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選評なし

候補作

評価

行数

評価

行数

評価

行数

評価

行数

評価

行数

評価

行数

評価

行数

評価

行数

中上健次　「岬」

158枚

29歳

◎

□

○

●

□

△

岡松和夫　「志賀島」

104枚

44歳

△

◎

○

◎

△

□

小沢冬雄　「黒い風を見た…」

118枚

43歳

―

△

―

■

小林信彦　「丘の一族」

127枚

43歳

―

■

―

△

高橋昌男　「藁のぬくもり」

129枚

40歳

―

■

△

■

吉行理恵　「針の穴」

37枚

36歳

・

―

■

―

■

加藤富夫　「さらば、海軍」

103枚

47歳

―

△

―

■

欠席

年齢/枚数の説明

見方・注意点

このページの選評出典：『芥川賞全集　第十巻』昭和57年/1982年11月・文藝春秋刊　再録（初出：『文藝春秋』昭和51年/1976年3月号）
1行当たりの文字数：26字

選考委員

吉行淳之介

51歳×各候補作　

題「岬」について　総行数30　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
中上健次	29歳	全	◎	22	「人間関係が複雑をきわめているので、二度読んだ。」「読者はふつう親切ではないので、途中で放棄される可能性のある書き方である。」「終りの数頁をとくに評価する。」「欠点も眼についたが、未知数の魅力とエネルギーに満ちていて、芥川賞の作品にふさわしい。」
岡松和夫	44歳	全	△	3	「前半がよいが、堅実な筆ですでに既成作家をおもわせる。しかし、授賞に異存はない。」
小沢冬雄	43歳	全	―	0
小林信彦	43歳	全	―	0
高橋昌男	40歳	全	―	0
吉行理恵	36歳	全	・	4	「私は棄権した。この作品の長所短所を述べるのは易しいことだが、やはり差しひかえる。」
加藤富夫	47歳	全	―	0

他の選考委員

選考委員

丹羽文雄

71歳×各候補作　

題さわやかな感じ　総行数25　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
中上健次	29歳	全	◎	13	「かねてから私は、この作者に属目していた。今度の作品にも、欠点はある。」「が、それらの非難を押えつけるほどこの作品からうける印象は強烈である。母親がよく描かれていた。この母親によって賞をうけたようなものである。」「作者は現実に体当りをして書いている。短いセンテンスは、一種さわやかな感じをあたえる。」
岡松和夫	44歳	全	△	7	「一作ごとに小説が巧妙になっている。今度のは、ずいぶん工夫が凝らされている。が、いつも少年ともの判りのいいおばあさんが登場するのは、すこし困る。」
小沢冬雄	43歳	全	―	0
小林信彦	43歳	全	■	5	「惜しい作品であった。密度が不足している。文学的にもいま一度書き直せばよかったのではないかと思う。」「材料に負けてしまった。」
高橋昌男	40歳	全	―	0
吉行理恵	36歳	全	―	0
加藤富夫	47歳	全	―	0

他の選考委員

選考委員

井上靖

68歳×各候補作　

題佳作二篇　総行数14　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
中上健次	29歳	全	□	4	「新進気鋭な作家としてのエネルギーが感じられる。」「ただこの作品に於ては、人間関係をのみこむのに、多少難渋した。」
岡松和夫	44歳	全	◎	8	「いいと思った。」「候補作の中で、最も小説らしい小説で、文章も確りしているし、筋の運び方にも練達したものが感じられる。」「受賞を機に、こうした手慣れた同じような題材からはなれて仕事をしなければならないであろうが、この作家はどんな材料でもこなせる力量を持っていると思う。」
小沢冬雄	43歳	全	△	2	「（引用者注：授賞作以外では）「黒い風を見た……」が光っていた。」
小林信彦	43歳	全	―	0
高橋昌男	40歳	全	―	0
吉行理恵	36歳	全	―	0
加藤富夫	47歳	全	―	0

