34　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
村上龍	24歳	全	○	27	「この数年のこの賞の候補作の中で、その資質は群を抜いており、一方作品が中途半端な評価しかできないので、困った。」「どこを切っても同じ味がする上にやたら長く、半ばごろの「自分の中の都市」という理窟のような部分に行き当って、一たん読むのをやめた。」「作品の退屈さには目をつむって、抜群の資質に票を投じた。この人の今後のマスコミとのかかわり合いを考えると不安になって、「因果なことに才能がある」とおもうが、そこをなんとか切り抜けてもらいたい。」
岩橋邦枝	41歳	全	―	0
寺久保友哉	39歳	全	△	4	「大へん面白いのだが、突きつめれば安楽死の問題にいたる当節流行のテーマの追究の仕方に不満が残った。しかし、この人には流行作家になれるかたちの才能がある。」
小檜山博	39歳	全	―	0
梅原稜子	33歳	全	―	0
光岡明	43歳	全	■	3	「注目したのだが、残念なことにところどころツジツマが合い過ぎたり、合わな過ぎたりした。」
森泰三	(54歳)	全	―	0
					「今回は時間がかかった。それも、ほかの作品については結論が出ているのに、村上龍氏の作品で長引いた。」

他の選考委員

選考委員

丹羽文雄

71歳×各候補作　

題村上龍君の作品　総行数25　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
村上龍	24歳	全	◎	25	「芥川賞の銓衡委員をつとめるようになって三十七回目になるが、これほどとらまえどころのない小説にめぐりあったことはなかった。それでいてこの小説の魅力を強烈に感じた。」「若々しくて、さばさばとしていて、やさしくて、いくらかもろい感じのするのも、この作者生得の抒情性のせいであろう。」「二十代の若さでなければ書けない小説である。」
岩橋邦枝	41歳	全	―	0
寺久保友哉	39歳	全	―	0
小檜山博	39歳	全	―	0
梅原稜子	33歳	全	―	0
光岡明	43歳	全	―	0
森泰三	(54歳)	全	―	0

他の選考委員

選考委員

中村光夫

65歳×各候補作　

題無意識の独創　総行数29　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
村上龍	24歳	全	◎	23	「他の六篇とはっきり異質の作品」「技巧的な出来栄えから見れば、他の候補作の大部分に劣るといってもよいのですが、その底に、本人にも手に負えぬ才能の汎濫が感じられ、この卑陋な素材の小説に、ほとんど爽かな読後感をあたえます。」「無意識の独創は新人の魅力であり、それに脱帽するのが選者の礼儀でしょう。」
岩橋邦枝	41歳	全	―	0
寺久保友哉	39歳	全	―	0
小檜山博	39歳	全	―	0
梅原稜子	33歳	全	△	6	「注目しました。」「前の二作にくらべて、一種の余裕がでてきています。これが幅ひろい完成にたっするか、または緊張を失ってしまうか、いずれにせよ、この次あたりにくる筈の勝負所と期待します。」
光岡明	43歳	全	―	0
森泰三	(54歳)	全	―	0

他の選考委員

選考委員

井上靖

69歳×各候補作　

題村上氏の資質　総行数20　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
村上龍	24歳	全	◎	20	「私は（引用者中略）推した。芥川賞の銓衡に於て、作者の資質というものを感じさせられる久々の作品だったと思う。」「所々に顔を出す幼さも、古さも、甘さも、この作品ではよく働いていて、全篇をうっすらと哀しみのようなものが流れているのもいい。」「題材が題材だけに、当然肯定もあり、否定もあると思う。肯定と否定とを計りにかけ、その上でどちらかに決めさせられるような作品である。そういう点も、この作品の持つよさとすべきであろう。」
岩橋邦枝	41歳	全	―	0
寺久保友哉	39歳	全	―	0
小檜山博	39歳	全	―	0
梅原稜子	33歳	全	―	0
光岡明	43歳	全	―	0
森泰三	(54歳)	全	―	0

他の選考委員

選考委員

永井龍男

72歳×各候補作　

題老婆心　総行数11　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
村上龍	24歳	全	△	7	「これを迎えるジャーナリズムの過熱状態が果してこの新人の成長にプラスするか否か、（引用者中略）群像新人賞というふさわしい賞をすでに得ている、次作を待って賞をおくっても決して遅くはないと思った。まさに老婆心というところであろう。」
岩橋邦枝	41歳	全	―	0
寺久保友哉	39歳	全	△	3	「飽かせず読ませるが、話上手に過ぎたきらいがなくもなかった。」
小檜山博	39歳	全	―	0
梅原稜子	33歳	全	―	0
光岡明	43歳	全	△	2	「今期の作品中もっとも小説的な意図をもった作品と思ったが、結末のまとめに難があり、」
森泰三	(54歳)	全	―	0