他の選考委員

選考委員

永井龍男

71歳×各候補作　

題すぐれた筆力　総行数24　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
中上健次	29歳	全	○	12	「登場人物の親戚、姻戚関係が錯雑していて、それを呑み込むまで骨が折れた。」「この作者は、一群れの人間を浮出させるのに、すぐれた筆力を持っている。前の候補作「浄徳寺ツアー」でそう思ったことを、今度もあらためて感じた。」
岡松和夫	44歳	全	○	8	「今回の候補作七篇のうち、もっとも首尾の調った作品であった。前作に同じ題材を扱った作品があるという指摘もあったが、納得がゆくまで同一材料を書くという方法を私は悪いとは思わなかった。」
小沢冬雄	43歳	全	△	3	「戦後の少年の生活を克明に描いたという点で、（引用者注：「さらば、海軍」と）よく似た作品であった。」
小林信彦	43歳	全	△	2	「題材が特異であった。」
高橋昌男	40歳	全	■	3	「若い作家の情痴小説を読んだと思った。」
吉行理恵	36歳	全	■	2	「散文としては断片的であり過ぎた。」
加藤富夫	47歳	全	△	3	「戦後の少年の生活を克明に描いたという点で、（引用者注：「黒い風を見た……」と）よく似た作品であった。」

他の選考委員

選考委員

瀧井孝作

81歳×各候補作　

題岡松君の充実味　総行数30　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
中上健次	29歳	全	●	5	「人物がゴチャゴチャして、描写も何もない、わけのわからんものと私は見た。これよりもまだ、前回の候補作「浄徳寺ツアー」には、団体旅行の猥雑味が描いてあったと思った。」
岡松和夫	44歳	全	◎	14	「私はこの作の溌剌した筆致を見て、この作者の急に進歩した充実味に感心した。はじめの章の一、二、三、小学生時分の海洋訓練の志賀島行のところは、名文と見た。」「しまいの山寺の僧になった竹元少年の成長も宜かった。」
小沢冬雄	43歳	全	―	0
小林信彦	43歳	全	△	5	「筆はスッキリして、品のあるのは、（引用者中略）筆者らしい典夫のおだやかな性質の賜物と、私は見た。これが逞しく描いてあれば、通俗読物になるようにも感じられた。」
高橋昌男	40歳	全	■	5	「私は読んで気持のよい小説ではなかった。」
吉行理恵	36歳	全	―	0
加藤富夫	47歳	全	―	0

他の選考委員

選考委員

中村光夫

64歳×各候補作　

題独自な小説世界　総行数30　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
中上健次	29歳	全	□	14	「僕としては、本来なら授賞作なし、だがもし強いて選ぶなら中上氏、という考えで出席しました。」「氏はいくども候補にあがり、充分力倆をみとめられた新人ですが、今度の「岬」はそれらにくらべても出来のよい作品とは云えません。」「独自な小説世界を持つのは、ひとつの才能といえるので、これに賞を与えることは、一種の冒険ではあっても、やりがいのある冒険です。」
岡松和夫	44歳	全	△	8	「（引用者注：中上健次と比べて）未知数と発展の可能性をあまり含まぬように思えます。」「氏が博多を終始一貫して舞台としているのも、もしそれが、積極的決意の所産なら、やがて氏の作風に狭くとも深い味わいがでてくることが期待できます。」
小沢冬雄	43歳	全	―	0
小林信彦	43歳	全	△	3	「注目しました。」「未成品ですが、作者のストオリーテラーの手腕が感じられます。」
高橋昌男	40歳	全	△	5	「注目しました。」「平凡な風俗小説といえばそれまでですが、市井の風変りな男女の恋愛を、肩肘はらずに書き流した態度に或る新鮮さがあり、」
吉行理恵	36歳	全	―	0
加藤富夫	47歳	全	―	0
					「今回は七篇の候補作の出来がほぼ平均している代りに傑出した作品もなく、審査は難航しそうに思われました。」