他の選考委員

選考委員

瀧井孝作

82歳×各候補作　

題若者の才気　総行数33　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
村上龍	24歳	全	■	8	「アメリカ軍の基地に近い酒場の女たち、麻薬常習の仲間たちのたわいのない、水の泡のような日常を描いたもの、と私はみた。この若い人の野放図の奔放な才気な一応認めるが……。」「私はこの人の尚洗練された第二作第三作をまちたかった。」
岩橋邦枝	41歳	全	■	6	「アパートの経営者の細君「私」の観察も描かれて、この「私」は三人称の小説としては新手法で、世間の目とみえたが、効果はうすかった。」
寺久保友哉	39歳	全	△	3	「わるくはなかった。」
小檜山博	39歳	全	―	0
梅原稜子	33歳	全	△	4	「末尾の場面、庭で茂った蔓の郁子の実を二人して採って賞美する所は何となく佳かった。」
光岡明	43歳	全	○	7	「私は読みながら細君のかいた私小説かと思ったが、あとで光岡明氏は別人とわかり、細君の筆ではない、達者なものだと思った。」
森泰三	(54歳)	全	○	5	「私はこの小説の末尾にある、結婚の心持を訴えた長文の手紙には、打たれて惹きこまれた。この作品は筆が堅すぎるせいか、銓衡にとりあげたのは私一人であった。」

他の選考委員

選考委員

安岡章太郎

56歳×各候補作　

題センシティヴな才能　総行数32　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
村上龍	24歳	全	△	17	「印象にのこった。」「候補に上る以前から、それこそ「はしゃぎ過ぎ」の感があるほど話題になった作品であるが、内容に較べて二百枚という長さは退屈である。」「何が言いたいのかサッパリわからない。ただ、この作品には繊細で延びのある感受性があり、それが風景描写などに生きている。」「私はこの作品に賞は出さない方がいいと思ったが、積極的に反対するだけの情熱もなかった。」
岩橋邦枝	41歳	全	―	0
寺久保友哉	39歳	全	△	8	「印象にのこった。」「部分的に医者の生活がよく出ており、描写にもなかなか面白いところがあった。しかし（引用者中略）語感や用語に手垢のついた鈍さがあり、結末のつけ方も安手で、採れなかった。」
小檜山博	39歳	全	―	0
梅原稜子	33歳	全	―	0
光岡明	43歳	全	△	12	「印象にのこった。」「主題もストーリイも月並みであり、決して光る作品ではないが、貧弱ながら文学のシンに触れたものが、これにはあった。ただ、人物のつかみ方は余りにも甘く、主人公の画家が個展に成功してはしゃぐところなど、文章自体がどうにも手がつけられなくなる。」
森泰三	(54歳)	全	―	0

他の選考委員

受賞者・作品

村上龍

24歳×各選考委員　

「限りなく透明に近いブルー」

中篇 221枚

選考委員			評価	行数	評言
吉行淳之介	52歳	全	○	27	「この数年のこの賞の候補作の中で、その資質は群を抜いており、一方作品が中途半端な評価しかできないので、困った。」「どこを切っても同じ味がする上にやたら長く、半ばごろの「自分の中の都市」という理窟のような部分に行き当って、一たん読むのをやめた。」「作品の退屈さには目をつむって、抜群の資質に票を投じた。この人の今後のマスコミとのかかわり合いを考えると不安になって、「因果なことに才能がある」とおもうが、そこをなんとか切り抜けてもらいたい。」
丹羽文雄	71歳	全	◎	25	「芥川賞の銓衡委員をつとめるようになって三十七回目になるが、これほどとらまえどころのない小説にめぐりあったことはなかった。それでいてこの小説の魅力を強烈に感じた。」「若々しくて、さばさばとしていて、やさしくて、いくらかもろい感じのするのも、この作者生得の抒情性のせいであろう。」「二十代の若さでなければ書けない小説である。」
中村光夫	65歳	全	◎	23	「他の六篇とはっきり異質の作品」「技巧的な出来栄えから見れば、他の候補作の大部分に劣るといってもよいのですが、その底に、本人にも手に負えぬ才能の汎濫が感じられ、この卑陋な素材の小説に、ほとんど爽かな読後感をあたえます。」「無意識の独創は新人の魅力であり、それに脱帽するのが選者の礼儀でしょう。」
井上靖	69歳	全	◎	20	「私は（引用者中略）推した。芥川賞の銓衡に於て、作者の資質というものを感じさせられる久々の作品だったと思う。」「所々に顔を出す幼さも、古さも、甘さも、この作品ではよく働いていて、全篇をうっすらと哀しみのようなものが流れているのもいい。」「題材が題材だけに、当然肯定もあり、否定もあると思う。肯定と否定とを計りにかけ、その上でどちらかに決めさせられるような作品である。そういう点も、この作品の持つよさとすべきであろう。」
永井龍男	72歳	全	△	7	「これを迎えるジャーナリズムの過熱状態が果してこの新人の成長にプラスするか否か、（引用者中略）群像新人賞というふさわしい賞をすでに得ている、次作を待って賞をおくっても決して遅くはないと思った。まさに老婆心というところであろう。」
瀧井孝作	82歳	全	■	8	「アメリカ軍の基地に近い酒場の女たち、麻薬常習の仲間たちのたわいのない、水の泡のような日常を描いたもの、と私はみた。この若い人の野放図の奔放な才気な一応認めるが……。」「私はこの人の尚洗練された第二作第三作をまちたかった。」
安岡章太郎	56歳	全	△	17	「印象にのこった。」「候補に上る以前から、それこそ「はしゃぎ過ぎ」の感があるほど話題になった作品であるが、内容に較べて二百枚という長さは退屈である。」「何が言いたいのかサッパリわからない。ただ、この作品には繊細で延びのある感受性があり、それが風景描写などに生きている。」「私はこの作品に賞は出さない方がいいと思ったが、積極的に反対するだけの情熱もなかった。」