他の選考委員

選考委員

安岡章太郎

55歳×各候補作　

題雑感　総行数31　（1行=26字）

候補			評価	行数	評言
中上健次	29歳	全	△	3	「おそろしく読み難い。しかし粘着力のある筆致。旺盛な筆力がある。ただし、最後の場面は文体が浮き上り、全体を安っぽくしている。」
岡松和夫	44歳	全	□	4	「（引用者注：以前の作と比べて）最も安定した作品になっていた。素朴な文章だが、戦時中の博多の町の描写は極めて的確だと思った。」
小沢冬雄	43歳	全	■	4	「子供の世界を描いているため難しい点があり、子供に写った戦争の影は、いささかステレオタイプになった嫌いがある。」
小林信彦	43歳	全	△	4	「候補作中、最も読みやすく、抜群におもしろい素材。」「ただし、このままでは通俗的で、かつアッケない。」
高橋昌男	40歳	全	■	4	「大層取りつきにくい。しかし、その割りに読後感は爽快。ただし、この爽快さは作者の人柄の好さであると同時に、幼さのせいかも知れない。」
吉行理恵	36歳	全	■	4	「彼女が何かしらモノを持っていることは、一読して感じられる。ただし、この作品自体はあまりにも弱い。」
加藤富夫	47歳	全	■	5	「手の混んだユーモア小説。しかし、手が混んでいるだけでユーモアがサッパリおかしくない。」
					「どれもが新人として平均の水準を抜いた作品であり、その意味でツブがそろっていた。だが、積極的に推せる強力な作品は一つもなかった。」

他の選考委員

受賞者・作品

中上健次

29歳×各選考委員　

「岬」

中篇 158枚

選考委員			評価	行数	評言
吉行淳之介	51歳	全	◎	22	「人間関係が複雑をきわめているので、二度読んだ。」「読者はふつう親切ではないので、途中で放棄される可能性のある書き方である。」「終りの数頁をとくに評価する。」「欠点も眼についたが、未知数の魅力とエネルギーに満ちていて、芥川賞の作品にふさわしい。」
丹羽文雄	71歳	全	◎	13	「かねてから私は、この作者に属目していた。今度の作品にも、欠点はある。」「が、それらの非難を押えつけるほどこの作品からうける印象は強烈である。母親がよく描かれていた。この母親によって賞をうけたようなものである。」「作者は現実に体当りをして書いている。短いセンテンスは、一種さわやかな感じをあたえる。」
井上靖	68歳	全	□	4	「新進気鋭な作家としてのエネルギーが感じられる。」「ただこの作品に於ては、人間関係をのみこむのに、多少難渋した。」
永井龍男	71歳	全	○	12	「登場人物の親戚、姻戚関係が錯雑していて、それを呑み込むまで骨が折れた。」「この作者は、一群れの人間を浮出させるのに、すぐれた筆力を持っている。前の候補作「浄徳寺ツアー」でそう思ったことを、今度もあらためて感じた。」
瀧井孝作	81歳	全	●	5	「人物がゴチャゴチャして、描写も何もない、わけのわからんものと私は見た。これよりもまだ、前回の候補作「浄徳寺ツアー」には、団体旅行の猥雑味が描いてあったと思った。」
中村光夫	64歳	全	□	14	「僕としては、本来なら授賞作なし、だがもし強いて選ぶなら中上氏、という考えで出席しました。」「氏はいくども候補にあがり、充分力倆をみとめられた新人ですが、今度の「岬」はそれらにくらべても出来のよい作品とは云えません。」「独自な小説世界を持つのは、ひとつの才能といえるので、これに賞を与えることは、一種の冒険ではあっても、やりがいのある冒険です。」
安岡章太郎	55歳	全	△	3	「おそろしく読み難い。しかし粘着力のある筆致。旺盛な筆力がある。ただし、最後の場面は文体が浮き上り、全体を安っぽくしている。」

他の候補作

受賞者・作品

岡松和夫

44歳×各選考委員　

「志賀島」

短篇 104枚

選考委員			評価	行数	評言
吉行淳之介	51歳	全	△	3	「前半がよいが、堅実な筆ですでに既成作家をおもわせる。しかし、授賞に異存はない。」
丹羽文雄	71歳	全	△	7	「一作ごとに小説が巧妙になっている。今度のは、ずいぶん工夫が凝らされている。が、いつも少年ともの判りのいいおばあさんが登場するのは、すこし困る。」
井上靖	68歳	全	◎	8	「いいと思った。」「候補作の中で、最も小説らしい小説で、文章も確りしているし、筋の運び方にも練達したものが感じられる。」「受賞を機に、こうした手慣れた同じような題材からはなれて仕事をしなければならないであろうが、この作家はどんな材料でもこなせる力量を持っていると思う。」
永井龍男	71歳	全	○	8	「今回の候補作七篇のうち、もっとも首尾の調った作品であった。前作に同じ題材を扱った作品があるという指摘もあったが、納得がゆくまで同一材料を書くという方法を私は悪いとは思わなかった。」
瀧井孝作	81歳	全	◎	14	「私はこの作の溌剌した筆致を見て、この作者の急に進歩した充実味に感心した。はじめの章の一、二、三、小学生時分の海洋訓練の志賀島行のところは、名文と見た。」「しまいの山寺の僧になった竹元少年の成長も宜かった。」
中村光夫	64歳	全	△	8	「（引用者注：中上健次と比べて）未知数と発展の可能性をあまり含まぬように思えます。」「氏が博多を終始一貫して舞台としているのも、もしそれが、積極的決意の所産なら、やがて氏の作風に狭くとも深い味わいがでてくることが期待できます。」
安岡章太郎	55歳	全	□	4	「（引用者注：以前の作と比べて）最も安定した作品になっていた。素朴な文章だが、戦時中の博多の町の描写は極めて的確だと思った。」