他の候補作

候補者・作品

岩橋邦枝

41歳×各選考委員　

「冬空」

短篇 103枚

選考委員			評価	行数	評言
吉行淳之介	52歳	全	―	0
丹羽文雄	71歳	全	―	0
中村光夫	65歳	全	―	0
井上靖	69歳	全	―	0
永井龍男	72歳	全	―	0
瀧井孝作	82歳	全	■	6	「アパートの経営者の細君「私」の観察も描かれて、この「私」は三人称の小説としては新手法で、世間の目とみえたが、効果はうすかった。」
安岡章太郎	56歳	全	―	0

他の候補作

候補者・作品

寺久保友哉

39歳×各選考委員　

「棄小舟」

短篇 119枚

選考委員			評価	行数	評言
吉行淳之介	52歳	全	△	4	「大へん面白いのだが、突きつめれば安楽死の問題にいたる当節流行のテーマの追究の仕方に不満が残った。しかし、この人には流行作家になれるかたちの才能がある。」
丹羽文雄	71歳	全	―	0
中村光夫	65歳	全	―	0
井上靖	69歳	全	―	0
永井龍男	72歳	全	△	3	「飽かせず読ませるが、話上手に過ぎたきらいがなくもなかった。」
瀧井孝作	82歳	全	△	3	「わるくはなかった。」
安岡章太郎	56歳	全	△	8	「印象にのこった。」「部分的に医者の生活がよく出ており、描写にもなかなか面白いところがあった。しかし（引用者中略）語感や用語に手垢のついた鈍さがあり、結末のつけ方も安手で、採れなかった。」

他の候補作

候補者・作品

小檜山博

39歳×各選考委員　

「出刃」

短篇 72枚

選考委員			評価	行数	評言
吉行淳之介	52歳	全	―	0
丹羽文雄	71歳	全	―	0
中村光夫	65歳	全	―	0
井上靖	69歳	全	―	0
永井龍男	72歳	全	―	0
瀧井孝作	82歳	全	―	0
安岡章太郎	56歳	全	―	0

他の候補作

候補者・作品

梅原稜子

33歳×各選考委員　

「蔓の実」

短篇 99枚

選考委員			評価	行数	評言
吉行淳之介	52歳	全	―	0
丹羽文雄	71歳	全	―	0
中村光夫	65歳	全	△	6	「注目しました。」「前の二作にくらべて、一種の余裕がでてきています。これが幅ひろい完成にたっするか、または緊張を失ってしまうか、いずれにせよ、この次あたりにくる筈の勝負所と期待します。」
井上靖	69歳	全	―	0
永井龍男	72歳	全	―	0
瀧井孝作	82歳	全	△	4	「末尾の場面、庭で茂った蔓の郁子の実を二人して採って賞美する所は何となく佳かった。」
安岡章太郎	56歳	全	―	0

他の候補作

候補者・作品

光岡明

43歳×各選考委員　

「いづくの蟹」

短篇 122枚

選考委員			評価	行数	評言
吉行淳之介	52歳	全	■	3	「注目したのだが、残念なことにところどころツジツマが合い過ぎたり、合わな過ぎたりした。」
丹羽文雄	71歳	全	―	0
中村光夫	65歳	全	―	0
井上靖	69歳	全	―	0
永井龍男	72歳	全	△	2	「今期の作品中もっとも小説的な意図をもった作品と思ったが、結末のまとめに難があり、」
瀧井孝作	82歳	全	○	7	「私は読みながら細君のかいた私小説かと思ったが、あとで光岡明氏は別人とわかり、細君の筆ではない、達者なものだと思った。」
安岡章太郎	56歳	全	△	12	「印象にのこった。」「主題もストーリイも月並みであり、決して光る作品ではないが、貧弱ながら文学のシンに触れたものが、これにはあった。ただ、人物のつかみ方は余りにも甘く、主人公の画家が個展に成功してはしゃぐところなど、文章自体がどうにも手がつけられなくなる。」

他の候補作

候補者・作品

森泰三

(54歳)×各選考委員　

「結婚」

短篇 141枚