他の候補作

候補者・作品

小沢冬雄

43歳×各選考委員　

「黒い風を見た…」

短篇 118枚

選考委員			評価	行数	評言
吉行淳之介	51歳	全	―	0
丹羽文雄	71歳	全	―	0
井上靖	68歳	全	△	2	「（引用者注：授賞作以外では）「黒い風を見た……」が光っていた。」
永井龍男	71歳	全	△	3	「戦後の少年の生活を克明に描いたという点で、（引用者注：「さらば、海軍」と）よく似た作品であった。」
瀧井孝作	81歳	全	―	0
中村光夫	64歳	全	―	0
安岡章太郎	55歳	全	■	4	「子供の世界を描いているため難しい点があり、子供に写った戦争の影は、いささかステレオタイプになった嫌いがある。」

他の候補作

候補者・作品

小林信彦

43歳×各選考委員　

「丘の一族」

短篇 127枚

選考委員			評価	行数	評言
吉行淳之介	51歳	全	―	0
丹羽文雄	71歳	全	■	5	「惜しい作品であった。密度が不足している。文学的にもいま一度書き直せばよかったのではないかと思う。」「材料に負けてしまった。」
井上靖	68歳	全	―	0
永井龍男	71歳	全	△	2	「題材が特異であった。」
瀧井孝作	81歳	全	△	5	「筆はスッキリして、品のあるのは、（引用者中略）筆者らしい典夫のおだやかな性質の賜物と、私は見た。これが逞しく描いてあれば、通俗読物になるようにも感じられた。」
中村光夫	64歳	全	△	3	「注目しました。」「未成品ですが、作者のストオリーテラーの手腕が感じられます。」
安岡章太郎	55歳	全	△	4	「候補作中、最も読みやすく、抜群におもしろい素材。」「ただし、このままでは通俗的で、かつアッケない。」

他の候補作

候補者・作品

高橋昌男

40歳×各選考委員　

「藁のぬくもり」

短篇 129枚

選考委員			評価	行数	評言
吉行淳之介	51歳	全	―	0
丹羽文雄	71歳	全	―	0
井上靖	68歳	全	―	0
永井龍男	71歳	全	■	3	「若い作家の情痴小説を読んだと思った。」
瀧井孝作	81歳	全	■	5	「私は読んで気持のよい小説ではなかった。」
中村光夫	64歳	全	△	5	「注目しました。」「平凡な風俗小説といえばそれまでですが、市井の風変りな男女の恋愛を、肩肘はらずに書き流した態度に或る新鮮さがあり、」
安岡章太郎	55歳	全	■	4	「大層取りつきにくい。しかし、その割りに読後感は爽快。ただし、この爽快さは作者の人柄の好さであると同時に、幼さのせいかも知れない。」

他の候補作

候補者・作品

吉行理恵

36歳×各選考委員　

「針の穴」

短篇 37枚

選考委員			評価	行数	評言
吉行淳之介	51歳	全	・	4	「私は棄権した。この作品の長所短所を述べるのは易しいことだが、やはり差しひかえる。」
丹羽文雄	71歳	全	―	0
井上靖	68歳	全	―	0
永井龍男	71歳	全	■	2	「散文としては断片的であり過ぎた。」
瀧井孝作	81歳	全	―	0
中村光夫	64歳	全	―	0
安岡章太郎	55歳	全	■	4	「彼女が何かしらモノを持っていることは、一読して感じられる。ただし、この作品自体はあまりにも弱い。」

他の候補作

候補者・作品

加藤富夫

47歳×各選考委員　

「さらば、海軍」

短篇 103枚